(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
臨床検査の分野において、病院で患者から採取した血液・尿などの検体は、採血管に封入され、病院の検査室または検査センターに運ばれ分析装置にて分析される。分析の前には、血液・尿などの検体が封入された採血管(以下、親検体採血管と称す)に対して、遠心分離、開栓、親検体採血管からの検体分注時に使用する複数の試験管(以下、子検体試験管と称す)の準備、子検体への分注などの前処理を行う必要がある。近年、これらの前処理や親検体や子検体の収納管理、さらには作成した子検体を所望の分析装置へ搬送する作業は自動化され、検体検査自動化システムとして病院の検査室、または検査センターなどで使用されている。
【0003】
ところで、血液検体から遠心分離処理により作成された血清に、溶血や乳び等の混濁があると、結果の正確性を保証する上で障害となる。特に吸光度を測定原理とする血液自動分析装置で分析する検体にとっては顕著である。そのため自動分析装置に検体を搬送する前に、予め異常検体を選別する必要がある。
【0004】
例えば特許文献1にはサンプルチェック機能を有する装置が開示されている。溶血、乳び、検体液量過多等の異常検体を分注前にチェックして、異常検体については分注を行わずにエラー排出することが記載されている。
【0005】
特許文献2には、開栓後にカメラを用いて開栓状態のチェックをすることが開示されている。
【0006】
また、特許文献3には採血管回転機構とバーコードリーダを用いてラベルの隙間箇所を認識し、ラベル無し箇所から血清量を推定する方法が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1は、ラベルを剥離するモジュールや、血清情報取得モジュールを別々に設置しているためスペースをとるだけでなく、コストも上がってしまう。また、特許文献1は、異常検体も開栓処理している可能性が有るため、異常検体の開栓処理に伴い内部の検体が飛散し周囲を汚染している可能性がある。さらに、臨床検査技師が異常検体を収容した検体容器を開栓された状態で取り扱うと、転倒や内容物がこぼれるなどにより感染リスクが考えられる。
【0009】
特許文献2はカメラや画像処理ボード、画像処理用PCは一般的に高価であるため、血清情報の取得や開栓状態のチェック等、複数の機能毎に別々のカメラを備えると装置コストの上昇が避けられない。
【0010】
特許文献3は、バーコードリーダと画像センサーの両方を備えるため装置コストが上がることが考えられる。さらにバーコードラベルの隙間位置を読み取り血清情報を推定する場合であっても、ラベル隙間はずれている可能性があり、正確な血清情報を取得することは難しい。
【0011】
本願発明は上記課題に鑑みて考案されたものであり、その目的は、確実に検体容器の開栓処理とサンプルチェックを実行しながらもコンパクトに設計されたシステムを提供することにある。また、本願発明の他の目的は、異常検体を開栓処理前に確実に識別して分離し、開栓に伴うサンプル飛散や臨床検査技師の感染リスクを低減させたシステムを提供することにある。
【0012】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題に鑑みて、本発明は以下の特徴を有する。すなわち、検体を内部に収容した容器および当該容器の開口部に装着された栓を側方から撮像する撮像機構と、前記撮像機構で撮像した画像を処理し、前記容器および前記栓の種別に関する情報、並びに、前記容器内の検体の状態に関する情報を取得する解析機構と、容器または栓の側面を把持するチャックと、前記チャックを回転させる回転駆動機構と、前記チャックおよび前記回転駆動機構を上下動させる上下駆動機構と、からなるチャック回転機構と、を備えた検体検査自動化システムにおいて、前記チャック回転機構は、前記解析手段により得られた容器および栓の種別に関する情報に基づいて、容器の側面を把持しつつ回転させ、前記撮像機構により画像を取得するサンプルチェック機能と、前記解析手段により得られた容器および栓の種別に関する情報に基づいて、栓の側面を把持し回転させつつ上方に持ち上げる開栓機能を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下の通りである。
【0015】
すなわち、開栓を行う位置で容器内部の血清情報を取得することにより、システムの構成をコンパクト化し、搬送距離を短く設計することによってターンアラウンドタイムの低減と装置コストの低減を図ることができる。
【0016】
また、異常検体に関しては開栓を行わず、栓をつけたまま異常検体をエラートレイに排出することで、栓に付着したミストが開栓動作に伴って周囲に飛散することによる感染リスクと、臨床検査技師が異常検体を処理する際に栓が開いたままの検体を取り扱い、転倒させるなどの感染リスクをより低減させることができる安全なシステムを提供することができる。
【0017】
さらには、異常検体を開栓することなく排出するため、蒸発による検査異常を防ぐことができ、再検査のためにシステムに再投入される際にデータの安定化を図ることが可能である。これは、特に検体量異常により異常判定された検体について、量を調整して再投入する場合に有効である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本発明を適用する検体検査自動化システム1の全体構成図である。
【0020】
検体検査自動化システム1は、検体検査自動化システム全体を制御するシステムマネージャ12と、種々の検体検査自動化システム(投入モジュール3,遠心分離モジュール4,開栓モジュール5,バーコードラベラモジュール6,検体分注モジュール7,閉栓モジュール8,検体分類モジュール9,収納モジュール10より構成される)と、それらの検体処理モジュールを結合し、検体を検体処理ユニットから他の検体検査自動化システムへと搬送する搬送ライン2と、搬送ライン2に接続され、生体試料中の成分濃度の分析を行う自動分析装置11から成る。システムマネージャ12は、各モジュールの動作を制御する制御手段90、オペレータが処理内容を入力するキーボードやタッチパネルなどの入力手段、そして処理状況などを確認可能なディスプレイあるいはプリンタなどの出力手段からなる。さらに必要があれば各モジュールに備わるセンサの出力状況に基づき、状況を解析する解析手段80も備える。
【0021】
検体容器は複数の検体容器をアレイ状に配置可能な検体トレイに載せられた状態で、投入モジュールから検体検査自動化システム1に投入される。投入モジュール3から投入された検体は制御部12から指示された前処理シーケンスに従って、各処理モジュールに順次立ち寄り、処理が終わったものは分析装置11、または収納モジュール10へ搬送される。
【0022】
前処理シーケンスの一例としては、投入された親検体容器は遠心モジュール4に搬送され、所定の時間遠心分離処理が行われる。その後、開栓モジュール5にて親検体容器に装着されている栓が開栓される。ラベラモジュール6では当該親検体に依頼されている分析項目を参照し、必要な個数の子検体容器を用意して、各子検体容器の識別に必要なバーコード104を貼り付ける。親検体容器および子検体容器は分注モジュール7へ搬送され、分析に必要な子検体を作成する。その後、親検体容器は閉栓モジュール8へ搬送され、開口部を栓体で閉栓処理し、収納モジュール10内にて種別に基づいて分類収納される。
【0023】
本実施例においては、開栓モジュール5はサンプルチェック機能も備えている。
【0024】
なお、本実施例において検体検査自動化システムの構成は一例であって、モジュール構成はこの例に限定されない。実行する処理に応じて、モジュールの追加・削除は適宜行なわれるものであり、同一種類のモジュールを複数台備えていることもありうる。
【0025】
ここで本発明におけるサンプルチェック機能の実現に際して検討した事項を挙げる。
【0026】
1つ目は、システムのコンパクト設計である。市場では検査項目数と検体の処理数が増加し、前処理工程が多様化して、種々の検体前処理モジュールが存在するため装置の小型化が求められている。血清情報や血清液量を検出するカメラ、採血管種別を識別するカメラ、開栓状態を確認するカメラ、といったように機能毎にカメラを備えると、装置コストの低減は難しい。
【0027】
2つ目は、開栓に伴う感染リスク、汚染リスク、サンプル劣化の可能性を低減させることである。結果の正確性を保証し難い異常検体は、開栓せずに早期に排出する、あるいは、自動分析装置に搬送される前に選別する必要がある。液量が多い検体については開栓時に栓に付着した検体が周囲に飛散して汚染や感染の恐れがあるため、開栓する前に臨床検査技師に注意を喚起する。同様に、外部の遠心機で遠心処理済みの検体を投入するつもりが、誤って遠心処理が実施されていない検体を投入してしまった場合も、開栓せずに早期に排出し、臨床検査技師に遠心処理を促す必要がある。
【0028】
3つ目はバーコードラベルが貼付された検体容器内に収容されている血清情報の取得である。検査室における実際の運用では、採血管の表面に患者ID・個人情報・装置運用に必要なパラメータ、などの重要情報が記載されたバーコードラベルが貼付される。通常使用する市販の採血管には、購入時に既にラベルが貼付されていることも多く、運用の都合上、この上に幾重にも重ねてラベルを貼付するという場面も少なくなく、ラベルが貼付されていてもサンプルチェックが確実に行なえることが求められる。
【0029】
図2に本発明における開栓モジュール5の構成の一例を示す。
【0030】
本実施例では、溶血106や乳び107、検体液量過多106等の異常検体の選別を開栓前にチェックして、開栓を行わないままエラー排出32することで感染リスクを低減させることができ、かつ血清情報や血清液量を検出するカメラ44・採血管種別を識別するカメラ44・開栓状態を確認するカメラ44を全て同一のもので行えるよう配置や機構部の統一化を図る。
【0031】
開栓モジュールは、主要素として、前処理システム1に接続するための架台40、検体を保持し搬送するホルダ41、検体容器に対して側方から光を照射する光源60、検体を搬送する搬送ライン45,46,47,48、検体容器の持ち上げ・回転・栓の開栓を行うチャック回転機構43と、採血管を固定するクランプ機構49と、採血管容器の識別、検体情報の取得、及び、開栓状態の確認をおこなうための撮像手段44から構成されている。
【0032】
本実施例の主目的は色を認識することであるから、光源60には白色光源を用いることが望ましい。また、撮像手段44としては、分離剤103や液面の影による影響を抑制するために、カラー用のCMOSまたはCCDカメラ、もしくはラインカメラを採用することが望ましい。なお、本実施例では、光源60を撮像手段44と同じ箇所に設置しているが、分離して設置しても良い。
【0033】
図1(b)に、開栓モジュールでの処理アルゴリズムを示す。
【0034】
まず採血管容器101が開栓位置(クランプ機構49による掴み位置)に搬入され(ステップ20)、ホルダ41に採血管が架設されている状態で一回目の撮像を行うことで(ステップ21)、試験管の高さ、試験管径、栓形状に関する情報(採血管識別情報)を取得し、採血管の種別を識別する(ステップ22)。次に、取得した採血管の種別に基づいてチャック回転機構43の動作パラメータを問い合わせ(ステップ23)、採血管開口部付近50を把持して(ステップ24)、クランプ機構49が撮像の邪魔にならないよう採血管101を持ち上げて回転させる(ステップ25)。持ち上げた位置で撮像手段44による二回目の撮像をし(ステップ26)、得られた画像を解析することで血清情報と血清液量の取得を行う(ステップ27)。
【0035】
ここで、乳び、溶血などによる検体異常、あるいは検体の液量異常のいずれかが検出された検体は、開栓を行なわずにエラー検体として収納モジュール10に搬出される(ステップ33)。正常検体と判別された場合は、ステップ22で取得した採血管識別情報に基づき最適な開栓動作を行う(ステップ28)。開栓動作後に撮像手段44にて三回目の撮像を行う(ステップ29)。栓把持部滑りや容器把持部滑り等の開栓エラーが発生した場合は復帰動作32を行い、再度開栓動作を行う。開栓状態が確認された検体容器は、開栓モジュールを搬出され、分注モジュールなどに搬送される。
【0036】
なお、本発明の実施例にて取り扱われる採血管101に関して説明する。
【0037】
患者血液(全血)は、採血管101を用いて採取される。検体を収容した採血管は、投入モジュール3を通して検体検査自動化システム1に投入される。なお、採血と投入はユーザーのマニュアル作業で行い、以後の作業は検体検査自動化システム1による自動作業となる。
【0038】
採血管101内に全血検体が収容されている場合は、当該採血管101は遠心分離モジュール4に運ばれ、そこで遠心分離処理が行われる。採血管101には予め分離剤103が入っており、遠心分離により、相対的に比重の大きい血餅105の層と、相対的に比重が小さく、血液分析11に使用する血清106の層に分離される。なお、分析項目によっては、分離剤103が収容されていない採血管を使用する場合もある。
【0039】
臨床検査で主に使用される採血管は、真空採血管と呼ばれるもので、内部が陰圧となっており採血針を通して一定の量の血液を吸引する採血管である。採血管にはメーカーや検査項目の違いに応じて、様々な形状や材質のものがある。採血管本体の形状についてはメーカーによる多少の違いはあるが、主に外径がφ13mmとφ16mmの2種類、長さが100mmと、75mmの2種類に大別される。
【0040】
運用上、採血管には、バーコードラベル104が側面に貼付されている。このバーコードラベル104には、検体IDナンバー、測定項目に関する情報、診断項目に関する情報、個人情報(患者IDナンバーなど)、パラメータ情報などが印字されている。採血管101の径とバーコードラベル104の大きさの関係によっては、採血管101の側面の一部のみすきまを残してほぼ全面を被覆してしまうもの、全周がバーコードラベル104で覆われてしまうものがあり、本実施例では全周がバーコードラベルで覆われている採血管101に関しては対象としない。
【0041】
採血管を密封する栓には規格がなく違いが顕著である。栓の種類には大きく分けてゴム栓、ヘモガード栓、スクリュー栓の3種類の栓がある。これらの栓の詳細な形状は採血管メーカーごとに異なり、多種多様な栓が用いられている。これら全ての栓を対象として開栓を行うためにはセンサーを設置するだけでは対応が不可能であり、カメラを用いて開栓前後の栓状態を確認する必要がある。
【0042】
図3は本実施例におけるサンプルチェッカー機能で識別される正常検体、溶血検体、乳び検体、検体液量過多検体、未遠心検体のおおよその外観を説明する図である。
【0043】
図3(a)は正常検体、
図3(b)は溶血検体である。正常検体の血清領域106は黄色みを帯びた色彩であるのに対して、溶血を生じる検体の血清領域107は異なる色合いを呈し、低レベルの溶血検体は橙色、高レベルの溶血検体は赤色を帯びる。血清の吸光度値に基づいて分析を行う自動分析装置において、溶血は結果の正確性を保証する上で障害となる。溶血検体に関しては、溶血の程度や依頼内容にもよるが、再度採血を行う必要があるため検体前処理の段階で迅速にその旨を連絡する必要があるといえる。
【0044】
図3(c)は乳び検体を示す。正常検体の血清領域106が黄色みを帯びているのに対して、乳び検体の血清領域108は乳白色、溶血と乳びの両方が生じた検体は桃色を呈する。血清の吸光度値に基づいて分析を行う自動分析装置において、乳びは、溶血ほどではないが結果の正確性を保証する上で影響を与える。従い、乳び検体に関しては、乳びの程度や依頼内容にもよるが、水で薄めて再測定を行う等の処理が必要であるため、これらの異常検体を自動分析装置11に搬送される前に選別を行う必要がある。
【0045】
図3(e)は液量過多検体を示す。検体量109が採血管で規定されている検体量よりも多い場合、栓を開ける際に、栓に付着した検体が周囲に飛散する可能性があり、さらには、栓を開けた状態で搬送すると検体がこぼれるなどして、臨床検査技師の感染や装置の汚染が生じる可能性がある。感染および汚染の防止のためには、血清情報の取得だけでなく、血清液量チェックも開栓前に検査を行い、エラー検体に関しては開栓を行わないでエラー検体として排出することが必要となる。
【0046】
図3(f)に未遠心検体を示す。未遠心検体は分離剤103が底部にあり、その上に全血110が存在しその色は赤黒色となる。外部の遠心機で遠心実施済みの検体を投入するための投入トレイから、誤って遠心を実施していない検体を投入してしまった場合、子検体への分注、その後の分析に障害となるため、開栓を行わず、栓をつけたままエラートレイに排出して、再遠心を促すことが必要である。
【0047】
次に、本発明の一実施の形態に係る、サンプルチェッカーを備えた開栓モジュールの動作について説明する。
【0048】
図4(a)〜(h)は、開栓モジュールに搬入された検体容器内の血清情報を取得し、その後開栓するまでの動作フローを示す。本実施の形態では、開栓位置へ採血管が搬送された時に撮像手段44により栓を含めた検体容器の外観について、一回目の撮像を行う(
図2(a))。その後、撮像画像を解析して採血管および栓の種類を識別し、試験管識別情報および栓識別情報に基づいて、チャック回転機構での把持位置を決定する(
図2(b))。なお、この場合のチャック回転機構での把持位置は、栓の側面ではなく、検体容器の側面であって、開口部に近い部位である。この場所をチャックすることにより、次に行なう二回目の撮像時にチャック回転機構が邪魔となることによりサンプルチェックが行なえないという事態や、検体容器の持ち上げ時に万が一栓がはずれて検体がこぼれるといった状態を防ぐことができる。
【0049】
チャック回転機構により把持された採血管101は、所定の高さまで持ち上げられ、チャック回転機構の回転動作に伴って回転させながら、二回目の撮像を行う(
図4(c))。回転させた状態で、サンプルチェックを行い、ラベル隙間51から血清情報(乳び、溶血など)と血清液量の取得を行う。サンプルチェックが終了した検体容器は、チャック回転機構43を下降させ、検体容器をホルダ41内に収めてチャック回転機構から開放する(
図4(d),(e))。
【0050】
二回目の撮像時に得られた画像を解析し、検体容器内部に収容されている血清が乳び、溶血を生じていない場合、正常検体であると判断し、クランプ機構49で採血管101の側面を把持して固定した状態で、チャック回転機構43が栓102の側面を把持し(
図4(f))、チャック回転機構を回転させながら引き上げることにより開栓処理を行う(
図4(g))。開栓動作後に撮像手段44による三回目の撮像を行い、栓が開栓されているかを確認する処理判定を行なう(
図4(h))。
【0051】
なお、二回目の撮像時に何らかの理由で異常検体と判断された検体は、その後の開栓処理をしないで栓をつけたままエラー検体として、収納モジュールから搬出される。
【0052】
図5はバーコードラベルの隙間51から、検体容器内部に収容されている血清情報を取得する方法を示した図である。
【0053】
検体容器をチャック回転機構43にて持ち上げ、回転させ、撮像手段44を用いて採血管全周の画像を連続的に撮像する、もしくは回転中に複数回撮像を行い血清領域の面積が最大となる画像を血清情報の判定用画像として抽出する。
図5(b)は、回転中に複数回数撮像を行なった場合に得られる画像である。この場合においては、左から5番目の画像が採用されることとなる。
図5(c)は、採血間全周の画像を連続的に撮像した画像である。この場合においては、画像においてラベルの隙間領域を識別し、この領域から血清情報を判定する。
【0054】
具体的な血清領域の抽出方法の一例としては、まず取得した画像をRGB表色系からHSV表色系に変換する。採血管種別毎に、HSVそれぞれのパラメータに関して血清領域を抽出する閾値を設定し、採血管に印字されている文字や、栓などの領域を取り除く処理を行い、閾値内に納まる領域を血清領域として抽出を行う。
【0055】
図6(a)はチャック回転機構の斜視図、
図6(b)はチャック回転機構43が栓または採血管の側面を把持する位置を示す図である。
【0056】
チャック回転機構は、複数のツメを円周上に配置した構造となっており、これらのツメで栓の側面を把持する構成となっている。さらに、栓または検体容器の側面を把持するためにツメを開閉させる開閉機構61、複数のツメを一体として回転させる回転機構62、ツメと回転機構を一体として上下動させる上下機構63などから構成される。撮像手段44による二回目の撮像時における採血管容器の把持動作、持ち上げ動作、および回転動作(
図4(c))と、三回目の撮像時における栓の把持動作、回転動作、持ち上げ動作(
図4(h))は、全てこの機構で行われる。チャックの爪は異なるタイプの栓が混在していても確実に栓を掴むことができるよう、複数のツメが上下に並べられた構成となっている。本実施例においては2種類のツメからなる。
【0057】
ヘモガード栓111は、開口部にゴム栓をはめ込んで閉栓するとともに、外側をプラスティックのカバーで覆うタイプの栓である。この場合、チャック回転機構は外周であるプラスティックカバーをツメで把持するが、プラスティックカバーの下部を把持するとカバーと共に採血管の開口部を把持することとなってしまうため、真ん中から上の部分を把持する。この状態で採血管の側面を固定しつつ、チャック回転機構を回転させながら上方に駆動させることにより、開栓処理を実行する。
【0058】
ゴム栓112は、開口部にゴム栓をはめ込んで閉栓するタイプの栓である。この場合、チャック回転機構は採血管の開口部の上に突出しているゴム部分を把持し、回転しながら上方に駆動することにより、開栓処理を実行する。
【0059】
スクリュー栓113は、採血管の開口部および栓の内側に設けられたネジきり形状が係合することにより閉栓するタイプの栓である。一般的に、臨床検査技師が開栓しやすいように栓の上部に突起部が設けられている。チャック回転機構は突起部を把持することはできないため、スクリュー栓の下部であって採血管の開口部と重複しない部分を把持し、回転しながら上方に駆動することにより、開栓処理を実行する。
【0060】
また、サンプルチェック処理時には、万が一の滑落防止のために、栓の側面ではなく、採血管側面の開口部近傍50を把持する。このようにチャック回転機構のツメが把持する対象およびその位置を、処理プロセス毎に変更することで、サンプルチェック及び開栓処理を同一の機構で実現できる。
【0061】
次に血清情報の判定方法について説明する。
【0062】
抽出した血清領域の画素値の平均値から、乳び、溶血の有無を判定する。
【0063】
溶血検体の判定では、正常検体は血清領域が黄色みを帯びるので、色相値Hで約60degであるのに対し、低レベルの溶血を生じた検体の血清領域は橙色を呈しており約30deg、高レベルの溶血を生じた検体の血清領域は赤色を呈しており、約0degの値となることを利用する。予め、溶血の有無を判断する基準レベルとして、閾値H1、H2を設定する。なお、この閾値は、実際に血清を分析する自動分析装置において、測定結果に影響を及ぼす溶血の度合いに応じて決めるものとする。なお、H値そのものを基準とするのではなく、H/SまたはH/Vなどを指標に用いてもよい。
【0064】
血清領域の画素値の平均値の値と、予め解析手段に設定しておいた前記閾値と比較し、どのランクにあたるかを判定する。算出されたHが、H1より小さい場合は、自動分析装置における測定結果に溶血が与える影響が大きいと判断し、当該検体をシステムから取り除き、ユーザーに再測定または再採血の指示を行う。一方、H1以上であってH2より小さい場合は、低レベルの溶血が発生していると判断し、処理は継続しつつも、自動分析装置における測定結果に低レベルの溶血を生じている旨の情報を付加する。
【0065】
乳び検体の判定でも同様に、予め、乳びの有無を判断するための明度Sに対する基準レベルとして、閾値S1を設定する。算出されたSが、S1より小さい場合は、自動分析装置における測定結果に乳びが与える影響が大きいとし、当該検体をシステムから取り除き、ユーザーに水で薄めて再測定等の指示を行う。
【0066】
判定後のフローとしては、溶血検体、乳び検体、液量過多検体、未遠心検体のいずれかの検体異常が検出された場合は、サンプルチェック後に開栓処理を行わず、検体容器を収納モジュール10に搬送する。また、その旨を警告するアラームを発生させる。
【0067】
正常検体と検出された場合は、開栓モジュール5にて検体容器の栓が開栓され、ラベラモジュール6では子検体の発行と子検体に識別を行うためのバーコード104の貼り付けを行う。分注モジュール7にて自動分析装置に検体を分配するための子検体に分注を行い、閉栓モジュール8にて検体の閉栓を行い、収納モジュール10にて検体容器の分類・収納が行われる。
【0068】
以上、本発明によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種主変更可能であることはいうまでもない。
【0069】
なお、上記実施例では検体の前処理を実施する検査自動化システムにサンプルチェック機能と開栓機能とを実装したシステムを開示したが、自動分析装置に直接、開栓機能とサンプルチェック機能を実装しても良い。