【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24、25年度、総務省、ICTイノベーション創出型研究開発事業「極低消費電力テラヘルツ波無線通信に向けた集積回路基盤技術の研究開発」に係る委託業務、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0022】
又、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施の形態は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の実施の形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0023】
[第1の実施の形態]
基本技術に係る2次元フォトニック結晶スラブ12は、
図1に示すように、2次元フォトニック結晶スラブ12に対して、テラヘルツ波の波長と同程度の周期構造を有する格子点12Aを形成した構造を備える。
図1の例では、周期構造を有する格子点12Aが三角格子を有する。基本技術に係る2次元フォトニック結晶スラブ12は、
図1に示すように、波長と比較して小さな(λ/4以下)の端面からテラヘルツ入力波W
iを入力し、テラヘルツ出力波W
oを出力するため、入出力部における結合損失が相対的に大きい。入出力部における結合効率は、例えば、約〜数%以下である。
【0024】
(素子構造)
第1の実施の形態に係るテラヘルツ波コネクタ1は、
図2に示すように、2次元フォトニック結晶スラブ12と、2次元フォトニック結晶スラブ12内に周期的に配置され、2次元フォトニック結晶スラブ12のフォトニックバンド構造のフォトニックバンドギャップ帯におけるテラヘルツ波を、2次元フォトニック結晶スラブ12の面内での存在を禁止するために回折させる格子点12Aと、2次元フォトニック結晶スラブ12内に配置され、格子点12Aの線欠陥により形成された2次元フォトニック結晶導波路14と、2次元フォトニック結晶導波路14が延伸した2次元フォトニック結晶スラブ12の端面に配置され、2次元フォトニック結晶導波路14が延伸した断熱的モード変換機構部10とを備える。
【0025】
第1の実施の形態に係るテラヘルツ波コネクタ1において、断熱的モード変換機構部10は、
図2に示すように、2次元フォトニック結晶スラブ12の平面視において、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面から離隔するにしたがって、先端部が細くなるテーパー形状を備えていても良い。また、テーパー形状の側面は、
図2に示すように、傾斜面を備えていても良い。
【0026】
また、第1の実施の形態に係るテラヘルツ波コネクタ1は、
図3に示すように、断熱的モード変換機構部10を樹脂層38などで被覆した保護構造を備えていても良い。ここで、樹脂層38としては、例えば、紫外線硬化樹脂・熱硬化樹脂等のポリマー樹脂等を適用可能である。
【0027】
第1の実施の形態に係るテラヘルツ波コネクタ1と導波管28との極低損失接続部は、
図4に示すように、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面に配置された断熱的モード変換機構部10を導波管28の導波管導波路36内に挿入することによって実現可能である。
【0028】
すなわち、第1の実施の形態に係るテラヘルツ波コネクタ1においては、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面に断熱的モード変換機構部10を導入し、結晶端面構造を工夫することで、導波管フランジ34に近接する結晶端面における余計な表面波を抑制することによって、導波管28への極低損失な接続を行うことができる。
【0029】
(変形例1)
第1の実施の形態の変形例1に係るテラヘルツ波コネクタ1において、断熱的モード変換機構部10Aは、
図5に示すように、2次元フォトニック結晶スラブ12の平面視において、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面から離隔するにしたがって、先端部が細くなるテーパー形状を備え、かつテーパー形状の側面は曲面を有していても良い。ここで、この曲面は、双曲面若しくは指数関数面を有していても良い。
【0030】
(変形例2)
第1の実施の形態の変形例2に係るテラヘルツ波コネクタ1において、断熱的モード変換機構部10Bは、
図6に示すように、2次元フォトニック結晶スラブ12の平面視において、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面から離隔するにしたがって、先端部が細くなるテーパー形状を備え、かつテーパー形状の側面は複数の段差面を有していても良い。
【0031】
(変形例3)
第1の実施の形態の変形例3に係るテラヘルツ波コネクタ1において、断熱的モード変換機構部10Aは、
図7(a)に示すように、2次元フォトニック結晶スラブ12の平面視において、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面から離隔するにしたがって、先端部が細くなるテーパー形状を備え、かつテーパー形状の側面は曲面を有していても良い。
図7(a)の形状は、
図5の形状に比べて、相対的に断熱的モード変換機構部10Aの長さが短く設定されている。
【0032】
(変形例4)
第1の実施の形態の変形例4に係るテラヘルツ波コネクタ1において、断熱的モード変換機構部10Cは、
図7(b)に示すように、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面から離隔するにしたがって、先端部が細くなる円錐型形状を備えていても良い。ここで、円錐型形状の変形例には、
図7(b)に示すようなトランペット型形状のみならず、単純な円錐形状が含まれていても良い。
【0033】
(変形例5)
第1の実施の形態の変形例5に係るテラヘルツ波コネクタ1において、断熱的モード変換機構部10は、
図8(a)に示すように、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面から離隔するにしたがって、先端部が細くなる四角錘形状を備えていても良い。
【0034】
(変形例6)
第1の実施の形態の変形例6に係るテラヘルツ波コネクタ1において、断熱的モード変換機構部10は、
図8(b)に示すように、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面から離隔するにしたがって、先端部の厚さが薄くなる楔型形状を備えていても良い。
【0035】
(変形例7)
第1の実施の形態の変形例7に係るテラヘルツ波コネクタ1において、断熱的モード変換機構部10は、
図9(a)に示すように、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面から離隔するにしたがって、先端部の厚さが薄くなる複数の階段型形状を備えていても良い。
【0036】
(変形例8)
第1の実施の形態の変形例8に係るテラヘルツ波コネクタ1において、断熱的モード変換機構部10は、
図9(b)に示すように、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面から離隔するにしたがって、先端部の厚さが薄くなる撥型形状を備えていても良い。ここで、断熱的モード変換機構部10は、2次元フォトニック結晶スラブ12の平面視において、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面から離隔するにしたがって、先端部が細くなるテーパー形状を備え、かつテーパー形状の側面は曲面を有する。
【0037】
(変形例9)
第1の実施の形態の変形例9に係るテラヘルツ波コネクタ1において、断熱的モード変換機構部10は、
図9(c)に示すように、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面から離隔するにしたがって、先端部の幅が薄くなる楔型形状を備えていても良い。ここで、断熱的モード変換機構部10は、2次元フォトニック結晶スラブ12の平面視において、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面から離隔するにしたがって、先端部が細くなるテーパー形状を備え、かつテーパー形状の側面は傾斜面を有する。
【0038】
第1の実施の形態に係るテラヘルツ波コネクタ1において、断熱的モード変換機構部10の構造は、
図2〜
図9に示された構造に限定されるものではなく、これらの構造のいずれかを組み合わせた構造も用いることも可能である。例えば、四角錘形状の側面に複数の段差形状を導入しても良い。あるいは、円錐形状若しくは円錐型トランペット形状の側面に複数の段差形状を導入しても良い。
【0039】
第1の実施の形態に係るテラヘルツ波コネクタ1において、樹脂層38で被覆された断熱的モード変換機構部10は、
図10に示すように、導波管導波路36内に挿入される。
図10において、導波管導波路36の開口部X・Yは、例えば、約0.4mm・約0.8mmである。また、断熱的モード変換機構部10の底部の厚さY
0は、例えば、約0.2mmである。
【0040】
2次元フォトニック結晶スラブ12は、2次元周期構造を有する誘電体板構造である。その設計により、電磁モードが存在できないフォトニックバンドギャップ(PBG:Photonic Band Gap)が現れる。さらに周期構造を乱すことで、PBG内に導波モードや共振モードを導入し、波長サイズ以下の微小領域での低損失な導波路や共振器を実現することができる。
【0041】
ここで、PBGの帯域幅は、誘電体の屈折率に依存し、高屈折率材料が望ましい。
【0042】
実施の形態に係るテラヘルツ波コネクタ1を接続部に備える2次元フォトニック結晶スラブ12の材料は、半導体材料で形成されていても良い。
【0043】
半導体材料としては、以下のものを適用可能である。すなわち、例えば、シリコン(Si)、GaAs、InP、GaN、さらに、GaInAsP/InP系、InGaAs/GaAs系、GaAlAs/GaAs系若しくはGaInNAs/GaAs系、GaAlInAs/InP系、AlGaInP/GaAs系、GaInN/GaN系などを適用可能である。特に、高抵抗Siは、テラヘルツ波帯で高い屈折率を有し、材料吸収が少ない。
【0044】
第1の実施の形態に係るテラヘルツ波コネクタ1を適用可能な2次元フォトニック結晶スラブ12の格子点12Aの周期構造であって、正方格子の例は、
図11(a)に示すように模式的に表され、三角格子の例は、
図11(b)に示すように模式的に表される。
【0045】
また、実施の形態に係るテラヘルツ波コネクタ1を適用可能な2次元フォトニック結晶スラブ12の格子点12Aの周期構造であって、長方格子の例は、
図12(a)に示すように模式的に表され、菱型格子(面心長方格子)の例は、
図12(b)に示すように模式的に表される。
【0046】
また、第1の実施の形態に係るテラヘルツ波コネクタ1を適用可能な2次元フォトニック結晶スラブ12の格子点12Aは、多角形、円形、楕円形若しくは長円形のいずれかの孔形状を備えていても良い。また、格子点12Aの孔形状は、貫通していても良く、凹部構造を有していても良い。さらに、2次元フォトニック結晶スラブ12を構成する材料に所定の濃度で不純物ドーピングが実施されていても良い。
【0047】
また、格子点12Aは、例えば、空気孔として形成しても良く、或いは屈折率の異なる半導体層で充填しても良い。例えば、GaAs層に対してAlGaAs層を充填して形成しても良い。
【0048】
また,第1の実施の形態に係るテラヘルツ波コネクタ1において、格子点12A(孔)に関しては、空気の孔を空けるだけでなく、孔(の一部)を低屈折率(誘電率)の媒質で埋める構造も可能である。低屈折率(誘電率)の媒質としては、例えば、テフロン、フッ素樹脂、ポリイミド、アクリル、ポリエステル、エポキシ樹脂、液晶、ポリウレタンなどのポリマー材料を適用可能である。さらに、低屈折率(誘電率)の媒質としては、例えば、SiO
2、SiN、SiON、アルミナ、サファイアなどの誘電体も適用可能である。さらに、低屈折率(誘電率)の媒質としては、エアロゲルなどの多孔質体も適用可能である。
【0049】
また、第1の実施の形態に係るテラヘルツ波コネクタ1において、2次元フォトニック結晶スラブ12の上下の主面を低屈折率の媒質で挟み込んだ積層構造を採用しても良い。
【0050】
また、実施の形態に係るテラヘルツ波コネクタ1において、2次元フォトニック結晶スラブ12の上下の主面の内、上面もしくは下面のみに低屈折率の媒質を付加した積層構造も適用可能である。
【0051】
また,第1の実施の形態に係るテラヘルツ波コネクタ1において、低屈折率なプリント基板の上に2次元フォトニック結晶スラブ12が搭載された構成を採用しても良い。
【0052】
また,実施の形態に係るテラヘルツ波コネクタ1において、2次元フォトニック結晶スラブ12の上下の主面を金属で挟み込んだ積層構造を採用しても良い。
【0053】
また、第1の実施の形態に係るテラヘルツ波コネクタ1において、2次元フォトニック結晶スラブ12の上下の主面の内、上面もしくは下面のみに金属を付加した積層構造も適用可能である。テラヘルツ帯では金属による吸収損失は増えるが、光波領域よりは吸収損失は高くは無いため、上記の金属を積層する構成を採用しても良い。
【0054】
また、2次元フォトニック結晶スラブ12の材料としては、半導体に限らず、高屈折率の媒質ならば適用可能である。例えば、MgO(酸化マグネシウム)はテラヘルツ波帯での屈折率が約3.1と高い誘電体(絶縁体)になるため、2次元フォトニック結晶スラブ12に適用可能である。
【0055】
(分光システムの実験系)
第1の実施の形態に係るテラヘルツ波コネクタを入出力接続部に備える2次元フォトニック結晶スラブを用いた分光システムの実験系の写真例は、
図13に示すように表される。また、
図13に対応する模式的ブロック構成は、
図14に示すように表される。
【0056】
第1の実施の形態に係るテラヘルツ波コネクタ1を入出力接続部に備える2次元フォトニック結晶スラブ12を用いた分光システムは、
図13および
図14に示すように、マイクロ波発振器(シンセサイザ)30と、シンセサイザ30に接続された逓倍器(×3)24
2と、逓倍器24
2に接続された逓倍器(×3)24
1と、逓倍器24
1に接続された導波管28と、導波管28に接続された2次元フォトニック結晶スラブ12と、2次元フォトニック結晶スラブ12に接続された導波管26と、導波管26に接続されたミキサ22と、ミキサ22に接続されたスペクトラムアナライザ32とを備える。
【0057】
抵抗率3000ΩcmのSi基板を用い、導波管26・28との入出力構造として、テーパー構造を設けた長さ約19mmの2次元フォトニック結晶導波路14を作製した。また、2次元フォトニック結晶導波路14のない2次元フォトニック結晶スラブも比較のため作製した。
【0058】
マイクロ波発振器(シンセサイザ)30、逓倍器24
1・24
2、スペクトラムアナライザ32、WR3導波管26・28で構成される分光システム(
図13・
図14)を用い、作製した実施の形態に係るテラヘルツ波コネクタ1を入出力接続部に備える2次元フォトニック結晶スラブ(サンプル)12を導波管26・28と接続し、逓倍器24
1から2次元フォトニック結晶スラブ(サンプル)12への入力信号周波数を0.28THz−0.39THzの範囲で変化させ、スペクトラムアナライザ32で透過特性を測定した。
【0059】
(テラヘルツ波コネクタの有無による透過特性)
第1の実施の形態に係るテラヘルツ波コネクタ1の有無による2次元フォトニック結晶スラブ12と導波管26・28との間における透過率Tと周波数fとの関係は、
図15に示すように表される。
図15において、曲線C
0は、テラヘルツ波コネクタ1が無い場合に対応し、曲線C
1は、テラヘルツ波コネクタ1が有る場合で、かつテラヘルツ波コネクタ1と導波管フランジ40・34間に適切なギャップが無い場合に対応する。実験に用いたテラヘルツ波コネクタ1の構造は、
図2と同様の構成を備え、断熱的モード変換機構部10の長さ(テーパー長L
1)は、約3mmである。
【0060】
図15から明らかなように、実施の形態に係るテラヘルツ波コネクタ1の導入により、透過率Tが増大する。尚、曲線上D
0部分の特定の周波数において、約6dB程度の透過率低下が観測されている。
【0061】
断熱的モード変換機構部10の長さ(テーパー長L
1)を短くすることで、表面波との結合状態が変化し、透過率の低下する周波数が変化する。ただし、透過率Tの低くなる現象が現れる。テラヘルツ波コネクタ1と導波管フランジ40・34間に適切なギャップを設けることによって、後述する
図22に示すように、0.314THz−0.337THzの帯域fw1に相当する約23GHzの範囲内では、0.1dB以下という極めて低損失な透過特性が得られ、透過率Tの低くなる現象も改善可能である。
【0062】
(テラヘルツ波コネクタと導波管フランジとの間のギャップの有無による透過特性)
第1の実施の形態に係るテラヘルツ波コネクタ1と導波管フランジ40との間のギャップの有無による2次元フォトニック結晶スラブ12と導波管26との間における透過率Tと周波数fとの関係は、
図16に示すように表される。
図16において、破線の曲線G
0は、テラヘルツ波コネクタ1と導波管フランジ40間にギャップが無い場合(
図17)に相当し、実線で表された曲線Gは、テラヘルツ波コネクタ1と導波管フランジ40間にギャップが有る場合(
図18)に相当する。ここで、断熱的モード変換機構部10の長さ(テーパー長L
1)は、約3mmである。
【0063】
テラヘルツ波コネクタ1と導波管フランジ40間にギャップが無い場合には、
図17に示すように、導波管フランジ40は、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面に接している。一方、テラヘルツ波コネクタ1と導波管フランジ40間にギャップが有る場合は、
図18に示すように、導波管フランジ40は、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面からギャップ距離W
Gだけ離隔して配置されている。
【0064】
テラヘルツ波コネクタ1と導波管フランジ40間にギャップが無い場合には、
図17に示すように、導波管フランジ40は、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面に接しているため、テラヘルツ入力波hν
iの表面モードの励起によって、特定周波数における透過率の低下が観測される。
【0065】
一方、テラヘルツ波コネクタ1と導波管フランジ40間にギャップが有る場合は、
図18に示すように、導波管フランジ40は、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面からギャップ距離W
Gだけ離隔して配置されているため、テラヘルツ入力波hν
iの表面モードを抑制することができる。特に、ギャップ距離W
G>波長/3とすることが望ましい。
【0066】
図17および
図18に示された構成上、実験に用いたテラヘルツ波コネクタ1の構造は、
図2と同様の構成を備え、断熱的モード変換機構部10の長さL
1は、約3mmである。
【0067】
実施の形態に係るテラヘルツ波コネクタ1においては、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面に断熱的モード変換機構部10を導入し、結晶端面構造を工夫して、導波管フランジ40を2次元フォトニック結晶スラブ12の端面からギャップ距離W
Gだけ離隔して配置することによって、導波管フランジ40に近接する結晶端面における余計な表面波を抑制することによって、導波管26との極低損失な接続を行うことができる。
【0068】
(変形例10)
図18に示されたギャップ構造を断熱的モード変換機構部10の周辺部においてのみ形成しても良い。
【0069】
第1の実施の形態の変形例10に係るテラヘルツ波コネクタ1の模式的平面構成は、
図19に示すように表される。
【0070】
第1の実施の形態の変形例10に係るテラヘルツ波コネクタ1においては、ギャップ領域12Bを形成するために、断熱的モード変換機構部10の底辺部分の2次元フォトニック結晶スラブ12の端面に、端面方向の長さW
2で深さ(ギャップ距離)W
1のリセス構造を形成している。すなわち、断熱的モード変換機構部10が配置される2次元フォトニック結晶スラブ12の端面は、
図19に示すように、断熱的モード変換機構部10の底辺の周辺部において、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面に配置される導波管フランジ(40)との間にギャップ距離W
1を備え、導波管フランジから離隔していても良い。
【0071】
第1の実施の形態の変形例10に係るテラヘルツ波コネクタ1においては、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面に断熱的モード変換機構部10を導入し、結晶端面構造を工夫して、導波管フランジ40を2次元フォトニック結晶スラブ12の端面からギャップ距離W
1だけ離隔して配置することによって、導波管フランジ40に近接する結晶端面における余計な表面波を抑制することによって、導波管26との極低損失な接続を行うことができる。特に、ギャップ距離W
1>波長/3とすることが望ましい。
【0072】
(理論解析結果)
第1の実施の形態に係るテラヘルツ波コネクタ1の透過率T(dB)の周波数特性の理論解析結果(テラヘルツ波コネクタと導波管フランジ間に適切なギャップが無い場合)は、
図20に示すように表される。
図20において、帯域fwは、2次元フォトニック結晶導波路14のPBGに基づく帯域を表す。ここで、テーパー長L
1=4.5mmである。
【0073】
実施の形態に係るテラヘルツ波コネクタ1は、2次元フォトニック結晶導波路14の導波帯域全体にわたり、3dB以下の低損失が得られる。特に、2次元フォトニック結晶導波路14内におけるファブリペロー共振を抑制可能であれば、0.3dB以下の低損失も得られる。
【0074】
(実験結果)
第1の実施の形態に係るテラヘルツ波コネクタ1を適用した2次元フォトニック結晶スラブ12の透過率Tの周波数特性の実験結果は、
図21に示すように表される。
図21において、曲線Aは、2次元フォトニック結晶導波路+テラヘルツ波コネクタの構成に対応し、曲線Bは、2次元フォトニック結晶導波路無し+テラヘルツ波コネクタの構成に対応する。
【0075】
図21に示すように、2次元フォトニック結晶導波路14の無い場合(曲線B)では、PBG帯域(0.30THz−0.39THz)での伝播が禁止されるため、PBG帯域における透過率T(dB)は、−40dB〜−60dB程度であり、きわめて低い。一方、2次元フォトニック結晶導波路14の有る場合(曲線A)では、その伝播領域となる0.31THz以上で導波モードが現れ、特に、
図21中においてfw2で示される0.311THz−0.325THzの範囲では、約1dB以下の極低損失特性が得られている。
【0076】
さらに、第1の実施の形態に係るテラヘルツ波コネクタを適用した2次元フォトニック結晶スラブの透過率の周波数特性の実験結果(テラヘルツ波コネクタと導波管フランジ間に適切なギャップが有る場合)は、
図22に示すように表される。
図22において、帯域fw1は、0.314THz−0.337THzの帯域に相当する。
図22から明らかなように、帯域fw1に相当する約23GHzの範囲内では、0.1dB以下という極めて低損失な透過特性が得られている。
【0077】
(格子定数と動作可能周波数との関係)
2次元周期構造を有する誘電体板構造の周期構造に線欠陥を導入することで、2次元フォトニック結晶導波路が形成される。面内方向の電磁モードが存在できないPBG効果と2次元フォトニック結晶スラブ平面に対して垂直な上下方向の全反射効果によって、電磁波を誘電体内に閉じ込めることが可能である。このため、2次元フォトニック結晶導波路は、伝播損失が小さい。
【0078】
第1の実施の形態に係るテラヘルツ波コネクタを適用可能な2次元フォトニック結晶スラブ12内に周期的に配置される格子点12Aの格子定数aと2次元フォトニック結晶導波路14の導波帯域周波数fとの関係の電磁界シミュレーション結果は、
図23に示すように表される。
【0079】
図23に示すように、格子定数aを小さくすることで動作周波数帯を高周波に変化させることができる。例えば、格子定数a=80μmでは約0.9THzから約1.1THz、格子定数a=240μm(実験構造)では約0.31THzから約0.38THz、格子定数a=750μmでは約0.10THzから約0.12THzにおける動作が可能である。
【0080】
また、第1の実施の形態に係るテラヘルツ波コネクタを適用可能な2次元フォトニック結晶スラブ12内に周期的に配置される格子点12Aの格子定数aとPGB周波数との関係の電磁界シミュレーション結果によれば、格子定数aを小さくすることでPGB周波数帯を高周波に変化させることができる。例えば、格子定数a=80μmでは約0.9THzから約1.1THz、格子定数a=240μm(実験構造)では約0.30THzから約0.38THz、格子定数a=720μmでは約0.10THzから約0.13THzにおいて、PGB周波数帯域が発現する。
【0081】
(伝送損失とシリコンの抵抗率との関係)
第1の実施の形態に係るテラヘルツ波コネクタ1を適用可能な2次元フォトニック結晶スラブ12の材料としてSiを用いた場合の伝送損失とSiの抵抗率との関係の電磁界シミュレーション結果は、
図24に示すように表される。
図24には、2次元フォトニック結晶を構成するシリコン(Si)の吸収損失をドルーデモデル(Drude model)で考慮し、電磁界シミュレーションによってSiの抵抗率(Ωcm)に対する伝播損失(dB/cm)を求めた結果が示されている。ここでは、厚さ200μmのSiに直径144μmの円形三角格子を格子定数a=240μmで配列し、0.30THz−0.39THzにPBG帯域を持つ2次元フォトニック結晶スラブを用いた。
【0082】
図24より、Siの抵抗率が3000Ωcm以上で、伝播損失が0.2(dB/cm)以下になることがわかる。この値は、0.3THz帯における金属の吸収損失が影響する金属伝送路や導波管と比較して小さい値である。すなわち、2次元フォトニック結晶導波路がテラヘルツ波集積回路の伝送線路として十分に適用可能であることがわかる。特に、高抵抗Siを用いた2次元フォトニック結晶導波路14は、極低損失である。
【0083】
(テラヘルツ波集積回路)
第1の実施の形態に係るテラヘルツ波コネクタ1は、テラヘルツ波集積回路に適用可能である。
【0084】
第1の実施の形態に係るテラヘルツ波コネクタ1を2次元フォトニック結晶スラブ12の入出力部の少なくとも一方に備えたテラヘルツ波集積回路2の模式的鳥瞰構成は、
図25に示すように表される。また、第1の実施の形態に係るテラヘルツ波コネクタ1を適用したテラヘルツ波集積回路2上の合分波器の構成は、
図26に示すように表される。
【0085】
第1の実施の形態に係るテラヘルツ波コネクタ1を適用したテラヘルツ波集積回路2は、
図25に示すように、2次元フォトニック結晶スラブ12と、2次元フォトニック結晶スラブ12内に周期的に配置され、2次元フォトニック結晶スラブ12のフォトニックバンド構造のフォトニックバンドギャップ帯におけるテラヘルツ波を、2次元フォトニック結晶スラブの面内での存在を禁止するために回折させる格子点12Aと、2次元フォトニック結晶スラブ12内に配置され、格子点の線欠陥により形成された2次元フォトニック結晶導波路14と、2次元フォトニック結晶導波路14が延伸した2次元フォトニック結晶スラブ12の端面に配置され、2次元フォトニック結晶導波路14が延伸した断熱的モード変換機構部10とを備える。
【0086】
更に、第1の実施の形態に係るテラヘルツ波コネクタ1を適用したテラヘルツ波集積回路2は、
図25に示すように、複数の送受信器18
1・18
2・18
3・18
4・18
5・18
6と、アンテナ16と、フォトニック結晶合分波器20とを備えていても良い。ここで、複数の送受信器18
1・18
2・18
3・18
4・18
5・18
6は、複数の異なる周波数f
1・f
2・f
3・f
4・f
5・f
6を有するテラヘルツ波を送受信可能である。
図25において、周波数f
1・f
2・f
3・f
4・f
5・f
6に対応して表示された矢印は、送信若しくは受信方向を示す。
【0087】
2次元フォトニック結晶スラブ12内に周期的に配置される格子点12Aの周期構造を乱すことで、
図26に示すように、特定周波数の入出力を可能とする合分波器を形成可能である。このような合分波器は、
図25および
図26に示すように、破線で囲まれた合分波器形成領域P、Q、R、S、U、Vに形成される。合分波器の周波数帯は、格子点12Aの孔の埋め方(個数)、埋めた周りの孔の大きさ、孔の位置のシフト、孔の周りの周期の大きさの変更などで調整可能である。例えば、孔を小さくしたり、個数を増やしたり、周期を大きくすると低周波数側に適用可能な周波数帯がシフトする。一方、孔を大きくしたり、個数を減らしたり、周期を小さくすると高周波数側へ適用可能な周波数帯がシフトする。すなわち、孔を大きくすると、テラヘルツ波の感じる屈折率が小さくなるために高周波側に移動し、逆に孔を大きくすると、テラヘルツ波の感じる屈折率が大きくなるために抵周波側に移動する。
【0088】
例えば、破線で囲まれた合分波器形成領域Pでは、周りの孔の大きさを大きく設定している。合分波器形成領域Qでは、周りの孔12Cの大きさを小さく設定している。合分波器形成領域Vでは、小さな孔12Sを導入している。合分波器形成領域Sでは、矢印で示されるように、2個の孔を内側にシフトしている。合分波器形成領域Rでは、矢印で示されるように、2個の孔を外側にシフトしている。合分波器形成領域Uでは、中央の孔を埋めて個数を減らしている。以上の合分波器形成領域の構成は一例である。
【0089】
[第2の実施の形態]
(無反射構造の導波路)
第1の実施の形態に係るテラヘルツ波コネクタの断熱的モード変換機構部(テーパー構造)10では、屈折率が、例えば、約3と高い半導体から、屈折率が、例えば、約1と低い媒質に向けて断熱的に屈折率が低くなる。このため、端面反射の影響を大幅に低減することが可能である。この断熱的モード変換機構部10は、フォトニック結晶導波路に集積化・一括形成可能な無反射構造である。したがって、第1の実施の形態に係るテラヘルツ波コネクタは、導波管との接続以外にも重要な役割を果たす。すなわち、単にコネクタに限定されず、無反射構造の導波路若しくは無反射構造の放射器などとしても適用可能である。また、取り扱う周波数帯域もテラヘルツ波帯に限定されず、一般的な光波も含まれる。この場合、フォトニック結晶は、格子点12Aの格子定数aを微細化し、動作波長が、例えば、約1μm〜2μm帯で、格子定数aは、例えば、約250nm〜約500nmなどとすれば良い。また、格子点12Aの直径・深さは、例えば、約200nm・300nm程度である。これらの数値例は、2次元フォトニック結晶スラブ12を構成する材料系および波長などによって適宜変更可能である。例えば、GaAs/AlGaAs系材料を適用した2次元フォトニック結晶スラブ12においては、波長としては、約200nm〜約400nm程度である。
【0090】
第2の実施の形態に係る導波路3における断熱的モード変換機構部10の構造は、第1の実施の形態に係るテラヘルツ波コネクタ1における断熱的モード変換機構部10・10A・10B・10Cと同様である。
【0091】
第2の実施の形態に係る導波路3は、2次元フォトニック結晶スラブ12と、2次元フォトニック結晶スラブ12内に周期的に配置され、2次元フォトニック結晶スラブ12のフォトニックバンド構造のフォトニックバンドギャップ帯における光波若しくはテラヘルツ波を、2次元フォトニック結晶スラブ12の面内での存在を禁止するために回折させる格子点12Aと、2次元フォトニック結晶スラブ12内に配置され、格子点12Aの線欠陥により形成された2次元フォトニック結晶導波路14Aと、2次元フォトニック結晶導波路14Aが延伸した2次元フォトニック結晶スラブ12の端面に配置され、2次元フォトニック結晶導波路14が延伸した断熱的モード変換機構部10とを備える。
【0092】
ここで、2次元フォトニック結晶スラブ12内に配置され、格子点12Aの線欠陥により形成された2次元フォトニック結晶導波路14Aと、2次元フォトニック結晶導波路14Aが延伸した2次元フォトニック結晶スラブ12の端面に配置され、2次元フォトニック結晶導波路14が延伸した断熱的モード変換機構部10によって、フォトニック結晶導波路14Aに集積化・一括形成可能な無反射構造の導波路構造が形成される。
【0093】
また、第2の実施の形態に係る導波路3において、断熱的モード変換機構部10は、
図2と同様に、2次元フォトニック結晶スラブ12の平面視において、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面から離隔するにしたがって、先端部が細くなるテーパー形状を備えていても良い。また、テーパー形状の側面は、
図2と同様に、傾斜面を備えていても良い。
【0094】
また、第2の実施の形態に係る導波路3は、
図3と同様に、断熱的モード変換機構部10を樹脂層38などで被覆した保護構造を備えていても良い。
【0095】
また、実施の形態に係る導波路3において、断熱的モード変換機構部10Aは、
図5と同様に、2次元フォトニック結晶スラブ12の平面視において、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面から離隔するにしたがって、先端部が細くなるテーパー形状を備え、かつテーパー形状の側面は曲面を有していても良い。ここで、この曲面は、双曲面若しくは指数関数面を有していても良い。
【0096】
また、第2の実施の形態に係る導波路3において、断熱的モード変換機構部10Bは、
図6と同様に、2次元フォトニック結晶スラブ12の平面視において、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面から離隔するにしたがって、先端部が細くなるテーパー形状を備え、かつテーパー形状の側面は複数の段差面を有していても良い。
【0097】
また、第2の実施の形態に係る導波路3において、断熱的モード変換機構部10Aは、
図7(a)と同様に、2次元フォトニック結晶スラブ12の平面視において、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面から離隔するにしたがって、先端部が細くなるテーパー形状を備え、かつテーパー形状の側面は曲面を有していても良い。
【0098】
また、第2の実施の形態に係る導波路3において、断熱的モード変換機構部10Cは、
図7(b)と同様に、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面から離隔するにしたがって、先端部が細くなる円錐型形状を備えていても良い。ここで、円錐型形状の変形例には、
図7(b)と同様に、トランペット型形状のみならず、単純な円錐形状が含まれていても良い。
【0099】
また、第2の実施の形態に係る導波路3において、断熱的モード変換機構部10は、
図8(a)と同様に、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面から離隔するにしたがって、先端部が細くなる四角錘形状を備えていても良い。
【0100】
また、第2の実施の形態に係る導波路3において、断熱的モード変換機構部10は、
図8(b)と同様に、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面から離隔するにしたがって、先端部の厚さが薄くなる楔型形状を備えていても良い。
【0101】
また、第2の実施の形態に係る導波路3において、断熱的モード変換機構部10は、
図9(a)と同様に、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面から離隔するにしたがって、先端部の厚さが薄くなる複数の階段型形状を備えていても良い。
【0102】
また、第2の実施の形態に係る導波路3において、断熱的モード変換機構部10は、
図9(b)と同様に、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面から離隔するにしたがって、先端部の厚さが薄くなる撥型形状を備えていても良い。ここで、断熱的モード変換機構部10は、2次元フォトニック結晶スラブ12の平面視において、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面から離隔するにしたがって、先端部が細くなるテーパー形状を備え、かつテーパー形状の側面は曲面を有する。
【0103】
また、第2の実施の形態に係る導波路3において、断熱的モード変換機構部10は、
図9(c)と同様に、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面から離隔するにしたがって、先端部の幅が薄くなる楔型形状を備えていても良い。ここで、断熱的モード変換機構部10は、2次元フォトニック結晶スラブ12の平面視において、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面から離隔するにしたがって、先端部が細くなるテーパー形状を備え、かつテーパー形状の側面は傾斜面を有する。
【0104】
また、第2の実施の形態に係る導波路3において、断熱的モード変換機構部10は、
図19と同様に、底辺部分の2次元フォトニック結晶スラブ12の端面に、端面方向の長さW
2で深さ(ギャップ距離)W
1のリセス構造を形成していても良い。すなわち、断熱的モード変換機構部10が配置される2次元フォトニック結晶スラブ12の端面は、断熱的モード変換機構部10の底辺の周辺部において、結晶端面における余計な表面波を抑制することができる。特に、ギャップ距離W
1>波長/3とすることが望ましい。
【0105】
また、第2の実施の形態に係る導波路3において、断熱的モード変換機構部10の構造は、上記の構造に限定されるものではなく、これらの構造のいずれかを組み合わせた構造も用いることも可能である。例えば、四角錘形状の側面に複数の段差形状を導入しても良い。あるいは、円錐形状若しくは円錐型トランペット形状の側面に複数の段差形状を導入しても良い。
【0106】
また、第2の実施の形態に係る導波路3において、格子点12Aは、正方格子、長方格子、面心長方格子、若しくは三角格子のいずれかに配置されていても良い。
【0107】
また、格子点12Aは、多角形、円形、楕円形若しくは長円形のいずれかの形状を備えていても良い。
【0108】
また、第2の実施の形態に係る導波路3において、2次元フォトニック結晶スラブ12は、半導体材料で形成されていても良い。ここで、半導体材料は、シリコン(Si)、GaAs、InP、GaN、さらに、GaInAsP/InP系、InGaAs/GaAs系、GaAlAs/GaAs系若しくはGaInNAs/GaAs系、GaAlInAs/InP系、AlGaInP/GaAs系、GaInN/GaN系の内、いずれかを適用可能である。また、2次元フォトニック結晶スラブ12は、抵抗率は3000Ωcm以上のシリコンで形成されていても良い。
【0109】
(アンテナ構造)
第2の実施の形態に係る導波路3は、その導波路3を用いた光デバイス一般において、無反射効果を有するため、例えば、アンテナ構造140にも適用可能である。
第2の実施の形態に係る導波路3を適用したアンテナ構造140の模式的鳥瞰構成は、
図27に示すように表される。
【0110】
第2の実施の形態に係る導波路3を適用したアンテナ構造140は、
図27に示すように、2次元フォトニック結晶スラブ12と、2次元フォトニック結晶スラブ12内に周期的に配置され、2次元フォトニック結晶スラブ12のフォトニックバンド構造のフォトニックバンドギャップ帯における光波若しくはテラヘルツ波を、2次元フォトニック結晶スラブの面内での存在を禁止するために回折させる格子点12Aと、2次元フォトニック結晶スラブ12内に配置され、格子点の線欠陥により形成された2次元フォトニック結晶導波路14Aと、2次元フォトニック結晶導波路14Aが延伸した2次元フォトニック結晶スラブ12の端面に配置され、2次元フォトニック結晶導波路14Aが延伸した断熱的モード変換機構部10とを備える。
【0111】
更に、第2の実施の形態に係る導波路3を適用したアンテナ構造140は、
図27に示すように、入出力機構60と、フォトニック結晶合分波器20と、送信器18Tと、受信器18Rと、2次元フォトニック結晶導波路14Aと、2次元フォトニック結晶導波路14Aの終端構造となる無反射構造の導波路3とを備える。入出力機構60は、自由空間からのカプラであって、1次元フォトニック結晶からなるグレーティングカプラで構成される。
【0112】
(反射率のシミュレーション結果)
第2の実施の形態に係る導波路3を適用したフォトニック結晶導波路14Aにおける反射率Rと周波数fとの関係を示すシミュレーション結果は、
図28(a)に示すように表され、第2の実施の形態に係る導波路3およびその導波路3を適用したフォトニック結晶導波路14Aの模式的鳥瞰構成は、
図28(b)に示すように表される。ここで、
図28(b)に示された導波路3は、断熱的モード変換機構部10の底辺部分の2次元フォトニック結晶スラブ12の端面に、
図19と同様に、リセス構造を備える。
【0113】
また、比較例として、無反射構造の導波路を適用しない場合のフォトニック結晶導波路14における反射率Rと周波数fとの関係を示すシミュレーション結果は、
図29(a)に示すように表され、比較例として無反射構造の導波路を適用しない場合のフォトニック結晶導波路14の模式的鳥瞰構成は、
図29(b)に示すように表される。
【0114】
図28(a)および
図29(a)において、フォトニック結晶導波路導波域はΔF(PC)で表される。
【0115】
第2の実施の形態に係る導波路3を適用したフォトニック結晶導波路14Aにおいては、
図28(a)に示すように、ΔF(PC)(0.313THz−0.395THz)における平均反射率Rは、約1.1%である。一方、比較例に係るフォトニック結晶導波路14のΔF(PC)における平均反射率Rは、約26%と高い。しかも、
図29(a)に示された結果は、フォトニック結晶導波路14の片側端面における結果である。このため、実際の値は、
図29(a)に示す値よりも大きくなる。
【0116】
第2の実施の形態に係る導波路3を適用したフォトニック結晶導波路14Aにおいては、ΔF(PC)における平均反射率Rは、無反射構造の導波路を適用しない(テーパー構造無し)場合と比較して、約1/23に抑制されている。なお、実施の形態に係る導波路3を適用したフォトニック結晶導波路14Aにおいては、
図28(b)に示す構成において、断熱的モード変換機構部10を形成しない反対側の端面に誘電体多層膜などで形成される反射防止膜を備えていても良い。
【0117】
第2の実施の形態に係る導波路3のテーパー構造の断熱的モード変換機構部10では、屈折率が、例えば、約3と高い半導体から屈折率が、例えば、約1と低い媒質に向けて、断熱的に屈折率が導波方向に低くなる。そのため、光波もしくはテラヘルツ波をフォトニック結晶中に閉じ込められた導波路から自由空間へ放射する放射器(一種の放射アンテナ)としても働く。また、通常のアンテナ同様に光波もしくはテラヘルツ波を自由空間から導波路へ入力するための入力機構としても動作可能である。
【0118】
(テーパーをもつ導波路の透過実験結果)
第2の実施の形態に係る導波路3を適用したフォトニック結晶導波路14Aにおける透過強度(a.u.)と周波数fとの関係を示す実験結果(透過スペクトルの一例)は、
図30に示すように表される。
【0119】
第2の実施の形態に係る導波路3を適用したフォトニック結晶導波路14Aにおいては、
図30に示すように、 フォトニック結晶導波路14Aの先端部がテーパー構造の断熱的モード変換機構部10を有するため、端面の干渉の影響によるスペクトルの乱れが大幅に軽減されている。
【0120】
(電磁界放射パターンのシミュレーション結果)
第2の実施の形態に係る導波路3を適用したフォトニック結晶導波路14Aにおける3次元電磁界放射パターンのシミュレーション結果は、
図31に示すように表される。また、テーパー先端方向DTに指向性を示す断面放射パターンのシミュレーション結果は、
図32に示すように表される。
【0121】
第2の実施の形態に係る導波路3においては、光波若しくはテラヘルツ波は、フォトニック結晶導波路14Aからテーパー先端方向へ指向性をもって放射される。
そのアンテナ利得は、例えば、約10.44(dBi)である。ここで、dBiは、均一放射に対する指向性強度をdB単位で表した値である。すなわち、均一放射と比べて、何dB強度が上昇するかという単位を表す。
図31において、均一放射と比べて、電力が3dB上昇する範囲における指向性は、片側で約40度である。
【0122】
第2の実施の形態に係る導波路3においては、反射率Rの低さを反映して、放射方向の周波数依存性のない広帯域動作のアンテナとして働く。
【0123】
(テーパーのアレイ化の構造例)
また、第2の実施の形態に係る導波路3において、断熱的モード変換機構部10(テーパー部)をアレイ化した構造例であって、2アレイアンテナの例は
図33(a)に示すように表され、3アレイアンテナの例は
図33(b)に示すように表され、4アレイアンテナの例は
図33(c)に示すように表され、4アレイアンテナの別の例は
図33(d)に示すように表される。
【0124】
すなわち、2アレイアンテナでは、
図33(a)に示すように、2個のテーパー部10A
1・10A
2を備える。3アレイアンテナでは、
図33(b)に示すように、3個のテーパー部10A
1・10A
2・10A
3を備える。4アレイアンテナでは、
図33(c)に示すように、4個のテーパー部10A
1・10A
2・10A
3・10A
4を備える。さらに、4アレイアンテナの別の例でも、
図33(d)に示すように、4個のテーパー部10A
1・10A
2・10A
3・10A
4を備える。
【0125】
さらに、第2の実施の形態に係る導波路3において、テーパー部をアレイ化した構造例であって、8アレイアンテナの例は
図34(a)に示すように表され、24アレイアンテナの例は
図34(b)に示すように表される。8アレイアンテナでは、
図34(a)に示すように、8個のテーパー部10A
1・10A
2・10A
3・10A
4・…・10A
8を備える。さらに、24アレイアンテナでは、
図34(b)に示すように、24個のテーパー部10A
1・10A
2・10A
3・…・10A
24を備える。
【0126】
第2の実施の形態に係る導波路3において、断熱的モード変換機構部10をアレイ化した構造におけるアンテナ利得(dBi)とアレイ数Nとの関係のシミュレーション結果は、
図35に示すように表される。断熱的モード変換機構部10をアレイ化することで、開口面積が増大し、放射指向性、すなわち、アンテナ利得を向上可能である。アレイ数Nに比例して、最大強度が増大していく。その際、アレイ間の距離Dは、0<D<λであれば良い。さらに望ましくは、λ/8<D<(3/8)λであれば良く、D〜λ/4が最適値である。ここで、λは、実施の形態に係る導波路3において放射若しくは受信される光波若しくはテラヘルツ波の波長である。
【0127】
また、
図33および
図34において、テーパー各部の寸法d
1、d
2、d
3、d
4の関係は、d
1>λ、d
4=d
2+d
3>λが望ましい。
【0128】
第2の実施の形態に係る導波路3においては、断熱的モード変換機構部10(テーパー部)をアレイ化することによって、近視野(Near Field)アレイアンテナを構成可能である。
【0129】
以上説明したように、本発明によれば、2次元フォトニック結晶と導波管の入出力部の接続損失を低減化可能なテラヘルツ波コネクタおよびそのテラヘルツ波コネクタを適用したテラヘルツ波集積回路を提供することができる。
【0130】
また、本発明によれば、2次元フォトニック結晶スラブの導波路端における光干渉(ファブリペロー共振)・多重反射の影響を抑制した無反射構造の導波路およびその導波路を適用したアンテナ構造を提供することができる。
【0131】
[その他の実施の形態]
上記のように、本発明は実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0132】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。