特許第6276596号(P6276596)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6276596空間超解像・階調補間装置及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6276596
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】空間超解像・階調補間装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 3/40 20060101AFI20180129BHJP
【FI】
   G06T3/40 700
   G06T3/40 730
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-3339(P2014-3339)
(22)【出願日】2014年1月10日
(65)【公開番号】特開2015-132930(P2015-132930A)
(43)【公開日】2015年7月23日
【審査請求日】2016年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】松尾 康孝
(72)【発明者】
【氏名】境田 慎一
【審査官】 松田 直也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/067294(WO,A1)
【文献】 特開2006−110816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原画像を空間超解像処理及び階調補間処理して、所定の目標解像度及び目標階調数を有する空間超解像・階調補間画像を生成する空間超解像・階調補間装置であって、
原画像の階調数増加させて目標階調数に再量子化した再量子化画像を生成する再量子化部と、
前記再量子化画像をウェーブレット分解して再量子化画像の空間標本化周波数を超える高周波帯域成分を生成する周波数分解部と、
前記再量子化画像及び前記高周波帯域成分をバイラテラルフィルタを用いて低域通過フィルタ処理により波形整形及び階調補間を同時に行うことにより、再量子化整形画像及び高周波帯域整形成分を生成する階調補間部と、
前記再量子化整形画像を低周波帯域成分とし前記高周波帯域整形成分を高周波帯域成分として周波数再構成して空間超解像・階調補間画像を生成する周波数再構成部と、
を備えることを特徴とする空間超解像・階調補間装置。
【請求項2】
コンピュータを、請求項1に記載の空間超解像・階調補間装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原画像を空間超解像処理及び階調補間処理して空間超解像・階調補間画像を生成する空間超解像・階調補間装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像を空間方向に空間超解像処理して元の画像よりも解像度の高い画像を生成する空間超解像技術が知られている。例えば、被写体の照明方程式パラメータを推定し、推定した照明方程式パラメータについて高解像度化を行い、高解像度化された照明方程式パラメータを合成して高解像度画像を生成し、その際、推定した照明方程式パラメータの推定精度が所定の精度を満たさない画素が存在するときは、高解像度化した照明方程式パラメータをフィードバックして、再度、照明方程式パラメータの推定を行うことにより、被写体の画像を高解像度化する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、画像を階調方向に補間処理して元の画像よりも階調数の多い画像を生成する階調補間装置が知られている。例えば、処理対象画素の印字濃度に対して複数の閾値と補間演算誤差を設定し、処理対象画素とその隣接する画素の持つ補間演算誤差の平均との総和を複数の閾値と比較し、その最も近い値の閾値を実行閾値として用いるなどして中間階調を補間する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4139853号公報
【特許文献2】特開平4−18855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
空間超解像及び階調補間の手法として多くの方法が知られているが、原画像を空間方向に拡大し、且つ階調を補間するには、空間超解像処理及び階調補間処理を別々に適用する必要があった。このため、効率的な処理を行うことができなかった。また、標本化と量子化間には密接な相関があるが、これらを別々に行うことは、例えば空間超解像処理を最適に行ったとしても階調補間処理で空間超解像結果が損なわれるため、処理を別々に行った結果が必ずしも高画質な超解像画像になるとは限らなかった。
【0006】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、効率的且つ高精度に空間超解像・階調補間画像を得ることができる空間超解像・階調補間装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る空間超解像・階調補間装置は、原画像を空間超解像処理及び階調補間処理して、所定の目標解像度及び目標階調数を有する空間超解像・階調補間画像を生成する空間超解像・階調補間装置であって、原画像の階調数増加させて目標階調数に再量子化した再量子化画像を生成する再量子化部と、前記再量子化画像をウェーブレット分解して再量子化画像の空間標本化周波数を超える高周波帯域成分を生成する周波数分解部と、前記再量子化画像及び前記高周波帯域成分をバイラテラルフィルタを用いて低域通過フィルタ処理により波形整形及び階調補間を同時に行うことにより、再量子化整形画像及び高周波帯域整形成分を生成する階調補間部と、前記再量子化整形画像を低周波帯域成分とし前記高周波帯域整形成分を高周波帯域成分として周波数再構成して目標解像度に空間超解像するとともに、フィルタ処理により階調補間して、空間超解像・階調補間画像を生成する周波数再構成部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、上記課題を解決するため、本発明に係るプログラムは、コンピュータを、上記空間超解像・階調補間装置として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、効率的且つ高精度に空間超解像・階調補間画像を得ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る空間超解像・階調補間処理装置の処理概要を説明する図である。
図2】本発明の一実施形態に係る空間超解像・階調補間装置の構成例を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る空間超解像・階調補間装置の動作例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明に係る空間超解像・階調補間処理装置の処理概要を説明する図である。ただし、図1に示す解像度及び階調は一例であり、この値に限定されるものではない。
【0014】
図1に示す例では、まず「解像度4K×2K、階調8bit」の原画像の階調数を目標とする12bitに再量子化した再量子化画像を生成する。再量子化画像は8bitの各画素値が12bitに変換されただけであるため、この段階では画素値はなめらかではなく飛び飛びの値となる。次に、この再量子化画像の解像度を目標とする8K×4Kに拡大(空間超解像処理)する。その際に、12bitの階調を補間する階調補間処理を同時に行うことにより、「解像度8K×4K、階調12bit」の空間超解像・階調補間画像を生成する。
【0015】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0016】
図2は、本発明の一実施形態に係る空間超解像・階調補間装置の構成例を示すブロック図である。図2に示す例では、空間超解像・階調補間装置1は、再量子化部10と、空間超解像・階調補間部20とを備える。
【0017】
空間超解像・階調補間装置1は、入力される原画像に対して再量子化処理、及び空間超解像・階調補間処理を施し、所定の目標とする解像度(目標解像度)及び目標とする階調数(目標階調数)を有する空間超解像・階調補間画像を生成して出力する。なお、空間超解像・階調補間装置1に、ユーザにより設定される目標解像度及び目標階調数を入力し、空間超解像・階調補間装置1は、入力された目標解像度及び目標階調数を有する空間超解像・階調補間画像を生成するようにしてもよい。
【0018】
再量子化部10は、原画像を目標とする階調数に再量子化した再量子化画像を生成し、空間超解像・階調補間部20に出力する。階調数を8bitから12bitに再量子化する場合には、例えば画素値を単純に16倍する。あるいは、変換前の画素値と変換後の画素値とを対応付けた再量子化テーブルを有する場合には、再量子化テーブルに基づいて画素値を変換する。
【0019】
空間超解像・階調補間部20は、再量子化部10により生成された再量子化画像を目標とする空間解像度に空間超解像するとともに、フィルタを用いて同時に階調補間する。図2に示す例では、空間超解像・階調補間部20は、周波数分解部21と、階調補間部22と、周波数再構成部23とを備える。
【0020】
周波数分解部21は、再量子化部10により生成された再量子化画像をデシメーション無しで(つまり、周波数帯域成分の画像サイズの縮小を行わずに)周波数分解(例えば、ウェーブレット分解)し、再量子化画像の空間標本化周波数を超える高周波帯域成分を階調補間部22に出力する。
【0021】
階調補間部22は、再量子化部10により生成された再量子化画像、及び周波数分解部21により生成された高周波帯域成分に波形整形用のフィルタを適用して再量子化整形画像、及び高周波帯域整形成分を生成し、周波数再構成部23に出力する。フィルタ処理を行うことにより、超解像処理と同時に階調補間処理を行うことができる。階調補間部22で用いるフィルタとして、例えば、原画像の撮影時における光学的な劣化過程を模擬した低域通過フィルタである点拡がり関数(PSF:Point spread function)のフィルタ、ガウシアン関数のフィルタ、Lanczosフィルタなどを用いることができる。
【0022】
あるいは、階調補間部22で用いる低域通過フィルタとして、バイラテラルフィルタを用いることができる。バイラテラルフィルタは、画像はエッジ領域以外では階調が滑らかに変化すると仮定し、エッジを保持しながら低域通過フィルタ処理を行うフィルタである。バイラテラルフィルタを用いて波形整形及び階調補間を同時に行うことで、標本化と量子化間の高い相関を利用した空間超解像・階調補間が可能となる。例えば、輝度変化が少ない平坦な空間領域では、空間高周波帯域のパワーが低く輝度値が滑らかに変化するように作用する。また、輝度変化が大きいエッジ領域では、空間高周波帯域のパワーが高く輝度値が大きく変化するように作用する。
【0023】
周波数再構成部23は、階調補間部22により生成された再量子化整形画像を空間低周波帯域とし、階調補間部22により生成された高周波帯域整形成分を空間高周波帯域成分として、周波数再構成(例えば、ウェーブレット再構成)し、空間超解像・階調補間画像を生成し、出力する。
【0024】
図3は、空間超解像・階調補間部20の動作例を説明する図であり、空間超解像処理により解像度を縦横それぞれ2倍にする例を示している。まず、周波数分解部21により、再量子化画像Sを周波数分解する(ステップS101)。ここでは、周波数分解としてデシメーション無しの1階離散ウェーブレット分解を行っている。LLは低周波帯域成分であり、LHは水平方向高周波帯域成分であり、HLは垂直方向高周波帯域成分であり、HHは斜め方向高周波帯域成分である。LH,HL,HHを高周波帯域成分とする。
【0025】
次に、階調補間部22により、再量子化画像S及び高周波帯域成分LH,HL,HHにそれぞれ波形整形用のフィルタを適用し、再量子化整形画像S’、及び高周波帯域整形成分LH’,HL’,HH’を生成する(ステップS102)。
【0026】
次に、周波数再構成部23により、再量子化整形画像S’を空間低周波帯域とし、高周波帯域整形成分LH’,HL’,HH’を空間高周波帯域成分として配置する(ステップS103)。そして、周波数再構成部23により、ステップS103にて配置した周波帯域成分をウェーブレット再構成し、空間超解像・階調補間画像を生成する(ステップS104)。
【0027】
以上説明したように、本発明に係る空間超解像・階調補間装置1は、原画像を目標階調数に再量子化した再量子化画像を生成した後に、再量子化画像を目標解像度に空間超解像するとともに、フィルタ処理により階調補間して、空間超解像・階調補間画像を生成する。つまり、再量子化画像の空間超解像処理及び階調補間処理を同時に行う。このため、空間超解像・階調補間装置1によれば、効率的且つ高精度に空間超解像・階調補間画像を得ることができる。
【0028】
なお、上述した空間超解像・階調補間装置1として機能させるためにコンピュータを用いることができ、そのようなコンピュータは、空間超解像・階調補間装置1の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを該コンピュータの記憶部に格納しておき、該コンピュータのCPUによってこのプログラムを読み出して実行させることで実現することができる。なお、このプログラムは、コンピュータ読取り可能な記録媒体に記録することができる。
【0029】
上述の実施形態は、代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。例えば、実施形態に記載の複数の構成ブロックを1つに組み合わせたり、あるいは1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
このように、本発明は、画像を空間超解像処理及び階調補間処理して、所定の目標解像度及び目標階調数を有する空間超解像・階調補間画像を生成する任意の用途に有用である。
【符号の説明】
【0031】
1 空間超解像・階調補間装置
10 再量子化部
20 空間超解像・階調補間部
21 周波数分解部
22 階調補間部
23 周波数再構成部
図1
図2
図3