【実施例1】
【0018】
図1に示すように、本発明の一例であるポータブル3D表示X線撮影装置1は、可搬式で、複数のX線源を備え、異なる方向から撮影対象にX線5pを照射し、撮影対象、ここでは患者10(人体)、の撮影方向の異なる複数の2次元X線画像を撮影し、それらを用いてその場で3次元画像(立体画像8d)を生成、表示するポータブル3D表示X線撮影装置であって、X線照射装置6と、X線イメージセンサ7と、画像生成部と、3Dモニタ8aとからなる。
【0019】
X線照射装置6は、本体2と、支軸3と、アーム4と、X線照射部5とからなる。
【0020】
本体2は、下部から本体2の設置面と略平行(水平方向)でX線照射部5の重さによりX線照射装置6を転倒させない方向に継目2g部分で伸び縮み可能な伸縮脚2fと、本体2及び伸縮脚2fの底部に備えられたキャスタ2aと、上部に取り付けられた取っ手2bとからなる。
【0021】
キャスタ2aと取っ手2bにより本体2の移動が容易になる。伸縮脚2fは、例えば、平面視で、V字、U字などになるよう、本体2の底部に2本備えられ、撮影の際には伸縮脚2fを伸ばすことでX線照射部5の重さでX線照射装置6の転倒を防ぎ、X線照射装置6の移動の際には伸縮脚2fを縮めることでコンパクトに収納することができる。伸縮脚2fは、伸縮することなく、本体2に回動可能に接続し、伸び縮みなどしてもよい。
【0022】
さらに、上面には、X線5pの照射強度、時間、回数を制御、調節し、さらに立体画像8dを表示する3Dモニタ兼操作パネル2cを備える。また、起動のオン・オフスイッチ、駆動電源の切り換えスイッチなども備える。
【0023】
3Dモニタ兼操作パネル2cは、3Dモニタと操作パネルを別体としてもよい。他方、3Dモニタ兼操作パネル2cの操作に換え、PC8から制御信号8bとして本体2の各機器に送信(有線、無線通信)してもよい。
【0024】
本体2の内部には、ポータブル3D表示X線撮影装置1の駆動電源であるバッテリ2dを内蔵する。バッテリ2dに換えて、商用電源を用いてもよい。それらは併用でき、本体2に備える駆動電源の切り換えスイッチで切り替えられる。
【0025】
本体2は、さらに、X線5pの照射量、照射タイミングを制御するコントローラ9を内蔵する。コントローラ9についての詳細は、
図2を参照して後述する。
【0026】
支軸3は、本体2から立設し、上下に昇降(本体2への挿抜)可能なシャフト3aと、シャフト3aの係止及び係止を解除するストッパ3bとからなる。シャフト3aを備えることで、患部とX線照射部5との距離を最適に設定することができる。シャフト3aにモータを備えることで、コントローラ9の指令でシャフトの高さ及びX線照射部5の位置(撮影対象からの距離)を自動制御することもできる。
【0027】
アーム4は、支軸3(シャフト3a)の上端部に回動可能に接続し、X線照射部5の向き調節するためのものである。ここでは、2本の継手4aと、シャフト3aとの接続部、継手4aと継手4aの接続部、X線照射部5との接続部に設けられ、それぞれを回動可能に接続する回動部4bとからなる。回動部4bにモータを備えることで、コントローラ9の指令でアーム4及びX線照射部5の角度を自動制御することもできる。
【0028】
X線照射部5は、アーム4の他端に回動可能に接続するフレーム5nと、フレーム5nに回動可能に固定されX線5pを照射する4個(第1〜第4)のX線源である冷陰極X線管の一例であるカーボンナノ構造体三極式冷陰極X線管5aと、距離計5rと、ビデオカメラ5tからなる。
【0029】
フレーム5nは、上に凸に湾曲するとともに、4個のカーボンナノ構造体三極式冷陰極X線管5aが等間隔に固定され、かつ、それぞれのX線5pの出射口5gが撮影対象(患部)に向けられている。さらに、X線源の間には伸縮部5wが設けられ、伸縮部5wが、隣り合うX線源方向の横方向に伸縮してX線源の位置を横方向にスライドさせることができる。伸縮部5wにモータを備えることで、コントローラ9の指令でX線源、カーボンナノ構造体三極式冷陰極X線管5aの位置を横方向の位置を自動制御することもできる。
【0030】
シャフト3a及びX線照射部5の高さ、X線源の回転角度、X線源の横方向(撮影対象とフレーム5nとを結ぶ方向に直交する方向)の位置をコントローラ9による自動制御によって自動設定することで、撮影対象の撮影部に最適な2次元画像の組み合わせが取得できる。
【0031】
X線源は、X線管、例えばカーボンナノ構造体三極式冷陰極X線管5aが、モールドでホールドされ、鉛で照射方向以外を遮蔽されるとともに、出射口5gを有する。図面では、便宜上、X線管をむき出しとして記載した。X線源が回動すると、X線管も回動する。すなわち、X線源の回動は、X線管或いは出射口5gの回動と同義である。
【0032】
4個(第1〜第4)のカーボンナノ構造体三極式冷陰極X線管5aは、
図3(A)に示すように同一であり、
図1に示すように撮影対象と等距離に配置され、その内部構造を
図3(B)に示す。運用に当たっては、X線照射部5には、鉛などで照射方向以外は遮蔽されたボックスに内蔵されることとなる。
【0033】
なお、X線源(X線管)は、2個以上、視差をもって備えられることが本発明の立体画像8dの生成には必須で、3個、4個と増える毎に、立体画像8dの精度が向上する。小型化、画像精度の観点から4個のX線管とすることが望ましい。カーボンナノ構造体三極式冷陰極X線管5aは、予熱が不要で、待機電力を抑えることができるため、X線管を増やす時、特に有効である。バッテリ2dの長時間使用、軽量化に資する。
【0034】
図5(B)に示すように、X線源としては、例えば、カーボンナノ構造体三極式冷陰極X線管(例えば、70kV〜120kVの出力)などがあり、小型で、パルス高電圧の印加を受けて、陰極5b側のカーボンナノ構造体冷陰極5dで発生した電子5eを陽極5c側のターゲット5fに照射して、X線5pを発生させ、出射口5gから放出する。X線源にモータを備えることで、コントローラ9の指令でX線源の出射口5gの向きを自動制御することもできる。
【0035】
なお、X線源の回動に換えて、X線源の出射口5gにコリメータを設け、スライド、回動などの移動をさせて、X線の向きを変更制御することもできる。X線源の可動同様に、コリメータもビデオカメラの撮影画像に基づき、撮影対象の形状に応じてX線照射向きを最適方向に自動設定することもできる。コリメータは、X線5pの形状を整えるためにも用いられる。
【0036】
乾電池、バッテリ、商用電源で駆動する原理、構成は、特許文献2及び非特許文献1に詳しく記載されている。電源(バッテリ2d)は、
図2に示すように、カーボンナノ構造体三極式冷陰極X線管5aの陰極5b及び陽極5cにそれぞれ負及び正のパルス高電圧9aを供給する。パルス高電圧9aは、コントローラ9が、撮影対象に応じてパルス高電圧値を変動させ、X線の照射量を可変にし、最適、低被曝を実現する。
【0037】
距離計5rは、フレーム5nに備えられ、撮影対象までの距離を測定するレーザー距離計などで、距離計による撮影対象までの距離測定結果(
図2距離情報5s)に基づき、コントローラ9が自動制御信号9d(
図2)を生成し、シャフト3aの駆動装置に送り、シャフト3aが上下に昇降して、X線照射部5の高さ位置を撮影対象(部位)に応じて最適位置に移動させるために用いることができる。
【0038】
ビデオカメラ5tは、フレーム5nに備えられ撮影対象の形状を撮影する。そして、ビデオカメラ5tは、撮影対象(患者10)を写し、その視野5yにある撮影対象の形状を認識して、その映像(
図2形状情報5u)を基に、コントローラ9が自動制御信号9d(
図2)を生成し、各機器に指令を送り、各機器を自動制御する。
【0039】
例えば、撮影対象の最適範囲を撮影するためX線照射部5の高さを調節するよう、シャフトの高さ、アーム4の角度を最適に自動設定すること、X線源が回動し撮影対象の位置、形状に応じてX線5pの照射向きを最適方向に自動設定すること、フレーム5nの伸縮部5wを伸縮させてX線源が横方向に位置移動することで、撮影対象の形状に応じてX線照射位置を最適化することに利用できる。
【0040】
さらに、コントローラ9で、撮影対象、撮影部位に最適なX線量、パルス高電圧9aの値、パルス幅、パルス数を自動制御し、撮影対象の低被曝を確保しつつ、鮮明が立体画像8dを表示することも可能になる。
【0041】
また、ビデオカメラの映像は、呼吸の状態、撮影対象の動きを把握することにも利用できる。
【0042】
このようにしてなるX線照射装置6は、
図1(B)に示すように、使用しないとき、さらに移動させるときには、シャフト3aを本体2内に収納し、アーム4、X線照射部5を回動、屈曲させ、コンパクトに折りたたむことができる。
【0043】
X線イメージセンサ7は、撮影対象(患者10の患部)の下に配置し、上方からX線5pを照射することで、撮影対象(患部)を透過したX線5pをデジタル式の2次元画像データ7a(3次元X画像データの基データ)として感知し、画像生成部に、有線、無線通信で送信する。
【0044】
X線イメージセンサ7としては、例えば、シンチレータ、CCD、CMOS、CdTe半導体などが例示される。
【0045】
画像生成部は、X線イメージセンサ7から送信された撮影方向の異なる複数の2次元画像データ7aを基に3次元画像データ9cにデジタル生成するもので、
図2に示すように、本体2のコントローラ9の記録部に格納された画像生成ソフトウエア9b又はPC8に格納された画像生成ソフトウエアによって行われる。
【0046】
ここでは、コントローラ9に組み込まれた画像生成ソフトウエア9bによって生成するものとして説明する。画像生成ソフトウエア9bは、2方向のデジタルX線画像を立体視可能に生成する、従来のCT技術、デジタル3次元化技術を用いることができる。立体画像8dの生成には、2次元画像データ7a、3次元画像データ9c、立体画像8dの補正、合成、再構築が含まれる。
【0047】
3Dモニタ8aは、PC8又は本体2(3Dモニタ兼操作パネル2c)に備えつけられ、画像生成部で生成された3次元画像データ9cを取得(有線、無線通信)し、3次元画像データ9cを基に3次元画像(立体画像8d)として表示する。
【0048】
3Dモニタ8aは、ここでは、PC8の3次元表示可能なディスプレイとした。4個のカーボンナノ構造体三極式冷陰極X線管5aから照射されるX線5pに対応した複数の組み合わせの複数の立体画像8dを表示することもでき、医師が、各立体画像8dを比較して、患部の様子を詳細に把握することもできる。
【0049】
次に、
図2を参照して、コントローラ9について、詳しく説明する。コントローラ9は、マイコン等の計算機(CPU含む)、パルス高電圧生成回路、記録部、記録部に格納された画像生成ソフトウエア9b等からなる。
【0050】
コントローラ9のパルス高電圧生成回路で生成された高圧のパルス高電圧9aによってカーボンナノ構造体三極式冷陰極X線管5aは、駆動され、X線5pを出射する。第1〜第4カーボンナノ構造体三極式冷陰極X線管5aは、パルス高電圧9aの印加により、順次、X線5pを照射する。
【0051】
パルス高電圧9aは、撮影対象の部位に応じた撮影条件(電圧値、電流値、パルス幅、パルス数、撮影対象とX線照射部の距離など)となるよう、予め格納された撮影部位毎の最適パラメータに基づき生成される。また、パルス高電圧9aは、撮影対象である患者10の脈拍10a及び/又は呼吸10bの1周期内でかつ0.5秒以内に、全てのX線源に印加することが望ましい。そうすることで、短時間でより鮮明な立体画像8dが得られる。
【0052】
また、パルス高電圧9aは、患者10の脈拍10a又は/及び呼吸10bの周期の位相に同期(
図6参照)して、すなわち計算機によって計算、制御されて生成され、カーボンナノ構造体三極式冷陰極X線管5aに順次送られる。
【0053】
その結果、2次元画像データ7aは、患者10の脈拍10a又は/及び呼吸10bの周期の位相に同期して取得され、脈拍10a又は/及び呼吸10bの影響を排除して、取得されることとなる。
【0054】
このような方法であれば、短時間で冷陰極管への十分な電流値を確保できない場合にも、長時間(数秒)の撮影であっても、心拍、呼吸に影響を低減して、鮮明な立体画像8dを表示するための3次元画像データを生成することができる。
【0055】
立体画像8dは、X線イメージセンサ7から送信されてくる2次元画像データ7aを基に、ここでは、コントローラ9の記録部に格納された画像生成ソフトウエア9bで、立体視可能なデータに加工され、PC8に3次元画像データ9cとして送信され、3Dモニタ8a上で、3次元画像(立体画像8d)として観察できる。
【0056】
立体画像の撮影ペアは、
図2に例示したように、第1及び第2カーボンナノ構造体三極式冷陰極X線管5aのX線5pに対応した立体画像撮影ペアA、第2及び第3のX線5pに対応した立体画像撮影ペアB、第3及び第4のX線5pに対応した立体画像撮影ペアCなどが例示できる。
【0057】
その他、第1と第3或いは第4の組み合わせ、第2と第4の組み合わせにより立体画像撮影ペアにすることも可能である。さらには、2方向の2次元画像データ7aから生成された3次元画像データ9cに、それらと異なる方向の2次元画像データ7aを組み込み、3次元画像データ9cを生成することも可能である。
【0058】
このように、複数のX線源であるカーボンナノ構造体三極式冷陰極X線管5aを備えることで、複数のカーボンナノ構造体三極式冷陰極X線管5aのX線5pに対応した種々の立体画像8dの生成が可能である。
【0059】
種々の2次元画像データの組み合わせによる3次元画像(立体画像8d)を並べて、3Dモニタ8aに表示することもできる。それらの3次元画像の中から、医師が患部に応じた好適な方向の3次元画像を選択し、或いは他の3次元画像と比較して、患部を詳細に観察することができる。
【0060】
他方、撮影対象の撮影部位に応じて、画像生成部に予め格納されたアルゴリズムにしたがって、必要な冷陰極X線管のみにパルス高電圧9aを送り、或いは撮影された2次元画像データ7aを選択し、3次元画像データに生成することもできる。
【0061】
部位に応じたアルゴリズムは、撮影部位に応じて、医師が3Dモニタ兼操作パネル2c、或いはPC8操作、又はビデオカメラ映像から判断して選択され、制御信号8bとして、コントローラ9に送られ、格納されたアルゴリズムから選択される。
【0062】
選択されたアルゴリズムにしたがって、撮影部位の最適な組み合わせにより、2次元画像データ7aの取得、選択され、3次元画像データ9cが生成される。そして、3次元画像データ9cに基づき、立体画像8dが3Dモニタ8a上に表示される。
【0063】
次に、本発明であるポータブル3D表示X線撮影装置1の具体的使用例について、
図4、
図5を参照して説明する。
【0064】
図4に示すように、院内でのポータブル3D表示X線撮影装置の使用例について説明する。本発明であるポータブル3D表示X線撮影装置1は、小型で低被曝の可搬式であるので、医師が、病室12への回診に際して、病室へ持ち込み、ベッド12aに横になっている患者10の患部のX線画像撮影が可能である。
【0065】
そして、撮影方向の異なる複数の2次元画像データ7aを基に、その場で、3次元画像データ9cを生成し、3Dモニタ8aで立体画像8dとして確認することができる。立体画像8dは、PC8が3次元画像データ9cを本体2との通信8eで取得し、又は2次元画像データ7aを本体2と通信で取得し、PC8の画像生成ソフトウエアで3次元画像データ9cを生成して、3Dモニタ8aに表示される。
【0066】
先ず、本発明であるポータブル3D表示X線撮影装置1を病室12に搬入し、X線イメージセンサ7を患部の下に置き、その後、X線照射装置6を患部近傍に移動させ、支軸3を最適高さに昇降調節し、アーム4、X線照射部5を患部に最適な位置に回動させる。これらは、予め撮影部位について決められ、コントローラ9に格納されたパラメータによって自動制御することもできる。
図5においても同じ。続いて、医師又は操作者11が、PC8又は3Dモニタ兼操作パネル2cを操作して、X線照射部5からX線5pを照射させる。PC8によってX線照射装置6を操作する場合には、
図4に示すように、有線通信の他に、無線による通信8eで制御信号8bをX線照射装置6に送り、X線照射装置6を操作することもできる。
【0067】
その結果、X線イメージセンサ7でデジタルX線画像が取得され、3Dモニタ8aで立体画像8dを医師が観察して、患部の詳細な様子を確認することができる。そうすることで、医師は、その後の処置等を的確に判断することができる。
【0068】
図5に示すように、院外、例えば、患者の自宅、屋外での本発明であるポータブル3D表示X線撮影装置1の使用例について説明する。
【0069】
本発明であるポータブル3D表示X線撮影装置1は、小型で低被曝の可搬式であるので、医師が、患者10の自宅への回診に際して、患者10の自宅に持ち込み、患者10がいる場所において、X線画像撮影が可能である。
【0070】
そして、撮影方向の異なる複数の2次元画像データ7aを基に、その場で、3次元画像データ9cを生成し、3Dモニタ8aで立体画像8dとして確認することができる。
【0071】
自宅又は屋外13では、患者10のためのベッドが用意されていないことがある。自宅であれば布団13a等に患者が横になっていることがあるが、シャフト3aが上下に伸縮するため、床に臥している患者10に対しても、シャフト3aを縮めることで、最適のX線照射部5の高さを設定することができる。
【0072】
先ず、本発明であるポータブル3D表示X線撮影装置1を患者10がいる場所に搬入し、X線イメージセンサ7を患部の下に置き、その後、X線照射装置6を患部近傍に移動させ、支軸3を最適高さにスライド調節し、アーム4、X線照射部5を患部に最適な位置に回動させる。続いて、医師又は操作者11が、PC8又は3Dモニタ兼操作パネル2cを操作して、X線照射部5からX線5pを照射させる。
【0073】
その結果、X線イメージセンサ7でデジタルX線画像が取得され、3Dモニタ8aで立体画像8dを医師が観察して、患部の詳細な様子を確認することができる。そうすることで、医師は、その後の処置、移送場所等を的確に判断することができる。