(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6281935
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】Qスイッチレーザー装置
(51)【国際特許分類】
H01S 3/06 20060101AFI20180208BHJP
H01S 3/113 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
H01S3/06
H01S3/113
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-222736(P2013-222736)
(22)【出願日】2013年10月25日
(65)【公開番号】特開2015-84390(P2015-84390A)
(43)【公開日】2015年4月30日
【審査請求日】2016年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】504261077
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人自然科学研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平等 拓範
(72)【発明者】
【氏名】バンダリ ラケシュ
【審査官】
高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第06973115(US,B1)
【文献】
特開平05−267753(JP,A)
【文献】
特開2003−086873(JP,A)
【文献】
特開2003−229619(JP,A)
【文献】
特表2010−512651(JP,A)
【文献】
特表2000−517481(JP,A)
【文献】
特開昭61−253878(JP,A)
【文献】
N.Pavel et al.,High Average Power Diode End-Pumped Composite Nd:YAG Laser Passively Q-switched by Cr4+:YAG Saturable Absorber,Japanese Journal of Applied Physics,日本,2001年 3月,Vol.40,Part1,No.3A,pp1253-1259
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00−3/02,3/04−3/0959,
3/098−3/102,3/105−3/131,
3/136−3/213,3/23−4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドキャップとレーザー媒質とQスイッチが、その順序に従って直線上に配置されており、前記Qスイッチから放出されるパルスレーザー光を波長変換装置に入力し、波長変換したパルスレーザー光を質量イメージング装置に出力するQスイッチレーザー装置であり、
前記エンドキャップは、希土類元素を含まないイットリウム・アルミニウム・ガーネットの結晶(YAG)からなり、
前記レーザー媒質は、希土類元素を含むYAGからなり、
前記エンドキャップを形成するYAGと前記レーザー媒質を形成するYAGの<100>軸または<110>軸が、前記直線に沿って延びており、
前記エンドキャップを形成するYAGと前記レーザー媒質を形成するYAGが接合されており、
繰り返し周波数を1kHzとしたときに前記Qスイッチから放出されるパルスレーザー光が2.4MWのピークパワーを確保することを特徴とするQスイッチレーザー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、光励起するとパルスレーザー光を発振するQスイッチレーザー装置を開示する。特に、希土類元素を含むイットリウム・アルミニウム・ガーネットの結晶をレーザー媒質に用いるQスイッチレーザー装置を開示する。本明細書では、イットリウム・アルミニウム・ガーネットの結晶をYAGという。
【背景技術】
【0002】
希土類元素を含むYAGを挿入した共振系に励起光を入力するとレーザー光を発振する現象を利用したレーザー装置が知られている。共振系にQスイッチを挿入することによって、パルスレーザー光を発振させる技術も知られている。非特許文献1に、希土類元素を含むYAGをレーザー媒質に用いたQスイッチレーザー装置が開示されている。
【0003】
パルスレーザー光のピークパワーを増大したいとする要求が存在する。そのためには、レーザー媒質に入力する励起光の空間密度を高めることが有望だと推定される。すなわち励起光を集光してレーザー媒質に入力することによって、パルスレーザー光のピークパワーが増大するものと期待される。実際に、連続発振レーザー装置の場合、励起光を集光することでレーザー光のパワーが増大する。
しかしながら、Qスイッチレーザー装置の場合、励起光の集光度を高めても、パルスレーザー光の繰り返し周波数が増大するだけで、パルスレーザー光のピークパワーは増大しない。その問題に対処するために、特許文献1と2に記載の技術が開発された。この技術では励起光の集光度を高めるのではなく、レーザー媒質に入力する励起光のビーム径を広げる。すなわち、光スイッチが開く際に蓄積されている反転分布の総量を増やす。具体的には、励起光を集光するのではなく、励起光のビーム面積を拡げてレーザー媒質に入射する。ビーム径が拡大すると、反転
分布の総数が増えることから、Qスイッチレーザー装置から発振されるパルスレーザー光の出力エネルギー、すなわちピークパワーが増大する。
【0004】
レーザー媒質に励起光を入射すると、量子欠損によりレーザー媒質が加熱される。具体的には、励起光入射面における励起光の照射範囲内とその近傍において、レーザー媒質が局所的に加熱される。レーザー媒質が局所的に加熱されると、レーザー媒質が局所的に熱膨張し、励起光の入射面が変形し、レーザー光の発振に悪影響を及ぼす(以下では熱問題という)。
特許文献1と2に記載されている技術、すなわち、励起光のビーム面積を広げて入力する技術(以下では励起体積増大技術という)によると、レーザー媒質の励起光入射面における単位面積当たりの励起光パワーが減少し、レーザー媒質の単位体積当たりの発熱量を下げることになる。
【0005】
レーザー媒質の励起光入射面に、励起光に対して透明な固体の板を接合する(以下ではエンドキャップ技術という)と、励起光入射面の変形を抑制することができる。エンドキャップ技術もまた、熱問題の解決に有利である。
Qスイッチレーザー装置を励起する励起光には、連続光を用いることもできれば、パルス光を用いることもできる。励起光にパルス光を用いると、レーザー媒質の励起光入射面に入射される励起光パワーの時間平均値が低下し、熱問題を抑制することができる。一方で、瞬時的な強励起が可能なため反転分布は高くできる。繰り返し周波数が低いパルス光で励起するほど、励起光パワーの時間平均値が低下し、熱問題を強く抑制しながらQスイッチレーザー装置の特性を高めることができる(以下では低周波励起技術という)。
特許文献1と2の技術では、励起体積増大技術とエンドキャップ技術と低周波励起技術を併用して、熱問題を抑制している。
なお、非特許文献2と特許文献3の開示内容については後記する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】High Average Power Diode End-Pumped Composite Nd:YAG Laser Passively Q-switched by Cr4+:YAG Saturable Absorber, Nicolaie Pavel, Jiro Saikawa, Sunao Kurimura and Takunori Taira, Jpn. J. Appl. Phys. Vol. 40 (2001) pp 1253-1259
【非特許文献2】Intrinsic reduction of the depolarization loss in solid-state lasers by use of a (110)-cut Y3Al5O12 crystal, Ichiro Shoji and Takunori Taira, Applied Physics letters. Vol. 80 Number 17, (2002) pp 3048-3050
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-158325号公報
【特許文献2】米国特許公報6950449号公報
【特許文献3】特許第3585891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
励起体積増大技術とエンドキャップ技術と低周波励起技術を組み合わせて用いる特許文献1と2の技術は、熱問題を抑制してパルスレーザー光のピークパワーを増大させる優れた技術あるが、励起光の繰り返し周波数を低周波化(具体的には100Hz程度)しなければならないという問題を内在している。
【0009】
例えばPM2.5といった微粒子中における物質の分布を計測したいという要求があり、質量イメージング装置の開発がすすめられている。その分析装置は、例えば1kHz程度の繰り返し周波数を持つパルスレーザー光を必要とする。特許文献1と2の技術では、低周波励起技術を採用するために、上記の要請に応えることができない。
【0010】
特許文献1と2の技術において、励起光の繰り返し周波数を1kHz程度にまで高周波化してみた。すると、励起体積増大技術とエンドキャップ技術とによって熱問題を除去する効果が高く、励起光の繰り返し周波数を1kHz程度にまで高周波化してもピークパワーはそれほどに低下しないことが分かった。しかしながら、レーザー光を波長変換装置に入力して波長変換すると、波長変換後のピークパワーが極端に低下してしまうことが分かった。波長変換して用いるパルスレーザー光を発振させるためには、励起体積増大技術とエンドキャップ技術と低周波励起技術を合わせて用いる必要があり、低周波励起技術を外すと波長変換効率が極端に低下してしまうことが分かった。YAGを利用するQスイッチレーザー装置によって波長変換用のパルスレーザー光を発振させる場合には、繰り返し周波数を100Hz程度に抑える必要がある。
【0011】
本明細書では、低周波励起技術に依らないで、波長変換用のパルスレーザー光を発振させる技術を開示する。パルスレーザー光が直線偏光していれば、波長変換後のピークパワーが高く維持される。本明細書では、低周波励起技術に依らないで、YAGから直線偏光しているパルスレーザー光を発振させる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
低周波励起技術を除外すると、パルスレーザー光の強度は確保できるものの、パルスレーザー光の直線偏光度が劣化する原因を研究した。強度が確保されることから、熱的な問題は抑制されているはずであり、それにも拘わらずに直線偏光度が劣化する原因が不明であった。その結果、励起体積増大技術とエンドキャップ技術を用いると、低周波励起技術を用いないでも、レーザー媒質の光軸に沿った領域での熱的問題を抑えることができてパルスレーザー光の強度は確保できる反面、レーザー媒質とエンドキャップとの接合面においてローカルな加熱域が形成され、その局所的加熱領域に生じる複屈折現象によって、レーザー光の直線偏光度が劣化することを確認した。具体的には、希土類元素を含むYAGは、励起に伴う量子欠損により発熱、膨張しようとするが、希土類元素を含まないYAGそのものは発熱しないため、両者間に応力が発生する。両者が原子レベルで接合していればしているほど、その界面に強い応力が発生する。一方で、これらの界面の接合が厳密でなければ、両者のストレスは緩和される。ただし、その場合は希土類元素を含まないYAGよる排熱効果は低下する。
上記に知見から、強固に接合しても局所発生する応力によって偏光度劣化がおきにくい新たな結晶軸が存在すれば、これらの諸問題が一挙に解決できるというアイデアが得られた。研究の結果、レーザー装置の共振系の光軸に沿って<100>軸が延びる向きにYAGを配置すると、前記の現象が抑制され、レーザー光が直線偏光から劣化することを抑制できることが分かった。
【0013】
本明細書で開示するQスイッチレーザー装置は、エンドキャップとレーザー媒質とQスイッチを備えており、それらがその順序に従って直線
上に配置されている。
本明細書で開示するQスイッチレーザー装置では、Qスイッチから放出されるパルスレーザー光を波長変換装置に入力し、波長変換したパルスレーザー光を質量イメージング装置に出力する。エンドキャップは、希土類元素を含まないYAGで構成され、レーザー媒質は、希土類元素を含むYAGで構成されている。エンドキャッを形成するYAGとレーザー媒質を形成するYAGは、その<100>軸がレーザー装置の光軸に沿って延びる向きに配置されている。エンドキャップを形成するYAGとレーザー媒質を形成するYAGは接合されている。
本明細書で開示するQスイッチレーザー装置では、繰り返し周波数を1kHzとしたときにQスイッチから放出されるパルスレーザー光が2.4MWのピークパワーを確保する。このために、質量イメージング装置に組み込む光源とすることができる。
【0014】
通常は、レーザー装置の光軸に沿って<111>軸が延びる向きにYAGを配置する。YAGは、<111軸>に沿って成長することから、<111>軸方向に延びているロッド状結晶が入手しやすいからである。非特許文献1と特許文献1と特許文献2に開示されているレーザー装置でも、光軸に沿って<111>軸が延びる向きにYAGを配置する。
<111>軸方向に延びるロッド状のYAG(希土類が含まれており、励起光を吸収してレーザー発振する)の励起光入射面に、結晶軸が揃っているYAG(希土類が含まれておらず、励起光に対して透明である)を接合すると、エンドキャップ効果によって、励起光入射面が熱の影響を受けて変形することを防止できる。励起体積増大技術と合わせて用いると、低周波励起技術を併用しないでも、ピークパワーが高いパルスレーザー光を発振させることができる。しかしながら、低周波励起技術を併用しないと、直線偏光から劣化してしまう。
それに対して、レーザー装置の光軸に沿って<100>軸が延びる向きにYAGを配置すると、低周波励起技術を併用しないでも直線偏光が維持される。同様のことが、レーザー装置の光軸に沿って<110>軸が延びる向きにYAGを配置した場合にも得られる。本明細書に記載のレーザー装置によると、直線偏光が維持されていてピークパワーが高いパルスレーザー光を発振する。波長変換した後に高いピークパワーが得られるレーザー光が得られる。
【0015】
非特許文献2と特許文献3に、レーザー媒質に用いるYAGを、その<100>軸が共振系の光軸に沿って延びる向きに配置する技術が開示されている。この技術は、連続波のレーザー光を発振する技術に関しており、レーザー媒質に用いるYAGの光軸に沿った範囲がレーザー媒質の全長に亘って加熱される場合の技術である。レーザー媒質の光軸に沿った範囲が全長に亘って加熱される場合は、<100>軸が光軸に沿って延びる向きに配置することで、直線偏光が維持されることを報告している。本明細書で開示する技術と比較すると、<100>軸と光軸を平行に配置するという点では共通するものの、直線偏光から劣化する原因が相違しており、本技術の想到過程を容易化するものでない。レーザー媒質の光軸に沿って伸びる範囲で生じる現象に対する対処法と、励起光の入射面(エンドキャップである無添加YAGとレーザー媒質である希土類元素添加YAGの接合界面)で生じる現象に対する対処法は、当然のことながら相違すると考えられる。非特許文献2と特許文献3は、本発明者らが報告したものであるが、連続レーザー光の発振装置とパルスレーザー光の発振装置では、入力する励起光のエネルギーレベルが相違し、レーザー媒質の加熱度合いが相違し、レーザー媒質の加熱領域が相違する。非特許文献2と特許文献3で報告した連続レーザー光の発振技術が、Qスイッチレーザー光の発振技術にも活用できるとは予想されていなかった。
【発明の効果】
【0016】
本明細書で開示するレーザー装置によると、低周波励起技術を採用しないでも
(すなわち、繰り返し周波数を1kHz程度としたときでも)、Qスイッチから直線偏光度が良好であって波長変換後も高いピークパワーを持つ光を提供するパルスレーザー光(
ピークパワーが2.4MW以上のパルスレーザー光)を発振させることができる。その結果、次世代質量イメージング装置の実現に必要なパルスレーザー光(繰り返し周波数が高くて直線偏光しているパルスレーザー光)を提供す
ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施例のQスイッチレーザー装置の構成を模式的に示す図。
【
図2】励起光の繰り返し周波数と、パルスレーザー光のエネルギーの関係を示す図。
【
図3】励起光の繰り返し周波数と、パルスレーザー光の直線偏光度の関係を示す図。
【
図4】他の実施例のQスイッチレーザー装置の構成を模式的に示す図。
【
図5】他の実施例のQスイッチレーザー装置の構成を模式的に示す図。
【
図6】他の実施例のQスイッチレーザー装置の構成を模式的に示す図。
【
図7】他の実施例のQスイッチレーザー装置の構成を模式的に示す図。
【
図8】他の実施例のQスイッチレーザー装置の構成を模式的に示す図。
【
図9】他の実施例のQスイッチレーザー装置の構成を模式的に示す図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に説明する実施例の特徴を先に列記する。
(形態1)レーザー媒質に、Ndを含むYAGを用いる。
(形態2)エンドキャップに、希土類元素を含まないYAGを用いる。
(形態3)QスイッチにCr
4+を含むYAGを用いる。可飽和吸収体を利用する受動Qスイッチとして動作する。
【実施例】
【0019】
図1において、参照番号2は半導体レーザー装置であり、励起光4を発光する。実験では、参照番号2aに示すパルス電流を加え、参照番号4aに示すパルス励起光を得た。励起光4の波長は808nmであり、そのパワーは100Wであり、パルス幅は120μsとした。繰り返し周波数は、100Hzから1kHzの間で変化させて実験した。
参照番号6は、希土類元素を含まないYAGであり、エンドキャップである。直径が5mmで厚みが1mmの円板形状をしている。YAG6は、その<100>軸が厚み方向を向いている。
参照番号8は、1.1at.%のNdを含むYAGであり、レーザー媒質である。直径が5mmで厚みが4mmの円板形状をしている。YAG8は、その<100>軸が厚み方向を向いている。
YAG6は、Nd:YAG8の半導体レーザー装置2側の端面に接合されている。希土類元素を含まないYAG6は、波長808nmの励起光に対して透明である。励起光4は、Nd:YAG8の半導体レーザー装置2側の端面に入力する。励起光4には、励起体積増大技術が用いられている。
参照番号10は、Cr
4+を含むYAGであり、初期透過率が40%である。Cr
4+:YAG10は、可飽和吸収体であり、受動Qスイッチとして動作する。
参照番号12は、アウトプットカプラーであり、鏡面膜が形成されている。YAG6にも鏡面膜が形成されている。アウトプットカプラー12の鏡面膜とYAG6の鏡面膜によって共振系が形成され、その共振系の内側に、エンドキャップ(YAG6)と、レーザー媒質(Nd:YAG8)と、受動Qスイッチ(Cr
4+:YAG10)とが配置されている。エンドキャップとレーザー媒質と受動Qスイッチは、2枚の鏡面膜に直交する直線上に配置されている。YAG6とNd:YAG8は、その<100>軸が前記直線に沿って伸びる向きに配置されている。Cr
4+:YAG10については、その結晶軸と光軸の関係が特に制約されない。<111>軸が光軸に平行でもよいし、<100>または<110>軸が光軸と平行であってもよい。
【0020】
上記のレーザー装置に励起光4を入力すると、アウトプットカプラー12からパルスレーザー光14が発振された。パルスレーザー光14の波長は1064nmであり、繰り返し周波数は励起光4の繰り返し周波数に等しい。パルスレーザー光14のパルス幅(半値幅)は600psであった。
【0021】
図2は、励起光の繰り返し周波数(パルスレーザー光の繰り返し周波数に等しい)と、パルスレーザー光のエネルギー(mJ)の関係を示している。パルスレーザー光のエネルギーについては、励起光の繰り返し周波数を上げていってもそれほど減少しない。低周波励起技術を解除し、1kHzで励起しても、1.42mJほどのエネルギー(ピークパワーでは2.4MW)が確保できた
【0022】
図3は、励起光の繰り返し周波数と、パルスレーザー光14の直線偏光度の関係を示している。縦軸の上方ほど、直線偏光からの劣化の度合いが大きいことを示している。カーブ32は<111>軸と光軸を平行にした場合の関係を示している。励起光の繰り返し周波数を高周波化すると、パルスレーザー光14が直線偏光から劣化することを示している。それに対して、カーブ3
4は<100>軸と光軸を平行にした場合の関係を示している。励起光の繰り返し周波数を高周波化しても、パルスレーザー光14が直線偏光を維持することを示している。<100>軸と光軸を平行すると、波長変換後の強度が高い光を得ることができるパルスレーザー光が得られる。図示はしないが、YAGの<110>軸と光軸を平行しても、カーブ34に類似するカーブが得られる。YAGの<110>軸と光軸を平行にしても波長変換後の強度が高い光を得ることができるパルスレーザー光が得られる。
【0023】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の
変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
上記実施例では、エンドキャップ+レーザー媒質+Qスイッチの順に配置しているが、エンドキャップ+レーザー媒質+エンドキャップ+Qスイッチの順に配置してもよいし、エンドキャップ+レーザー媒質+エンドキャップ+Qスイッチ+エンドキャップの順に配置してもよい。
図4から
図9は、他の実施例のQスイッチレーザー装置の構成を模式的に示している。また本実施例では、受動Qスイッチ10を利用するが、外部から制御するQスイッチを用いてもよい。レーザー媒質に添加する希土類元素にNdを用いたが、それ以外の希土類元素を設けてもよい。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0024】
2:半導体レーザー装置
4:励起光
6:エンドキャップ(希土類元素を含まないYAG)
8:レーザー媒質(1.1at%Nd:YAG)
10:Qスイッチ(Cr
4+:YAG)
12:アウトプットカプラー
14:パルスレーザー光