特許第6277527号(P6277527)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6277527遠心力載荷装置用3次元6自由度振動台装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6277527
(24)【登録日】2018年1月26日
(45)【発行日】2018年2月14日
(54)【発明の名称】遠心力載荷装置用3次元6自由度振動台装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 7/02 20060101AFI20180205BHJP
   G01M 7/06 20060101ALI20180205BHJP
【FI】
   G01M7/02 B
   G01M7/06
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-121537(P2015-121537)
(22)【出願日】2015年6月16日
(65)【公開番号】特開2017-9295(P2017-9295A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2016年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】西本 壮志
(72)【発明者】
【氏名】岡田 哲実
(72)【発明者】
【氏名】青木 保夫
【審査官】 東松 修太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−195386(JP,A)
【文献】 特開2002−014012(JP,A)
【文献】 特開2007−327832(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/087710(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0308296(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 7/00− 7/08
G01M 13/00−13/04
G01M 99/00
G01H 1/00−17/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縮小模型を用いて地盤や構造物の地震時の挙動を再現実験するための遠心力載荷装置に搭載される遠心力載荷装置用3次元6自由度振動台装置であって、
前記縮小模型が載置される振動台と、
前記振動台の下面側に配置され、前記振動台を6自由度で振動させるアクチュエータと
遠心加速度場にて発生するコリオリ力を予測し、前記コリオリ力に起因して生じる影響加振加速度を計算し、前記影響加振加速度を相殺した目標駆動波形で前記アクチュエータを動作させる制御装置と、を備える
ことを特徴とする遠心力載荷装置用3次元6自由度振動台装置。
【請求項2】
請求項1に記載する遠心力載荷装置用3次元6自由度振動台装置において、
前記振動台を支持する弾性体を備える
ことを特徴とする遠心力載荷装置用3次元6自由度振動台装置。
【請求項3】
請求項2に記載する遠心力載荷装置用3次元6自由度振動台装置において、
6つの前記アクチュエータは、それぞれの軸方向が正六角形の各辺上に位置するように配置され、
前記弾性体は、6つの前記アクチュエータの内側に配置されている
ことを特徴とする遠心力載荷装置用3次元6自由度振動台装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心力載荷装置に搭載され、3次元6自由度の振動台装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤や構造物の地震時の挙動を再現実験するための振動台装置が知られている。振動台装置の一例としては、XY平面に沿う振動台と、振動台からX軸方向に平行に延びるX軸加振機と、を具備し、振動台をX軸方向に振動させる型(いわゆる水平1軸型)の装置がある。
【0003】
また、XY平面に沿う振動台と、振動台からX軸方向に平行に延びるX軸加振機と、振動台からY軸方向に延びるY軸加振機と、を具備し、振動台をX軸方向及びY軸方向に振動させる型(いわゆる水平2軸型)の装置がある。
【0004】
更に、XY平面に沿う振動台と、振動台からX軸方向に延び、かつZ軸方向に立ち下がる第1XZ軸加振機と、振動台の第1XZ軸加振機とは反対側に設けられた第2XZ軸加振機と、を具備し、振動台をX軸方向及びZ軸方向に振動させる型(いわゆる水平上下2軸型)の装置がある。
【0005】
一方、現実の地震は、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に加振力が発生する。従って、これまでの水平1軸型、水平2軸型及び水平上下2軸型の装置では、地震の挙動を相似性よく再現するのには限界があった。
【0006】
そこで、直交三方向(X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向)に加振方向を持たせた3次元振動台装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の振動台装置は、振動テーブル(XY平面に沿う振動台)と、振動テーブルからX軸方向に延びるX軸加振機と、振動テーブルからY軸方向に延びるY軸加振機と、振動テーブルからZ軸方向に延びるZ軸加振機と、を具備し、振動台を直交三方向に振動させる。
【0007】
このような振動台装置は、遠心力載荷装置に設置して用いられる場合がある。遠心力載荷装置は、鉛直な回転軸を中心に水平回転する回転体と、回転体の端部に吊り下げられたプラットフォームとを備えており、振動台装置はプラットフォームに設置される。
【0008】
遠心力載荷装置の回転体を回転させることで、数十Gの遠心加速度場における振動台装置による加振実験を行うことができる。遠心加速度の大きさをnGとすれば、供試体を実物の1/nの大きさの縮小模型とすることができ、振動を与える時間も実際の1/nですむ。このように、振動台装置による加振実験を遠心加速度場において行うことで、縮小模型の大きさを小型化し、また、実験に要する時間を短縮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−22595号公報(段落[0009]等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1の振動台装置は、振動台から直交三方向にそれぞれ加振機が延びているため、例えば振動台装置を載置したときに装置全体のX軸方向及びY軸方向の幅が大きくなり、コンパクト化や省スペース化を実現できない。このため、振動台装置が設置される遠心力載荷装置のプラットフォームも必然的に大型化してしまう。
【0011】
本発明は、縮小模型を用いて、地震等で加振された地盤や構造物挙動を相似性よく再現することができ、かつ、コンパクト化や省スペース化も実現できる遠心力載荷装置用3次元6自由度振動台装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、縮小模型を用いて地盤や構造物の地震時の挙動を再現実験するための遠心力載荷装置に搭載される遠心力載荷装置用3次元6自由度振動台装置であって、前記縮小模型が載置される振動台と、前記振動台の下面側に配置され、前記振動台を6自由度で振動させるアクチュエータと、遠心加速度場にて発生するコリオリ力を予測し、前記コリオリ力に起因して生じる影響加振加速度を計算し、前記影響加振加速度を相殺した目標駆動波形で前記アクチュエータを動作させる制御装置と、を備えることを特徴とする遠心力載荷装置用3次元6自由度振動台装置にある。
【0013】
第1の態様によれば、遠心力載荷装置による遠心加速度場に設置されるので、実物よりも小さな縮小模型を用いることができるとともに、短時間で地震等の揺れによる挙動を測定することができる。振動台を動作させるアクチュエータが、振動台の下面側に配置されている。したがって、遠心力載荷装置用3次元6自由度振動台装置が水平方向に占める大きさを小型化することができる。
さらに、遠心加速度場において縮小模型を振動させる際に生じるコリオリ力の影響を排することができる。これにより、遠心加速度場において縮小模型に所望の目標加振加速度を付与し、地盤や構造物の地震時の挙動をより正確に再現できる。
【0014】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載する遠心力載荷装置用3次元6自由度振動台装置において、前記振動台を支持する弾性体を備えることを特徴とする遠心力載荷装置用3次元6自由度振動台装置にある。
【0015】
第2の態様によれば、振動台や縮小模型の重量がアクチュエータに掛かることを回避することができる。
【0016】
本発明の第3の態様は、第2の態様に記載する遠心力載荷装置用3次元6自由度振動台装置において、6つの前記アクチュエータは、それぞれの軸方向が正六角形の各辺上に位置するように配置され、前記弾性体は、6つの前記アクチュエータの内側に配置されていることを特徴とする遠心力載荷装置用3次元6自由度振動台装置にある。
【0017】
第3の態様によれば、アクチュエータの内側の領域を弾性体の設置場所として有効利用することができる。これにより、振動台装置の水平方向の大きさを小型化することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の遠心力載荷装置用3次元6自由度振動台装置によれば、地震の挙動を相似性よく再現できる上、コンパクト化や省スペース化も実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】遠心力載荷装置の概略構成図である。
図2】遠心力載荷装置のプラットフォームの側面図である。
図3】実施形態1に係る振動台装置の構成例及び使用例を示す図。
図4】実施形態1に係る振動台装置の構成例及び使用例を示す図。
図5】実施形態1に係る振動台装置の構成例及び使用例を示す図。
図6】実施形態1に係る振動台装置の制御例を説明する模式図。
図7】実施形態2に係る振動台装置及び遠心力載荷装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明は、本発明の一態様を示すものであって、本発明の範囲内で任意に変更可能である。各図において同じ符号を付したものは、同一の部材を示しており、適宜説明が省略されている。
【0023】
(実施形態1)
(遠心力載荷装置)
本発明の遠心力載荷装置用3次元6自由度振動台装置(以下、振動台装置と称する)10は、地盤や構造物の地震時の挙動を再現実験するための装置であり、遠心力載荷装置に搭載される。まず、遠心力載荷装置について説明する。図1は遠心力載荷装置の概略構成図であり、図2は遠心力載荷装置のプラットフォームの側面図である。
【0024】
図1及び図2に示すように、遠心力載荷装置1は、中心軸2、中心軸2を中心に回転する水平アーム3、水平アーム3の両端に設けられたプラットフォーム4、駆動モータ5、中心軸2と駆動モータ5の間に設けられた減速機6及び駆動軸7等で構成されている。プラットフォーム4(揺動架台)は、水平アーム3に揺動可能に吊り下げられている。
【0025】
遠心載荷を行う際には、遠心力載荷装置1の一方のプラットフォーム4に、縮小模型Mを載せた振動台装置10を設定し、他方のプラットフォーム4に錘を設置する。そして、駆動モータ5を駆動させ、駆動軸7、減速機6を介して中心軸2を回転させる。中心軸2が回転すると、水平アーム3の回転に伴ってプラットフォーム4が振り上がり、プラットフォーム4に載置された振動台装置10及び縮小模型Mに遠心加速度が作用する。
【0026】
縮小模型Mとは、加振による挙動を実験する対象となる地盤や構造物などの模型である。縮小模型Mの縮尺は、遠心力載荷装置1がプラットフォーム4に載置された振動台装置10及び縮小模型Mに与えることができる遠心加速度に応じて定める。縮小模型Mの縮尺が1/nの場合、遠心加速度は、n×G(重力加速度)となる。
【0027】
(振動台装置の概略構成)
図3は、本実施形態に係る振動台装置の構成例及び使用例を示す斜視図である。図4は、図3を上方から見た平面図であり、図5は、図3を側方から見た側面図である。各図において、X軸、Y軸及びZ軸は互いに直交している。なお、遠心力載荷装置1が回転していない状態において、プラットフォーム4に振動台装置10が載置された状態では、図1〜2の各軸と、図3図5の各軸とは一致する。遠心力載荷装置1が回転し、プラットフォーム4が外側に振り上げられた状態においては、図3図5のZ軸は中心軸2に向かう方向に一致する。
【0028】
振動台装置10は、第1基板11と、第2基板12(請求項の「振動台」に該当する部材)と、6つの油圧シリンダ13a〜13f(6つのアクチュエータ)と、空気ばね21と、を具備して構成されている。
【0029】
第1基板11は、XY平面に沿っている。第1基板11により、振動台装置10の最下面が構成されている。第2基板12は、第1基板11のZ軸方向の上方に配されている。第2基板12の上面には、縮小模型Mが載置される。第1基板11及び第2基板12は、平板状の金属から構成されている。
【0030】
油圧シリンダ13a〜13fは、第2基板12の下面側に配置され、軸芯方向L(請求項の「アクチュエータの軸方向」に該当する方向)に駆動するピストンロッド14(軸部材)を具備して構成されている。更に、油圧シリンダ13a〜13fは、キャップカバー15と、ロッドカバー16と、シリンダ本体17と、を具備して構成されている。
【0031】
シリンダ本体17の端部には、キャップカバー15が設けられている。キャップカバー15には、第1基板側アーム18の一端が接続されている。第1基板側アーム18の他端は、第1基板11に設けられた第1取付部31に接続されている。第1取付部31は、第1基板11の表面(第2基板12側の面)に設けられた凸状の部位である。一つの第1取付部31には、斜面が形成されており、その斜面にキャップカバー15が取り付けられる。本実施形態では、一つの第1取付部31に二つの斜面が形成され、二つの斜面のそれぞれに二つの油圧シリンダのキャップカバー15が取り付けられている。
【0032】
シリンダ本体17の反対側の端部には、ロッドカバー16が設けられている。ロッドカバー16には、ロッド孔が形成されている。ロッド孔に、上記ピストンロッド14が摺動自在に保持されている。ピストンロッド14のロッドカバー16側の端部に、第2基板側アーム19の一端が接続されている。第2基板側アーム19の他端は、第2基板12に設けられた第2取付部32に接続されている。第2取付部32は、第2基板12の表面(第1基板11側の面)に設けられた凸状の部位である。一つの第2取付部32には、斜面が形成されており、その斜面にロッドカバー16が取り付けられる。本実施形態では、一つの第2取付部32に二つの斜面が形成され、二つの斜面のそれぞれに二つの油圧シリンダのロッドカバー16が取り付けられている。
【0033】
キャップカバー15及びロッドカバー16は、取付面の向きを任意の角度に調整することが可能である。この取付面の角度を調整しても、それらを直接第1基板11及び第2基板12に取り付けられない場合は、本実施形態のようにキャップカバー15を、第1取付部31を介して第1基板11に取り付け、ロッドカバー16を、第2取付部32を介して第2基板12に取り付けることが好ましい。一方、キャップカバー15及びロッドカバー16の取付面の角度を調整し、それらを第1基板11及び第2基板12に直接取り付けることが可能な場合、第1取付部31及び第2取付部32を設けなくてよい。
【0034】
このように、油圧シリンダ13a〜13fは、軸芯方向Lのキャップカバー15側(固定端側15a)で第1基板11の第1取付部31に接続され、軸芯方向Lのロッドカバー16側(自由端側16a)で第2基板12の第2取付部32に接続されている。
【0035】
キャップカバー15及びロッドカバー16には、シリンダ本体17内に連通するポート(図示せず)が設けられている。ポートを通じて供給される油の受圧面積に応じて、ピストンロッド14が軸芯方向Lに駆動する。ピストンロッド14は、軸芯の方向に沿って前後駆動するので、上記の軸芯方向Lは、ピストンロッド14が前後駆動する方向でもある。
【0036】
(油圧シリンダの配置)
油圧シリンダ13a〜13fは、Z軸方向に見たときに、シリンダ本体17の軸芯が正六角形の各辺上に位置するように配されている。
【0037】
従って、Z軸方向に見たときに、隣り合う油圧シリンダのピストンロッド14の軸芯方向Lは、120度の角度を成している。Z軸方向に見たときに、対向する油圧シリンダのピストンロッド14の軸芯方向Lは、平行である。Z軸方向に見たときに、軸芯方向Lを延長させたときの交点は、正六角形の各頂点に位置している。
【0038】
ピストンロッド14の軸芯方向Lは、XY平面に対し、固定端側15aから自由端側16aに、所定の角度を成してZ軸方向に立ち上がっている。逆に言えば、ピストンロッド14の軸芯方向Lは、XY平面に対し、自由端側16aから固定端側15aに、所定の角度を成してZ軸方向に立ち下がっている。これらの角度は、約30〜約40度の範囲であると、ピストンロッド14の動作が効率よく第2基板12に伝わりやすい。
【0039】
そして、油圧シリンダ13a〜13fは、隣り合う油圧シリンダとの間で、固定端側15a同士又は自由端側16a同士が対になるように配されている。隣り合う油圧シリンダのキャップカバー15同士が近い位置にあり、その反対側で隣り合う油圧シリンダのロッドカバー16同士が近い位置にある。言い換えれば、油圧シリンダ13a〜13fは、隣り合う油圧シリンダとの間で、固定端側15a同士が近い位となるように配され、その反対側で隣り合う油圧シリンダとの間で、自由端側16a同士が近い位置となるように配されている。
【0040】
以上、油圧シリンダ13a〜13fの配置をまとめると、下記のようになる。便宜上、油圧シリンダ13a〜13fを、周方向に沿って順番に、第1油圧シリンダ13a、第2油圧シリンダ13b、第3油圧シリンダ13c、第4油圧シリンダ13d、第5油圧シリンダ13e及び第6油圧シリンダ13fと称する。
【0041】
第1油圧シリンダ13aは、キャップカバー15側(固定端側15a)で第1基板11の第1取付部31に接続され、ロッドカバー16側(自由端側16a)で第2基板12の第2取付部32に接続されている。ピストンロッド14の軸芯方向Lは、XY平面に対し、固定端側15aから自由端側16aに所定の角度でZ軸方向に立ち上がっている。第1油圧シリンダ13aの自由端側16aに、第2油圧シリンダ13bが配されている。
【0042】
第2油圧シリンダ13bは、第1油圧シリンダ13aの自由端側16aに配されている。第2油圧シリンダ13bは、Z軸方向に見たときに、第1油圧シリンダ13aとの間で、ピストンロッド14の軸芯方向Lが120度の角度を成している。第2油圧シリンダ13bは、第1油圧シリンダ13aとの間で、自由端側16a同士が対になるように配されている。第2油圧シリンダ13bのピストンロッド14の軸芯方向Lは、XY平面に対し、自由端側16aから固定端側15aに、所定の角度でZ軸方向に立ち下がっている。第2油圧シリンダ13bの固定端側15aに、第3油圧シリンダ13cが配されている。
【0043】
第3油圧シリンダ13cは、第2油圧シリンダ13bの固定端側15aに配されている。第3油圧シリンダ13cは、Z軸方向に見たときに、第2油圧シリンダ13bとの間で、ピストンロッド14の軸芯方向Lが120度の角度を成している。第3油圧シリンダ13cは、第2油圧シリンダ13bとの間で、固定端側15a同士が対になるように配されている。第3油圧シリンダ13cのピストンロッド14の軸芯方向Lは、XY平面に対し、固定端側15aから自由端側16aに、所定の角度でZ軸方向に立ち下がっている。第3油圧シリンダ13cの自由端側16aに、第4油圧シリンダ13dが配されている。
【0044】
以下、同様の趣旨に基づいて、第4油圧シリンダ13d、第5油圧シリンダ13e及び第6油圧シリンダ13fが配されている。
【0045】
(空気ばね)
上記の通り、油圧シリンダ13a〜13fは、Z軸方向に見たときに、ピストンロッド14の軸芯が、正六角形の各辺上に位置するように配されている。ゆえに、Z軸方向に見たときに、6つのピストンロッド14の軸芯方向Lによって領域20が画成されている。
【0046】
振動台装置10は、領域20の内側に、第2基板12を支持可能な空気ばね21(請求項の「弾性体」に該当する装置)を備えている。空気ばね21は、圧縮空気の弾力性を利用したばね装置である。このため、バネ定数を非常に小さく調整することが容易である。よって、空気ばね21がZ軸方向に伸張したり、第2基板12がZ軸方向に下降したりして、空気ばね21によって第2基板12が支持されたとしても、振動台装置10の加振性能に大きな悪影響は生じない。
【0047】
なお、空気ばね21は一つに限らず、複数個用いてもよい。また、弾性体は空気ばね21である必要はない。振動台装置10の加振性能に大きな影響を与えず、縮小模型Mを支持できる程度のばねであれば、その構造は特に限定されない。
【0048】
(振動台装置の制御)
図6は、振動台装置10の制御例を説明するための模式図である。
【0049】
振動台装置10は、制御装置(図示せず)を備えており、制御装置からの制御信号により、油圧シリンダ13a〜13fの動作を独立に制御し、6自由度で第2基板12の動作を制御することができる(いわゆるパラレルモーション方式)。
【0050】
6自由度の動作とは、第2基板12をX軸、Y軸、Z軸に沿って振動させる動作、X軸周りに回転させるピッチ動作、Y軸周りに回転させるヨー動作及びZ軸周りに回転させるロール動作である。振動台装置10は、油圧シリンダ13a〜13fを動作させることで、第2基板12に載置された縮小模型Mに対し、所望の加速度を6自由度で付与できる。以後、振動台装置10の第2基板12の動作により縮小模型Mに付与される加速度を加振加速度と称する。
【0051】
振動台装置10(制御装置)は、再現しようとする地震等による揺れを表す情報が入力されると、その揺れに対応した加振加速度を求める。このような地震等の揺れを表す情報から加振加速度を求める演算は公知の方法により行うことができる。このように振動台装置10に設定される加振加速度を目標加振加速度と称する。目標加振加速度は、6自由度であるので、振動台装置10は、X軸、Y軸、Z軸、ピッチ角(Pitch)、ヨー角(Yaw)及びロール角(Roll)のそれぞれについて目標加振加速度をそれぞれ求める。
【0052】
そして、目標加振加速度を得るための目標駆動波形を作成する。目標駆動波形とは、油圧シリンダ13a〜13fに与えられる制御信号であり、この目標駆動波形に基づいて油圧シリンダ13a〜13fが伸縮などの動作をする。表1のように、6自由度ごとに、目標駆動波形及び目標加振加速度が作成される。目標駆動波形は、目標加振加速度に基づいて公知の方法により作成することができる。
【0053】
【表1】
【0054】
振動台装置10は、作成した目標駆動波形を油圧シリンダ13a〜13fに与える。これにより、油圧シリンダ13a〜13fは、個別又は全体で伸縮し、第2基板12を6自由度で動作させることができる。このような制御を行うことで、振動台装置10は、再現しようとする地震等による揺れを、6自由度の加振加速度として、縮小模型Mに付与することができる。
【0055】
(遠心力載荷装置に設置された振動台装置)
振動台装置10は、遠心力載荷装置1のプラットフォーム4に載置される。遠心力載荷装置1を動作させることで、プラットフォーム4上に載置された振動台装置10及び振動台装置10に載置された縮小模型Mには遠心加速度が付与される。さらに、振動台装置10を動作させることで、縮小模型Mには遠心加速度の下で、振動台装置10により加振加速度が付与される。
【0056】
表2は、遠心加速度を負荷した加振実験、いわゆる遠心動的場で成立する相似則である。
【0057】
【表2】
【0058】
遠心加速度がn×Gの遠心加速度場においては、縮小模型Mの大きさは実物の1/nとなり、縮小模型Mの周波数、遠心加速度及び加振加速度は実物のn倍となり、縮小模型Mの変位は実物の1/nとなる。また、遠心加速度がn×Gの遠心加速度場に縮小模型Mを置いた時間は、1×Gの重力場に実物を置いた時間の1/nに相当する。
【0059】
このような相似則によれば、遠心力載荷装置1が振動台装置10及び縮小模型Mに対してn×G(重力加速度)の遠心加速度を付与する場合、縮小模型Mは実物の1/nの大きさとすることができる。つまり、実物の大きさ(縮小模型Mのn倍の大きさ)の供試体と同じ応力状態を、大きさが1/nの縮小模型Mで再現することができる。
【0060】
また、応力状態だけではなく、実際の地震動と同じ振動を大きさが1/nの縮小模型Mで再現することができる。
【0061】
具体的には、実際の地震動の周波数をfとする場合、振動台装置10は、f×nの周波数の波形に基づいて縮小模型Mを加振する。これにより、振動台装置10は、遠心加速度場において、実物と同じ応力状態にある縮小模型Mに対して、地震等の揺れを模した加振加速度を与えることができる。そして、振動台装置10が縮小模型Mに加振加速度を与える時間は、実際の地震等による揺れる時間の1/nに短縮することができる。
【0062】
ちなみに、遠心力載荷装置1を用いない場合、すなわち重力場にて、振動台装置10を単体で用いて地震時の挙動を再現しようとすると、縮小模型Mの規模は実物大としなければならず、また、所要時間も実際に装置される揺れの時間と同じ時間を要してしまう。
【0063】
以上に説明した振動台装置10によれば、遠心力載荷装置1に設置されるので、実物よりも小さな縮小模型Mを用いることができるとともに、実際の揺れに掛かる時間よりも短時間で、地震等の揺れによる挙動を測定することができる。
【0064】
また、振動台装置10は、第2基板12を動作させる油圧シリンダ13a〜13fが、第2基板12の下面側に配置されている。つまり、第2基板12の周囲に油圧シリンダ13a〜13fが配置されていない。したがって、振動台装置10が水平方向に占める大きさを小型化することができ、さらに、この振動台装置10が載置されるプラットフォーム4の水平方向の大きさも小型化することができる。
【0065】
このように、本発明の振動台装置10によれば、縮小模型Mを用いて、地震等で加振された地盤や構造物挙動を相似性よく再現することができ、かつ、コンパクト化や省スペース化も実現することができる。
【0066】
また、振動台装置10は、空気ばね21を備えており、空気ばね21により、縮小模型Mが載置された第2基板12を支持している。これにより、第2基板12や縮小模型Mの重量が油圧シリンダ13a〜13fに掛かることを回避することができる。すなわち、油圧シリンダ13a〜13fに、遠心加速度場における過大な重量が掛からない。この結果、油圧シリンダ13a〜13fとしては、過大な重量に耐えられる特別なものを用いる必要がなく、通常の1Gの重力場で利用が想定される油圧シリンダを利用することができる。
【0067】
なお、振動台装置10は、必ずしも空気ばね21を備えていなくてもよい。この場合、付与される遠心加速度下における縮小模型Mの重量を支持できるだけの剛性を持った油圧シリンダ13a〜13fを用いる。
【0068】
さらに、振動台装置10は、油圧シリンダ13a〜13fの軸芯方向Lによって形成される領域20の内側に空気ばね21が設けられている。領域20は、油圧シリンダ13a〜13fの構成により定まるものであるが、その領域20を空気ばね21の設置場所として有効利用することができる。このように、領域20に油圧シリンダ13a〜13fを設置したので、振動台装置10の水平方向の大きさを小型化することができる。
【0069】
なお、空気ばね21のような弾性体を、油圧シリンダ13a〜13fの外側に配置してもよい。この場合、空気ばね21の設置スペースが領域20よりも外側に必要となるため、振動台装置10は水平方向の大きさが大型化してしまう。ただし、上述したように、油圧シリンダ13a〜13fは、第2基板12の下面側に配置されているので、従来の振動台装置よりも、水平方向に小型化された振動台装置10とすることができる。
【0070】
(実施形態2)
本発明の実施形態2に係る振動台装置について説明する。実施形態1と同一の部分は適宜省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0071】
(概略構成)
本実施形態に係る振動台装置10Aは、基本的には、実施形態1の振動台装置10と同様の構成を有している。振動台装置10Aは、制御装置による制御が実施形態1と異なる。
【0072】
(振動台装置の制御)
振動台装置10Aは、遠心加速度場にて発生するコリオリ力を予測し、予測したコリオリ力に起因して生じる影響加振加速度を考慮して、目標駆動波形を作成する。影響加振加速度とは、遠心加速度場において発生したコリオリ力に起因して縮小模型Mに作用する加速度をいう。
【0073】
(コリオリ力を考慮した駆動波形の補正)
縮小模型Mは、振動台装置10Aにより6自由度で加振されて振動するとともに、遠心力載荷装置1により回転運動される。このような運動をする縮小模型Mは、振動方向及び回転軸方向の双方に直交する方向に作用するコリオリ力を受ける。回転運動の角速度をω、縮小模型Mの質量をm、縮小模型Mの速度ベクトルをvとすると、縮小模型Mの質点には、2・m・ω×vに則ったコリオリ力が働く。
【0074】
図7は、コリオリ力を説明するための振動台装置10A及び遠心力載荷装置1の概略図である。遠心力載荷装置1の各軸は実線で示し、振動台装置10の各軸は点線で示してある。
【0075】
図示するように、遠心力載荷装置1が回転している状態では、振動台装置10AのZ軸方向(図3参照)は、遠心力載荷装置1の中心軸2に向かう方向(図1のXY平面に平行で中心軸2を通る方向)に一致する。
【0076】
例えば、振動台装置10Aにより縮小模型MがX軸方向(図7点線のX軸、実線のY軸)に振動し、かつ、遠心力載荷装置1により縮小模型MがY軸(図7点線のY軸、実線のZ軸)まわりに角速度ωyで回転すると、Z軸方向(図7点線のZ軸、実線のX軸)にコリオリ力Fzが作用する。
【0077】
コリオリ力Fzの向きは、縮小模型Mの振動方向に応じて反転する。例えば、縮小模型MがX軸正方向へ移動しているとき、Z軸正方向にコリオリ力が作用し、縮小模型MがX軸負方向へ移動しているときには、Z軸負方向にコリオリ力が作用する。
【0078】
一方、縮小模型MがX軸正方向へ振動しているとき、Z軸負方向にコリオリ力が作用し、縮小模型MがX軸負方向へ振動しているときに、Z軸正方向にコリオリ力が作用する場合もある。
【0079】
何れの現象が起こるかは、作用したY軸まわりの角速度ωyの回転方向(右まわりか左まわりか)に依存する。
【0080】
以降に言及する各軸は、図7の実線で示した遠心力載荷装置1の各軸のこととする。
【0081】
コリオリ力は、縮小模型Mが回転軸Zと同じ方向に振動している場合には発生しない。つまり、縮小模型Mが振動台装置10Aにより図7の実線で示すZ方向に振動させられている場合ではコリオリ力は考慮しなくてよい。したがって、コリオリ力に起因して生じる影響加振加速度は、X軸方向とY軸方向だけである。
【0082】
まず、振動台装置10A(制御装置)は、実施形態1と同様に、再現しようとする地震等による揺れを表す情報が入力されると、その揺れに対応した6自由度それぞれについての目標加振加速度を求める。6自由度の目標加振加速度のうち、X軸とY軸のそれぞれについて、X軸目標加振加速度、Y軸目標加振加速度と称する。
【0083】
次に、コリオリ力に起因してX軸とY軸にて生じるX軸影響加振加速度及びY軸影響加振加速度を計算する(表3の1行目)。これらの影響加振加速度は、上述したように、縮小模型Mの角速度、縮小模型Mの質量、縮小模型Mの速度ベクトルから求めることができる。
【0084】
表3の2行目に示すように、X軸影響加振加速度はY軸目標加振加速度に影響を与え、Y軸影響加振加速度はX軸影響加振加速度に影響を与える。このため、縮小模型Mに付与される加振加速度は、所望の目標影響加振加速度とはならず、影響加振加速度だけ誤差を含んでしまう。
【0085】
このため、表3の3行目に示すように、Y軸影響加振加速度が相殺されるようにX軸目標加振加速度を補正する。具体的には、X軸目標加振加速度に対して、Y軸影響加振加速度の符号を反転させた値を加算する。この結果、コリオリ力に起因して生じるY軸影響加振加速度が相殺される。そして、この補正後のX軸目標加振加速度に基づいて、X軸目標駆動波形を作成する。
【0086】
同様に、X軸影響加振加速度が相殺されるようにY軸目標加振加速度を補正し、Y軸目標駆動波形を作成する。
【0087】
そして、このような補正を行って得られたX軸目標駆動波形及びY軸目標駆動波形を油圧シリンダ13a〜13fに与えることで、コリオリ力により生じる影響加振加速度の影響を排して、所望の目標加振加速度を縮小模型Mに付与することができる。
【0088】
【表3】
【0089】
以上に説明した振動台装置10Aによれば、遠心加速度場において縮小模型Mを振動させる際に生じるコリオリ力の影響を排することができる。これにより、遠心加速度場において縮小模型Mに所望の目標加振加速度を付与し地盤や構造物の地震時の挙動をより正確に再現できる。
【0090】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態を説明した。しかし、本発明の基本的構成は上記の態様に限定されない。
【0091】
例えば、アクチュエータは、本発明の範囲で、油圧ピストンに限定されない。アクチュエータは、油圧以外の駆動系を有するピストンであってもよく、またピストンにも限定されない。
【0092】
図面において示す構成要素、すなわち基板等の厚さ、アクチュエータの大きさ、各部の相対的な位置関係等は、本発明を説明する上で、誇張して示されている場合がある。
【0093】
また、本明細書の「間」という用語は、構成要素の位置関係が「接触」していることを限定するものではない。例えば、「空気ばねを第1基板及び第2基板の間に設ける」という表現は、空気ばね及び第1基板の間や、第2基板及び空気ばねの間に、他の構成要素を含むものを除外しない。
【0094】
同様に、本明細書の「側」という用語は、構成要素の位置関係が「接触」していることを限定するものではない。例えば、「軸芯方向のキャップカバー側(固定端側)で第1基板に接続され」という表現は、キャップカバー及び第1基板の間に、他の構成要素を含むものを除外しない。また、「軸芯方向のロッドカバー側(自由端側)で第2基板に接続され」という表現は、ロッドカバー及び第2基板の間に、他の構成要素を含むものを除外しない。
【符号の説明】
【0095】
1 遠心力載荷装置、 10 振動台装置、 11 第1基板、 12 第2基板(振動台)、 13a〜13f 第1〜第6油圧シリンダ(アクチュエータ)、 14 ピストンロッド(軸部材)、 15 キャップカバー、 15a 固定端側、 16 ロッドカバー、 16a 自由端側、 17 シリンダ本体、 18 第1基板側アーム、 19 第2基板側アーム、 20 領域、 21 空気ばね(弾性体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7