(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記計測値演算部はさらに、前記受光信号から前記信号の最低値を計測する最低値計測手段を備え、前記振幅計測手段の計測結果、または振幅計測手段および前記最低値計測手段の計測結果を用いて前記凝集に関わる指標を算出することを特徴とする請求項1または請求項2記載の凝集モニタリング装置。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、第1の実施の形態に係る凝集モニタリング装置を示している。
図1に示す構成は一例であり、斯かる構成に本発明の凝集モニタリング装置、凝集モニタリング方法または凝集システムが限定されるものではない。
【0031】
この凝集モニタリング装置2はセンサ部4を備える。このセンサ部4は一例として、凝集槽6に溜められている被処理水8に水没状態に維持する。凝集槽6は被処理水8を溜める被処理水槽の一例であり、被処理水8の凝集処理を行う機能を兼ね備えている。
【0032】
センサ部4にはレーザ光照射部10および散乱光受光部12が備えられる。レーザ光照射部10は、凝集のモニタリングに用いる計測光を照射する計測光照射部の一例であり、計測光の一例であるレーザ光を導く第1の光ファイバ14−1の出光端部で形成される。散乱光受光部12は、散乱光を導く第2の光ファイバ14−2の入光端部で形成される。
【0033】
レーザ光照射部10と散乱光受光部12の間には遮蔽部材16を介在させて計測領域18が設定されている。この計測領域18にはレーザ光発光部20で発光したレーザ光がレーザ光照射部10から照射される。この計測領域18はレーザ光の被処理水8における照射領域の一例である。この計測領域18にレーザ光が照射されると、被処理水8中の粒子によりレーザ光が散乱し、散乱光を生じる。したがって、散乱光受光部12は、この散乱光を計測領域18から受光する。この場合、計測領域18にフロックが存在すれば、そのフロックが散乱光に影響を与える。
【0034】
遮蔽部材16は各光ファイバ14−1、14−2の固定および支持手段であるとともに、計測領域18に対する自然光の遮断手段である。この遮蔽部材16では一例として、光ファイバ14−1を固定、支持する第1の支持部22−1と、光ファイバ14−2を支持する第2の支持部22−2とが一定角度を持つ頂角部24を備える。この頂角部24の角度はたとえば、90度が好ましいが、それ以外の角度であってもよい。この頂角部24は、計測領域18に対向させるとともに、レーザ光照射部10と散乱光受光部12との間に介在させている。これにより、レーザ光照射部10からのレーザ光が散乱光受光部12に入射するのを回避でき、散乱光受光部12には計測領域18にある粒子側の散乱光を受光できる。
【0035】
レーザ光発光部20にはレーザ発光素子26および発光回路28が備えられる。レーザ発光素子26はレーザ光を発光するレーザ光源の一例である。このレーザ光源にはレーザダイオードが好ましいが、レーザ光が得られる素子または装置であればよい。なお、凝集のモニタリングに用いる計測光はレーザ光に限定されるものではない。粒子に当たり散乱光を生じさせる光であれば凝集のモニタリングに用いることができ、レーザ光のように指向性に優れる計測光を用いることで、計測領域18に効率的に光を照射することができる。このような計測光を用いる場合には、計測光を発光する発光素子およびこの発光素子を駆動する発光回路を備える発光部を用いればよい。計測光にはたとえば、発光ダイオードを用いてもよい。
【0036】
発光回路28はレーザ発光素子26の駆動手段の一例である。この発光回路28には一例として、AM(Amplitude Modulation:振幅変調)変調回路30、タイミング回路32およびファンクションジェネレータ34が備えられる。AM変調回路30は、タイミング信号Tsに所定の周波数fを持つ変調信号Msで振幅変調(AM変調)を行い、所定の周波数fの振幅を持ちかつ所定の時間間隔で断続する発光信号Drを出力する。この発光信号Drを受け、レーザ発光素子26は変調信号Msで変化しかつタイミング信号Tsによる所定の時間間隔で発光、非発光を繰り返す。これにより、凝集モニタリングのためのレーザ発光素子26の発光時間が短縮される。レーザ発光素子26に発光寿命が数千時間と短いレーザダイオードなどの発光素子を用いた場合であっても、連続点灯による劣化を防止できるので、使用時間を延長できる。
【0037】
タイミング回路32はタイミング信号Tsを発生する。このタイミング信号Tsはたとえば、一定周期で断続するパルス信号であればよい。このタイミング信号Tsは、被処理水8の凝集に関わる凝集指標の演算処理の同期情報として用いられる。つまり、このタイミング信号Tsは、レーザ発光素子26の発光と凝集指標の演算処理とを同期させている。
【0038】
ファンクションジェネレータ34は変調信号Msを発振する発振器の一例である。この変調信号Msは、レーザ光に対する自然光の影響を回避可能な周波数fが好ましくたとえば、f=70〜150〔kHz〕を用いればよい。信号形態は同一振幅の周期信号であればよく、波形形態は正弦波、三角波、矩形波などのいずれでもよい。
【0039】
このようなレーザ光発光部20で得られるレーザ光が計測領域18に照射されると、この計測領域18に存在する微小コロイド粒子で散乱した散乱光が散乱光受光部12に入射する。この場合、微小コロイド粒子は未凝集のコロイド粒子である。この微小コロイド粒子により得られる散乱光は、レーザ光照射部10から照射されるレーザ光と同様の周波数を持ち、一定の周期で間欠する態様となる。また、計測領域18に存在するフロックで反射した反射光が散乱光受光部12に入射する。
【0040】
散乱光受光部12の受光出力は、光ファイバ14−2により信号処理部36に導かれる。この信号処理部36は光電変換、ノイズ成分の除去、散乱光の強度を表すレベル信号、このレベル信号から散乱光の強度を表す計測値を取り出す。この信号処理部36には一例として、光電変換回路38および検波回路40が備えられている。
【0041】
光電変換回路38は、フォトディテクタ42、バンドパスフィルタ44および増幅器46が備えられる。フォトディテクタ42は、光ファイバ14−2で導かれた散乱光を受け、電気信号Eiに変換する。バンドパスフィルタ44は電気信号Eiからノイズ成分をカットし、変調信号Msの信号成分を取り出す。バンドパスフィルタ44のカットオフ周波数を設定することにより、不要な変動成分を取り除き、変調信号Msの信号成分を出力する。増幅器46は、散乱光における変調信号Msの信号成分を増幅し、散乱光に応じた振幅レベルを持つ受光信号Eoを出力する。この光電変換回路38において、フォトディテクタ42に代えてフォトダイオードを用いてもよいし、バンドパスフィルタ44に代えてハイパスフィルタを用いてもよい。これらのフィルタを用いることで、自然光や照明光などの非計測光の受光により生じる直流ノイズ成分をカットすることができる。
【0042】
検波回路40は受光信号EoからAM検波(包絡線検波)により出力信号Doを検出する。この出力信号Doは、受光信号の一例であり、受光信号Eoの直流成分のレベルを表す。このレベルが微小コロイド粒子を含む被処理水における粒子による散乱光レベルを表している。つまり、微小コロイド粒子以外の散乱光であるノイズ成分やフロックによる反射成分が含まれる。
【0043】
この検波回路40の出力は演算回路48に加えられる。この演算回路48は計測値演算部の一例であり、振幅検出部50および最低値検出部52を備えている。演算回路48は、演算回路48に入力される出力信号Doのレベル(信号強度)をメモリ部60のデータ記録部64(
図2)に記録するとともに、振幅検出部50および最低値検出部52により出力信号Doの計測を行う。演算回路48は、これらの計測結果を用いて被処理水の凝集レベルを判定し、この凝集レベルを表す凝集指標を出力する。凝集指標により表される凝集レベルはたとえば、「低レベル」、「適量レベル」、「適量または過剰レベル」または「過剰レベル」により表される。演算回路48はさらに、発光制御部54を備え、レーザ発光素子26の発光と凝集指標の演算処理に同期する制御信号(タイミング信号Ts)をタイミング回路32に出力する。
【0044】
振幅検出部50は、振幅検出手段および振幅計測手段の一例であり、振幅検出および振幅計測の両方の機能を含んでいる。振幅検出部50は、データ記録部64に記録されている出力信号Doのレベルの変曲点を検出して、その変曲点のピーク値を計測する。変曲点の検出により、振幅検出部50は出力信号Doの振幅の発生を検出する。つまり、振幅検出部50は、出力信号Doが上昇から下降に変化する第1の変曲点および下降から上昇に変化する第2の変曲点を検出し、隣接する第1の変曲点および第2の変曲点の検出により振幅の発生を検出する。振幅検出部50は、ピーク値の計測により、隣接する第1の変曲点および第2の変曲点のレベル差を求め、出力信号Doの振幅の大きさを計測する。これらの機能により振幅検出部50は、出力信号Doの振幅の発生数を振幅の大きさ(つまり振幅レンジ)毎に計測することができる。
【0045】
最低値検出部52は、データ記録部64に記録されている出力信号Doのレベルを比較して、出力信号Doの最低計測値を算出する最低値計測手段の一例である。
【0046】
演算回路48はたとえば、
図2に示すように、マイクロプロセッサなどのコンピュータを含む回路によって実現される。この演算回路48にはアナログ・ディジタル変換器(A/D)56、プロセッサ58およびメモリ部60が備えられる。A/D56は出力信号Doをディジタル信号に変換する。A/D56の出力信号は出力信号Doのレベルをディジタル値で表し、振幅検出部50および最低値検出部52のディジタル処理に用いられる。
【0047】
プロセッサ58はメモリ部60のプログラム記憶部62にあるOS(Operating System)および凝集プログラムを実行し、既述の振幅検出部50、最低値検出部52および発光制御部54として機能する。
【0048】
メモリ部60は記録部の一例であり、プログラム記憶部62、データ記録部64およびRAM(Random-Access Memory)66を備える。プログラム記憶部62にはプログラムとしてOSや既述の凝集プログラムなどが格納されている。データ記録部64には、出力信号Doのレベルが記録される。RAM66は情報処理のワークエリアに用いられる。
【0049】
プロセッサ58の演算結果は表示部67に出力される。この表示部67にはたとえば、液晶ディスプレィ(LCD)が用いられる。この表示部67にはプロセッサ58の演算に用いられる計測値や、演算結果である最低計測値や出力信号Doの振幅の発生頻度などの各種データが表示される。
【0050】
<振幅検出による凝集状態の計測原理>
【0051】
被処理水の凝集のモニタリングデータを解析した結果、出力信号Doの第1および第2の変曲点の発生頻度、つまり出力信号Doの振幅が、振幅レンジ毎に凝集状態と一定の関係にあることを見出した。振幅検出部50では、この一定の関係に着目して、変曲点を利用した凝集状態の計測を行う。既述の一定の関係については後述する。
【0053】
第1の計測原理では、計測領域18の径よりも小さい粒経を有するフロックが計測領域18に出入りする被処理水8の計測を想定している。
【0055】
図3のAおよび
図4のAはフロックの発生状態の一例を示している。
図3のAに示す発生状態では、被処理水8に高い密度または個数密度でフロック68が発生している。計測領域18は直径約1〔mm〕の円形の領域に設定されている。このような計測領域18に対して粒径が1〔mm〕以下のフロック68が発生している。
図4のAに示す発生状態では、
図3のAに示す発生状態と同様に、被処理水8に高い密度または個数密度でフロック68が発生している。
図4のAに示すフロックの発生状態では、粒径が1〔mm〕以下ではあるものの、
図3のAに示すフロック68よりも大きいフロック68が発生している。フロック68が計測領域18に出入りすれば、光の散乱状態が変化し、出力信号Doが変化する。つまり、出力信号Doの変化に基づき、フロック68の出入りを把握することができる。
【0056】
出力信号Doの波形は、フロック68の粒径および計測領域18内のフロック数によりその形状が異なる。
【0057】
粒径r〔mm〕のフロック68を含む第1の被処理水と、SS濁度が第1の被処理水と同じであり、粒経2r〔mm〕のフロック68を含む第2の被処理水を想定する。粒径r〔mm〕のフロック68の粒子数をN
r、粒径2r〔mm〕のフロック68の粒子数をN
2rとする。フロック68のSS濁度が一定であるので、粒子数NはSS濁度を単位体積で割った値に比例し、
N
r:N
2r=(πr
3)
-1:{π(2r)
3}
-1=8:1 ・・・(1)
で表すことができる。
【0058】
これに対して、粒径r〔mm〕のフロック68の散乱光を発生する表面積をS
r、粒径2r〔mm〕のフロック68の散乱光を発生する表面積をS
2rとすると、
S
r:S
2r=πr
2:π(2r)
2=1:4 ・・・(2)
で表すことができる。散乱光の強度は、計測領域18内の粒子表面積の総和で表されるとすれば、粒径2r〔mm〕、粒子数N
2rである被処理水で発生する散乱光強度の平均値は、
平均値=N
2r×S
2r=N
r/8×4S
r=1/2N
rS
r ・・・(3)
で表される。つまり、粒径r〔mm〕、粒子数N
rである被処理水で発生する散乱光強度の平均値の半分になる。
【0059】
これに対して、平均散乱光強度のレベルの変化は、計測領域18に出入りする粒子の、レーザ照射されている粒子表面積の変化に比例する。したがって、粒径2r〔mm〕の一つの粒子が計測領域18に出入りした場合の平均散乱光強度のレベルの変化は、粒径r〔mm〕の一つの粒子が計測領域18に出入りした場合の平均散乱光強度のレベルの変化の4倍になる。
【0060】
図3のBは、
図3のAに示す発生状態における出力信号Doの検波波形の一例を示し、
図4のBは、
図4のAに示す発生状態における出力信号Doの検波波形の一例を示している。
図3のBおよび
図4のBにおいて、波形の振幅AWは、フロック68の出入りによる散乱光の変化を表している。
【0061】
図3のAの発生状態では、フロック68の粒子が小さいので、
図3のBに示すように波形の振幅AWが小さく、散乱光の変化が小さい。これに対し、
図4のAの発生状態では、フロック68の粒子が大きいので、
図4のBに示すように波形の振幅AWが大きく、散乱光の変化が大きい。
【0063】
計測領域18で発生した散乱光は、散乱光受光部12に散乱光を伝達させる伝達空間において、この伝達空間中に存在する粒子に当たり、2次散乱して減衰する。散乱光受光部12に到達する散乱光の強度は、伝達空間におけるフロック非占有体積(フロック68が存在しない空間の体積)に比例すると想定する。この場合、計測領域18から散乱光受光部12までの伝達空間の体積V
dに対する、フロック非占有体積V
r、V
2rにより減衰量が左右される。
【0064】
フロック68が存在しない空間は、空間に存在する粒子体積の補数で求めることができる。フロック68の粒径がr〔mm〕である場合のフロック非占有体積がV
rであり、粒径が2r〔mm〕である場合のフロック非占有体積がV
2rであるとすれば、
V
r:V
2r=(V
d−dv
r×N
r):(V
d−dv
2r×N
2r) ・・・(4)
で表すことができる。
【0065】
dv
rおよびdv
2rはフロック68の一つあたりの体積であり、
dv
r:dv
2r=πr
3:π(2r)
3=1:8 ・・・(5)
で表すことができる。
【0066】
散乱光受光部12に到達する散乱光の強度は、計測領域18で発生する散乱光の強度に減衰率を乗じたものに比例し、発生する散乱光の強度はフロック68の表面積S
r、S
2rに比例することが想定されるので、計測領域18に出入りする粒子1個により発生する受光レベルの変化量ΔP
r、ΔP
2rは、
ΔP
r:ΔP
2r=S
r×(V
d−dv
r×N
r):S
2r×(V
d−dv
2r×N
2r)
=S
r×(V
d−dv
r×N
r):4S
r×(V
d−8dv
r×8
-1N
r)
=S
r×(V
d−dv
r×N
r):4S
r×(V
d−dv
r×N
r)
=1:4
=r
2:(2r)
2 ・・・(6)
となる。数式(6)は、計測領域18に出入りする粒子により発生する受光レベルの変化量ΔP
r、ΔP
2rは、検出しようとするフロック68の粒径の2乗に比例して変化することを表している。つまり、凝集が進行しフロックの粒径が大きくなるにつれて、大きな受光レベルの変化の発生頻度が増えることになる。
【0068】
図5のAは出力信号Doに大きな振幅が出現する確率(発生率)を集計したグラフである。この大きな振幅の計測電圧範囲は、フロック68の出入りによる変化を想定して200〔mV〕〜1800〔mV〕に設定している。発生率は、1分(30サンプル)単位で集計した。計測には、凝集状態が既知のサンプルを使用している。各サンプルの凝集状態は、凝集状態を表す凝集状態指標Dにより、D0、D1、D2・・・Dnに分けられる。この凝集状態指標Dは、サンプル中のフロックの粒径Dfに関連し、D1〜D4ではサンプル中のフロックの粒径Dfはおおよそ以下のようになる。
D1: Df=0.3〜0.5〔mm〕
D2: Df=0.5〜0.75〔mm〕
D3: Df=0.75〜1.0〔mm〕
D4: Df=1.0〜1.25〔mm〕
【0069】
図5のAに示すグラフの横軸は、凝集状態指標Dの値を10倍にして示している。つまり、横軸の「10」は「D1」、「20」は「D2」、「30」は「D3」、「40」は「D4」である。
【0070】
図5のAに示す2次曲線は、集計結果に対し最も相関値(R
2値)が高くなる曲線である。発生率(y)と凝集状態指標Dの10倍値(x)との関係は、y=0.0007x
2−0.0154x+0.0988であり、相関値R
2=0.9186である。
【0071】
振幅AWの発生率と凝集状態指標Dの10倍値との関係は、2次関数になっている。横軸の凝集状態指標Dの10倍値が粒径Dfに対して比例関係であれば、
図5のAに示す集計結果は、既述の数式(6)で示される論理に符合している。
【0072】
フロック68の粒径が計測領域18の範囲内に収まる大きさである場合において、出力信号Doに大きな振幅が出現する確率(発生率)と凝集状態指標Dは相関を有しているので、振幅AWの発生率を検出することで、被処理水の凝集状態指標Dおよびフロック68の粒径Drを推定することができる。
【0073】
なお、
図5のAは、理論に基づき計測データに2次近似を行い、2次曲線処理の結果を示している。これに限定されるものではなく、計測データに3次以上の近似を行い、3次以上の曲線で処理してもよい。
図5のBは、計測データに3次近似を行い、3次曲線処理の結果を示している。この3次近似では、発生率(y)と凝集状態指標Dの10倍値(x)との関係をy=−2×10
-5x
3+0.002x
2−0.0476x+0.3533で表すことができ、相関値R
2は0.9192となる。
【0074】
図5のCは、計測データに4次近似を行い、4次曲線処理の結果を示している。この4次近似では、発生率(y)と凝集状態指標Dの10倍値(x)との関係をy=−3×10
-6x
4+0.0003x
3−0.0108x
2+0.1639x−0.9066で表すことができ、相関値R
2は0.9199となる。
【0075】
3次近似では2次近似と比較して、相関値R
2が0.918から0.919に上昇し、4次近似では、相関値R
2が0.918から0.920に上昇する。3次近似または4次近似を用いることで、フロック68がわずかな透過性を有するなどの、送受光感度に関する副要素に対応することができる。
【0076】
図5のA〜
図5のCに示されているように、凝集状態指標Dが小さい被処理水8では、出力信号Doの振幅の発生率が少なく、凝集状態指標Dが上昇するにつれて出力信号Doの振幅の発生率も上昇する。つまり、出力信号Doの振幅の発生率に基づき、凝集状態を判定することができる。
【0078】
第2の計測原理では、計測領域18の径よりも大きい粒経を有するフロックが計測領域18に出入りする被処理水8の計測を想定している。つまり、この第2の計測原理では、計測領域18の径を超えるフロックが共存する被処理水8を対象としている。
【0079】
〔計測領域18の径を超えるフロックが共存する場合の計測原理〕
【0080】
計測領域18の径を超える粒径を有するフロック68が存在するとき、フロック68の全体を計測領域18内に収容することができない場合が発生する。この場合、散乱光は計測領域18の全体から発生するため、散乱光およびその振幅が飽和する。つまり、散乱光の振幅で粒径を判断することが難しくなる。
【0081】
図6のAおよび
図7のAは、1〔mm〕以上のフロックの発生状態の一例を示している。計測領域18が直径約1〔mm〕の円形であり、フロック68が粒径で1〔mm〕よりも大きく成長した状態であれば、
図6のAに示すように、フロック68の一部が計測領域18の全体を占める場合が発生する。このような発生状態では、
図6のBに示すように、散乱光が飽和する。つまり、波形の振幅AWの上限は散乱光の飽和値となる。
【0082】
フロック68が移動すればたとえば、
図7のAに示す状態に移行する。フロック68の粒径が大きい場合、粒経が小さな場合に比べて隣り合うフロック68間に比較的大きな隙間が形成されることになる。したがって、
図7のAに示す状態では、大きなフロック68の隙間に存在する小さなフロック68が計測領域18に出入りし、たとえば
図7のBに示すように出力信号Doの強度が変化する。したがって、波形の振幅AWを集計することで、大きなフロック68の隙間にあるフロック68の粒径情報を取得することができる。
【0083】
図7のAおよびBに示すフロック68の発生状態では、フロック68の出入りによる振幅の出現率を一定の期間監視し、監視結果を集計するとすれば、
図8のA〜Cに示すように、フロック68の粒径毎の出現率は、正規分布になることが想定される。
図8のAは凝集レベルが低いときの分布の一例であり、
図8のBは凝集レベルが中程度のときの分布の一例であり、
図8のCは凝集レベルが高いときの分布の一例であり、凝集が進行するにつれて、フロック68の粒経が大きくなる。一定のフロック68の粒経が一定の大きさを超えると、波形の振幅AWが飽和することとなる。そこで、フロック68の粒径毎の出現率が正規分布になるとの想定の下、(1) 出現率が最も高い粒径、(2) 特定の範囲の粒径の出現率、または(3) 出現率が最も高い粒径および特定の範囲の粒径の出現率、などを計測することで凝集状態を評価することができる。
図8のAに示すように低い凝集状態から、
図8のCに示すように高い凝集状態に進むとすれば、フロック数が減少するとともに大きなフロック68の出入りにより波形の振幅AWが飽和している時間が長くなるが、集計時間を長くすることで、フロック数の減少および波形の振幅AWの飽和による不都合を除去することができる。
【0084】
<出力信号Doの変曲点の発生頻度と凝集状態指標Dの関係性>
【0085】
「振幅検出による凝集状態の計測原理」で既述した、出力信号Doの第1および第2の変曲点の発生頻度と凝集状態との一定の関係に関連して、以下の実験を示す。
【0087】
カオリン等を含む無機系の微細な微粒子をSSとして3〜4%含有する被処理水8に対してその凝集状態の計測を行い、得られた結果を評価する。計測にあたり、レーザ光照射部10の発光条件は、発光時間:0.2秒/回、発光間隔:2秒とした。データ集計時間は10秒とし、データ収集時間は4時間とした。被処理水8は、凝集のレベルが既知である以下に示す7段階の被処理水8とする。
【0088】
レベル0: 凝集状態指標DのD0に相当するレベル
レベル1: 凝集状態指標DのD1に相当するレベル
レベル2: 凝集状態指標DのD2に相当し、D1よりのレベル(以下「D2A」という)。
レベル3: 凝集状態指標DのD2に相当し、D3よりのレベル(以下「D2B」という)。
レベル4: 凝集状態指標DのD3に相当し、D2よりのレベル(以下「D3A」という)。
レベル5: 凝集状態指標DのD3に相当し、D4よりのレベル(以下「D3B」という)。
レベル6: 凝集状態指標DのD4に相当するレベル
【0090】
図9のA〜Cおよび
図10のA〜Cは、凝集のレベルが異なる被処理水の出力信号Doの振幅の発生頻度を一定の振幅レンジ毎に表している。
図9のAは、0〔mV〕以上、200〔mV〕未満の振幅の発生頻度を、
図9のBは、200〔mV〕以上、400〔mV〕未満の振幅の発生頻度を、
図9のCは、400〔mV〕以上、600〔mV〕未満の振幅の発生頻度を表している。
図10のAは、600〔mV〕以上、800〔mV〕未満の振幅の発生頻度を、
図10のBは、800〔mV〕以上、1000〔mV〕未満の振幅の発生頻度を、
図10のCは、1000〔mV〕以上の振幅の発生頻度を表している。
【0091】
図11は、
図9および
図10に示す発生頻度を以下のa〜fに示す振幅レンジ毎に分解して示している。
a: 0〔mV〕以上、200〔mV〕未満の振幅
b: 200〔mV〕以上、400〔mV〕未満の振幅
c: 400〔mV〕以上、600〔mV〕未満の振幅
d: 600〔mV〕以上、800〔mV〕未満の振幅
e: 800〔mV〕以上、1000〔mV〕未満の振幅
f: 1000〔mV〕以上の振幅
【0092】
0〔mV〕以上、200〔mV〕未満の振幅の信号では、
図9のAに示すように、凝集不良状態(つまりレベル0の状態)に近づくほど振幅の発生頻度が高くなり、かつ振幅の発生頻度が分散している。これに対し、フロックが大きく凝集が良好な状態(つまりレベル6の状態)では、振幅の発生頻度の分散が小さくなる。
【0093】
このような0〔mV〕以上、200〔mV〕未満の振幅の信号に対し、200〔mV〕以上、400〔mV〕未満の振幅の信号では、
図9のBに示すように、フロックが大きく凝集が良好な状態になるに従い、振幅の発生頻度が高くなる。また
図11に示すように、レベル0〜レベル6の各レベルにおいて、0〔mV〕以上、200〔mV〕未満の振幅の信号に比べて、信号の分散が小さくなる。400〔mV〕以上の振幅の信号においても、200〔mV〕以上、400〔mV〕未満の振幅の信号と同様の傾向がみられる。
【0094】
凝集の各レベル0〜6を200〔mV〕以上、400〔mV〕未満の振幅の発生頻度を平均化してグラフにすると、表1のように表すことができる。
【0096】
また凝集の各レベル0〜6を400〔mV〕以上、600〔mV〕未満の振幅の発生頻度を平均化してグラフにすると、表2のように表すことができる。
【0098】
200〔mV〕以上、400〔mV〕未満の振幅の発生頻度および400〔mV〕以上、600〔mV〕未満の振幅の発生頻度と同様に、凝集の各レベル0〜6を600〔mV〕以上の振幅の発生頻度を用いて表すことも可能である。つまり、200〔mV〕以上の振幅の発生頻度を用いて、被処理水8の凝集状態指標Dを判定することができる。したがって、凝集状態指標Dを基に凝集状態を判定し、これらの凝集状態を基に凝集状態を制御することも可能である。
【0099】
この実験では、200〔mV〕を閾値として発生頻度の発生傾向が転換している。つまり、200〔mV〕未満の振幅では分散が大きいのに対し、200〔mV〕以上の振幅では分散が小さくなっている。また、200〔mV〕以上の振幅では、凝集が進むにつれて振幅の発生頻度が高くなり、発生頻度と凝集状態間に相関があるのに対し、200〔mV〕未満の振幅ではこのような相関がみられない。凝集状態の計測に用いる振幅は、既述のように発生傾向が転換する閾値以上の振幅であればよく、200〔mV〕以上の振幅に限定されるものではない。
【0100】
<最低値検出による凝集状態の計測原理>
【0101】
凝集槽6内の被処理水8では凝集剤の薬注および攪拌によって凝集処理が促進する。この攪拌に伴い、計測領域18に微小コロイド粒子が移動すると、微小コロイド粒子からの散乱光が変動する。この変動周期は、計測領域18を粒子と見做して微小コロイド粒子との間に生じる衝突回数から想定し、概算することができる。ここで、計測領域18を半径Rの球体、微小コロイド粒子を半径rの球体で近似すれば、衝突断面積Qoは、
Qo=π(R+r)
2 ・・・(7)
で表すことができる。この式から明らかなように、衝突断面積Qoは半径Rと半径rの加算値の二乗に比例する。
【0102】
つまり、半径Rの計測領域18に一定方向から平均速度v〔m/s〕でコロイド粒子密度N〔個/m
3〕の平均半径rの粒子が通過していく際の流れに垂直な断面積を想定すれば、微小コロイド粒子が単位時間当たり計測領域18に入る回数νは、
ν=NQov ・・・(8)
で表すことができる。微小コロイド粒子が計測領域18から出る場合にも同様に、変動を生じ、散乱光強度を微分した値の周期は、回数νの2倍の値となる。
【0103】
そして、散乱光強度が微小コロイド粒子の粒径のn乗に比例すると仮定すれば、多重散乱を無視した場合、微小コロイド粒子の1個の移動に伴う散乱光強度の変動Aは、
A=Aor
n ・・・(9)
となる。なお、Aoは、測定系に依存する定数であり、標準試料を用いて校正される値である。
【0104】
ここで、凝集前の微小コロイド粒子は、半径rが小さく、粒子密度Nが大きいので、散乱光の微小な変動が短い周期で生じることとなる。
【0105】
したがって、検波回路40で変調周波数成分の検波を行えば、その出力波形はバンドパスフィルタ44またはハイパスフィルタを通過するのと等価な信号処理を行える。つまり、バンドパスフィルタ44のカットオフ周波数を適当に選べば、この変調周波数成分による変動成分が取り除かれた出力信号Doを検出できる。
【0106】
ところで、被処理水8から凝集したコロイド(凝集コロイド)では、計測領域18に出入りする際の変動が大きく、この変動の平均周期が長くなる。そして、凝集コロイドの密度と計測領域18の体積との積が1より小さい場合には、検波回路40の検波後の出力波形の最低値が未凝集コロイドの散乱に対応することになる。
【0107】
検波回路40で得られる出力信号Doには、未凝集コロイドの散乱光とこれ以外の散乱光とによる信号が含まれており、これらは信号振幅レベルによって被処理水8中の凝集コロイドによる散乱光と未凝集コロイドによる散乱光とに区別することができる。したがって、この出力信号Doから未凝集コロイドによる散乱光に対応する振幅レベルの信号成分を取り出し、被処理水8の処理状態であるコロイドの凝集状態を検出することが可能であり、コロイドの凝集状態を把握することができる。
【0109】
レーザ光発光部20より照射されたレーザ光は、その光路上に存在するフロック68に当たり散乱光を発生させる。散乱光の発生地点から散乱光受光部12までの平均粒子密度がほぼ一定と仮定すれば、フロックの密度が高い場合(フロックが小さい場合)には、散乱光は粒子と発光面の距離の変化が小さく、大きなフロックが発生している場合に比べて出力信号Doの振幅が小さくなる。逆に、フロックが大きい場合には、粒子と発光面の距離の変化が大きくなり、小さなフロックの場合に比べて出力信号Doの振幅が大きくなる。
【0110】
このような関係は、レーザ光照射部10から照射されたレーザ光が照射されてすぐにフロックに当たるような、フロック密度が高い状態で成立する。このとき、信号強度の最低値は、フロック間の濁度ではなく、フロックの大きさに係わる情報を持つことになる。つまり、フロックが大きいときには照射面積が大きくなるので、レーザ光がフロック表面に当たって発生する散乱光のレベルは高くなり、且つフロックが大きくなったことによってフロックの隙間が拡大し、散乱光のレベルが高くなる機会が多くなる。逆にフロックが小さく、高密度になると、散乱光により照射されるフロックの表面積が小さくなることで散乱光のレベルが小さくなり、且つフロックの隙間が小さくなることによって散乱光受光部12に到達するまでの散乱光の減衰率が高くなり、受光レベルは低くなる。よって、振幅レベルと最低値のレベルを表すと、表3のようになる。
【0112】
表3によれば、出力信号Doの振幅レベルが一定値以上である場合には、凝集剤の薬注量が適量または過剰であると判断することができる。この場合、凝集指標として「適量」、「適量または過剰」または「過剰」を出力し、凝集剤の薬注量を維持し、または減少させることができる。
【0113】
振幅レベルが一定値未満である場合には、凝集剤の薬注量が少ないと判断することができる。この場合、凝集指標として「低」を出力し、凝集剤の薬注量を増加させることができる。なお、この振幅レベルは、既述の出力信号Doに大きな振幅が出現する確率(発生率)および出力信号Doの振幅の発生頻度に対応する指標である。
【0114】
振幅レベルにより凝集が、「低」、「適量」、「適量または過剰」または「過剰」であることを判断する場合に限らず、出力信号Doの最低値レベルによる判断を組み合わせて、凝集指標を判断するようにしてもよい。複数の計測手法を組み合わせることで、凝集状態をより詳細に判断することができる。
【0115】
また、振幅レベルの計測による薬注制御と、最低値レベルの計測による薬注制御とを切り替えて、凝集状態を判断することもできる。この場合、フロック間の隙間を検出することが期待できないほどSS濃度が高く、かつ凝集フロック濃度が高い場合に振幅レベルで薬注を制御し、表3のケース5のように、最低値レベルで薬注を制御可能な場合には、最低値レベルでの制御を行うようにすればよい。
【0117】
図12は、モニタリングに用いる信号の処理を示している。この信号処理において、タイミング信号Tsは、
図12のAに示すように、一定時間Tの間隔(周期)で一定のパルス幅twを持つパルス信号である。この場合、Hレベル区間(=パルス幅tw)がレーザ光の発光時間であり、Lレベル区間(=T−tw)がレーザ光の非発光時間である。一例として、T=2〔秒〕、tw=0.2〔秒〕に設定される。この場合、T−tw=2〔秒〕に設定してもよい。
【0118】
変調信号Msは、
図12のBに示すように、一定の周波数fおよび同一振幅の周期信号である。周波数fは、70〜150〔kHz〕のいずれかを選択すればよい。
【0119】
発光信号Drは、
図12のCに示すように、変調信号Msでタイミング信号Tsを変調するAM変調回路30の出力信号である。つまり、この発光信号Drは、タイミング信号TsのHレベル区間のパルス幅twに変調信号Msを重畳した周期信号である。つまり、発光信号Drは、パルス幅twが変調信号Msの振幅で変化し、タイミング信号Tsで間欠する周期信号である。
【0120】
このような発光信号Drを用いれば、レーザ発光素子26から発光信号Drによる発光態様を持つレーザ光が得られる。
【0121】
このレーザ光をレーザ光照射部10から計測領域18に照射すると、計測領域18に滞在する被処理水8中の粒子から散乱光が得られる。この散乱光が散乱光受光部12に受光される。
【0122】
そして、光電変換回路38の光電変換、フィルタ処理および増幅を経て、増幅器46の出力側には
図12のDに示すように、受光信号Eoが得られる。この受光信号Eoは、タイミング信号Tsで間欠し、変調信号Msの周波数を持ち、散乱光の強度に応じたレベルの振幅を持っている。
【0123】
この受光信号Eoを検波回路40で検波すると、
図12のEに示すように、タイミング信号Tsで間欠し、散乱光の強度に応じた直流レベルを持つ出力信号Doが得られる。この受光信号Eoの信号処理ではたとえば、バンドパスフィルタ44の出力を半波整流して検波した後、その検波出力のボトムピークをピークホールドして出力信号Doが得られる。
【0124】
したがって、演算回路48では、出力信号DoからA/D変換を経て、既述の振幅および信号レベルの最低値が計測される。
【0126】
図13は、凝集モニタリングの処理手順の一例を示している。この処理手順は、本発明の凝集モニタリング方法の一例である。この処理手順は、演算回路48に含まれるプロセッサ58およびメモリ部60を含むコンピューティング処理(情報処理)によって実行される。
【0127】
この処理手順では、条件設定工程において、凝集モニタリングの条件設定を行う(S1)。この条件設定ではたとえば、振幅レベルの大小を判断する閾値TA、出力信号Doのレベルが低以下または中以上であることを判断する閾値TL1、および出力信号Doのレベルが中以下または高以上であることを判断する閾値TL2を設定する。閾値TL1、TL2は、閾値TL1<閾値TL2に設定され、閾値TA、TL1、TL2は、被処理水のSS濁度および光電変換回路38での信号の増幅率に応じて適宜に設定される。
【0128】
この条件設定の後、凝集モニタリングの開始か否かを判断する(S2)。モニタリングを開始すると(S2のYES)、レーザ発光工程に移行してレーザ発光素子26を駆動し(S3)、レーザ光照射工程に移行する(S4)。レーザ光照射工程では既述したように、計測領域18にレーザ光を照射する。
【0129】
散乱光受光工程(S5)では既述したように、計測領域18から散乱光を受光し、散乱光の強度を表すレベルを持つ受光信号に変換する。
【0130】
信号処理工程(S6)では既述したように、振幅の発生率および受光レベルの最低値を計測する。これらの計測値は計測値毎に判断される。なお振幅の発生率は、振幅の発生頻度として計測してもよい。
【0131】
振幅の発生率が閾値TA未満であるかが判断される(S7)。振幅の発生率が閾値TA未満であれば(S7のYES)、被処理水の凝集が低レベルであるので、「低」レベルを表す凝集指標を出力する(S8)。このような判断により、表3に示すケース1およびケース4を判断することができる。凝集レベルが低いので、斯かる凝集指標の出力下では、薬注量を増加させる制御が行われることになる。
【0132】
振幅の発生率が閾値TA以上であれば(S7のNO)、被処理水の凝集が適量レベルまたは過剰レベルであるので、受光レベルの最低値が閾値TL1未満であるかが判断される(S9)。
【0133】
受光レベルの最低値が閾値TL1未満であれば(S9のYES)、フロック68間のSS濁度が計測できている状態であるので、「適量または過剰」レベルを表す凝集指標を出力する(S10)。このような判断により、表3に示すケース5を判断することができる。フロック68間のSS濁度が計測できている状態であるので、斯かる凝集指標の出力下では、受光レベルの最低値に基づく薬注制御が行われる。
【0134】
受光レベルの最低値が閾値TL1以上であれば(S9のNO)、受光レベルの最低値が閾値TL2未満であるかが判断される(S11)。
【0135】
受光レベルの最低値が閾値TL2未満であれば(S11のYES)、「適量」レベルを表す凝集指標を出力する(S12)。このような判断により、表3に示すケース2を判断することができる。斯かる凝集指標の出力下では、薬注量を維持させる制御が行われることになる。
【0136】
受光レベルの最低値が閾値TL2以上であれば(S11のNO)、「過剰」レベルを表す凝集指標を出力する(S13)。このような判断により、表3に示すケース3を判断することができる。斯かる凝集指標の出力下では、薬注量を減少させる制御が行われることになる。
【0137】
<第1の実施の形態の作用および効果>
【0138】
この第1の実施の形態によれば、次のような作用および効果が得られる。
【0139】
(1) 演算回路48が、最低値を計測する最低値検出部52とともに、出力信号Doの信号波形の変化から、波形の振幅を計測する振幅検出部50を備え、振幅検出部50の計測値が一定以上の値であるときに、その振幅を基に指標を算出し、該最低値とともに又は該最低値の演算を行うことで凝集に関わる指標を出力する。斯かる構成を備えて、振幅が大きいときには凝集作用によるフロックが大きいと判断する。つまり、薬注量は十分であるか過剰気味であると判断する。振幅が小さいときにはフロックが小さいと判断する。つまり、薬注量は不足気味であると判断する。斯かる判断により、薬注量を任意の状態に制御することができる。
【0140】
(2) 最低値検出部52による凝集指標の計測では、計測領域18に大きなフロックの存在しない状態、つまりフロックに取り込まれていないSS成分のみが存在する状態で計測する必要があるが、振幅検出部50による計測を行うことにより、または最低値検出部52による計測と振幅検出部50による計測を組み合わせることにより、計測領域18に大きなフロックが存在する場合であっても凝集状態を計測することができる。
【0141】
(3) 振幅検出部50を備えることにより、計測領域18に大きなフロックが存在する場合でも凝集状態を計測することができるので、レーザ発光素子26の発光時間を短くすることでレーザ発光素子26の延命効果を得ることができる。たとえば、一定時間T=2〔秒〕の間隔で、発光時間t=0.2〔秒〕間の発光により被処理水の計測を行うことができる。
【0142】
(4) 上記実施の形態では、200〔mV〕以上の振幅を用いて、指標を算出したが、凝集が進むにつれて発生頻度が高くなる傾向を有する閾値以上の特定の振幅であればどのような振幅を用いて計測を行ってもよい。閾値以上の振幅であれば何れの振幅であっても発生率または発生頻度を用いて凝集に関わる指標を得ることができ、凝集中の被処理水に多量のフロックが発生し、フロック密度が高くなっても、被処理水の処理状態の計測を安定して行うことができる。また、閾値以上の全ての振幅を用いて計測を行えば、発生頻度の母数を大きくすることができ、短時間での凝集状態の計測が可能になる。この結果、凝集中の被処理水の処理状態をリアルタイムで正確に把握することができ、その処理状態に応じた凝集剤の薬注量を選択することができる。
【0144】
図14は、第2の実施の形態に係る凝集システムを示している。この凝集システム72は、第1の実施の形態に係る凝集モニタリング装置2を用いた凝集処理システムの一例である。
図14において、
図1と同一部分には同一符号を付し、その説明を割愛する。
【0145】
凝集モニタリング装置2では、凝集槽6で凝集処理が行われている被処理水8の凝集指標が算出され、制御部74に提供される。この凝集指標は、凝集槽6内で凝集処理される被処理水8の処理状態から得られた凝集の指標を示している。
【0146】
この制御部74は凝集剤の薬注量や攪拌制御などの凝集槽6における被処理水8の凝集処理を制御する。凝集槽6の被処理水8には薬注部76から凝集剤が注入される。凝集槽6に設置された攪拌器78は駆動部80によって駆動され、この駆動が制御部74によって制御される。
【0147】
制御部74はたとえば、コンピュータによって構成され、凝集モニタリング装置2から提供される凝集指標を用いて凝集剤の薬注量が算出される。
【0149】
図15は、凝集処理の処理手順の一例を示している。この処理手順では、凝集処理の開始か否かを判断し(S21)、その判断結果に応じて凝集処理を開始する。凝集処理を開始すると(S21のYES)、凝集槽6の被処理水8の処理状態について凝集モニタリングを実施する(S22)。この凝集モニタリングは凝集モニタリング装置2によって実施される。この処理内容の詳細は割愛する。この凝集モニタリング装置2では被処理水8の処理状態を表す凝集指標が算出され(S23)、凝集システム72の制御部74に提供される。
【0150】
凝集指標を受けると、制御部74では凝集指標に基づき凝集剤薬注量が選定される(S24)。これにより、薬注部76から凝集剤の薬注が行われる(S25)。
【0151】
この凝集処理を終了するか否かを監視し(S26)、凝集処理を終了しない場合には(S26のNO)、S22に戻り、S22〜S26の処理により継続した凝集処理が実施される。
【0152】
そして、凝集処理を終了する場合には(S26のYES)、凝集モニタリングを終了し(S27)、凝集処理を終了する。
【0153】
<第2の実施の形態の作用および効果>
【0154】
この第2の実施の形態によれば、次のような機能および効果が得られる。
【0155】
(1) 凝集処理の状態がリアルタイムで把握され、フロックの有無にかかわらずに散乱光の計測値から凝集指標を生成し薬注制御に採用するので、安定した薬注制御が実現される。
【0156】
(2) 被処理水の凝集条件や凝集剤の薬注量が求められる。
【0157】
(3) 被処理水に対する薬注量の適正化とともに、安定した凝集処理が行え、凝集効率を高めることができる。
【0158】
(4) 凝集槽6の処理状態の測定に基づく凝集システムの補償機能を維持することができ、過剰な凝集剤の投与を防止して環境負荷への影響を回避でき、信頼性の高い凝集処理を実現できる。
【0159】
(5) 食品製造工場の排水など、排水種が頻繁に変化する被処理水にあっても、その排水種に対応した的確な凝集処理を行うことができ、環境負荷への影響を回避できる。
【0161】
(1) 上記実施の形態では、所定の時間間隔で発光しかつ所定周波数で振幅変調が施されたレーザ光を用いているが、レーザ発光素子の寿命を考慮することなく、濁度の計測を優先する場合には所定周波数で振幅変調が施されたレーザ光を用いてもよい。この場合、複数の最低レベルの信号を連続した受光信号から所定のタイミングで抽出すればよい。
【0162】
(2) 上記実施の形態において、バンドパスフィルタ44および増幅器46はディジタル処理で実現してもよい。
【0163】
(3) 上記実施の形態では、凝集モニタリング装置2で処理状態をモニタリングする被処理水8として浄水、工業用水、排水などを例示しているが、この被処理水8は採石場から廃出される高濃度の無機排水や果汁などの飲用液体であってもよい。
【0164】
(4) 上記実施の形態では凝集槽6が備えられ、凝集槽6中の被処理水8の凝集指標を算出する例を示したが、被処理水8の液送ラインに備えられるライン混合装置により被処理水8の凝集処理を行うシステムでは、ライン混合装置の下流に被処理水槽を備えて凝集モニタリングを行うようにしてもよい。つまり、凝集処理が行われた被処理水8を被処理水槽に溜めて、被処理水8の凝集指標を算出するようにしてもよい。
【0165】
以上説明したように、本発明の凝集モニタリング装置、凝集モニタリング方法および凝集システムの最も好ましい実施の形態等について説明した。本発明は、上記記載に限定されるものではない。特許請求の範囲に記載され、または発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能であることは勿論である。斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。