特許第6277272号(P6277272)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6277272
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】質量分析装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 49/42 20060101AFI20180129BHJP
【FI】
   H01J49/42
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-529165(P2016-529165)
(86)(22)【出願日】2015年5月11日
(86)【国際出願番号】JP2015063411
(87)【国際公開番号】WO2015198721
(87)【国際公開日】20151230
【審査請求日】2016年11月28日
(31)【優先権主張番号】特願2014-129806(P2014-129806)
(32)【優先日】2014年6月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】吉成 清美
(72)【発明者】
【氏名】照井 康
【審査官】 遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−074042(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/057822(WO,A1)
【文献】 特表2002−502085(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/081445(WO,A1)
【文献】 特表2009−535761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 49/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の質量電荷比m/zを持つイオン種のみを通過させる、少なくとも4本の第1の棒状電極を含む質量分析部と、
前記第1の棒状電極に印加する電圧を調整・制御する制御する制御部と、
第1の棒状電極を通過したイオンを検出する検出部と、を備えた、質量分析装置において、
第1の棒状電極の少なくとも一方の端部における内接円の大きさは、第1の棒状電極の他の部分の内接円の大きさよりも大きく、
第1の棒状電極の少なくとも一方の端部は、互いに対向する部分が切り欠かれた傾斜形状を持つことを特徴とする、質量分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の質量分析装置において、
第1の棒状電極の少なくとも一方の端部は、可動式であることを特徴とする、質量分析装置。
【請求項3】
請求項1に記載の質量分析装置において、
第1の棒状電極の両端部における内接円の大きさは、第1の棒状電極の他の部分の内接円の大きさよりも大きいことを特徴とする、質量分析装置。
【請求項4】
請求項1において、
さらに、イオンを輸送する、イオンガイド部を備えることを特徴とする、質量分析装置。
【請求項5】
請求項4において、
イオンガイド部は、少なくとも2枚の板状電極を備えることを特徴とする、質量分析装置。
【請求項6】
請求項4において、
イオンガイド部は、少なくとも4本の第2の棒状電極を備えることを特徴とする、質量分析装置。
【請求項7】
請求項6において、
イオンガイド部を構成する第2の棒状電極に内接する内接円の大きさの方が、質量分析部を構成する第1の棒状電極に内接する内接円の大きさよりも大きいことを特徴とする、質量分析装置。
【請求項8】
請求項6において、
イオンガイド部を構成する第2の棒状電極の少なくとも一方の端部における内接円の大きさは、第2の棒状電極の他の部分の内接円の大きさよりも大きいことを特徴とする、質量分析装置。
【請求項9】
請求項8において、
第2の棒状電極の少なくとも一方の端部は、互いに対向する部分が切り欠かれた傾斜形状を持つことを特徴とする、質量分析装置。
【請求項10】
請求項8において、
第2の棒状電極の少なくとも一方の端部は、外側に折れ曲がった形状を持つことを特徴とする、質量分析装置。
【請求項11】
請求項8において、
第2の棒状電極の少なくとも一方の端部は、可動式であることを特徴とする、質量分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、四重極型質量分析計を用いた質量分析装置に係り、特に、生体内試料の分析用途の場合など、高い感度を必要とする質量分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、少なくとも4本の棒状電極から成り、前記棒状電極に直流電圧Uと高周波電圧Vqcos(Ωqt+ Φ0)とを印加された四重極型質量分析計を用いた質量分析装置では、特定の質量対電荷比 m/z を持つイオン種を質量選択・分離する質量分析部に試料からのイオンビームを入射させる際の、イオン損失の低下を目的に、質量分析部の前段に、質量分析部とは別に、少なくとも4本の棒状或いは板状電極から成り、高周波電圧Vicos(Ωit + Φ0)のみを印加された、イオン輸送部(イオンガイド部)が設置される場合が多い。
【0003】
そのとき、イオン輸送部の電極のうち、対向電極間の最短距離を直径とする内接円の半径をriとし、質量分析部の電極のうち、対向電極間の最短距離を直径とする内接円の半径をrqとする場合、ri=rqとなるように配置され、また、電圧に関しては、Vi=Vq、Ωiqとなるように電圧印加されている。以降、対向電極間の最短距離を直径とする内接円のことを棒状電極間の内接円と称する。
【0004】
また、特許文献1に記載されているように、イオン輸送部の電極に対して、イオンがイオン輸送部を入射する位置での、棒状電極間の内接円の半径をri1とし、イオンがイオン輸送部を出射する位置での、棒状電極間の内接円の半径をri2とした場合、ri1>ri2の関係が成り立つように、イオン輸送部電極が配置されていることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-238616公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
質量選択・分離対象の質量対電荷比 m/zを走査して、質量対電荷比 m/z毎にイオン検出数(マススペクトル)を出力して、質量分析する装置において、特に試料に含まれる微量成分を質量分析する場合など、最終的にイオンがカウント検出されるまでの間にイオン軌道が不安定化によるイオン数の損失が低いことが要求される。従来は、図3に示すように、イオンガイド部の入り口、質量分析部の入り口にて、電位ポテンシャル分布として、ピーク状電位ポテンシャル障壁ができ、電界の歪みが発生して、イオン軌道が不安定化して、イオン損失が発生していた。
【0007】
イオン損失は、主に以下で発生することが、シミュレーションの結果明らかになった。
【0008】
イオン輸送部(イオンガイド)の入り口でのイオン損失
質量分析部(四重極質量分析部)の入り口でのイオン損失
イオン損失とは、イオン輸送部や質量分析部の内側を通過するはずのイオンの軌道が不安定になり、イオン輸送部や質量分析部の外側に排出されてしまい、最終的に検出されるイオン数(検出感度)が低下してしまうことを言う。このイオン損失の原因は、電位ポテンシャル分布において、図5に示すようにピーク状のポテンシャル障壁が発生し、イオン軌道が不安定化するためと考える。上記の課題を解決するためには、イオン輸送(イオンガイド)部の入り口、質量分析部の入り口に生成される、ピーク状電位ポテンシャル障壁による電界の歪みを軽減する必要が
ある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の質量分析装置は、特定の質量電荷比m/zを持つイオン種のみを通過させる、少なくとも4本の第1の棒状電極を含む質量分析部と、前記第1の棒状電極に印加する電圧を調整・制御する制御する制御部と、第1の棒状電極を通過したイオンを検出する検出部と、を備え、第1の棒状電極の少なくとも一方の端部における内接円の大きさは、第1の棒状電極の他の部分の内接円の大きさよりも大きい。
【0010】
例えば、本発明では、四重極質量分析装置において、前記の課題を解決するため、主に以下の(1)−(2)などの手段によって、イオン輸送部の入り口および質量分析部の入り口付近に生成される電位分布に対して、急激に増減する電位分布(ピーク状分布)を軽減させることにより、検出されるイオン数(検出感度)を向上させる装置である。
【0011】
(1)イオン輸送部(イオンガイド)の複数ある棒状電極の内接円の半径をriとし、質量分析部(四重極質量分析部)の複数ある棒状電極の内接円の半径をrqとした場合、ri>rqの関係が成り立つように、イオンガイドおよび四重極質量分析部の電極を配置する。
【0012】
(2)質量分析部(四重極質量分析部)の複数ある棒状電極に対して、イオンが入射する入り口付近の電極形状を、イオン入射する方向とは逆向きに、内接円径が徐々に広がるような傾斜(テーパー)形状を持つ。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、質量分析部入り口付近にて、生成されていた電位ポテンシャルの急激な増減(ピーク状)分布、つまり、電極端部に生成される電界歪みが軽減されるため、質量分析部入り口付近のイオン透過率が大幅に向上し、高感度な質量分析が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のイオン輸送部および質量分析部の各電極配置、構造の概略図である。
図2】本発明による質量分析データを計測する質量分析装置全体の概略図である。
図3】四重極電場内におけるイオン安定透過領域図である。
図4】イオンガイド、及び、質量分析部の、従来の電極配置・形状の場合に、生成される電位ポテンシャル分布とイオン不安定化損失累計数を、シミュレーションにより導出した結果をまとめた図である。
図5】イオンが、イオン輸送部4本以上の棒状電極間を、入射する際に、安定に通過、或いは、不安定に出射する際の概念図である。
図6】本発明の第一実施例による、イオンガイド、及び、質量分析部の電極配置・形状の場合に、生成される電位ポテンシャル分布とイオン不安定化損失累計数を、シミュレーションにより導出した結果をまとめた図である。
図7】本発明の第一実施例における、質量分析部の電極入り口形状に対して、別の形態の電極形状を表す概念図である。
図8】本発明の第二実施例による、イオン輸送部の各電極の入り口端部形状を表す概念図である。
図9】本発明の第二実施例による、イオン輸送部の各電極の入り口及び出口の端部形状を表す概念図である。
図10】本発明の第三実施例による、イオン輸送部および質量分析部の各電極に印加する電圧制御方法の概略図である。
図11】本発明の第四実施例における、質量分析部の電極入り口端部の可動方式の概念図である。
図12】本発明の第四実施例における、質量分析部の電極入り口端部の可動方式の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照し、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0016】
まず、第一の実施例について、図1〜7を用いて説明する。図1は第一実施例の特徴である、イオン輸送部(イオンガイド)および質量分析部(四重極質量分析部)を示す図であり、図2は、本実施例の質量分析装置の全体構成図である。まず、質量分析装置11の分析フローを示す。
【0017】
質量分析対象の試料は、ガスクロマトグラフィー(GC)又は液体クロマトグラフィー(LC)などの前処理系1にて、時間的に分離・分画され、次々とイオン化部2にて、イオン化された試料イオンは、イオン輸送部3を通って、質量分析部4に入射され、質量分離される。ここで、mはイオン質量、zはイオンの帯電価数である。質量分析部4への電圧は、制御部8から制御されながら、DC電圧源9から印加される。分離されたイオンは、イオン検出部5で検出され、データ処理部6でデータ整理・処理され、その分析結果である質量分析データは表示部7にて表示される。この一連の質量分析過程−試料のイオン化、試料イオンビームの質量分析部3への輸送及び入射、質量分離過程、及び、イオン検出、データ処理、ユーザ入力部10の指令処理の全体を制御部8で制御している。
【0018】
ここで、イオン輸送部3及び質量分析部4は、4本の棒状電極から成る四重極質量分析計としているが、4本以上の棒状電極から構成する多重極質量分析計としてもよい。また、図1に示すように、棒状電極の長手方向をz方向、断面方向をx,y平面とすると、棒状電極のx,y断面図にて示すように、4本の棒状電極は、円柱電極でも良く、また、点線で示したような双極面形状をした棒状電極でも良い。
【0019】
質量分析部4における4本の電極には、向かい合う電極を1組として、2組の電極13a,13bには、直流電圧と高周波電圧の重畳した電圧の逆位相の電圧、+(U+VcosΩt)、−(U+VcosΩt)が印加され、4本の棒状電極間には、(1)式に示す、高周波電界Ex, Eyが生成される。
【0020】
【数1】
【0021】
イオン化された試料イオンは、この棒状電極間の中心軸(z方向)に沿って導入され、(1)式の高周波電界の中を通過する。このときのx, y方向のイオン軌道の安定性は棒状電極間でのイオンの運動方程式(Mathieu方程式)から導かれる次の無次元パラメータa、qによって決まる。
【0022】
【数2】
【0023】
【数3】
【0024】
ここで、価数z=1としている。z≠1の場合は(2)、(3)式中の。r0は対向するロッド電極間の距離の半値、eは素電荷、mはイオン質量、U はロッド電極に印加する直流電圧、V、Ωは高周波電圧の振幅及び角周波数である。r0、U、V、Ωの値が決まると、各イオン種はその質量数mに応じて、図3のa−q平面上の異なる(a,q)点に対応する。このとき、(2)、(3)の式から、各イオン種の異なる(a,q)点は、(4)式の直線上に全て存在することになる。
【0025】
【数4】
【0026】
X, y両方向のイオン軌道に対し、安定解を与えるa、qの定量的範囲(安定透過領域)を図3に示す。ある特定の質量数Mを有するイオン種のみを棒状電極間に通過させ、その他のイオン種をQMSの外に不安定出射させて質量分離するためには、図3の安定透過領域の頂点付近と交わるようにU,V比を調整する必要がある(図3)。安定透過するイオンが振動しながら、棒状電極間をz方向に通過するのに対して、不安定化イオンは振動が発散して、x、y方向に出射する。(4)式の直線は質量走査線と呼ばれ、質量走査線の傾き(U/V比)を維持しながら、U、V値を順次走査することで、棒状電極間を安定透過して質量分離されるイオン種の質量数Mが走査される。
【0027】
【数5】
【0028】
【数6】
【0029】
このとき、(2)、(3)式を変形した(5)、(6)式から、通常は、イオン質量mに比例させて、U,V値を増加させて、イオン種の質量数Mが走査される。
【0030】
一方、イオン輸送部3(イオンガイド)では、4本の電極には、向かい合う電極を1組として、2組の電極14a, 14bには、各々逆位相の高周波電圧のみの電圧、+VcosΩt、−VcosΩtが印加され、4本の棒状電極間には、(7)式に示す、高周波電界Ex, Eyが生成される。
【0031】
【数7】
【0032】
イオン輸送部には、直流電圧が印加されないため、U=0となり、(4)式から、イオン輸送部の場合の質量走査線は、(8)式となる。
【0033】
【数8】
【0034】
従って、図3に示すように、安定透過領域とa=0の走査線の交わる領域に相当するすべてのイオン種が、理論上透過できるはずである。しかし、実際には、図4に示すように、イオン輸送部3(イオンガイド)の入り口には、急激なポテンシャルの増減(ピーク状)分布が生成され、それにより、イオンガイド入り口でイオンの一部が不安定化して、イオンガイドを通過しないため、イオン数が損失し、検出感度の低下を招く。イオンガイド部或いは質量分析部の電極入り口付近で、イオンの一部が不安定化する様子の概念図を図5に示した。
【0035】
本実施例では、図1に示すようにイオンガイド部の4本乃至はそれ以上の本数の電極の内接円の半径riが質量分析部の4本以上の棒状電極の内接円半径rqより大きくなるように、それぞれの電極を配置することを特徴とする。
【0036】
【数9】
【0037】
さらに、質量分析部の各棒状電極の入り口端部の形状が、図1に示すように、テーパー形状になっていることを特徴とする。このテーパー形状は、図1のy−z平面図に示すように、イオン入射する方向とは逆向きに、内接円径が徐々に広がるような傾斜(テーパー)形状を持つことを特徴とする。これにより、図6に示すように、イオンガイド及び質量分析部の入り口付近に生成される電位ポテンシャルの急激な増減(ピーク状)分布が軽減しており、それに伴い、イオンガイド及び質量分析部入り口付近でのイオン損失率が大幅に低下している、つまり、イオン透過率が大幅に向上していることをシミュレーションにより確認できた。従って、本実施例により、イオンガイド及び質量分析部の入り口付近に生成される電位ポテンシャルの急激な増減(ピーク状)分布が軽減し、イオン感度が向上することが期待できると考える。ここで、質量分析部の入り口における各電極形状は、テーパー形状の代わりに、図7のように、入り口側の方が広がるように、外側に向けて曲がったような電極形状でも良い。また、図1の場合でも、図7のような場合でも、テーパー形状の部分の長さla、及び、曲率を持っている部分の長さ(z方向長さ)laは、質量分離精度を維持するため、電極の全体長さがl0とすると、l0/3以下が望ましい。
【0038】
【数10】
【実施例2】
【0039】
次に、第二の実施例について、図8,9を用いて説明する。ここでは、図8に示すように、イオン輸送部(イオンガイド部)においても、入り口端部の電極断面形状が傾斜形状を持つような電極形状であることを特徴とする。本実施例によると、第一の実施例での、質量分析部の電極入り口付近の場合と同様に、イオン輸送部の入り口付近で、電位ポテンシャルの急激な増減(ピーク状)分布が軽減され、イオン軌道の不安定化が阻止され、安定透過する効果が期待できる。図9に示すように、イオン輸送部、質量分析部の電極において、入り口端部のみならず、出口端部に対しても、テーパー形状にすることで、出口部分の急激な電位分布の増減による電界の歪みが軽減されると考え、出口部分においてもイオン透過率向上の効果があると考える。
【実施例3】
【0040】
次に、第三の実施例について、図10を用いて説明する。ここでは、図10に示すように、イオン輸送(イオンガイド)部の電極に印加する高周波電圧±Vicos(Ωit + Φ0)と、質量分析部の電極に印加する、直流電圧Uと高周波電圧Vqcos(Ωqt+ Φ0)の重畳電圧±(U+ Vqcos(Ωqt+ Φ0))に対して、イオン輸送(イオンガイド)部3の電極に印加する高周波電圧の振幅値Viと、質量分析部の電極に印加する、高周波電圧Vqcos(Ωqt+ Φ0)の振幅値Vqとの間に、次の関係が成り立つように印加する。
【0041】
【数11】
【0042】
イオン輸送部の電位分布の急激な増減を軽減するために、イオン輸送部の各電極の内接円半径riを、質量分析部の各電極の内接円半径rqより大きくするといった第一の実施例に比べ、本実施例では、イオン輸送部の各電極の内接円半径ri =rqの状態で、印加電圧の調整のみで、イオン輸送部の電位分布の急激な増減を軽減可能である。このとき、印加電圧で微調整が可能である分、イオン種毎にイオン透過率が異なる場合などに、イオン種毎の調整が可能となり、分析対象の質量対電荷比の広い範囲(マスレンジ)で、イオン感度の向上が期待できると考える。
【実施例4】
【0043】
次に、第四の実施例について、図11,12を用いて説明する。ここでは、図11,12に示すように、質量分析部の各電極の入り口端部におけるテーパー形状、或いは、折れ曲がり形状部分が可動式であることを特徴とする。つまり、各電極の入り口端部におけるテーパー形状、或いは、折れ曲がり形状部分の角度を微調整できることから、イオン種毎にイオン透過率が異なる場合などに、イオン種毎の調整が可能となり、分析対象の質量対電荷比の広い範囲(マスレンジ)で、イオン感度の向上が期待できると考える。また、イオン輸送(イオンガイド)部への近接距離も調整可能となるため、イオン輸送部―質量分析部の間でのイオン損失がさらに抑制される可能性があると考える。
【符号の説明】
【0044】
1 前処理系
2 イオン化部
3 イオン輸送部
4 質量分析部
5 イオン検出部
6 データ処理部
7 表示部
8 制御部
9 DC電圧源
10 ユーザ入力部
11 質量分析装置
12 AC電圧源
13a,b,c,d 電極
14a,b,c,d 電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12