特許第6276804号(P6276804)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6276804
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】蒸着装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/00 20060101AFI20180129BHJP
   C23C 14/24 20060101ALI20180129BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20180129BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
   C23C14/00 B
   C23C14/24 T
   H05B33/14 A
   H05B33/10
【請求項の数】14
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-105805(P2016-105805)
(22)【出願日】2016年5月27日
(65)【公開番号】特開2017-14616(P2017-14616A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2017年7月31日
(31)【優先権主張番号】特願2015-128770(P2015-128770)
(32)【優先日】2015年6月26日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100097065
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 雅栄
(72)【発明者】
【氏名】風間 良秋
(72)【発明者】
【氏名】後藤 亮太
(72)【発明者】
【氏名】三澤 啓太
(72)【発明者】
【氏名】七五三木 浩一
【審査官】 村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/099012(WO,A1)
【文献】 実開昭61−098863(JP,U)
【文献】 特開昭58−177464(JP,A)
【文献】 特開平07−238368(JP,A)
【文献】 特開2009−132966(JP,A)
【文献】 特開2008−248362(JP,A)
【文献】 特開2002−093360(JP,A)
【文献】 特開2002−206163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
H01L 51/50
H05B 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜材料を収容する蒸発源を設置するための蒸発源設置部を、蒸着室に備える蒸着装置であって、前記蒸発源設置部の平面視周囲位置に立設されこの蒸発源設置部を囲む遮蔽部を設け、前記蒸発源設置部に設置される蒸発源から基板に向かって放出される成膜材料の蒸発粒子の基板への入射角を制限する制限板を前記遮蔽部の上方位置に設けた構成とし、前記遮蔽部には、開閉部を設けたことを特徴とする蒸着装置。
【請求項2】
前記制限板は、メンテナンス時にも開閉しない固定支持部材に設けたことを特徴とする請求項1に記載の蒸着装置。
【請求項3】
前記開閉部は、蒸着時には閉じられ、メンテナンス時に開かれることを特徴とする請求項1に記載の蒸着装置。
【請求項4】
前記固定支持部材は、前記開閉部の開閉動作を許容する開口を有する枠状に構成したことを特徴とする請求項2記載の蒸着装置。
【請求項5】
前記固定支持部材は、前記開閉部の開閉動作に対して干渉しない位置に設けたことを特徴とする請求項2記載の蒸着装置。
【請求項6】
前記蒸発源設置部の四方を囲む前記遮蔽部にして前記蒸発源設置部に設置される蒸発源の長手方向の側面と対向する位置に前記開閉部を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の蒸着装置。
【請求項7】
前記開閉部を開状態とした際、前記蒸発源設置部に設置される蒸発源がその長手方向全長にわたってこの開閉部から露出するように前記遮蔽部を構成したことを特徴とする請求項6に記載の蒸着装置。
【請求項8】
前記制限板は、前記遮蔽部に対して可動自在に設けたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の蒸着装置。
【請求項9】
前記蒸発源設置部を囲む前記遮蔽部の開口部を開閉するシャッタは、前記遮蔽部に対して可動自在に設けたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の蒸着装置。
【請求項10】
成膜材料を収容する蒸発源を設置するための蒸発源設置部と、前記蒸発源設置部の四方を囲む遮蔽部と、を備える蒸着装置であって、
前記遮蔽部が開閉構造を有していることを特徴とする蒸着装置。
【請求項11】
前記蒸発源設置部が蒸発源支持体の上に設けられ、
前記遮蔽部が、前記蒸発源設置部を挟んで対向する一対の固定部材と、前記一対の固定部材の間で前記蒸発源設置部を挟んで対向する一対の部材とを備えており、
前記一対の固定部材が、前記蒸発源支持体に固定され、
前記一対の部材の少なくとも一方が、両端部に設けられた軸着部で前記一対の固定部材の内面下部に軸着された可動部材であることを特徴とする請求項10に記載の蒸着装置。
【請求項12】
前記蒸発源設置部が、一方向に長尺の形状をしており、
前記可動部材は前記蒸発源設置部の長手方向に沿って設けられていることを特徴とする請求項11に記載の蒸着装置。
【請求項13】
前記蒸発源支持体には、前記蒸発源設置部を囲む枠状の固定支持部材が設けられており、前記固定支持部材の上面に制限板が設けられていることを特徴とする請求項1112のいずれか1項に記載の蒸着装置。
【請求項14】
前記固定支持部材を構成する枠の前記蒸発源設置部の長手方向における間隔が、前記可動部材の前記蒸発源設置部の長手方向における長さよりも長いことを特徴とする請求項13に記載の蒸着装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蒸発源から蒸発して噴出する成膜材料を基板に堆積させて薄膜を成膜する蒸着装置は、
有機ELデバイスの製造に広く用いられており、製造上の要求を満たすために様々な工夫がされている。特許文献1では、蒸発源から放出される成膜材料の蒸気の放射範囲を制限するため、蒸発源が収納されている蒸発源収納部の外側壁に制限板を設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−68980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記構成の場合、蒸発源の清掃や蒸発源内に収容している成膜材料の補充や交換等のメンテナンス作業の都度、制限板を取り外し及び固定作業が必要となり、メンテナンス作業の効率が低下する。
【0005】
本発明は、上述のような問題点を解決するもので、蒸発源のメンテナンス作業が行いやすい蒸着装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0007】
本発明の第1の態様は、基板1に蒸着を行う蒸発源2を、蒸着室に設置するための蒸発源設置部を備える蒸着装置であって、前記蒸発源設置部40を囲む遮蔽部5を設け、前記蒸発源設置部40に設置される蒸発源2から前記基板1に向かって放出される成膜材料の蒸発粒子の基板1への入射角を制限する制限板4を前記遮蔽部5の上方位置に設けた構成とし、前記遮蔽部5には、開閉部6を設けたことを特徴とする蒸着装置である。
【0008】
また、前記制限板4は、メンテナンス時にも開閉しない固定支持部材に設けたことを特徴とする蒸着装置に係るものである。
【0009】
また、前記開閉部6は、蒸着時には閉じられ、メンテナンス時に開かれることを特徴とする蒸着装置に係るものである。
【0010】
また、前記固定支持部材7は、前記開閉部6の開閉動作を許容する開口を有する枠状に構成したことを特徴とする蒸着装置に係るものである。
【0011】
また、前記固定支持部材7は、前記開閉部6の開閉動作に対して干渉しない位置に設けたことを特徴とする蒸着装置に係るものである。
【0012】
また、前記蒸発源2の側周面を囲む前記遮蔽部5にして前記蒸発源2の長手方向の側面と対向する位置に前記開閉部6を設けたことを特徴とする蒸着装置に係るものである。
【0013】
また、前記開閉部6を開状態とした際、前記蒸発源2がその長手方向全長にわたってこの開閉部6から露出するように前記遮蔽部5を構成したことを特徴とする蒸着装置に係るものである。
【0014】
また、前記制限板4は、前記遮蔽部5に対して可動自在に設けたことを特徴とする蒸着装置に係るものである。
【0015】
また、前記蒸発源2の四方を囲む前記遮蔽部5の開口部10を開閉するシャッタ9は、前記遮蔽部5に対して可動自在に設けたことを特徴とする蒸着装置に係るものである。
【0016】
本発明の第2の態様は、成膜材料を収容する蒸発源を設置する蒸発源設置部と、前記蒸発源設置部の四方を囲む遮蔽部と、を備える蒸着装置であって、前記遮蔽部が開閉構造を有していることを特徴とする蒸着装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる蒸着装置によれば、蒸発源のメンテナンス作業が行いやすくなるため、メンテナンスに必要な時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施例の概略説明斜視図である。
図2】本実施例の概略説明断面図である。
図3】本実施例の概略説明断面図である。
図4】本実施例の概略説明側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明にかかる蒸着装置の実施形態について、具体的な実施例を挙げて説明する。
【0020】
図1および図2は、本発明にかかる蒸着装置の一実施例を示す図である。図1は蒸着装置の内部構造の斜視図で、これらの構造は不図示の真空室の内部に設けられている。図2は、図1を蒸発源支持体3の短手方向における断図面である。
【0021】
まず、本発明にかかる蒸着装置の主要構成について説明した後に、その他の構成を説明する。
【0022】
蒸発源支持体3の上面には蒸発源設置部40が設けられており、蒸着源設置部40には成膜材料を収容した蒸発源2が設置されている。蒸発源支持体3の上面には、さらに、蒸発源2の四方を囲む遮蔽部5が設けられている。本明細書において、遮蔽部5は、蒸発源2の下部(蒸発源が設置されている蒸着室の底面)と上部(蒸発源の基板側)とを除く蒸発源2の周囲に存在し、この状態を「四方を囲む」と表現している。換言すれば、遮蔽部5は、蒸発源の側周に存在する。遮蔽部5は、蒸発源の側周方向への成膜材料の飛散を防止するように配置されていることが好ましい。
【0023】
蒸発源2は、一方向に長尺の形状である所謂ラインソースであって、材料放出口11が多数並設された上蓋(不図示)を容器本体に着脱自在に設けた構成となっている。蒸発源2の内部には、成膜材料を収容するための材料容器を備えており、上蓋を外すことにより、材料容器内の成膜材料の補充や交換が可能となっている。
【0024】
蒸発源2は、蒸発源設置部40に取り外し可能に設置される。蒸発源設置部40は、蒸発源2の底面とほぼ同じ面積を有しているため、蒸発源2の四方を囲んで設けられる遮蔽部5は、蒸発源設置部40の四方を囲んで設けられることになる。また、蒸発源設置部40は、蒸発源2の設置位置を決めるための不図示の位置決め部材が設けられている。そのため、蒸発源2を一旦取り外しても、再び同じ位置に設置することが可能となっている。
【0025】
遮蔽部5は、蒸発源2の側周面を囲む部材で構成されており、蒸発源2から放出される成膜材料の蒸気を遮蔽するものである。本実施例では、蒸発源2、即ち、蒸発源設置部40の四方にそれぞれの部材を垂直状態に立設して平面視矩形状の遮蔽部5が構成されている。蒸発源支持体3の上面には、さらに固定支持部材7が設けられており、固定支持部材7には、蒸発源2から基板1に向かって放出された成膜材料の蒸着粒子が基板1に対する入射角を制限するため、制限板4が設けられている。制限板4は、前記遮蔽部5の上方位置に配置されている。
【0026】
成膜により蒸発源2に収容されている材料の量が少なくなると、成膜速度が不安定になり、所定の膜厚が得られなくなったり膜質が低下したりしてしまう。このような状況が生じるのを抑制するため、蒸発源2のメンテナンスが行われる。蒸着装置メンテナンス時には、蒸発源2の上蓋を取り外して内部の清掃が行われ、内部に備える材料を収容する容器内に成膜材料が補充される。メンテナンスが必要となる間隔は、成膜時間と成膜速度に依存しているため、蒸着装置で量産機として用いる場合、メンテナンスの頻度は高くなる。
【0027】
ところが、蒸発源2の四方が遮蔽部5に囲われているため、このままの状態ではメンテナンスは非常に困難である。本実施例の場合、蒸発源2の上部には更に制限板4が配置されているためより困難である。特許文献1に示された従来の蒸着装置の構成では、メンテナンス作業の都度、制限板など蒸発源を囲んで設けられる部材の取り外し及び固定作業が必要となり、メンテナンス作業の効率が低下する。
【0028】
そこで、本発明にかかる蒸着装置では、遮蔽部5に開閉構造を設け、開閉構造によって、遮蔽部5が蒸発源を囲う状態(閉状態)と蒸発源が露出する状態(開状態)とに変更可能な、メンテナンス用の開閉部6を設けている。たとえば、蒸着時には、開閉部6を閉状態としておき、メンテナンス時などに、開閉構造を用いて、開閉部6を開くことができる。それにより、メンテナンス作業の効率が向上する。
【0029】
具体的には、遮蔽部5を、蒸発源2の短手方向の側面側に位置し、蒸発源支持体3に固定される、対向する一対の固定部材14と、蒸発源2の長手方向の側面側に位置し、一対の固定部材14の間で固定部材14に対して動かすことのできる一対の可動部材15とで構成する。
【0030】
可動部材15は、蒸発源2の長手方向より長尺となっており、一対の可動部材15は一対の固定部材14の間に対向して配置されている。可動部材15の両端部は、軸着部17によって固定部材14の内面下部に軸着されており、可動部材15を軸着部17で回転させて垂直立設状態から外方へ開いた状態にすることが可能な構成となっている。このような開閉構造により、蒸発源2が長手方向全長にわたって遮蔽された状態と露出された状態とに変更可能な、開閉部6を実現している。
【0031】
本実施例において、遮蔽部5は、蒸発源2から放出される成膜材料の蒸気を遮蔽する機能に加えて、蒸発源2から発せられる熱を遮蔽する機能を有している。従って、固定部材14および可動部材15は、内部に水等の冷媒が流通する冷媒流通路13が設けられた冷却板となっており、可動部材15の内側面には冷媒流通路13を塞ぐ閉塞板16が設けられている。
【0032】
固定支持部材7は、開閉部6の開閉動作を許容する開口を有する枠状に構成している。具体的には、固定支持部材7は、開閉部6の開閉動作に干渉しない位置に設けた4つの脚部18を有し、この脚部18の上端に水平材を架設した構成としている。
【0033】
4つの脚部18は、蒸発源2に対して、各固定部材14の開閉に用いられる軸着部17より外側の位置に立設されている。つまり、蒸発源の長手方向における脚部18の間隔は、蒸発源の長手方向における可動部材の長さよりも長くなっている。
【0034】
水平材は、固定部材14と平行な一対の短尺水平材19と、可動部材15と平行な一対の長尺水平材20とを有している。なお、各脚部18の高さは、水平材(19,20)が可動部材15の上端より高い位置に設けられるように設定されている。
【0035】
従って、蒸発源2は、4つの脚部18と水平材とで構成される、枠状の固定支持部材7によって囲まれた領域の中に配置されている。本実施例において固定支持部材7は断面視L字状のアングル材で構成されている。
【0036】
固定支持部材7の上面である長尺水平材20上には、一対の制限板4が設けられている。
【0037】
制限板4を設けることで、成膜材料の蒸着粒子が基板1へ入射する角度を制限され、マスクを用いた成膜において、マスクと基板との間に侵入する角度で基板に入射する蒸着粒子を遮蔽することができる。
【0038】
制限板4は、それぞれ長尺水平材20上に設けられたスライドガイド部材により、水平移動して自由に近接離反させることができ、所望の位置で固定できるようになっている。制限板4は長尺水平材20と略同じ長さを有しており、一対の制限板4同士の間隔を調整することによって、入射角の調整を容易に行うことができる。
【0039】
図3および図4に、可動部材15の開き回動により蒸発源2をその長手方向全長にわたって露出させた状態を示す。図3は蒸発源2の長手方向から見た図、図4は蒸発源2の短手方向から見た図である。このように、蒸発源2を長手方向全長にわたって露出させることで、蒸発源2の上蓋を取り外すこと等を容易に行えることになる。つまり、開閉部6を設けることにより、蒸発源2の周囲に設けられた部材の取り外し及び固定作業が不要となるので、メンテナンスの作業性が向上する。なお、図では、長手方向の側面側に位置する一対の可動部材15を開閉可能に構成しているが、メンテナンス作業が可能であれば、長手方向の側面側の一方だけに可動部材15を設け、他方を固定部材としてもよい。
【0040】
特に、制限板4は、成膜材料の蒸着粒子が基板1へ入射する角度を制限するための位置が重要であるため、一旦取り外してしまうと、取り外す前の状態を再現するのに相当な時間を要する。しかし、本発明の蒸着装置はメンテナンス用の開閉部6を有しているため、蒸着時に閉じている状態の可動部材15を、メンテナンス時に開いた状態とすることで、簡単にメンテナンスを行うことができる。このように、メンテナンス時に制限板4も取り外す必要がないため、制限板4の位置を維持したままメンテナンスを行うことができ、メンテナンスの作業性は格段に向上する。メンテナンスの終了後、再び可動部材15を閉じれば容易に蒸着可能な状態に戻すことができる。
【0041】
次に、図1、2に基づいて、本実施例の蒸着装置のその他の具体的な構成について詳細に説明する。
【0042】
本実施例では、蒸発源2を囲む遮蔽部5の開口部10を開閉するシャッタ9を可動自在に設けている。シャッタ9は一対設けられ、可動部材15より若干長尺で遮蔽部5の開口部10を閉塞可能に配置される。具体的には、各シャッタ9の両端部は、夫々固定部材14上にスライドガイド部材21を介して設けられている。そして、この固定部材14の上を各シャッタ9が近接離反して移動することで、前記開口部10を開閉する。
【0043】
また、シャッタ9は、遮蔽部5の開口部10を閉塞する水平板部22と、固定支持部材7の長尺水平材20と可動部材15との間隙を閉塞する垂直板部23とを有する構成としている。垂直板部23は、水平板部22の上面に水平部材22より少し短い断面視L字状のアングル材を設けて形成している。
【0044】
そして、シャッタ9を閉じた状態では、水平板部22の対向部が重なり合うように各水平板部22等を構成し、蒸着時にシャッタ9を開いた状態では、水平板部22が長尺水平材20と可動部材15との間隙(の大部分)を閉塞するように構成している(図1,2参照)。
【0045】
具体的には、遮蔽部5には、固定部材14の内方に、前記一対の可動部材15の対向間隔よりも若干幅が小さく、固定部材14よりも高さが高い矩形状の閉止用板体8を含む構成としている。
【0046】
この閉止用板体8には、シャッタ9の長手方向両端部及び幅方向外方側端部に夫々設けた折返部25,26と、可動部材15の内面側に設けた閉塞板16の両端部に設けた折返部27とが、このシャッタ9及び可動部材15を閉じた状態とした際に重なるように構成している。従って、上述したシャッタ9が閉塞する遮蔽部5の開口部10は、具体的には閉止用板体8と可動部材15とで囲まれる空間の開口部10である。
【0047】
また、本実施例においては、可動部材15の閉塞板16の折返部27が閉止用板体8の外側に重なり、この閉塞板16の外側にシャッタ9の折返部25,26が重なるように構成している。従って、蒸発源2の長手方向両端部側からの成膜材料の漏出が確実に防止されることになり、蒸発源2を蒸着前の慣らし運転等を、前記成膜材料を良好に前記空間に閉じ込めた状態で行うことが可能となる。
【0048】
以上から、本実施例によれば、図1,2に図示したように蒸着時にはシャッタ9を開いて遮蔽部5の開口部10を開放し、制限板4により入射角が制限された状態で蒸着を行うことができる。
【0049】
また、蒸発源2等のメンテナンス時には、図3,4に図示したようにシャッタ9を可動部材15及び閉塞板16が干渉しない位置まで開き、可動部材15を外方に開き回動させて固定支持部材7の脚部18と長尺水平材20とで囲まれる空間から蒸発源2をその全長にわたって露出せしめる。この状態で、蒸発源2の上蓋を取り外して遮蔽部5から取り出し、清掃や成膜材料の補充を行うことが可能となり、メンテナンス時間を短縮できる。また、蒸発源2のメンテナンスに限らず、固定部材14,可動部材15、シャッタ9等の他部材の清掃を行う際にも、固定支持部材7に設けた制限板4に触れる必要がなく、一度設定した入射角をメンテナンスの前後で維持できることになる。また、入射角の微調整も制限板4の離反度合いを調整することで容易に行えることになる。
【0050】
また、本実施例の蒸発源支持体3は、スライダを備えている。具体的には、蒸着室の底面に第一方向に延びるレール31を設け、このレール31に対して往復スライド移動可能な枠状の第一方向移動用スライダ32を設ける。そして、この第一方向移動用スライダ32の上面に第二移動方向に延びるレール33を設け、このレール33に対して往復スライド移動可能な第二方向移動用スライダ35を蒸発源支持体3の下部に設けている。この蒸発源支持体3の底面には、蒸発源支持体3を移動させるためのアーム部材34が連結され、このアーム部材34を駆動して蒸発源支持体3(蒸発源2)を第一方向若しくは第二方向に移動させることができる。
【0051】
従って、例えば第一方向に2つの蒸着領域を並設し、一つの蒸発源2を、一の蒸着領域で成膜移動方向(第二方向)に往復移動させて成膜を行った後、蒸着領域移動方向(第一方向)に移動させて他の蒸着領域で同様に成膜を行うこと等が可能となる。本実施例の場合、一の蒸着領域にて成膜を行う際には、蒸発源2の長手方向と交差する方向に蒸発源2を移動させて成膜を行う構成となっている。
【0052】
なお、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0053】
1 基板
2 蒸発源
4 制限板
5 遮蔽部
6 開閉部
7 固定支持部材
9 シャッタ
10 開口部
40 蒸発源設置部
図1
図2
図3
図4