(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、
図1〜
図8を用いて、本発明の実施形態である自動分析装置100の構成及び動作を説明する。自動分析装置100は、以下に示すように、生化学反応を利用した比色分析を行う。
【0013】
最初に、
図1を用いて、本発明の実施形態である自動分析装置100の全体構成を説明する。
図1は、本発明の実施形態である自動分析装置100の構成図である。
【0014】
自動分析装置100は、搬送ライン101(101
1〜101
2)、ローター102、試薬ディスク103、反応ディスク104、分注機構105(105
1〜105
2)、攪拌機構106、分光器107、反応セル洗浄機構108、ノズル洗浄機構109(109
1〜109
2)、制御部115、入力部123、表示部124等から構成される。
【0015】
搬送ライン101
1は、検体を入れた検体容器110を保持する検体ラック111を、検体分注位置121まで必要量だけ移送する。分注機構105
1は、検体分注位置121で検体容器110から反応セル112へ検体を分注する。
【0016】
搬送ライン101
1は更に、ローター102と接続されている。ローター102を回転させることにより、他の搬送ライン101
2との間で検体ラック111のやり取りが行われる。
【0017】
試薬ディスク103は、試薬を入れた試薬容器113を保持し、分注機構105
2が分注動作を行えるポジションまで試薬容器113を回転移送する。分注機構105
2は、試薬分注位置122で試薬容器113から反応セル112へ試薬を分注する。なお、試薬は、比色分析に必要な量だけ反応セル112へ分注され、分析対象となる検体中の成分と反応する。
【0018】
反応ディスク104は、反応セル112を保持し、比色分析を行う分光器107、攪拌機構106、反応セル洗浄機構108等がそれぞれ動作する位置を示す動作ポジションまで各動作の対象となる反応セル112を回転移送する。なお、反応セル112は、水などの恒温媒体によって保温される。これにより、検体と試薬との混合物である反応液において、検体中の成分と試薬の化学反応が促進される。
【0019】
分注機構105
1は、比色分析を行う検体を検体容器110から吸引し、反応セル112に吐出する。分注機構105
2は、分析対象に応じた試薬を試薬容器113から吸引し、反応セル112に吐出する。
【0020】
分注機構105(105
1〜105
2)は、アーム118、ノズル116、分注機構用モーター119を備える。
【0021】
アーム118は、ノズル116と液面センサ117を保持する。ノズル116は、液面センサ117に接続されている。液面センサ117は、静電容量変化により液体の有無を検出する。分注機構105が分注動作を行うポジションの近傍には、シールド部114が設置される。分注機構用モーター119は、分注機構105を上下方向、または回転方向に移動させる。
【0022】
攪拌機構106は、検体容器110から反応セル112に吐出された検体中の分析対象成分と、試薬容器113から反応セル112に吐出された試薬の反応を促進するために、反応セル112中の反応液を攪拌する。
【0023】
光源ランプ120は、攪拌機構106により攪拌され化学反応した反応液に出力光を照射する。分光器107は、反応液を通過した透過光を分光する。分光された透過光に基づいて、吸光度測定による比色分析が行われる。
【0024】
反応セル洗浄機構108は、比色分析が終了した反応セル112から反応液の吸引を行い、洗剤などを吐出し、反応セル112の洗浄を行う。
【0025】
ノズル洗浄機構109(109
1〜109
2)は、検体又は試薬を分注した分注機構105(105
1〜105
2)のノズル116の先端を洗浄する。これにより、ノズル116に付着した残留物が取り除かれ、次の分析対象に影響を及ぼさない。
【0026】
制御部115は、プロセッサ、メモリ等から構成され、各機構及び装置等を制御する。入力部123は、キーボード、マウス、タッチパネル等から構成され、ユーザーからの指示を制御部115に入力する。表示部124は、LCD(Liquid Crystal Display)等から構成され、操作画面等を表示する。
【0027】
次に、
図2を用いて、本発明の実施形態である自動分析装置100のモジュール接続例を説明する。
図2は、本発明の実施形態である自動分析装置100のモジュール接続例を示す図である。
【0028】
自動分析装置100は、投入・収納部201、ISE部202(電解質測定部)、検体搬送部203、比色分析部204を備える。
【0029】
投入・収納部201は、検体ラック111を投入及び収納するために用いられる。投入・収納部201へ投入された検体ラック111は、検体搬送部203へ移動される。
【0030】
この後、検体ラック111は、ローター102(
図2で不図示)を経由して、ISE部202へ搬送される。ISE部202では、光源ランプ120を使用しない項目のみが測定される。測定後、検体ラック111は、ローター102を経由して、検体搬送部203へ戻される。検体搬送部203へ戻された検体ラック111は、比色分析部204の検体分注位置121まで搬送される。
【0031】
反応セル112が洗浄され、セルブランク測定が実行された後、分注機構105
1は分注動作を行う。その後、比色分析部204は、光源ランプ120を使用して比色分析を行う。セルブランク測定の詳細は、
図3を用いて後述する。
【0032】
次に、
図3を用いて、本発明の実施形態である自動分析装置100に用いられる光学系とその周辺に配置される装置を説明する。
図3は、本発明の実施形態である自動分析装置100に用いられる光学系とその周辺に配置される装置を説明するための図である。
【0033】
光源ランプ120からの光は、反応ディスク103の動作中に、光源ランプ120と回折格子304間の測光位置を通過する反応セル112に照射される。反応セル112内の混合液では、被検試料の測定項目成分と試薬とが反応して、その測定項目成分の濃度に比例して測光対象物質が生成又は消費される。なお、反応槽303と反応セル112の間には、反応槽水(恒温媒体)がある。
【0034】
混合液に照射された光のうち、測光対象物質に応じた吸収領域の波長の光は測光対象物質に吸収される。反応液を透過した光は、凹状の回折格子304に入射する。回折格子304は、入射光を波長毎に分光し、分光された光を光検出器305に出力する。光検出器305は光量を電気信号に変換し、その電気信号を吸光度判定部306に出力する。吸光度判定部306は、光検出器305から出力された電気信号に基づいて吸光度を算出し、算出した吸光度を制御部115へ出力する。制御部115は、吸光度判定部306から出力された吸光度に基づいて比色分析を行う。
【0035】
比色分析を実施する際は、全反応セルに対し、セルブランク水を分注し、340〜800nmの各波長の吸光度を測定する(セルブランク測定)。制御部115は、この測定結果をセルブランク値として保持(記憶)する。制御部115は、セルブランク値と分析対象の混合液の吸光度を比較して吸光度を補正し、補正した吸光度を測定データとしてユーザーインターフェース(表示部124に表示された画面等)に出力する。なお、制御部115は、分析開始前に測定されたセルブランク値と、前回のセルブランク値と比較し、乖離があるか確認する機能を有する。
【0036】
電流検出部307は光源ランプ120に流れる電流を監視(測定)する。電圧調整部308は、分析に影響しないタイミングで、光源ランプ120に印加する電圧を低下させる、または光源ランプ120の電源をOFFにする回路を有する。
【0037】
ここで、光源ランプ120の電源をOFFの状態から分析時の測定電圧に復帰させる場合、光量が安定するまで約5分程度の時間がかかることが自動分析装置では大きな課題となる。よって、電圧調整部308で光源ランプ120に印加する電圧を切り替えるタイミングが重要となる。ただし、電圧を急激に上昇させると突入電流が流れてしまう。突入電流はランプ劣化の1つの要因でもある。
【0038】
次に、
図4を用いて、本発明の実施形態である自動分析装置100の起動時における動作を説明する。
図4は、本発明の実施形態である自動分析装置100の起動時における動作を説明するための図である。
【0039】
まず、自動分析装置100を立ち上げると(自動分析装置100の電源をONにすると)、制御部115は、イニシャライズ動作を行う(ステップS400)。イニシャライズ動作は必要最小限の初期化及び試薬の残量チェックを行うものであり、光源ランプ120を点灯する必要性がない。そのため、制御部115は、電圧調整部308を制御して、光源ランプ120の電源をOFF状態にさせる。
【0040】
制御部115は、立ち上げ時に一括準備をするように登録されているか否かを判断する(ステップS405)。ここで、一括準備とは、立ち上げ時(始業時)に必要なメンテナンスを意味する。ユーザーは、一括準備を自動で行うかを予め登録することができる。また、ユーザーは一括準備において実行されるメンテナンス項目を選択して予め登録することもできる。
【0041】
制御部115は、立ち上げ時に一括準備をするように登録されていないと判断した場合(ステップS405;NO)、自動分析装置100をスタンバイ状態に遷移させる(ステップS410)。次に、表示部124に表示された操作画面を介して、ユーザーはメンテナンスの実行指示を、入力部123を用いて入力する。制御部115は、ユーザーからの実行指示に応答し、メンテナンスを実行する(ステップS415)。
【0042】
立ち上げ時(始業時)は、ユーザーが装置前にいることが明確であり、分析開始までこの状態が維持される可能性が高い。制御部115は、メンテナンス実行をトリガとし、電圧調整部308を制御して、光源ランプ120に印加する電圧を0から測定電圧Vsに切り替える。これにより、光源ランプ120の電源をONにする(ステップS420)。なお、電圧を切替える動作の詳細は、
図6Aを用いて後述する。
【0043】
一方、立ち上げ時に一括準備をするように登録されている場合(ステップS405;YES)、制御部115は、予め登録されている一括準備動作を実行する(ステップS425)。一括準備動作が完了した後、自動分析装置100は分析を行うことができる。
【0044】
ユーザーは、一括準備動作の直後に、自動分析装置100を用いて分析を行う可能性がある。そこで、本実施形態では、制御部115は、電圧調整部308を制御して、一括準備動作が完了する前に光源ランプ120の電源をONにする。
【0045】
具体的には、制御部115は、一括準備に必要な時間T1を計算し(ステップS430)、時間T1に基づいてスタンバイ状態遷移までの時間T2を計算する(ステップS435)。
【0046】
制御部115は、タイマーのカウント値T
DCをT2にセットし、ダウンカウントを開始させる(ステップS440)。
【0047】
制御部115は、タイマーのカウント値T
DCが光源ランプ120の光量が安定するまでの時間T
s(例えば、5分)と同じになったか否かを判断する(ステップS445)。
【0048】
制御部115は、タイマーのカウント値T
DCが光源ランプ120の光量が安定するまでの時間T
sと同じとなった時に(ステップS445;YES)、光源ランプ120の電源をONとする(ステップS450)。但し、一括準備に光源ランプ120を点灯させる必要があるメンテナンスが含まれていた場合、制御部115は、このメンテナンスが開始される一定時間前(少なくとも、T
s時間前)に光源ランプをONにする。
【0049】
制御部115は、自動分析装置100をスタンバイ状態に遷移させる(ステップS455)。一般的に、ステップS455においてスタンバイ状態に遷移した後、長時間分析しない状況が続くことはない。装置の電源をONにし、所定のメンテナンスを実行したのは、自動分析措置100を使用するためだからである。よって、ステップS455において、制御部115は、電圧調整部308を制御して、光源ランプ120に印加する電圧を低減したり、光源ランプ120の電源をOFFにしたりしないものとする。
【0050】
次に、ユーザーは、入力部123を用いて分析の実行指示を入力する。制御部115は、ユーザーからの実行指示に応答して、分析を開始し(ステップS460)、所定のタイミングで分析を終了する(ステップS465)。
【0051】
制御部115は、自動分析装置100をスタンバイ状態(ラックレセプションモード)に遷移させる(ステップS470)。ここで、ラックレセプションモードとは、分析終了後に各反応セル112が洗浄され、全ての反応セル112が洗浄された後も洗浄動作が繰り返し行われるモードである。この間、光源ランプ120を点灯する必要はない。
【0052】
次に、
図5を用いて、本発明の実施形態である自動分析装置100の分析終了後のスタンバイ状態(ラックレセプションモード)における動作を説明する。
図5は、本発明の実施形態である自動分析装置100の分析終了後のスタンバイ状態(ラックレセプションモード)における動作を説明するための図である。なお、ユーザーは、ラックレセプションモードの有効/無効を選択できる。
【0053】
図5のステップS470に示される分析終了後のスタンバイ状態(ラックレセプションモード)においては、光源ランプ120の点灯が必要な比色分析をいつユーザーが実施するか不明である。よって、スタンバイ状態(ラックレセプションモード)に遷移すると同時に、光源ランプ120の劣化を防ぐため、光源ランプ120の印加電圧を低減(例えば50%)させる(ステップS500)。なお、ステップS500において光源ランプ120に印加する電圧は測定電圧V
sの0%より大きく100%より小さい電圧値であればよい。
【0054】
電圧を50%に低減させた場合、光源ランプ120の光量が安定するまでの時間は、電源OFFの場合に比較して、約半分である2分30秒となる。この状態から分析開始依頼があっても、比色分析開始までに十分光量は安定する。
【0055】
制御部115は、光源ランプ120の印加電圧を低減させてから一定時間(例えば5分)以内に、分析依頼及び各種メンテナンス依頼があったか否かを判断する(ステップS505)。
【0056】
光源ランプ120の印加電圧を低減させてから一定時間以内に、分析依頼及び各種メンテナンス依頼があった場合(ステップS505;YES)、制御部115は、光源ランプ120の印加電圧を測定電圧V
sに戻し(ステップS540)、分析またはメンテナンスを開始する。なお、ステップ540以降の動作については、後述する。
【0057】
光源ランプ120の印加電圧を低減させてから一定時間以内に、分析依頼及び各種メンテナンス依頼がない場合(ステップS505;NO)、装置前にユーザーがいない可能性が非常に高い。そのため、ステップ505でNOの場合に光源ランプ120の電源をOFFにするモードを示す光源ランプOFFモードにするか否かをユーザーが予め設定可能とする。
【0058】
ここで、光源ランプ120の電源をOFFとしても、光源ランプ120が安定するまでの時間と比色分析開始までの時間が共に約5分でほぼ同じなため通常の使用では問題はない。ただし、ユーザーの使用方法によっては直ちに比色分析結果を得たい場合もあるため、選択可能とした。
【0059】
救急救命センターなどでは、緊急に検査を要する緊急検体等の、特定の比色項目(測定項目)のみ早急に測定結果を得たい場合もある。また、上記施設において、比色分析部204が多モジュールで構成される場合、例えば1つのモジュールのみ光源ランプ120をOFFしない構成とすることで、緊急依頼にも対応可能となり、その他のモジュールでは光源ランプ120をOFFにすることより完全に劣化を防ぐことができる。そのため、光源ランプOFFモードにするモジュールをユーザーが選択可能とする。
【0060】
図5に戻り、光源ランプ120の印加電圧を低減させてから一定時間以内に、分析依頼及び各種メンテナンス依頼がない場合(ステップS505;NO)、制御部115は、光源ランプOFFモードが設定されているか否かを判断する(ステップS510)。
【0061】
光源ランプ電源OFFモードが設定されていない場合(ステップS510;NO)、制御部115は、分析依頼や各種メンテナンス依頼があるまで、光源ランプ210の印加電圧を低減した状態を維持する(ステップS515)。制御部115は、分析依頼や各種メンテナンス依頼(ステップS520)をトリガにして光源ランプを測定電圧V
sに切り替える(ステップS540)。
【0062】
一方、光源ランプ電源OFFモードが設定されている場合(ステップS510;YES)、制御部115は、光源ランプ120の電源をOFF状態にする(ステップS525)。制御部115は、分析依頼や各種メンテナンス依頼があるまで、光源ランプ120電源をOFF状態に維持する(ステップS530)。制御部115は、分析依頼や各種メンテナンス依頼(ステップS535)をトリガにして光源ランプの電源をONにする。すなわち、制御部115は、光源ランプ120の印加電圧を測定電圧V
sに戻す(ステップS540)。
【0063】
光源ランプ120の印加電圧を測定電圧V
sにした後、ラック搬送、及びセルブランク測定等の比色分析前動作が行われる(ステップ545又はステップS550)。なお、ステップS545は、緊急に検査を要する場合(緊急時)の処理フローを示し、ステップS550は、通常の検査の場合の処理フローを示す。
【0064】
比色分析前動作が完了した後、比色分析部204は測定(分析)を開始する(ステップS555)。分析が終了した後、制御部115は、自動分析装置100をスタンバイ状態(ラックレセプションモード)に遷移させる(ステップS470)。
【0065】
次に、
図6Aを用いて、本発明の実施形態である自動分析装置100に用いられる光源ランプ120の電圧変化を説明する。
図6Aは、本発明の実施形態である自動分析装置100に用いられる光源ランプ120の電圧変化を説明するための図である。
図6Aにおいて、縦軸は光源ランプ120に印加される電圧Vを示し、横軸は時間Tを示す。
【0066】
これまで、
図4及び
図5を用いて、光源ランプ120の電源がONとなるタイミング、光源ランプ120の印加電圧を低減させるタイミング、光源ランプ120の電源をOFFにするタイミングについて説明した。これにより、光源ランプ使用頻度(使用時間)を減らすことが可能である。
【0067】
しかし、光源ランプ120の印加電圧を瞬時に切り替えると大きな突入電流が発生する。突入電流は、光源ランプ120の劣化の原因となる。また、この突入電流により一瞬でフィラメントが切れてしまうこともある。その理由は次の通りである。フィラメントは金属のため、温度上昇に伴い電気抵抗が大きくなる。よって、光源ランプ120が点灯している定常状態に比べ、電圧値を上昇させた瞬間は大きな電流が流れてしまうためである。
【0068】
このような不都合を解消するため、
図3に示される電圧調整部308は、光源ランプ120の印加電圧を切り替える際に、
図6Aに示すように一定時間(例えば1秒)かけて電圧を徐々に変化させる。
【0069】
具体的に、
図6Aでは、0≦T≦t1において、光源ランプ120の印加電圧Vは、0からVsに徐々に変化する。t1≦Tにおいて、光源ランプ120の印加電圧Vは、一定の測定電圧V
sとなる。なお、
図6Aは、光源ランプ120の印加電圧を0から測定電圧V
sに変化させる場合を示しているが、光源ランプ120の印加電圧をV
s/2からV
sに変化させる場合も同様である。
【0070】
これにより突入電流を抑え、出力電圧の切り替えによる光源ランプ120の劣化を抑制することが可能となる。突入電流の詳細については、
図6Bを用いて後述する。
【0071】
次に、
図6Bを用いて、本発明の実施形態である自動分析装置100に用いられる光源ランプ120の電流変化を説明する。
図6Bは、本発明の実施形態である自動分析装置100に用いられる光源ランプ120の電流変化を説明するための図である。
図6Bにおいて、縦軸は光源ランプ120に流れる電流Iを示し、横軸は時間Tを示す。
【0072】
図6Bでは、光源ランプ120の印加電圧が
図6Aに示されるように変化した場合における、本発明の実施形態である自動分析装置100に用いられる光源ランプ120の電流変化を実線で表す。ここで、T=t
1(約1分)は、
図6Aにおいて、光源ランプ120の印加電圧Vが測定電圧V
sになったタイミングを示す。一方、T=t
2(約5分)は、光源ランプ120の光量が安定したタイミングを示す。
【0073】
一方、比較例として、光源ランプ120の印加電圧を0から電圧V
sに瞬時に切り替えた場合における、光源ランプ120の電流変化を破線で表す。
【0074】
実線と破線を比較すると、実線における突入電流の値I
r1は、破線における突入電流の値I
r2よりも小さい。つまり、
図6Aに示されるように、光源ランプ120の印加電圧を徐々に変化させることにより、突入電流を抑制することができる。
【0075】
次に、
図7を用いて、本発明の実施形態である自動分析装置100の比色分析動作を説明する。
図7は、本発明の実施形態である自動分析装置100の比色分析動作を説明するための図である。
【0076】
前述したように、光源ランプ120が安定するまでの時間は、電源OFFから測定電圧に切り替えた場合は約5分、電圧半減状態から測定電圧に切り替えた場合は約2分半である。ただし、光源ランプ120の個体差や使用状況により、バラつきがある。よって、本実施形態では、制御部115に、光源が安定しているか監視する機能を設ける。
【0077】
この手段として、光源ランプ120に流れる電流のモニタリング、及び分析前動作のセルブランク測定に使用する全波長の吸光度測定を行い、光源ランプ120の安定度を監視する。
【0078】
ここで、
図3に示される電流検出部307は、光源ランプ120に流れる電流のモニタリング(以下、電流モニタと記載する。)を行う。これにより、光源ランプ120のフィラメントの状態が監視される。吸光度判定部306は吸光度を測定(算出)する。これにより、光源ランプ120から吸光度判定部306の間の状態が監視される。
【0079】
図7に示すように、光源ランプ120の印加電圧が測定電圧V
sに戻された後(ステップS540)、電流検出部307は、電流モニタを行い、吸光度判定部306は、全波長の吸光度を監視する(ステップS540−05)。電流検出部307の電流モニタによって測定された光源ランプ120の電流値と、吸光度判定部306によって測定(算出)された吸光度は制御部115に供給される。
【0080】
制御部115は、光源ランプ120の電流値(電流モニタ値)のバラつきが一定範囲内であり、かつ、吸光度のバラつきが一定範囲内であるか否かを判断する(ステップS540−10)。
【0081】
制御部115は、光源ランプ120の電流値(電流モニタ値)のバラつきが一定範囲内であり、かつ、吸光度のバラつきが一定範囲内である場合(ステップS540−10;YES)、セルブランク中の全波長の吸光度が仕様内(仕様で定められた範囲)かを判断する(ステップS540−15)。
【0082】
セルブランク中の全波長の吸光度が仕様内である場合(ステップS540−15;YES)、制御部115は、比色分析を開始する(ステップS555)。
【0083】
一方、セルブランク中の全波長の吸光度が仕様内でない場合(ステップS540−15;NO)、仕様外の波長で測定をする項目を除いて比色分析を行う(ステップS540−20)。つまり、吸光度が仕様で定められた範囲内の波長で測定する項目のみ比色分析を行う。この理由は、セルブランク状態でも各波長の吸光度は大きく異なる。仕様内の波長については分析結果の信頼性に問題ないことから、分析可能とする。
【0084】
光源ランプ120の電流値(電流モニタ値)のバラつきが一定範囲外、又は、吸光度のバラつきが一定範囲外である場合(ステップS540−10;NO)、制御部115は、分析時の測定電圧V
sに戻してからの時間経過が一定時間以内(例えば、光源ランプ120の光量が安定するまでの時間T
s(約5分))であるか否かを判断する(ステップS540−25)。
【0085】
制御部115は、制御部115は、分析時の測定電圧V
sに戻してからの時間経過が一定時間以内である場合(ステップS540−25;YES)、処理をステップS540−05に戻す。これにより、電流モニタと吸光度の監視が継続される。
【0086】
一方、この時間経過が一定時間外である場合(ステップS540−25;NO)、制御部115は、比色分析を行わない(ステップS540−30)。つまり、データの信頼性がないため分析不可とする。
【0087】
ただし、特定の反応セル112のみ、電流モニタ値若しくは吸光度がバラつくまたは吸光度の特定の波長が仕様外となる場合は、対象の反応セル112自体に問題があると判断し、その反応セル112を除いて分析可能とする。その際、操作画面上にシステムアラームを出力し、ユーザーに反応セル112の交換が必要な旨を伝える。
【0088】
また、電流モニタ値と吸光度を共に監視することで
図7のステップS540−30において分析不可となった時の原因分析の確度が上がる。吸光度のみで監視を行うとすると、
図3に示した光源ランプ301、反応セル302、反応槽303、光検出器305(受光部)、反応槽内水のどこに原因があるかわからないため、手当たり次第に部品交換をするしかない。
【0089】
電流モニタ値と吸光度を共に監視する場合、光源ランプ120のフィラメント監視も行える。フィラメントが劣化すると電流値が低下する。よって電流値が低く吸光度が高い(暗い)状態は、光源ランプ120のフィラメントに原因があると特定できる。この条件で、制御部115は、光源ランプを交換する旨のアラームを表示部124の操作画面上に出力する。
【0090】
また、フィラメントが切れた場合も電流モニタ値がほぼ0となるため、制御部115は、光源ランプ120を交換する旨のアラームを表示部124の操作画面上に出力する。フィラメントが切れているか目視で確認することは難しいことに加え、光源ランプ120はユーザーが交換することが多い。そのため、光源ランプ120を交換したのに分析精度がでないという問題を解決することができる。
【0091】
また、電流値が正常で吸光度が高い(暗い)状態はフィラメント以外に原因があると特定できる。
【0092】
次に、
図8を用いて、本発明の実施形態である自動分析装置100に用いられる表示部124に表示される操作画面を説明する。
図8は、本発明の実施形態である自動分析装置100に用いられる表示部124に表示される操作画面124aの構成図の一例である。
【0093】
図8に示される操作画面124aは、光源ランプ120の交換周期を予測できる手段をユーザーに提供する。予備の光源ランプ120をユーザーが持っていなかった場合は、分析が行えない、または正しい分析結果が得られない状態となってしまう。これを防ぐことが本目的である。
【0094】
図8の例では、操作画面124aは、吸光度を表示する領域(ペイン)124a−1と、電流モニタ値を表示する領域124a−2とを備える。ただし、どちららか一方のみを備えるようにしてもよい。
【0095】
制御部115は、セルブランク中の吸光度の変化を日付別(所定の時間間隔毎)にグラフ化し、操作画面の領域124a−1に吸光度のグラフを表示する。領域124a−1において、縦軸は吸光度(単位:カウント)を示し、横軸は日時を示す。
【0096】
制御部115は、表示部124に光源ランプ120を交換する基準となる吸光度A
Th(例えば、14000カウント)を表示する。ユーザーは、吸光度が光源ランプを交換する基準となる吸光度A
Th以上になった場合、光源ランプ120を交換する必要があると予測することができる。
【0097】
なお、測定された吸光度とA
Thの差が所定範囲内となった場合、制御部115は、表示部124の操作画面上に光源ランプ120を交換する必要がある旨を表示してもよい。
図8の例では、ユーザーは、3月末頃に光源ランプ120を交換する必要があると予測することができる。
【0098】
これにより、ランプ交換のアラームが出る前に予備の光源ランプ120を準備することが可能となる。
【0099】
同様に、制御部115は、電流モニタ値の変化を日付別(所定の時間間隔毎)にグラフ化し、操作画面の領域124a−2に電流モニタ値のグラフを表示する。領域124a−2において、縦軸は電流モニタ値を示し、横軸は日時を示す。
【0100】
制御部115は、表示部124に光源ランプ120を交換する基準となる電流値I
Thを表示する。ユーザーは、電流モニタ値が光源ランプを交換する基準となる電流値I
Th以下となった場合、光源ランプ120を交換する必要があると予測することができる。なお、電流モニタ値とI
Thの差が所定範囲内となった場合、制御部115は、表示部124の操作画面上に光源ランプ120を交換する必要がある旨を表示してもよい。
【0101】
(変形例)
図3の電圧調整部308は、電流検出部307の測定結果をフィードバックし意図した電流が流れるように調整する手段を有してもよい。
【0102】
図5のステップS505でNOの場合、光源ランプ120の印加電圧を常に測定電圧V
sとするモードを設けてもよい。
【0103】
また、光源ランプ120のフィラメントが切れたことを検出するのみであれば、電流モニタ値ではなく、光源ランプ120の電圧を監視するのみでも良い。
【0104】
以上説明したように、本実施形態によれば、光源ランプの長寿命化を図りつつ、突入電流により光源ランプが劣化することを抑制することができる。また、電流モニタ値と吸光度を共に監視することで分析不可となった時の原因分析の確度が上がる。さらに、表示部124に表示された操作画面124aにより光源ランプ120の交換周期を予測することができる。
【0105】
本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。