(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の角度測定技術では、測定に時間がかかる、測定精度の向上が困難である、という欠点があった。
【0007】
多面鏡方式では、多面鏡の角度と被測定物の角度との位相角を種々変更して測定を繰り返すが、操作者の手作業によって角度を割出すため、測定者は緊張した測定作業を長時間連続して継続する必要がある。また、分解能が粗く、装置を長時間安定に保つ事が困難であるため、測定精度の向上にはどうしても限界があった。
【0008】
ハースカップリング方式では、被測定物を目標角度変位で回転した後、その目標角度変位の分だけハースカップリングを逆回転してレーザ干渉計の反射鏡を元の位置に戻す首振動作が必要であるため、全体の測定時間が長くなる。また、角度測定の精度がハースカップリングの歯の分解能に依存するとともに、正回転及び逆回転の繰り返し時にハースカップリングの歯で伝達誤差が発生するので、測定精度向上には限界があった。
【0009】
また、回転角度を検出するデバイスとしてロータリエンコーダが知られているが、被測定物にロータリエンコーダを取り付ける際に、被測定物の回転軸とロータリエンコーダの回転軸との偏心が生じ、その偏心に因り測定誤差が発生するという課題があった。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、回転角度を高精度且つ短時間で測定することができる角度測定方法及び角度測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は、本体部と前記本体部に対し回転自在な回転軸と前記回転軸に取り付けられたコード部と前記本体部に固定されて前記コード部のコードを読み取る読取部とを有するロータリエンコーダを用いる角度測定方法であって、回転駆動される被測定物の回転軸に前記ロータリエンコーダの回転軸を取り付けるとともに、前記被測定物の回転軸と前記ロータリエンコーダの回転軸との偏心を許容するように、前記ロータリエンコーダの回転軸に直交する面内における前記ロータリエンコーダの本体部の変位を一定の遊び範囲内に規制し、前記被測定物の回転軸に対する前記ロータリエンコーダの前記回転軸の偏心量を非接触で検出し、前記ロータリエンコーダの読取部の読み取ったコードに基づいて前記ロータリエンコーダの回転軸の回転角度を測定し、前記ロータリエンコーダを用いて測定された回転角度を、少なくとも前記検出された偏心量に基づいて、補正することを特徴とする角度測定方法を提供する。この構成により、ロータリエンコーダの測定値が非接触の測定値で補正されるので、従来の多面鏡方式やハースカップリング方式の角度測定技術と比較して、短時間且つ精度良く回転角度を測定することができる。また、被測定物の回転軸に対するロータリエンコーダの回転軸の偏心量の許容範囲をロータリエンコーダの仕様よりも大きくすることができるので、被測定物に対するロータリエンコーダの取り付けが大変容易になる。即ち、本発明により、ロータリエンコーダを用いて回転角度の測定を高精度且つ短時間で行なえるようになるので、工作機械等の生産能力アップに大きく貢献する。
【0012】
本発明の一実施形態では、前記ロータリエンコーダの本体部の変位を前記一定の遊び範囲内で許容しつつ前記ロータリエンコーダの本体部を係止する治具を用いることを特徴とする。
【0013】
本発明の一実施形態では、前記ロータリエンコーダの本体部に錘を取り付け、前記ロータリエンコーダの本体部を重力方向に付勢することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、本体部と前記本体部に対し回転自在な回転軸と前記回転軸に取り付けられたコード部と前記本体部に固定されて前記コード部のコードを読み取る読取部とを有するロータリエンコーダを用いる角度測定方法であって、回転駆動される被測定物の回転軸に前記ロータリエンコーダの本体部を取り付けるとともに、前記被測定物の回転軸と前記ロータリエンコーダの回転軸との偏心を許容するように、前記ロータリエンコーダの回転軸に直交する面内における前記ロータリエンコーダの回転軸の変位を一定の遊び範囲内に規制し、前記被測定物の回転軸に対する前記ロータリエンコーダの回転軸の偏心量を非接触で検出し、前記ロータリエンコーダの読取部の読み取ったコードに基づいて前記ロータリエンコーダの本体部の回転角度を測定し、前記ロータリエンコーダを用いて測定された回転角度を、少なくとも前記検出された偏心量に基づいて、補正することを特徴とする角度測定方法を提供する。この構成により、ロータリエンコーダの測定値が非接触の測定値で補正されるので、従来の多面鏡方式やハースカップリング方式の角度測定技術と比較して、短時間且つ精度良く回転角度を測定することができる。また、被測定物の回転軸に対するロータリエンコーダの回転軸の偏心量の許容範囲をロータリエンコーダの仕様よりも大きくすることができるので、被測定物に対するロータリエンコーダの取り付けが大変容易になる。即ち、本発明により、ロータリエンコーダを用いて回転角度の測定を高精度且つ短時間で行なえるようになるので、工作機械等の生産能力アップに大きく貢献する。
【0015】
本発明の一実施形態では、前記ロータリエンコーダの回転軸の変位を前記一定の遊び範囲内で許容しつつ前記ロータリエンコーダの回転軸を係止する治具を用いることを特徴とする。
【0016】
本発明の一実施形態では、前記ロータリエンコーダの回転軸に錘を取り付け、前記ロータリエンコーダの回転軸を重力方向に付勢することを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、本体部と前記本体部に対し回転自在な回転軸と前記回転軸に取り付けられたコード部と前記本体部に固定されて前記コード部のコードを読み取る読取部とを有し、回転駆動される被測定物に前記回転軸が取り付けられるロータリエンコーダと、前記被測定物の回転軸と前記ロータリエンコーダの回転軸との偏心を許容するように、前記ロータリエンコーダの回転軸に直交する面内における前記ロータリエンコーダの本体部の変位を一定の遊び範囲内に規制する規制部材と、前記被測定物の回転軸に対する前記ロータリエンコーダの前記回転軸の偏心量を非接触で検出する非接触偏心量検出手段と、前記ロータリエンコーダの読取部が読み取ったコードに対応する回転角度を、少なくとも前記非接触偏心量検出手段で検出される前記偏心量に基づいて、補正する補正手段と、を備えたことを特徴とする角度測定システムを提供する。
【0018】
本発明の一実施形態では、前記規制部材は、前記ロータリエンコーダの本体部の変位を前記一定の遊び範囲内で許容しつつ前記ロータリエンコーダの本体部を係止する治具を含むことを特徴とする。
【0019】
本発明の一実施形態では、前記規制部材は、前記ロータリエンコーダの本体部に取り付けられ、前記ロータリエンコーダの本体部を重力方向に付勢する錘を含むことを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、本体部と前記本体部に対し回転自在な回転軸と前記回転軸に取り付けられたコード部と前記本体部に固定されて前記コード部のコードを読み取る読取部とを有し、回転駆動される被測定物に前記本体部が取り付けられるロータリエンコーダと、前記被測定物の回転軸と前記ロータリエンコーダの回転軸との偏心を許容するように、前記ロータリエンコーダの回転軸に直交する面内における前記ロータリエンコーダの回転軸の変位を一定の遊び範囲内に規制する規制部材と、前記被測定物の回転軸に対する前記ロータリエンコーダの前記回転軸の偏心量を非接触で検出する非接触偏心量検出手段と、前記ロータリエンコーダの読取部が読み取ったコードに対応する回転角度を、少なくとも前記非接触偏心量検出手段で検出される前記偏心量に基づいて、補正する補正手段と、を備えたことを特徴とする角度測定システムを提供する。
【0021】
本発明の一実施形態では、前記規制部材は、前記ロータリエンコーダの回転軸の変位を前記一定の遊び範囲内で許容しつつ前記ロータリエンコーダの回転軸を係止する治具を含むことを特徴とする。
【0022】
本発明の一実施形態では、前記規制部材は、前記ロータリエンコーダの回転軸に取り付けられ、前記ロータリエンコーダの回転軸を重力方向に付勢する錘を含むことを特徴とする。
【0023】
本発明の一実施形態では、前記被測定物の回転軸の回転が停止したタイミングで回転角度を検出する静的測定、及び、前記被測定物の回転軸の回転中のタイミングで回転角度を検出する動的測定のうち少なくとも一方の測定を行なうことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、従来技術と比較して回転角度を高精度且つ短時間で測定することができる。また、被測定物に対するロータリエンコーダの取り付けが大変容易になる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面に従って、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
【0027】
図1は、第1実施形態における角度測定システムの一例の全体構成図である。
【0028】
図1に示す角度測定システム100は、回転駆動される被測定物1の回転軸1aの回転角度をロータリエンコーダ2を用いて測定する。ロータリエンコーダ2は、エンコーダ本体2aと、エンコーダ本体2aに対し回転自在な回転軸3とを含んで構成されている。
【0029】
図2は、被測定物1の回転軸1aにロータリエンコーダ2の回転軸3を取り付ける様子を示す側面図である。
図3は、非接触測位手段20の干渉ユニット4を配置した様子を示す側面図である。
【0030】
図2に示すように、エンコーダ本体2aの内側において、回転軸3に円盤状のエンコーダ14(コード部)が取り付けられている。エンコーダ14は、回転軸3を中心とした円周上に全周にわたり目盛(コード)が形成されている。エンコーダ14は、インクリメンタル型でもアブソリュート型でもよい。また、エンコーダ14の目盛を読み取るエンコーダ読取ヘッド13(読取部)がエンコーダ本体2aに固定されている。エンコーダ読取ヘッド13は、エンコーダ14の目盛の読み取りに応じて、パルス信号(回転角度信号)を出力する。即ち、エンコーダ本体2aと回転軸3との相対的な回転角度の変化量に応じたパルス信号が、ロータリエンコーダ2で生成される。なお、エンコーダ本体2aは、カップリング内蔵型であってもよい。
【0031】
ロータリエンコーダ2の回転軸3は、ボールベアリングからなる軸受15を介して、エンコーダ本体2aに取り付けられている。本実施形態では、ロータリエンコーダ2の回転軸3を、被測定物1の回転軸1aに、取り外し可能に取り付ける。取り付け後、回転軸3は、エンコーダ本体2aに対し軸受15を介して自由に回転できる状態にある。このため、被測定物1の回転軸1aが回転しても、ロータリエンコーダ本体2aに接続されているケーブル(
図1の16)が絡みつくことがない。
【0032】
本例の回転軸3は、被測定物1の回転軸1aに取り付けるための取付部3aを有する。特別なアタッチメントを介して、被測定物1の回転軸1aに取り付けてもよい。
【0033】
エンコーダ本体2aは、後述のように、被測定物1の回転軸1aとロータリエンコーダ2の回転軸3との偏心を許容するように、回転軸3に直交する面(以下「直交面」と称する)内における動き(変位)が一定の遊び範囲内で許容された状態で配置される。被測定物1の軸振れは存在しても測定誤差にならないが、面振れは測定誤差になるので、目標測定精度に合わせて計算される規定値以内に抑える。
【0034】
図1に示すように、非接触測位手段20は、第1のコーナキューブプリズム7a、干渉ユニット4(偏光ビームスプリッタ6及び第2のコーナキューブプリズム7b)、レーザ光源10、位相差検出ヘッド11、及びデータ処理装置12を含んで構成されている。非接触測位手段20は、エンコーダ本体2aに固定された第1のコーナキューブプリズム7aの変化した位置(即ちエンコーダ本体2aの変位)を非接触で検出し、その検出された変位に基づいて、被測定物1の回転軸1aに対するロータリエンコーダ2の回転軸3の偏心量を算出する。
【0035】
図1に示したように、エンコーダ本体2aの回転軸3に直交する直交面に第1のコーナキューブプリズム7a(反射素子)が設置される。干渉ユニット4(干渉光学系)は、第1のコーナキューブプリズム7aに正対して配置される。干渉ユニット4は、偏光ビームスプリッタ6及び第2のコーナキューブプリズム7bを含んで構成されている。干渉ユニット4は、レーザ光源10から発光されたレーザ光束を、第1のコーナキューブプリズム7aに向かう第1のレーザ光束と、第2のコーナキューブプリズム7bに向かう第2のレーザ光束とに、分割する。第1のコーナキューブプリズム7aで反射された第1のレーザ光束(第1の反射光束)、及び、第2のコーナキューブプリズム7bで反射された第2のレーザ光束(第2の反射光束)は、偏光ビームスプリッタ6に戻って来る。このように、干渉ユニット4は、光路長が異なる第1及び第2のレーザ光束を干渉させる。即ち、第1及び第2の反射光束の干渉縞が発生する。
【0036】
偏光ビームスプリッタ6は、レーザ光源10で発光されたレーザ光束のうち一部(第1のレーザ光束)が偏光ビームスプリッタ6を通過して第1のコーナキューブプリズム7aの入射面に垂直に入射するように配置される。また、第2のコーナキューブプリズム7bは、第2のレーザ光束が基準長の光路で偏光ビームスプリッタ6に戻るように配置される。
【0037】
位相差検出ヘッド11(位相差検出手段)は、光路長の異なる第1の反射光束と第2の反射光束とからなる干渉光を受光して、第1及び第2のコーナキューブプリズム7a、7bの反射光束(第1及び第2の反射光束)の位相差を検出する。本例では、干渉縞をカウントすることにより、第1のレーザ光束の光路(
図1の実線)と第2のレーザ光束の光路(
図1の点線)との光路長差(位相差)を検出する。
【0038】
レーザ光源10は、例えばHe−Neレーザを使用する。波長安定化は行なわなくても、測定精度に大きな影響は与えない。レーザ光源10と干渉ユニット4との間は、光ファイバで結合すると、取り付けが非常に容易になる。位相差検出ヘッド11は、マイケルソン干渉計によるフリンジカウント方式でも、ヘテロダイン方式でも、かまわない。ヘテロダイン方式の場合、レーザ光源10は直交偏光2周波の必要があり、例えばゼーマンレーザやAOM(音響光学素子)が使われる。
【0039】
データ処理装置12は、コンピュータ装置によって構成されている。コンピュータ装置は、メモリ等からなる記憶手段、CPU(Central Processing Unit)等からなる制御手段、表示手段、及びキーボード等からなる入力手段を含む。
【0040】
被測定物1の回転軸1aは、図示省略の駆動手段(例えばモータ)を用いて回転駆動される。
【0041】
ロータリエンコーダ2から出力されたパルス信号(回転角度信号)は、ケーブル16を介して回転角度検出部9に送られる。本例では、エンコーダ14として、複数の原点コード付き(例えば10度間隔)のインクリメンタル型エンコーダを用いており、エンコーダ読取ヘッド13から、パルス信号と共に、位相(以下では「θp」とする)を取得するための原点信号が出力される。本例の回転角度検出部9は、パルス信号に基づいて測定開始時点からの回転角度(以下では「θr」とする)を検出するとともに、パルス信号及び原点信号に基づいて位相θp(「読取角度」ともいう)を検出し、θr及びθpをデータ処理装置12に送る。位相θpは、エンコーダ読取ヘッド13で読み取ったエンコーダ14のコードの円周上における位置を角度で示す。
【0042】
また、非接触測位手段20の位相差検出ヘッド11から出力された、第1のレーザ光束と第2のレーザ光束との位相差(光路長差)を示す位相差信号は、データ処理装置12に送られる。データ処理装置12は、非接触測位手段20の一部(偏心量算出手段)を構成しており、位相差検出ヘッド11から出力された光路差を示す位相差信号に基づいて、被測定物1の回転軸1aに対するロータリエンコーダ2の回転軸3の偏心量(以下では「B」とする)を算出する。
【0043】
データ処理装置12は、ロータリエンコーダ2を用いて測定された回転角度θr(エンコーダ本体2aと回転軸3との相対的な回転角度の測定値である)を、少なくとも偏心量Bに基づいて、補正する。
【0044】
以下では、データ処理装置12の制御手段により行なう補正処理例を説明する。
【0045】
図4(A)〜(D)は、被測定物1の回転軸1aを回転した場合における被測定物1の回転軸1aとロータリエンコーダ2との位置関係を示す説明図である。
図4(A)〜(D)では本発明の理解のために偏心量Bを大きく誇張して描いたが、実際には非接触測位手段20で測定可能な程度に小さく規制されている(例えば1mm以下)。データ処理装置12は、非接触測位手段20により検出されたエンコーダ本体2aの変位に基づいて、偏心量Bを算出する。なお、θp=0度及び180度では、エンコーダ読取ヘッド13の読取位置と回転軸3の中心3bとを結ぶ直線上に、回転中心0(被測定物1の回転軸1aの中心)が存在する。
【0046】
図5(A)はエンコーダ14の一例を示し、
図5(B)はその測定開始時点の一例を示し、
図5(C)は測定終了時点の一例を示す。本例では、
図5(B)に示す測定開始時点では位相θp=0である。
図5(C)に示す測定終了時点では測定値θr=θpであり、その測定値θrは、次式で表される。
【0047】
[数1]
θ=θp=tan
−1{(A/2×sin
θr)/(A/2×cos
θr+B)}
数1にて、Aはエンコーダ読取ヘッド13によるエンコーダ14の読取位置を示す円の直径、Bは非接触測位手段20により測定された偏心量、θは被測定物1の回転軸1aの回転角度である。
【0048】
図6は、非接触測位手段20により測定されるエンコーダ読取ヘッド13の変位L(エンコーダ本体2aの変位に相当する)を示す。偏心量Bは、
図6の変位Lを用いて次式で表される。
【0049】
[数2]
B=L/sinθ
偏心量Bは、
図6に示したように、回転角度の測定開始から測定終了までにおける変位Lを、エンコーダ本体2aの変位として非接触測位手段20により測定し、その変位Lに基づいて数2により算出することが可能である。例えばθ=θpとして求める。
【0050】
ただし、偏心量Bを精度良く検出するためには、例えば、
図4(A)〜(D)に示したように、予め被測定物1の回転軸1aを1周期(360度)以上回転させながら、非接触測位手段20を用いてエンコーダ本体2a上の特定点の一直線方向における動きの振幅Wを非接触で検出し、その振幅Wを偏心量Bに変換することが、好ましい。
【0051】
直径Aは仕様から既知なので、回転角度の測定値θrと実際の回転角度θとの対応関係は予め判っている。
【0052】
偏心量Bに因る角度誤差Δθrは、次式で示される。
【0053】
[数3]
Δθr=θr−θ
したがって、回転角度の測定値θrを偏心量Bを用いて補正することで、Δθrをゼロに設定する。前述の数1をθについて解けばよい。
【0054】
ただし、
図5を用いて位相θp=0で測定開始した場合を説明したが、位相θp≠0で測定開始することも可能である。この場合、データ処理装置12は、非接触測位手段20から出力される偏心量Bと、回転角度検出部9から出力される位相θpとを用いて、測定値θrを補正する。
【0055】
回転角度測定は、被測定物1の回転軸1aの回転が停止したタイミングで回転角度を検出する静的(スタティック)測定でも、被測定物1の回転軸1aの回転中のタイミングで回転角度を検出する動的(ダイナミック)測定でもよい。静的測定では、例えば回転開始時点が回転角度測定開始時点となる。動的測定では、回転中の任意のタイミングを回転角度測定開始時点とすることができる。
【0056】
次に、規制部材の、具体例について、説明する。
【0057】
図1に示した例では、回り止め治具8により、エンコーダ本体2aの動きを規制している。回り止め治具8は、エンコーダ本体2aに延設された棒2bを係止爪8a、8bにより係止する。二つの係止爪8a、8bの空隙の幅は、偏心量の許容範囲に対応する。これにより、エンコーダ本体2aの動きが少なくとも非接触角度検出手段40の測定可能範囲内に規制される。
【0058】
なお、軸受15の性能が優れ、被測定物1の回転に合わせエンコーダ本体2aが回転しない場合には、回り止め治具8を省略してもよい。即ち、軸受15の性能に依っては、軸受15自体を、エンコーダ本体2aの動きを規制する規制部材として機能させることも可能である。
【0059】
図7は、錘17によりエンコーダ本体2aの動きを規制する場合を示す正面図である。
図7に示すように、錘17は、エンコーダ本体2aに取り付けられ、重力方向に下げられる。この錘17により、エンコーダ本体2aは、重力方向に付勢され、動きが一定の遊び範囲内に規制される。
【0060】
なお、
図1に回り止め治具8を用いた場合を示し、
図7に錘17を用いた場合を示したが、これら両方を規制部材として用いてもよい。他の規制部材(例えば磁力により動きを規制する磁性体)を用いてもよい。
【0061】
図8は、被測定物1を水平方向に沿って配置した場合を示す側面図である。
【0062】
また、回り止め治具8が弱い磁力を帯びていると、エンコーダ本体2aの位置が定まり易くなり、測定し易い、特に、
図8の水平配置の場合には有効である。
【0063】
第1実施形態では、回転駆動される被測定物1の回転軸1aにロータリエンコーダ2の回転軸3を取り付けるとともに、被測定物1の回転軸1aとロータリエンコーダ2の回転軸3との偏心を許容するように、ロータリエンコーダ2の回転軸3に直交する面内におけるエンコーダ本体2aの変位を一定の遊び範囲内に規制し、被測定物1の回転軸1aに対するロータリエンコーダ2の回転軸3の偏心量Bを非接触で検出し、ロータリエンコーダ2のエンコーダ読取ヘッド13の読み取ったコードに基づいてロータリエンコーダ2の回転軸3の回転角度を測定し、ロータリエンコーダ2を用いて測定された回転角度θrを、少なくとも偏心量Bに基づいて、補正する。
【0064】
この構成により、ロータリエンコーダ2の測定値が偏心量の測定値Bで補正されるので、従来の多面鏡方式やハースカップリング方式の角度測定技術と比較して、短時間且つ精度良く回転角度を測定することができる。また、被測定物1の回転軸1aに対するロータリエンコーダ2の回転軸3の偏心量の許容範囲をロータリエンコーダ2の仕様よりも大きくすることができるので、被測定物1に対するロータリエンコーダ2の取り付けが大変容易になる。即ち、本発明により、ロータリエンコーダ2を用いて回転角度の測定を高精度且つ短時間で行なえるようになるので、工作機械等の生産能力アップに大きく貢献する。
【0065】
<第2実施形態>
図9は、第2実施形態における角度測定システム200の一例の全体構成図である。
図9にて、
図1〜3に示した第1実施形態と同じ構成要素には、同じ符号を付した。以下では、第1実施形態で説明した内容については説明を省略し、主として第1実施形態と異なる点を説明する。
【0066】
第1実施形態では
図2に示したように被測定物1の回転軸1aにロータリエンコーダ2の回転軸3を取り付けたのに対し、第2実施形態では
図10に示すように被測定物1の回転軸1aにエンコーダ本体2aを取り付ける。
【0067】
図10において、取付アタッチメント18は、被測定物1の回転軸1aにエンコーダ本体2aを取り付けるための介装部材であり、ロータリエンコーダ2の回転軸3が被測定物1の回転軸1aの回転の影響をあまり受けないようにロータリエンコーダ2の回転軸3を保護する。
【0068】
本実施形態における回り止め治具8は、ロータリエンコーダ2の回転軸3に直交する直交面内におけるロータリエンコーダ2の回転軸3の動き(変位)を一定の遊び範囲内で許容しつつ、ロータリエンコーダ2の回転軸3を係止する。ロータリエンコーダ2の回転軸3に錘を取り付けて、回転軸3を重力方向に付勢してもよい。
【0069】
本実施形態における第1のコーナキューブプリズム7aは、ロータリエンコーダ2の回転軸3に取り付けられる。第1実施形態と同様、第1のコーナキューブプリズム7aは、干渉ユニット4と正対させて配置される。干渉ユニット4及び位相差検出ヘッド11を用いて、ロータリエンコーダ2の回転軸3の変位が非接触で検出される。
【0070】
本実施形態では、第1実施形態と異なり、回転軸3にエンコーダ本体2aの荷重が掛からず、比較的軽量なコーナキューブプリズム7aの荷重で済むので、回転軸3及び軸受15が小型で済み、軽量化が図れる。よって、被測定物1の回転軸1aの可搭載重量に依っては、こちらの方式が向いている。反面、エンコーダ本体2aに接続されたケーブルが、エンコーダ本体2aの回転に伴いロータリエンコーダ2に巻き付かないように注意を要する。
【0071】
第2実施形態では、回転駆動される被測定物1の回転軸1aにエンコーダ本体2aを取り付けるとともに、被測定物1の回転軸1aとロータリエンコーダ2の回転軸3との偏心を許容するように、ロータリエンコーダ2の回転軸3に直交する面内におけるロータリエンコーダ2の回転軸3の動き(変位)を一定の遊び範囲内に規制し、被測定物1の回転軸1aに対するロータリエンコーダ2の回転軸3の偏心量Bを非接触で検出し、ロータリエンコーダ2のエンコーダ読取ヘッド13の読み取ったコードに基づいてエンコーダ本体2aの回転角度θrを測定し、測定された回転角度θrを、少なくとも偏心量Bに基づいて、補正する。これにより、第1実施形態と同様な効果を得られる。
【0072】
<第3実施形態>
図11に示すように、第3実施形態に係る角度測定システム300は、非接触測位手段20及び非接触角度検出手段40を含んで構成されている。
図11にて、回転角度補正手段50は、ロータリエンコーダ2を用いて測定した回転角度θrを、非接触測位手段20により検出した偏心量B、及び、非接触角度検出手段40で検出された傾斜角度(以下「θ2」とする)に基づいて、補正する。ロータリエンコーダ2、回転角度検出部9、及び非接触測位手段20は、第1実施形態にて説明したものと同じであり、説明を省略する。回転角度補正手段50は、
図1に示したデータ処理装置12によって構成されている。
【0073】
図12は、主として非接触角度検出手段40を示す全体構成図であり、図示の便宜上、
図1に示した非接触測位手段20を省略してある。なお、
図11及び
図12にて、
図1〜3に示した第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付した。以下では、第1実施形態で説明した内容については説明を省略し、主として第1実施形態と異なる点を説明する。
【0074】
非接触角度検出手段40は、レーザ光源10、位相差検出ヘッド11、干渉ユニット34(直角プリズム35及び偏光ビームスプリッタ36)、一対のコーナキューブプリズム37(37a、37b)、及びデータ処理装置12を含んで構成されている。非接触角度検出手段40は、ロータリエンコーダ2を用いた回転軸3の回転角度測定開始時点からのエンコーダ本体2aの変化した傾斜角度を、非接触で検出する。
【0075】
図12に示すように、エンコーダ本体2aの直交面(回転軸3に直交する面である)に一対のコーナキューブプリズム37a、37b(反射素子)が設置される。干渉ユニット34(干渉光学系)は、一対のコーナキューブプリズム37a、37bに正対して配置される。
【0076】
干渉ユニット34は、
図12に示したように、直角プリズム35及び偏光ビームスプリッタ36を含んで構成されている。干渉ユニット34は、レーザ光源30から発光されたレーザ光束を、非接触角度検出手段40の第1のコーナキューブプリズム37aに向かう第1のレーザ光束と、第2のコーナキューブプリズム37bに向かう第2のレーザ光束とに、分割する。偏光ビームスプリッタ36を透過した第1のレーザ光束は、第1のコーナキューブプリズム37aで反射されて、偏光ビームスプリッタ36に戻って来る。偏光ビームスプリッタ36で直角に反射した第2のレーザ光束は、直角プリズム35を介して、第2のコーナキューブプリズム37bで反射され、再び直角プリズム35で直角に反射して、偏光ビームスプリッタ36に戻って来る。即ち、干渉ユニット34は、互いに平行な第1及び第2のレーザ光束をそれぞれ第1及び第2のコーナキューブプリズム37a、37bに入射させて、第1及び第2のコーナキューブプリズム37a、37bで反射されて再帰する第1及び第2の反射光束を干渉させる。したがって、干渉ユニット34により、光路長が異なる第1及び第2の反射光束の干渉縞が発生する。
【0077】
位相差検出ヘッド11(位相差検出手段)は、光路長の異なる第1の反射光束と第2の反射光束とからなる干渉光を受光して、第1及び第2のコーナキューブプリズム37a、37bの反射光束(第1及び第2の反射光束)の位相差を検出する。本例では、干渉縞をカウントすることにより、第1のレーザ光束の光路(
図12の実線)と第2のレーザ光束の光路(
図12の点線)との光路長差(位相差)を検出する。
【0078】
なお、干渉ユニット34とコーナキューブプリズム37a、37bとが正対している場合、コーナキューブプリズム37a、37bはレーザ光束に対し直交方向全てについて概ね1mm前後動いても、位相差検出ヘッド11で測定される干渉信号の振幅低下を許容範囲内にすることが可能である。この位置ズレ量の許容範囲は、レーザ光源30のビーム径や、位相差検出ヘッド11等の性能に左右される。このようなコーナキューブプリズム37a、37bの位置ズレ量の許容範囲は、回転軸1a、3間の偏心量の許容範囲になるので、ロータリエンコーダ2の取り付けが大変容易になる。
【0079】
傾斜角度検出系のレーザ光源10は、
図1に示したレーザ光源10を用いればよい。二つのレーザ光源を設けてもよい。
【0080】
位相差検出ヘッド31から出力された、第1のレーザ光束と第2のレーザ光束との位相差(光路長差)を示す位相差信号は、データ処理装置12に送られる。データ処理装置12は、非接触角度検出手段40の一部(傾斜角度算出手段)を構成しており、位相差検出ヘッド11から出力された位相差信号と、第1のコーナキューブプリズム37aの頂点と第2のコーナキューブプリズム37bの頂点との位置の差(間隔)とに基づいて、三角関数を用い、
図13に示すように第1のコーナキューブプリズム7aの頂点70aと第2のコーナキューブプリズム7bの頂点70bとを結ぶ直線70の傾斜角度(θ2)を算出する。ロータリエンコーダ2及び回転角度検出部9によるθ1よりも非接触角度検出手段40によるθ2の方が分解能が高い(分解ピッチが小さい)。
【0081】
また、データ処理装置12は、θr(エンコーダ本体2aと回転軸3との相対的な回転角度である)を、少なくとも偏心量B及びθ2(ロータリエンコーダ2のうち動きを規制された部分の傾斜角度である)に基づいて、補正する。即ち、ロータリエンコーダ2を用いて測定されたθrを、
図1の非接触測位手段20により検出された偏心量Bと、コーナキューブプリズム7a、7bの対応点間を結ぶ直線の傾斜角度θ2に基づいて補正する。
【0082】
測定点での静的測定に際し、目標とする測定精度より十分に小さい程度に、ロータリエンコーダ2及び非接触角度検出手段40の測定値のバラつきが収まることが求められる。角度割出精度測定の実施にあたっては、静的測定で行なわれることが多く、その場合、被測定物1の回転及び停止を一定の角度毎に繰り返して測定していく。測定値取り込みにおいては、各測定値が目標測定精度に対し、十分に安定しているものとする。被測定物1の回転速度は、特に、ロータリエンコーダ2及び非接触角度検出手段40の性能に依存し、一般的に、高速回転で測定可能である。測定分解能も同様で、一般的に、多面鏡とオートコリメータを用いる方式(多面鏡方式)や、ハースカップリングとレーザ干渉計を用いる方式(ハースカップリング方式)等よりも、優れている。
【0083】
以上のように、第3実施形態における角度測定方法では、回転駆動される被測定物1の回転軸1aにロータリエンコーダ2の回転軸3を取り付けるとともに、被測定物1の回転軸1aとロータリエンコーダ2の回転軸3との偏心を許容するように、ロータリエンコーダ2の回転軸3に直交する直交面内におけるロータリエンコーダ本体2aの動き(変位)を一定の遊び範囲内に規制し、エンコーダ読取ヘッド13の読み取ったコードに基づいてロータリエンコーダ2の回転軸3の回転角度θrを検出(測定)するとともに、非接触角度検出手段40によりロータリエンコーダ2の回転軸3の回転角度測定開始時点からのエンコーダ本体2aの変化した傾斜角度θ2を検出し、θrをθ2にも基づいて補正する。
【0084】
この構成により、回転角度を短時間且つ精度良く測定することができる。即ち、第1に、ロータリエンコーダ2を用いて角度測定を行なうことで、従来の多面鏡方式で必要であった操作者の手作業を省略でき、またハースカップリング方式のような逆回転を伴う首振り動作を省略できるので、高精度の測定が可能になるだけでなく、全体の測定時間を短縮できる。第2に、ロータリエンコーダ2の測定値を非接触角度検出手段40の測定値で補正するので、測定精度を更に向上させることが可能となる。第3に、被測定物1の回転軸1aに対するロータリエンコーダ2の回転軸3の偏心量の許容範囲をロータリエンコーダ2自体の仕様よりも大きくとることが可能になるので、被測定物1に対するロータリエンコーダ2の取り付けが大変容易になり短時間で済む。例えば、非接触角度検出手段40を併用しなかった場合には100μm前後の取付精度が必要であったが、レーザ干渉測長方式の非接触測位手段20を併用した場合には1mm前後の取付精度とすることができ、これに応じて偏心量の許容範囲が広くなった。
【0085】
<第4実施形態>
第4実施形態における角度測定システムの概要は、
図11に示した第3実施形態における角度測定システム300と同様である。
【0086】
図14は、第4実施形態における非接触角度検出手段40を示す全体構成図である。
【0087】
第3実施形態では被測定物1の回転軸1aにロータリエンコーダ2の回転軸3を取り付けたのに対し、第4実施形態では被測定物1の回転軸1aにエンコーダ本体2aを取り付ける。回り止め治具8は、第2実施形態と同様である。
【0088】
第4実施形態における角度測定方法では、回転駆動される被測定物1の回転軸1aにエンコーダ本体2aを取り付けるとともに、被測定物1の回転軸1aとロータリエンコーダ2の回転軸3との偏心を許容するように、ロータリエンコーダ2の回転軸3に直交する直交面内におけるロータリエンコーダ2の回転軸3の動き(変位)を一定の遊び範囲内に規制し、エンコーダ読取ヘッド13の読み取ったコードに基づいてエンコーダ本体2aの回転角度θrを検出(測定)するとともに、非接触角度検出手段40によりエンコーダ本体2aの回転角度測定開始時点からの回転軸3の変化した傾斜角度θ2を検出し、θrを偏心量B及びθ2に基づいて補正する。
【0089】
なお、前述の第1〜第4実施形態では、ロータリエンコーダとして光学式のロータリエンコーダを用いた場合を例に説明したが、磁気式等の他のロータリエンコーダを用いてもよいことは、言うまでもない。
【0090】
また、前述の第1〜第4実施形態では、非接触測位手段及び非接触角度検出手段として、いわゆるレーザ干渉測長器を用いた場合を例に説明したが、非接触で高精度に角度測定が可能な検出手段であれば、他のものを使用できる。例えば、オートコリメータや水準器などを用いてもよい。
【0091】
回転角度の測定は、動的測定でもよい。本発明に係る角度測定方法及び角度測定システムでは、被測定物1の回転軸1aの回転が停止したタイミングで回転角度を検出する静的測定、及び、被測定物1の回転軸1aの回転中のタイミングで回転角度を検出する動的測定のうち少なくとも一方の測定を行なう。動的測定では、ロータリエンコーダ2と共に使用する非接触測位手段20の出力のリアルタイム性が必要である。
【0092】
また、本発明を簡略に説明するために、回転角度θrを偏心量Bや傾斜角度θ2を用いて補正する場合を例に説明したが、他の測定値にも基づいて補正してもよいことは言うまでもない。即ち、本発明では、少なくとも偏心量Bに基づいて、回転角度θrを補正する構成である。第1、第2実施形態にて説明したように角度誤差Δθrの位相θpにも基づいて補正することが、好ましい。また、第3、第4実施形態にて説明したように傾斜角度θ2にも基づいて補正することが、好ましい。
【0093】
また、被測定物は、図に示した形状には限定されない。例えば、円盤状でもよい。また、ロータリエンコーダ2の取付対象である被測定物の回転軸は、特別に形成された軸形状のものである必要はなく、例えば被測定物の回転中心を被測定物の回転軸とし、これにロータリエンコーダを取り付ければよい。
【0094】
本発明は、本明細書において説明した例や図面に図示された例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の設計変更や改良を行なってよいのはもちろんである。