特許第6280035号(P6280035)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6280035不透明フィルムおよびコーティング適用のための水性ポリマーエマルジョン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6280035
(24)【登録日】2018年1月26日
(45)【発行日】2018年2月14日
(54)【発明の名称】不透明フィルムおよびコーティング適用のための水性ポリマーエマルジョン
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/107 20140101AFI20180205BHJP
   C09D 133/06 20060101ALI20180205BHJP
   C09D 125/02 20060101ALI20180205BHJP
   C08F 2/00 20060101ALI20180205BHJP
【FI】
   C09D11/107
   C09D133/06
   C09D125/02
   C08F2/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-528541(P2014-528541)
(86)(22)【出願日】2012年8月29日
(65)【公表番号】特表2014-525503(P2014-525503A)
(43)【公表日】2014年9月29日
(86)【国際出願番号】US2012052823
(87)【国際公開番号】WO2013033181
(87)【国際公開日】20130307
【審査請求日】2015年8月27日
(31)【優先権主張番号】61/529,011
(32)【優先日】2011年8月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】サラヴ バラット ジャヴェリ
【審査官】 安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−060024(JP,A)
【文献】 特表2009−507082(JP,A)
【文献】 特開昭49−030472(JP,A)
【文献】 特開平02−070741(JP,A)
【文献】 特表2014−529666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/107
C09D 133/06
C09D 125/02
C08F 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基体をコーティングする為のインクの製造方法であって、
前記インクは顔料及び2以上の一次ポリマー粒子を含む凝集ポリマー粒子を含み、
前記2以上の一次ポリマー粒子は小核果様形態を有する中和されたコポリマーを含み、
前記中和されたコポリマーは、(メタ)アクリレート−(メタ)アクリル酸−スチレンコポリマーを含み、
前記2以上の一次ポリマー粒子が疎水性ポリマーによって前記凝集ポリマー粒子中で封鎖されており;そして、
前記凝集ポリマー粒子は凝集した小核果形態を有し、
前記方法は、
第1モノマーフィードを反応容器に第1開始剤および水の存在下で添加して、酸官能性ポリマーを形成し;
前記酸官能性ポリマーを中和し2以上の一次ポリマー粒子を形成し、そして、
第2モノマーフィードを前記反応容器に第2開始剤の存在下で添加して、前記凝集ポリマー粒子を形成することを含み;
ここで:
前記方法がワンポット法であり;
前記第1モノマーフィードは非分枝(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリル酸モノマー、分枝(メタ)アクリレートモノマー、およびスチレンモノマーを含み、;及び
前記第2モノマーフィードは、スチレン、α−メチルスチレンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される1以上の疎水性モノマーからなる、前記製造方法
【請求項2】
前記疎水性ポリマーがスチレンポリマーである、請求項1記載の製造方法
【請求項3】
前記凝集ポリマー粒子が200nm〜3000nmの平均粒子サイズを有する、請求項1記載の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2011年8月30日付で出願された米国特許仮出願第61/529,011号の利益を主張し、これは参照によって本明細書中に組み込まれる。
【0002】
本発明の技術は、概して、高い不透明度を有するポリマー系コーティングに関する。
【背景技術】
【0003】
高不透明度フィルムおよびコーティングをもたらす水性エマルジョンは、隠蔽または不透明度が必要とされる、塗料、インク、自動車コーティング、フィラーなどのさまざまな分野における応用に関して興味深い。ポリマーエマルジョンにおける不透明度を改善するために、無機材料(二酸化チタン、二酸化ケイ素など)をポリマー内に組み入れること、またはポリマー粒子内に空気ドメイン組み入れて(中空球)、コーティング材料内に屈折率のコントラストを組み入れることなどの様々なアプローチが示唆されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
1つの態様において、凝集ポリマーを有する水性エマルジョンを製造する方法は、第1モノマーフィードを反応容器に第1開始剤および水の存在下で添加して、酸官能性ポリマーを形成し;酸官能性ポリマーを中和して、粒子状ポリマーを形成し;そして第2モノマーフィードを反応容器に第2開始剤の存在下で添加して、凝集ポリマーを形成することを含み、このプロセスはワンポットプロセスであり;第1モノマーフィードは、(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリル酸モノマー、およびスチレンモノマーを含み;第2モノマーフィードは、疎水性モノマー、および場合によって(メタ)アクリレートモノマーを含み;凝集ポリマーは粒子状ポリマーを含み;そして凝集ポリマーは小核果形態を有する。1つの実施形態において、粒子状ポリマーは約1nm〜約1000nmの平均粒子サイズを有する。上記実施形態のいずれかにおいて、凝集ポリマーは約200nm〜約3000nmの平均粒子サイズを有し得る。上記実施形態のいずれかにおいて、(メタ)アクリレートモノマーとしては、メチルメタクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−n−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルブチル(メタ)アクリレート、シンナミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−ニトロ−2−メチルプロピル(メタ)アクリレート、n−オクチル−(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェニルエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、プロパルギル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、またはテトラヒドロピラニル(メタ)アクリレートが挙げられる。上記実施形態のいずれかにおいて、(メタ)アクリル酸モノマーはアクリル酸またはメタクリル酸を含み得る。上記実施形態のいずれかにおいて、疎水性モノマーはスチレンまたはα−メチルスチレンを含み得る。上記実施形態のいずれかにおいて、第1および第2開始剤にはそれぞれ、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、tert−ブチルヒドロペルオキシドおよび過酸化ジクミルが含まれる。
【0005】
上記実施形態のいずれかにおいて、中和には、塩基を粒子状ポリマーに添加することが含まれる。そのような実施形態において、塩基としては、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、メチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、またはジメチルエタノールアミンを挙げることができる。
【0006】
上記実施形態のいずれかにおいて、第1モノマーフィードを界面活性剤の非存在下で添加することができる。
【0007】
上記実施形態のいずれかにおいて、プロセスは、界面活性剤、殺生剤、分散剤、顔料、フィラー、消泡剤、湿潤剤、光安定剤、表面活性剤、増粘剤、または顔料安定剤の1以上を凝集ポリマーに添加することをさらに含み得る。上記実施形態のいずれかにおいて、第1モノマーフィードの添加は、約30℃〜約100℃の温度で実施される。
【0008】
上記実施形態のいずれかにおいて、粒子状ポリマーは少なくとも、30℃より高い第1ガラス転移温度を有する。いくつかの実施形態において、凝集ポリマーは、少なくとも、30℃より高い第1ガラス転移温度および75℃より高い第2ガラス転移温度を有する。いくつかの実施形態において、凝集ポリマーは、少なくとも、約30℃〜約90℃の第1ガラス転移温度および約50℃〜約150℃の第2ガラス転移温度を有する。凝集ポリマーは、少なくとも、約50℃〜約80℃の第1Tgおよび約80℃〜約120℃の第2ガラス転移温度を有し得る。
【0009】
別の態様において、前記プロセスのいずれかによって製造される凝集ポリマー粒子が提供される。
【0010】
別の態様において、凝集ポリマーが凝集した小核果形態を有する2以上の一次ポリマー粒子を含む凝集ポリマー粒子が提供される。いくつかの実施形態において、一次ポリマー粒子は、中和された(メタ)アクリレート−(メタ)アクリル酸−スチレンコポリマーを含む。いくつかの実施形態において、2以上の一次ポリマー粒子は疎水性ポリマーによって凝集ポリマー粒子中で封鎖される。いくつかの実施形態において、疎水性ポリマーはスチレンポリマーである。いくつかの実施形態において、粒子は約200nm〜約3000nmの平均粒子サイズを有する。いくつかの実施形態において、粒子は約200nm〜約700nmの平均粒子サイズを有する。いくつかの実施形態において、一次ポリマー粒子は約1nm〜約100nmの平均粒子サイズを有する。
【0011】
別の態様において、2以上の一次ポリマー粒子を含む凝集粒子を含むコーティングが提供され、この場合、凝集ポリマーは凝集した小核果形態を有する。いくつかの実施形態において、コーティングは、界面活性剤、殺生剤、乾燥剤、分散剤、顔料、フィラー、消泡剤、湿潤剤、光安定剤、表面活性剤、増粘剤、または顔料安定剤をさらに含み得る。いくつかの実施形態において、凝集ポリマー粒子は前記方法のいずれかによって調製される。
【0012】
別の態様において、小核果様形態を有する凝集ポリマー粒子を含み、(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリル酸モノマー、およびスチレンモノマーの界面活性剤無添加重合の生成物を有する一次粒子相;ならびにスチレンモノマー、および場合によって(メタ)アクリレートモノマーの重合生成物を有する二次粒子相を含むエマルジョンが提供され、ここで、一次粒子相は二次粒子相よりも小さな寸法を有する。エマルジョンの実施形態のいずれにおいても、一次粒子相は、平約1nm〜約1000nmの平均粒子サイズを有し得る。これは、約200nm〜約3000nmの平均粒子サイズを含み得る。エマルジョンの実施形態のいずれにおいても、一次粒子相は、−20℃より高い第1ガラス転移温度を有し得る。これは、少なくとも、−20℃より高い第1ガラス転移温度および80℃より高い第2ガラス転移温度を有する凝集ポリマー粒子を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A図1Aは、実施例による乾燥不透明粒子エマルジョンのSEM画像である。
図1B図1Bは、実施例による乾燥不透明粒子エマルジョンのSEM画像である。
図2図2Aおよび2Bは、乾燥不透明粒子エマルジョンのAFM画像である。図2Aは高さ画像であり、図2Bは位相画像である。
図3A図3Aは、さまざまな実施形態による、粒子内の相分離をもたらす疎水性および親水性基含有モノマーの界面活性剤無添加乳化共重合の図である。
図3B図3Bは、様々な実施形態による、図3Aにしたがって調製された生成物の中和の図であり、この場合、小さい方のサイズの親水性ポリマー相(小さい方の粒子)は粒子の内部からポリマーの表面へ(水−ポリマー界面へ)移動する。
図3C図3Cは、さまざまな実施形態による、図3Aおよび3Bからの重合の最終段階の図であり、さらなる疎水性モノマーとの重合の結果、粒子サイズがさらに成長し、その結果、大きなサイズのラズベリー構造の粒子凝集体が得られる。
図4図4は、さまざまな実施形態による、凝集ポリマー粒子を用いて製造され、光と相互作用して散乱ポテンシャルを示すコーティングの図である。
図5図5は、実施例2−1のDSC図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の詳細な説明では、その一部を形成する添付の図面が参照される。詳細な説明、図面および特許請求の範囲で記載される例示的実施形態は限定するものではない。他の実施形態も利用することができ、本明細書中で提示される対象の主旨または範囲から逸脱することなく、他の変更を加えることができる。本発明の技術も、決して限定的であると解釈されるべきではない本明細書中の実施例によって示される。
【0015】
1つの態様において、高不透明度フィルムおよびコーティングで使用するための水性エマルジョンの合成のためのプロセスが提供される。プロセスは少なくとも2段階のワンポット合成を含む。第1段階は、界面活性剤の非存在下での、酸官能性(すなわち親水性)モノマーの水性重合および疎水性モノマーの重合を含む。次に酸官能性ポリマーの塩基での中和に続いて、さらなる疎水性モノマー(複数可)での重合の第2段階を行う。第2段階は、開始剤および疎水性モノマーを添加し、それによって粒子状ポリマーを含む第2ポリマーを製造する第2重合プロセスを開始することを含む。フィード2の間または最後での非イオン性界面活性剤の添加は、エマルジョンの安定化に役立つ。この第2ポリマーを凝集ポリマーと称する。
【0016】
ワンポットプロセスの結果、ポリマー粒子が得られ、これは凝集して、凝集した小核果形態を有する複合粒子になる。本明細書中で用いられる場合、ワンポットプロセスは、全ての反応ステップが同じ反応容器中で実施される多ステップ反応として定義される。前記ワンポットプロセスでは、第1段階および第2段階はどちらも同じ反応容器中で起こる。そのようなワンポットプロセスは、必要とされる設備、コスト、ならびにプロセスおよび結果として得られる生成物の一貫性の点でより効率的である。
【0017】
本明細書中で用いられる場合、凝集した小核果形態は、ラズベリーまたはブラックベリーの表面と類似していると定義される。図1A、1B、2A、および2Bで示されるように、凝集したポリマーの表面は、一緒になって1つの大きな粒子となる別個の突起または粒子が存在し、大きな粒子の表面上で個々の構成要素の少なくともいくつかは容易に識別可能である点でラズベリーまたはブラックベリーの表面と似ている。図1A、1B、2A、および2Bで示される構造は、後で詳述する。
【0018】
凝集した小核果粒子のエマルジョンで調製されたコーティングは、そのような粒子で調製されていないコーティングと比較して、増大した透明度を示す。理論によって拘束されないが、凝集した小核果粒子は、凝集した小核果粒子の1以上の粒子サイズのために不透明度を増大させる、コーティング中に気泡を生じさせる、または顔料分散性を増大させると考えられる。例えば、凝集した小核果粒子の粒子サイズが大きいほど、コーティングにおける光散乱が大きくなる。さらに、粒子の非球形特性は、コーティングにおける粒子の密充填を妨げ、それによってコーティング中に気泡を生じさせる。コーティング中に気泡が存在すると、その結果、ポリマーと空気との間の屈折率の差は、ポリマーとポリマーとの間のよりも大きいために、光の散乱がより大きくなる。最終的に、ラテックス粒子の形態は、顔料粒子の分散性を支援する可能性があり、その結果、コーティング内の顔料のさらに均一な分布をもたらす。大きな凝集した粒子の表面上に小さな親水性ドメインを有する粒子の凝集した形態は、有効な顔料分散剤として作用して、顔料粒子のさらに良好な分散性をもたらすと考えられる。コーティング内の顔料粒子の分散が良好なほど、より多くの分配された散乱中心(顔料粒子)が得られ、その結果、光散乱が高くなり、不透明度が改善される。
【0019】
第1段階は、水溶性開始剤を添加することによってアクリレート/メタクリレート(親水性モノマー)およびスチレン(疎水性モノマー)をフリーラジカル重合して、水中で安定化された小さな粒子分散液を製造することを含む。第1フィード終了後に、酸官能性分散液を塩基によって中和する。第1段階の重合とそれに続く中和ステップの結果、小核果様粒子が形成され、これは第2段階重合のシードとしての働きをする。中和の間、酸を多く含む相は塩の形成のためにより水溶性(親水性)になり、その結果、中和された酸を多く含むドメインが多相粒子の表面上へ移動する。第2段階は、さらに開始剤およびモノマーを添加して、第2の重合を開始させることを含み、これは、さらに大きな小核果様粒子の形成に至る。この技術の結果、ラズベリー型構造の形態を有するさらに大きなサイズの粒子(たとえば>400nm)を含むエマルジョンが得られる。
【0020】
一般的プロセスを図3で提示する図に示す。図3では、反応の第1段階にしたがって、ポリマー粒子40を形成するための水20およびかき混ぜまたは撹拌装置30を含む反応容器10を示す。反応の第1段階は、親水性モノマーおよび疎水性モノマーの界面活性剤無添加乳化重合として実施する。親水性および疎水性モノマーは重合して、親水性(酸が豊富な)粒子60および疎水性(酸が乏しい)粒子50のポリマードメインを形成する。反応の化学量論は、第1段階の間に疎水性ドメイン50が親水性ドメイン60を取り囲むようなものである。
【0021】
第2段階では、界面活性剤がない条件下でポリマー粒子が形成された後、塩基の添加によって乳化重合を中和する。図3Bは、ポリマー粒子40が疎水性ドメイン50および親水性ドメイン60の内部シフトを受ける中和段階を示す。中和の間、親水性相60は添加された塩基と反応して、中性相70を形成する。中和後、中和された粒子70は親水性粒子50の表面に移動することができ、それによって小核果様形態を形成する。さらなる疎水性モノマーの添加の結果、ポリマー粒子がさらに成長する(図3C)。
【0022】
第1段階の結果、疎水性相中に低分子量ポリマーが生じる場合、親水性粒子は水相中に移動することができる。そのような重合の結果、二峰性サイズの粒子が得られる。すなわち、生成物中には別個の疎水性および親水性粒子が存在する。しかしながら、疎水性相の分子量が高い場合、疎水性相は親水性粒子を疎水性相の表面に吸着させ、全体的にはやや均一な粒子サイズを有する凝集した粒子にする。疎水性相の分子量の増加は、中和された親水性相(小さいほうの粒子)が粒子から完全に分離するのを防止し、その結果、小核果様表面形態を有する凝集体が形成される。形態は形状だけでなく表面定義においてもブラックベリーまたはラズベリーに似ており、少なくともいくつかの小さい方のポリマー粒子の表面の少なくとも一部は表面から隆起して、特徴的な「凸凹の」「ラズベリー様」、または「ブラックベリー様」外観をもたらす。
【0023】
明らかになるように、第1段階で形成される親水性ポリマー粒子は、凝集ポリマー粒子よりも必然的に小さい。1つの実施形態によると、第1段階で調製される親水性粒子状ポリマーは約1nm〜約700nmの平均粒子サイズを有する。いくつかの実施形態において、親水性ポリマー粒子は約50nm〜約700nmの平均サイズを有する。いくつかの実施形態において、親水性ポリマー粒子は約50nm〜約250nmの平均サイズを有する。いくつかの実施形態において、親水性ポリマー粒子は約50nm〜約100nmの平均サイズを有する。凝集ポリマー粒子は約100nm〜約3μmの平均粒子サイズを有し得る。たとえば、1つの実施形態において、凝集ポリマー粒子は約200nm〜約1μmの平均粒子サイズを有する。他の実施形態において、凝集ポリマー粒子は約300nm〜約700nmの平均粒子サイズを有する。いくつかの実施形態において、凝集ポリマー粒子は、少なくとも2つの第1段階のポリマー粒子を含む。
【0024】
理論によって拘束されないが、本発明の材料がコーティングキャパシティーで使用される場合、それらの所望の不透明度をもたらすのは凝集した小核果形態であると考えられる。フィルムにおける不透明度は、フィルム内の粒子により散乱される光の量、およびフィルム内の異なる媒体の屈折率の差によって制御される。小核果様形態は多量の散乱の一因となり、したがってさらに高い不透明度をもたらす。図4で示されるように、入射光線5、6がコーティング中の粒子の表面と異なる点で相互作用する場合、光が反射され、散乱が起こる。散乱の結果、光学的透明度が失われ、コーティングの不透明な外観が得られる。コーティングおよび凝集ポリマー粒子の他の物理的特性も不透明度の程度に関係がある。たとえば、コーティングの操作温度でばらばらのポリマー粒子のままであるポリマー粒子は、さらに高い不透明度を提供する。
【0025】
親水性ポリマー粒子および疎水性ポリマー粒子は、示差走査熱量測定法(DSC)を用いて測定する場合、異なるガラス転移温度(Tg)を有する。2相について異なるTgは、粒子内の相分離を示す。いくつかの実施形態において、凝集ポリマー粒子の疎水性ポリマーおよび粒子状ポリマーは、コーティングがさらされる最高温度よりも高いT(ガラス転移温度)値を有する。これは、室温よりも高いT、または50℃よりも高いT、またはさらには100℃よりも高いTである可能性がある。いくつかの実施形態において、凝集ポリマー粒子の疎水性ポリマーは約30℃〜約150℃のTを有する。いくつかのそのような実施形態において、凝集ポリマー粒子の疎水性ポリマーは約50℃〜約150℃のTgを有する。いくつかのそのような実施形態において、凝集ポリマー粒子の疎水性ポリマーは約75℃〜約120℃のTを有する。一次粒子、すなわち親水性粒子状ポリマーは、凝集ポリマー粒子の疎水性ポリマーと同じTを有する可能性があるか、または一次粒子のTは異なって、凝集ポリマー粒子の2相転移をもたらす可能性がある。したがって、いくつかの実施形態において、一次ポリマー粒子は約30℃〜約100℃のTを有する。いくつかのそのような実施形態において、一次ポリマー粒子は約50℃〜約80℃のTを有する。いくつかのそのような実施形態において、一次ポリマー粒子は約75℃〜約120℃のTを有する。Tがコーティングの操作温度より低い場合、たとえば周囲温度または室温よりも低い場合、粒子状ポリマーおよび凝集ポリマーはそれらの形状を失い、融合し始め、それによって散乱することなく光を透過させる。そのような場合、低不透明度、またはさらには透明なコーティングが形成される可能性がある。
【0026】
記載したように、凝集した粒子は少なくとも2つのTg値を有する可能性があり、1つは親水性一次粒子に関するものであり、もう1つは疎水性相に関するものである。したがって、いくつかの実施形態において、凝集ポリマーは、少なくとも、30℃より高い第1ガラス転移温度および75℃より高い第2ガラス転移温度を有する。いくつかの実施形態において、凝集ポリマーは、少なくとも、約30℃〜約90℃の第1ガラス転移温度および約50℃〜約150℃の第2ガラス転移温度を有する。凝集ポリマーは、少なくとも、約50℃〜約80℃の第1Tgおよび約80℃〜約120℃の第2ガラス転移温度を有し得る。
【0027】
不透明度と関係があるコーティングおよび凝集ポリマー粒子の別の物理的特性は、粒子間の空隙領域の数およびサイズである。粒子間の空隙領域は、粒子形状のために、粒子によって充填されない領域である。例示的空隙領域は、図4で参照番号15によって記載される。光が空隙領域と遭遇するために十分コーティングおよび粒子を通過できる程度まで、空隙領域は光が反射され、散乱される可能性があるさらなる表面を提供する。次いで反射された光がコーティングから出ようとする際に、またはコーティングを通って屈折する際に、さらなる散乱が起こる可能性がある。粒子がコーティング中で基体の表面に適用される際、そして表面上でコーティングが硬化する際に、粒子の不規則な充填のために空隙領域が形成される。凝集ポリマーの不規則な形状は、不規則な充填やさらにランダム化された表面に至り、光散乱を増強させる。空隙領域が多いほど、不透明度が高くなる。
【0028】
凝集ポリマー粒子を用いるコーティングの高い不透明度および隠蔽力は、記載されるポリマーおよび形態に起因する。コーティングの不透明度や隠蔽力を増加させるために伝統的に用いられる添加剤または顔料は必要ないが、それらを用いることができる。しかしながら、そのような添加剤を除外すると、より低コストのコーティングを提供することができる。
【0029】
不透明度は、本明細書中で用いられる場合、光の透過を防止するコーティングの能力として定義される。様々なエマルジョンおよびそれらのコーティング(複数可)の不透明度または隠蔽力を定量化し、比較するために、乾燥したコーティング(複数可)のコントラスト比をLenetaカード上で測定した(白色および黒色背景間のコーティングのコントラスト)。不透明度を次いで視覚的に0〜5のスケールで採点し、5が不透明度で最良であり、0が不透明度で最悪であった。凝集した粒子エマルジョンを用いるコーティングは、典型的には30%を超えるLenetaカード上のコントラスト比(10%〜80%のコントラスト比)および4以上の視覚的評点を示す。
【0030】
2段階プロセスの第1段階において、アクリレートもしくは(メタ)アクリレートモノマー、アクリル酸もしくはメタクリル酸(すなわち、親水性モノマー)、およびスチレンモノマー(すなわち、疎水性モノマー)を、反応容器(すなわち、ポット)に水性媒体中、フリーラジカル開始剤の存在下で添加する。第2段階はスチレンモノマーの添加も含む。第1段階のモノマー添加で使用するための好適なアクリレートまたは(メタ)アクリレートモノマーとしては、メチルメタクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−n−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルブチル(メタ)アクリレート、シンナミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−ニトロ−2−メチルプロピル(メタ)アクリレート、n−オクチル−(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェニルエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、プロパルギル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、およびテトラヒドロピラニル(メタ)アクリレートが挙げられるが、これらに限定されるものではない。本明細書中で用いられる場合、アクリルまたはアクリレートの前の括弧内の「メタ」は、メタクリルもしくはアクリル、またはメタクリレートもしくはアクリレート化合物のいずれかを示すために用いられる。第1または第2段階のモノマー添加での使用に好適なスチレンモノマーとしては、スチレンおよびα−メチルスチレンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。場合によって第2段階の間で添加することができる好適な(メタ)アクリレートとしては、前述の非分枝および分枝(メタ)アクリレートが挙げられる。第2段階で場合によって用いることができる1つの(メタ)アクリレートはエチルヘキシルアクリレートである。
【0031】
上述のように、第1段階が完了した後、塩基を添加する。塩基の添加は、第1段階で製造される酸官能性ポリマーを中和することを意図する。好適な塩基としては、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、メチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、およびジメチルエタノールアミンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。塩基は、化学量論量未満で、または化学量論量で、または若干化学量論的に過剰な量で添加することができる。酸含有第1段階ポリマーの部分的または完全中和の結果、第1段階で生成したポリマー粒子の一部または全部でそれらの親水性特性が増大する。第1段階ポリマーの塩基中和後の疎水性ポリマーの重合の第2段階の結果、2つの異なるポリマー粒子種が得られ、これらは一緒に封鎖されて凝集した粒子を形成する。
【0032】
第1段階または第2段階のいずれかで用いられる開始剤は、フリーラジカルポリマーのために通常用いられるものであって、水溶性のものであり得る。好適な開始剤としては、過硫酸アンモニウム(APS)、過硫酸カリウム(PPS)、過硫酸ナトリウム、tert−ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)、過酸化ジクミル、過酸化水素などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
次いでエマルジョンに添加することができる他の添加剤としては、たとえば界面活性剤、殺生剤;乾燥剤;分散剤;顔料;フィラー、たとえばクレイ、炭酸カルシウムなど;消泡剤;湿潤剤;光安定剤;表面活性剤;増粘剤;および顔料安定剤などの添加剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本明細書中で用いられる場合、殺生剤は、エマルジョン中またはそのようなエマルジョンを用いてもしくはそのようなエマルジョンから調製される生成物中での細菌、ウイルス、真菌、または他の生物学的汚染物質の成長を防止または阻害する物質である。本明細書中で用いられる場合、乾燥剤は、コーティングの乾燥速度を増強させるためにコーティングまたはエマルジョンに添加される物質である。本明細書中で用いられる場合、分散剤は、形成後のエマルジョンまたはコーティングの硬化を防止するかまたは最小限に抑えるためにコーティングまたはエマルジョンに添加される物質である。本明細書中で用いられる場合、光安定剤は、紫外線光をはじめとする様々な光源への暴露によるポリマーの分解を防止するかまたは最小限に抑える。本明細書中で用いられる場合、表面活性剤は、エマルジョンを安定化させるためにエマルジョンに添加される物質である。本明細書中で用いられる場合、増粘剤は、エマルジョンの粘度を増加させるためにエマルジョンに添加される物質である。本明細書中で用いられる場合、顔料安定剤は、顔料を退色および分解から安定化させるために添加される物質である。
【0034】
1つの実施形態によると、プロセスの第1段階は高温で実施される。たとえば、温度は約30℃〜約100℃の可能性がある。いくつかの実施形態において、第1段階が実施される温度は約60℃〜約90℃である。第2段階は同様の温度で実施することができる。いくつかの実施形態において、第2段階は第1段階と実質的に同じ温度で実施される。これは「実質的に」と記載される。なぜなら、当業者には理解されるように、モノマー、さらなる水、または他の添加剤の添加の間、反応容器の温度は時間とともに、または自動温度調節された加熱装置または浴中の変動のために、若干変動する可能性があるからである。
【0035】
プロセスの第1段階で製造されるポリマー粒子の重量平均分子量(M)は約5,000g/モル〜約1,000,000g/モルである。いくつかのそのような実施形態において、プロセスの第1段階で製造されるポリマー粒子のMは約200,000g/モル〜約300,000g/モルである。プロセスの第2段階で製造される凝集ポリマー粒子中の疎水性ポリマーのMは約5,000g/モル〜約1,000,000g/モルである。いくつかのそのような実施形態において、プロセスの第2段階で製造される凝集ポリマー粒子中の疎水性ポリマーのMは約200,000g/モル〜約300,000g/モルである。
【0036】
実施例から観察されるように、プロセスは、1以上の保持または平衡化期間を含み得る。そのような期間は、1分または2分から数分または数時間まで及ぶ可能性がある。保持または平衡化期間(用語は交換可能に用いられる)は、反応を完了させるため、および/または反応混合物を均一に分散させるためのものである。
【0037】
第1段階における酸官能性ポリマー粒子の中和、および第2段階における非酸官能性疎水性モノマーの重合を考慮して、プロセスで製造されるエマルジョンの最終pHは中性に近い。いくつかの実施形態において、製造される水性エマルジョンのpHは約6〜約8である。いくつかのそのような実施形態において、pHは約7〜約7.5である。
【0038】
反応が完了し、反応混合物を室温まで冷却した後、エマルジョンを濾過する。
【0039】
水性エマルジョンはコーティング中で使用されるので、1つの実施形態によると、水性エマルジョンの粘度は、異なる流速、適用条件などを提供するためにモニターまたは調節することができる1つのパラメータである。水性エマルジョンの固形分を増加させることによって粘度を増加させることができるか、または増粘剤をエマルジョンに添加して、粘度の増加をもたらすことができる。いずれにしても、粘度は約50cps〜約2,000cpsの値を目標とする可能性がある。
【0040】
別の態様において、本明細書中で記載される凝集ポリマーが提供される。上述のように、凝集ポリマー粒子は一次構造と二次構造との両方を有する。一次構造は、第1段階中に形成される粒子状ポリマーであり、小さな粒子サイズを有する中和された(メタ)アクリレート−(メタ)アクリル酸−スチレンコポリマーを含む。第2段階の間、二次構造が形成され、一次粒子が凝集して凝集した小核果形態になることを含む。図1Aおよび1Bは、凝集した粒子の走査電子顕微鏡(SEM)画像を含み、図1B図1Aの拡大図である。粒子の表面の詳細は、図2Aおよび2Bの原子間力顕微鏡(AFM)画像で示される。上述のように、そして理論によって拘束されないが、そのような表面は、コーティングとして用いられる場合、さらなる隠蔽もしくは白色化顔料または存在する他の添加剤を必要とすることなく、そのようなポリマーの不透明度の基礎を提供すると考えられる。
【0041】
したがって、1つの実施形態において、ホスト、少なくとも2つのさらに小さなポリマー粒子を含む疎水性ポリマーを含む凝集ポリマー粒子が提供され、この凝集ポリマー粒子は凝集した小核果形態を有する。
【0042】
前記調製された凝集ポリマー粒子のいずれかのエマルジョンも提供される。エマルジョンは、小核果形態を有する凝集ポリマー粒子を含み得る。凝集ポリマー粒子は、(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリル酸モノマー、およびスチレンモノマーの界面活性剤無添加重合の生成物である一次粒子相;ならびにスチレンモノマー、および場合によって(メタ)アクリレートモノマーの重合生成物である二次粒子相を含む。凝集ポリマー粒子は、前述の寸法、分子量、およびガラス転移温度を有する前述のものである。
【0043】
別の態様において、前述の凝集ポリマー粒子を含むコーティングが提供される。コーティングは、塗料、インク、プライマー、サイジング剤、オーバープリントワニス、または他の類似のコーティングであり得る。コーティングは、顔料などの他の不透明度増強添加剤を添加することなく、高い不透明度を提供する。しかしながら、そのような不透明度増強添加剤をコーティング配合物中に含めて、コーティングの不透明度、白色化、または隠蔽効果をさらに増強することができる。そのようなコーティングは、少なくとも2つの小さなポリマー粒子を含む疎水性ポリマーを有する凝集ポリマー粒子を含み得、凝集ポリマー粒子は凝集した小核果形態を有する。コーティングはさらに分散剤、顔料または他の添加剤も含み得る。
【0044】
コーティングは、さまざまな添加剤、例えば限定されないが、前述のような界面活性剤、殺生剤;乾燥剤;分散剤;顔料;フィラー、たとえばクレイ、炭酸カルシウムなど;消泡剤;湿潤剤;光安定剤;表面活性剤;増粘剤;および顔料安定剤を含み得る。あらゆる色および種類の顔料は、水性エマルジョンコーティングと適合性である限り、使用することができる。
【0045】
コーティングが顔料を含む場合、凝集ポリマー粒子で形成された不透明コーティングは、隠蔽で改善を示す。たとえば、従来型水性エマルジョンが用いられる場合、着色された基体は材料の単一コーティングを通して透けて見える傾向があり、一方、不透明コーティングが使用される場合、基体の透き通しは最小であるか、または存在しない。
【0046】
そのようなコーティングは、もちろん基体に施用することができる。例示的基体としては、紙、プラスチック、木材、コンクリート、セラミック、およびガラスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。たとえば、基体としては、クラフト紙、新聞印刷用紙、柔軟性プラスチックパッケージング、セルロース紙、プラスチックコーティングされた紙、ボール紙などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
このように一般的に記載した本発明の技術は、説明のために提供され、本発明の技術を限定することを意図しない以下の実施例を参照することによってさらに容易に理解されるであろう。
【0048】
実施例
実施例1。水(341.56g)をリアクター中で撹拌しながら85℃まで加熱する。水(9.00g)中に溶解させた過硫酸アンモニウム(APS、1.08g)をリアクターに添加し、続いてモノマーフィード(エチルアクリレート(47.50g)、メタクリル酸(23.46g)、メチルメタクリレート(16.70g)、およびスチレン(50.20g)の混合物を25分にわたって添加する。モノマーフィードの添加が完了したら、フィードタンクを水(10.00g)でフラッシュし、反応を5分間平衡化させた。水(27g)で希釈したアンモニア(28%水中溶液、18.70g)を次いでリアクターに5分間にわたって添加し、再度反応混合物をさらに5分間平衡化させた。水(14.00g)中に溶解させたAPS(1.51g)の第2添加を次いでリアクターに添加した。第2モノマーフィード(スチレン;200.0g)を次いで35分にわたって撹拌しながらゆっくりと添加した。第2モノマーフィードの添加が完了したら、フィードタンクを次いで水(10.00g)でフラッシュした。水(18.0g)で溶解させたtert−ブチルヒドロペルオキシド(70%水中溶液、1.73g)を次いでリアクターに添加した。10分後、7.78gの水で希釈したエリソルビン酸ナトリウム(12%水中溶液、2.52g)をリアクターに5分にわたって添加した。反応を次いで10分間平衡化させ、水(14.42g)を添加し、そして反応を60℃まで冷却した。Pluronic P−1200(ポリエチレングリコール、6.83g、BASF)およびActicide MBS(防腐剤、0.42g)を添加した。反応を室温まで冷却し、エマルジョンを濾過した。エマルジョンは、8.53のpH、890cpsの粘度、および450nmの平均粒子サイズを有していた。
【0049】
実施例2。連鎖移動効果に関する分子量階層研究のための合成手順。水(339.85g)をリアクター中撹拌しながら85℃まで加熱する。第1モノマーフィードの物質(表1を参照のこと)の15%をリアクターに添加し、2分間保持する。水(12.87g)中に溶解させたAPS(1.62g)を次いでリアクターに添加した。5分後、第1モノマーフィードの残りを45分にわたって添加した。モノマーフィードの添加が完了したら、フィードタンクを水(8.31g)でフラッシュし、反応を3分間平衡化させた。水(40.18g)で希釈したアンモニア(28%水中溶液、8.25g)を次いでリアクターに10分間にわたって添加した。水(15.46g)中に溶解させたAPS(2.27g)の第2添加を次いでリアクターに添加した。第2モノマーフィード(スチレン(200.0g))を次いで撹拌しながら60分間にわたってゆっくりと添加した。第2モノマーフィードの添加が完了したら、フィードタンクを次いで水(4.57g)でフラッシュした。水(20.23g)で希釈したtert−ブチルヒドロペルオキシド(70%水中溶液、1.73g)を次いでリアクターに添加した。10分後、9.57gの水で希釈したエリソルビン酸ナトリウム(12%水中溶液、2.52g)をリアクターに5分間にわたって添加した。水(11.25g)で希釈したPluronic P−1200(ポリエチレングリコール、6.83g)およびActicide MBS(防腐剤、0.41g)を添加した。反応を室温まで冷却し、エマルジョンをろ過した。
【0050】
【表1】
【0051】
実施例3。水(340.40g)をリアクター中で撹拌しながら82℃まで加熱した。約15重量%のモノマーフィード(20.59gのエチルアクリレート(47.30g)、メタクリル酸(23.36g)、メチルメタクリレート(6.67g)、およびスチレン(59.94g)の混合物)の添加し、1分保持した後、水(12.82g)中で溶解させたAPS(1.61g)をリアクターに添加した。5分の待機時間の後、残りのモノマーフィードを45分にわたって添加する。モノマーフィードの添加が完了したら、フィードタンクを水(8.27g)でフラッシュした。水(35.92g)で希釈したアンモニア(28%水中溶液、9.71g)を次いでリアクターに10分にわたって添加し、そして再度反応混合物をさらに2分間平衡化させた。水(16.18g)で希釈したtert−ブチルヒドロペルオキシド(70%水中溶液、1.72g)を次いでリアクターに添加した。水(15.41g)中に溶解させたAPS(2.26g)の第2添加を次いでリアクターに添加した。モノマーフィード2を撹拌しながらモノマーフィードタンクからリアクター中へ65分にわたってゆっくりと供給する。第2モノマーフィードの添加が完了したら、フィードタンクを次いで水(4.55g)でフラッシュした。反応混合物を次いで5分間保持し、水(5.34g)を添加した。5分間保持した後、エリソルビン酸ナトリウム(12%水中溶液;2.51g)を次いで水(9.43g)で希釈し、溶液をリアクターに5分にわたって添加し、混合物を次いでさらに5分間保持した。冷却水(5.34g)を次いでリアクターに添加する。水(5.34g)で希釈したPluronic P−1200(ポリエチレングリコール、6.80g)および水(4.45g)で希釈したActicide MBS(防腐剤、0.40g)を次いでリアクターに添加した。リアクターを室温まで冷却し、エマルジョンを濾過した。粒子サイズ測定は、3つの独立した手段:SEM、AFM、および「動的光散乱(DLS)によった。
【0052】
実施例3で形成されたエマルジョンの特性は次のとおりである:
全バッチサイズ=800g;
不揮発性物質s=40.13%;
pH=7.80
粘度(#2スピンドル、30rpm、30秒)=70cps;
MW(THF中GPC)=223,782g/モル;
残存モノマー:EA、MMA、STYはすべて0.0005%未満である(検出限界以下)、MAA=0.027%;
粒子サイズ(PS)=480nm(DLS)、490nm(SEM)、500nm(AFM);そして
Tg=87.4℃、104.6℃(2相)。
【0053】
実施例3で製造された物質のゲル透過クロマトグラムを得た。実施例3のポリマーにおけるGPC研究の特性を下記表2に記載する。
【0054】
【表2】
【0055】
実施例4A〜4F。一般的手順を実施例4Aによって示し、量はこの項と表3で示す。実施例4B〜4Fを表3の量にしたがって同様に調製した。水(270.54g)をリアクター中で撹拌しながら82℃まで加熱した。約15重量%の第1モノマーフィード(16.43gのエチルアクリレート(37.74g)、メタクリル酸(18.64g)、メチルメタクリレート(5.33g)、およびスチレン(47.84g)の混合物)を添加し、1分間保持した後、水(11.37g)中に溶解させたAPS(1.29g)をリアクターに添加した。5分の待機時間の後、残りの第1モノマーフィードを40分にわたって添加する。モノマーフィードの添加が完了したら、フィードタンクを水(8.00g)でフラッシュした。水(27.59g)で希釈したアンモニア(28%水中溶液、7.75g)を次いでリアクターに10分にわたって添加し、再度反応混合物をさらに2分間平衡化させた。水(8.00g)で希釈したTert−ブチルヒドロペルオキシド(70%水中溶液、1.38g)を次いでリアクターに添加した。水(13.44g)中に溶解させたAPS(1.81g)のリアクターへの2回目の添加をおこなった。スチレンの第2モノマーフィード(139.07g)を撹拌しながらモノマーフィードタンクからリアクターに65分にわたってゆっくりと添加した。第2モノマーフィードの添加が完了したら、フィードタンクを水(5.34g)でフラッシュした。反応混合物を次いで5分間保持し、水(5.34g)を添加した。5分間保持した後、エリソルビン酸ナトリウム(12%水中溶液;2.01g)を次いで水(5.05g)で希釈し、溶液をリアクターに5分にわたって添加し、混合物を次いでさらに5分間保持した。反応を次いで冷却開始させ、70℃でPluronic P−1200(ポリエチレングリコール、5.42g)、Pluronic F−127(エチレンオキシド−プロピレンオキシドポリマー;97.69gの13%溶液)、およびJoncryl 646(スチレンアクリル増粘剤コロイドエマルジョン;63.85g)を添加し、続いて水(10.68g)でフラッシュした。10分間50℃で保持した後、水(4.45g)で希釈したacticide MBS(防腐剤、0.40g)をリアクターに添加した。冷却を次いで室温まで続け、エマルジョンを濾過した。
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
【0058】
実施例5。インク調製物。実施例1の不透明ポリマーエマルジョン(52.0g)を撹拌下で水性青色顔料分散液(Sun Chemicals 1121/P044から購入したFlexiverse BFD;40.0g)、ワックス(Joncryl Wax 4、2.0g)、消泡剤(EFKA 2580、Efka Chemicalsから入手可能;0.5g)および水(5.5g)と混合した。全配合物は100gであった。他のインクは前記エマルジョンのいずれかを用いて調製することができる。不透明ポリマーエマルジョンを次いで異なる紙基体に施用し、不透明度を測定した。配合物を基体にドローダウンバーで施用した。
【0059】
実施例5で調製したインクは、約38.33%の対照についてK1メーターバーで引いた厚さ2μmのフィルムエマルジョンについて測定される不透明度測定値(Lenetaカードの黒および白色セクション上で測定したコントラスト比)をもたらした。ニートなエマルジョン、例えば実施例1の不透明度値は、典型的には約2μm〜約20μmのフィルム厚さについて30%超である。本明細書中で用いられる場合、不透明度は、光の透過を防止するコーティングの能力として定義され、Lenetaカードの黒および白色セクション上で測定されるコントラスト比に基づく%の単位で提示される。凝集ポリマー粒子を有する高不透明度インクは、さらに高い不透明度およびさらに良好な隠蔽を示し、それらは所望の不透明度レベルを達成するためにより少ない量の顔料の使用を可能にする。
【0060】
本開示は、本出願で記載される特定の実施形態に関して限定されない。当業者には明らかであるように、多くの修飾および変更をその主旨および範囲から逸脱することなく加えることができる。本開示の範囲内に含まれる機能的に等価な方法および組成物は、本明細書中で記載されるものに加えて、前記事項から当業者には明らかであろう。そのような修飾および変更は、添付の特許請求の範囲内にあることが意図される。本開示は、添付の特許請求の範囲を、そのような特許請求の範囲が権利を与えられる等価物の全範囲とあわせて考慮することによってのみ限定される。本開示は、特定の方法、試薬、化合物組成物または生物系に限定されないと理解されるべきであり、これらはもちろん異なる可能性がある。本明細書中で用いられる専門用語は、特定の実施形態を記載するためだけであって、限定することを意図しないことも理解されるべきである。
【0061】
本明細書中で用いられる場合、「約」は当業者によって理解され、それが用いられる文脈に応じた程度まで変化するであろう。当業者に明らかでない用語が使用される場合、それが用いられる状況下で、「約」は特定の用語のプラスマイナス10%までを意味する。
【0062】
要素の記載に関連した(特に以下の特許請求の範囲に関連した)「a」および「an」および「the」という用語および類似の指示対象の使用は、本明細書中で別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数と複数との両方を対象とすると解釈されるべきである。本明細書中での値の範囲の記載は、本明細書中で別段の指示がない限り、その範囲内に含まれる個々の独立した値をそれぞれ指す簡略化法としての役目を果たすことだけを意図し、それぞれの独立した値は、本明細書中で個々に記載されているかのように、明細書に組み込まれる。本明細書中で記載されるすべての方法は、本明細書中で別段の指示がないかぎり、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施することができる。本明細書中で提供されるあらゆる例、または例示的用語(たとえば「たとえば」)は、別段の指示がない限り、実施形態をより良好に明示することだけを意図し、特許請求の範囲に対して制限を課すものではない。本明細書中の用語はいずれも、請求されていない要素を必須として示すと解釈されるべきではない。
【0063】
本明細書中で例示的に記載される実施形態は、好適には、本明細書中で具体的に開示されていない要素(複数可)、制限(複数可)の非存在下で実施することができる。したがって、たとえば「含む(comprising)」、「包含する(including)」、「含有する(containing)」などの用語は、制限なく拡大解釈されるべきである。さらに、本明細書中で用いられる用語および表現は、記載された用語として制限なく用いられ、明示・記載された特性の等価物またはその一部を除外したそのような用語および表現の使用は意図されず、請求された技術の範囲内で様々な修飾が可能であることが認められる。さらに、「本質的に〜からなる」という慣用句は、具体的に記載された要素および請求される技術の基本的で新規な特性に実質的に影響を及ぼさないさらなる要素を含むと理解されるべきである。「〜からなる」という慣用句は、明記されていない要素を除外する。
【0064】
加えて、開示の特性または態様がマーカッシュ群の観点から記載されている場合、当業者は、開示がそれによってマーカッシュ群の任意の個々の構成要素または構成要素のサブグループに関しても記載されていることを理解するであろう。
【0065】
当業者には理解されるように、あらゆる目的のために、特に説明文を提供する観点から、本明細書中で開示されるすべての範囲は、あらゆる可能な部分範囲およびその部分範囲の組み合わせも含む。記載されるいかなる範囲も、その範囲が少なくとも2等分、3等分、4等分、5等分、10等分などに分割されることが十分に記載され、可能になると容易に理解することができる。非限定的な例として、本明細書中で検討される各範囲は、下1/3、中1/3、上1/3などに容易に分割することができる。これもまた当業者には理解されるように、「〜まで」、「少なくとも」、「〜より多い」、「未満」などのすべての言い回しは、記載された数値を含み、前述のようにその後に部分範囲に分割することができる範囲を指す。最終的に、当業者には理解されるように、範囲は個々の構成要素を含む。
【0066】
本明細書中で言及されるすべての刊行物、特許出願、交付済み特許、および他の文書は、それぞれの刊行物、特許出願、交付済み特許、または他の文書が、その全体として参照によって具体的かつ個別に組み込まれるかのように、参照によって本明細書中に組み込まれる。参照によって組み込まれたテキストに含まれる定義は、本開示の定義と矛盾する場合は除外される。
【0067】
ある実施形態を示し、記載してきたが、以下の特許請求の範囲で規定されるそのさらに広範囲の態様における技術から逸脱することなく、当該技術分野で通常の技術にしたがって変更および修飾を加えることができることが理解されるべきである。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5