特許第6282079号(P6282079)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282079
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】排ガス採取装置及び排ガス分析システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/22 20060101AFI20180208BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   G01N1/22 G
   G01N1/00 101R
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-218793(P2013-218793)
(22)【出願日】2013年10月22日
(65)【公開番号】特開2015-81804(P2015-81804A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2016年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】513123975
【氏名又は名称】公益財団法人日本自動車輸送技術協会
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】横山 英也
(72)【発明者】
【氏名】原 一平
(72)【発明者】
【氏名】野田 明
(72)【発明者】
【氏名】小池 一司
(72)【発明者】
【氏名】吉村 紗矢香
(72)【発明者】
【氏名】桝田 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 樹
(72)【発明者】
【氏名】大槻 喜則
【審査官】 東松 修太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−170842(JP,A)
【文献】 特開2000−314684(JP,A)
【文献】 米国特許第06470732(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00− 1/38
G01M 15/00−15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出される排ガスが流れる排気管から前記排ガスを採取する排ガス採取装置であって、
前記排気管の排ガス排出口に対向して設けられる排ガス採取口を有し、前記排ガス排出口から排出される排ガスとともに、前記排気管の周囲の周囲ガスを採取するための排ガス採取部を備え、
前記排ガス採取部が、前記排ガス採取口から流入した周囲ガスが排ガスを巻き込んで前記排ガス採取口から外部に流出することを低減する巻き込み低減構造を有し、
前記巻き込み低減構造が、前記排ガス採取口の下流側に形成され、前記周囲ガスが前記排ガス採取部の内部から外部、又は、外部から内部へ通過する周囲ガス通過部により構成されていることを特徴とする排ガス採取装置。
【請求項2】
前記周囲ガス通過部が、前記排ガス採取部の側壁に形成され、前記排ガス採取部の内部及び外部を連通する貫通孔又はスリットにより構成されている請求項記載の排ガス採取装置。
【請求項3】
内燃機関から排出される排ガスが流れる排気管から前記排ガスを採取する排ガス採取装置であって、
前記排気管の排ガス排出口に対向して設けられる排ガス採取口を有し、前記排ガス排出口から排出される排ガスとともに、前記排気管の周囲の周囲ガスを採取するための排ガス採取部を備え、
前記排ガス採取部が、前記排ガス採取口から流入した周囲ガスが排ガスを巻き込んで前記排ガス採取口から外部に流出することを低減する巻き込み低減構造を有し、
前記巻き込み低減構造が、前記排ガス採取口に設けられた整流部材により構成されていることを特徴とする排ガス採取装置
【請求項4】
前記排ガス採取部が、前記排ガス排出口よりも大きい排ガス採取口を有しており、
前記整流部材が、前記排ガス採取口全体に設けられている請求項記載の排ガス採取装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の排ガス採取装置と、前記排ガス採取装置により採取された排ガスを分析する排ガス分析機器を備える排ガス分析システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関から排出される排ガスが流れる排気管からガスを採取する排ガス採取装置、及び当該排ガス採取装置を用いた排ガス分析システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排ガスに含まれる所定の測定成分の濃度を測定する装置として、例えば特許文献1に示すように開放型排ガス採取部(以下、オープン型採取部)を有する排ガス分析装置がある。
【0003】
この排ガス分析装置は、車両の排気管から排出される排ガスを吸引するとともに、排気管の周囲にある周囲ガスを吸引するオープン型採取部と、このオープン型採取部から吸引された排ガス及び周囲ガスを混合した混合ガスが流れる流路と、この流路に設置されて、混合ガスに含まれる所定の測定成分の濃度を測定する測定部とを備えている。
【0004】
ところが、オープン型採取部を備える排ガス分析装置は、オープン型採取部と排気管との間に周囲ガスを吸引するための空間があるので、この空間から排ガスが外部に漏れるおそれがあり、正確に排ガスを分析できないおそれがある。
【0005】
このため従来、オープン型採取部に排気管を差し込むことで排ガスの漏れを抑えることが考えられている。ところが、排気管をオープン型採取部に差し込みすぎると、内燃機関に余計な負荷がかかることで試験条件が変わってしまう場合があり、正確な排ガス分析が難しくなる。また車両の排気系の構造から、排気管端をオープン型採取部に差し込めないタイプも多い。一方、オープン型排ガス採取部と排気管との間を離しすぎると、オープン型採取部と排気管との間から排ガスが漏れるおそれがあるので、上記問題の解決方法にはなりえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−314684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような状況の下、本願発明者は、排気管に対するオープン型採取部の位置関係等を変更して、排ガスの漏れを抑えることについて種々検討を行っており、この検討の中で、車両の前方に設置されたエンジン冷却ファンからの冷却風が、オープン型採取部における排ガスの漏れに起因していることを突き止めた。なお、エンジン冷却ファンは、シャシダイナモメータ上で試験走行している車両のエンジンを、路上走行時と同じように冷却するものである。
【0008】
つまり、排気管が車両に対して偏った位置に設けられているため、排気管の周囲において冷却風の流速が速い部分と遅い部分とが生じてしまい、オープン型採取部に流入する冷却風の流速が不均一になる。その結果、オープン型採取部に流入した冷却風のうち、流速の速い冷却風が、オープン型採取部内の排ガスを巻き込んで、流速の遅い冷却風が流れ込んでいる部分から外部に流出してしまい、排ガスの漏れに繋がってしまう。なお、この問題は、排気管が車両に対して偏った位置に設けられていることの他、試験室における各種試験装置のレイアウトや車両の形状、エンジン冷却ファンと車両の相対位置関係等によっても生じる問題である。
【0009】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、開放型排ガス採取部を用いて排ガスを採取するものにおいて、排気管の周囲における冷却風等の周囲ガスの流速の不均一により生じる排ガスの漏れを低減することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち本発明に係る排ガス採取装置は、内燃機関から排出される排ガスが流れる排気管から前記排ガスを採取する排ガス採取装置であって、前記排気管の排ガス排出口に対向して設けられる排ガス採取口を有し、前記排ガス排出口から排出される排ガスとともに、前記排気管の周囲の周囲ガスを採取するための排ガス採取部を備え、前記排ガス採取部が、前記排ガス採取口から流入した周囲ガスが排ガスを巻き込んで前記排ガス採取口から外部に流出することを低減する巻き込み低減構造を有することを特徴とする。
【0011】
また本発明に係る排ガス分析システムは、内燃機関から排出される排ガスが流れる排気管から前記排ガスを採取する排ガス採取装置、及び、前記排ガス採取装置により採取された排ガスを分析する排ガス分析機器を備える排ガス分析システムであって、前記排気管の排ガス排出口に対向して設けられる排ガス採取口を有し、前記排ガス排出口から排出される排ガスとともに、前記排気管の周囲の周囲ガスを採取するための排ガス採取部を備え、前記排ガス採取部が、前記排ガス採取口から流入した周囲ガスが排ガスを巻き込んで前記排ガス採取口から外部に流出することを低減する巻き込み低減構造を有することを特徴とする。
【0012】
このようなものであれば、排ガス採取部が、排ガス採取口から流入した周囲ガスが排ガスを巻き込んで排ガス採取口から外部に流出することを低減する巻き込み低減構造を有するので、排ガス採取口からの排ガスの漏れを低減することができる。つまり、車両に対する排気管の位置や試験室における各種試験装置のレイアウト等によって、排気管の周囲において周囲ガスの流速が不均一である場合でも、巻き込み低減構造により、周囲ガスの流速の不均一に起因する巻き込みを低減することができ、排ガスの排ガス採取口からの漏れを低減することができる。したがって、開放型の排ガス採取部を用いて正確に排ガス分析を行うことができる。
【0013】
巻き込み低減構造の具体的な実施の態様としては、前記巻き込み低減構造が、前記排ガス採取口の下流側に形成され、前記周囲ガスが前記排ガス採取部の内部から外部、又は、外部から内部へ通過する周囲ガス通過部により構成されていることが考えられる。
これならば、排ガス採取口から流入する周囲ガスの流速が不均一であっても、流速の速い周囲ガスが、周囲ガス通過部により排ガス採取部の外部に排出されることになる。その結果、流速の速い周囲ガスが排ガスを巻き込んで、排ガス採取口から外部に流出することを防ぐことができ、排ガスの漏れを低減することができる。
【0014】
周囲ガス通過部の具体的な実施の態様としては、前記周囲ガス通過部が、前記排ガス採取部の側壁に形成され、前記排ガス採取部の内部及び外部を連通する貫通孔又はスリットにより構成されていることが考えられる。
これならば、排ガス採取部の側壁に貫通孔又はスリットを形成するだけで良く、排ガス採取部の構成を簡略化することができる。
【0015】
巻き込み低減構造の別の具体的な実施の態様としては、前記巻き込み低減構造が、前記排ガス採取口に設けられた整流部材により構成されていることが望ましい。
これならば、排ガス採取口に整流部材を設けることで、当該整流部材が流体抵抗となり、排ガス採取口から流入する周囲ガスの流速を均一にすることができる。これにより、流速の速い周囲ガスが排ガスを巻き込んで、排ガス採取口から外部に流出することを防ぐことができ、排ガスの漏れを低減することができる。また、整流部材を通過した周囲ガス及び排ガスは、整流部材により、排ガス採取口から外部に流出し難くなり、これによっても排ガスの漏れを低減することができる。
【0016】
前記排ガス採取部が、前記排ガス排出口よりも大きい排ガス採取口を有しており、前記整流部材が、前記排ガス採取口全体に設けられていることが望ましい。
これならば、排ガス採取口の一部に整流部材を設ける場合に比べて、排ガスの漏れを一層低減することができる。
【発明の効果】
【0017】
このように構成した本発明によれば、開放型の排ガス採取部を用いて排ガスを採取するものにおいて、排気管の周囲における周囲ガスの流速の不均一により生じる排ガスの漏れを低減して、正確に排ガス分析を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態の排ガス分析システムを示す概略図。
図2】同実施形態の排ガス採取部の構成を示す平面図及び正面図。
図3】同実施形態の排ガス採取部のA−A’線断面図。
図4】同実施形態の冷却ファン、車両及び排ガス採取部の位置関係を模式的に示す平面図。
図5】排ガス採取部における周囲ガスの流れを模式的に示す断面図。
図6】変形実施形態の排ガス採取部の構成を示す平面図、B−B’線断面図及びC−C’線断面図。
図7】変形実施形態の排ガス採取部の構成を示す平面図及びD−D’線断面図。
図8】変形実施形態の排ガス採取部の構成を示す平面図、正面図及びE−E’線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明に係る排ガス採取装置を用いた排ガス分析システムについて図面を参照して説明する。
【0020】
本実施形態の排ガス分析システム100は、図1に示すうように、開放型の排ガス採取装置を備える定量希釈分析装置(オープン型CVS)であり、例えば四輪車や二輪車等の試験車両Vにおける内燃機関(エンジン)Eの排気管EHから排出される排ガスを採取して、大気等の希釈用ガスで希釈した後にその希釈された排ガスの所定成分の濃度を検出するものである。なお、本実施形態の排ガス分析システム100は、四輪車や二輪車等の試験車両Vをシャシダイナモ8上で試験走行させる分析システムであり、試験車両Vの前方には、路面走行時と同じように試験車両VのエンジンEを冷却するための冷却風を生成するエンジン冷却ファン9が設けられている。
【0021】
本実施形態の排ガス分析システム100は、排気管EHから排出される排ガス及び排気管EHの周囲にある周囲ガスを採取する開放型の排ガス採取部2と、排ガス採取部2に接続されて、排ガス採取部2により採取された排ガス及び周囲ガスが流れるメイン流路3とを備える。
【0022】
排ガス採取部2は、図2及び図3に示すように、排気管EHから離間して、排ガス排出口EHaに対向して設けられるものであり、排ガス排出口EHaよりも大きい排ガス採取口2aを有し、前記排ガス排出口EHaから排出される排ガスとともに、排ガス排出口EHa周囲の周囲ガスを採取するものである。ここで、「離間して」とは、排ガス採取部2が、排気管EHの周方向(左右方向)又は前後方向の少なくともいずれかの方向において排気管EHとの間に空間を介して設けられることを意味する。図2においては、排ガス採取部2が排気管EHとの間の前後方向及び周方向に空間を有しているが、排気管EHが排ガス採取部2内部に差し込まれる態様でもよい。なお、本実施形態の周囲ガスは、前記エンジン冷却ファン9により生成される大気からなる冷却風、及び、周囲に存在する大気である。
【0023】
排ガス採取部2は、中空の円管形状をなすものであり、上流側の開口部20に、開口形状が円形の排ガス採取口2aが形成されている。この排ガス採取口2aは、排気管EHの排ガス排出口EHaと概略同心円状となるように配置される。また、排ガス採取部2の下流側の開口部に、メイン流路3を構成する配管が接続されている。
【0024】
また、排ガス採取部2は、図3に示すように、その内側周面に、排ガス採取口2aからメイン流路3に接続される接続部2cに向かうに従って、その断面開口が徐々に小さくなるテーパ面2bを有している。具体的に本実施形態の排ガス採取部2は、排ガス採取口2aと同一の内径を有する概略円筒形状をなす上流側筒部201と、当該上流側筒部201に連続して設けられ、テーパ面2bを有する概略切頭円錐筒形状をなす下流側筒部202とを有している。
【0025】
メイン流路3には、図1に示すように、排ガス、周囲ガス及び希釈用ガスを攪拌して混合する混合部5と、メイン流路3を流れる流体の流量を一定にする定流量機構6とが上流側からこの順で設けられている。
【0026】
なお、メイン流路3に接続されて、メイン流路3に希釈用ガスである例えば大気を流すためのものである希釈用ガス導入流路を、混合部5の上流などに設けてもよい。この希釈用ガス導入流路には、例えばユーザが適宜希釈用ガスの流量を変えることができるように流量調整弁を設けてもよい。
【0027】
混合部5は、メイン流路3と希釈用ガス導入流路4との合流点よりも下流側に設けられたサイクロンから構成され、このサイクロンが、ダストを除去するとともに排ガス及び大気を攪拌して混合し、排ガスを大気で希釈した混合ガスを生成するものである。ここで、混合部5で排ガスと攪拌混合される大気は、排ガス採取部4で採取された周囲ガスである大気、及び、希釈用ガス導入流路6から導入された希釈用ガスである大気である。なお、混合部5は、サイクロンに限られず、インペラなど種々の混合部材を用いてもよい。
【0028】
定流量機構6は、混合ガスの総流量が一定流量となるように流量制御するものであって、臨界流量ベンチュリ(CFV)からなるベンチュリ6aと、このベンチュリ6aの下流に接続された例えばブロワ等の吸引ポンプ6bとから構成される。
【0029】
そして、吸引ポンプ6bで混合ガスを吸引して、ベンチュリ6aの上流側及び下流側の差圧を所定値以上とすることでメイン流路3を流れる混合ガスの総流量を一定にする。なお、吸引ポンプ6bにより吸引された混合ガスは外部に排出される。
【0030】
ここで、本実施形態では、メイン流路3における混合部5と定流量機構6との間に、メイン流路3を流れる混合ガスの一部を採取するサンプリングライン7aが接続されている。このサンプリングライン7aには、サンプリングライン7aより採取された混合ガスを分析するための分析機器7bが接続されている。分析機器7bは、例えば採取された混合ガスを溜める採取バッグである。この採取バッグに溜まった混合ガス中に含まれる所定成分の濃度が、例えばNDIR等の分析計で分析される。なお、採取バッグに代えて排ガス連続分析計を接続するなど、適宜既存の技術を応用可能である。
【0031】
しかして、本実施形態の排ガス採取部2は、図2及び図3に示すように、排ガス採取口2aから流入した周囲ガスが排ガスを巻き込んで排ガス採取口2aから外部に流出することを低減する巻き込み低減構造2xを有する。ここで、図4に示すように、例えば二輪車等の車両Vにおいては、排気管EHが車両Vに対して偏った位置に配置されているため、エンジン冷却ファン9からの冷却風は、排気管EHの周囲において流速が不均一である。このため、排ガス採取部2により採取される周囲ガス(冷却風)の流速は、排ガス採取口2aにおいて不均一となる。
【0032】
具体的に巻き込み低減構造2xは、排ガス採取口2aの下流側に形成された周囲ガス通過部21により構成されている。この周囲ガス通過部21は、排ガス採取部2の側壁に形成されて、排ガス採取部2の内部及び外部を連通しており、周囲ガスが通過するものであり、本実施形態では、複数(図2では8個)のスリット2Sにより構成されている。
【0033】
このスリット2Sは、排ガス採取口2aを形成する開口部20の開口端から排ガス採取部2の軸方向に沿って形成されており、詳細には、排ガス採取部2(上流側筒部201)の開口端から下流側筒部202の途中に亘って形成されている。つまり、本実施形態のスリット2Sは、テーパ面2bの一部に亘って形成されている。また、複数のスリット2Sは、排ガス採取部2の側壁において周方向に等間隔に形成されており、各スリット2Sの形状は、互いに同一としている。
【0034】
このように形成された排ガス採取部2において、例えば、図5に示すように、排気管EHの周囲を流れる冷却風の流速が不均一(図5の紙面上側において流速が速く、紙面下側において流速が遅い)の場合には、排ガス採取口2aの上側部分には、流速の速い冷却風が流れ込むことになる。このとき、流速の速い冷却風の一部は、排ガス採取部2の側壁に形成された周囲ガス通過部21(スリット2S)から、排ガス採取部2の外部に排出されることになるため、排ガス採取部2の下側部分に流れて排ガスを巻き込むことを低減できる。また、流速の遅い冷却風が流れ込む部分に形成された周囲ガス通過部21(スリット2S)には、排ガス採取部2の外部から内部に周囲ガスが流れ込むか、或いは、流速の遅い冷却風の一部が、排ガス採取部2の外部に排出されることになる。なお、各周囲ガス通過部21(スリット2S)から排ガス採取部2の外部に周囲ガスが排出されるか、各周囲ガス通過部21(スリット2S)から排ガス採取部2の内部に周囲ガスが流れ込むかは、定流量機構6による制御流量と、排気管EHからの排ガス流量と、冷却風の流量(流速)とにより定まる。
【0035】
このように構成した本実施形態に係る排ガス分析システム100によれば、排ガス採取部2が、排ガス採取口2aから流入した冷却風が排ガスを巻き込んで排ガス採取口2aから外部に流出することを低減する巻き込み低減構造2xを有するので、排ガス採取口2aからの排ガスの漏れを低減することができる。つまり、車両Vに対する排気管EHの位置や試験室における各種試験装置のレイアウト等によって、排気管EHの周囲において冷却風の流速が不均一となる場合において、巻き込み低減構造2xにより、冷却風の流速の不均一に起因する巻き込みを低減することができ、排ガス採取口2aからの排ガスの漏れを低減することができる。したがって、開放型の排ガス採取部2を用いて正確に排ガス分析を行うことができる。
【0036】
また、巻き込み低減構造2xが、排ガス採取部2の内部及び外部を連通するスリット2Sにより構成されているので、排ガス採取部2の構成を簡略化することができる。
【0037】
さらに、スリット2Sをテーパ面2b(下流側筒部202)に至るまで形成しているので、余分な冷却風を排ガス採取部2から外部に排出し易くすることができる。
【0038】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
例えば、前記実施形態では、排ガス採取部2の側壁にスリット2Sを形成することによって周囲ガス通過部21を構成しているが、排ガス採取部2の側壁に貫通孔を形成することにより、周囲ガス通過部21を構成しても良い。
【0039】
前記実施形態では、スリット又は貫通孔は、流路方向(管軸方向)に沿って形成されているが、流路方向に対して異なる方向に沿って形成されたものであっても良いし、管周方向に沿って形成されたものであっても良い。
【0040】
前記実施形態では、複数のスリット2Sそれぞれが同一形状をなすものであったが、それらを互いに異なる形状としても良い。例えば、車両と排気管との位置関係により、冷却風の流速が速い部分と冷却風の流速の遅い部分とが予め分かっている場合等には、冷却風の流速の速い部分に形成するスリット2S又は貫通孔を、冷却風の流速の遅い部分に形成するスリット2S又は貫通孔よりも大きくする(例えばスリット又は貫通孔の幅寸法を大きくする、スリット又は貫通孔の長さ寸法を大きくする)ことが考えられる。
【0041】
また、排ガス採取部2の形状は、前記実施形態に限られず、図6に示すように、概略円筒形状をなすものであっても良い。この場合、排気管EHの排ガス排気口EHaと略同一又は若干大きいサイズの排ガス採取口2aを有しており、当該排ガス採取口2aの下流側に周囲ガス通過部21として貫通孔2Hを設けることが考えられる。このように構成することで、排ガス採取口2aから周囲ガスを流入し難くするとともに、下流側に形成した周囲ガス通過部21である貫通孔2Hから周囲ガスを排ガス採取部2に導入させることができる。これにより、排ガス採取口2aから流入した周囲ガスが排ガスを巻き込んで排ガス採取口2aから外部に流出することを低減することができ、正確な排ガスの分析を行うことができる。
【0042】
なお、図6に示す排ガス採取部2の排ガス採取口2aは、排気管EHの排ガス排出口EHaと略同一サイズのものであるが、排ガス採取口2aを排ガス排出口EHaよりも大きく形成しても良い。この場合、排ガス採取口2aから周囲ガスが流入することになるが、絞り形状により排ガス採取口2a以降へ不要な周囲ガスは導入されず、排ガスと接触することが無いため巻き込みを防止し排ガスの漏れを低減する。また、排気管EHと概同一寸法にすることでより排ガス採取口2aからの周囲ガスの流入を低減し、冷却風の影響を低減した状態で貫通孔2H(周囲ガス通過部21)より周囲ガスを導入することが可能となる。また、流速の速い冷却風(周囲ガス)の一部は、排ガス採取口2aの下流側に形成された貫通孔2H(周囲ガス通過部21)から排ガス採取部2の外部に排出されることになる。
【0043】
さらに、図7に示すように、貫通孔2H(周囲ガス通過部21)を軸方向に沿って、複数段形成するようにしても良い。また、図7においては、貫通孔2H(周囲ガス通過部21)が周方向全体に亘って形成された例を示しており、さらに、図7では、各周囲ガス通過部21に排ガス採取部2の周囲の周囲ガスが貫通孔2Hに流入し易いように、湾曲した鍔形状をなす呼び込み部22が形成されている。
【0044】
その上、図8に示すように、巻き込み低減構造2xが、排ガス採取口2aに設けられた整流部材23により構成されたものであっても良い。具体的には、排ガス採取部2が、排ガス排出口EHaよりも大きい排ガス採取口2aを有しており、整流部材23が、排ガス採取口2a全体に設けられている。また、整流部材23は、多数のキャピラリを流路方向を揃えて敷き詰めるように構成された部材であり、排ガス採取部2において排ガス採取口2aから所定位置まで形成されている。この整流部材23は、排ガス採取口2aから流入するガスの流体抵抗となるものであり、流速の速い冷却風は、流速の遅い冷却風よりも大きい抵抗を受けるため、冷却風の流速が均一化されて排ガス採取部2内に採取される。このように排ガス採取口2aに整流部材23を設けることで、当該整流部材23が流体抵抗となり、排ガス採取口2aから流入する冷却風の流速を略均一にすることができる。これにより、流速の速い冷却風が排ガスを巻き込んで、排ガス採取口2aから外部に流出することを防ぐことができ、排ガスの漏れを低減することができる。なお、排気管EHの排ガス排出口EHaを、排ガス採取部2の排ガス採取口2aよりも内部に位置させるために、整流部材23の先端面の一部を凹ませるように構成しても良い。
【0045】
また、排ガス採取口の開口形状は円形状に限られず、例えば矩形、三角形等の多角形状、又は、楕円をなすものであってもよい。
【0046】
前記実施形態の排ガス分析システムは、メイン流路から希釈された排ガスの一部を採取した後に再度希釈して(二段希釈)、その二段希釈された排ガスを分析するものであってもよい。
【0047】
また、前記実施形態の排ガス採取装置は、シャシダイナモメータにより駆動される二輪車や四輪車等のエンジンの排気管から排出される排ガスを採取するものであるが、例えば、エンジンダイナモメータにより駆動するエンジンの排気管から排出される排ガスを採取するものであってもよい。
【0048】
前記実施形態においては希釈用ガス導入流路を設けているが、希釈用ガス導入流路を設けなくてもよい。この場合、混合部で排ガスと混合される大気は、排ガス採取部で採取された大気のみとなる。
【0049】
前記実施形態の構成に加えて、排ガス採取部における排ガスの漏れを検知するために排ガスに含まれる所定成分(例えばCO、CO、NO等)を検出する排ガス検出機構を設けても良い。この排ガス検出機構は、排ガス採取部の排ガス採取口近傍におけるガスを採取する検出用サンプリング部と、検出用サンプリング部により採取されたガスにおいて排ガスに含まれる所定成分の濃度を検出する漏れ検出部とを備える。
【0050】
定流量機構は臨海流量ベンチュリ及び吸引ポンプとからなる構成に限られず、臨海オリフィスや吸引ブロア、又は、正置換型ポンプ式CVS装置(positive displacement pump:PDP)など、その他種々の装置を使用できる。また、定流量機構ではなく、可変流量制御機構、つまりメイン流路を流れる流量を可変制御可能な流量制御機構を用いてもよい。
【0051】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0052】
100・・・排ガス分析システム
E ・・・内燃機関
EH ・・・排気管
EHa・・・排ガス排出口
2a ・・・排ガス採取口
2 ・・・排ガス採取部
2x ・・・巻き込み低減構造
21 ・・・周囲ガス通過部
2S ・・・スリット
2H ・・・貫通孔
23 ・・・整流部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8