(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6276017
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】魚肉粒子の分散液とその製法及びそれを利用した食品
(51)【国際特許分類】
A23L 17/10 20160101AFI20180129BHJP
A23L 17/00 20160101ALI20180129BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20180129BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20180129BHJP
A23L 2/38 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
A23L17/10
A23L17/00 A
A23L33/10
A23L2/00 A
A23L2/38 N
【請求項の数】14
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-258781(P2013-258781)
(22)【出願日】2013年12月16日
(65)【公開番号】特開2015-112094(P2015-112094A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004189
【氏名又は名称】日本水産株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大庭 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】岸 利弘
【審査官】
福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】
特開平01−199565(JP,A)
【文献】
特開平05−007458(JP,A)
【文献】
特開2009−034040(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/132288(WO,A1)
【文献】
特開2006−271326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 17/00−17/60
A23L 2/00− 2/40
A23L 33/00−33/29
CA/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散剤として水溶性食物繊維、及びpHを調整するための酸性物質を含有する、メジアン径が1〜50μmの魚肉粒子を分散させたpH3〜6の魚肉粒子の分散液。
【請求項2】
魚肉の含有量が乾燥物換算で4〜20重量%である請求項1の魚肉粒子の分散液。
【請求項3】
B型粘度計で測定した25℃における粘度が20dPa・s以下である請求項1又は2の魚肉粒子の分散液。
【請求項4】
水溶性食物繊維が、水溶性大豆多糖類、高メトキシルペクチン、ペクチン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びアルギン酸プロピレングリコールエステルのいずれか単独、又は組み合わせたものである請求項1ないし3いずれかの魚肉粒子の分散液。
【請求項5】
水溶性食物繊維の添加量の合計が、魚肉の乾燥重量に対して0.3〜30重量%である請求項1ないし4いずれかの魚肉粒子の分散液。
【請求項6】
魚肉の乾燥重量に対して、水溶性大豆多糖類を0.3〜15重量%、及び高メトキシルペクチンを0.3〜15重量%含有する請求項5の魚肉粒子の分散液。
【請求項7】
請求項1〜6の魚肉粒子の分散液を含有する飲食品。
【請求項8】
栄養補助用食品である請求項7の飲食品。
【請求項9】
介護用の食品である請求項7の飲食品。
【請求項10】
微細化した魚肉と水溶性食物繊維の水溶液を混合した後、酸性物質を添加してpHを3〜6に調製することを特徴とする魚肉粒子の分散液の製造方法。
【請求項11】
魚肉をメジアン径が1〜50μmになるように微細化する請求項10の方法。
【請求項12】
水溶性食物繊維が、水溶性大豆多糖類、高メトキシルペクチン、ペクチン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びアルギン酸プロピレングリコールエステルのいずれか単独、又は組み合わせたものである請求項10又は11の方法。
【請求項13】
魚肉の乾燥重量に対して水溶性食物繊維を0.3〜30重量%用いることを特徴とする請求項10ないし12いずれかの方法。
【請求項14】
魚肉の乾燥重量に対して、水溶性大豆多糖類を0.3〜15重量%、及び高メトキシルペクチンを0.3〜15重量%含用いることを特徴とする請求項13の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚肉粒子の分散液に関する。本来固体である魚肉をタンパク質分解物ではなく、魚肉のまま、なめらかで均質な液状にする技術である。
【背景技術】
【0002】
タンパク質には、畜肉、鶏肉、魚肉などの固形のものと、牛乳、豆乳、及び卵などの液状のものがある。若いときだけでなく、高齢になっても健康の維持、体力維持にタンパク質の摂取は欠かせない。しかし、高齢になり食欲が低下すると肉類のような固形のタンパク質が摂取しにくくなりがちになる。
特許文献1には、魚肉の利用性を高めるために、魚肉の酵素又は微生物分解物を流動性食品とする技術が報告されている。特許文献2には、加熱しても糊状感を与えずにペースト状を維持できるペースト状魚肉すり身が記載されている。
また、液状のタンパク質である牛乳等は酸や加熱により凝固する性質を有するが、乳タンパクを凝固しにくくするための技術が報告されている(特許文献3、4等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平3−71864号
【特許文献2】特許5176102号
【特許文献3】特許2834345号
【特許文献4】特許4735001号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
魚肉タンパク質は良質なタンパク質であり、日本では広く摂取されてきたが、残念ながらその消費量は減少傾向にある。単なる栄養素としての蛋白源であるだけでなく、魚肉タンパク質特有の生理機能についての研究も進んでおり、魚肉タンパク質の活用が望まれる。
本発明は、良質なタンパク質である魚肉をより手軽に摂取できる形態で提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
魚肉の酵素分解物等ではなく、魚肉タンパクそのままを摂取しやすい形態にすることを検討する中で、飲料のような液状物として摂取できる形態にすることに思い至った。そのためには、乳タンパク等と異なり、アクチンとミオシンからなる筋線維であり、ゲル化しやすい性質を有する魚肉タンパク質を水に分散させて、凝集しないようにする必要がある。
本発明は、牛乳、豆乳と並んで魚乳(フィッシュミルク)と呼べるような、魚肉タンパク質を液体として摂取できる製品を提供する。
【0006】
本発明は、(1)〜(7)の魚肉粒子の分散液、(8)〜(10)のそれを含む食品、及び(11)〜(15)の魚肉粒子の分散液の製造方法を要旨とする。
(1)メジアン径が1〜50μmの魚肉粒子を分散させたpH3〜6の魚肉粒子の分散液。
(2)魚肉の含有量が乾燥物換算で4〜20重量%である(1)の魚肉粒子の分散液。
(3)B型粘度計で測定した25℃における粘度が20dPa・s以下である(1)又は(2)の魚肉粒子の分散液。
(4)魚肉粒子の分散剤として、水溶性食物繊維を含有する(1)ないし(3)いずれかの魚肉粒子の分散液。
(5)水溶性食物繊維が、水溶性大豆多糖類、高メトキシルペクチン、ペクチン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びアルギン酸プロピレングリコールエステルのいずれか単独、又は組み合わせたものである(4)の魚肉粒子の分散液。
(6)水溶性食物繊維の添加量の合計が、魚肉の乾燥重量に対して0.3〜30重量%である(4)又は(5)の魚肉粒子の分散液。
(7)魚肉の乾燥重量に対して、水溶性大豆多糖類を0.3〜15重量%、及び高メトキシルペクチンを0.3〜15重量%含有するである(4)又は(5)の魚肉粒子の分散液。
【0007】
(8)(1)〜(7)の魚肉粒子の分散液を含有する飲食品。
(9)栄養補助用食品である(8)の飲食品。
(10)介護用の食品である(8)の飲食品。
(11)微細化した魚肉と水溶性食物繊維の水溶液を混合した後、酸性物質を添加してpHを3〜6に調製することを特徴とする魚肉粒子の分散液の製造方法。
(12)魚肉をメジアン径が1〜50μmになるように微細化する(11)の方法。
(13)水溶性食物繊維が、水溶性大豆多糖類、高メトキシルペクチン、ペクチン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びアルギン酸プロピレングリコールエステルのいずれか単独、又は組み合わせたものである(11)又は(12)の方法。
(14)魚肉の乾燥重量に対して水溶性食物繊維を0.3〜30重量%用いることを特徴とする(11)ないし(13)いずれかの方法。
(15)魚肉の乾燥重量に対して、水溶性大豆多糖類を0.3〜15重量%、及び高メトキシルペクチンを0.3〜15重量%含用いることを特徴とする(14)の方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法は、小さく粉砕した魚肉タンパク質を水溶性食物繊維で保護した後で、クエン酸等により酸性にすることにより、魚肉タンパク粒子が凝集することなく分散し、さらに加熱しても凝集することのなく安定な魚肉粒子の分散液を提供することができる。この分散液はさらに調味料等を加えて各種風味の飲料、ゼリー、スープなどに加工することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、魚肉をそのまま、サラサラの液状にした、飲める魚肉である。固形物を摂取しにくい病人や高齢者だけでなく、健康な人においても手軽に魚肉摂取の効用をおいしく得ることができる舌触り、風味の食品を提供する。
魚肉はアクチン、ミオシンからなる筋肉タンパクであり、塩分を添加して練るとゲル化し、加熱すると凝集する性質を有するため、そのまま微細化しただけでは、喉越しの良い液体とはならない。
本発明では、微粒子化した魚肉をペクチンや水溶性食物繊維で保護することによって、加熱後の凝集を防止する。また、pH3−6の酸性の液とすることにより、微粒子を分散させサラサラの物性とする。このように製造した微細化魚肉の分散液は加熱後も凝集、沈澱、相分離等を起こさず、安定に保存することができる。
【0010】
本発明において、魚肉とは食用に用いられる魚類の肉であれば物性的には何でも使用できる。嗜好性を考慮すれば、癖が少なく、油の含有量が少ない白身魚が好ましく、特に筋肉以外の不純物が除去されたすり身が好ましい。魚類練製品の原料として広く利用されている冷凍すり身は好ましい原料となる。魚種としては、スケトウダラ等のタラ類、ヒラメ、カレイ類、タイ類、マグロ、カジキ類、サケ、マス類、グチ類、タチウオなどが例示される。
【0011】
本発明において、魚肉はマスコロイダーのような発熱せず、微細化できる装置を用いて、平均粒子径(メジアン径)が1〜50μm程度、好ましくは、2〜35μm、さらに好ましくは、3〜20μmになるよう微細化して用いる。微細化する前のスケトウダラすり身のメジアン径は210μmであった。
本発明において、分散液中に含まれる魚肉の量は、湿重量で30〜70重量%が好ましい。乾燥重量では、4〜20重量%程度である。魚肉は水分を70〜85重量%程度含み、タンパク質の割合は通常7〜27重量%程度である。したがって、分散液中の魚肉が乾燥重量で4重量%以下では、タンパク質を摂取するという目的には薄すぎる。また、大豆多糖類やレシチンを膨潤させるために一定の水分が必ず必要なため、魚肉の量を乾燥重量で20重量%以上にするのは難しい。好ましくは、乾燥重量で5〜10重量%である。
【0012】
本発明において魚肉粒子を分散させるための分散剤として、水溶性食物繊維を用いる。水溶性食物繊維としては、水溶性大豆多糖類、高メトキシルペクチン、ペクチン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステルなどを使用することができる。水溶性食物繊維としては、特に、水溶性大豆多糖類が好ましい。水溶性大豆多糖類は、ラムノース、フコース、アラビノース、キシロース、ガラクトース、グルコース及びウロン酸からなる多糖類であって、標準プルランを標準物質として極限粘度法で求めた平均分子量が100万以下のものである。このものは、大豆から豆腐を製造した後に残るオカラや脱脂大豆から大豆蛋白を抽出した抽出粕を出発原料として、これらを加水分解処理することにより製造される。
さらに、水溶性大豆多糖類に高メトキシルペクチンを併用するのが好ましい。ペクチンは、柑橘類やリンゴなどから得られる多糖類である。ペクチンを構成しているガラクチュロン酸のうち、メチルエステルとして存在する割合をエステル化度というが、エステル化度の高いペクチンが高メトキシルペクチンと一般に呼ばれている。本発明においては、エステル化度の高い50%以上の高メトキシルペクチンを使用することが好ましい。本発明において、水溶性大豆多糖類や高メトキシルペクチンなどの水溶性食物繊維を使用するとpHが酸性域において蛋白質成分の凝集を抑制でき、食感においてざらつきを感じ難くすることができる。
【0013】
水溶性食物繊維は、魚肉の乾燥重量に対して合計で0.3〜30重量%用いるのが好ましい。より好ましくは0.5〜20重量%であり、更に好ましくは0.5〜10重量%である。0.3重量%より少ないと魚肉粒子の凝集を充分に抑制できず、30重量%より多いと粘度が高くなり、飲料やゼリーの製造には適さなくなる。例えば、水溶性大豆多糖類と高メトキシルペクチンを併用する場合、魚肉40〜50重量部(湿重量)に対して、水溶性大豆多糖類及び高メトキシルペクチンをそれぞれ0.1〜3重量部(魚肉の乾燥重量では、6〜15重量部に対しては、それぞれ0.1〜3重量部)程度添加するとちょうどよい分散液を得ることができる。
【0014】
本発明の魚肉粒子分散液には、水溶性大豆多糖類又は高メトキシルペクチン以外の多糖類を添加することができる。これらの多糖類としては、カラギーナン、寒天、低メトキシペクチン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、グルコマンナン、カードラン、グアーガム、グルコマンナン、アルギン酸ナトリウム、ポリデキストロース、セルロース等を挙げることができる。
【0015】
本発明の魚肉粒子分散液のpHは3〜6であることを特徴とする。pHが3より低いと酸味が強すぎるため良好な風味が得られず、6より高いと粘度が高く、液状にならない。好ましくはpH3.5〜4.5である。またpHを低く保つことにより、簡易的な殺菌方法で長期保存が可能となる。
本発明の魚肉粒子分散液に使用できるpHを調整するための酸性物質として、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、コハク酸、フマル酸、リン酸及び、これらのナトリウム塩などが挙げられる。乳酸菌等の発酵による酸性物質でも、リンゴ、オレンジ、ブドウ、グレープフルーツ、ストロベリー、パイン、レモンなどの果汁でも、pHを調整できるものであればかまわない。クエン酸、クエン酸ナトリウム、フマル酸、フマル酸ナトリウムが好ましい。
【0016】
本発明の魚肉粒子分散液には、蛋白質成分として、本発明の効果が損なわれない範囲において、上述の魚肉以外に、カゼイン類、乳蛋白質、卵蛋白質、肉蛋白質、コラーゲン蛋白質などの動物系蛋白質や、大豆蛋白質、小麦蛋白質、米蛋白質などの植物蛋白質、それらの加水分解物やペプチドなどを加えてもよい。更に、乳蛋白質として、全脂粉乳蛋白質、脱脂粉乳蛋白質、総合乳蛋白質、ホエイ蛋白質などを加えてもよく、アミノ酸単独を加えてもよい。
【0017】
本発明の魚肉粒子分散液に添加する水としては、天然水、水道水、イオン交換水、蒸留水など食品として使用できる水であれば使用することができる。また、本発明の目的を逸脱しない範囲で、他の食品原料を加えることができる。例えば、糖質、油脂、ミネラル、ビタミン、その他の生理機能性物質、呈味物質、香料、色素などが挙げられる。油脂等を添加する場合には、乳化剤などを使用してもよい。
魚肉特有の臭いが気になる場合は、フレーバーを添加することによってマスキングすることができる。魚肉には魚油も含まれるのでトコフェロール、茶カテキンなどの抗酸化剤等を併用してもよい。
【0018】
本発明の魚肉粒子の分散液は例えば、以下のように製造することができる。
魚肉はマスコロイダーのような発熱せず、微細化できる装置を用いて、平均粒子径(メジアン径)が1〜50μm程度、好ましくは、2〜35μm、さらに好ましくは、3〜20μmになるよう微細化する。水溶性食物繊維及びペクチンは20倍量程度の温水を加えて膨潤化させておく。これらを混合、撹拌して均一にした後、クエン酸などの酸性物質を添加してpH3〜6に調整する。水を添加して、濃度を調製後、ホモジナイザーなど均質化工程を行い、包装、加熱殺菌等の工程を経て、魚肉粒子の分散液が完成する。レトルト殺菌も可能である。
【0019】
本発明の魚肉粒子分散液の粘度をB型粘度計を用いて測定すると、25℃における粘度が0〜20dPa・sであった。色調は白〜乳白色で、流動性の高い液状であり、各種液状食品の原料や各種食品に魚肉タンパクを添加するための素材として汎用性の高い素材である。
【0020】
本発明の魚肉粒子の分散液にさらに、調味料、香料等を添加混合して、各種風味の飲料や流動性食品を製造することができる。魚肉風味をマスキングする果汁や果汁フレーバー、ヨーグルト、ヨーグルトフレーバーなど、コーヒー、コーヒーフレーバー等を添加することにより、各種飲料ができる。また、各種の味付けをしてポタージュスープなどにすることができる。離乳食、高齢者用、病人用の流動状食品などを容易に製造することができる。また、増粘剤や寒天、ゼラチンなどでペースト状、ゼリー状などに加工することも可能である。魚肉粒子が加熱により、凝集することがないので、多様な加工を施すことができる。また、凍結してシャーベットやアイスクリーム状にすることも可能である。
【0021】
また、本発明の魚肉粒子の分散液は、これをゲル化してゼリーとするのも好ましい。様々な病態を発症した患者や高齢者は、嚥下能力が低下している場合があり、この場合、ゼリー状とすることで、嚥下しやすくなる。本発明でゼリーとする際、ローカストビーンガム、ジェランガム、寒天などの多糖類をゲル化剤として使用することが好ましい。さらに、本発明においては、例えば、多糖類以外のゲル化剤であるゼラチン等を使用することもできる。
本発明において、ゼリー中には、ローカストビーンガム、ジェランガム、寒天、ゼラチンなどのゲル化剤が0.05〜3重量%含まれることが好ましい。0.05重量%より少ないとゼリーとして使用するには充分にゲル化できず、3重量%より多いとゼリーとしては堅くなりすぎ適さなくなる。
最終的な飲料やゼリーの形態としては、テトラパック、テーブルカップ、ポーションカップ、アルミパウチ、チアパックなどの容器に充填することができる。
【0022】
以下に本発明の実施例を記載するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
実施例中、粒子径は株式会社堀場製作所のレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA-920を用いて測定した。粘度はB型回転粘度計(東京計器株式会社製)を用いて25℃における粘度を測定した。
【実施例1】
【0023】
<魚肉粒子の分散液の製造>
水溶性大豆多糖類(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製、SM-1200)5gと高メトキシルペクチン(CP Kelco社製、GENU pectin type YM-150-LJ)8gに30kgの温水を加え、80℃まで加温して膨潤させたのち、25℃以下に冷却する。すり身(日本水産株式会社製、陸上2級、水分78.1重量%、タンパク質15.3重量%)45kgはマスコロイダー(増幸産業株式会社製、MKZA15-40J)を用いて、ペースト状にした。水溶性大豆多糖類と高メトキシルペクチンの溶液とペースト状のすり身を25℃以下で均一になるまで混合した。この段階では、ドロドロの泥状である。これに、撹拌しながらクエン酸5%水溶液をpH4.5になるまで添加した。クエン酸を添加するとタンパク質が、分散し、サラサラの液状となった。これに水を添加し、合計量を100kgとした。均質化及び殺菌後、保存容器に充填した。この魚肉粒子の分散液は、豆乳のような外観と粘度のサラサラの液状であった。常温で保存しても、凝集・沈殿することなく、安定な物性であった。
【0024】
[比較例1]
実施例1と同様の配合で、水溶性食物繊維として、水溶性大豆多糖類のみ、あるいは高メトキシルペクチンのみを1.5%用いて同様に魚肉粒子の分散液を調製した。水溶性大豆多糖類のみでは、流動性は同程度であったが、小さな凝集物が見られた。高メトキシルペクチンのみでは、凝集物は見られなかったが、流動性がやや低い液であった。使用目的に応じて、水溶性食物繊維は複数を組み合わせるのが好ましい。
【0025】
[比較例2、3]
特許文献2に記載のペースト状すり身と比較するために、水溶性食物繊維とクエン酸を同時に添加してミキサーにかける方法と、さらに食塩を添加して製造する方法を試験した。実施例1と同じ配合をすべて同時に添加してミキサーにかけた(比較例2)。また、実施例1の配合に1.5%の食塩を追加し、すべて同時に添加してミキサーにかけた(比較例3)。比較例2は流動性も低いペースト状で液状と呼べるものではなく、比較例3は比較例2よりもやや流動性が高いものの、やはり液状というレベルではなく、いずれも大きな凝集物が多数認められた。
先に魚肉粒子を水溶性食物繊維で保護してから、酸性にすることが重要であることが確認できた。
【実施例2】
【0026】
<果汁入り魚肉タンパク飲料>
表1に示す配合で果汁入り魚肉タンパク飲料を製造した。実施例1と同様の方法で魚肉粒子の分散液を調製し、それに果汁、香料、甘味料を添加し、均質化し、殺菌後、保存容器に充填した。得られた魚肉飲料は、舌触りも滑らかな果汁風味の飲料であり、魚臭さは感じなかった。また、製造直後も、常温保存後も凝集・沈殿は見られず、安定な物性であった。
【0027】
【表1】
【0028】
上記の方法で、各種の果汁風味の飲料を製造し、その飲料中の魚肉分子のメジアン径、粘度及びpHを測定した。結果を表2に示す。いずれの果汁、フレーバーを用いても、飲料に含まれる魚肉粒子の大きさは、5〜40μm程度であり、粘度は0.1〜20dPa・s、pHは4〜6の範囲であった。増粘剤を加えたマンゴ風味においても、魚肉粒子の大きさは小さいままであった。
【0029】
【表2】
【実施例3】
【0030】
<魚肉タンパク配合スープ>
表3に示す配合で魚肉タンパク配合スープを製造した。実施例1と同様の方法で魚肉粒子の分散液を調製し、それにオニオンペースト、アサリエキス、チキンコンソメを配合後、均質化、加熱殺菌し、ホットパックにて充填した。得られた魚肉タンパク配合スープは、凝集・沈殿が見られず、風味の良好な滑らかなスープであった。
【0031】
【表3】
【実施例4】
【0032】
<魚肉タンパク入り冷凍麺>
表4に記載の配合でうどんを製造した。実施例1と同様の方法で魚肉粒子の分散液を調製し、それに小麦粉と食塩を添加し、混練後、熟成、圧延した後切り出し、茹でた後冷凍した。再度茹でてできた麺は、滑らかで、魚臭もせず、良好な食感を維持していた。
【0033】
【表4】
【実施例5】
【0034】
<魚肉タンパク配合ゼリー>
表5の配合でゼリーを製造した。実施例1と同様の方法で魚肉粒子の分散液を調製し、それにゲル化剤、パンプキンパウダー、カボチャフレーバー、甘味料を配合後、加熱し、カップに充填し、冷却した。
【0035】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の魚肉粒子の分散液は、固体である魚肉を汎用性の高い、粘度の低い液状に加工したものであり、汎用性の高い良質タンパク質原料として、機能性食品や介護食などの素材を提供することができる。