特許第6276384号(P6276384)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6276384凍結対象物の内部温度測定方法及び凍結対象物の内部温度測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6276384
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】凍結対象物の内部温度測定方法及び凍結対象物の内部温度測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01K 7/00 20060101AFI20180129BHJP
   G01N 22/00 20060101ALI20180129BHJP
   G01N 22/04 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
   G01K7/00 381Z
   G01N22/00 U
   G01N22/00 V
   G01N22/00 J
   G01N22/04 Z
【請求項の数】15
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-510221(P2016-510221)
(86)(22)【出願日】2015年3月12日
(86)【国際出願番号】JP2015057234
(87)【国際公開番号】WO2015146600
(87)【国際公開日】20151001
【審査請求日】2016年8月3日
(31)【優先権主張番号】特願2014-68492(P2014-68492)
(32)【優先日】2014年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】河野 晋治
(72)【発明者】
【氏名】服部 一裕
【審査官】 榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/153793(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/004116(WO,A1)
【文献】 特表2002−532239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 7/00
G01K 11/00
G01N 22/00 − 04
G01N 25/00 − 72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍結対象物の内部温度測定方法であって、
マイクロ波共振器を用いて生成されるマイクロ波の共振磁場に前記凍結対象物を配置する配置ステップと、
前記マイクロ波共振器を用いて凍結状態の前記凍結対象物の共振状態を検出する状態検出ステップと、
前記状態検出ステップにおける共振状態の検出結果から得られる共振ピーク電圧を説明変数に含め、前記凍結対象物の内部温度の測定値を目的変数として回帰分析を行って算出された検量線に、前記状態検出ステップで検出された共振状態から得られる前記共振ピーク電圧を少なくとも当てはめて、凍結状態にある前記凍結対象物の内部温度を算出する温度算出ステップと、
を備えることを特徴とする凍結対象物の内部温度測定方法。
【請求項2】
前記マイクロ波共振器により生成されるマイクロ波の共振磁場域が前記凍結対象物の全域を覆うように、前記凍結対象物の投影面積より前記マイクロ波共振器投影面積が小に設定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の凍結対象物の内部温度測定方法。
【請求項3】
凍結対象物の内部温度測定方法であって、
マイクロ波共振器を用いて生成されるマイクロ波の共振磁場に前記凍結対象物を配置する配置ステップと、
前記マイクロ波共振器を用いて凍結状態の前記凍結対象物の共振状態を検出する状態検出ステップと、
前記状態検出ステップで検出される共振状態を説明変数とし、前記凍結対象物の内部温度の測定値を目的変数として回帰分析を行って算出された検量線に、前記状態検出ステップで検出された共振状態を当てはめて、凍結状態にある前記凍結対象物の内部温度を算出する温度算出ステップと、
を備え、
前記凍結対象物は、中身が詰まった中実食品であり、
前記状態検出ステップで検出される前記共振状態は、凍結状態の前記凍結対象物の共振ピーク電圧であり、
前記温度算出ステップは、前記検量線に、前記状態検出ステップで検出される前記共振ピーク電圧を当てはめて、凍結状態にある前記凍結対象物の内部温度を予測する
ことを特徴とする凍結対象物の内部温度測定方法。
【請求項4】
前記状態検出ステップは、前記マイクロ波共振器を用いて、前記凍結対象物の共振周波数を検出する共振周波数検出ステップと、
前記凍結対象物の内部温度と共振周波数との相関を規定する第2の検量線に、前記共振周波数検出ステップで検出された前記共振周波数を当てはめることで、前記凍結対象物が凍結状態にあるか否かを判定する凍結状態判定ステップ、をさらに備え、
前記温度算出ステップでは、前記凍結状態判定ステップにおいて前記凍結対象物が凍結状態にあると判定されたときの前記共振ピーク電圧の検出値を、前記凍結対象物の内部温度と共振ピーク電圧との相関を規定する第1の検量線に当てはめることで、前記凍結対象物の内部温度を算出する
ことを特徴とする請求項3に記載の凍結対象物の内部温度測定方法。
【請求項5】
前記凍結対象物の前記中実食品は、搬送ラインによって搬送される冷凍食品であり、
前記状態検出ステップでは、前記搬送ラインによって搬送中の前記冷凍食品に対して前記マイクロ波共振器を用いた前記共振ピーク電圧の検出を行い、
前記温度算出ステップでは、前記搬送ラインで搬送中の前記冷凍食品の内部温度を算出する
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の凍結対象物の内部温度測定方法。
【請求項6】
前記状態検出ステップでは、非包装状態又はマイクロ波を透過する部材によって包装された状態における前記冷凍食品の前記共振ピーク電圧を検出する
ことを特徴とする請求項5に記載の凍結対象物の内部温度測定方法。
【請求項7】
前記凍結対象物のマイクロ波照射方向における厚さは、50mm以下である
ことを特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載の凍結対象物の内部温度測定方法。
【請求項8】
凍結対象物の内部温度測定方法であって、
マイクロ波共振器を用いて生成されるマイクロ波の共振磁場に前記凍結対象物を配置する配置ステップと、
前記マイクロ波共振器を用いて凍結状態の前記凍結対象物の共振状態を検出する状態検出ステップと、
前記状態検出ステップで検出される共振状態を説明変数とし、前記凍結対象物の内部温度の測定値を目的変数として回帰分析を行って算出された検量線に、前記状態検出ステップで検出された共振状態を当てはめて、凍結状態にある前記凍結対象物の内部温度を算出する温度算出ステップと、
を備え、
前記凍結対象物は、小さな粒状に形成された複数のバラ凍結食品であり、
複数の前記バラ凍結食品を容器内に充填する充填ステップを備え、
前記状態検出ステップで検出される共振状態は、凍結状態の前記凍結対象物の共振ピーク電圧及び共振周波数であり、
前記温度算出ステップは、前記検量線に、前記状態検出ステップで検出された前記共振ピーク電圧及び共振周波数を当てはめて、凍結状態にある前記バラ凍結食品の内部温度を予測し、
この予測された前記バラ凍結食品の内部温度と、実測された前記バラ凍結食品の内部温度との相関の程度を表す値が所定値よりも小さいときに前記複数のバラ凍結食品を充填した前記容器に該複数のバラ凍結食品を再充填して密度を高める再充填ステップを更に備える
ことを特徴とする凍結対象物の内部温度測定方法。
【請求項9】
凍結対象物の内部温度測定装置であって、
凍結状態の前記凍結対象物の共振状態を検出するためのマイクロ波共振器と、
凍結状態にある前記凍結対象物の共振状態の検出結果から得られる共振ピーク電圧を説明変数に含めとし、前記凍結対象物の内部温度を目的変数として回帰分析を行って算出された検量線に、前記マイクロ波共振器によって検出された前記共振状態から得られる前記共振ピーク電圧を少なくとも当てはめることで、凍結状態にある前記凍結対象物の内部温度を算出するように構成された温度算出部と、を備え、
前記マイクロ波共振器の投影面積が前記凍結対象物の投影面積よりも小に設定されている
ことを特徴とする凍結対象物の内部温度測定装置。
【請求項10】
凍結対象物の内部温度測定装置であって、
凍結状態の前記凍結対象物の共振状態を検出するためのマイクロ波共振器と、
凍結状態にある前記凍結対象物の共振状態を説明変数とし、前記凍結対象物の内部温度を目的変数として回帰分析を行って算出された検量線に、前記マイクロ波共振器によって検出された前記共振状態を当てはめることで、凍結状態にある前記凍結対象物の内部温度を算出するように構成された温度算出部と、を備え、
前記マイクロ波共振器の投影面積が前記凍結対象物の投影面積よりも小に設定され、
前記凍結対象物は、中身が詰まった中実食品であり、
前記マイクロ波共振器は、凍結状態の前記凍結対象物の共振ピーク電圧を検出するように構成され、
前記温度算出部は、凍結状態にある前記凍結対象物の内部温度と共振ピーク電圧との相関を規定する第1の検量線に、前記マイクロ波共振器によって検出された前記共振ピーク電圧を当てはめることで、凍結状態にある前記凍結対象物の内部温度を算出するように構成されている
ことを特徴とする凍結対象物の内部温度測定装置。
【請求項11】
前記マイクロ波共振器は、前記凍結対象物の共振周波数を検出するように構成され、
前記凍結対象物の内部温度と前記共振周波数との相関を規定する第2の検量線に、前記マイクロ共振器によって検出された前記共振周波数を当てはめることで、前記凍結対象物が凍結状態にあるか否かを判定するように構成された凍結状態判定部、をさらに備え、
前記温度算出部は、前記凍結状態判定部によって前記凍結対象物が凍結状態にあると判定されたときの前記共振ピーク電圧の検出値を前記第1の検量線に当てはめることで、凍結状態にある前記凍結対象物の内部温度を算出するように構成されている
ことを特徴とする請求項10に記載の凍結対象物の内部温度測定装置。
【請求項12】
前記凍結対象物の前記中実食品は、搬送ラインによって搬送される冷凍食品であり、
前記マイクロ波共振器は、前記搬送ラインによって搬送中の前記冷凍食品の前記共振ピーク電圧を検出するように構成され、
前記温度算出部は、前記搬送ラインで搬送中の前記冷凍食品の内部温度を算出するように構成されている
ことを特徴とする請求項10又は11に記載の凍結対象物の内部温度測定装置。
【請求項13】
前記マイクロ波共振器は、非包装状態又はマイクロ波を透過する部材によって包装された状態における前記冷凍食品の前記共振ピーク電圧を検出するように構成されている
ことを特徴とする請求項12に記載の凍結対象物の内部温度測定装置。
【請求項14】
凍結対象物の内部温度測定装置であって、
凍結状態の前記凍結対象物の共振状態を検出するためのマイクロ波共振器と、
凍結状態にある前記凍結対象物の共振状態を説明変数とし、前記凍結対象物の内部温度を目的変数として回帰分析を行って算出された検量線に、前記マイクロ波共振器によって検出された前記共振状態を当てはめることで、凍結状態にある前記凍結対象物の内部温度を算出するように構成された温度算出部と、を備え、
前記マイクロ波共振器の投影面積が前記凍結対象物の投影面積よりも小に設定され、
前記凍結対象物は、小さな粒状に形成された複数のバラ凍結食品であり、
前記マイクロ波共振器は、凍結状態の前記凍結対象物の共振ピーク電圧及び共振周波数を検出するように構成され、
前記温度算出部は、前記マイクロ波共振器で検出される共振ピーク電圧及び共振周波数を説明変数とし、前記凍結対象物の内部温度を目的変数として回帰分析を行って検量線を算出し、該検量線に前記マイクロ波共振器で検出された前記共振ピーク電圧及び共振周波数を当てはめて、凍結状態にある前記バラ凍結食品の内部温度を予測し、この予測された前記バラ凍結食品の内部温度と、実測された前記バラ凍結食品の内部温度との相関の程度を表す値が所定値よりも小さいときに前記複数のバラ凍結食品を収容する容器内での該複数のバラ凍結食品の密度を上げるために前記複数のバラ凍結食品を再充填させる
ことを特徴とする凍結対象物の内部温度測定装置。
【請求項15】
前記凍結対象物のマイクロ波照射方向における厚さは、50mm以下である
ことを特徴とする請求項9から14の何れか一項に記載の凍結対象物の内部温度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、凍結した冷凍食品等の凍結対象物の内部温度を測定する凍結対象物の内部温度測定方法及び凍結対象物の内部温度測定装置に係る。
【背景技術】
【0002】
冷凍食品等の凍結工程を管理する上で、凍結対象物の内部温度を把握することは極めて重要な項目である。そこで、従来より、針型の温度センサを凍結対象物の内部に差し込んで計測する方法や、赤外センサで凍結対象物の表面温度を計測する方法や、水の物理状態変化に伴う電気容量の変化を利用した計測方法が提案されている(非特許文献1参照、非特許文献2参照)。また、凍結対象物内の水分が相転移したか否かについて、マイクロ波帯の電磁波を用いて判定する方法も提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
針型の温度センサを用いる場合には、事前に温度センサを凍結対象物に差し込む必要がある。また、凍結対象物が固形食品である場合には、差し込み位置に針穴が残り、異物の混入や衛生面から検査した食品を製品として出荷することができなくなる。このため、針型の温度センサでは、食品の凍結工程において食品内部温度の全数検査が不可能である。
【0004】
赤外センサを用いる場合には、凍結対象物の表面温度を計測することができるが、凍結対象物の内部温度を計測することができない。また、ラップ等の包装材が存在する場合には、食品の表面温度を正確に計測することができなくなる。また、非特許文献1および2に記載の電気容量の変化を利用するものは、特殊な計測装置を利用するだけでなく、計測条件が詳細に既定されており、凍結対象物を正確な条件下にて設置・計測しなければならず、食品の凍結工程において食品温度の全数検査は不向きである。
【0005】
また、特許文献1に記載の電磁波を利用するものは、通信手段から発信される所定の周波数の電磁波を、水分を含む物体に照射し、照射された電磁波のうち物体を透過する電磁波を無線タグで受信するように構成し、この透過した電磁波を無線タグが受信すると、無線タグは応答信号を通信手段に発信するように構成されている。電磁波が水分にどの程度吸収されどの程度透過するかは、水分が液体相の水であるか固体相の氷や気体相の水蒸気であるかによって大きく変化し、それに応じて通信手段が無線タグと通信可能であるか否かが急激に変化する。このため、通信手段が無線タグと通信可能であるかに基づいて、水分が相転移したか否かを判定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献1】日本食品科学工学会誌、2003、Vol.50、No8、p.356−360
【非特許文献2】日本冷凍空調学会論文集、1999、Vol.16、p.23−35
【特許文献1】特開2006−266688号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の相転移の判定方法では、通信手段が無線タグと通信可能であるかに基づいて、物質内の水分の相転移の有無の判定をすることができるが、物質内の温度を知ることは難しい。特に、凍結した冷凍食品等の凍結工程を管理する上で、凍結対象物の内部温度の把握を実現するためには、新たな内部温度測定方法及び内部温度測定装置の開発が望まれている。
【0008】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも幾つかの実施形態は、マイクロ波共振器を利用して、凍結した冷凍食品等の凍結対象物の内部温度を測定可能な凍結対象物の内部温度測定方法及び凍結対象物の内部温度測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の幾つかの実施形態に係わる凍結対象物の内部温度測定方法は、
凍結対象物の内部温度測定方法であって、
マイクロ波共振器を用いて生成されるマイクロ波の共振磁場に前記凍結対象物を配置する配置ステップと、
前記マイクロ波共振器を用いて凍結状態の前記凍結対象物の共振状態を検出するとともに、温度測定器を用いて前記凍結対象物の内部温度を検出する状態検出ステップと、
前記状態検出ステップで検出される共振状態を説明変数とし、前記温度測定器で検出される前記凍結対象物の内部温度を目的変数として回帰分析を行って検量線を算出する検量線算出ステップと、
前記検量線算出ステップで算出された前記検量線に、前記検出ステップで検出された共振状態を当てはめて、凍結状態にある前記凍結対象物の内部温度を算出する温度算出ステップと、
を備えるように構成される。
【0010】
本願の発明者は、凍結対象物の水分が液体相の水であるか固体相の氷であるかによって、凍結対象物へのマイクロ波の吸収・透過が大きく変化し、これに応じてマイクロ波共振器の共振周波数や共振ピーク電圧が変化する特性に基づいて、共振ピーク電圧と凍結対象物の内部温度との間に相関があることを発見した。この発見から、本願の発明者は、共振ピーク電圧と凍結対象物の内部温度との相関を予め定めておけば、検出される共振ピーク電圧に対応する凍結対象物の内部温度を、凍結対象物の内部温度として算出することが可能になることを見出した。また、この発見から、本願の発明者は、凍結対象物の内部温度を予測するにあたり、凍結対象物の共振状態を説明変数とし、凍結対象物の内部温度を目的変数として回帰分析を行って算出される検量線から凍結対象物の内部温度を予測することができることを見出した。そこで、検量線に、状態検出ステップで検出された共振状態を当てはめることで、凍結状態にある凍結対象物の内部温度を算出することができる。よって、マイクロ波共振器を利用して、冷凍食品等の凍結対象物の内部温度を測定可能な凍結対象物の内部温度測定方法を実現できる。
【0011】
また、幾つかの実施形態では、
前記マイクロ波共振器により生成されるマイクロ波の共振磁場域が前記凍結対象物の全域を覆うように、前記凍結対象物の投影面積より前記マイクロ波共振器投影面積が小に設定されているように構成される。
【0012】
この場合、凍結対象物の投影面積より前記マイクロ波共振器投影面積が小さいので、マイクロ波共振器により生成されるマイクロ波が凍結対象物を透過せずに検出されるマイクロ波を無くすことができる。このため、凍結対象物の共振状態を確実に検出することができる。
【0013】
また、幾つかの実施形態では、
前記凍結対象物は、中身が詰まった中実食品であり、
前記状態検出ステップで検出される前記共振状態は、凍結状態の前記凍結対象物の共振ピーク電圧であり、
前記温度算出ステップは、前記検量線算出ステップで算出される前記検量線に、前記状態検出ステップで検出される前記共振ピーク電圧を当てはめて、凍結状態にある前記凍結対象物の内部温度を予測するように構成される。
【0014】
この場合、検量線に、状態検出ステップで検出される共振ピーク電圧を当てはめることで、凍結状態の中身が詰まった中実食品の内部温度を予測することができる。
【0015】
また、幾つかの実施形態では、
前記状態検出ステップは、前記マイクロ波共振器を用いて、前記凍結対象物の共振周波数を検出する共振周波数検出ステップ、をさらに備え、
前記検量線算出ステップは、前記凍結対象物の内部温度と共振周波数との相関を規定する第2の検量線に、前記共振周波数検出ステップで検出された前記共振周波数を当てはめることで、前記凍結対象物が凍結状態にあるか否かを判定する凍結状態判定ステップ、をさらに備え、
前記温度算出ステップでは、前記凍結状態判定ステップにおいて前記凍結対象物が凍結状態にあると判定されたときの前記共振ピーク電圧の検出値を、前記凍結対象物の内部温度と共振ピーク電圧との相関を規定する第1の検量線に当てはめることで、前記凍結対象物の内部温度を算出するように構成される。
【0016】
本願の発明者は、凍結対象物の水分が液体相の水であるか固体相の氷であるかによって、凍結対象物へのマイクロ波の吸収・透過が大きく変化し、これに応じてマイクロ波共振器の共振周波数や共振ピーク電圧が変化する特性に基づいて、水分が相転移状態にある場合には、共振周波数と凍結対象物の内部温度との間に相関があることを発見した。この相関は、ある共振周波数までは凍結対象物の内部温度は一定となり、ある共振周波数よりも高い共振周波数になると、内部温度が暫時低くなるような関係を有している。このため、本願の発明者は、共振周波数と凍結対象物の内部温度との相関に基づいて、内部温度が暫時低くなり始める共振周波数を超えると、凍結対象物は凍結状態であることを見出した。そこで、請求項4に記載の発明の温度算出ステップでは、凍結状態判定ステップにおいて凍結対象物が凍結状態にあると判定されたときの共振ピーク電圧の検出値を第1の検量線に当てはめて、凍結対象物の内部温度を算出するので、算出される内部温度は、凍結状態にある凍結対象物が対象となり、凍結状態にある凍結対象物の内部温度を正確に算出することができる。
【0017】
また、幾つかの実施形態では、
前記凍結対象物は、搬送ラインによって搬送される冷凍食品であり、
前記状態検出ステップでは、前記搬送ラインによって搬送中の前記冷凍食品に対して前記マイクロ波共振器を用いた前記共振ピーク電圧の検出を行い、
前記温度算出ステップでは、前記搬送ラインで搬送中の前記冷凍食品の内部温度を算出する。
【0018】
この場合、凍結対象物は、搬送ラインによって搬送される冷凍食品であり、状態検出ステップでは、搬送ラインによって搬送中の冷凍食品に対してマイクロ波共振器を用いた共振ピーク電圧の検出を行い、温度算出ステップでは、搬送ラインで搬送中の冷凍食品の内部温度を算出するので、冷凍食品の凍結工程において、搬送ラインによって搬送される冷凍食品の食品温度の全数検査を可能にすることができる。よって、冷凍食品の凍結工程の内部温度の管理精度をより高めることができる。
【0019】
また、幾つかの実施形態では、
前記状態検出ステップでは、非包装状態又はマイクロ波を透過する部材によって包装された状態における前記冷凍食品の前記共振ピーク電圧を検出する。
【0020】
この場合、状態検出ステップでは、非包装状態又はマイクロ波を透過する部材によって包装された状態における冷凍食品の共振ピーク電圧を検出するので、包装された冷凍食品の共振ピーク電圧を検出することができるとともに、包装される前の非包装状態の冷凍食品の共振ピーク電圧を検出することができる。このため、冷凍食品の凍結工程の途中において、冷凍食品の共振ピーク電圧を検出することができる。
【0021】
また、幾つかの実施形態では、
前記凍結対象物のマイクロ波照射方向における厚さは、50mm以下であるように構成される。
【0022】
凍結対象物の凍結工程では、凍結対象物は外側から凍結し始めるので、凍結対象物の内部は凍結しにくい。このため、凍結対象物の内部温度を測定することができれば、凍結対象物の凍結状態を予測することができる。このため、マイクロ波が凍結状態の凍結対象物の中心部に到達可能な距離を25mmとすると、凍結対象物のマイクロ波照射方向における厚さを、50mm以下とすることが好ましい。よって、請求項7に記載の発明は、凍結対象物のマイクロ波照射方向における厚さを50mm以下とするので、凍結対象物の内部の中心にマイクロ波を入射させることができ、凍結対象物の内部温度を確実に測定することができる。なお、凍結対象物の解凍は、凍結対象物の外側から解凍し始めて内側が最後に解凍するので、解凍して外側に水が生じると、マイクロ波は水に吸収されて凍結対象物の内部に届かない。このため、凍結対象物の解凍工程においては、本願の内部温度測定方法は適用できない。
【0023】
また、幾つかの実施形態では、
前記凍結対象物は、小さな粒状に形成された複数のバラ凍結食品であり、
複数の前記バラ凍結食品を容器内に充填する充填ステップを備え、
前記状態検出ステップで検出される共振状態は、凍結状態の前記凍結対象物の共振ピーク電圧及び共振周波数であり、
前記温度算出ステップは、前記検量線算出ステップで算出された前記検量線に、前記状態検出ステップで検出された前記共振ピーク電圧及び共振周波数を当てはめて、凍結状態にある前記バラ凍結食品の内部温度を予測し、
この予測された前記バラ凍結食品の内部温度と、実測された前記バラ凍結食品の内部温度との相関の程度を表す値が所定値よりも小さいときに前記複数のバラ凍結食品を充填した前記容器に該複数のバラ凍結食品を再充填して密度を高める再充填ステップを更に備えるように構成される。
【0024】
この場合、凍結対象物は、小さな粒状に形成された複数のバラ凍結食品であるので、中実物と比較して、バラ凍結食品間の隙間が大きくなると、隙間を通るマイクロ波がマイクロ波共振器で検出されて、凍結対象物の凍結状態を検出できなくなる虞がある。そこで、本願の発明者は、予測されたバラ凍結食品の内部温度と、実測されたバラ凍結食品の内部温度との相関の程度を表す値が所定値よりも小さいときに複数のバラ凍結食品を充填した容器に該複数のバラ凍結食品を再充填して密度を高める再充填ステップを更に設けた。このため、バラ凍結食品間の隙間が無くなり、複数のバラ凍結食品の凍結状態の検出が可能になる。よって、マイクロ波共振器を利用して、バラ凍結食品の内部温度を測定可能な凍結対象物の内部温度測定方法を実現できる。
【0025】
また、本発明の幾つかの実施形態に係わる凍結対象物の内部温度測定装置は、
凍結対象物の内部温度測定装置であって、
凍結状態の前記凍結対象物の共振状態を検出するためのマイクロ波共振器と、
凍結状態にある前記凍結対象物の共振状態を説明変数とし、前記凍結対象物の内部温度を目的変数として回帰分析を行って算出された検量線に、前記マイクロ波共振器によって検出された前記共振状態を当てはめることで、凍結状態にある前記凍結対象物の内部温度を算出するように構成された温度算出部と、を備え、
前記マイクロ波共振器の投影面積が前記凍結対象物の投影面積よりも小に設定されているように構成される。
【0026】
本願の発明者は、凍結対象物の水分が液体相の水であるか固体相の氷であるかによって、凍結対象物へのマイクロ波の吸収・透過が大きく変化し、これに応じてマイクロ波共振器の共振周波数や共振ピーク電圧が変化する特性に基づいて、共振ピーク電圧と凍結対象物の内部温度との間に相関があることを発見した。この発見から、本願の発明者は、共振ピーク電圧と凍結対象物の内部温度との相関を予め定めておけば、検出される共振ピーク電圧に対応する凍結対象物の内部温度を、凍結対象物の内部温度として算出することが可能になることを見出した。また、この発見から、本願の発明者は、凍結対象物の内部温度を予測するにあたり、凍結対象物の共振状態を説明変数とし、凍結対象物の内部温度を目的変数として回帰分析を行って算出される検量線から凍結対象物の内部温度を予測することができることを見出した。そこで、検量線に、マイクロ波共振器で検出された共振状態を当てはめることで、凍結状態にある前記凍結対象物の内部温度を算出することができる。よって、マイクロ波共振器を利用して、冷凍食品等の凍結対象物の内部温度を測定可能な凍結対象物の内部温度測定装置を実現できる。また、凍結対象物の投影面積よりマイクロ波共振器投影面積が小さいので、マイクロ波共振器により生成されるマイクロ波が凍結対象物を透過せずに検出されるマイクロ波を無くすことができる。このため、凍結対象物の共振状態を確実に検出することができる。
【0027】
また、幾つかの実施形態では、
前記凍結対象物は、中身が詰まった中実食品であり、
前記マイクロ波共振器は、凍結状態の前記凍結対象物の共振ピーク電圧を検出するように構成され、
前記温度算出部は、凍結状態にある前記凍結対象物の内部温度と共振ピーク電圧との相関を規定する第1の検量線に、前記マイクロ波共振器によって検出された前記共振ピーク電圧を当てはめることで、凍結状態にある前記凍結対象物の内部温度を算出するように構成されている。
【0028】
この場合、検量線に、マイクロ波共振器で検出される共振ピーク電圧を当てはめることで、凍結状態の中身が詰まった中実食品の内部温度を予測することができる。
【0029】
また、幾つかの実施形態では、
前記マイクロ波共振器は、前記凍結対象物の共振周波数を検出するように構成され、
前記凍結対象物の内部温度と前記共振周波数との相関を規定する第2の検量線に、前記マイクロ共振器によって検出された前記共振周波数を当てはめることで、前記凍結対象物が凍結状態にあるか否かを判定するように構成された凍結状態判定部、をさらに備え、
前記温度算出部は、前記凍結状態判定部によって前記凍結対象物が凍結状態にあると判定されたときの前記共振ピーク電圧の検出値を前記第1の検量線に当てはめることで、凍結状態にある前記凍結対象物の内部温度を算出するように構成されている。
【0030】
この場合、本願の発明者は、凍結対象物の水分が液体相の水であるか固体相の氷であるかによって、凍結対象物へのマイクロ波の吸収・透過が大きく変化し、これに応じてマイクロ波共振器の共振周波数や共振ピーク電圧が変化する特性に基づいて、水分が相転移状態にある場合には、共振周波数と凍結対象物の内部温度との間に相関があることを発見した。この相関は、ある共振周波数までは凍結対象物の内部温度は一定となり、ある共振周波数よりも高い共振周波数になると、内部温度が暫時低くなるような関係を有している。このため、本願の発明者は、共振周波数と凍結対象物の内部温度との相関に基づいて、内部温度が暫時低くなり始める共振周波数を超えると、凍結対象物は凍結状態であることを見出した。そこで、請求項11に記載の発明の温度算出部は、凍結状態判定部によって凍結対象物が凍結状態にあると判定されたときの共振ピーク電圧の検出値を第1の検量線に当てはめて、凍結対象物の内部温度を算出するので、算出される内部温度は、凍結状態にある凍結対象物が対象となり、凍結状態にある凍結対象物の内部温度を正確に算出することができる。
【0031】
また、幾つかの実施形態では、
前記凍結対象物は、搬送ラインによって搬送される冷凍食品であり、
前記マイクロ波共振器は、前記搬送ラインによって搬送中の前記冷凍食品の前記共振ピーク電圧を検出するように構成され、
前記温度算出部は、前記搬送ラインで搬送中の前記冷凍食品の内部温度を算出するように構成されている。
【0032】
この場合、凍結対象物は、搬送ラインによって搬送される冷凍食品であり、マイクロ波共振器は、搬送ラインによって搬送中の冷凍食品の共振ピーク電圧を検出し、温度算出部は、搬送ラインで搬送中の冷凍食品の内部温度を算出するので、冷凍食品の凍結工程において、搬送ラインによって搬送される冷凍食品の食品温度の全数検査を可能にすることができる。よって、冷凍食品の凍結工程の内部温度の管理精度をより高めることができる。
【0033】
また、幾つかの実施形態では、
前記マイクロ波共振器は、非包装状態又はマイクロ波を透過する部材によって包装された状態における前記冷凍食品の前記共振ピーク電圧を検出するように構成されている。
【0034】
この場合、マイクロ波共振器は、非包装状態又はマイクロ波を透過する部材によって包装された状態における冷凍食品の共振ピーク電圧を検出するので、包装された冷凍食品の共振ピーク電圧を検出することができるとともに、包装される前の非包装状態の冷凍食品の共振ピーク電圧を検出することができる。このため、冷凍食品の凍結工程の途中において、冷凍食品の共振ピーク電圧を検出することができる。
【0035】
また、幾つかの実施形態では、
前記凍結対象物は、小さな粒状に形成された複数のバラ凍結食品であり、
前記マイクロ波共振器は、凍結状態の前記凍結対象物の共振ピーク電圧及び共振周波数を検出するように構成され、
前記温度算出部は、前記マイクロ波共振器で検出される共振ピーク電圧及び共振周波数を説明変数とし、前記凍結対象物の内部温度を目的変数として回帰分析を行って検量線を算出し、該検量線に前記マイクロ波共振器で検出された前記共振ピーク電圧及び共振周波数を当てはめて、凍結状態にある前記バラ凍結食品の内部温度を予測し、この予測された前記バラ凍結食品の内部温度と、実測された前記バラ凍結食品の内部温度との相関の程度を表す値が所定値よりも小さいときに前記複数のバラ凍結食品を収容する容器内での該複数のバラ凍結食品の密度を上げるために前記複数のバラ凍結食品を再充填させるように構成される。
【0036】
この場合、凍結対象物は、小さな粒状に形成された複数のバラ凍結食品であるので、中実物と比較して、容器内に収容されたバラ凍結食品間の隙間が大きくなると、隙間を通るマイクロ波が検出さて、バラ凍結食品の凍結状態を検出できなくなる虞がある。そこで、本願の発明者は、予測されたバラ凍結食品の内部温度と、実測されたバラ凍結食品の内部温度との相関の程度を表す値が所定値よりも小さいときに複数のバラ凍結食品を収容する容器内での該複数のバラ凍結食品の密度を上げるために複数のバラ凍結食品を再充填させるようにした。このため、バラ凍結食品間の隙間が小さくなり、隙間を通るマイクロ波が検出される虞がなくなる。よって、マイクロ波共振器を利用して、バラ凍結食品の内部温度を測定可能な凍結対象物の内部温度測定装置を実現できる。
【0037】
また、幾つかの実施形態では、
前記凍結対象物のマイクロ波照射方向における厚さは、50mm以下であるように構成される。
【0038】
凍結対象物の凍結工程では、凍結対象物は外側から凍結し始めるので、凍結対象物の内部は凍結しにくい。このため、凍結対象物の内部温度を測定することができれば、凍結対象物の凍結状態を予測することができる。このため、マイクロ波が凍結状態の凍結対象物の中心部に到達可能な距離を25mmとすると、凍結対象物のマイクロ波照射方向における厚さを、50mm以下とすることが好ましい。よって、請求項15に記載の発明は、凍結対象物のマイクロ波照射方向における厚さを50mm以下とするので、凍結対象物の内部の中心にマイクロ波を入射させることができ、凍結対象物の内部温度を確実に測定することができる。なお、凍結対象物の解凍は、凍結対象物の外側から解凍し始めて内側が最後に解凍するので、解凍して外側に水が生じると、マイクロ波は水に吸収されて凍結対象物の内部に届かない。このため、凍結対象物の解凍工程においては、本願の内部温度測定装置は適用できない。
【発明の効果】
【0039】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態によれば、凍結した冷凍食品等の凍結対象物の内部温度を測定可能な凍結対象物の内部温度測定方法及び凍結対象物の内部温度測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の一実施形態に係わる凍結対象物の内部温度測定装置の構成を説明する構成図である。
図2】内部温度測定装置の一部であるマイクロ波空洞共振器の概略構成図である。
図3】マイクロ波空洞共振器内に試料を入れた場合と入れない場合における共振特性を説明するためのグラフである。
図4】凍結対象物の実測内部温度と共振周波数との相関を規定する検量線を示したグラフである。
図5】凍結状態にある凍結対象物の実測内部温度と共振ピーク電圧との相関を規定する第1の検量線を示すグラフである。
図6】凍結状態及び非凍結状態にある凍結対象物の実測内部温度と共振ピーク電圧との関係を示すグラフである。
図7】凍結状態にある凍結対象物の実測内部温度と第1の検量線から予測された予想内部温度との関係を示すグラフである。
図8】第1の検量線及び第2の検量線を求めるためのフローチャートである。
図9】凍結対象物の内部温度を求めるためのフローチャートである。
図10】マイクロ波空洞共振器に包装容器で覆われた餡かけの冷凍食品を配置した概略構成図である。
図11】凍結状態にある餡かけの冷凍食品の実測内部温度と第1の検量線から予測された予想内部温度との関係を示すグラフである。
図12】マイクロ波空洞共振器に凍結状態にあるハンバーグの冷凍食品を配置した概略構成図である。
図13】凍結状態にあるハンバーグの冷凍食品の実測内部温度と第1の検量線から予測された予想内部温度との関係を示すグラフである。
図14】マイクロ波空洞共振器に凍結状態にあるホタテ貝柱の冷凍食品を配置した概略構成図である。
図15】凍結状態にあるホタテ貝柱の冷凍食品の実測内部温度と第1の検量線から予測された予想内部温度との関係を示すグラフである。
図16】同図(a)は、マイクロ波空洞共振器に粒状の冷凍食品(バラ凍結食品)を容器内に充填した概略構成図であり、同図(b)は、粒状の冷凍食品が密度の高い状態で容器内に充填された状態の概略構成図であり、同図(c)は、粒状の冷凍食品が密度の低い状態で容器内に収容された状態の概略構成図である。
図17】回帰分析により検量線(予測式)を求めるためのフローチャートである。
図18】回帰分析により求めた検量線(予測式)を用いて粒状の冷凍食品の内部温度を求めるためのフローチャートである。
図19】凍結状態にある粒状の冷凍食品の実測内部温度と第1の検量線から予測された予想内部温度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、添付図面に従って本発明の凍結対象物の内部温度測定方法及び凍結対象物の内部温度測定装置の実施形態について、図1図19を参照しながら説明する。本実施形態は、凍結対象物を冷凍食品とした場合の内部温度測定方法及び内部温度測定装置について、以下説明する。冷凍食品は、例えば、グラタンを紙製の容器内に収容されたものであり、グラタンのマイクロ波照射方向における厚さは、50mm以下とする。また、冷凍食品は、樹脂で包装された餡かけ、ハンバーグ、ホタテ貝柱、えんどう豆等でもよい。なお、この実施形態に記載されている構成部品の材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。先ず、本発明の凍結対象物の内部温度測定方法を説明する前に、凍結対象物の内部温度測定装置について説明する。
【0042】
凍結対象物の内部温度測定装置1は、図1に示すように、マイクロ波を発信するマイクロ波発振器3、サーキュレータ5、減衰器7,8、マイクロ波を共振状態にするマイクロ波共振器10、マイクロ波を検出するマイクロ波検出器30、データ処理器40と、を有して構成される。
【0043】
マイクロ波発振器3から発信されたマイクロ波は、同軸ケーブル50aを介してサーキュレータ5に供給される。サーキュレータ5は、マイクロ波発振器3から発信されたマイクロ波が反射してマイクロ波発振器3を損傷させる虞を防止するために、反射するマイクロ波がマイクロ波発振器3側へ伝播するのを規制する機能を有している。サーキュレータ5から出力されたマイクロ波は、同軸ケーブル50bを介して減衰器7に供給されてノイズが除去される。ノイズが除去されたマイクロ波は、同軸ケーブル50cを介してマイクロ波共振器10に供給される。
【0044】
本実施形態では、図2に示すように、マイクロ波共振器10上に容器61内に収容された冷凍食品60(グラタン)が載置される。容器61は紙製であって皿状に形成され、マイクロ波の透過が可能である。なお、容器61は皿状に限るものではなく、冷凍食品60を内部に収容可能な袋状または非金属製トレイでもよい。
【0045】
このように構成されたマイクロ波共振器10内に同軸ケーブル50cを介してマイクロ波を導入すると、マイクロ波はマイクロ波共振器10内で反射してある周波数で共振する。このマイクロ波の共振磁場に冷凍食品60を挿入すると、図3に示すように、共振ピーク電圧が変化するとともに、共振周波数が変化(f0→f1)する。この共振ピーク電圧及び共振周波数が変化したマイクロ波を測定することで、詳細は後述するが、冷凍食品の内部の凍結状態や内部温度を推定することができる。なお、図3は、縦軸が共振ピーク電圧を示し、横軸が共振周波数fを示している。
【0046】
マイクロ波共振器10から出力されるマイクロ波は、図1に示すように、同軸ケーブル50dを介して減衰器8に供給されてノイズが除去される。ノイズが除去されたマイクロ波は、マイクロ波検出器30によって検出される。マイクロ波検出器30で検出されたマイクロ波の検出信号は、データ処理器40に送られる。
【0047】
データ処理器40は、例えばパーソナルコンピュータ等の電子計算機であり、凍結状態判定部41と、温度算出部43とを備える。凍結状態判定部41は、図4に示すように、凍結対象物の内部温度(実測内部温度)と共振周波数との相関を規定する実線で示した第2の検量線51に、マイクロ波共振器10(図1参照)によって検出された共振周波数を当てはめることで、凍結対象物が凍結状態にあるか否かを判定する。ここで、凍結対象物の内部温度とは、凍結対象物の内部温度を実際に測定したときの実測内部温度である。
【0048】
図4から、共振周波数が2.2〜2.3MHz付近までは周波数変化に対して内部温度が変化していないが、この領域を通過した付近より急激に温度変化が生じていることより、潜熱帯を通過したものと推察される。即ち、共振周波数が2.2〜2.3MHz付近までに相転移が生じていると予測され、この指標を用いることで相転移判別が可能であると考えられる。第2の検量線51のデータは、測定対象となる凍結対象物(冷凍食品)と同一物に対して予め準備されてデータ処理器40(図1参照)内に記憶される。
【0049】
凍結状態判定部41(図1参照)は、凍結対象物の相転移が完了する温度に対して共振周波数が変化し始める点(以下、「凍結点R」と記す。)に対応する共振周波数frに対して、測定された共振周波数が同じ大きさか又は大きい場合に、凍結対象物が凍結状態にあると判定する。また、凍結状態判定部41(図1参照)は、凍結点Rに対応する共振周波数frに対して、測定された共振周波数が小さい場合に、凍結対象物が非凍結状態にあると判定する。
【0050】
温度算出部43(図1参照)は、図5に示すように、凍結状態にある凍結対象物の内部温度(実測内部温度)と共振ピーク電圧との相関を規定する第1の検量線53に、マイクロ波共振器10によって検出された共振ピーク電圧を当てはめることで、凍結状態にある凍結対象物の内部温度を求める(推定する)。ここで、凍結状態にある凍結対象物の内部温度とは、凍結対象物の内部温度を実際に測定したときの実測内部温度である。なお、図5において、□は同一内容物(例えば、グラタン)の異なる凍結対象物の実測値を示し、実線が第1の検量線53を示している。第1の検量線53は複数の実測値の略平均値を通るように設けられている。この第1の検量線53のデータは、測定対象となる凍結対象物(冷凍食品)と同一物に対して予め準備されてデータ処理器40(図1参照)内に記憶される。凍結対象物の内部温度の測定は、例えば、光ファイバー温度計を用い、この温度計の先端部を凍結対象物の中心部に設置して測定する。
【0051】
凍結対象物の内部温度は、マイクロ波共振器10によって検出された共振ピーク電圧を第1の検量線53に当てはめることで求められる。例えば、共振ピーク電圧が3.0mVである場合には、凍結対象物の内部温度は約−9.3℃と推定される。
【0052】
なお、本願の発明者は、凍結対象物の水分が液体相の水であるか固体相の氷であるかによって、凍結対象物へのマイクロ波の吸収・透過が大きく変化し、これに応じてマイクロ波共振器の共振周波数や共振ピーク電圧が変化する特性に基づいて、共振ピーク電圧と凍結対象物の内部温度との間の関係を調べた。従って、図6に示すように、凍結対象物が非凍結状態である場合(内部温度が約−2.5℃以上の場合)には、共振ピーク電圧と凍結対象物の内部温度との間に相関がないが、凍結対象物が凍結状態である場合(内部温度が約−2.5℃以下の場合)には、共振ピーク電圧と凍結対象物の内部温度との間に相関があることを発見した。この発見から、本願の発明者は、共振ピーク電圧と凍結対象物の内部温度との相関を予め定めておけば、検出される共振ピーク電圧に対応する凍結対象物の内部温度を、凍結対象物の内部温度として算出することが可能になることを見出した。
【0053】
なお、図7には、検出された共振ピーク電圧から第1の検量線53を用いて凍結対象物の内部温度を推定したときの予測内部温度と、凍結対象物の実際の内部温度を実測した実測内部温度との関係を示すグラフが記載されている。このグラフから予測内部温度と実測内部温度が略一致することが解る。
【0054】
次に、凍結対象物の内部温度測定装置1によって、凍結対象物の内部温度を測定する内部温度測定方法について、図8及び図9を参照しながら説明する。先ず、凍結対象物の内部温度測定方法を説明する前に、第1の検量線及び第2の検量線を求める方法について説明する。図1及び図8に示すように、検査対象物(冷凍食品60)と同じ検査対象物(冷凍食品)をマイクロ波共振器10内に設置し、マイクロ波発振器3から発信されたマイクロ波をマイクロ波共振器10内の冷凍食品60に照射する(ステップ100)。
【0055】
冷凍食品60にマイクロ波が照射されて透過したマイクロ波(透過波)は、同軸ケーブル50d、50eを通ってマイクロ波検出器30によって検出される。この検出されたマイクロ波から作業者等によって共振ピーク電圧と共振周波数が求められる(ステップ101)。なお、ステップ101では、複数の冷凍食品60を準備し、それぞれの冷凍食品60に対して前述した方法で共振ピーク電圧と共振周波数を求めるとともに、実際の内部温度を測定する。内部温度の測定は、例えば、光ファイバー温度計を使用する。
【0056】
そして、共振周波数を横軸とし内部温度を縦軸として、求められた共振周波数及び実測内部温度から第1の検量線52(図4参照)を作成する(ステップ102)。そして、共振ピーク電圧を縦軸とし実測内部温度を横軸として、求められた共振ピーク電圧及び実測内部温度から第2の検量線51(図5参照)を作成する(ステップ103)。なお、前述した実施形態では、ステップ102で第2の検量線51を作成し、ステップ103で第1の検量線53を作成したが、ステップ102で第1の検量線53を作成し、ステップ103で第2の検量線51を作成するようにしてもよい。
【0057】
次に、凍結対象物の内部温度測定装置による凍結対象物の内部温度測定方法について説明する。図1及び図9に示すように、冷凍食品60(図2参照)をマイクロ波共振器10内に設置し、マイクロ波発振器3から発信されたマイクロ波をマイクロ波共振器10内の冷凍食品60に照射する(ステップ200)。
【0058】
冷凍食品60にマイクロ波が照射されて透過したマイクロ波(透過波)は、マイクロ波検出器30によって検出される。この検出されたマイクロ波から作業者等によって共振ピーク電圧と共振周波数が求められる(ステップ201)。なお、説明の都合上、ステップ201を、共振ピーク電圧検出ステップ(状態検出ステップ)及び共振周波数検出ステップと記す。
【0059】
データ処理器40の凍結状態判定部41は、ステップ201の共振ピーク電圧検出ステップ(状態検出ステップ)で求められた共振ピーク周波数を第2の検量線51(図4参照)に当てはめることで、冷凍食品60が凍結状態にあるか否かを判定する(ステップ202、凍結状態判定ステップ)。凍結状態判定ステップで冷凍食品60が凍結状態にあると判定されると、ステップ204に移行し、凍結状態判定ステップで冷凍食品60が非凍結状態にあると判定されると、ステップ203に移行して、冷凍食品60が非凍結状態にある旨が告知される。告知は、例えばデータ処理器40に設けられた表示部(図示せず)に表示されたり、データ処理器40に設けられたスピーカ(図示せず)から音声で知らせたりしてもよい。
【0060】
凍結状態判定ステップで冷凍食品60が凍結状態にあると判定されると、第1の検量線53に、共振ピーク電圧検出ステップ(状態検出ステップ)で検出された共振ピーク電圧を当てはめることで、凍結状態にある冷凍食品60の内部温度が求められる(ステップ204、温度算出ステップ)。このため、凍結状態の冷凍食品60に温度センサを刺すことなく、非破壊にて内部温度を高い精度で推定することができる。
【0061】
このように、凍結状態にある冷凍食品60の内部温度と共振ピーク電圧との相関を規定する第1の検量線53に、共振ピーク電圧検出ステップ(状態検出ステップ)で検出された共振ピーク電圧を当てはめることで、凍結状態にある冷凍食品60の内部温度を算出することができる。よって、凍結した冷凍食品60等の凍結対象物の内部温度を測定可能な凍結対象物の内部温度測定方法を実現できる。
【0062】
また、温度算出ステップでは、凍結状態判定ステップにおいて冷凍食品60が凍結状態にあると判定されたときの共振ピーク電圧の検出値を第1の検量線53に当てはめて、冷凍食品60の内部温度を算出するので、算出される内部温度は、凍結状態にある冷凍食品60が対称となり、凍結状態にある冷凍食品60の内部温度を正確に算出することができる。
【0063】
また、冷凍食品60(グラタン)のマイクロ波照射方向における厚さは50mm以下であるので、冷凍食品60の内側の中心にマイクロ波を入射させるとともに、さらにマイクロ波を進ませて透過させることができる。よって、冷凍食品60の内部温度の計測の精度を向上させることができる。
【0064】
なお、凍結対象物である冷凍食品60(グラタン)は、搬送ラインによって搬送されるものとし、共振ピーク電圧検出ステップ(状態検出ステップ)では、搬送ラインによって搬送中の冷凍食品60に対してマイクロ波共振器10を用いた共振ピーク電圧の検出を行い、温度算出ステップでは、搬送ラインで搬送中の冷凍食品60の内部温度を算出するようにしてもよい。この場合には、冷凍食品60の凍結工程において、搬送ラインによって搬送される冷凍食品の食品温度の全数検査を可能にすることができる。よって、冷凍食品60の凍結工程における内部温度の管理精度をより高めることが可能になる。
【0065】
また、前述した実施形態では、マイクロ波共振器10としてマイクロ波空洞共振器を用いた場合を示したが、凍結対象物に先端部を接触させた状態でマイクロ波を発信して凍結対象物に照射し、反射するマイクロ波を受信可能なプローブ型のマイクロ波共振器を用いてもよい。
【0066】
また、前述した実施形態では、冷凍食品60として紙製の容器内に収容されたグラタンを示したが、プラスチック系包装材料で包装された餡かけ、ハンバーグ、ホタテ貝柱でもよい。図10は、ナイロン製の包装62で覆われた餡かけの冷凍食品60がマイクロ波共振器10上に配置された場合を示している。包装62は、マイクロ波を透過可能な材料であればよく、例えば、リニヤ・低密度ポリエチレン、延伸ナイロン、Kコートナイロン、無延伸ナイロン、二軸延伸ポリプロピレン、ポリエステル、Kコートポリエステルである。また、餡かけ冷凍食品60の大きさは、マイクロ波共振器10により生成されるマイクロ波の共振磁場域よりも大きく、餡かけ冷凍食品60の高さ方向の寸法hは50mm以下である。
【0067】
図11には、検出された共振ピーク電圧から第1の検量線53(図5参照)を用いて包装された凍結状態の餡かけの冷凍食品60(凍結対象物)の内部温度を推定したときの予測内部温度と、冷凍食品60(凍結対象物)の実際の内部温度を実測した実測内部温度との関係を示すグラフが記載されている。このグラフから予測内部温度と実測内部温度が略一致することが解る。
【0068】
また、図12には、凍結状態のハンバーグの冷凍食品60がマイクロ波共振器10上に配置された場合を示している。ハンバーグの冷凍食品60は包装されていない。ハンバーグの冷凍食品60の大きさは、マイクロ波共振器10により生成されるマイクロ波の共振磁場域よりも大きく、ハンバーグの冷凍食品60の高さ方向の寸法hは50mm以下である。
【0069】
図13には、検出された共振ピーク電圧から第1の検量線53(図5参照)を用いて凍結状態のハンバーグの冷凍食品60(凍結対象物)の内部温度を推定したときの予測内部温度と、冷凍食品60(凍結対象物)の実際の内部温度を実測した実測内部温度との関係を示すグラフが記載されている。このグラフから予測内部温度と実測内部温度が略一致することが解る。
【0070】
また、図14には、凍結状態のホタテ貝柱の冷凍食品60(凍結対象物)がマイクロ波共振器10上に配置された場合を示している。ホタテ貝柱の冷凍食品60は包装されていない。ホタテ貝柱の冷凍食品60の大きさは、マイクロ波共振器10により生成されるマイクロ波の共振磁場域よりも大きく、ホタテ貝柱の高さ方向の寸法hは50mm以下である。
【0071】
図15には、検出された共振ピーク電圧から第1の検量線53(図5参照)を用いて凍結状態のハンバーグの冷凍食品60(凍結対象物)の内部温度を推定したときの予測内部温度と、ハンバーグの冷凍食品60の実際の内部温度を実測した実測内部温度との関係を示すグラフが記載されている。このグラフから予測内部温度と実測内部温度が略一致することが解る。
【0072】
また、図16(a)には、マイクロ波共振器10上に上部が開口した有底筒状の容器65内に凍結状態にある複数のえんどう豆の冷凍食品60(凍結対象物)を入れた様子が示されている。容器65は、マイクロ波を透過可能な材料(例えば、プリエチレン、ポリエステル等)で形成されている。冷凍食品60(凍結対象物)は、小さな粒状に形成された複数のバラ凍結食品(えんどう豆)である。このように容器65内に収容された複数のえんどう豆の冷凍食品60は、前述したグラタンやハンバーグ等の中実物と比較して、複数のえんどう豆の冷凍食品60が密度の低い状態で容器65内に収容されると(図16(c)参照)、えんどう豆間の隙間が大きくなり、隙間を通るマイクロ波が検出されて、えんどう豆の冷凍食品60の凍結状態を検出できなくなる虞がある。そこで、本願の発明者は、複数のえんどう豆の冷凍食品60を密度が高い状態で容器65内に充填し(図16(b)参照)、この状態で、凍結状態のえんどう豆の冷凍食品60の共振状態(共振周波数、共振ピーク電圧)を説明変数とし、凍結状態のえんどう豆の冷凍食品60の内部温度を目的変数として重回帰分析を行って算出される検量線からえんどう豆の冷凍食品60の内部温度を予測可能であることを見出した。
【0073】
図17は、重回帰分析により検量線(予測式)を求めるためのフローチャートを示している。検量線(予測式)を求めるには、図17に示すように、測定対象物(えんどう豆の冷凍食品60)をマイクロ波共振器10内に設置して、マイクロ波発振器3から発信されたマイクロ波をマイクロ波共振器10内の冷凍食品60に照射する(ステップ300)。ここで、測定対象物であるえんどう豆の冷凍食品60は、密度が高くなるように容器65内に充填される。また、凍結対象物の投影面積よりマイクロ波共振器投影面積が小さいので、マイクロ波共振器により生成されるマイクロ波が測定対象物を透過せずに検出されるマイクロ波を無くすことができる。このため、測定対象物の共振状態を確実に検出することができる。
【0074】
冷凍食品60にマイクロ波が照射されて透過したマイクロ波(透過波)は、図1に示すように、同軸ケーブル50d、50eを通ってマイクロ波検出器30によって検出される。この検出されたマイクロ波から作業者等によって共振ピーク電圧と共振周波数が求められる(ステップ301)。なお、ステップ301では、冷凍食品60(複数のえんどう豆)が入れられた容器65を複数準備し、それぞれの容器内の冷凍食品60に対して前述した方法で共振ピーク電圧と共振周波数を求めるとともに、実際の内部温度を測定する。内部温度の測定は、例えば、光ファイバー温度計を使用する。
【0075】
そして、マイクロ波共振器10で検出された共振ピーク電圧及び共振周波数を説明変数とし、凍結対象物の内部温度を目的変数として重回帰分析を行って検量線(予測式)を算出する(ステップ302、検量線算出ステップ)。
【0076】
次に、重回帰分析で算出された検量線(予測式)に基づいて測定対象物の内部温度を測定する内部温度測定方法について、図18を参照しながら説明する。凍結状態の複数のえんどう豆の冷凍食品60(図2参照)を容器65内に充填する(ステップ400、充填ステップ)。そして、容器65をマイクロ波共振器10内に設置し、マイクロ波発振器3から発信されたマイクロ波をマイクロ波共振器10内の複数のえんどう豆の冷凍食品60に照射する(ステップ401、配置ステップ)。
【0077】
複数のえんどう豆の冷凍食品60にマイクロ波が照射されて透過したマイクロ波(透過波)は、マイクロ波検出器30によって検出される。この検出されたマイクロ波から作業者等によって共振ピーク電圧と共振周波数が求められる(ステップ402、状態検出ステップ、共振周波数検出ステップ)。
【0078】
そして、前述した検量線(予測式)に、検出された共振ピーク電圧及び共振周波数を当てはめることで、冷凍食品60の内部温度を推定する(ステップ403、温度算出ステップ)。そして、予測されたバラ凍結食品の予測内部温度と、実測されたバラ凍結食品の実測内部温度との相関の程度を表す値(例えば、決定係数R)が所定値(例えば、決定係数R=0.9)より小さい場合には(ステップ404)、複数のバラ凍結食品を収容する容器65内のバラ凍結食品の密度を上げるためにバラ凍結食品を容器65に再充填させる(ステップ405、再充填ステップ)。具体的には、容器65に振動等を与えてバラ凍結食品を密に充填する。そして、前述したステップ401以降を実施する。
【0079】
なお、図19には、重回帰分析によって凍結状態の冷凍食品60(えんどう豆)の内部温度を推定したときの予測内部温度と、凍結対象物の実際の内部温度を実測した実測内部温度との関係を示すグラフが記載されている。このグラフから予測内部温度と実測内部温度が略一致(決定係数R=0.957)することが解る。
【0080】
このように、粒状のバラ凍結食品(例えば、えんどう豆)を複数収容した状態で、バラ凍結食品の内部温度を高い精度で測定することができる。
【0081】
なお、凍結したグラタンの内部温度を、回帰分析を利用して推定してもよい。この場合には、グラタンの共振ピーク電圧を説明変数とし、グラタンの内部温度を目的変数として回帰分析を行って検量線を算出する。そして、検出された共振ピーク電圧を検量線に当てはめることで、グラタンの内部温度を推定することができる。
【0082】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。例えば、上述した各種実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 凍結対象物の内部温度測定装置
3 マイクロ波発振器
5 サーキュレータ
7、8 減衰器
10 マイクロ波共振器
40 データ処理器
41 凍結状態判定部
43 温度算出部
50a、50b、50c、50d、50e 同軸ケーブル
51 第2の検量線
53 第1の検量線
60 冷凍食品
61 容器
62 包装
65 容器
R 凍結点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図18
図19