(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
固定床管式反応器に触媒を充填し、二酸化炭素とエポキシドを前記固定床管式反応器に連続的に供給して触媒と接触させるとともに、前記固定床管式反応器中の反応液を連続的に抜き出す環状カーボネートの連続的製造方法であって、
二酸化炭素とエポキシドを前記固定床管式反応器に供給する前に、環状カーボネートを含む前処理液を前記触媒に接触させ、生成するグリコールを系外へ除去する前処理工程を備えることを特徴とする製造方法。
前記触媒が、ハロゲン化物アニオンを対イオンとする第四級有機アンモニウム塩及びハロゲン化物アニオンを対イオンとする第四級有機ホスホニウム塩から選ばれる第四級有機オニウム塩が担体に固定化された固体触媒である請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔前処理工程〕
本発明の環状カーボネートの連続的製造方法は、二酸化炭素とエポキシドを固定床管式反応器に供給する前に、固定床管式反応器に充填された触媒に、環状カーボネートを含む前処理液を接触させ、生成するグリコールを系外へ除去する前処理工程を備えることを特徴とする。環状カーボネートを含む前処理液を前記触媒に接触させることによって、触媒に吸着された水と環状カーボネートが反応を起こしグリコールに変換される。また、生成するグリコールを原料供給前に系外へ除去しておくことで、環状カーボネート合成反応系へのグリコールの混入を防ぐことができる。また、前処理液の通液及びグリコールの除去は連続的又は間欠的に行ってよいが、連続的に行うのが好ましい。
なお、前処理工程に先立って、触媒が充填された反応器を真空排気及び/又は不活性ガスで予備乾燥してもよい。斯かる予備乾燥により、前処理液による処理時間を短縮することができる。また、該予備乾燥は、後述する前処理液を前記触媒に接触させるときの温度と同様の温度で行うのが好ましい。上記不活性ガスとしては、ヘリウム、アルゴン、窒素、二酸化炭素等を使用することができる。
【0015】
また、前処理液を前記触媒に接触させるときの温度は、好ましくは20〜140℃の範囲であり、より好ましくは50〜130℃の範囲であり、更に好ましくは80〜120℃の範囲である。斯かる温度を20℃以上とすることによって、環状カーボネートと触媒に含まれる水との反応が促進される。また、本発明の製造方法によれば、前処理の温度が140℃以下という低い温度でも、グリコール生成反応によって触媒中の水分を十分に除去することが可能であり、140℃以下とすることにより、むしろ、環状カーボネートの分解が抑えられ、より効率的に触媒中の水を除去できる。
【0016】
また、接触時間は、通常1〜40時間であるが、触媒に吸着された水を十分に除去する観点から、反応器からの流出液中のグリコールの合計含有量が150ppm以下になるまで行うのが好ましく、100ppm以下になるまで行うのがより好ましい。
【0017】
<前処理液>
前処理液に含まれる環状カーボネートは特に限定されるものではなく、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、イソブチレンカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、シクロヘキセンカーボネート、スチレンカーボネート、ブタジエンモノカーボネート、ブタジエンジカーボネート、クロロメチルカーボネート、ピネンカーボネート、テトラシアノエチレンカーボネート等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
斯様な環状カーボネートの中でも、下記式(1)で表されるものが好ましい。また、合成する環状カーボネートの純度の観点から、合成する環状カーボネートと同じものを用いることが好ましい。
【0019】
〔式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のハロアルケニル基、炭素数6〜12のアリール基又はシアノ基を示し、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、水素原子、シアノ基又は炭素数6〜12のアリール基を示す。但し、R
3及びR
4のうちいずれか一方は、R
1及びR
2のうちいずれか一方とともにシクロアルキル基を形成していてもよい。〕
【0020】
上記R
1及びR
2で示されるアルキル基、ハロアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜4である。該アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基であり、より好ましくはメチル基である。
また、上記R
1及びR
2で示されるアルケニル基、ハロアルケニル基の炭素数は、好ましくは2〜4であり、具体的には、ビニル基等が挙げられる。
また、ハロアルキル基及びハロアルケニル基におけるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
また、上記R
1、R
2、R
3及びR
4で示されるアリール基としては、フェニル基が好ましい。
【0021】
上記のようなR
1及びR
2の中でも、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基が好ましい。
また、R
3及びR
4としては、水素原子が好ましい。
【0022】
上記環状カーボネートは、市販のものを購入して用いることもできるが、環状カーボネート合成で得られた触媒更新前の反応液、循環液、これらを精製したもの等を用いることで、コストを抑えることができる。
【0023】
<触媒>
本発明の製造方法で用いる触媒は、エポキシドと二酸化炭素からの環状カーボネート合成に活性を有し、固定床管式反応器に充填可能なものであれば特に限定されないが、反応効率の観点から、有機化合物(好ましくはイオン性有機化合物)が担体に固定化された固体触媒が好ましい。なお、触媒として上記固体触媒を用い、且つ上記前処理の温度を140℃以下とした場合、有機鎖の熱的分解による触媒活性の低下を抑えることができるため、反応効率が飛躍的に向上する。
【0024】
上記イオン性有機化合物としては、ハロゲン化物アニオンを対イオンとする第四級有機アンモニウム塩及びハロゲン化物アニオンを対イオンとする第四級有機ホスホニウム塩から選ばれる第四級有機オニウム塩が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。上記ハロゲン化物アニオンにおけるハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
また、上記第四級有機オニウム塩において、窒素原子又はリン原子に結合している有機基としては、後述するR
5を誘導する基、R
6〜R
8が挙げられる。
【0025】
また、上記第四級有機オニウム塩の中でも、テトラアルキルアンモニウムクロリド、テトラアルキルアンモニウムブロミド等のテトラアルキルアンモニウム塩;テトラアルキルホスホニウムクロリド、テトラアルキルホスホニウムブロミド等のテトラアルキルホスホニウム塩が好ましく、テトラアルキルホスホニウム塩がより好ましい。
【0026】
また、上記担体としては、無機酸化物担体、有機ポリマー担体が挙げられる。また、その形状は好ましくは粒子状であり、また、多孔質のものが好ましい。
上記無機酸化物担体としては、ケイ素、アルミニウム、チタン、マグネシウム、ジルコニウム、ホウ素、カルシウム、亜鉛、バリウム、鉄等の酸化物を含むものが好ましく、このような酸化物のうち1種又は2種以上含んでいてもよい。斯様な酸化物としては、SiO
2、Al
2O
3、TiO
2、MgO、ZrO
2、B
2O
3、CaO、ZnO、BaO、Fe
2O
3が挙げられる。
無機酸化物担体の好適な具体例としては、シリカゲル(ゲル化したシリカ)、メソポーラスシリカ、セラミックス、ゼオライト、多孔質ガラスが挙げられ、シリカゲル、メソポーラスシリカが好ましい。
【0027】
また、上記有機ポリマー担体としては、ポリスチレン、ポリスチレンコポリマー、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリベンゾキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、またはこれらポリマーを主要な成分として含む共重合体、ポリマーブレンド等が挙げられる。
【0028】
本発明の製造方法で用いる触媒の好適な具体例としては、下記式(2)で表される基が上記担体に結合しているものが挙げられる。
【0030】
〔式(2)中、R
5は、アルキレン基、アリーレン基、アルカリーレン基、アリーレンアルキレン基又はアルキレンアリーレン基を示し、R
6〜R
8は、それぞれ独立して、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシを置換基として有するアリール基、又はこれら基に含まれる水素原子の1個以上がヘテロ原子を含む基で置換されたものを示し、Xはリン原子又は窒素原子を示し、Yはハロゲン原子を示し、*は結合手を示す。〕
【0031】
上記式(2)中、R
5で示されるアルキレン基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、その炭素数は、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜6、更に好ましくは2〜4である。
上記アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基等が挙げられる。
【0032】
また、R
5で示されるアリーレン基の炭素数は、好ましくは6〜14、より好ましくは6〜12、更に好ましくは6〜10である。例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ビフェニル等に由来する2価の基が挙げられる。
また、R
5で示されるアルカリーレン基は好ましくは炭素数8〜10のアルカリーレン基であり、例えばキシリレン基等が挙げられる。
【0033】
また、R
5で示されるアリーレンアルキレン基、アルキレンアリーレン基の炭素数としては、好ましくは7〜12、より好ましくは7〜10である。
上記アリーレンアルキレン基としては、例えば、フェニレンメチレン基、フェニレンエチレン基、フェニレントリメチレン基、ナフチレンメチレン基、ナフチレンエチレン基等が挙げられる。
また、上記アルキレンアリーレン基としては、例えば、メチレンフェニレン基、エチレンフェニレン基、トリメチレンフェニレン基、メチレンナフチレン基、エチレンナフチレン基等が挙げられる。
【0034】
上記のようなR
5の中でも、アルキレン基、アリーレン基、アリーレンアルキレン基が好ましく、アルキレン基がより好ましい。
【0035】
式(2)中、R
6〜R
8で示されるアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、その炭素数は、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜6、更に好ましくは2〜4である。
上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロへキシル基等が挙げられる。
【0036】
また、R
6〜R
8で示されるアリール基の炭素数は、好ましくは6〜14、より好ましくは6〜12、更に好ましくは炭素数6〜10である。例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニル基、フェナントリル基等が挙げられる。
【0037】
また、R
6〜R
8で示されるアラルキル基の炭素数は、好ましくは7〜12、より好ましくは7〜10である。例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等が挙げられる。
【0038】
また、R
6〜R
8で示されるアルコキシアルキル基は好ましくは炭素数2〜8のアルコキシアルキル基であり、例えばメトキシエチル基等が挙げられる。
また、R
6〜R
8で示されるアルコキシを置換基として有するアリール基は好ましくは炭素数7〜14のアルコキシアリール基であり、例えばメトキシフェニル基、ジメトキシフェニル基等が挙げられる。また、アリール基が有するアルコキシ基の個数及び位置は任意であるが、好ましいアルコキシ基の個数は1〜4個であり、より好ましくは1又は2個である。
【0039】
なお、上記アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシを置換基として有するアリール基は、これら基に含まれる水素原子の1個以上がヘテロ原子を含む基で置換されていてもよい。ヘテロ原子としては、窒素、酸素、リン、イオウ、ハロゲン原子(フッ素原子等)等が挙げられる。
上記ヘテロ原子を含む基としては、アミノ基、ヒドラジノ基、ニトロ基、シアノ基、イソシアノ基、アミジノ基等の窒素含有基;アルカノイル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基等の酸素含有基;ホスファニル基、ホスホノ基、ホスフィニル基等のリン含有基;スルホ基、スルファニル基、アルキルスルファニル基、アルキルスルホニル基、アルキルスルホニルアミノ基、アルキルアミノスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アルキルアミノスルフィニル基、アルキルスルフィニルアミノ基、チオカルボキシ基等のイオウ含有基等が挙げられる。
【0040】
上述のようなR
6〜R
8の中でも、アルキル基、アリール基、アラルキル基が好ましい。
【0041】
また、式(2)において、Xとしてはリン原子が好ましい。また、Yで示されるハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、好ましくは塩素原子、臭素原子である。
【0042】
なお、上記式(2)で表される基は、共有結合等によって担体に直接結合していてもよく、下記式(3)のようにリンカーを介して結合していてもよい。
【0044】
〔式(3)中、R
9はメチル基又はエチル基を示し、nは0〜2の整数を示し、mは1〜3の整数を示すが、n+m=3を満たし、nが2のとき2つあるR
9は同じでも異なっていてもよい。**は担体との結合部を示し、その他の記号は前記と同義である。〕
この中でも、n=0、m=3の構造を有するものが好ましい。
【0045】
また、上記触媒としては、ハロゲン修飾量が0.25〜0.8mmol/gであり、リン又は窒素の修飾量が0.25〜0.6mmol/gのものが好ましい。
【0046】
また、反応器に充填する触媒量は、供給するエポキシド全量100質量部に対し、通常、0.01〜10質量部であり、好ましくは0.03〜10質量部である。
【0047】
本発明の製造方法で用いる触媒は、市販のものを用いてもよいが、例えば、国際公開第2005/084801号や特開2008−296066号公報に記載の方法に準じ、ハロゲンを含むシラン化合物をシリカゲルと反応させた後、これにトリアルキルホスフィン等の有機ホスフィンを反応させてホスホニウム塩化する等して調製してもよい。
【0048】
〔連続反応工程〕
本発明の環状カーボネートの連続的製造方法は、二酸化炭素とエポキシドを原料とするものであるが、これらが混合するようにして固定床管式反応器に供給するのが好ましい。
なお、上記前処理工程の後、連続反応に先立ち、環状カーボネートの液体を反応器に連続的に供給するとともに、斯かる環状カーボネートの液体を反応器から連続的に抜き出して循環させておき、斯かる条件の下で二酸化炭素とエポキシドを反応器に供給するのが好ましい。これによって、上記原料や後述する触媒劣化抑制剤が環状カーボネートに溶解した状態となり(環状カーボネートが溶媒として作用する)、反応状態は触媒との疑似液固反応とみなせるため、反応熱による温度上昇が緩和され、触媒の濡れ性の向上し、二酸化炭素ガスの偏流が抑制される。環状カーボネートは上記前処理液に含まれるものを用いればよい。
【0049】
上記エポキシドとしては、エポキシ環(炭素原子2つと酸素原子1つからなる3員環)を構造式中に少なくとも1つ含む化合物であれば特に限定されないが、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、ビニルエチレンオキシド、トリフルオロメチルエチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、ブタジエンモノオキシド、ブタジエンジオキシド、2−メチル−3−フェニルブテンオキシド、ピネンオキシド、テトラシアノエチレンオキシド等が挙げられる。
斯様なエポキシドの中でも、下記式(4)で表されるものが好ましく、エチレンオキシド、プロピレンオキシドがより好ましい。
【0051】
〔式(4)中、R
1〜R
4は前記と同義である。〕
【0052】
また、二酸化炭素の総供給量は、供給するエポキシド全量に対し、通常、1.0〜10モル当量であり、好ましくは1.1〜2.0モル当量である。
【0053】
また、連続反応工程には、溶媒を用いてもよい。斯かる溶媒としては、上記環状カーボネートの他、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;酢酸エチル等のエステル類;トリエチルアミン、ピリジン、メチルピリダジン、N,N’−ジメチルピリダジノン等の第3級アミン類;ジブチルスルフィド等のスルフィド類;トリブチルホスフィン等のホスフィン類等を用いることができる。これら溶媒は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、上記溶媒の使用量は、反応器中のエポキシドの濃度が、通常1.0〜20質量%となる量である。
【0054】
更に、本発明の製造方法においては、上記原料とともに、触媒劣化抑制剤を反応器に供給してもよい。上記第四級有機オニウム塩が担体に固定化された固体触媒を用いる場合、触媒劣化抑制剤としては有機ハロゲン化物が好ましい。有機ハロゲン化物としては、ブロモエタノール、クロロエタノール等のハロゲン化アルコール;ハロゲン化アルキル;ハロゲン化エーテル;ハロゲン化カルボニル化合物等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、上記触媒劣化抑制剤は、通常、反応器中の触媒劣化抑制剤の濃度が、0.01〜0.2質量%となるように添加される。
【0055】
また、連続反応工程における反応温度は、反応効率の観点から、好ましくは20〜160℃の範囲、より好ましくは50〜150℃の範囲、有機化合物が担体に固定化された固体触媒を用いる場合は、更に好ましくは80〜140℃の範囲であり、更に好ましくは80〜130℃の範囲、特に好ましくは80〜120℃の範囲である。
また、反応圧力は特に限定されないが、好ましくは0.1〜100MPaの範囲、より好ましくは0.5〜50MPaの範囲、更に好ましくは1〜25MPaの範囲である。
【0056】
また、本発明の製造方法においては、固定床管式反応器から連続的に抜き出した反応液の一部を、固定床管式反応器に供給して循環させるのが好ましい。本発明の製造方法は、得られる反応液中のグリコール量が低いため、上記のように循環させても触媒の活性低下が少なく、また、循環させることによって、反応器内が環状カーボネートで希釈され、反応器内の温度制御が容易になる。
なお、本発明の製造方法は、固定床管式反応器を備える連続製造装置を用いて行うことができるが、斯様な連続製造装置の一例として
図1で示されるものが挙げられる。本装置は、反応器(6)にエポキシドと二酸化炭素をそれぞれ送液するポンプ(3a)及び(3c)に加え、循環用ポンプ(3d)を備える。反応器(6)から流出した反応液は、気液分離槽(10)に一旦貯蔵され、そこから上記ポンプ(3d)によって一定量が反応器(6)に供給され循環される。残りの反応液は受槽(12)に送られる。
【0057】
そして、上記連続反応の反応液を回収することにより高純度の環状カーボネートを得ることができる。斯かる反応液は、必要に応じて、蒸留、吸着、晶析等の一般的な方法等の通常の手段を適宜組み合わせて分離・精製してもよく、また、これらの方法はバッチ式、連続式のいずれであってもよいが、上記反応液は環状カーボネートの純度が高く、グリコール量が低いため、分離・精製をする場合、簡便な手段でも高純度の環状カーボネートが得られる。なお、上記回収された反応液中のグリコール濃度は、通常100ppm以下、好ましくは50ppm以下、より好ましくは20ppm以下、特に好ましくは10ppm以下となる。
また、得られる環状カーボネートは、上記エポキシドのエポキシ環がカーボネート環(O−CO−O結合を有する5員環)に変換された構造を有するものであり、具体的には、上記前処理液に含まれるものと同様のものが挙げられる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0059】
各実施例及び比較例において用いた分析方法は以下のとおりである。
(1)蛍光X線分析
触媒の臭素、塩素及びリン修飾量の測定には、蛍光X線分析を用いた(装置:製品名「System3270」(理学電機工業社製)、測定条件:Rh管球、管電圧50kV、管電流50mV、真空雰囲気、検出器:SC、F−PC)。
【0060】
(2)ガスクロマトグラフィー
反応液等の組成分析には、ガスクロマトグラフィーを用いた。分析条件は以下のとおりである。
装置:製品名「GC−2010Plus」(島津製作所社製)
検出器:FID
INJ温度:150℃
DET温度:260℃
サンプル量:0.3μL
スプリット比:5
カラム:DB−624(60m、0.32mmID、1.8μm、Agilent社製)
カラム温度:70℃、3分−5℃/分−120℃−10℃/分−250℃、5分(計31分)
【0061】
触媒合成例1:トリブチルホスホニウムブロミド表面修飾シリカゲル触媒の合成
ビーズ状シリカゲル(富士シリシア化学製CARiACT Q−10(平均細孔径10nm、粒子径1.2〜2.4mm、比表面積300m
2/g))2000gとキシレン5000mLとを、Dean−Starkトラップを備えた10L撹拌羽つき三口フラスコに仕込み、140℃還流下、2時間キシレン−水の共沸脱水を行い、シリカゲル中の水分を除去した。次いで、Dean−Starkトラップを取り外し、フラスコ内を窒素で置換した後、3−ブロモプロピルトリメトキシシラン219g(0.846mol)を滴下した。これをそのまま135℃で7時間加熱還流することにより、シラン化反応を行った。次いで得られた反応物をろ過により分離し、キシレンで2回洗浄を行い、キシレンを含む触媒前駆体(ブロモプロピル化シリカゲル)3810gを得た。続けて得られた触媒前駆体とキシレン5000mLとを10L撹拌羽つき三口フラスコに仕込み、フラスコ内を窒素置換した後、トリ−n−ブチルホスフィン453gを滴下した。これをそのまま120℃で25時間加熱することにより、4級ホスホニウム化反応を行った。反応後、ろ過により反応物を分離し、アセトンで6回洗浄を行った。得られた反応物を、窒素気流下、120℃で5時間減圧乾燥を行い、目的とするトリブチルホスホニウムブロミド表面修飾シリカゲル2328gを得た。触媒中の臭素修飾量は0.35mmol/gであり、リン修飾量は0.32mmol/gであった。
【0062】
実施例1:エチレンカーボネート製造例(1)
図1に示される連続流通式反応装置を用いて、エチレンカーボネートの製造を行った。
<前処理工程>
(1−1)内径50mm、長さ100cm、容積2000mLの反応器6に、触媒合成例1で得られた触媒を530g(反応器6の1000mLの目盛まで満たす量)充填し、更に触媒の前後に粒子径4mmのガラスビーズを充填した。
(1−2)次いで、バルブ8aを開け、1L/minにて窒素を反応器6に供給し、更に反応器ジャケット7に沸騰水を流して、反応器6の温度を100℃に昇温した。そのまま窒素を8時間流し続け触媒を予備乾燥させた後、バルブ8aを閉じ、窒素流通による触媒乾燥を停止した。
(1−3)その後、前処理液として、予め70℃で加熱し溶解されたエチレンカーボネートを気液分離槽10に10kg張り込み、これを、ポンプ3dにより1250g/hで8時間、予熱器4、反応器6に送液した。その際、予熱器4にて、反応器入口温度が100℃となる温度で反応器6に供給される前処理液を加熱し、また、反応器6から排出された前処理液は、バルブ8cを閉弁してバブル8bから系外へ連続的に抜き出した。
なお、前処理液の送液開始から8時間経過後の反応器6から排出された前処理液中のモノエチレングリコール(以下、MEG)の濃度は43ppmであり、ジエチレングリコール(以下、DEG)の濃度は29ppmであった。グリコ―ル濃度を確認後、バルブ8cを開けてバルブ8bを閉じ、前処理を終了させた。
【0063】
<連続反応>
(2−1)予め70℃に加熱し溶解されたエチレンカーボネートを気液分離槽10に7kg張り込み、これを、ポンプ3dにより1200g/hで予熱器4、反応器6に送液した。その際、予熱器4にて、反応器入口温度が100℃となる温度で反応器6に供給されるエチレンカーボネートを加熱した。また、反応器6からの流出液は、バルブ8cを通じて系内を循環させた。
(2−2)次いで、ポンプ3cにより300g/hで二酸化炭素を反応器6に供給し、背圧弁9bにて、気液分離槽10、予熱器4、反応器6の圧力が7MPaになるように調圧した。その際、二酸化炭素はスタティックミキサー5bにて撹拌され、エチレンカーボネートに溶解した状態で、予熱器4、反応器6へと供給された。
その後、ポンプ3c及び3dにより、二酸化炭素の流量を45g/hに、二酸化炭素が溶解したエチレンカーボネートの流量を1400g/hにそれぞれ調整し、背圧弁9aにて、予熱器4、反応器6の圧力が7.5MPaになるように調圧した。
(2−3)上記工程(2−1)のエチレンカーボネートの循環開始から約20時間経過後、ポンプ3bにより2−ブロモエタノールを0.43g/hで反応器6へ供給し、ポンプ3aによりエチレンオキシドを30g/hで反応器6へ供給することで、連続流通式反応を開始した。
なお、2−ブロモエタノールとエチレンオキシドの供給の際には、スタティックミキサー5aにて、2−ブロモエタノールとエチレンオキシドはエチレンカーボネートに混合され、反応器6へ供給される。すなわち、エチレンオキシド、二酸化炭素及び2−ブロモエタノールがすべてエチレンカーボネートに溶解した状態で反応器6へ供給されることとなる。斯様にエチレンカーボネートを循環させることによって、反応状態は触媒との疑似液固反応とみなせる。
(2−4)反応開始から6時間経過後、反応器6への2−ブロモエタノールの供給量が、2−ブロモエタノール/エチレンオキシド=5mmol/molにて一定となるように、ポンプ3bにより2−ブロモエタノールの流量を0.024g/hに調整し、反応を続けた。反応により生成したエチレンカーボネートは、液面調整弁11にて受槽12へと抜き出した。
【0064】
上記工程(1−3)開始から反応終了までの反応器6からの流出液中のMEG及びDEGの濃度の推移をプロットした。結果を、
図2及び
図3にそれぞれ示す。また、反応開始から195時間後の反応液中のエチレンカーボネート濃度は99.6%、MEGは不検出(検出下限4ppm)、DEG濃度は7ppmであった。
また、上記反応開始から195時間後の反応液を、実段10段のバッチ式オルダーショウ精留塔を用いて、塔頂圧力10torr、塔底温度120〜122℃、還流比60の条件で蒸留精製を行い(仕込液量に対して留出率5質量%まで)、更に還流比を4に変更して蒸留精製を行った。得られた精製エチレンカーボネートの純度は99.99%、MEGおよびDEGはともに不検出(ともに検出下限4ppm)であった。
【0065】
比較例1:エチレンカーボネート製造例(2)
上記工程(1−3)を行わないこと以外は実施例1と同様の操作により連続反応を行った。反応開始から終了までの反応器6からの流出液中のMEG及びDEGの濃度の推移をプロットした。結果を
図2及び
図3にそれぞれ示す。また、反応開始から192時間後の反応液中のエチレンカーボネート濃度は99.0%、MEG濃度は80ppm、DEG濃度は241ppmであった。
また、上記反応開始から192時間後の反応液を、実段10段のバッチ式オルダーショウ精留塔を用いて実施例1と同様に蒸留精製を行った。得られた精製エチレンカーボネートの純度は99.95%、MEG濃度は32ppm、DEG濃度は256ppmであった。
【0066】
参考例:グリコール類の添加による触媒劣化への影響評価
以下のバッチ式エチレンカーボネート合成反応においては、グリコール類が触媒の活性低下の原因となることを示すものである。
攪拌子を入れた50mLのオートクレーブに、前記合成例と同様に合成したトリブチルホスホニウムブロミド表面修飾シリカゲル触媒(平均細孔径10nm、粒子径1.2〜2.4mm、臭素修飾量0.28mmol/g、リン修飾量0.30mmol/g)を200mg仕込み、120℃で1時間減圧乾燥を行った。オートクレーブ内を窒素にて大気圧、室温に戻した後、エチレンオキシド3g(約68mmol)と、表1に示したグリコールを仕込んだ。
次いで、二酸化炭素を1.5MPaまで仮充填し、その後、オートクレーブ内を回転子により800rpmで撹拌しつつ120℃まで加熱し、二酸化炭素をさらに充填することにより、内圧を4.5MPaに調整し、1時間反応させた。冷却後、残存する二酸化炭素を放出し、オートクレーブ内を脱圧した。得られた反応液をガスクロマトグラフにより分析し、エチレンオキシド転化率およびエチレンカーボネート収率を求めた。結果を表1に示す。
【0067】
【表1】