(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱分解して炭素を生成し得る有機物ガスの原料が、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、ブタン、ブテン、ペンタン、イソブタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン、エチルベンゼン、ジフェニルメタン、ナフタレン、フェノール、クレゾール、ニトロベンゼン、クロルベンゼン、インデン、クマロン、ピリジン、アントラセン、フェナントレン、タール蒸留工程で得られるガス軽油、クレオソート油、アントラセン油及びナフサ分解タール油から選択される1種以上である請求項5記載のリチウムイオン二次電池用負極材の製造方法。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯型の電子機器、通信機器等の著しい発展に伴い、経済性と機器の小型化、軽量化の観点から、高エネルギー密度の二次電池が強く要望されている。
【0003】
従来、この種の二次電池の高容量化策として、例えば、負極材料にV、Si、B、Zr、Sn等の酸化物及びそれらの複合酸化物を用いる方法(例えば、特許文献1,2参照)、溶融急冷した金属酸化物を負極材として適用する方法(例えば、特許文献3参照)、負極材料に酸化珪素を用いる方法(例えば、特許文献4参照)、負極材料にSi
2N
2O及びGe
2N
2Oを用いる方法(例えば、特許文献5参照)等が知られている。
【0004】
また、負極材に導電性を付与する目的として、SiOを黒鉛とメカニカルアロイング後に炭化処理する方法(例えば、特許文献6参照)、珪素粒子表面に化学蒸着法により炭素層を被覆する方法(例えば、特許文献7参照)、酸化珪素粒子表面に化学蒸着法により炭素層を被覆する方法(例えば、特許文献8参照)がある。
【0005】
しかしながら、上記従来の方法では、充放電容量が上がり、エネルギー密度が高くなるものの、サイクル性が不十分であったり、市場の要求特性には未だ不十分であったりし、必ずしも満足でき得るものではなく、更なるエネルギー密度の向上が望まれていた。
【0006】
特に、特許文献4では、酸化珪素をリチウムイオン二次電池用負極材として用い、高容量の電極を得ているが、本発明者が知る限りにおいては、未だ初回充放電時における不可逆容量が大きかったり、サイクル性が実用レベルに達していなかったり等の問題があり、改良する余地がある。
【0007】
また、負極材に導電性を付与した技術についても、特許文献6では固体と固体の融着であるため均一な炭素被膜が形成されず、導電性が不十分であるといった問題がある。
そして、特許文献7の方法においては、均一な炭素被膜の形成が可能となるものの、Siを負極材として用いているため、リチウムイオンの吸脱着時の膨張・収縮が余りにも大きすぎて、結果として実用に耐えられず、サイクル性が低下するためにこれを防止するべく充電量の制限を設けなくてはならない。特許文献8の方法においては、サイクル性の向上は確認されるものの、微細な珪素結晶の析出、炭素被覆の構造及び基材との融合が不十分であることより、充放電のサイクル数を重ねると徐々に容量が低下し、一定回数後に急激に低下するという現象があり、二次電池用としてはまだ不十分であるといった問題があった。以上のことから、酸化珪素系の高い電池容量と低い体積膨張率の利点を維持しつつ、初回充放電効率が高く、サイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池用として有効な負極材とその製造方法の開発が待たれていた。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
[リチウムイオン二次電池用負極材]
本発明のリチウムイオン二次電池用負極材は、珪素を含むリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な粒子で、レーザー回折法粒度分布測定装置で測定した体積基準分布において、その最頻値をモード径、累積50%径をD
50、累積90%径をD
90としたとき、(モード径−D
50)/D
50=0.13以上で、かつ(D
90−モード径)/D
90=0.28以下であることを特徴とする粒子からなるものである。
【0015】
珪素を含むリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な粒子(以下、珪素を含む粒子と表記する場合がある。)としては、珪素粒子、珪素の微粒子が珪素系化合物に分散した複合構造を有する粒子、一般式SiOx(0.5≦x≦1.6)で表される酸化珪素粒子、又はこれらの混合物が好ましい。これらを使用することで、より初回充放電効率が高く、高容量でかつサイクル性に優れたリチウムイオン二次電池用負極材が得られる。
【0016】
本発明における酸化珪素とは、非晶質の珪素酸化物の総称であり、不均化前の酸化珪素は、一般式SiOx(0.5≦x≦1.6)で表される。xは0.8≦x<1.6が好ましく、0.8≦x<1.3がより好ましい。この酸化珪素は、例えば、二酸化珪素と金属珪素との混合物を加熱して生成した一酸化珪素ガスを冷却・析出して得ることができる。
【0017】
珪素の微粒子が珪素系化合物に分散した複合構造を有する粒子は、例えば、珪素の微粒子を珪素系化合物と混合したものを焼成する方法や、一般式SiOxで表される不均化前の酸化珪素粒子を、アルゴン等不活性な非酸化性雰囲気中、400℃以上、好適には800〜1,100℃の温度で熱処理し、不均化反応を行うことで得ることができる。特に後者の方法で得た材料は、珪素の微結晶が均一に分散されるため好適である。上記のような不均化反応により、珪素ナノ粒子のサイズを1〜100nmとすることができる。なお、珪素ナノ粒子が酸化珪素中に分散した構造を有する粒子中の酸化珪素については、二酸化珪素であることが望ましい。なお、透過電子顕微鏡によってシリコンのナノ粒子(結晶)が無定形の酸化珪素に分散していることを確認することができる。
【0018】
珪素を含む粒子の物性は、目的とする複合粒子により適宜選定することができる。例えば、平均粒径は0.1〜50μmが好ましく、下限は0.2μm以上がより好ましく、0.5μm以上がさらに好ましい。上限は30μm以下がより好ましく、20μm以下がさらに好ましい。なお、本発明における平均粒径とは、レーザー回折法による粒度分布測定における重量平均粒径で表すものである。
【0019】
BET比表面積は、0.5〜100m
2/gが好ましく、1〜20m
2/gがより好ましい。BET比表面積が0.5m
2/g以上であれば、電極に塗布した際の接着性が低下して電池特性が低下するおそれがない。また、100m
2/g以下であれば、粒子表面の二酸化珪素の割合が大きくなり、リチウムイオン二次電池用負極材として用いた際に電池容量が低下するおそれもないものとすることができる。
【0020】
上記珪素を含む粒子に導電性を付与し、電池特性の向上を図る方法として、黒鉛等の導電性のある粒子と混合する方法、上記複合粒子の表面を炭素被膜で被覆する方法、及びその両方を組み合わせる方法が挙げられる。中でも、珪素を含むリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な粒子の表面が、炭素被膜で被覆されている被覆粒子とすることが好ましい。炭素被膜で被覆する方法としては、化学蒸着(CVD)する方法が好適である。
【0021】
化学蒸着(CVD)の方法としては、例えば、珪素を含むリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な粒子の表面が、炭素被膜で被覆されている被覆粒子が、珪素を含むリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な粒子に対して、熱分解して炭素を生成し得る有機物ガス及び/又は蒸気雰囲気中、600〜1,200℃、好適には900〜1,100℃の温度範囲で炭素を化学蒸着して炭素被膜を形成させる方法が挙げられる。
【0022】
化学蒸着(CVD)は、常圧、減圧下共に適用可能であり、減圧下としては、50〜30,000Paの減圧下が挙げられる。また、炭素被膜の形成工程に使用する装置は、バッチ式炉、ロータリーキルン、ローラーハースキルンといった連続炉、流動層等の一般的に知られた装置が使用可能である。特に、蒸着装置が粒子を静置して行うバッチ式炉の場合、減圧下で行うことにより炭素をさらに均一に被覆することができ、電池特性の向上を図ることができる。
【0023】
化学蒸着による炭素被膜の形成には、下記のような様々な有機物がその炭素源として挙げられるが、熱分解温度や蒸着速度、また蒸着後に形成される炭素被膜の特性等は、用いる物質によって大きく異なる場合がある。蒸着速度が大きい物質は表面の炭素被膜の均一性が十分でない場合が多く、反面分解に高温を要する場合、高温での蒸着時に、被覆される粒子中の珪素結晶が大きく成長し過ぎて、放電効率やサイクル特性の低下を招くおそれがある。
【0024】
熱分解して炭素を生成し得る有機物ガスの原料としては、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、ブタン、ブテン、ペンタン、イソブタン、ヘキサン等の炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン、エチルベンゼン、ジフェニルメタン、ナフタレン、フェノール、クレゾール、ニトロベンゼン、クロルベンゼン、インデン、クマロン、ピリジン、アントラセン、フェナントレン等の1環〜3環の芳香族炭化水素、タール蒸留工程で得られるガス軽油、クレオソート油、アントラセン油及びナフサ分解タール油等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0025】
炭素被膜の被覆量は、炭素被覆した被覆粒子全体に対して0.3〜40質量%が好ましく、1.0〜30質量%がより好ましい。被覆される粒子にもよるが、炭素被覆量を0.3質量%以上とすることで、概ね十分な導電性を維持することができ、非水電解質二次電池の負極とした際のサイクル性の向上を確実に達成することができる。また、炭素被覆量が40質量%以下であれば、効果の向上が見られず、負極材料に占める炭素の割合が多くなって、リチウムイオン二次電池用負極材として用いた場合に充放電容量が低下するような事態が発生する可能性を、極力低くすることができる。
【0026】
本発明の粒子の特定の粒径範囲は、累積50%径をD
50、累積90%径をD
90としたとき、(モード径−D
50)/D
50=0.13以上で、かつ(D
90−モード径)/D
90=0.28以下である。このような範囲とすることで、粗粉側の裾野が短く、微粉側の裾野が長い、粒度分布が左右対称にならない粒度分布が得られる。(モード径−D
50)/D
50が0.13未満だと、サイクル特性が不十分で、電極の充填密度が十分得られない。(モード径−D
50)/D
50は0.13〜0.50が好ましく、0.15〜0.35がより好ましく、0.25〜0.33がさらに好ましい。(D
90−モード径)/D
90が0.28を超えると、サイクル特性が不十分で、電極に塗布しにくくなる。特にD
90が15μmを超える粒子の場合、粗大粒子が存在することとなりセパレータを傷つけるおそれがある。(D
90−モード径)/D
90は0.05〜0.28が好ましく、0.05〜0.20がより好ましく、0.08〜0.18がさらに好ましい。また、D
50は0.1〜20μmが好ましく、0.5〜15μmがより好ましく、1〜10μmがさらに好ましい。D
90は5〜25μmが好ましく、5〜15μmがより好ましく、7〜11μmがさらに好ましい。モード径は5〜20μmが好ましい。なお、本発明におけるD
50とは、レーザー回折法による粒度分布測定における体積分布の、累積50%径、D
90とは累積90%径を表わすものである。
【0027】
本発明の特定の粒径範囲とするためには、粉砕や分級等の処理、さらに炭素被膜を形成する場合は、その被覆量等により適宜調整することができる。粉砕には良く知られた装置を使用することができる。例えば、ボール、ビーズ等の粉砕媒体を運動させ、その運動エネルギーによる衝撃力や摩擦力、圧縮力を利用して被砕物を粉砕するボールミル、媒体撹拌ミルや、ローラによる圧縮力を利用して粉砕を行うローラミルや、被砕物を高速で内張材に衝突もしくは粒子相互に衝突させ、その衝撃による衝撃力によって粉砕を行うジェットミルや、ハンマー、ブレード、ピン等を固設したローターの回転による衝撃力を利用して被砕物を粉砕するハンマーミル、ピンミル、ディスクミルや、剪断力を利用するコロイドミルや高圧湿式対向衝突式分散機「アルティマイザー」等が用いられる。粉砕は、湿式、乾式共に用いられる。なお、粉砕だけでは粒度分布がブロードになる、すなわちモード径とD
90が乖離した分布となりやすいが、さらに、粉砕後に粒度分布を整えるため、乾式分級や湿式分級もしくはふるい分け分級が用いられる。乾式分級は、主として気流を用い、分散、分離(細粒子と粗粒子の分離)、捕集(固体と気体の分離)、排出のプロセスが逐次もしくは同時に行われ、粒子相互間の干渉、粒子の形状、気流の流れの乱れ、速度分布、静電気の影響等で分級効率を低下させないよう、分級をする前に前処理(水分、分散性、湿度等の調整)を行ったり、使用される気流の水分や酸素濃度を調整して用いられる。また、サイクロン等の乾式で分級機が一体となっているタイプでは、一度に粉砕、分級が行われ、所望の粒度分布とすることが可能となる。本発明の(D
90−モード径)/D
90≦0.28とするには、粉砕後に分級機や篩で粗粉側をカットすることが有効である。
【0028】
本発明は、上記粒子をリチウムイオン二次電池用負極材(活物質)に用いるものであり、本発明で得られたリチウムイオン二次電池用負極材を用いて、負極を作製し、リチウムイオン二次電池を製造することができる。
【0029】
[負極]
上記リチウムイオン二次電池用負極材を用いて負極を作製する場合、さらにカーボンや黒鉛等の導電剤を添加することができる。この場合においても導電剤の種類は特に限定されず、構成された電池において、分解や変質を起こさない電子伝導性の材料であればよい。具体的にはAl,Ti,Fe,Ni,Cu,Zn,Ag,Sn,Si等の金属粒子や金属繊維又は天然黒鉛、人造黒鉛、各種のコークス粒子、メソフェーズ炭素、気相成長炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維、各種の樹脂焼成体等の黒鉛を用いることができる。
【0030】
負極(成型体)の調製方法としては、一例として下記のような方法が挙げられる。
上述の負極材と、必要に応じて導電剤と、ポリイミド樹脂等の結着剤等の他の添加剤とに、N−メチルピロリドン又は水等の溶剤を混練してペースト状の合剤とし、この合剤を集電体のシートに塗布する。この場合、集電体としては、銅箔、ニッケル箔等、通常、負極の集電体として使用されている材料であれば、特に厚さ、表面処理の制限なく使用することができる。
なお、合剤をシート状に成形する成形方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0031】
[リチウムイオン二次電池]
リチウムイオン二次電池は、少なくとも、正極と、負極と、リチウムイオン導電性の非水電解質とを有するリチウムイオン二次電池であって、上記負極に、本発明に係るリチウムイオン二次電池用負極材が用いられたものである。本発明のリチウムイオン二次電池は、上記被覆粒子からなる負極材を用いた負極からなる点に特徴を有し、その他の正極、電解質、セパレータ等の材料及び電池形状等は公知のものを使用することができ、特に限定されない。上述のように、本発明の負極材は、リチウムイオン二次電池用の負極材として用いた場合の電池特性(充放電容量及びサイクル特性)が良好で、特にサイクル耐久性に優れたものである。
【0032】
正極活物質としてはLiCoO
2、LiNiO
2、LiMn
2O
4、V
2O
5、MnO
2、TiS
2、MoS
2等の遷移金属の酸化物、リチウム、及びカルコゲン化合物等が用いられる。
【0033】
電解質としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム、過塩素酸リチウム等のリチウム塩を含む非水溶液が用いられる。非水溶媒としてはプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、2−メチルテトラヒドロフラン等の1種又は2種以上を組み合わせて用いられる。また、それ以外の種々の非水系電解質や固体電解質も使用することができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例
、参考例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0035】
[実施例1]
ジョークラッシャ―(前川工業所製)で粗砕したSiOx(x=1.0)をボールミル(マキノ製)で2時間粉砕し、D
50が8μmのSiO粒子を得た。この粒子をジェットミル(ホソカワミクロン100AFG)で、圧力空気の圧力0.58MPa、分級機の回転数16,000rpmの条件で微粉砕し、サイクロンで回収したところD
50が4.6μmのSiO粉末であった。
この粒子を粉体層厚みが10mmとなるようトレイに敷き、バッチ式加熱炉内に仕込んだ。そして油回転式真空ポンプで炉内を減圧しつつ、200℃/hrの昇温速度で炉内を1,000℃に昇温した。そして1,000℃に達した後、炉内にメタン0.3L/minで通気し、10時間の炭素被覆処理を行った。メタン停止後、炉内を降温・冷却し、106gの黒色粒子を得た。
【0036】
得られた黒色粒子は、BET比表面積が4.8m
2/gで、黒色粒子に対する炭素被覆量4.8質量%の導電性粒子であった。
またこの粒子をレーザー回折法粒度分布測定装置(島津製作所SALD−3100)で屈折率3.90−0.01iの条件で測定したところ、体積分布におけるD
50(累積50%径)は5.6μm、D
90(累積90%径)は8.0μm、またグラフから読み取ったモード径(最頻値)は7.1μmであった。
【0037】
<電池評価>
次に、以下の方法で、得られた粒子を負極活物質として用いた電池評価を行った。
まず、得られた負極材45質量%と人造黒鉛(平均粒径10μm)45質量%、ポリイミド10質量%を混合し、さらにN−メチルピロリドンを加えてスラリーとした。
このスラリーを厚さ12μmの銅箔に塗布し、80℃で1時間乾燥後、ローラープレスにより電極を加圧成形し、この電極を350℃で1時間真空乾燥させた。その後、2cm
2に打ち抜き、負極とした。
【0038】
そして、得られた負極の充放電特性を評価するために、対極にリチウム箔を使用し、非水電解質として六フッ化リン酸リチウムをエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの1/1(体積比)混合液に1モル/Lの濃度で溶解した非水電解質溶液を用い、セパレータに厚さ30μmのポリエチレン製微多孔質フィルムを用いた評価用リチウムイオン二次電池を作製した。
【0039】
作製したリチウムイオン二次電池を、一晩室温で放置した後、二次電池充放電試験装置((株)ナガノ製)を用いて、テストセルの電圧が0Vに達するまで0.5mA/cm
2の定電流で充電を行い、0Vに達した後は、セル電圧を0Vに保つように電流を減少させて充電を行った。そして、電流値が40μA/cm
2を下回った時点で充電を終了させた。そして放電は0.5mA/cm
2の定電流で行い、セル電圧が1.4Vに達した時点で放電を終了して、放電容量を求めた。
以上の充放電試験を繰り返し、評価用リチウムイオン二次電池の50サイクル後の充放電試験を行った。結果を表1に示す。初回放電容量1,718mAh/g、50サイクル後のサイクル保持率94%の高容量及びサイクル性に優れたリチウムイオン二次電池であることが確認された。
【0040】
[実施例2]
実施例1と同じSiOx(x=1.0)を同様にボールミルで8μmにした。次のジェットミル工程で今度は分級機の回転数を9,000rpmとして、サイクロンからD
50が6.5μmの粉末を得た。実施例1と同様に炭素被覆処理を行い、D
50が8.8μm、D
90が13.8μm、モード径11.0μmで炭素被覆量4.9質量%の導電性粒子を得た。得られた導電性粒子を用いて、実施例1と同様の方法で負極を作製し、電池評価を行った。
【0041】
[
参考例1]
実施例1と同じSiOx(x=1.0)を1mmの篩に掛け、その篩下を実施例1と同じジェットミルで、圧力空気の圧力0.58MPa、分級機の回転数5,800rpmの条件で微粉砕し、サイクロンで回収したところ、D
50が14.3μmの粒子を得た。メタンの通気時間は13時間として炭素被覆処理を行う以外は、実施例1と同様の方法で調製し、D
50が14.9μm、D
90が22.2μm、モード径17.0μmで、炭素被覆量4.8質量%の導電性粒子を得た。得られた導電性粒子を用いて、実施例1と同様の方法で負極を作製し、電池評価を行った。
【0042】
[比較例1]
実施例1と同じボールミルで8μmに粉砕したSiOx(x=1.0)粒子を気流式分級機(日清エンジニアリング製TC−15)にかけ、風量2.5Nm
3/min、ローター回転数3,500rpmの条件で分級した。サイクロンで回収した微粉側の粒子のD
50は3.8μmであった。
実施例1と同様に炭素被覆処理を行い、D
50が6.0μm、D
90が10.3μm、モード径7.1μmで、炭素被覆量4.9質量%の導電性粒子を得た。得られた導電性粒子を用いて、実施例1と同様の方法で負極を作製し、電池評価を行った。
【0043】
[比較例2]
実施例1でジェットミルにより微粉砕した同じSiOx(x=1.0)粒子を、気流式分級機で風量2.5Nm
3/min、ローター回転数10,000rpmの条件で分級した。分級機下で回収した粗粉側の粒子のD
50は5.1μmであった。メタン通気時間を13時間とする以外は、実施例1と同様に炭素被覆処理を行った。得られた粒子は、D
50が5.4μm、D
90が7.7μm、モード径は5.7μmで、炭素被覆量5.0質量%の導電性粒子であった。得られた導電性粒子を用いて、実施例1と同様の方法で負極を作製し、電池評価を行った。
【0044】
[比較例3]
実施例1と同じボールミルで8μmに粉砕したSiOx(x=1.0)粒子を、湿式メディア粉砕装置(ユーロテック製OBビーズミル)でヘキサンを溶媒として粉砕し、D
50が0.9μmとした。メタン通気時間を7時間とする以外は、実施例1と同様に炭素被覆処理を行った。得られた粒子は、D
50が2.3μm、D
90が5.1μm、モード径は2.9μmで、炭素被覆量5.2質量%の導電性粒子であった。得られた導電性粒子を用いて、実施例1と同様の方法で負極を作製し、電池評価を行った。
【0045】
実施例、
参考例及び比較例の粒度及び電池特性の一覧表を表1に示す。比較例は実施例の負極材に比べて明らかにサイクル特性に劣るリチウムイオン二次電池であることが確認された。
【0046】
【表1】