特許第6281652号(P6281652)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6281652
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】好気性生物処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/12 20060101AFI20180208BHJP
   C02F 3/08 20060101ALI20180208BHJP
   B01F 3/04 20060101ALI20180208BHJP
   C02F 3/20 20060101ALI20180208BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20180208BHJP
   B01F 1/00 20060101ALI20180208BHJP
   B01F 5/06 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   C02F3/12 M
   C02F3/08 B
   B01F3/04 Z
   C02F3/20 Z
   C02F1/44 Z
   B01F1/00 A
   B01F5/06
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-51090(P2017-51090)
(22)【出願日】2017年3月16日
【審査請求日】2017年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】東 ひろみ
(72)【発明者】
【氏名】小林 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】深瀬 哲朗
【審査官】 松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−034649(JP,A)
【文献】 特開平05−068996(JP,A)
【文献】 特開昭63−264127(JP,A)
【文献】 特開2008−168201(JP,A)
【文献】 特開2006−101805(JP,A)
【文献】 特開2006−094748(JP,A)
【文献】 特開2006−087310(JP,A)
【文献】 特表2004−505752(JP,A)
【文献】 特開2006−289343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/12
C02F 3/14− 3/26
B01F 1/00− 5/26
B01D 53/22
B01D 61/00− 71/82
C02F 1/44
B01D 53/14− 53/18
B01D 53/34− 53/73
B01D 53/74− 53/85
B01D 53/92
B01D 53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された第1ないし第n(nは2以上)の反応槽を備え、各反応槽内で好気性生物処理を行う好気性生物処理装置において、
少なくとも第1反応槽は、反応槽内に配置された、非多孔質の酸素透過膜によって酸素を被処理水に溶解させるMABR反応槽であり、
該被処理水は、揮発性物質又は臭気の発生する物質を含む有機性廃水であり、
少なくとも最終反応槽はMABR以外の反応槽であることを特徴とする好気性生物処理装置。
【請求項2】
請求項1において、前記MABR以外の反応槽は、汚泥浮遊反応槽又は担体流動反応槽であることを特徴とする好気性生物処理装置。
【請求項3】
反応槽内で好気性生物処理を行う好気性生物処理装置において、
該反応槽はプラグフロー反応槽であり、該反応槽内の被処理水流入側は、非多孔質の酸素透過膜によって酸素を該反応槽内の被処理水に溶解させるMABR方式となっており、
該被処理水は、揮発性物質又は臭気の発生する物質を含む有機性廃水であり、
該反応槽の処理水出口側は、MABR以外の処理方式となっていることを特徴とする好気性生物処理装置。
【請求項4】
請求項3において、前記反応槽の処理水出口側は、汚泥浮遊反応方式又は担体流動反応方式となっていることを特徴とする好気性生物処理装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記酸素透過膜は、酸素含有ガスが送風される中空糸膜であり、該酸素含有ガスの送風圧力が、該中空糸膜の圧力損失より5〜20%高い圧力であることを特徴とする好気性生物処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性物質や臭気の発生する物質を含む有機性廃水を好気性生物処理するのに好適な好気性生物処理装置に係り、特に酸素透過膜を用いて反応槽内の被処理水に酸素を溶解させるようにしたMABR(メンブレンエアレーションバイオリアクター)方式を採用した好気性生物処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発生揮発性物質や臭気の発生する物質を含む有機性廃水を生物処理する場合、通常は臭気を防止するため、完全混合の反応槽を使用する。しかし、完全混合の反応槽では反応速度が極端に小さくなるために、滞留時間が長い大きな反応槽が必要である。また、完全混合の反応槽でも水の片流れや部分的な曝気強度の差などから、臭気物質の揮発を完全に防止するのは難しい。
【0003】
反応速度を上げ槽容積を小さくするため、複数の反応槽を直列接続した多段反応槽等が用いられる。しかし、この場合、第1槽目の反応槽では臭気物質の分解が終了していないため、残存している臭気物質の一部が曝気によって揮発し、臭気が発生したり、有毒物質が揮散する。プラグフロー型の反応槽の場合も同様である。
【0004】
MABR方式による好気性生物処理装置においては、酸素透過膜によって被処理水中に酸素を溶解させて好気性生物処理を行う。酸素透過膜としては特許文献1のように中空糸膜が用いられることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4907992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、揮発性物質や臭気の発生する物質を含む有機性廃水であっても、臭気の発生や有害物質の揮発なく、好気性生物処理することができる好気性生物処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は次を要旨とする。
【0008】
[1] 直列に接続された第1ないし第n(nは2以上)の反応槽を備え、各反応槽内で好気性生物処理を行う好気性生物処理装置において、少なくとも第1反応槽は、反応槽内に配置された、非多孔質の酸素透過膜によって酸素を被処理水に溶解させるMABR反応槽であり、該被処理水は、揮発性物質又は臭気の発生する物質を含む有機性廃水であり、少なくとも最終反応槽はMABR以外の反応槽であることを特徴とする好気性生物処理装置。
【0009】
[2] [1]において、前記MABR以外の反応槽は、汚泥浮遊反応槽又は担体流動反応槽であることを特徴とする好気性生物処理装置。
【0010】
[3] 反応槽内で好気性生物処理を行う好気性生物処理装置において該反応槽はプラグフロー反応槽であり、該反応槽内の被処理水流入側は、非多孔質の酸素透過膜によって酸素を該反応槽内の被処理水に溶解させるMABR方式となっており、、該被処理水は、揮発性物質又は臭気の発生する物質を含む有機性廃水であり、該反応槽の処理水出口側は、MABR以外の処理方式となっていることを特徴とする好気性生物処理装置。
[4] [3]において、前記反応槽の処理水出口側は、汚泥浮遊反応方式又は担体流動反応方式となっていることを特徴とする好気性生物処理装置。
[5] [1]ないし[4]のいずれかにおいて、前記酸素透過膜は、酸素含有ガスが送風される中空糸膜であり、該酸素含有ガスの送風圧力が、該中空糸膜の圧力損失より5〜20%高い圧力であることを特徴とする好気性生物処理装置。
【発明の効果】
【0011】
MABRは気泡の発生なく酸素を溶解できるため、反応槽から揮発性物質が排気中に気散することが無い。しかし、MABRは、極低濃度のBOD除去には不向きであるため、多段反応槽の最終槽にMABRを設置すると大きな反応槽が必要となり場所、コストの点で不利になる。これらの点を考慮して、揮発性物質、臭気原因物質の分解が終了する多段反応槽の前半、もしくは最終段を除く反応槽をMABRとし、最終槽の仕上げのBOD除去槽をMABR以外の生物処理とすることにより、効率的な、臭気発生及び揮発性物質の揮発のない生物処理が可能となる。プラグフローの反応槽の前半部分をMABR、後半をMABR以外の生物処理とする場合も同様である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の好気性生物処理装置の模式的な縦断面図である。
図2】実施の形態で用いられる生物活性炭処理装置の構成図である。
図3】実施の形態で用いられる生物活性炭処理装置の縦断面図である。
図4】実施の形態で用いられる生物活性炭処理装置の縦断面図である。
図5】実施の形態で用いられる生物活性炭処理装置の縦断面図である。
図6】実施の形態で用いられる生物活性炭処理装置の縦断面図である。
図7】(a)は酸素供給透過膜モジュールの側面図、(b)は酸素供給透過膜モジュールの斜視図である。
図8】中空糸膜モジュールの正面図である。
図9】中空糸膜の配列を説明する斜視図である。
図10】(a)は中空糸膜モジュールにおける中空糸膜の配列を示す正面図、(b)はその側面図である。
図11】中空糸膜モジュールの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明装置は、臭気の発生する物質、例えばゴミ処理場、下水処理場、パルプ製造工場から排出される、揮発性悪臭物質(アンモニアや硫化水素等の悪臭防止法に指定される22物質:「四訂版ハンドブック悪臭防止法(平成13年8月、悪臭法令研究会編著、ぎょうせい発行)」)や、塩化ビニル樹脂製造工場から排出される、揮発性毒物(ビニルクロライド、トリクロロエチレン等)、半導体工場から排出されるDMSO分解工程で発生する硫化メチル、メチルメルカプタンの悪臭物質を含む有機性廃水を処理するのに好適である。
【0014】
本発明の一態様では、多段反応槽の少なくとも第1槽目をMABR槽とし、少なくとも最終反応槽をMABR以外の反応槽とする。反応槽が3段以上の場合は、少なくとも第1槽、第2槽をMABRとし、最終槽をMABR以外の処理、たとえば浮遊法、担体流動床等とするのが好ましい。担体流動床の反応槽の具体例としては、スポンジ等の担体を30〜50%容量となるよう投入し、反応槽流出部にスポンジ等の担体流出防止用のスクリーンを設けたものが挙げられる。
【0015】
有機物のすべて、もしくは大部分が揮発性物質の場合、最終反応槽以外の反応槽はすべてMABR反応槽とすることが望ましい。
【0016】
有機物の内に占める揮発性成分の割合が小さい場合は、前半側の約1/2をMABR、後半側の約1/2をMABR以外とするのが望ましい。例えば、全体で4槽の場合であれば、前半側2槽をMABRとし、後半側2槽をMABR以外とすることが望ましい。
【0017】
前段側の反応槽が高負荷の場合には、MABR処理が効果的である。処理が進んで低負荷となっている後段側の反応槽では、バイオフィルムの形成が進まないので、曝気を伴う接触効率の高い浮遊法や流動床等の担体法を用いた方が効果的である。
【0018】
プラグフロー方式の反応槽の場合、通常、反応槽の幅と長さの比が1:20以上であれば、プラグフローになる。また、通常、プラグフロー方式の反応槽は長さ方向に一直線になっているわけではなく、3往復か5往復するように折り返している場合が多い。廃水は一端側から流入し、他端側から処理水が流出する。これを上記多段反応槽と同じように排水流入部側をMABR、流出部側を他の処理方式とする。他の処理方式としては、上記と同様に、スポンジを30〜50%容量となるよう投入し、該処理水流出部にスポンジ流出防止用のスクリーンを設けた担体流動床が挙げられる。
【0019】
以下、図面を参照して本発明についてさらに詳細に説明する。図1は本発明の一例に係る好気性生物処理装置1の模式的な縦断面図である。第1反応槽3内に酸素透過膜モジュール2が設置されている。酸素透過膜モジュール2は1個又は複数個設置される。酸素透過膜モジュール2は上下多段に設置されてもよい。
【0020】
原水は、配管4によって反応槽3に供給され、処理水は、トラフ6を越流し、流出口7から流出する。
【0021】
酸素透過膜モジュール2は、非多孔質の酸素透過膜を備えており、膜を透過した酸素が反応槽3内の被処理水に溶解するので、反応槽3内において気泡が生じない。
【0022】
ブロアBからの空気は、配管8によって酸素透過膜モジュール2に供給され、酸素透過膜モジュール2から流出した排気は、配管9を介して排出される。なお、空気は酸素透過膜モジュール2に上から下へ流れてもよく、下から上へ流れてもよく、横方向に流れてもよい。複数の酸素透過膜に通気する場合、直列に通気してもよく、並列に通気してもよい。
【0023】
酸素透過膜モジュール2の下側に散気管5が設置され、空気が配管10を介して間欠的に供給され、反応槽3内が曝気される。
【0024】
流出口7からの第1処理水は、MABR以外の好気性生物処理を行う第2反応槽12に導入され、さらに好気性処理され、第2処理水となる。この第2処理水は、固液分離装置13に導入され、固液分離された後、最終的な処理水として取り出される。分離された汚泥の一部は返送管13aを介して反応槽3(または、反応槽3,12)に返送される。
【0025】
本発明では、反応槽は生物活性炭反応槽であってもよい。図2(a)は生物活性炭処理反応槽の一例を示す縦断面図,図2(b)はそのノズルの斜視図である。反応槽3内に上下多段に複数個の酸素透過膜モジュール2が設置されている。この実施の形態では、酸素透過膜モジュール2は3段に設置されているが、酸素透過膜モジュール2は2〜8段、特に2〜4段に設置されることが好ましい。
【0026】
原水は、配管14及び複数のノズル14aによって反応槽3の底部に供給され、活性炭の流動床Fを形成する。流動床Fを通り抜けた処理水は、トラフ6を越流し、流出口7から流出する。
【0027】
酸素透過膜モジュール2は、非多孔質の酸素透過膜を備えており、膜を透過した酸素が反応槽3内の被処理水に溶解するので、反応槽3内において気泡が生じない。
【0028】
図2では、ブロアBからの空気等の酸素含有ガスは、配管8によって最下段の酸素透過膜モジュール2cの上部に供給され、酸素透過膜モジュール2cの下部から流出し、配管19を介して上から2段目の酸素透過膜モジュール2bの上部に供給され、酸素透過膜モジュール2bの下部から流出し、配管20を介して最上段の酸素透過膜モジュール2aの上部に供給される。酸素透過膜モジュール2bの下部から流出したガスは、配管21を介して排出される。
【0029】
酸素透過膜モジュール2は、活性炭流動床Fの上下方向の略全域にわたって存在することが好ましい。また、酸素透過膜モジュール2は、反応槽3の平面視において、反応槽3内の全域に、偏なく配置されていることが好ましい。
【0030】
図2では、複数のノズル14aから原水を反応槽3内の底部に流出させているが、図3のように、反応槽3内の底部にパンチングメタル等の透水板22を配置し、該透水板22の上側に粗い砂利等の大径粒子層23と、その上側の細かい砂利等の小径粒子層24とを形成してもよい。原水は、配管14からノズル26によって透水板22の下側の受入室25に流出し、透水板22、大径粒子層23及び小径粒子層24を通過し、反応槽3内に活性炭の流動床Fを形成する。なお、パンチングメタルなどの透水板はなくても良い。
【0031】
酸素透過膜モジュール2への酸素含有ガスの流通形態の別例について図4〜6を参照して次に説明する。
【0032】
図4の生物処理装置にあっては、ブロアBからの酸素含有ガスは、配管8によって最下段の酸素透過膜モジュール2cの上部に供給され、その下部から流出し、下から2段目の酸素透過膜モジュール2bの下部に供給され、その上部から流出し、次いで最上段の酸素透過膜モジュール2aの下部に供給され、その上部から配管21を介して排出される。
【0033】
図5の生物処理装置にあっては、ブロアBからの酸素含有ガスは、配管8によって最下段の酸素透過膜モジュール2cの下部に供給され、その上部から流出し、下から2段目の酸素透過膜モジュール2bの下部に供給され、その上部から流出し、次いで最上段の酸素透過膜モジュール2aの下部に供給され、その上部から配管21を介して排出される。
【0034】
図6の生物処理装置にあっては、酸素含有ガスは、各酸素透過膜モジュール2a〜2cに並列に流れる。即ち、ブロアBからの酸素含有ガスは、配管8によって各酸素透過膜モジュール2a,2b,2cの上部に供給され、各々の下部から流出し、配管21を介して排出される。
【0035】
なお、図2〜4のように、酸素含有ガスが最下段の酸素透過膜モジュール2cの上部に供給され、該酸素透過膜モジュール2cの下部から流出し、その後、上側の酸素透過膜モジュール2b,2aに順次流れるように構成した生物処理装置にあっては、酸素透過膜モジュール2c内の凝縮水が抜け易い。
【0036】
図5のように、酸素含有ガスが酸素透過膜モジュール2a〜2c内を上向きに流れるように構成した場合、酸素透過膜モジュール内の凝縮水が蒸発し易いものとなる。特に、酸素含有ガスとして乾燥度の高いガスを流すことにより、凝縮水が蒸発し易くなる。
【0037】
図2〜5のように、酸素含有ガスを最下段の酸素透過膜モジュール2cから順次に上段側の酸素透過膜モジュール2b,2aに流通させるようにした生物処理装置では、反応槽3内の被処理水の流れが上向流であるので、BOD濃度の高い原水側の被処理水ほど多くの酸素が供給されるため、負荷に応じた酸素供給量とすることができる。
【0038】
図6のように、各酸素透過膜モジュール2a〜2cに並列に酸素含有ガスを流通させる場合、酸素含有ガスの圧力損失が少なく、省エネルギーとなる。なお、図6において、下段側の酸素透過膜モジュールほど酸素含有ガス流通量を多くするようにすることにより、負荷に応じた酸素供給量とすることができる。
【0039】
図2〜6のいずれにおいても、上段側の酸素透過膜モジュールほど、膜面積を小さくするか、又は膜の充填密度を低くするようにしてもよい。
【0040】
なお、図4〜6においても、図3のように透水板22、大径粒子層23及び小径粒子層24を有した底部構造としてもよい。
【0041】
酸素透過膜モジュール2の酸素透過膜は、中空糸膜、平膜、スパイラル膜のいずれでもよいが、中空糸膜が好ましい。膜の材質は通常MABRに使用される、シリコン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリウレタン等が使用できるが、シリコンが好適である。強度が高い、ノンポーラスポリマーでポーラス中空糸をコーティングしたコンポジット膜を用いてもよい。
【0042】
中空糸膜は、好ましくは内径0.05〜4mm特に0.2〜1mm、厚み0.01〜0.2mm特に0.02〜0.1mmである。内径がこれより小さいと通気圧力損失が大きく、大きいと表面積が小さくなって酸素の溶解速度が低下する。厚みが上記範囲より小さいと物理的な強度が小さくなり、破断しやすくなる。逆に、厚みが上記範囲よりも大きいと、酸素透過抵抗が大きくなって酸素溶解効率が低下する。
【0043】
中空糸膜の長さは0.5〜3m程度、特に1〜2m程度が好ましい。中空糸膜が長すぎると、生物膜が多量に付着した場合、破断したり、団子状に固まって表面積が小さくなり、酸素溶解効率が低下する、圧力損失が大きくなる等の問題が起こる。中空糸膜が過度に短いと、コストが高くなる。平膜、スパイラル膜の長さも同様の理由で0.5〜1.5mが好ましい。
【0044】
膜の必要面積は、処理に必要な酸素量を供給できる十分量である。たとえば、原水がCODcr50mg/L、滞留時間30分の場合、シリコン製の100μm厚の中空糸膜であれば流動している活性炭部分の容積1mあたり240m以上が必要である。
【0045】
膜の面積は、槽容積当たり300m以上、1000m/m以下が好ましい。膜面積が大きいと、酸素供給量多くなり、高負荷が可能となるが、膜コストがアップする。単位容積当たりの膜面積が大きすぎると、膜が団子状態になり、効率が低下する。膜は流れ方向に設置することが好ましい。例えば、水深10mの槽では、長さ2mの膜を上下に4段に設置することが好ましい。
【0046】
酸素透過膜モジュールの構造の一例について図7〜12を参照して次に説明する。
【0047】
図7の酸素透過膜モジュール30は酸素透過膜として中空糸膜27を用いたものである。この実施の形態では、中空糸膜27は上下方向に配列されており、各中空糸膜27の上端は上部ヘッダー28に連なり、下端は下部ヘッダー29に連なっている。中空糸膜27の内部は、それぞれ上部ヘッダー28及び下部ヘッダー29内に連通している。各ヘッダー28,29は中空管状であり、略水平方向に平行に複数本配列されている。なお、平膜やスパイラル膜を用いる場合にも、上下方向に配列される。
【0048】
各ヘッダー28の一端又は両端がマニホルド28Aに連結され、各ヘッダー29の一端又は両端がマニホルド29Aに連結されていることが好ましい。酸素透過膜モジュール30の上部に酸素含有ガスを供給し、酸素透過膜モジュール30の下部から排出する場合は、酸素含有ガスは上部ヘッダー28から中空糸膜27を通って下部ヘッダー29へ流れ、この間に酸素が中空糸膜27を透過して反応槽3内の水に溶解する。逆に、酸素透過膜モジュール30の下部に酸素含有ガスを供給し、上部から排出する場合は、下部ヘッダー29に酸素含有ガスが供給され、中空糸膜27を通って上部ヘッダー28から排出される。
【0049】
図8は、フレーム32内に配置された酸素透過膜モジュール30の一例を示す正面図である。このフレーム32は、4隅にそれぞれ立設された4本の柱32aと、各柱32aの上端同士の間に架設された上梁32bと、各柱32aの下部同士の間に架設された下梁32cと、各柱32aの下端面に取り付けられた底座プレート32dとを有する。酸素透過膜モジュール30のマニホルド28A,29Aをフレーム32に保持させることにより、酸素透過膜モジュール30がフレーム32内に設置される。
【0050】
このフレーム32を備えた酸素透過膜モジュール30は、反応槽3内に上下多段に設置することが容易である。即ち、下側の酸素透過膜モジュール30のフレーム32の上に、上側の酸素透過膜モジュール30の底座プレート32dを載せるようにして上側の酸素透過膜モジュール30を配置することができる。
【0051】
本発明の一態様では、中空糸膜が上下方向に配列された中空糸膜モジュールを高さ1〜2m程度の高さの低い膜モジュールとし、これを2段以上、好ましくは4段以上に積層する。
【0052】
このように中空糸膜の長さを短くし、高さを低くした中空糸膜モジュールを多段に積層することにより、低い圧力で酸素を溶解させることができる。
【0053】
中空糸膜に送風する酸素含有ガスの圧力は、中空糸膜の圧力損失よりわずかに高い程度、例えば5〜20%程度高い圧力がコスト面から好適である。
【0054】
中空糸膜に供給する圧力は水深と無関係に決めてよい。通常の散気装置は水深以上の圧力が必要であることから、本発明は反応槽の水深が深いほど有利である。
【0055】
なお、上下方向のモジュールの配管接続によって、膜内の凝縮水や生物槽から膜内に溶解してくる炭酸ガスの影響が異なる。そのため、圧損、凝縮水、炭酸ガスを考慮した配管接続構造とすることが好ましい。
【0056】
上記実施の形態では、図7,8のように、中空糸膜27を上下方向とし、原水(被処理水)が中空糸膜27に沿って上下方向に流れるものとしているが、少なくとも一部の酸素透過膜モジュールとして、図9のように水平なX方向の中空糸膜27bと、上下方向(Z方向)の中空糸膜27aとを有する酸素透過膜モジュールを用いてもよい。なお、図10のように、中空糸膜27a、27bを平織状に編組してもよい。
【0057】
図11は、かかるX,Z方向の中空糸膜27(27a,27b)を備えた酸素透過膜モジュールの一例を示す斜視図である。この酸素透過膜モジュール40は、Z方向に延在する平行な1対のヘッダー41,41と、これと直交するX方向に延在する1対のヘッダー42,42と、中空糸膜27とを有する。X方向の中空糸膜27はヘッダー41,41間に架設され、Z方向の中空糸膜27はヘッダー42,42間に架設されている。
【0058】
ヘッダー41,42の端部同士が連結されることにより、ヘッダー41,42は方形枠状となっている。この酸素透過膜モジュール40の一態様では、ヘッダー41,42の両端内部にエンドプラグ等の閉塞部材(図示略)が設けられており、ヘッダー41,42内は遮断されている。酸素含有ガスは一方のヘッダー41に供給され、中空糸膜27を通り、他方のヘッダー41に流入する。また、酸素含有ガスは一方のヘッダー42に供給され、中空糸膜27を通り、他方のヘッダー42に流入する。
【0059】
この酸素透過膜モジュール40の別の一態様では、一方の一本のヘッダー41と一方の一本のヘッダー42とが連通している。また、他方の一本のヘッダー41と他方の一本のヘッダー42とが連通している。該一方のヘッダー41,42と、該他方のヘッダー41,42の連結部分の内部にはエンドプラグ等の閉塞部材(図示略)が設けられており、該一方のヘッダー41,42と、該他方のヘッダー41,42内は遮断されている。酸素含有ガスは該一方のヘッダー41,42に供給され、中空糸膜27を通り、該他方のヘッダー41,42に流入する。
【0060】
なお、これらの中空糸膜は、図7図11では1本ずつとなっているが、数本〜100本程度の束にしても良い。
【0061】
なお、反応槽内の下部に曝気装置を設置してもよい。
【0062】
次に、生物担体、酸素含有ガス、その他処理条件の好適例について説明する。
【0063】
<生物担体>
生物担体としては、活性炭が好適である。
【0064】
活性炭の充填量は反応槽の容積の40〜60%程度、特に50%程度が好ましい。この充填量は、多いほうが生物量多く活性高いが、多すぎると流出するおそれがある。従って、充填量50%程度で20〜50%程度活性炭相が膨張するLVで通水するのが良い。通水LVは0.5mm活性炭で7〜15m/hr程度である。なお、活性炭以外のゲル状、多孔質材、非多孔質材等も同様の条件で使用できる。例えば、ポリビニルアルコールゲル、ポリアクリルアミドゲル、ポリウレタンフォーム、アルギン酸カルシウムゲル、ゼオライト、プラスチック等も用いることができる。ただし、担体として活性炭を用いると、活性炭の吸着作用と生物分解作用による相互作用により、広範囲な汚濁物質の除去を行うことが可能である。
【0065】
活性炭の平均粒径は0.2〜3mm程度が好ましい。平均粒径が大きいと高LVとすることが可能であり、循環量を増やせるため高負荷が可能となる。しかし、表面積が小さくなるため、生物量が少なくなる。平均粒径が小さいと、低LVで流動できるため、ポンプ動力が安価となる。かつ、表面積が大きいため、付着生物量が増える。
【0066】
最適粒径は廃水の濃度によって決定され、TOC:50mg/Lであれば0.2〜0.4mm程度、TOC:10mg/Lであれば0.6〜1.2mm程度が好ましい。
【0067】
活性炭の展開率は、20〜50%程度が好ましい。展開率が20%よりも低いと、目詰まり、短絡のおそれがある。展開率が50%よりも高いと、流出のおそれがあると共に、ポンプ動力コストが高くなる。
【0068】
通常の生物活性炭では、活性炭流動床の膨張率は10〜20%程度であるがこの場合、活性炭の流動状態が不均一で上下左右に流動する。結果として同時に設置した膜が活性炭によってこすられ、すり減って消耗することになる。これを防止するため、本発明では、活性炭は十分に流動させることが必要で、膨張率は20%以上とするのが望ましい。このため、活性炭の粒径は通常の生物活性炭よりも小さいほうが好ましい。なお、活性炭は、やしがら炭、石炭、木炭等なんでも良い。形状は球状炭が好ましいが、通常の粒状炭や破砕炭でも良い。
【0069】
<酸素含有ガス>
酸素含有ガスは空気、酸素富化空気、純酸素等、酸素を含む気体であればよい。通気する気体はフィルターを通過させて微細粒子を除去することが望ましい。
【0070】
通気量は生物反応に必要な酸素量の等量から2倍程度が望ましい。これよりも少ないと酸素不足で処理水中にBODやアンモニアが残存し、多いと通気量が不必要に多くなることに加えて圧力損失が高くなるため、経済性が損なわれる。
【0071】
通気圧力は所定の通気量で生ずる中空糸の圧力損失よりもわずかに高い程度が望ましい。
【0072】
<被処理水の流速>
被処理水の流速はLV10m/hr以上とし、処理水を循環せず、ワンパスで処理するのが好ましい。
【0073】
LVを高くすると、それに比例して酸素溶解速度が向上する。LV50m/hrでは10m/hrの2倍ほど酸素が溶解する。LVが高い場合は、粒径が大きい活性炭を使い、展開率をあまり大きくしないようにするのが好ましい。生物量、酸素溶解速度から、最適LV範囲は10〜30m/hr程度である。
【0074】
<滞留時間>
槽負荷1〜2kg−TOC/m/dayとなるように滞留時間を設定するのが好ましい。
【0075】
<ブロア>
ブロアは、吐出風圧が水深からくる水圧以下のもので十分である。但し、配管等の圧損以上であることは必要である。通常、配管抵抗は1〜2kPa程度である。
【0076】
5mの水深の場合、通常は0.55MPa程度までの出力の汎用ブロアが用いられ、それ以上の水深では高圧ブロアが用いられてきている。
【0077】
本発明では、5m以上の水深であっても0.5MPa以下の圧力の汎用ブロアを用いることができ、0.1MPa以下の低圧ブロアを用いることが好ましい。
【0078】
酸素含有ガスの供給圧は、中空糸膜の圧力損失より高く、水深圧力よりも低いこと、さらに膜が水圧でつぶれないこと、が条件となる。平膜、スパイラル膜は膜の圧損が水圧と比較すると無視できるため、極めて低い圧力、5kPa程度以上、水圧以下、望ましくは20kPa以下である。
【0079】
中空糸膜の場合、内径と長さによって圧力損失は変化する。通気する空気量は膜1mあたり20mL〜100mL/dayであるから、膜長さが2倍になると空気量は2倍になり、膜径が2倍になっても空気量は2倍にしかならない。したがって、膜の圧力損失は膜長さに正比例し、直径に反比例する。
【0080】
圧力損失の値は、内径50μm、長さ2mの中空糸で3〜20kPa程度である。
【0081】
本発明者の実験によると、通気圧力を11〜140kPa、通気量を240〜460mL/min変化させた結果、酸素溶解速度はほとんど変化しないことが認められた。
【0082】
本発明では、酸素溶解効率が30〜100%特に40〜60%となるようにすることが好ましい。
【0083】
図2〜6では担体の流動床Fを形成しているが、担体を懸濁させてもよい。反応槽内の液の曝気、液の流れ、及び機械的操作の1又は2以上によって担体を懸濁又は流動させるのが好ましい。
【0084】
このように担体を懸濁又は流動させることにより、酸素透過膜への生物の付着を防止することができ、酸素透過膜からの酸素供給速度を高く保つことができる。
【0085】
反応槽のMLSS濃度を高濃度に維持することによっても酸素透過膜への生物の付着を防止できる。MLSS濃度は、好ましくは10,000〜50,000mg/L、特に好ましくは20,000〜30,000mg/Lに維持する。
【0086】
MLSSを高濃度に保持するには、反応槽内の処理液中に濾過膜を設置し、この濾過膜の透過水を処理水として取り出すことが好ましい。
【実施例】
【0087】
[実施例1]
DMSO 3.2%を含む半導体洗浄廃水を、TOC-槽負荷1.2kg/m/D、水槽容量10L、滞留時間24時間で通水した。
【0088】
通水10日後、20日後、21日後、に臭気(DMS)測定を実施。いずれの測定でも検知管のDMS下限値(0.25mg/L)以下であった。また、その後段で生物処理(標準活性汚泥処理方式)を行うことで、低負荷の有機物をさらに低減することができた。なお、臭気測定は、ガステック社のパイロチューブ検知管を使用した。
【0089】
[比較例1、2]
半導体製造工場の直列三段生物処理槽において、TOC槽負荷平均0.17kg/m/D(DMSO含有比率約2%)の運転で装置周辺の空気中にDMSが平均2.73ppm(MIN:0ppm〜MAX25.5ppm)で検知された(比較例1)。また、TOC槽負荷平均0.24kg/m/D(DMSO含有比率約2%)の運転で装置周辺の空気中にDMSが平均9.84ppm(MIN:0ppm〜MAX59ppm)検知された(比較例2)。
【符号の説明】
【0090】
1 好気性生物処理装置
酸素透過膜モジュール
3 第1反応槽
12 第2反応槽
【要約】
【課題】揮発性物質や臭気の発生する物質を含む有機性廃水であっても、臭気の発生や有害物質の揮発なく、好気性生物処理することができる好気性生物処理装置を提供する。
【解決手段】直列に接続された第1反応槽3及び第2反応槽12を備え、各反応槽3,12内で好気性生物処理を行う好気性生物処理装置において、第1反応槽3は、反応槽3内に配置された酸素溶解膜モジュール2によって酸素を被処理水に溶解させるMABR反応槽であり、第2反応槽12はMABR以外の反応槽である。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11