【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の幾つかの実施形態に係わる凍結対象物の内部温度測定方法は、
凍結対象物の内部温度測定方法であって、
マイクロ波共振器を用いて生成されるマイクロ波の共振磁場に前記凍結対象物を配置する配置ステップと、
前記マイクロ波共振器を用いて凍結状態の前記凍結対象物の共振状態を検出するとともに、温度測定器を用いて前記凍結対象物の内部温度を検出する状態検出ステップと、
前記状態検出ステップで検出される共振状態を説明変数とし、前記温度測定器で検出される前記凍結対象物の内部温度を目的変数として回帰分析を行って検量線を算出する検量線算出ステップと、
前記検量線算出ステップで算出された前記検量線に、前記検出ステップで検出された共振状態を当てはめて、凍結状態にある前記凍結対象物の内部温度を算出する温度算出ステップと、
を備えるように構成される。
【0010】
本願の発明者は、凍結対象物の水分が液体相の水であるか固体相の氷であるかによって、凍結対象物へのマイクロ波の吸収・透過が大きく変化し、これに応じてマイクロ波共振器の共振周波数や共振ピーク電圧が変化する特性に基づいて、共振ピーク電圧と凍結対象物の内部温度との間に相関があることを発見した。この発見から、本願の発明者は、共振ピーク電圧と凍結対象物の内部温度との相関を予め定めておけば、検出される共振ピーク電圧に対応する凍結対象物の内部温度を、凍結対象物の内部温度として算出することが可能になることを見出した。また、この発見から、本願の発明者は、凍結対象物の内部温度を予測するにあたり、凍結対象物の共振状態を説明変数とし、凍結対象物の内部温度を目的変数として回帰分析を行って算出される検量線から凍結対象物の内部温度を予測することができることを見出した。そこで、検量線に、状態検出ステップで検出された共振状態を当てはめることで、凍結状態にある凍結対象物の内部温度を算出することができる。よって、マイクロ波共振器を利用して、冷凍食品等の凍結対象物の内部温度を測定可能な凍結対象物の内部温度測定方法を実現できる。
【0011】
また、幾つかの実施形態では、
前記マイクロ波共振器により生成されるマイクロ波の共振磁場域が前記凍結対象物の全域を覆うように、前記凍結対象物の投影面積より前記マイクロ波共振器投影面積が小に設定されているように構成される。
【0012】
この場合、凍結対象物の投影面積より前記マイクロ波共振器投影面積が小さいので、マイクロ波共振器により生成されるマイクロ波が凍結対象物を透過せずに検出されるマイクロ波を無くすことができる。このため、凍結対象物の共振状態を確実に検出することができる。
【0013】
また、幾つかの実施形態では、
前記凍結対象物は、中身が詰まった中実食品であり、
前記状態検出ステップで検出される前記共振状態は、凍結状態の前記凍結対象物の共振ピーク電圧であり、
前記温度算出ステップは、前記検量線算出ステップで算出される前記検量線に、前記状態検出ステップで検出される前記共振ピーク電圧を当てはめて、凍結状態にある前記凍結対象物の内部温度を予測するように構成される。
【0014】
この場合、検量線に、状態検出ステップで検出される共振ピーク電圧を当てはめることで、凍結状態の中身が詰まった中実食品の内部温度を予測することができる。
【0015】
また、幾つかの実施形態では、
前記状態検出ステップは、前記マイクロ波共振器を用いて、前記凍結対象物の共振周波数を検出する共振周波数検出ステップ、をさらに備え、
前記検量線算出ステップは、前記凍結対象物の内部温度と共振周波数との相関を規定する第2の検量線に、前記共振周波数検出ステップで検出された前記共振周波数を当てはめることで、前記凍結対象物が凍結状態にあるか否かを判定する凍結状態判定ステップ、をさらに備え、
前記温度算出ステップでは、前記凍結状態判定ステップにおいて前記凍結対象物が凍結状態にあると判定されたときの前記共振ピーク電圧の検出値を、前記凍結対象物の内部温度と共振ピーク電圧との相関を規定する第1の検量線に当てはめることで、前記凍結対象物の内部温度を算出するように構成される。
【0016】
本願の発明者は、凍結対象物の水分が液体相の水であるか固体相の氷であるかによって、凍結対象物へのマイクロ波の吸収・透過が大きく変化し、これに応じてマイクロ波共振器の共振周波数や共振ピーク電圧が変化する特性に基づいて、水分が相転移状態にある場合には、共振周波数と凍結対象物の内部温度との間に相関があることを発見した。この相関は、ある共振周波数までは凍結対象物の内部温度は一定となり、ある共振周波数よりも高い共振周波数になると、内部温度が暫時低くなるような関係を有している。このため、本願の発明者は、共振周波数と凍結対象物の内部温度との相関に基づいて、内部温度が暫時低くなり始める共振周波数を超えると、凍結対象物は凍結状態であることを見出した。そこで、請求項4に記載の発明の温度算出ステップでは、凍結状態判定ステップにおいて凍結対象物が凍結状態にあると判定されたときの共振ピーク電圧の検出値を第1の検量線に当てはめて、凍結対象物の内部温度を算出するので、算出される内部温度は、凍結状態にある凍結対象物が対象となり、凍結状態にある凍結対象物の内部温度を正確に算出することができる。
【0017】
また、幾つかの実施形態では、
前記凍結対象物は、搬送ラインによって搬送される冷凍食品であり、
前記状態検出ステップでは、前記搬送ラインによって搬送中の前記冷凍食品に対して前記マイクロ波共振器を用いた前記共振ピーク電圧の検出を行い、
前記温度算出ステップでは、前記搬送ラインで搬送中の前記冷凍食品の内部温度を算出する。
【0018】
この場合、凍結対象物は、搬送ラインによって搬送される冷凍食品であり、状態検出ステップでは、搬送ラインによって搬送中の冷凍食品に対してマイクロ波共振器を用いた共振ピーク電圧の検出を行い、温度算出ステップでは、搬送ラインで搬送中の冷凍食品の内部温度を算出するので、冷凍食品の凍結工程において、搬送ラインによって搬送される冷凍食品の食品温度の全数検査を可能にすることができる。よって、冷凍食品の凍結工程の内部温度の管理精度をより高めることができる。
【0019】
また、幾つかの実施形態では、
前記状態検出ステップでは、非包装状態又はマイクロ波を透過する部材によって包装された状態における前記冷凍食品の前記共振ピーク電圧を検出する。
【0020】
この場合、状態検出ステップでは、非包装状態又はマイクロ波を透過する部材によって包装された状態における冷凍食品の共振ピーク電圧を検出するので、包装された冷凍食品の共振ピーク電圧を検出することができるとともに、包装される前の非包装状態の冷凍食品の共振ピーク電圧を検出することができる。このため、冷凍食品の凍結工程の途中において、冷凍食品の共振ピーク電圧を検出することができる。
【0021】
また、幾つかの実施形態では、
前記凍結対象物のマイクロ波照射方向における厚さは、50mm以下であるように構成される。
【0022】
凍結対象物の凍結工程では、凍結対象物は外側から凍結し始めるので、凍結対象物の内部は凍結しにくい。このため、凍結対象物の内部温度を測定することができれば、凍結対象物の凍結状態を予測することができる。このため、マイクロ波が凍結状態の凍結対象物の中心部に到達可能な距離を25mmとすると、凍結対象物のマイクロ波照射方向における厚さを、50mm以下とすることが好ましい。よって、請求項7に記載の発明は、凍結対象物のマイクロ波照射方向における厚さを50mm以下とするので、凍結対象物の内部の中心にマイクロ波を入射させることができ、凍結対象物の内部温度を確実に測定することができる。なお、凍結対象物の解凍は、凍結対象物の外側から解凍し始めて内側が最後に解凍するので、解凍して外側に水が生じると、マイクロ波は水に吸収されて凍結対象物の内部に届かない。このため、凍結対象物の解凍工程においては、本願の内部温度測定方法は適用できない。
【0023】
また、幾つかの実施形態では、
前記凍結対象物は、小さな粒状に形成された複数のバラ凍結食品であり、
複数の前記バラ凍結食品を容器内に充填する充填ステップを備え、
前記状態検出ステップで検出される共振状態は、凍結状態の前記凍結対象物の共振ピーク電圧及び共振周波数であり、
前記温度算出ステップは、前記検量線算出ステップで算出された前記検量線に、前記状態検出ステップで検出された前記共振ピーク電圧及び共振周波数を当てはめて、凍結状態にある前記バラ凍結食品の内部温度を予測し、
この予測された前記バラ凍結食品の内部温度と、実測された前記バラ凍結食品の内部温度との相関の程度を表す値が所定値よりも小さいときに前記複数のバラ凍結食品を充填した前記容器に該複数のバラ凍結食品を再充填して密度を高める再充填ステップを更に備えるように構成される。
【0024】
この場合、凍結対象物は、小さな粒状に形成された複数のバラ凍結食品であるので、中実物と比較して、バラ凍結食品間の隙間が大きくなると、隙間を通るマイクロ波がマイクロ波共振器で検出されて、凍結対象物の凍結状態を検出できなくなる虞がある。そこで、本願の発明者は、予測されたバラ凍結食品の内部温度と、実測されたバラ凍結食品の内部温度との相関の程度を表す値が所定値よりも小さいときに複数のバラ凍結食品を充填した容器に該複数のバラ凍結食品を再充填して密度を高める再充填ステップを更に設けた。このため、バラ凍結食品間の隙間が無くなり、複数のバラ凍結食品の凍結状態の検出が可能になる。よって、マイクロ波共振器を利用して、バラ凍結食品の内部温度を測定可能な凍結対象物の内部温度測定方法を実現できる。
【0025】
また、本発明の幾つかの実施形態に係わる凍結対象物の内部温度測定装置は、
凍結対象物の内部温度測定装置であって、
凍結状態の前記凍結対象物の共振状態を検出するためのマイクロ波共振器と、
凍結状態にある前記凍結対象物の共振状態を説明変数とし、前記凍結対象物の内部温度を目的変数として回帰分析を行って算出された検量線に、前記マイクロ波共振器によって検出された前記共振状態を当てはめることで、凍結状態にある前記凍結対象物の内部温度を算出するように構成された温度算出部と、を備え、
前記マイクロ波共振器の投影面積が前記凍結対象物の投影面積よりも小に設定されているように構成される。
【0026】
本願の発明者は、凍結対象物の水分が液体相の水であるか固体相の氷であるかによって、凍結対象物へのマイクロ波の吸収・透過が大きく変化し、これに応じてマイクロ波共振器の共振周波数や共振ピーク電圧が変化する特性に基づいて、共振ピーク電圧と凍結対象物の内部温度との間に相関があることを発見した。この発見から、本願の発明者は、共振ピーク電圧と凍結対象物の内部温度との相関を予め定めておけば、検出される共振ピーク電圧に対応する凍結対象物の内部温度を、凍結対象物の内部温度として算出することが可能になることを見出した。また、この発見から、本願の発明者は、凍結対象物の内部温度を予測するにあたり、凍結対象物の共振状態を説明変数とし、凍結対象物の内部温度を目的変数として回帰分析を行って算出される検量線から凍結対象物の内部温度を予測することができることを見出した。そこで、検量線に、マイクロ波共振器で検出された共振状態を当てはめることで、凍結状態にある前記凍結対象物の内部温度を算出することができる。よって、マイクロ波共振器を利用して、冷凍食品等の凍結対象物の内部温度を測定可能な凍結対象物の内部温度測定装置を実現できる。また、凍結対象物の投影面積よりマイクロ波共振器投影面積が小さいので、マイクロ波共振器により生成されるマイクロ波が凍結対象物を透過せずに検出されるマイクロ波を無くすことができる。このため、凍結対象物の共振状態を確実に検出することができる。
【0027】
また、幾つかの実施形態では、
前記凍結対象物は、中身が詰まった中実食品であり、
前記マイクロ波共振器は、凍結状態の前記凍結対象物の共振ピーク電圧を検出するように構成され、
前記温度算出部は、凍結状態にある前記凍結対象物の内部温度と共振ピーク電圧との相関を規定する第1の検量線に、前記マイクロ波共振器によって検出された前記共振ピーク電圧を当てはめることで、凍結状態にある前記凍結対象物の内部温度を算出するように構成されている。
【0028】
この場合、検量線に、マイクロ波共振器で検出される共振ピーク電圧を当てはめることで、凍結状態の中身が詰まった中実食品の内部温度を予測することができる。
【0029】
また、幾つかの実施形態では、
前記マイクロ波共振器は、前記凍結対象物の共振周波数を検出するように構成され、
前記凍結対象物の内部温度と前記共振周波数との相関を規定する第2の検量線に、前記マイクロ共振器によって検出された前記共振周波数を当てはめることで、前記凍結対象物が凍結状態にあるか否かを判定するように構成された凍結状態判定部、をさらに備え、
前記温度算出部は、前記凍結状態判定部によって前記凍結対象物が凍結状態にあると判定されたときの前記共振ピーク電圧の検出値を前記第1の検量線に当てはめることで、凍結状態にある前記凍結対象物の内部温度を算出するように構成されている。
【0030】
この場合、本願の発明者は、凍結対象物の水分が液体相の水であるか固体相の氷であるかによって、凍結対象物へのマイクロ波の吸収・透過が大きく変化し、これに応じてマイクロ波共振器の共振周波数や共振ピーク電圧が変化する特性に基づいて、水分が相転移状態にある場合には、共振周波数と凍結対象物の内部温度との間に相関があることを発見した。この相関は、ある共振周波数までは凍結対象物の内部温度は一定となり、ある共振周波数よりも高い共振周波数になると、内部温度が暫時低くなるような関係を有している。このため、本願の発明者は、共振周波数と凍結対象物の内部温度との相関に基づいて、内部温度が暫時低くなり始める共振周波数を超えると、凍結対象物は凍結状態であることを見出した。そこで、請求項11に記載の発明の温度算出部は、凍結状態判定部によって凍結対象物が凍結状態にあると判定されたときの共振ピーク電圧の検出値を第1の検量線に当てはめて、凍結対象物の内部温度を算出するので、算出される内部温度は、凍結状態にある凍結対象物が対象となり、凍結状態にある凍結対象物の内部温度を正確に算出することができる。
【0031】
また、幾つかの実施形態では、
前記凍結対象物は、搬送ラインによって搬送される冷凍食品であり、
前記マイクロ波共振器は、前記搬送ラインによって搬送中の前記冷凍食品の前記共振ピーク電圧を検出するように構成され、
前記温度算出部は、前記搬送ラインで搬送中の前記冷凍食品の内部温度を算出するように構成されている。
【0032】
この場合、凍結対象物は、搬送ラインによって搬送される冷凍食品であり、マイクロ波共振器は、搬送ラインによって搬送中の冷凍食品の共振ピーク電圧を検出し、温度算出部は、搬送ラインで搬送中の冷凍食品の内部温度を算出するので、冷凍食品の凍結工程において、搬送ラインによって搬送される冷凍食品の食品温度の全数検査を可能にすることができる。よって、冷凍食品の凍結工程の内部温度の管理精度をより高めることができる。
【0033】
また、幾つかの実施形態では、
前記マイクロ波共振器は、非包装状態又はマイクロ波を透過する部材によって包装された状態における前記冷凍食品の前記共振ピーク電圧を検出するように構成されている。
【0034】
この場合、マイクロ波共振器は、非包装状態又はマイクロ波を透過する部材によって包装された状態における冷凍食品の共振ピーク電圧を検出するので、包装された冷凍食品の共振ピーク電圧を検出することができるとともに、包装される前の非包装状態の冷凍食品の共振ピーク電圧を検出することができる。このため、冷凍食品の凍結工程の途中において、冷凍食品の共振ピーク電圧を検出することができる。
【0035】
また、幾つかの実施形態では、
前記凍結対象物は、小さな粒状に形成された複数のバラ凍結食品であり、
前記マイクロ波共振器は、凍結状態の前記凍結対象物の共振ピーク電圧及び共振周波数を検出するように構成され、
前記温度算出部は、前記マイクロ波共振器で検出される共振ピーク電圧及び共振周波数を説明変数とし、前記凍結対象物の内部温度を目的変数として回帰分析を行って検量線を算出し、該検量線に前記マイクロ波共振器で検出された前記共振ピーク電圧及び共振周波数を当てはめて、凍結状態にある前記バラ凍結食品の内部温度を予測し、この予測された前記バラ凍結食品の内部温度と、実測された前記バラ凍結食品の内部温度との相関の程度を表す値が所定値よりも小さいときに前記複数のバラ凍結食品を収容する容器内での該複数のバラ凍結食品の密度を上げるために前記複数のバラ凍結食品を再充填させるように構成される。
【0036】
この場合、凍結対象物は、小さな粒状に形成された複数のバラ凍結食品であるので、中実物と比較して、容器内に収容されたバラ凍結食品間の隙間が大きくなると、隙間を通るマイクロ波が検出さて、バラ凍結食品の凍結状態を検出できなくなる虞がある。そこで、本願の発明者は、予測されたバラ凍結食品の内部温度と、実測されたバラ凍結食品の内部温度との相関の程度を表す値が所定値よりも小さいときに複数のバラ凍結食品を収容する容器内での該複数のバラ凍結食品の密度を上げるために複数のバラ凍結食品を再充填させるようにした。このため、バラ凍結食品間の隙間が小さくなり、隙間を通るマイクロ波が検出される虞がなくなる。よって、マイクロ波共振器を利用して、バラ凍結食品の内部温度を測定可能な凍結対象物の内部温度測定装置を実現できる。
【0037】
また、幾つかの実施形態では、
前記凍結対象物のマイクロ波照射方向における厚さは、50mm以下であるように構成される。
【0038】
凍結対象物の凍結工程では、凍結対象物は外側から凍結し始めるので、凍結対象物の内部は凍結しにくい。このため、凍結対象物の内部温度を測定することができれば、凍結対象物の凍結状態を予測することができる。このため、マイクロ波が凍結状態の凍結対象物の中心部に到達可能な距離を25mmとすると、凍結対象物のマイクロ波照射方向における厚さを、50mm以下とすることが好ましい。よって、請求項15に記載の発明は、凍結対象物のマイクロ波照射方向における厚さを50mm以下とするので、凍結対象物の内部の中心にマイクロ波を入射させることができ、凍結対象物の内部温度を確実に測定することができる。なお、凍結対象物の解凍は、凍結対象物の外側から解凍し始めて内側が最後に解凍するので、解凍して外側に水が生じると、マイクロ波は水に吸収されて凍結対象物の内部に届かない。このため、凍結対象物の解凍工程においては、本願の内部温度測定装置は適用できない。