特許第6281119号(P6281119)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6281119
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】ポータブル3D表示X線撮影装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20180208BHJP
   A61B 6/02 20060101ALI20180208BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   A61B6/00 310
   A61B6/00 300D
   A61B6/00 335
   A61B6/02 351A
   A61B6/03 360G
   A61B6/00ZNM
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-102915(P2014-102915)
(22)【出願日】2014年5月17日
(65)【公開番号】特開2015-217137(P2015-217137A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2016年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】511006476
【氏名又は名称】つくばテクノロジー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100093816
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 邦雄
(72)【発明者】
【氏名】王 波
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 良一
(72)【発明者】
【氏名】王 暁東
(72)【発明者】
【氏名】松岡 一夫
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 典生
(72)【発明者】
【氏名】劉 小軍
【審査官】 原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/126502(WO,A1)
【文献】 特表2014−503335(JP,A)
【文献】 特開平10−225450(JP,A)
【文献】 特開2000−189412(JP,A)
【文献】 特開2012−176122(JP,A)
【文献】 特開2005−013346(JP,A)
【文献】 実開昭52−083673(JP,U)
【文献】 特開2012−065768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可搬式で、複数のX線源を備え、異なる方向から撮影対象にX線を照射し、前記撮影対象の撮影方向の異なる複数の2次元画像を撮影し、それらを用いてその場で3次元画像を生成、表示するポータブル3D表示X線撮影装置であって、
前記X線の照射量、照射タイミングを制御するコントローラを内蔵した本体、前記本体から立設した支軸、前記支軸に回動可能に接続するアーム、前記アームに回動可能に接続するフレーム及び前記フレームに設置されパルス高電圧の印加を受けて前記撮影対象にX線を照射する2個以上のX線源から構成されるX線照射装置と、
前記撮影対象を透過したX線を感知するデジタル式のX線イメージセンサと、
前記X線イメージセンサから送信された撮影方向の異なる複数の2次元画像データを基に3次元画像データにする画像生成部と、
前記3次元画像データを基に3次元画像として表示する3Dモニタと、
からなり、
前記フレームに、前記撮影対象の形状を撮影するビデオカメラを備え、前記ビデオカメラの撮影画像に基づき、前記フレームが隣り合う前記X線源方向に伸縮して、前記X線源が横方向に位置移動することで前記撮影対象の形状に応じてX線照射位置を最適位置移動する
ことを特徴とするポータブル3D表示X線撮影装置。
【請求項2】
前記コントローラが、前記撮影対象に応じて、パルス高電圧値、パルス幅及びパルス数の内いずれか1種以上を変動させ、前記X線の照射量を可変としたことを特徴とする請求項1に記載のポータブル3D表示X線撮影装置。
【請求項3】
前記コントローラが、前記撮影対象である患者の脈拍及び/又は呼吸の1周期内に、全ての前記X線源に前記パルス高電圧を印加することでX線が前記撮影対象に照射し、前記3次元画像データが生成されることを特徴とする請求項1に記載のポータブル3D表示X線撮影装置。
【請求項4】
前記コントローラが、前記撮影対象である患者の脈拍又は/及び呼吸の周期の位相に同期した前記パルス高電圧を生成し、前記パルス高電圧を前記X線源に印加することでX線が前記撮影対象に照射され、前記3次元画像データが生成されることを特徴とする請求項1に記載のポータブル3D表示X線撮影装置。
【請求項5】
前記X線源が、カーボンナノ構造体冷陰極X線管を含むことを特徴とする請求項1に記載のポータブル3D表示X線撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可搬式で、複数のX線源を備え、異なる方向から撮影対象にX線を照射し、前記撮影対象の撮影方向の異なる複数の2次元画像を撮影し、それらを用いてその場で立体視可能な画像(以下「3次元画像」、単に「立体画像」ともいう)を生成、表示するポータブル3D表示X線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、災害、事故時の救急、緊急診察、在宅介護の回診に用いられる小型の可搬式のX線撮影装置が注目されている。
【0003】
そして、複数のメーカー(例えば、株式会社ケンコー・トキナ)から可搬式のX線撮影装置が販売されている。しかし、いずれも2次元のX線画像であるので、レントゲン写真と同程度で鮮明ではない。そして、流通品は、190kg程度もあり、まだまだ小型とも言い難く、被災地或いは事故現場などの屋外での使用、医師の自宅回診に携帯することはとてもできるものではない。
【0004】
一方、CT画像は鮮明であるが、高価で大掛かりな装置ため、個人開業医での設置は困難である。また、可搬式とすることはできない。そして、被曝量も高い。患者にとっては、低被曝で、鮮明画像を得られることが望ましい。
【0005】
他方、可搬型の放射線画像撮影システムとして、特許文献1が公開されている。特許文献1の発明は、可搬型のX線画像撮影システムの様々な重要課題を同時にクリアするものであって、二個のX線源10a、10bを有し、X線源10a、10bは、コネクタ25a、25bで保持具14の横棒23のレール27a、27bに取り付けられ、移動機構28a、28bによりレール27a、27bに沿って移動可能とし、X線源10aは横棒23の一端から中心、X線源10bは中心から他端の範囲の撮影を担う。また、撮影制御装置12は、X線源10a、10bが撮影と移動を交互に繰り返す(X線源10a、10bの一方が移動している間に他方が撮影を行う)よう、X線源10a、10bと移動機構28a、28bの駆動を制御する、というものである。
【0006】
特許文献1では、X線源を2つ備えるものの、それらはスライドと撮影を交互に繰り返すため、撮影時間に差が生じ、その間の患者の動き、特に、脈拍、呼吸の影響を受けることとなり、異なる方向の複数のX線画像を取得し、生成したとしても、鮮明な3次元画像を得ることはできない。そもそも、撮影対象、撮影部位によるX線源の位置、X線の照射方向、X線量の最適化は考慮されていない。その点からも鮮明な3次元画像を得ることは到底できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012− 65768号公報
【特許文献2】特開2012−133897号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】http://beam-physics.kek.jp/bpc/procs/suzuki.pdf「“乾電池駆動超小型電子加速器・高エネルギーX線源の開発とその応用”2009年3月29日 鈴木良一 産業技術総合研究所」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、可搬式で、低被曝を確保しつつ、撮影場所で、鮮明な3次元画像を取得できるポータブル3D表示X線撮影装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明は、
(1)
可搬式で、複数のX線源を備え、異なる方向から撮影対象にX線を照射し、前記撮影対象の撮影方向の異なる複数の2次元画像を撮影し、それらを用いてその場で3次元画像を生成、表示するポータブル3D表示X線撮影装置であって、
前記X線の照射量、照射タイミングを制御するコントローラを内蔵した本体、前記本体から立設した支軸、前記支軸に回動可能に接続するアーム、前記アームに回動可能に接続するフレーム及び前記フレームに設置されパルス高電圧の印加を受けて前記撮影対象にX線を照射する2個以上のX線源から構成されるX線照射装置と、
前記撮影対象を透過したX線を感知するデジタル式のX線イメージセンサと、
前記X線イメージセンサから送信された撮影方向の異なる複数の2次元画像データを基に3次元画像データにする画像生成部と、
前記3次元画像データを基に3次元画像として表示する3Dモニタと、
からなることを特徴とする
ポータブル3D表示X線撮影装置。
(2)
前記コントローラが、前記撮影対象に応じて、パルス高電圧値、パルス幅及びパルス数の内いずれか1種以上を変動させ、前記X線の照射量を可変としたことを特徴とする(1)に記載のポータブル3D表示X線撮影装置。
(3)
前記支軸が上下に昇降可能なシャフトであることを特徴とする(1)に記載のポータブル3D表示X線撮影装置。
(4)
前記フレームに、前記撮影対象までの距離を測定する距離計を備え、前記距離計による前記撮影対象までの距離測定結果に基づき、前記シャフトが上下に昇降して前記X線照射部の高さ位置を前記撮影対象に応じて最適位置に移動させることを特徴とする(1)に記載のポータブル3D表示X線撮影装置。
(5)
前記フレームに、前記撮影対象の形状を撮影するビデオカメラを備え、前記ビデオカメラの撮影画像に基づき、前記シャフトが上下に昇降して前記X線照射部の高さ位置を前記撮影対象に応じて最適位置に移動させることを特徴とする(1)に記載のポータブル3D表示X線撮影装置。
(6)
前記フレームに、前記撮影対象の形状を撮影するビデオカメラを備え、前記ビデオカメラの撮影画像に基づき、前記X線源が回動し、前記撮影対象の形状に応じてX線照射向きを最適方向に自動設定することを特徴とする(1)に記載のポータブル3D表示X線撮影装置。
(7)
前記X線源の出射口にコリメータを設け、前記コリメータを移動させることで、前記X線の照射方向を変更制御することを特徴とする(1)に記載のポータブル3D表示X線撮影装置。
(8)
前記フレームに、前記撮影対象の形状を撮影するビデオカメラを備え、前記ビデオカメラの撮影画像に基づき、前記フレームが隣り合う前記X線源方向に伸縮して、前記X線源が横方向に位置移動することで前記撮影対象の形状に応じてX線照射位置を最適位置移動することを特徴とする(1)に記載のポータブル3D表示X線撮影装置。
(9)
前記コントローラが、前記撮影対象である患者の脈拍及び/又は呼吸の1周期内に、全ての前記X線源に前記パルス高電圧を印加することでX線が前記撮影対象に照射し、前記3次元画像データが生成されることを特徴とする(1)に記載のポータブル3D表示X線撮影装置。
(10)
前記コントローラが、前記撮影対象である患者の脈拍又は/及び呼吸の周期の位相に同期した前記パルス高電圧を生成し、前記パルス高電圧を前記X線源に印加することでX線が前記撮影対象に照射され、前記3次元画像データが生成されることを特徴とする(1)に記載のポータブル3D表示X線撮影装置。
(11)
前記X線イメージセンサが、撮影対象範囲をスライドし、撮影対象の複数の2次元画像データを取得し、前記画像生成部が、前記複数の2次元画像データを基に撮影対象の3次元画像データを生成することを特徴とする(1)に記載のポータブル3D表示X線撮影装置。
(12)
前記画像生成部での生成は、前記撮影対象の撮影部位を選択することにより、予め格納された前記撮影部位に最適な撮影条件とアルゴリズムにしたがって、3次元画像データを生成することを特徴とする(1)に記載のポータブル3D表示X線撮影装置。
(13)
前記X線源が、カーボンナノ構造体冷陰極X線管を含むことを特徴とする(1)に記載のポータブル3D表示X線撮影装置。
(14)
前記本体に、水平方向に伸び縮み可能な伸縮脚を備えることを特徴とする(1)に記載のポータブル3D表示X線撮影装置。
とした。
【発明の効果】
【0011】
本発明は以上の構成であるので、以下の効果を発揮する。複数のX線源、例えば、冷陰極X線管、より具体的にはカーボンナノ構造体三極式をX線源、とし、デジタルX線画像を撮影することで、撮影場所で立体画像を生成、表示することができる小型のポータブル3D表示X線撮影装置を提供することができる。
【0012】
その結果、低価格で購入でき、移動が簡便で、設置スペースの問題も解決し、高精度のX線立体画像撮影、診察が可能になる。人体の診察のみならず、動物病院、その回診でも導入することが容易になる。さらに、産業用として、各種機器の非破壊X線検査にも応用することができる。
【0013】
また、X線照射部が昇降し、X線源が回動、横方向に移動することで、撮影部位に応じて、X線量、X線照射位置・方向を最適化することができ、予め格納されたパラメータにしたがえば、自動設定することもできる。最適化することで、低被曝、バッテリの長持ちに繋がる。
【0014】
その結果、低被曝の鮮明なX線画像が撮影でき、立体視可能であるので、高精度の診察が可能になる。X線照射部の高さ位置を、フレームに備えられたビデオカメラで検出した撮影対象範囲、距離計でX線照射部と撮影対象の距離測定結果に基づき、設定、補正すれば、より低被曝で、高精度の立体画像を表示することができる。
【0015】
さらに、脈拍又は及び呼吸の1周期内でかつ例えば0.5秒以内に、全ての冷陰極X線管にパルス高電圧を印加すること、或いは患者の脈拍の周期の位相又は/及び呼吸に同期したパルス高電圧を印加することで、X線を患部に照射し、3次元画像を生成するため、撮影対象の動き、特に、脈拍、呼吸の影響の少ない、鮮明な3次元画像を表示することができる。また、本発明は、一定のリズムの動きを伴う撮影対象にも応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明であるポータブル3D表示X線撮影装置の模式図(A)及びコンパクト収納時の模式図(B)である。
図2】ポータブル3D表示X線撮影装置の制御ブロック図である。
図3】カーボンナノ構造体三極式冷陰極X線管の説明図である。
図4】本発明であるポータブル3D表示X線撮影装置の病室での使用状態図の一例である。
図5】本発明であるポータブル3D表示X線撮影装置の病院外での使用状態図の一例である。
図6】脈拍又は/及び呼吸の周期の位相に同期したパルス高電圧の生成の説明図である。
図7】X線イメージセンサをスライドさせ、広範囲の撮影対象を立体画像として表示する場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面に基づき、本発明の実施の形態について詳細に説明する。ただし、本発明はそれら実施形態に限定されるものではない。
【実施例1】
【0018】
図1に示すように、本発明の一例であるポータブル3D表示X線撮影装置1は、可搬式で、複数のX線源を備え、異なる方向から撮影対象にX線5pを照射し、撮影対象、ここでは患者10(人体)、の撮影方向の異なる複数の2次元X線画像を撮影し、それらを用いてその場で3次元画像(立体画像8d)を生成、表示するポータブル3D表示X線撮影装置であって、X線照射装置6と、X線イメージセンサ7と、画像生成部と、3Dモニタ8aとからなる。
【0019】
X線照射装置6は、本体2と、支軸3と、アーム4と、X線照射部5とからなる。
【0020】
本体2は、下部から本体2の設置面と略平行(水平方向)でX線照射部5の重さによりX線照射装置6を転倒させない方向に継目2g部分で伸び縮み可能な伸縮脚2fと、本体2及び伸縮脚2fの底部に備えられたキャスタ2aと、上部に取り付けられた取っ手2bとからなる。
【0021】
キャスタ2aと取っ手2bにより本体2の移動が容易になる。伸縮脚2fは、例えば、平面視で、V字、U字などになるよう、本体2の底部に2本備えられ、撮影の際には伸縮脚2fを伸ばすことでX線照射部5の重さでX線照射装置6の転倒を防ぎ、X線照射装置6の移動の際には伸縮脚2fを縮めることでコンパクトに収納することができる。伸縮脚2fは、伸縮することなく、本体2に回動可能に接続し、伸び縮みなどしてもよい。
【0022】
さらに、上面には、X線5pの照射強度、時間、回数を制御、調節し、さらに立体画像8dを表示する3Dモニタ兼操作パネル2cを備える。また、起動のオン・オフスイッチ、駆動電源の切り換えスイッチなども備える。
【0023】
3Dモニタ兼操作パネル2cは、3Dモニタと操作パネルを別体としてもよい。他方、3Dモニタ兼操作パネル2cの操作に換え、PC8から制御信号8bとして本体2の各機器に送信(有線、無線通信)してもよい。
【0024】
本体2の内部には、ポータブル3D表示X線撮影装置1の駆動電源であるバッテリ2dを内蔵する。バッテリ2dに換えて、商用電源を用いてもよい。それらは併用でき、本体2に備える駆動電源の切り換えスイッチで切り替えられる。
【0025】
本体2は、さらに、X線5pの照射量、照射タイミングを制御するコントローラ9を内蔵する。コントローラ9についての詳細は、図2を参照して後述する。
【0026】
支軸3は、本体2から立設し、上下に昇降(本体2への挿抜)可能なシャフト3aと、シャフト3aの係止及び係止を解除するストッパ3bとからなる。シャフト3aを備えることで、患部とX線照射部5との距離を最適に設定することができる。シャフト3aにモータを備えることで、コントローラ9の指令でシャフトの高さ及びX線照射部5の位置(撮影対象からの距離)を自動制御することもできる。
【0027】
アーム4は、支軸3(シャフト3a)の上端部に回動可能に接続し、X線照射部5の向き調節するためのものである。ここでは、2本の継手4aと、シャフト3aとの接続部、継手4aと継手4aの接続部、X線照射部5との接続部に設けられ、それぞれを回動可能に接続する回動部4bとからなる。回動部4bにモータを備えることで、コントローラ9の指令でアーム4及びX線照射部5の角度を自動制御することもできる。
【0028】
X線照射部5は、アーム4の他端に回動可能に接続するフレーム5nと、フレーム5nに回動可能に固定されX線5pを照射する4個(第1〜第4)のX線源である冷陰極X線管の一例であるカーボンナノ構造体三極式冷陰極X線管5aと、距離計5rと、ビデオカメラ5tからなる。
【0029】
フレーム5nは、上に凸に湾曲するとともに、4個のカーボンナノ構造体三極式冷陰極X線管5aが等間隔に固定され、かつ、それぞれのX線5pの出射口5gが撮影対象(患部)に向けられている。さらに、X線源の間には伸縮部5wが設けられ、伸縮部5wが、隣り合うX線源方向の横方向に伸縮してX線源の位置を横方向にスライドさせることができる。伸縮部5wにモータを備えることで、コントローラ9の指令でX線源、カーボンナノ構造体三極式冷陰極X線管5aの位置を横方向の位置を自動制御することもできる。
【0030】
シャフト3a及びX線照射部5の高さ、X線源の回転角度、X線源の横方向(撮影対象とフレーム5nとを結ぶ方向に直交する方向)の位置をコントローラ9による自動制御によって自動設定することで、撮影対象の撮影部に最適な2次元画像の組み合わせが取得できる。
【0031】
X線源は、X線管、例えばカーボンナノ構造体三極式冷陰極X線管5aが、モールドでホールドされ、鉛で照射方向以外を遮蔽されるとともに、出射口5gを有する。図面では、便宜上、X線管をむき出しとして記載した。X線源が回動すると、X線管も回動する。すなわち、X線源の回動は、X線管或いは出射口5gの回動と同義である。
【0032】
4個(第1〜第4)のカーボンナノ構造体三極式冷陰極X線管5aは、図3(A)に示すように同一であり、図1に示すように撮影対象と等距離に配置され、その内部構造を図3(B)に示す。運用に当たっては、X線照射部5には、鉛などで照射方向以外は遮蔽されたボックスに内蔵されることとなる。
【0033】
なお、X線源(X線管)は、2個以上、視差をもって備えられることが本発明の立体画像8dの生成には必須で、3個、4個と増える毎に、立体画像8dの精度が向上する。小型化、画像精度の観点から4個のX線管とすることが望ましい。カーボンナノ構造体三極式冷陰極X線管5aは、予熱が不要で、待機電力を抑えることができるため、X線管を増やす時、特に有効である。バッテリ2dの長時間使用、軽量化に資する。
【0034】
図5(B)に示すように、X線源としては、例えば、カーボンナノ構造体三極式冷陰極X線管(例えば、70kV〜120kVの出力)などがあり、小型で、パルス高電圧の印加を受けて、陰極5b側のカーボンナノ構造体冷陰極5dで発生した電子5eを陽極5c側のターゲット5fに照射して、X線5pを発生させ、出射口5gから放出する。X線源にモータを備えることで、コントローラ9の指令でX線源の出射口5gの向きを自動制御することもできる。
【0035】
なお、X線源の回動に換えて、X線源の出射口5gにコリメータを設け、スライド、回動などの移動をさせて、X線の向きを変更制御することもできる。X線源の可動同様に、コリメータもビデオカメラの撮影画像に基づき、撮影対象の形状に応じてX線照射向きを最適方向に自動設定することもできる。コリメータは、X線5pの形状を整えるためにも用いられる。
【0036】
乾電池、バッテリ、商用電源で駆動する原理、構成は、特許文献2及び非特許文献1に詳しく記載されている。電源(バッテリ2d)は、図2に示すように、カーボンナノ構造体三極式冷陰極X線管5aの陰極5b及び陽極5cにそれぞれ負及び正のパルス高電圧9aを供給する。パルス高電圧9aは、コントローラ9が、撮影対象に応じてパルス高電圧値を変動させ、X線の照射量を可変にし、最適、低被曝を実現する。
【0037】
距離計5rは、フレーム5nに備えられ、撮影対象までの距離を測定するレーザー距離計などで、距離計による撮影対象までの距離測定結果(図2距離情報5s)に基づき、コントローラ9が自動制御信号9d(図2)を生成し、シャフト3aの駆動装置に送り、シャフト3aが上下に昇降して、X線照射部5の高さ位置を撮影対象(部位)に応じて最適位置に移動させるために用いることができる。
【0038】
ビデオカメラ5tは、フレーム5nに備えられ撮影対象の形状を撮影する。そして、ビデオカメラ5tは、撮影対象(患者10)を写し、その視野5yにある撮影対象の形状を認識して、その映像(図2形状情報5u)を基に、コントローラ9が自動制御信号9d(図2)を生成し、各機器に指令を送り、各機器を自動制御する。
【0039】
例えば、撮影対象の最適範囲を撮影するためX線照射部5の高さを調節するよう、シャフトの高さ、アーム4の角度を最適に自動設定すること、X線源が回動し撮影対象の位置、形状に応じてX線5pの照射向きを最適方向に自動設定すること、フレーム5nの伸縮部5wを伸縮させてX線源が横方向に位置移動することで、撮影対象の形状に応じてX線照射位置を最適化することに利用できる。
【0040】
さらに、コントローラ9で、撮影対象、撮影部位に最適なX線量、パルス高電圧9aの値、パルス幅、パルス数を自動制御し、撮影対象の低被曝を確保しつつ、鮮明が立体画像8dを表示することも可能になる。
【0041】
また、ビデオカメラの映像は、呼吸の状態、撮影対象の動きを把握することにも利用できる。
【0042】
このようにしてなるX線照射装置6は、図1(B)に示すように、使用しないとき、さらに移動させるときには、シャフト3aを本体2内に収納し、アーム4、X線照射部5を回動、屈曲させ、コンパクトに折りたたむことができる。
【0043】
X線イメージセンサ7は、撮影対象(患者10の患部)の下に配置し、上方からX線5pを照射することで、撮影対象(患部)を透過したX線5pをデジタル式の2次元画像データ7a(3次元X画像データの基データ)として感知し、画像生成部に、有線、無線通信で送信する。
【0044】
X線イメージセンサ7としては、例えば、シンチレータ、CCD、CMOS、CdTe半導体などが例示される。
【0045】
画像生成部は、X線イメージセンサ7から送信された撮影方向の異なる複数の2次元画像データ7aを基に3次元画像データ9cにデジタル生成するもので、図2に示すように、本体2のコントローラ9の記録部に格納された画像生成ソフトウエア9b又はPC8に格納された画像生成ソフトウエアによって行われる。
【0046】
ここでは、コントローラ9に組み込まれた画像生成ソフトウエア9bによって生成するものとして説明する。画像生成ソフトウエア9bは、2方向のデジタルX線画像を立体視可能に生成する、従来のCT技術、デジタル3次元化技術を用いることができる。立体画像8dの生成には、2次元画像データ7a、3次元画像データ9c、立体画像8dの補正、合成、再構築が含まれる。
【0047】
3Dモニタ8aは、PC8又は本体2(3Dモニタ兼操作パネル2c)に備えつけられ、画像生成部で生成された3次元画像データ9cを取得(有線、無線通信)し、3次元画像データ9cを基に3次元画像(立体画像8d)として表示する。
【0048】
3Dモニタ8aは、ここでは、PC8の3次元表示可能なディスプレイとした。4個のカーボンナノ構造体三極式冷陰極X線管5aから照射されるX線5pに対応した複数の組み合わせの複数の立体画像8dを表示することもでき、医師が、各立体画像8dを比較して、患部の様子を詳細に把握することもできる。
【0049】
次に、図2を参照して、コントローラ9について、詳しく説明する。コントローラ9は、マイコン等の計算機(CPU含む)、パルス高電圧生成回路、記録部、記録部に格納された画像生成ソフトウエア9b等からなる。
【0050】
コントローラ9のパルス高電圧生成回路で生成された高圧のパルス高電圧9aによってカーボンナノ構造体三極式冷陰極X線管5aは、駆動され、X線5pを出射する。第1〜第4カーボンナノ構造体三極式冷陰極X線管5aは、パルス高電圧9aの印加により、順次、X線5pを照射する。
【0051】
パルス高電圧9aは、撮影対象の部位に応じた撮影条件(電圧値、電流値、パルス幅、パルス数、撮影対象とX線照射部の距離など)となるよう、予め格納された撮影部位毎の最適パラメータに基づき生成される。また、パルス高電圧9aは、撮影対象である患者10の脈拍10a及び/又は呼吸10bの1周期内でかつ0.5秒以内に、全てのX線源に印加することが望ましい。そうすることで、短時間でより鮮明な立体画像8dが得られる。
【0052】
また、パルス高電圧9aは、患者10の脈拍10a又は/及び呼吸10bの周期の位相に同期(図6参照)して、すなわち計算機によって計算、制御されて生成され、カーボンナノ構造体三極式冷陰極X線管5aに順次送られる。
【0053】
その結果、2次元画像データ7aは、患者10の脈拍10a又は/及び呼吸10bの周期の位相に同期して取得され、脈拍10a又は/及び呼吸10bの影響を排除して、取得されることとなる。
【0054】
このような方法であれば、短時間で冷陰極管への十分な電流値を確保できない場合にも、長時間(数秒)の撮影であっても、心拍、呼吸に影響を低減して、鮮明な立体画像8dを表示するための3次元画像データを生成することができる。
【0055】
立体画像8dは、X線イメージセンサ7から送信されてくる2次元画像データ7aを基に、ここでは、コントローラ9の記録部に格納された画像生成ソフトウエア9bで、立体視可能なデータに加工され、PC8に3次元画像データ9cとして送信され、3Dモニタ8a上で、3次元画像(立体画像8d)として観察できる。
【0056】
立体画像の撮影ペアは、図2に例示したように、第1及び第2カーボンナノ構造体三極式冷陰極X線管5aのX線5pに対応した立体画像撮影ペアA、第2及び第3のX線5pに対応した立体画像撮影ペアB、第3及び第4のX線5pに対応した立体画像撮影ペアCなどが例示できる。
【0057】
その他、第1と第3或いは第4の組み合わせ、第2と第4の組み合わせにより立体画像撮影ペアにすることも可能である。さらには、2方向の2次元画像データ7aから生成された3次元画像データ9cに、それらと異なる方向の2次元画像データ7aを組み込み、3次元画像データ9cを生成することも可能である。
【0058】
このように、複数のX線源であるカーボンナノ構造体三極式冷陰極X線管5aを備えることで、複数のカーボンナノ構造体三極式冷陰極X線管5aのX線5pに対応した種々の立体画像8dの生成が可能である。
【0059】
種々の2次元画像データの組み合わせによる3次元画像(立体画像8d)を並べて、3Dモニタ8aに表示することもできる。それらの3次元画像の中から、医師が患部に応じた好適な方向の3次元画像を選択し、或いは他の3次元画像と比較して、患部を詳細に観察することができる。
【0060】
他方、撮影対象の撮影部位に応じて、画像生成部に予め格納されたアルゴリズムにしたがって、必要な冷陰極X線管のみにパルス高電圧9aを送り、或いは撮影された2次元画像データ7aを選択し、3次元画像データに生成することもできる。
【0061】
部位に応じたアルゴリズムは、撮影部位に応じて、医師が3Dモニタ兼操作パネル2c、或いはPC8操作、又はビデオカメラ映像から判断して選択され、制御信号8bとして、コントローラ9に送られ、格納されたアルゴリズムから選択される。
【0062】
選択されたアルゴリズムにしたがって、撮影部位の最適な組み合わせにより、2次元画像データ7aの取得、選択され、3次元画像データ9cが生成される。そして、3次元画像データ9cに基づき、立体画像8dが3Dモニタ8a上に表示される。
【0063】
次に、本発明であるポータブル3D表示X線撮影装置1の具体的使用例について、図4図5を参照して説明する。
【0064】
図4に示すように、院内でのポータブル3D表示X線撮影装置の使用例について説明する。本発明であるポータブル3D表示X線撮影装置1は、小型で低被曝の可搬式であるので、医師が、病室12への回診に際して、病室へ持ち込み、ベッド12aに横になっている患者10の患部のX線画像撮影が可能である。
【0065】
そして、撮影方向の異なる複数の2次元画像データ7aを基に、その場で、3次元画像データ9cを生成し、3Dモニタ8aで立体画像8dとして確認することができる。立体画像8dは、PC8が3次元画像データ9cを本体2との通信8eで取得し、又は2次元画像データ7aを本体2と通信で取得し、PC8の画像生成ソフトウエアで3次元画像データ9cを生成して、3Dモニタ8aに表示される。
【0066】
先ず、本発明であるポータブル3D表示X線撮影装置1を病室12に搬入し、X線イメージセンサ7を患部の下に置き、その後、X線照射装置6を患部近傍に移動させ、支軸3を最適高さに昇降調節し、アーム4、X線照射部5を患部に最適な位置に回動させる。これらは、予め撮影部位について決められ、コントローラ9に格納されたパラメータによって自動制御することもできる。図5においても同じ。続いて、医師又は操作者11が、PC8又は3Dモニタ兼操作パネル2cを操作して、X線照射部5からX線5pを照射させる。PC8によってX線照射装置6を操作する場合には、図4に示すように、有線通信の他に、無線による通信8eで制御信号8bをX線照射装置6に送り、X線照射装置6を操作することもできる。
【0067】
その結果、X線イメージセンサ7でデジタルX線画像が取得され、3Dモニタ8aで立体画像8dを医師が観察して、患部の詳細な様子を確認することができる。そうすることで、医師は、その後の処置等を的確に判断することができる。
【0068】
図5に示すように、院外、例えば、患者の自宅、屋外での本発明であるポータブル3D表示X線撮影装置1の使用例について説明する。
【0069】
本発明であるポータブル3D表示X線撮影装置1は、小型で低被曝の可搬式であるので、医師が、患者10の自宅への回診に際して、患者10の自宅に持ち込み、患者10がいる場所において、X線画像撮影が可能である。
【0070】
そして、撮影方向の異なる複数の2次元画像データ7aを基に、その場で、3次元画像データ9cを生成し、3Dモニタ8aで立体画像8dとして確認することができる。
【0071】
自宅又は屋外13では、患者10のためのベッドが用意されていないことがある。自宅であれば布団13a等に患者が横になっていることがあるが、シャフト3aが上下に伸縮するため、床に臥している患者10に対しても、シャフト3aを縮めることで、最適のX線照射部5の高さを設定することができる。
【0072】
先ず、本発明であるポータブル3D表示X線撮影装置1を患者10がいる場所に搬入し、X線イメージセンサ7を患部の下に置き、その後、X線照射装置6を患部近傍に移動させ、支軸3を最適高さにスライド調節し、アーム4、X線照射部5を患部に最適な位置に回動させる。続いて、医師又は操作者11が、PC8又は3Dモニタ兼操作パネル2cを操作して、X線照射部5からX線5pを照射させる。
【0073】
その結果、X線イメージセンサ7でデジタルX線画像が取得され、3Dモニタ8aで立体画像8dを医師が観察して、患部の詳細な様子を確認することができる。そうすることで、医師は、その後の処置、移送場所等を的確に判断することができる。
【実施例2】
【0074】
次に、図7を参照して、広範囲の撮影対象の立体画像8dを生成する方法について説明する。図7(A)に示すように、広範囲の撮影対象の立体画像8dを取得するには、横方向にスライドするX線イメージセンサ7を内蔵した検出装置7bを用いる。
【0075】
検出装置7bは、図7(B)の断面模式図に示すように、箱体7cと、X線イメージセンサ7の移動をガイドするレール7dと、箱体7cに内蔵され、レール7d上を位置移動するX線イメージセンサ7と、X線イメージセンサ7の移動のための駆動源とからなる。
【0076】
箱体7cは、X線5pを透過する素材で、内部にX線イメージセンサ7を内蔵するとともに、X線イメージセンサ7の移動機構を備え、撮影対象の下に設置される。
【0077】
前記移動機構は、レール7dと、X線イメージセンサ7を移動させるモータ、バネなどの駆動源と、前記駆動源の駆動力となる電源からなる。電源は、本体2のバッテリ2dでもよい。
【0078】
撮影対象が広範囲の場合、X線イメージセンサ7が小さい場合に、X線イメージセンサ7が横方向にスライドする検出装置7bを採用するとよい。また、X線イメージセンサ7の面積を小さくすることで、製造コストを低く抑えることができるとともに、X線検出部の面積が大きいイメージセンサと同等の高精度の立体画像8dも生成することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 ポータブル3D表示X線撮影装置
2 本体
2a キャスタ
2b 取っ手
2c 3Dモニタ兼操作パネル
2d バッテリ
2f 伸縮脚
2g 継目
3 支軸
3a シャフト
3b ストッパ
4 アーム
4a 継手
4b 回動部
5 X線照射部
5a カーボンナノ構造体三極式冷陰極X線管
5b 陰極
5c 陽極
5d カーボンナノ構造体冷陰極
5e 電子
5f ターゲット
5g 出射口
5h 中間極
5i 孔
5k グランド
5n フレーム
5p X線
5r 距離計
5s 距離情報
5t ビデオカメラ
5u 形状情報
5w 伸縮部
5y 視野
6 X線照射装置
7 X線イメージセンサ
7a 2次元画像データ
7b 検出装置
7c 箱体
7d レール
8 PC
8a 3Dモニタ
8b 制御信号
8d 立体画像
8e 通信
9 コントローラ
9a パルス高電圧
9b 画像生成ソフトウエア
9c 3次元画像データ
9d 自動制御信号
10 患者
10a 脈拍
10b 呼吸
11 医師又は操作者
12 病室
12a ベッド
13 自宅又は屋外
13a 布団
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7