(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
加水分解により水酸基を生成し得る金属化合物(W)(ただし、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の金属アルコキシド及びアルカリ金属カーボネートを除く。)が有機溶剤(S)に溶解している有機溶剤現像液であって、
前記有機溶剤(S)が、前記金属化合物(W)と反応する官能基を持たない、有機溶剤現像液。
【発明を実施するための形態】
【0010】
≪有機溶剤現像液≫
本発明に係る有機溶剤現像液は、加水分解により水酸基を生成し得る金属化合物(W)が有機溶剤(S)に溶解しているものである。有機溶剤現像液に含まれる有機溶剤(S)は、金属化合物(W)と反応する官能基を持たない。以下、有機溶剤現像液に含まれる必須又は任意の成分について、順に説明する。
【0011】
〔金属化合物(W)〕
膜形成用材料は、加水分解により水酸基を生成し得る金属化合物(W)(以下、金属化合物とも記す)を必須に含む。このような金属化合物(W)を含む膜形成用材料を基板の表面に塗布することで、基板表面で金属化合物(W)が大気中の水分等で加水分解され、水酸基を有する金属化合物が生成する。そして、水酸基を有する金属化合物間で脱水縮合が生じることで、金属化合物(W)に含まれる金属元素と同種の金属を含む金属酸化物の薄膜が、基板の表面に形成される。
【0012】
金属化合物(W)に含まれる金属原子は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。金属化合物(W)に含まれる金属原子の例としては、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、ニオブ、ケイ素、ホウ素、ランタニド、イットリウム、バリウム、コバルト、鉄、ジルコニウム、及びタンタル等が挙げられる。これらの金属原子の中では、チタン及びケイ素が好ましく、ケイ素がより好ましい。
【0013】
金属化合物(W)に含まれる金属原子の数は、1でも、2以上でもよく、1が好ましい。金属化合物(W)が複数の金属原子を含む場合、複数の金属原子は、同種であってもよく、異種であってもよい。
【0014】
金属化合物(W)において、加水分解により水酸基を生成し得る官能基(以下、加水分解性基とも記す)は、金属原子に直接結合していることが望ましい。
【0015】
金属化合物(W)に含まれる加水分解性基の数は、金属原子1つに対して、2以上が好ましく、2〜4がより好ましく、4が特に好ましい。金属化合物(W)が2以上の加水分解性基を有する場合、加水分解により生成する水酸基間の縮合反応によって、金属化合物(W)の縮合物からなる強固な被覆膜が形成されやすい。
【0016】
好適な加水分解性基の例としては、アルコキシ基、イソシアネート基、ジメチルアミノ基及びハロゲン原子等が挙げられる。アルコキシ基としては、炭素数1〜5の、直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコキシ基が好ましい。好適なアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、及びn−ブトキシ基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0017】
上記の加水分解性基の中では、容易に加水分解されやすく、金属化合物(W)同士の反応により基板表面に皮膜を形成しやすいことから、イソシアネート基が好ましい。
【0018】
金属化合物(W)において、加水分解性基とともに、水素原子又は有機基が金属原子に結合していてもよい。有機基としては、炭素数1〜5の、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基が好ましい。炭素数1〜5のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、及びtert−ペンチル基が挙げられる。
【0019】
また、一酸化炭素を配位子とする金属錯体である金属カルボニルも、金属化合物(W)として挙げられる。金属カルボニルの例としては、ペンタカルボニル鉄(Fe(CO)
5)や、その多核クラスターが挙げられる。
【0020】
以下に、金属化合物(W)の好適な例について説明する。金属化合物(W)の好適な例としては、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
R
m−nMX
n・・・(1)
式(1)中、Mは、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、ニオブ、ケイ素、ホウ素、ランタニド、イットリウム、バリウム、コバルト、鉄、ジルコニウム、及びタンタルからなる群より選択される金属原子である。Rは、炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基である。Xは、炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖状のアルコキシ基、イソシアネート基、及びハロゲン原子からなる群より選択される基である。mは、金属原子Mの価数である。nは2以上m以下の整数である。
【0021】
一般式(1)において、Xが炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖状のアルコキシ基である場合の金属化合物(W)の具体例としては、チタンテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、アルミニウムトリ−n−ブトキシド、ニオブペンタ−n−ブトキシド、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、及びホウ素トリエトキシド等の希土類金属の金属アルコキシド;ランタニドトリイソプロポキシド、及びイットリウムトリイソプロポキシド等の希土類金属の金属アルコキシドが挙げられる。
【0022】
以上説明した、2以上のアルコキシ基を有する金属化合物(W)の加水分解縮合物もまた、アルコキシ基を有し、基板表面に塗布可能であれば、金属化合物(W)として使用できる。
【0023】
一般式(1)において、Xがイソシアネート基である場合の金属化合物(W)の具体例としては、テトライソシアネートシラン、チタンテトライソシアネート、ジルコニウムテトライソシアネート、及びアルミニウムトリイソシアネート等が挙げられる。
【0024】
一般式(1)において、Xがハロゲン原子である場合、Xとしては、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。一般式(1)において、Xがハロゲン原子である場合の金属化合物(W)の具体例としては、テトラクロロチタン、テトラクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、エチルトリクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、及び塩化コバルト(II)等が挙げられる。
【0025】
これらの中でも、特に加水分解に対して高活性であり、加熱処理を行わずとも容易に、金属化合物(W)の縮合物からなる被膜を、基板表面に形成できることから、下記一般式(2)で表されるケイ素化合物が好ましい。
R
4−nSiX
n・・・(2)
式(2)中、Rは、炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基である。Xは、イソシアネート基、及びハロゲン原子からなる群より選択される基である。nは2以上4以下の整数である。一般式(2)において、Xはイソシアネート基であるのが好ましく、nは4であるのが好ましい。
【0026】
以上説明した金属化合物(W)は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
有機溶剤現像液中の金属化合物(W)の濃度は、均一に溶解した有機溶剤現像液を調製できる範囲であれば特に限定されない。有機溶剤現像液中の金属化合物(W)の濃度は、1〜200mmol/Lが好ましく、5〜150mmol/Lがより好ましく、5〜100mmol/Lが特に好ましい。
【0028】
〔有機溶剤(S)〕
有機溶剤現像液に含まれる有機溶剤(S)は、従来よりレジストパターンの現像に用いられている有機溶剤であって、金属化合物(W)と反応する官能基を持たないものであれば特に限定されない。金属化合物(W)と反応する官能基には、加水分解により水酸基を生成し得る基と直接反応する官能基と、加水分解により生じる水酸基と反応する官能基との双方が含まれる。金属化合物(W)と反応する官能基としては、例えば、ビニル基等の炭素−炭素二重結合を有する基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0029】
有機溶剤(S)がこのような官能基を有さない溶媒であると、金属化合物(W)が有機溶剤現像液中において安定に存在可能である。従って、本発明に係る有機溶剤現像液を用いる場合、有機溶剤現像液の保存中の金属化合物(W)の含有量の減少や、有機溶剤現像液中での、金属化合物(W)と有機溶剤(S)との反応の結果生じる、金属化合物(W)の縮合物である微小粒子の発生が抑制される。
【0030】
このため、本発明に係る有機溶剤現像液を用いてレジストパターンを現像すると、レジストパターンの表面を、微小粒子で汚染することなく、金属化合物(W)の加水分解縮合により生成する含金属化合物からなる被膜で被覆できる。
【0031】
好適な有機溶剤(S)としては、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、及びアミド系溶剤等の極性溶剤と、炭化水素系溶剤とが挙げられる。
【0032】
ケトン系溶剤は、構造中にC−C(=O)−Cを含む有機溶剤である。エステル系溶剤は、構造中にC−C(=O)−O−Cを含む有機溶剤である。エーテル系溶剤は構造中にC−O−Cを含む有機溶剤である。有機溶剤の中には、構造中に上記各溶剤を特徴づける官能基を複数種含む有機溶剤も存在するが、その場合は、有機溶剤が有する官能基を含む何れの溶剤種にも該当するものとする。炭化水素系溶剤は、炭化水素からなり、置換基(水素原子及び炭化水素基以外の基又は原子)を有さない炭化水素溶剤である。
【0033】
各溶剤の具体例として、ケトン系溶剤としては、例えば、1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、アセトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、1−ヘキサノン、2−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
【0034】
エステル系溶剤としては、例えば、鎖状のエステル系溶剤として、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、2−メトキシブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、4−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−エチル−3−メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、2−エトキシブチルアセテート、4−エトキシブチルアセテート、4−プロポキシブチルアセテート、2−メトキシペンチルアセテート、3−メトキシペンチルアセテート、4−メトキシペンチルアセテート、2−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、4−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、炭酸エチル、炭酸プロピル、炭酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、ピルビン酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、メチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−エトキシプロピオネート、プロピル−3−メトキシプロピオネート等が挙げられる。また、環状のエステル系溶剤として、γ−ブチロラクトン等のラクトン類等が挙げられる。
【0035】
エーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤;ジイソペンチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、パーフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフラン、パーフルオロテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。これらのなかでも、グリコールエーテル系溶剤が好ましい。
【0036】
アミド系溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。
【0037】
上記の他の極性溶剤として、ジメチルスルホキシドも有機溶剤(S)として好適に使用される。
【0038】
炭化水素系溶剤としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、2,2,4−トリメチルペンタン、2,2,3−トリメチルヘキサン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロヘプタン、リモネン、及びピネン等の脂肪族炭化水素系溶剤;トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、1−メチルプロピルベンゼン、2−メチルプロピルベンゼン、ジメチルベンゼン、ジエチルベンゼン、エチルメチルベンゼン、トリメチルベンゼン、エチルジメチルベンゼン、ジプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤;が挙げられる。これらの中でも、芳香族炭化水素系溶剤が好ましい。
【0039】
以上説明した有機溶剤(S)は、オクタノール/水分配係数であるlogPの値が3.5以下であるのが好ましい。そうすることで、有機溶剤現像液中の金属化合物(W)の加水分解と、それにともなう金属化合物(W)の加水分解縮合による微小粒子の生成とを抑制しやすい。
【0040】
有機溶剤(S)のlogPの値は、Ghose,Pritchett,Crippenらのパラメータを用い、計算によって算出することができる(J.Comp.Chem.,9,80(1998)参照)。この計算は、CAChe 6.1(富士通株式会社製)のようなソフトウェアを用いて行うことができる。
【0041】
logPの値が3.5以下の溶剤のうち好ましいものとしては、トルエン、キシレン、1,2,4−トリメチルベンゼン、リモネン、及びピネン等の炭化水素系溶剤;酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶剤;ジイソペンチルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、及びエチレングリコールジブチルエーテル等のエーテル系溶剤;ジメチルスルホキシド;N−メチル−2−ピロリドンン等のアミド系溶剤;2−オクタノン、アセチルアセトン、及びシクロヘキサノン等のケトン系溶剤が挙げられる。
【0042】
有機溶剤(S)としては、N、O、S、及びPから選択される1以上のヘテロ原子を含む溶剤が好ましい。このような構造の溶剤は、前述のヘテロ原子を含むことに起因してある程度極性が高い。このため、このようなヘテロ原子を含む有機溶剤(S)は、レジストパターンを現像する際に、フォトレジスト組成物からなる塗布膜の未露光部を良好に溶解させることができるとともに、金属化合物(W)の加水分解を抑制しやすい。このような有機溶剤中(S)中では、水分子が有機溶剤(S)中に速やかに分散されることと、水分子と有機溶剤(S)の分子との親和性が高いこととから、金属化合物(W)の分子と水分子との接触する確率が下がるため、金属化合物(W)が加水分解される速度が遅延すると思われる。
【0043】
以上説明した有機溶剤(S)の中では、logP値及び化学構造の点や、金属化合物(W)を良好に溶解させることや、得られる有機溶剤現像液の現像性の点から、エステル系溶剤が好ましく、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ペンチル、及び酢酸イソペンチル等の酢酸エステルがより好ましく、酢酸ブチルが特に好ましい。
【0044】
これらの有機溶剤(S)は、何れか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0045】
有機溶剤現像液中の有機溶剤(S)の含有量は、通常、金属化合物(W)の含有量と、後述するその他の成分の含有量との合計量に対する残余の量である。
【0046】
〔その他の成分〕
有機溶剤現像液には、必要に応じて公知の添加剤を配合できる。添加剤としては例えば界面活性剤が挙げられる。界面活性剤としては、特に限定されないが、例えばイオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。
【0047】
使用できる市販の界面活性剤として、例えばエフトップEF301、EF303、(新秋田化成(株)製)、フロラードFC430、431(住友スリーエム(株)製)、メガファックF171、F173、F176、F189、R08(大日本インキ化学工業(株)製)、サーフロンS−382、SC101、102、103、104、105、106(旭硝子(株)製)、トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)等のフッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤を挙げることができる。また、ポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)もシリコン系界面活性剤として用いることができる。
【0048】
また、界面活性剤としては、前述の公知のものの他に、テロメリゼーション法(テロマー法ともいわれる)若しくはオリゴメリゼーション法(オリゴマー法ともいわれる)により製造されたフルオロ脂肪族化合物から導かれたフルオロ脂肪族基を有する重合体を用いた界面活性剤を用いることが出来る。
【0049】
フルオロ脂肪族基を有する重合体としては、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート及び/又は(ポリ(オキシアルキレン))メタクリレートとの共重合体が好ましく、不規則に分布しているものでも、ブロック共重合していてもよい。また、ポリ(オキシアルキレン)基としては、ポリ(オキシエチレン)基、ポリ(オキシプロピレン)基、ポリ(オキシブチレン)基等が挙げられ、また、ポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとオキシエチレンとのブロック連結体)やポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとのブロック連結体)基等同じ鎖長内に異なる鎖長のアルキレンを有するようなユニットでもよい。さらに、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体は2元共重合体ばかりでなく、異なる2種以上のフルオロ脂肪族基を有するモノマーや、異なる2種以上の(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)等を同時に共重合した3元系以上の共重合体でもよい。
【0050】
例えば、市販の界面活性剤として、メガファックF178、F−470、F−473、F−475、F−476、F−472(大日本インキ化学工業(株)製)を挙げられる。さらに、C
6F
13基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、C
6F
13基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシエチレン))アクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、C
8F
17基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、C
8F
17基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシエチレン))アクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、等を挙げることができる。
【0051】
界面活性剤としては、非イオン性の界面活性剤が好ましく、フッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤がより好ましい。
【0052】
界面活性剤を配合する場合、その配合量は、有機溶剤現像液の全質量に対して、通常、0.001〜5質量%であり、0.005〜2質量%が好ましく、0.01〜0.5質量%がより好ましい。
【0053】
≪レジストパターン形成方法≫
以上説明した有機溶剤現像液を用いて、以下の方法に従ってレジストパターンを形成する。
具体的には、
基板上にフォトレジスト組成物を塗布して塗布膜を形成する工程と、
塗布膜を位置選択的に露光する工程と、
露光された塗布膜中の非パターン部を有機溶剤現像液に溶解させてレジストパターンを現像しながら、レジストパターン上に含金属化合物からなる被膜を形成する工程と、を含む方法によってレジストパターンが形成される。
【0054】
塗布膜の形成に用いられるフォトレジスト組成物は、有機溶剤現像液を用いるいわゆる「ネガ型現像」に用いられるものであれば特に限定されない。ネガ型現像に用いられるフォトレジスト組成物として好適なものとしては、酸の作用により有機溶剤現像液に対する溶解度が減少する樹脂(A)と、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(B)と、有機溶剤(C)とを含むものが挙げられる。このようなフォトレジスト組成物は、例えば、前述の特許文献1に記載されている。
【0055】
酸の作用により有機溶剤現像液に対する溶解度が減少する樹脂(A)としては、樹脂の主鎖又は側鎖、あるいは、主鎖及び側鎖の両方に、酸の作用により分解し、アルカリ可溶性基を生じる基(以下、「酸分解性基」ともいう)を有する樹脂が挙げられる。アルカリ可溶性基としては、フェノール性水酸基、カルボン酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、及びトリス(アルキルスルホニル)メチレン基等が挙げられ、カルボン酸基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール)、及びスルホン酸基が好ましい。
【0056】
酸分解性基において、酸の作用によってアルカリ可溶性基から脱離する酸解離性基は、化学増幅型レジスト用の樹脂において酸解離性基として提案されている基から、適宜選択できる。一般的には、(メタ)アクリル酸等におけるカルボキシ基のようなアルカリ可溶性基と環状又は鎖状の第3級アルキルエステルを形成する基や、アルコキシアルキル基等のアセタール型酸解離性基等が広く知られている。
【0057】
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(B)としては特に限定されず、従来からフォトレジスト組成物に使用されている化合物を種々使用することができる。このような化合物の具体例としては、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o−ニトロベンジルスルホネートを挙げることができる。
【0058】
以上説明した成分を含むようなフォトレジスト組成物が基板表面に塗布され、基板上に塗布膜が形成される。フォトレジスト組成物を基板上に、塗布する方法は、フォトレジスト組成物を、所望の膜厚で基板上に良好に塗布することができれば特に限定されない。塗布方法の具体例としては、スピンコート法、スプレー法、ローラーコート法、浸漬法等が挙げられ、スピンコート法がより好ましい。
【0059】
フォトレジスト組成物を基板上に塗布して塗布膜を形成した後、必要に応じて基板上の塗布膜を加熱(プリベーク)してもよい。これにより、不溶な溶剤の除去された膜を均一に形成することができる。プリベークの温度は特に限定されないが、50℃〜160℃が好ましく、60℃〜140℃がより好ましい。
【0060】
塗布膜の形成に用いる基板の種類は特に限定されない。基板の例としては、シリコン、SiO
2やSiN等の無機基板、SOG等の塗布系無機基板等、IC等の半導体製造工程、液晶、サーマルヘッド等の回路基板の製造工程、さらにはその他のフォトアプリケーションのリソグラフィー工程で一般的に用いられる基板を用いることができる。
【0061】
塗布膜を形成する前に、基板上に予め反射防止膜を塗設してもよい。反射防止膜としては、チタン、二酸化チタン、窒化チタン、酸化クロム、カーボン、アモルファスシリコン等の無機膜型と、吸光剤とポリマー材料からなる有機膜型の何れも用いることができる。また、有機反射防止膜として、ブリューワサイエンス社製のDUV30シリーズや、DUV−40シリーズ、シプレー社製のAR−2、AR−3、AR−5等の市販の有機反射防止膜を使用することもできる。
【0062】
次いで、形成された塗布膜は、所望のパターンが形成されるように、紫外線や電子線等の活性エネルギー線により位置選択的に露光される。露光方法は特に限定されず、従来から知られる種々の方法から適宜選択できる。好適な方法としては、塗布膜に、所定のマスクを通して紫外線や電子線等の活性エネルギー線を照射する方法が挙げられる。
【0063】
かかる露光により、塗布膜中に、露光部と、未露光部とが形成される。そして、前述のフォトレジスト組成物からならう塗布膜中では、露光部では、露光による酸発生にともない、塗布膜の有機溶剤現像液に対する溶解性が低下する。一方、未露光部は、活性エネルギー線が照射されていないため、有機溶剤を含む現像液に溶解しやすいままである。
【0064】
活性エネルギー線としては、赤外光、可視光、紫外光、遠紫外光、X線、電子線等が挙げられる。これらの中では、波長が250nm以下、好ましくは220nm以下、より好ましくは1〜200nmである、遠紫外光が好ましい。遠紫外光の具体例としては、ArFエキシマレーザー、F
2エキシマレーザー、EUV(13nm)等が挙げられる。
【0065】
露光工程では、必要に応じ、光学レンズ部とレジスト膜との間を液浸媒体で満たして露光を行う液浸露光方を適用することもできる。液浸媒体としては、空気の屈折率よりも大きく、且つ、使用される塗布膜の屈折率よりも小さい屈折率を有する液体であれば特に限定されるものではない。このような液浸媒体としては、水(純水、脱イオン水)、水に各種添加剤を配合して高屈折率化した液体、フッ素系不活性液体、シリコン系不活性液体、炭化水素系液体等が挙げられるが、近い将来に開発が見込まれる高屈折率特性を有する液浸媒体も使用可能である。フッ素系不活性液体としては、C
3HCl
2F
5、C
4F
9OCH
3、C
4F
9OC
2H
5、C
5H
3F
7等のフッ素系化合物を主成分とする液体が挙げられる。これらのうち、コスト、安全性、環境問題、及び汎用性の観点から、193nmの波長の露光光(ArFエキシマレーザー等)を用いる場合には水(純水、脱イオン水)が好ましく、157nmの波長の露光光(F
2エキシマレーザー等)を用いる場合にはフッ素系不活性溶剤が好ましい。
【0066】
露光が終了した後には、ベーク(PEB)を行うのが好ましい。PEBの温度は、良好なレジストパターンが得られる限り特に限定されるものではなく、通常40℃〜160℃である。
【0067】
露光に次いで、露光された塗布膜と、前述の有機溶剤現像液とを接触させることによるレジストパターンの現像が行われる。レジストパターンを現像する際、露光された塗布膜中の非露光部に該当する非パターン部を前述の有機溶剤現像液に溶解させつつ、前述の有機溶剤現像液に含まれる加水分解により水酸基を生成し得る金属化合物(W)が加水分解縮合して生成する含金属化合物からなる被膜を形成されるレジストパターンの表面に形成させる。
【0068】
かかるレジストパターンの形成方法によれば、レジストパターンの表面が、例えばシリカ(SiO
2)のような含金属化合物からなる被膜で良好に被覆されるため、加熱されても形状の変化を生じにくいレジストパターンを形成できる。また、このような含金属化合物からなる被膜を備えるレジストパターンは、ドライエッチングに対する耐性にも優れる。
【0069】
有機溶剤現像液によりレジストパターンを現像する方法は、特に限定されず、公知の現像方法から適宜選択して実施できる。好適な現像方法としては、例えば、有機溶剤現像液中に露光後された塗布膜を備える基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、露光後された塗布膜の表面に有機溶剤現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止する方法(パドル法)、露光後された塗布膜の表面に有機溶剤現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板に対して、露光された塗布膜に向けて一定速度で有機溶剤現像液塗出ノズルをスキャンしながら有機溶剤現像液を塗出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
【0070】
また、現像を行う工程の後に、有機溶剤現像液を他の溶媒に置換しながら、現像を停止する工程を実施してもよい。
【0071】
現像後には、有機溶剤を含むリンス液を用いてレジストパターンを洗浄してもよい。
【0072】
リンス工程に用いるリンス液は、レジストパターンを溶解しなければ特に限定されず、一般的な有機溶剤を含む溶液を使用することができる。リンス液として使用できる有機溶媒としては、有機溶剤現像液が含んでいてもよい有機溶剤と同様のものが挙げられる。リンス液は、上記の有機溶剤を複数含んでいてもよく、上記以外の有機溶剤を含むものであってもよい。
【0073】
リンス液には、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
【0074】
現像後、又はリンス後に、必要に応じて、周知の方法でレジストパターンを備える基板を乾燥させるのが好ましい。
【実施例】
【0075】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0076】
以下、実施例及び比較例で用いたレジスト組成物、及びパターン微細化用被覆剤に含まれる成分について説明する。
【0077】
<(A)酸の作用により有機溶剤を含む現像液に対する溶解度が減少する樹脂>
レジスト組成物に含まれる(A)成分として、下記の構成単位から構成される樹脂を用いた。なお、各構成単位内に記載される数字は、各構成単位の樹脂に含まれる全構成単位に対するモル%を意味する。なお、下記の構成単位から構成される樹脂の質量平均分子量は7000であり、分散度は1.66であった。
【0078】
【化1】
【0079】
<(B)光酸発生剤成分>
レジスト組成物に含まれる(B)成分である光酸発生剤としては、下式の化合物を用いた。
【0080】
【化2】
【0081】
<(C)溶剤>
レジスト組成物に含まれる(C)成分である溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)の含有量が90質量%であり、シクロヘキサンノン(CH)の含有量が10質量%である、PGMEAとCHとの混合溶剤を用いた。
【0082】
<(D)クエンチャー>
レジスト組成物に含まれる(D)成分であるクエンチャーとしては、下式の化合物を用いた。
【0083】
【化3】
【0084】
<(E)有機カルボン酸>
レジスト組成物に含まれる(E)成分である、有機カルボン酸としてはサリチル酸を用いた。
【0085】
<(F)含フッ素化合物>
レジスト組成物に含まれる(F)成分である、含フッ素化合物としては、下記の構成単位から構成される樹脂を用いた。なお、各構成単位内に記載される数字は、各構成単位の樹脂に含まれる全構成単位に対するモル%を意味する。なお、下記の構成単位から構成される樹脂の質量平均分子量は23000であり、分散度は1.30であった。
【0086】
【化4】
【0087】
また、上記以外の成分として、ガンマブチロラクトンを、レジスト組成物に配合した。実施例で用いた、レジスト組成物の各成分の組成を、以下の表1に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
〔実施例1〕
膜厚82nm「ARC29A(ブリューワサイエンス社製)」の反射防止膜が形成されたシリコンウエハ上に、上記のフォトレジスト組成物をスピンナー塗布し、105℃で60秒間ベーク処理することにより、膜厚100nmのフォトレジスト膜を形成した。その後、得られたフォトレジスト膜に対し、露光装置(ニコン株式会社製、商品名「NSR−S302A」)を用いて、スペース幅130nm、ピッチ幅260nmのマスクを介して所定のパターンで露光を行い、95℃で60秒間加熱処理した。
【0090】
露光後、酢酸−n−ブチル中に濃度10mmol/LでSi(NCO)
4を溶解させた有機溶剤現像液を用いて、23℃で60秒間の現像を行い、現像後、現像液を乾燥させて、スペース幅130nm、ピッチ幅260nmラインアンドスペースパターンを形成した。酢酸−n−ブチルのlogP値は1.071である。
【0091】
得られたラインアンドスペースパターンを、200℃で60秒間ベークした。ベーク前後のラインアンドスペースパターンを走査型電子顕微鏡で観察したところ、ベークの前後でのラインアンドスペースパターンの断面形状はともに良好な矩形であり、ベークの前後でラインアンドスペースパターンの形状に殆ど変化がないことが確認された。
【0092】
〔比較例1〕
現像液を、Si(NCO)
4を含まない酢酸−n−ブチルに変更することの他は、実施例1と同様にしてラインアンドスペースパターンを得た。得られたラインアンドスペースパターンを、200℃で60秒間ベークした。ベーク前のラインアンドスペースパターンを走査型電子顕微鏡で観察したところ、ラインアンドスペースパターンの形状が実施例1で得たベーク前のラインアンドスペースパターンの形状と同等であることが確認された。他方、ベーク後のラインアンドスペースパターンを走査型電子顕微鏡で観察したところ、レジストパターンの熱変形によりラインアンドスペースパターンは熱だれを起こして矩形性を保っていなかった。
【0093】
以上より、加水分解により水酸基を生成し得る金属化合物(W)が有機溶剤(S)に溶解しており、有機溶剤(S)が、金属化合物(W)と反応する官能基を持たない、有機溶剤現像液を用いることで、シリカ(SiO
2)のような含金属化合物からなる被膜で良好に被覆された、耐熱性、及び耐ドライエッチング性に優れるレジストパターンを形成可能であることが分かる。