(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6281154
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池の負極シートおよびリチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20180208BHJP
H01M 4/74 20060101ALI20180208BHJP
H01M 4/80 20060101ALI20180208BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20180208BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20180208BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20180208BHJP
C23C 22/63 20060101ALI20180208BHJP
C23C 18/31 20060101ALI20180208BHJP
C23C 18/38 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/74 C
H01M4/80 C
H01M4/66 A
H01M4/139
H01M4/48
C23C22/63
C23C18/31 A
C23C18/38
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-204912(P2013-204912)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-69902(P2015-69902A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(73)【特許権者】
【識別番号】504150461
【氏名又は名称】国立大学法人鳥取大学
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(72)【発明者】
【氏名】坂口 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】薄井 洋行
(72)【発明者】
【氏名】早川 友浩
(72)【発明者】
【氏名】川井 弘之
【審査官】
青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−079463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00− 4/84
C23C 18/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔構造の導電性支持体が酸化銅の先細薄片密集体により被覆され、前記酸化銅の先細薄片密集体が、黒化層であり、活物質であるリチウムイオン二次電池の負極シート。
【請求項2】
前記多孔構造の導電性支持体が空隙率30〜90%である、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池の負極シート。
【請求項3】
前記酸化銅の先細薄片の長さが0.6μm以上である、請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池の負極シート。
【請求項4】
前記支持体が多孔構造の金属よりなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池の負極シート。
【請求項5】
前記支持体が金属薄膜に覆われた有機繊維よりなる請求項1〜3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池の負極シート。
【請求項6】
前記金属薄膜がメッキ処理により形成された請求項5に記載のリチウムイオン二次電池の負極シート。
【請求項7】
前記黒化層が水酸化ナトリウムと亜塩素酸ナトリウムによる黒化処理液含浸法による請求項1〜6のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池の負極シート。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池の負極シートを負極として使用したリチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池などの非水系電池に関する。より詳細には、酸化銅により被覆された多孔構造の支持体を備える電極シートを負極として使用する非水系電池に関する。
【背景技術】
【0002】
非水系電池の負極は、一般的に金属箔などの集電体上にスラリー状の電極活物質層形成用塗工液を塗布し、熱風乾燥などにより乾燥させ、ロールプレスにより作成している。活物質としてカーボン負極が一般的に使用されているが、容量が低いのでより高容量で安全性に優れるものが求められている。
特許文献1には、真空蒸着法により、基板(銅板など)上にスズ薄膜を形成したリチウムイオン二次電池用負極材料の製造方法が開示されている。
特許文献2および特許文献3には、正極、負極及び非水系のイオン伝導体からなる電池において、前記負極が負極活物質の主成分としてリチウムイオンのインターカレーション・デインターカレーション可能な黒鉛よりなり、さらにこの電極内に酸化銅を含むリチウムイオン二次電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−110151号公報
【特許文献2】特開平6−325753号公報
【特許文献3】特開平8−124559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1においては、スズ膜が検討されているが、充放電の際の膨潤収縮で満足するものが得られていない。また、特許文献2および3では、金属酸化物(酸化銅)が、理論容量が高いことから負極の活物質に一部組み込むことが検討されているが、カーボン電極の一部の改良に留まっている。
【0005】
本発明者らは、酸化銅の形状をコントロールすることにより、高容量化可能な電極が得られるのではないかと考え、酸化銅の形状コントロールによる高容量化を発明が解決しようとする課題に設定した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記の課題について鋭意検討の結果、電極を構成する導電性支持体を多孔化するとともに、該支持体を酸化銅の先細薄片密集体で被覆することにより高容量化が達成されることを見出し、本発明に到達した。本発明第1の構成は、多孔構造の導電性支持体が酸化銅の先細薄片密集体により被覆された電極シートである。
【0007】
上記の電極シートにおいて、前記多孔構造の導電性支持体が空隙率30〜90%であることが好ましい。
【0008】
上記の電極シートにおいて、前記酸化銅の先細薄片の長さが0.6μm以上であることが好ましい。
【0009】
上記の電極シートにおいて、前記支持体が多孔構造の金属よりなることが好ましい。
【0010】
上記の電極シートにおいて、前記支持体が金属薄膜に覆われた有機繊維よりなることが好ましい。
【0011】
上記の電極シートにおいて、前記金属薄膜がメッキ処理により形成されていることが好ましい。
【0012】
上記の電極シートにおいて、前記酸化銅の先細薄片密集体が黒化層であることが好ましく、前記黒化層が水酸化ナトリウムと亜塩素酸ナトリウムによる黒化処理液含浸法によるのが好ましい。
【0013】
本発明第2の構成は、前記の電極シートを負極として使用した非水系電池である。
【発明の効果】
【0014】
本発明第1の構成によれば、酸化銅を先細薄片の形状で密集体として支持体を被覆するので、特許文献2、3に開示されている、微粉末の酸化銅をバインダーとブレンドし、ペーストにして塗布したものよりも高容量化が可能であり、しかも、支持体を多孔体とすることで反応場が増大し酸化銅から取り出せる電気量が増加する。しかも、本発明においては、集電体と活物質が強く一体化しており活物質で生じる電気をスムーズに集電体へ取り出せる。また、本発明においては、活物質層が充放電により膨張収縮しても崩壊しにくいという特性を有する。
【0015】
本発明第2の構成によれば、本発明に係る非水系電池は、酸化銅がリチウムよりも還元電位が高いので、リチウム析出による短絡発生がなく、安全性に優れる。また、同様の効果で使用されている負極活物質のチタン酸リチウムに比べて容量も大きいという特性がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施例1で形成された酸化銅被覆表面の走査型電子顕微鏡写真(倍率20,000倍)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明においては、非水系電池を構成する電極シートが、酸化銅の先細薄片密集体により被覆された、多孔構造の導電性支持体から構成されている。
本発明における非水系電池とは、リチウムイオン電池のほか、他のアルカリ金属を活物質とする電池を含み、また、一次電池および二次電池の両者を包含する。以下、リチウムイオン二次電池を中心にして記載する。
【0018】
リチウムイオン二次電池は、負極層、電解質層、正極層とから構成される。負極層は、負極材料と固体電解質を含有する。本発明において、負極材料は、多孔構造の導電性支持体から構成される。
【0019】
(多孔構造の導電性支持体)
本発明に係る電極シートは、多孔構造の導電性支持体から構成されている。本発明において、多孔構造とは、好ましくは、3次元網目状の多孔構造、または連結孔を有する多孔構造である。逆に、3次元網目状の多孔構造、または連結孔を有する多孔構造であれば、負極活物質の膨張収縮を効果的に抑制することができ、サイクル劣化を抑制することができるため好ましい。また、多孔構造とすることで酸化銅皮膜の表面積が増大するため、充放電に寄与しないロス分が減少し、より効率的な電極となる。本発明において支持体の導電性は、支持体を導電性金属で構成するか、支持体基材に導電性金属を被覆することにより付与されることができる。
【0020】
支持体が導電性金属から形成される場合には、多数の小孔のある金属板あるいは金属箔、金属網状メッシュ、金属繊維からなる多孔体が挙げられる。
支持体を構成する導電性金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、チタン、銅などの金属材料が挙げられる。これらの金属材料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。なかでも、電子伝導性、電池作動電位という観点からは、銅、ニッケル、ステンレスが好ましく、特に銅が好ましい。
支持体の空隙率は、30〜90%であることが好ましく、40〜90%であることがより好ましい。空隙率が小さすぎると高容量化を得にくくなる傾向にあるので好ましくなく、空隙率が大きすぎると、支持体としての力学特性が不十分となり、また単位体積当たりの容量が低下する傾向にあることから好ましくない。
【0021】
導電性金属を被覆する支持体基材としては、有機繊維から形成される支持体基材が挙げられる。該繊維表面に金属層を形成する場合には、有機繊維層として、織編物、不織布形状を用いて、メッキ、蒸着、金属粉末を塗布したものが好ましい。
本発明において支持体基材を形成するために、用いられる有機繊維としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミドなどからなる合成繊維やセルロース繊維などの有機繊維が挙げられ、電池の種類や電解液の種類に応じて適宜選定される。
上記の有機繊維は、編織布や乾式または湿式不織布(紙)などの多孔性の有機繊維層を形成し、その片面または両面に導電性金属を、メッキ、蒸着、金属粉末の塗布などのより有機繊維層の少なくとも一部、好ましくは全面に層状に付着させることにより導電性の多孔性支持体を形成することができる。
【0022】
(有機繊維層の導電性金属層の形成)
有機繊維層の目付としては、10〜100g/m
2、より好ましくは、20〜80g/m
2の範囲内にあるのが好ましく、目付けが小さすぎると力学特性が劣り加工時の工程張力に耐えられなくなる場合があるので好ましくなく、大きすぎると一定厚みにした時に密度が高くなりすぎ、目標とする空間を保持できなくなる傾向にある点で好ましくない。有機繊維層の厚みとしては、0.02〜0.20mm、より好ましくは、0.05〜0.15mmの範囲内にあるのが好ましく、厚みが小さすぎると力学特性が不十分となり、工程で不具合が発生する場合があるので好ましくなく、厚みが大きすぎると電池内の容積を占有してしまい、密度当たりの容量として劣った電池になる場合があるので好ましくない。空隙率としては、30〜90%、より好ましくは、40〜90%の範囲内にあるのが好ましく、空隙率が小さすぎると高容量化しにくくなる場合があるので好ましくなく、空隙率が大きすぎると支持体としての力学特性が不十分となり、また単位体積あたりの容量が低下してしまう場合がある点で好ましくない。
【0023】
有機繊維層上への導電性金属被覆層を形成する金属としては、前記のアルミニウム、ニッケル、銅、チタン、鉄、ステンレス系金属、銅等の導電性金属を挙げることができる。上述の導電性金属の中でも、電気抵抗値が比較的低いものが好ましい。このような導電性金属としては、アルミニウム、銅等が挙げられる。
好ましくは、有機繊維層への導電性金属被覆層の形成は、公知の電解めっき法を利用することができる。なお、不織布に電解めっきを施す前に、有機繊維層表面に導電性を有する層を形成する。この導電性層を形成する手段として、無電解めっき法、スパッタリング法を利用することができる。上記の導電性層としては、4g/m
2ないし9g/m
2程度とすることが好ましい。そして、導電性を付与した有機繊維層に導電性金属のめっき浴を用いて電解メッキを施すことで、有機繊維表面に導電性金属の被覆層が形成された多孔性金属層を作製することができる。めっき浴としては、ワット浴、塩化浴、スルファミン酸浴が挙げられる。
上記の導電性金属の被覆量は、20〜100g/m
2、好ましくは30〜80g/m
2の範囲内にあるのが好ましく、被覆量が小さすぎると皮膜強度が弱くなり、部分剥離等が発生する場合があるので好ましくなく、被覆量が大きすぎると空隙の確保がしにくくなる場合があるので好ましくない。また、導電性金属層が形成された有機繊維層の空隙率は、30〜90%、より好ましくは、40〜80%の範囲内にあるのが好ましく、空隙率が小さすぎると高容量化をしにくくなる場合があるので好ましくなく、空隙率が大きすぎると力学特性が不十分となり、単位体積当たりの容量が低下する場合があるので好ましくない。
【0024】
(酸化銅被覆)
導電性多孔性支持体への酸化銅の先細薄片密集体被覆は、黒化処理により行われる。この黒化処理は、濃度55〜90g/l(より好ましくは65〜80g/l)のNaOHと、濃度70〜90g/l(より好ましくは75〜85g/l)のNaClO
2と、を含有する黒化処理液を70〜100℃(より好ましくは75〜95℃)に加熱し、当該黒化処理液に支持体を3〜5分浸漬して行なう。このような黒化処理を施した支持体上には、酸化銅からなる微細な先細薄片密集体からなる皮膜が形成される。
黒化処理の前には、導電性支持体の脱脂工程および酸洗工程を行うのが好ましい。脱脂工程は、支持体表面を65〜70℃の界面活性剤で30〜90秒間洗浄し、表面の脂成分が除去される。酸洗工程は、支持体を0.5mol/lの硫酸水溶液に30〜90秒間浸漬し、表面の酸化層を除去することが好ましい。
【0025】
先細薄片の長さとしては、0.6〜2.0μm、より好ましくは、0.7〜1.5μmの範囲内にあるのが好ましい。長さが小さすぎると高容量化を得にくくなるので好ましくなく、長さが大きすぎると集電体である銅との距離が離れすぎ効率が落ちる場合がある点で好ましくない。先細薄片の長さは、黒化処理液の濃度を変えることにより調整することができる。
【0026】
(電解質層)
リチウムイオン二次電池を構成する電解質層は、特に限定はなく、本技術分野において公知の電解質が使用できる。
【0027】
(正極層)
本発明において、リチウムイオン二次電池に用いられる正極としては、例えば集電体上に正極活物質やバインダーを含む電極活物質層が形成された公知の正極を使用できる。正極の集電体の材料としては、導電性を有する材料であれば特に制限されないが、例えばアルミニウム、ニッケル、銅などが挙げられる。
正極活物質としては、例えば一般式LiM
xO
y(ただし、Mは金属であり、xおよびy、は金属Mと酸素Oの組成比である)で表される金属酸リチウム化合物が用いられる。具体的には、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO
2)、マンガン酸リチウム(LiMn
2O
4)、オリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO
4)などが挙げられる。なお、Mは複数の金属であってもよく、例えばLiM
1pM
2qM
3rO
y(ただし、p+q+r=xである)で表される化合物、具体的にはLiNi
0.33Mn
0.33Co
0.33O
2などを正極活物質として用いることもできる。
正極に用いられるバインダーとしては、PVDF、SBRなどが挙げられる。正極の電極活物質層は、導電助剤を含んでいてもよい。導電助剤を含むことにより、正極の導電性がより向上し、電池性能をより高めることができる。導電助剤としては、黒鉛、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレンが挙げられる。これら導電助剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上併用する場合、その組み合わせや比率は目的に応じて適宜選択すればよい。
【0028】
例えば、リチウムイオン電池は、上述した負極層、電解質層及び正極層を貼り合せ、接合することで製造できる。接合する方法としては、各部材を積層し、加圧・圧着する方法や、2つのロール間を通して加圧する方法(rollto roll)等がある。また、接合面にイオン伝導性を有する活物質や、イオン伝導性を阻害しない接着物質を介して接合してもよい。
【0029】
(用途)
本発明に係る非水系電池は、携帯情報端末、携帯電子機器、家庭用小型電力貯蔵装置、
モーターを電力源とする自動二輪車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等の電池として用いることができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0031】
(充放電特性の評価方法)
三極式ビーカーセルを用いて、対極及び参照極として金属リチウム板((株)レアメタリック製、厚さ1mm、純度99.9%)、電解液として1Mのリチウムビストリフルオロメタンスルホニルアミド(LiTFSA)を支持塩とするプロピレンカーボネート(PC)溶液((株)キシダ化学製)を用いた。電解液の温度としては、30℃とした。なお、充放電測定装置(北斗電工(株)製、HJ1001SM8A)により、電流密度0.34A/gで、0.005〜3.0Vvs.Li/Li
+の電位幅で充放電を繰り返し、5回目のサイクルにおける放電容量[酸化銅1g当たりの放電容量(mAh)]およびシート1m
2当たりの放電容量(mAh)を評価した。
【0032】
(酸化銅の先細薄片体の長さの測定方法)
支持体上の先細薄片体の長さを走査電子顕微鏡[日本電子(株)、JSM−6701F]を用いて観察することにより測定した。
【0033】
(空隙率)
本発明において、空隙率とは、シート全体の体積中に占める空隙の容積の割合である。
【0034】
<実施例1>
PP/PE紙(ダイワボウ社製:PP 0.5dr×5mm、NBF 1.5dr×5mm;目付29g/m
2;厚さ0.15mm:密度0.19g/cm
3:空隙率86%)に、通常の無電解メッキ法にて、銅付着量84g/m
2、付着後の空隙率79.5%の多孔構造の導電性支持体を作製した。
得られた支持体に下記のようにして酸化銅の先細薄片(長さ:1μm)の密集体からなる活物質を付着(付着量9.8g/m
2)させて電極シートを作製した。
黒化処理液[日立化成(株)製] HIST−500A、HIST−500B,HIST−500Cを1.7:0.6:1の割合でブレンドした80℃の浴で処理し、酸化銅膜を形成した。形成された酸化銅被覆面の走査型電子顕微鏡写真を
図1に示し、得られた電極シートの放電容量の測定結果を表1に示す。
【0035】
<実施例2>
実施例1におけるPP/PE紙の代わりに、銅網(目付569.6g/m
2:厚さ0.11mm:密度5.18g/cm
3:空隙率41.9%)を用いて、該銅網上に 実施例1と同様にして黒化処理を行って、酸化銅の先細薄片(長さ1μm)密集体からなる活物質(付着量6.2g/m
2)が形成された電極シートを作製した。
得られた電極シートの放電容量の測定結果を表1に示す。
【0036】
<実施例3>
実施例2と同じ銅網(目付569.6g/m
2:厚さ0.11mm:密度5.18g/cm
3:空隙率41.9%)を用いて、該銅網上に下記条件で黒化処理を行って、酸化銅の先細薄片(長さ0.8μm)からなる活物質(付着量5.9g/m
2)が形成された電極シートを作製した。
黒化処理液[日立化成(株)製] HIST−500A、HIST−500B、HIST−500Cを1.7:0.4:1の割合でブレンドした80℃の浴で処理し、酸化銅膜を形成した。得られた電極シートの放電容量の測定結果を表1に示す。
【0037】
<比較例1>
実施例2における銅網と同じ銅網を用いて、酸化銅にPVDFを混合してペースト状にしたものからなる球状(径1μm)の活物質(付着量5.9g/m
2)が該銅網上に形成された電極シートを作製した。
得られた電極シートの放電容量の測定結果を表1に示す。
【0038】
<比較例2>
実施例2における銅網の代わりに銅板(厚み0.02mm、密度8.92g/cm
3)を用いて、該銅板上に 実施例1と同様にして黒化処理を行って、酸化銅の先細薄片(長さ1μm)密集体からなる活物質(付着量2.8g/m
2)が形成された電極シートを作製した。
得られた電極シートの放電容量の測定結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
実施例1では、PP/PE紙上に銅を84g/m
2メッキした支持体に、酸化銅の先細薄片(長さ1μm)密集体が被覆された電極では、高い放電容量が得られた。この結果から、実施例1の電極は、充放電容量が高く、充放電サイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池を得ることができることが分かる。
実施例2および実施例3では、銅網(569.6g/m
2:空隙率41.9%)上に先細薄片(長さ1μm)の酸化銅または先細薄片(長さ0.8μm)の酸化銅を被覆した電極では、充放電容量がいずれも高く、充放電サイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池を得ることができることが分かる。
【0041】
比較例1では、1μm径の球状の酸化銅であるために、放電容量が小さく、電池負極の容量の点で不十分である。
比較例2では、支持体が多孔体ではなく、厚さ0.02mmの銅板であるために、電極シート放電容量が小さく、電極負極として容量が不十分である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、導電性のある多孔構造の支持体が酸化銅の先細薄片密集体により被覆された電極シートを提供することにより、この電極シートを負極に用いる非水系電池(リチウムイオン二次電池)の高容量化が図られるので、非水系電池を駆動電源として用いる電子機器に用いることができる。