【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 公益社団法人土木学会、土木学会 平成25年度全国大会 第68回年次学術講演会 講演概要集、第51−52頁、平成25年8月1日 [刊行物等] 公益社団法人土木学会、土木学会 平成25年度全国大会 第68回年次学術講演会、平成25年9月4日 [刊行物等] 一般財団法人電力中央研究所、電力中央研究所報告 研究報告:N13005、第1−24頁、平成25年11月
【文献】
小峯秀雄・緒方信英,ベントナイト緩衝材・埋戻し材の透水特性と簡易評価法の提案,土木学会論文集,日本,2002年 6月,No.708/III-59,133-144
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、極めて透水性が低い材料であっても極少量の水の移動を適切に測定して透水性を評価することができる透水性能評価装置及び透水性能評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の透水性能評価装置は、被覆対象物を覆う低透水材料の透水性能の評価を行う低透水材料の透水性能評価装置において、低透水性材料の一対の対向面を保持する一対の多孔板部材と、一方の多孔板部材に接続される給水経路と、他方の多孔板部材に接続される排水経路と、給水経路に供給される給水量を計測する流入流量計測手段と、排水経路から排出される排水量を計測する流出流量計測手段と、流入流量計測手段で計測される給水量、及び、流出流量計測手段で計測される排水量に基づいて低透水材料の水の飽和状況を判断する飽和判断手段と、飽和判断手段により低透水性材料が水で飽和されていると判断された際に、低透水材料の透水性能を評価する透水性能評価手段とを備え、飽和判断手段は、排水経路を開閉する開閉手段と、給水の圧力を調整する給水圧力調整手段とを有し、開閉手段で排水経路を閉じて給水圧力調整手段により給水圧を上昇させた状態で、給水ができなくなった時に、低透水性材料の水が飽和したことを判断することを特徴とする。
【0009】
請求項1に係る本発明では、開閉手段で排水経路を閉じた状態で、低透水材料の一端の給水経路から水を圧入し、給水経路から水が流入しない状態となった際に、飽和判断手段により、低透水材料の中に空気が残留しておらず、低透水材料の中が水で飽和したと判断し、飽和状態が判断された後に排水経路から排水を行って透水性能評価手段により低透水材料(例えば、覆土、底部遮水材料、鉛直遮水壁材料)の透水性能を評価する。
【0010】
従って、低透水性材料の中が水で飽和した後に、低透水性材料の透水性能を評価することができ、低透水性材料の内部に存在する空気が透水を阻害するといった影響を排除して水の通水状態だけを判断することができる。このため、極めて透水性が低い低透水性材料であっても極少量の水の移動を把握して透水性を評価することが可能になる。
【0011】
そして、請求項2に係る本発明の透水性能評価装置は、請求項1に記載の透水性能評価装置において、飽和判断手段は、給水圧力調整手段により給水圧を複数段階で上昇させ、低透水材料の水の飽和状況を判断することを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る本発明では、低透水材料の中を水で飽和させる際に、複数段階の給水圧力で水を圧入することで飽和状態を判断し、透水性を評価することができる。
【0013】
また
、本発明の透水性能評価装置は、請求項1もしくは請求項2に記載の透水性能評価装置において、飽和判断手段は、排水経路の水の流出圧力の状況を調整して低透水性材料の内部の圧力を調整する背圧調整手段を有し、一旦、飽和状態が判断された際に、給水圧力調整手段により給水圧を上昇させると共に、背圧調整手段により排水経路の水の流出抵抗を上昇させ、低透水性材料の飽和状況を判断する
ことが好ましい。
【0014】
これにより、飽和状態が判断された後、給水圧を高くすると共に排水経路の水の流出抵抗を上昇させ(背圧を高くし)、低透水性材料の内部の圧力を一様に高めた状態で低透水性材料の透水性能を評価する。そのため、一旦、飽和状態が判断された後に水の溶存空気が低透水性材料中に蓄積した場合でも、空気が透水を妨げる影響を排除した状態で飽和状態および透水性を判断することができる。
【0015】
上記目的を達成するための
請求項3に係る本発明の透水性能評価方法は、被遮蔽部材を覆う材料の透水性能の評価を行う透水性能評価方法において、前記材料の一端の入口部から水を圧入し、圧入された水を前記材料の他端の出口部から排水することで、透水性能の評価を行うに際し、前記出口部からの排水を停止して前記入口部から水を圧入し、前記入口部から水が流入しない状態となった際に前記覆土材料の中が水で飽和したと判断し、飽和状態が判断された後に前記出口部から排水を行って透水性能を評価することを特徴とする。
【0016】
請求項3に係る本発明では、被遮蔽部材を覆う材料(低透水性材料:例えば、覆土、底部遮水材料、鉛直遮水壁材料)の中が水で飽和した後に、透水状況を判断するので、材料の内部に存在する空気の影響を排除して水の通水状態を判断することができる。このため、極めて透水性が低い材料であっても極少量の水の移動を測定して透水性を評価することが可能になる。
【0017】
そして、
請求項4に係る本発明の透水性能評価方法は、
請求項3に記載の透水性能評価方法において、前記材料の一端の入口部から水を圧入する際に、複数段階の圧力で水を圧入することを特徴とする。
【0018】
請求項4に係る本発明では、材料の中を水で飽和させる際に、複数段階の圧力で水を圧入して飽和状態を判断し、透水性を評価することができる。
【0019】
また、
請求項5に係る本発明の透水性能評価方法は、
請求項3もしくは請求項4に記載の透水性能評価方法において、飽和状態が判断された後に前記出口部から排水を行う際に、前記入口部からの水の圧入圧力を高くして透水性能を評価することを特徴とする。
【0020】
請求項5に係る本発明では、飽和状態を判断した後、材料に水を比較的容易に通水させ
ることができる。
【0021】
また、
請求項6に係る本発明の透水性能評価方法は、
請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の透水性能評価方法において、飽和状態が判断された後に、流入流出流量が一定になったことを確認し、前記入口
部からの圧入圧力、及び、前記出口
部からの排水圧力を同時に高くした後に、透水性能を評価することを特徴とする。
【0022】
請求項6に係る本発明では、飽和状態が判断された後、入口
部からの圧入圧力、及び、出口
部からの排水圧力を同時に高くした後、透水性能を評価するので、一旦、飽和状態が判断された後に水の溶存空気が材料に侵入し蓄積した場合でも、空気が透水を妨げる影響を排除した状態で飽和状態を判断することができる。
【0023】
また、
請求項7に係る本発明の透水性能評価方法は、
請求項3から請求項6のいずれか一項に記載の透水性能評価方法において、評価される前記透水性能は、通水圧力に対する流量の関係に基づいて算出される透水係数であることを特徴とする。また、
請求項8に係る本発明の透水性能評価方法は、
請求項3から請求項7のいずれか一項に記載の透水性能評価方法において、前記材料は、ベントナイトを含む材料であることを特徴とする。
【0024】
請求項7に係る本発明では、通水圧力(動水勾配)と単位時間当たりの通水量である流量(流速)に基づいて算出される透水係数により透水性能を評価することができる。また、
請求項8に係る本発明では、ベントナイトを含む低透水性材料の透水性能を精度良く評価することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の透水性能評価装置は、極めて透水性が低い低透水性材料であっても極少量の水の移動を把握して透水性を評価することが可能である。
【0026】
また、本発明の透水性能評価方法は、極めて透水性が低い材料であっても適切に試験体を飽和させた後に極少量の水の移動を測定して透水性を評価することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
放射性廃棄物の処分施設では、透水性が極めて低い低透水性材料で施設の部材を覆うことが検討されている。低透水性材料として、ベントナイトと砂を混合した材料を用いることが検討されている。本発明の透水性能評価装置は、透水性が極めて低い、ベントナイトと砂を混合した材料(試験体:低透水性材料)の透水性能を厳密に評価するための評価装置及び評価方法である。
【0029】
ベントナイトと砂を混合した材料の試験体は、所定の大きさの円柱状に形成され、軸方向に水を送った際の圧力や通水量により透水性が評価される。この場合、試験体の中に空気が存在し不飽和状態であると、空気により試験体の内部の水路が阻害されて通水状態が不適正になる虞があり、また、試験体の膨潤状態も時間により異なることが考えられる。このため、本発明の透水性能評価装置及び透水性能評価方法は、試験体の中が水で飽和している状態で透水性能を評価するようにしている。
【0030】
これにより、試験体の内部に存在する空気の影響を排除して水の通水状態だけを判断することができ、極めて透水性が低い低透水性材料の試験体であっても極少量の水の移動を把握して透水性を評価することが可能になる。
【0031】
図1に基づいて透水性能評価装置を説明する。
【0032】
図1には本発明の一実施例に係る透水性能評価装置を概略的に表した断面状況を示してある。
【0033】
透水性能評価装置1は、ステンレス製のセル2、及び、セル2の上部に設置されるステンレス製の排出ベース3を有している。セル2と排出ベース3の間に試験体リング4が備えられ、試験体リング4の内側に円柱状の試験体5(低透水性材料)が保持される。
【0034】
試験体リング4の内側におけるセル2の上面には試験体5の下端面に接触する多孔質金属盤6(多孔板部材)が備えられ、試験体リング4の内側における排出ベース3の下面側には試験体5の上端面に接触する多孔質金属盤7(多孔板部材)が備えられている。
【0035】
セル2に対して排出ベース3が所定の状態に取付けられることで、試験体5が透水性能評価装置1にセットされる。つまり、試験体リング4に試験体5を挿入し、セル2に対して排出ベース3を所定の状態に固定することで、試験体5の上下の端面が多孔質金属盤6、7に面接触し、試験体5が保持されて透水性能評価装置1に試験体5がセットされる。
【0036】
セル2に備えられた多孔質金属盤6には水の供給経路11(給水経路)が接続されている。供給経路11から多孔質金属盤6に水が供給されることにより、多孔質金属盤6の盤面に水が均等に広がり、試験体5の下端面に均等な状態で水が供給される。
【0037】
供給経路11には入口三方弁12が備えられ、入口三方弁12の第1入口路13には供給される水の流量が検出される流入流量検出手段14(流入流量計測手段)が設けられている。流入流量検出手段14には、所定圧力の水を供給するための給水圧力調整手段15が接続されている。入口三方弁12の第2入口路16には入口吸引手段17(吸引ポンプ)が接続され、入口吸引手段17の駆動により多孔質金属盤6(試験体5)に吸引力が作用して試験体5が脱気される。
【0038】
排出ベース3に備えられた多孔質金属盤7には水の排出経路21(排水経路)が接続され、多孔質金属盤7に均一な状態で透水された水が排出経路21に集められて排出される。排出経路21には開閉弁22(開閉手段)が備えられ、開閉弁22の流末側には排出される水の流量が検出される流出流量検出手段23(流出流量計測手段)が設けられている。
【0039】
流出流量検出手段23の流末側には出口三方弁24が設けられ、出口三方弁24の第1出口路25から図示しない回収部に排出水が送られる。出口三方弁24の第2出口路26には、排出経路21の水の流出抵抗を上昇させる(背圧を高くする)排水圧力調整手段27が接続されている。入口側の給水圧力が高められた際に、排水圧力調整手段27により背圧が高められる。
【0040】
図2に基づいて給水圧力調整手段15、及び、排水圧力調整手段27の概念を説明する。
【0041】
供給経路11に給水圧力調整手段15が接続され、排出経路21に排水圧力調整手段27が接続されている。給水圧力調整手段15、及び、排水圧力調整手段27は、水が入れられた筒状容器を備え、筒状容器に空気圧力が加えられることで、供給経路11、及び、排出経路21に所定圧力で水を圧送する。
【0042】
例えば、給水圧力調整手段15の空気圧を調整することで、所定の圧力(AkPa)の圧力の水が供給経路11に送られ、多孔質金属盤6に所定圧力の水が供給される。同時に、排水圧力調整手段27の空気圧を調整することで、所定の圧力(BkPa:A>B)の圧力の水が排出経路21に送られ、排出経路21の水の流出抵抗が上昇して背圧が高くされる。即ち、試験体5の中の圧力が一様にBkPaだけ高められる。
【0043】
排出経路21からは、給水圧力調整手段15からの供給圧力と、排出経路21に加えられる流末側の圧力の差の圧力の水が排出される。ここでは、流末側の圧力は試験体5の内部で一様に高まる圧力と等しいため、流末側の圧力は背圧と等しい。
【0044】
例えば、筒状容器は二重管で構成され、外側と内側に水が入れられ、両側に一定圧力の空気圧が作用し、内側の水は排出されて試験体5に送られる構造が採用される。二重管に圧力が一定に加えられることにより、内側の容器が体積変化することはなく、また、筒状容器の中の水が蒸発しにくくなり、少量の水の供給を行う場合であっても、蒸発の影響を軽減することができる。
【0045】
尚、筒状容器に目盛りを付け、目盛りに基づいて水の量を管理することで、流量検出手段とすることも可能である。
【0046】
図1に戻り透水性能評価装置の説明を続ける。
【0047】
透水性能評価装置1には試験体5の圧力を検出するための圧力検出手段31が設けられ、圧力検出手段31により試験体5の内部の水圧が検出され、試験体5の脱気の進捗状況、大気圧との差異を定量的に確認することができる。
【0048】
尚、図には、試験体5に圧力検出手段31を直接接続した状態を示しているが、例えば、圧力検出手段31により供給経路11の圧力を検出し、試験体5の内部の水圧を検出するようになっている。試験体5の水圧を直接検出することも可能である。
【0049】
また、透水性能評価装置1のセル2にはロードセル32(荷重計)が備えられ、ロードセル32により試験体5の膨潤圧が計測され、試験体5の膨潤の状態を確認することができる。例えば、試験体5の膨潤圧が定常化したことを根拠に、ベントナイト系材料は概ね飽和したと判断することができる。そして、透水性能評価装置1は、流入流量検出手段14、流出流量検出手段23、圧力検出手段31の検出情報が入力される制御装置35を備えている。
【0050】
制御装置35からの指令により、入口三方弁12の第1入口路13と第2入口路16の切換えの制御、給水圧力調整手段15の動作の制御(空気圧調整)、入口吸引手段17の駆動の制御が実施される。また、制御装置35からの指令により、開閉弁22の開閉の制御、出口三方弁24の第1出口路25と第2出口路26の切換えの制御、排水圧力調整手段27の動作の制御(空気圧調整)が実施される。
【0051】
制御装置35には、流入流量検出手段14、流出流量検出手段23、圧力検出手段31の検出情報に基づいて、試験体5の中の水圧の状態、試験体5を透過する水の状態を認識し、試験体5の中が水で飽和したか否かを判断する飽和判断機能(飽和判断手段)が備えられている。更に、制御装置35には、試験体5に通水するための圧力と、試験体5に対し流入・流出する水の量により、透水状態(透水係数)を導く透水係数判断機能(透水性能評価手段)が備えられている。
【0052】
そして、制御装置35には、試験体5の中が水で飽和したことが飽和判断機能で確認された状態の時に、透水係数判断機能で導かれた透水係数を試験体5の透水係数として判定する判定機能が備えられている。判定機能では、ロードセル32で計測された試験体5の膨潤圧、間隙圧の状況が加味されて、飽和の判断をした上での透水係数が決定される。
【0053】
図3から
図7に基づいて、上述した構成の透水性能評価装置1による本発明の一実施例に係る透水性能評価方法を説明する。
【0054】
図3から
図6には透水性能評価方法を実施している状態の動作の説明、
図7には給水圧、背圧と流量の関係を説明するグラフである。
【0055】
図2から
図6に基づいて具体的な手順を説明する。
【0056】
試験体5の上下の端面に、水の流れにより微粒子が装置の外に流出するのを防ぐため、微細孔径の高分子フィルターを敷き、試験体5を試験体リング4に配してセル2に排出ベース3を固定し、試験体5を透水性能評価装置1に設置する。
【0057】
図3に示すように、開閉弁22閉じると共に、入口三方弁12を第2入口路16側に切り換える。入口吸引手段17を駆動して試験体5の内部を減圧し(真空にし)、所定時間の間、真空雰囲気を維持して試験体5を脱気する。
【0058】
図4に示すように、入口三方弁12を第1入口路13側に切換え、給水圧力調整手段15を動作させて(空気圧を調整して)供給経路11から水を供給する。供給される水には、脱気したイオン交換水が適用され、供給量は流入流量検出手段14により計測される。圧力検出手段31により試験体5の内部が大気圧(0kPa:ゲージ圧)になったことが確認され、且つ、流入流量検出手段14により所定量の給水が行われたことが確認される。
【0059】
図5に示すように、開閉弁22を開き、出口三方弁24を第1出口路25側に切り換える。流入流量検出手段14で給水流量が計測されると共に、流出流量検出手段23で排出水流量が計測される。
【0060】
流入流量検出手段14で計測される給水流量に対し、流出流量検出手段23で計測される排出水流量が少ない場合、試験体5の内部に空気が存在し、水で飽和していない状態であると判断される。
【0061】
流入流量検出手段14で計測される給水流量と、流出流量検出手段23で計測される排出水流量とが一致した場合、試験体5の内部の水がおおむね飽和した状態であると推定される。また、ロードセル32により試験体5の膨潤圧が一定になったことが計測された場合に、試験体5の内部の水がおおむね飽和した状態であると推定される。
【0062】
この状態で開閉弁22を閉じ(
図4の状態)、給水圧力を上げて飽和状態であるか否かを確認する。即ち、開閉弁22を閉じた状態で給水圧力を上げた際に、水が供給されれば試験体5の中に空気が存在していたことになり、水が供給される量を測定することにより、飽和状態を評価する。給水圧力を上げても水が供給されない状態になった時は、飽和状態であると判断する。
【0063】
試験体5の内部が水で飽和した状態であると判断された状態で、
図5に示すように、開閉弁22を開き、その時の給水圧力と流量により、透水性能が評価される。この場合、給水圧力を複数段階で高くして(水の圧入圧力を高くして)、即ち、動水勾配を増加して透水性を評価することも可能である。
【0064】
これにより、試験体5の内部に存在する空気の影響を排除して水の通水状態だけを判断することができ、極めて透水性が低い材料である試験体5であっても材料を水で適切に飽和させ、極少量の水の移動を把握して透水性を正確に評価することが可能になる。
【0065】
そして、低透水性材料の試験体5の中を水で飽和させる際に、複数段階の圧力で水を圧入するので、早期に飽和状態を判断することができ、透水性(透水係数)を早期に評価することができる。
【0066】
透水係数が確かであることを確認する場合、流入流出流量が一定になったことを確認し(飽和状態が判断された後)、
図5に示すように、出口三方弁24を第2出口路26側に切り換え、給水圧力調整手段15により給水圧を段階的に上昇させると共に、差圧が同じになるように、排水圧力調整手段27により排出経路21の背圧を段階的に高くする。
【0067】
供給圧力と排出経路21の背圧を高くすることで、差圧を一定にした状態で試験体5の内部の圧力を一様に高くすることができ、一旦、飽和状態が判断された後に水の溶存空気が試験体5に侵入し蓄積した場合でも、空気が透水経路を妨げる影響を排除した状態で飽和状態を判断することができる。
【0068】
例えば、給水圧力調整手段15による給水圧を、0.1MPa、0.3MPa、0.5MPa、0.7MPa、0.9MPa、1.1MPaと段階的に上昇させる。同時に、排水圧力調整手段27による排出経路21の圧力(流末側の圧力)を、0MPa、0.2MPa、0.4MPa、0.6MPa、0.8MPa、1.0MPaと上昇させる。つまり、差圧が0.1MPaに維持されるように、給水圧と流末側の圧力を段階的に上昇させる。
【0069】
給水圧(MPa)及び流末側の圧力(MPa)と、流量Q(m
3/s)の関係の一例を
図7に示してある。流末側の圧力が試験体5の内部で一様に高まった圧力に等しくなった際の圧力を背圧と呼ぶ。
【0070】
図に示すように、給水圧が0.1MPaで流末側の圧力が0MPaの場合に、流量QがQ0であり、給水圧を0.3MPa、0.5MPa、0.7MPaまで段階的に上昇させると同時に、流末側の圧力を0.2MPa、0.4MPa、0.6MPaと段階的に上昇させることで、流量QがQ0からQ1まで増加する。その後、給水圧0.7MPaで流末側の圧力、即ち、背圧0.6以降の圧力では、差圧が0.1MPaの状態で流量QがQ1の状態が維持される。
【0071】
これは、一旦、飽和状態が判断された後に水の溶存空気が試験体5(低透水性覆土)に侵入して流量QがQ0に低下した状態になり、流末側の圧力を上昇させることで、背圧が高まり、侵入した空気を圧縮して流量Qが本来の飽和状態の時の流量QであるQ1に増加した状態にされたといえる。
【0072】
これにより、一旦、飽和状態が判断された後に水の溶存空気が試験体5に侵入したとしても、給水圧を0.7MPaに上昇させ、背圧を0.6MPaに上昇させることで、侵入した空気を排除した状態にすることが可能になることがわかる。
【0073】
そして、空気による影響が排除された状態の試験体5の透水係数は、給水圧と流末側の圧力の差圧である0.1MPaの圧力に対する流量Q1の関係で評価することができる。
【0074】
つまり、給水圧力調整手段15により給水圧を上昇させると共に、排水圧力調整手段27により排出経路21の背圧を高くして水の溶存空気の影響を排除した状態で透水係数を評価することができる。
【0075】
尚、説明の便宜上、給水圧を0.1MPa、0.3MPa、0.5MPa、0.7MPa、0.9MPa、1.10MPaと例示し、背圧を0MPa、0.2MPa、0.4MPa、0.6MPa、0.8MPa、1.0MPaと例示したが、実際の圧力値は、材料の種類、試験体5に存在する空気の量、装置の性能を勘案して定めるものである。
【0076】
ベントナイトと砂を混合した低透水性材料の試験体5は、不飽和状態であると、空気により試験体の内部の水路が阻害されて通水が不適正になる虞があり、また、試験体5の膨潤状態も時間により異なることが考えられる。上述した低透水性材料の透水性能評価装置1では、試験体5の中が水で飽和している状態で透水係数を評価しているので、試験体5の中の水路が阻害されて透水状況が変化したり、膨潤状態が変わって透水状況が変化したりする影響を排除して透水係数を評価することが可能になる。
【0077】
上述した透水性能評価装置1は、試験体5の中が水で飽和している状態で透水係数を評価するようにしているので、試験体5の内部に存在する空気の影響を排除して水の通水状態だけを判断することができ、極めて透水性が低い低透水性材料の試験体5であっても極少量の水の移動を把握して透水係数を正確に評価することが可能になる。
【0078】
また、上述した透水性能評価方法は、極めて透水性が低い低透水性材料の試験体5であっても適切に水で飽和させた後に極少量の水の移動を測定して透水係数を評価することが可能になる。