(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電荷発生層のN層が、電子供与性金属、金属化合物及び金属錯体の少なくとも1つを含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
前記電荷発生層のN層が、アルカリ金属、アルカリ金属化合物、アルカリ金属を含む有機金属錯体、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属化合物、アルカリ土類金属を含む有機金属錯体、希土類金属、希土類金属化合物及び希土類金属を含む有機金属錯体のうち、少なくとも1つを含有する、請求項4に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
前記発光ユニットの少なくとも1つの発光層を構成する材料が、他の発光ユニットの発光層を構成する材料と異なっている、請求項1〜7のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の有機EL素子は、陽極と陰極との間に2以上の発光ユニットが挟持され、かつ、発光ユニットの間に電荷発生層が挟持されている構成を有する。
図1は、本発明の有機EL素子の一実施形態の概略断面図である。
有機EL素子1は、基板10上に、陽極20、第1の発光ユニット30A、電荷発生層40、第2の発光ユニット30B及び陰極50を、この順に備える。
【0014】
第1の発光ユニット30A及び第2の発光ユニット30Bは、電子及び正孔の再結合により発光するものである。2つの発光ユニットはそれぞれ、少なくとも発光層32A、32Bを有する単層又は積層構造を有する。本実施形態では、発光ユニットは陽極側から、正孔輸送層31、発光層32及び電子輸送層33を積層した多層膜構造を有している。
【0015】
電荷発生層40は、電圧印加時において正孔と電子を発生し、電荷発生層40の陰極50側に配置された発光ユニット、即ち、第2の発光ユニット30Bに対して正孔を注入する一方、電荷発生層40の陽極20側に配置された発光ユニット、即ち、第1の発光ユニット30Aに対して電子を注入する役割を果たす層である。
【0016】
本発明で電荷発生層40は、陽極側に形成されるN層41と、陰極側に形成されるP層42を有する。そして、P層42が、下記式(I)で表される化合物を含有することを特徴とする。
【化5】
【0017】
上記式(I)で表される化合物をP層に使用することにより、発光効率が高く、駆動電圧の低い有機EL素子が得られる。また、低い蒸着温度にて電荷発生層を成膜することができるため、成膜プロセスの効率や量産性に優れている。さらに、有機EL素子を平面上に複数形成し画素とした場合、HATよりも導電性が低いため、隣接する画素間の電流リークを抑制することができる。
以下、本発明の特徴である式(I)の化合物について説明する。
【0018】
上記式(I)中、Ar
1は、核炭素数6〜24の芳香環又は核原子数5〜24の複素環、好ましくは核炭素数6〜14の芳香環又は核原子数5〜14の複素環である。芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環、9,9−ジメチルフルオレン環、9,9−ジオクチルフルオレン環等が挙げられる。複素環としては、ピラジン環、ピリジン環、キノキサリン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、フラン環、ベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、フェナントロリン環、ナフチリジン環、テトラアザアントラセン環等が挙げられる。前記芳香環及び複素環は、以下に記載するR1〜R
4が表す置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換の複素環基、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のフルオロアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のフルオロアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリーロキシ基、置換もしくは無置換のアラルキルオキシ基、置換もしくは無置換のアミノ基、置換もしくは無置換のシリル基又は、シアノ基で置換されていてもよい。
尚、本発明において、「核炭素」とは、芳香環を構成する炭素原子を意味し、「核原子」とは複素環(飽和環、不飽和環及び芳香族複素環を含む)を構成する炭素原子及びヘテロ原子を意味する。
【0019】
式(I)中、R
1〜R
4は、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換の複素環基、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のフルオロアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のフルオロアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリーロキシ基、置換もしくは無置換のアラルキルオキシ基、置換もしくは無置換のアミノ基、置換もしくは無置換のシリル基又は、シアノ基である。R
1とR
2及びR
3とR
4は互いに結合して環を形成してもよい。
【0020】
アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、オクチル基等が挙げられる。
シクロアルキル基としてはシクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
アルケニル基としてはビニル基、プロペニル基(二重結合の位置異性体を含む)、ブテニル基(二重結合の位置異性体を含む)、ペンテニル基(二重結合の位置異性体を含む)等が挙げられる。
(置換)アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、フルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、(トリフルオロメチル)フルオロフェニル基、トリフルオロフェニル基、ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、(トリフルオロメチル)ジフルオロフェニル基、トリフルオロメトキシフェニル基、トリフルオロメトキシフルオロフェニル基等が挙げられる。
複素環基としては、ピリジン、ピラジン、フラン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、チオフェン等の残基が挙げられる。
【0021】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が挙げられる。
フルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロシクロヘキシル基、パーフルオロアダマンチル基等が挙げられる。
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。
フルオロアルコキシ基としては、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、2,2,2−トリフルオロエトキシ基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロポキシ基、2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシ基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン‐2−イルオキシ基等が挙げられる。
(置換)アリールオキシ基の例としては、フェニルオキシ基、ペンタフルオロフェニルオキシ基、4−トリフルオロフェニルオキシ基等が挙げられる。
(置換)アラルキルオキシ基の例としては、ベンジルオキシ基、ペンタフルオロベンジルオキシ基、4−トリフルオロメチルベンジルオキシ基等が挙げられる。
(置換)アミノ基の例としては、アミノ基、モノもしくはジメチルアミノ基、モノもしくはジエチルアミノ基、モノもしくはジフェニルアミノ基等が挙げられる。
(置換)シリル基の例としては、シリル基、モノ、ジもしくはトリメチルシリル基、モノ、ジもしくはトリエチルシリル基、モノ、ジもしくはトリフェニルシリル基等が挙げられる。
【0022】
また、R
1〜R
4の任意の置換基の例としては、上記で挙げたハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基及び複素環基が挙げられる。
尚、以下、特筆しない限り本願において“置換もしくは無置換”というときの任意の置換基の例としては、上記で挙げたハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基及び複素環基が挙げられる。
また、本願において、水素原子とは、中性子数が異なる同位体、すなわち、軽水素(protium)、重水素(deuterium)、三重水素(tritium)、を包含する。
【0023】
既述のようにR
1とR
2及びR
3とR
4は互いに結合して環を形成してもよい。環の例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、ピラジン環、ピリジン環、フラン環等が挙げられる。
さらに、R
1〜R
4の少なくとも一つは、フッ素原子、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、シアノ基、又は、フッ素、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、シアノ基から選ばれる少なくとも1種の基を有するアリール基もしくは複素環基であることが好ましい。これらを置換基にすることで電子受容性を高めたり、適度な昇華温度を得られたり、あるいは結晶化を抑制したりすることができる。
【0024】
式(I)中のRg
1及びRg
2は、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、下記式(i)もしくは(ii)である。
【0026】
上記式中、X
1及びX
2は互いに同一でも異なっていてもよく、下記(a)〜(g)に示す二価の基のいずれかである。特に(a)〜(c)であれば、耐熱性に優れる、あるいは合成のし易さ等の点から好ましい。
【0028】
上記式中、R
21〜R
24は、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、置換もしくは無置換のフルオロアルキル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基又は置換もしくは無置換の複素環基であり、R
22とR
23は互いに結合して環を形成してもよい。フルオロアルキル基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及び複素環基の具体例としては、R
1〜R
4に関して例示した基が挙げられる。
【0029】
式(I)中、Y
1〜Y
4は互いに同一でも異なっていてもよく、−N=、−CH=、又はC(R
5)=であり、R
5は前記R
1〜R
4と同義である。R
1〜R
5のうち互いに隣接するものは互いに結合して環を形成してもよい。
また、Y
1〜Y
4のうち少なくとも1つは窒素原子であることが好ましい(後述のY
21〜Y
26及びY
31〜Y
38についても同様)。少なくとも1つは窒素原子であることで、電子受容性を高めたり、耐熱性を高めたり、あるいは結晶化を抑制したりすることができる。
【0030】
式(I)のインデノフルオレンジオン誘導体は、下記式(I−A)あるいは(I−B)で表されることが好ましい。下記式(I−A)中のAr
1等の各符号は、式(I)と同義である。下記式(I−B)中のAr
2は式(I)におけるAr
1と同義であり、X
3及びX
4は式(I)におけるX
1及びX
2と同義であり、Y
5〜Y
8は式(I)におけるY
1〜Y
4と同義であり、R
1〜R
4は式(I)におけるR
1〜R
4と同義である。
【化8】
【0031】
さらに好ましくは、式(I)のインデノフルオレンジオン誘導体は下記式(II)〜(X)で表される。
【化9】
【0032】
上記式中、X
1及びX
2、R
1〜R
4は式(I)におけるX
1及びX
2、R
1〜R
4と同義であり、Y
21〜Y
26、Y
31〜Y
38及び、Y
41〜Y
50は式(I)におけるY
1〜Y
4と同義である。
【0033】
特に好ましい式(I)インデノフルオレンジオン誘導体は下記式(I−a)〜(I−n)で表される。尚、下記式(I−b)、(I−d)、(I−f)、(I−h)、(I−j)、(I-l)、(I-n)、(I-p)、及び(I-r)は、2つのシアノイミノ基のシアノ基の立体配置により、複数の異性体が存在する。本発明は特定の異性体に限定されるものではない。本発明は、特定の異性体のみでもよいし、2つもしくは2より大きい異性体の混合物であってもよい。
【化10】
【0035】
上記式中、R
31〜R
52は式(I)におけるR
1〜R
4と同義である。R
31〜R
52のうち互いに隣接するものは互いに結合して環を形成してもよい。特に、R
31〜R
52の少なくとも一つが、フッ素原子、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、シアノ基、又は、フッ素、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、シアノ基から選ばれる基を少なくとも1種有するアリール基もしくは複素環基であることが好ましい。
【0036】
インデノフルオレンジオン誘導体は、上記の各式の構造を有することで、電子受容性を有し、また、耐熱性に優れ、昇華温度が約200℃以上を有し、昇華精製も可能であるため高純度化が可能となる。また、有機EL素子に使用することで素子の駆動電圧を低下させることができ、また、寿命を向上させることができる。さらに、素子の製造時において、昇華温度が約200℃以上を有することから、蒸着用成膜装置内部に飛散することがないため、成膜装置又は有機EL素子を汚染することもない。
【0037】
以下に式(I)のインデノフルオレンジオン誘導体の具体例を示すが、これらに限られるものではない。
【0062】
本発明の有機EL素子は、電荷発生層のP層に上記式(I)で表されるインデノフルオレンジオン誘導体を使用していればよく、他の構成部材である陽極、発光ユニット、陰極等は、本技術分野において公知の部材を適宜使用することができる。
以下、本発明の有機EL素子を構成する各部材について説明する。
【0063】
(基板)
本発明の有機EL素子は基板上に作製する。基板は有機EL素子を支持するものである。発光ユニットからの光を、基板を通して取り出す場合には、基板は透光性である必要がある。この場合、400〜700nmの可視領域の光の透過率が50%以上であることが好ましい。
具体的には、ガラス板、ポリマー板等が挙げられる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等が挙げられる。またポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を挙げることができる。
尚、光取り出し方向の反対側に支持基板が位置する場合には透光性は不要である。
【0064】
(陽極)
有機EL素子の陽極は、正孔輸送層又は発光層に正孔を注入する役割を担うものである。陽極側に透明性を必要とする場合は、酸化インジウム錫合金(ITO)、酸化錫(NESA)、酸化インジウム亜鉛合金(IZO)、金、銀、白金、銅等が適用できる。また、透明性を必要としない、反射型電極とする場合には、これらの金属の他に、銀、アルミニウム、モリブデン、クロム、ニッケル等の金属や他の金属との合金を使用することもできる。
特に、仕事関数の低い(例えば、5.0eV以下)陽極と、本発明の有機EL素子用材料を用いた正孔注入層を組み合わせて用いても、電子授受が可能であり、良好な注入性を示す。
これら材料は単独で用いることもできるが、これら材料同士の合金や、その他の元素を添加した材料も適宜選択して用いることができる。
【0065】
陽極はこれらの電極物質を蒸着法やスパッタリング法等の方法で薄膜を形成させることにより作製することができる。発光層からの発光を陽極から取り出す場合、陽極の発光に対する透過率は10%より大きくすることが好ましい。また陽極のシート抵抗は、数百Ω/□以下が好ましい。陽極の膜厚は材料にもよるが、通常10nm〜1μm、好ましくは10〜200nmの範囲で選択される。
【0066】
(発光ユニット)
発光ユニットは、少なくとも発光層を有する単層又は積層構造を有する。発光ユニットは、陽極側から第1有機層、発光層、第2有機層からなる多層膜構造であるものが好ましく、具体的には、正孔輸送帯域/発光層/電子輸送帯域、からなる多層膜構造が挙げられる。
正孔輸送帯域は、正孔注入層、正孔輸送層を単層又は複数層積層することにより構成される。電子輸送帯域は、電子注入層、電子輸送層を単層又は複数層積層することにより構成される。
【0067】
本発明の有機EL素子は2つ以上の発光ユニットを有するが、各発光ユニットは同じ材料から構成されていてもよく、また、それぞれ異なる材料で構成されてもよい。
また、各発光ユニットの層構成は、同じでも、異なっていてもよい。例えば、
図1に示す有機EL素子において、第1の発光ユニット30Aの電子輸送層を省略し、正孔輸送層31Aと発光層32Aからなる2層構造としてもよい。
さらに、各発光ユニットの発光色も同じでもよく、異なっていてもよい。例えば、
図1に示す素子1において、第1の発光ユニット30Aの発光色を黄色とし、第2の発光ユニット30Bの発光色を青色としてもよい。この場合、2つの光が混合して白色発光する有機EL素子が得られる。
以下、発光ユニットを構成する発光層、正孔輸送帯域及び電子輸送帯域について説明する。
【0068】
(A)発光層
発光層としては、ホスト材料とドーパント材料から構成される層が好ましい。
有機EL素子のホスト材料は、ルブレン、アントラセン、テトラセン、ピレン、ペリレン等が使用できる。好ましくはアントラセン誘導体であり、さらに好ましくは下記式(1)で表されるアントラセン誘導体を含む。
【化36】
(式中、Ar
11及びAr
12は、それぞれ置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基である。
R
101〜R
108は、それぞれ水素原子、フッ素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3〜10のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3〜30のアルキルシリル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数8〜30のアリールシリル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基である。)
【0069】
発光性ドーパントとしては、蛍光性ドーパント燐光性ドーパントがある。
蛍光性ドーパントは一重項励起子から発光することのできる化合物である。蛍光性ドーパントとしては、アミン系化合物、芳香族化合物、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体等のキレート錯体、クマリン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ビススチリルアリーレン誘導体、オキサジアゾール誘導体等から、要求される発光色に合わせて選ばれる化合物であることが好ましく、スチリルアミン化合物、スチリルジアミン化合物、アリールアミン化合物、アリールジアミン化合物、芳香族化合物がより好ましく、縮合多環アミン誘導体、芳香族化合物がさらに好ましい。これらの蛍光性ドーパントは単独でも、また複数組み合わせて使用してもよい。
【0070】
縮合多環アミン誘導体としては、下記式(2)で表されるものが好ましい。
【化37】
【0071】
式中、Yは環形成炭素数10〜50の置換もしくは無置換の縮合アリール基を示す。
Ar
21、Ar
22は、それぞれ置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリール基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜50の複素環基を示す。
縮合アリール基とは、上記アリール基の中で2環以上の環構造が縮環した基である。
縮合アリール基としては、環形成炭素数10〜50(好ましくは環形成炭素数10〜30、より好ましくは環形成炭素数10〜20)の縮合アリール基であり、上記アリール基の具体例中、好ましくは、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、クリセニル基、フェナントリル基、フルオレニル基、フルオランテニル基、アセナフトフルオランテニル基、ナフタセニル基等が挙げられる。
【0072】
Yの具体例としては、上記の縮合アリール基が挙げられ、好ましくは置換もしくは無置換のアントリル基、置換もしくは無置換のピレニル基、置換もしくは無置換のクリセニル基、アセナフトフルオランテニル基である。
Ar
21、Ar
22の好ましい例としては、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のジベンゾフラニル基等である。Ar
201、Ar
202の置換基の好ましい例としては、アルキル基、シアノ基、置換もしくは無置換のシリル基である。nは1〜4の整数である。nは1〜2の整数であることが好ましい。
【0073】
上記芳香族化合物としては、下記式(3)で表されるフルオランテン化合物が好ましい。
【化38】
(式中、X
101〜X
106及びX
108〜X
111は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜8のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数7〜50のアラルキル基、置換もしくは無置換の環形成原子数6〜50のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜50のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数2〜50のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基で置換されたアミノ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基及びはカルボキシル基から選ばれる。
X
107及びX
112は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、及び置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜8のシクロアルキル基から選ばれる。
但し、X
103とX
104は、互いに異なる置換基である。
また、X
101〜X
112において、隣接する置換基同士は互いに結合して飽和もしくは不飽和の環状構造を形成してもよく、これら環状構造は置換されてもよい。)
【0074】
式(3)のX
103又はX
104は、好ましくは置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基である。また、式(3)の「置換もしくは無置換」の好ましい置換基は、シアノ基又はハロゲン原子である。
式(3)おいて、アリール基、複素環基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子の例として上記で例示したものが挙げられる。
【0075】
りん光発光に好適なホストは、その励起状態からりん光発光性化合物へエネルギー移動が起こる結果、りん光発光性化合物を発光させる機能を有する化合物である。ホスト化合物としては三重項エネルギーギャップが大きく、励起子エネルギーをりん光発光性化合物にエネルギー移動できる化合物ならば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0076】
このようなホスト化合物の具体例としては、ベンゼン環やナフタレン環、複素環の組み合わせで構成される縮合環化合物、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン系化合物、ポルフィリン系化合物、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等の高分子化合物等が挙げられる。ホスト化合物は単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
具体例としては、以下のような化合物が挙げられる。
【0078】
りん光発光性のドーパントは三重項励起子から発光することのできる化合物である。三重項励起子から発光する限り特に限定されないが、Ir、Ru、Pd、Pt、Os及びReからなる群から選択される少なくとも一つの金属を含む金属錯体であることが好ましく、ポルフィリン金属錯体又はオルトメタル化金属錯体が好ましい。ポルフィリン金属錯体としては、ポルフィリン白金錯体が好ましい。りん光発光性化合物は単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0079】
オルトメタル化金属錯体を形成する配位子としては種々のものがあるが、好ましい配位子としては、2−フェニルピリジン誘導体、7、8−ベンゾキノリン誘導体、2−(2−チエニル)ピリジン誘導体、2−(1−ナフチル)ピリジン誘導体、2−フェニルキノリン誘導体等が挙げられる。これらの誘導体は必要に応じて置換基を有しても良い。特に、フッ素化物、トリフルオロメチル基を導入したものが、青色系ドーパントとしては好ましい。さらに補助配位子としてアセチルアセトナート、ピクリン酸等の上記配位子以外の配位子を有していても良い。
【0080】
りん光発光性のドーパントの発光層における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.1〜70質量%であり、1〜30質量%が好ましい。りん光発光性化合物の含有量が0.1質量%以上であることで、発光が微弱となるのを防ぎ、その含有効果が十分に発揮させることができる。70質量%以下とすることで、濃度消光と言われる現象を抑え、素子性能が低下を防ぐことができる。
【0081】
発光層は、必要に応じて正孔輸送材、電子輸送材、ポリマーバインダーを含有しても良い。
発光層の膜厚は、5〜50nmであることが好ましく、7〜50nmであることがより好ましく、10〜50nmであることが最も好ましい。5nm以上とすることで発光層形成が容易となり、色度の調整がしやすくなる。50nm以下とすることで駆動電圧が上昇するのを防ぐことができる。
【0082】
(B)正孔輸送帯域
正孔輸送帯域の層としては、正孔輸送層や正孔注入層等がある。正孔輸送層は、発光層への正孔注入を助け、発光領域まで輸送する層であって、正孔移動度が大きく、イオン化エネルギーが通常5.5eV以下と小さい。このような正孔輸送層としてはより低い電界強度で正孔を発光層に輸送する材料が好ましく、さらに正孔の移動度が、例えば10
4〜10
6V/cmの電界印加時に、少なくとも10
−4cm
2/V・秒であれば好ましい。
【0083】
正孔輸送層の材料の具体例として、例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、ポリシラン系、アニリン系共重合体、導電性高分子オリゴマー(特にチオフェンオリゴマー)等を挙げることができる。
【0084】
正孔注入層又は正孔輸送層(正孔注入輸送層も含む)には、芳香族アミン化合物、例えば、下記式(4)で表わされる芳香族アミン誘導体が好適に用いられる。
【化40】
【0085】
式(4)において、Ar
31〜Ar
34は、環形成炭素数6〜50の芳香族炭化水素基(但し、置換基を有しても良い。)、環形成炭素数6〜50の縮合芳香族炭化水素基(但し、置換基を有しても良い。)、環形成炭素数2〜40の芳香族複素環基(但し、置換基を有しても良い。)環形成炭素数2〜40の縮合芳香族複素環基(但し、置換基を有しても良い。)、それら芳香族炭化水素基とそれら芳香族複素環基とを結合させた基、それら芳香族炭化水素基とそれら縮合芳香族複素環基とを結合させた基それら縮合芳香族炭化水素基とそれら芳香族複素環基とを結合させた基、又はそれら縮合芳香族炭化水素基とそれら縮合芳香族複素環基とを結合させた基を表す。
Lは、単結合又はAr
31〜Ar
34と同様な基を表す。
【0086】
また、下記式(5)の芳香族アミンも正孔注入層又は正孔輸送層の形成に好適に用いられる。
【化41】
【0087】
式(5)において、Ar
31〜Ar
33の定義は式(4)のAr
31〜Ar
34の定義と同様である。
【0088】
正孔注入層は、さらに正孔の注入を助けるために設けられる層である。正孔注入層の材料としては本発明の有機EL用材料単独でもよいし、他の材料と混合して用いてもよい。他の材料としては正孔輸送層と同様の材料を使用することができる。他に、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物を用いることもできる。さらに、電荷発生層のP層で用いられるHATやF4TCNQ、式(4)で示される化合物を使用する事もできる。
【0089】
また、含チオフェンオリゴマーや特開平8−193191号公報に開示してある含アリールアミンオリゴマー等の導電性オリゴマー、含アリールアミンデンドリマー等の導電性デンドリマー等も用いることができる。
さらに、芳香族ジメチリディン系化合物の他、p型Si、p型SiC等の無機化合物も正孔注入層の材料として使用することができる。
【0090】
正孔注入層又は正孔輸送層は、例えば、上述した化合物を真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法等の公知の方法により薄膜化することにより形成することができる。正孔注入層、正孔輸送層としての膜厚は特に制限はないが、通常は1nm〜5μmである。
【0091】
(C)電子輸送帯域
電子輸送帯域の層としては、電子注入層や電子輸送層等(以下、電子注入層・輸送層という)がある。
電子注入層・輸送層は、発光層への電子の注入を助け、発光領域まで輸送する層であって、電子移動度が大きい。
電子注入層・輸送層は数nm〜数μmの膜厚で適宜選ばれるが、特に膜厚が厚いとき、電圧上昇を避けるために、10
4〜10
6V/cmの電界印加時に電子移動度が少なくとも10
−5cm
2/Vs以上であることが好ましい。
電子注入層・輸送層に用いられる材料としては、8−ヒドロキシキノリン又はその誘導体の金属錯体や含窒素複素環誘導体が好適である。
上記8−ヒドロキシキノリン又はその誘導体の金属錯体の具体例としては、オキシン(一般に8−キノリノール又は8−ヒドロキシキノリン)のキレートを含む金属キレートオキシノイド化合物、例えばトリス(8−キノリノール)アルミニウムを電子注入材料として用いることができる。
含窒素複素環誘導体としては、例えば、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、トリアゾール、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、フェナントロリン、ベンズイミダゾール、イミダゾピリジン等が好ましく、中でもベンズイミダゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、イミダゾピリジン誘導体が好ましい。
【0092】
(電荷発生層)
電荷発生層は、電圧印加時において、電荷発生層の陰極側に配置された発光ユニットに対して正孔を注入する一方、電荷発生層の陽極側に配置された発光ユニットに対して電子を注入する役割を果たす層である。
【0093】
本発明で電荷発生層は、陽極側に形成されるN層と、陰極層側に形成されるP層を有する。
N層を形成する材料としては、有機化合物、電子供与性金属、金属化合物及び金属錯体等が挙げられる。
N層は、アルカリ金属、アルカリ金属化合物、アルカリ金属を含む有機金属錯体、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属化合物、アルカリ土類金属を含む有機金属錯体、希土類金属、希土類金属化合物及び希土類金属を含む有機金属錯体のうち、少なくとも1つを含有する層が好ましい。
【0094】
アルカリ金属としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)等が挙げられ、仕事関数が2.9eV以下のものが特に好ましい。これらのうち好ましくはLi、K、Rb、Cs、さらに好ましくはLi、Rb又はCsであり、最も好ましくはLiである。
アルカリ土類金属としては、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)等が挙げられ、仕事関数が2.9eV以下のものが特に好ましい。
希土類金属としては、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、テルビウム(Tb)、イッテルビウム(Yb)等が挙げられ、仕事関数が2.9eV以下のものが特に好ましい。
以上の金属のうち好ましい金属は、特に還元能力が高く、電子注入域への比較的少量の添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が可能である。
【0095】
アルカリ金属化合物としては、酸化リチウム(Li
2O)、酸化セシウム(Cs
2O)、酸化カリウム(K
2O)等のアルカリ酸化物、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カリウム(KF)等のアルカリハロゲン化物等が挙げられ、フッ化リチウム(LiF)、酸化リチウム(Li
2O)、フッ化ナトリウム(NaF)が好ましい。
アルカリ土類金属化合物としては、酸化バリウム(BaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化カルシウム(CaO)及びこれらを混合したストロンチウム酸バリウム(Ba
xSr
1−xO)(0<x<1)、カルシウム酸バリウム(Ba
xCa
1−xO)(0<x<1)等が挙げられ、BaO、SrO、CaOが好ましい。
希土類金属化合物としては、フッ化イッテルビウム(YbF
3)、フッ化スカンジウム(ScF
3)、酸化スカンジウム(ScO
3)、酸化イットリウム(Y
2O
3)、酸化セリウム(Ce
2O
3)、フッ化ガドリニウム(GdF
3)、フッ化テルビウム(TbF
3)等が挙げられ、YbF
3、ScF
3、TbF
3が好ましい。
【0096】
有機金属錯体としては、上記の通り、それぞれ金属イオンとしてアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、希土類金属イオンの少なくとも一つ含有するものであれば特に限定はない。また、配位子にはキノリノール、ベンゾキノリノール、アクリジノール、フェナントリジノール、ヒドロキシフェニルオキサゾール、ヒドロキシフェニルチアゾール、ヒドロキシジアリールオキサジアゾール、ヒドロキシジアリールチアジアゾール、ヒドロキシフェニルピリジン、ヒドロキシフェニルベンゾイミダゾール、ヒドロキシベンゾトリアゾール、ヒドロキシフルボラン、ビピリジル、フェナントロリン、フタロシアニン、ポルフィリン、シクロペンタジエン、β−ジケトン類、アゾメチン類、及びそれらの誘導体等が好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0097】
尚、N層は上記金属、化合物及び錯体の他に、上述したトリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)等の電子注入材料や発光材料等の有機化合物を含有していてもよい。
有機化合物としては、例えば、含窒素複素環化合物が好ましい。含窒素複素環化合物として、例えば、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、トリアゾール、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、フェナントロリン、ベンズイミダゾール、イミダゾピリジン等を挙げることができるが、中でも、ベンズイミダゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、イミダゾピリジン誘導体が好ましい。
【0098】
具体的な材料として、下記式(9)で表わされるベンゾイミダゾール誘導体を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【化42】
【0099】
式中、A
14は、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、3〜40個の芳香族環が縮合した多環芳香族炭化水素基を有する、炭素数6〜60の置換もしくは無置換の炭化水素基、又は含窒素複素環基である。
ハロゲン原子及び炭素数1〜20のアルキル基の具体例は、上述した式(I)と同様である。
【0100】
3〜40個の芳香族環が縮合した多環芳香族炭化水素基を有する、炭素数6〜60の置換もしくは無置換の炭化水素基について、3〜40個の芳香族環が縮合した多環芳香族炭化水素基としては、アントラセン、ナフタセン、ペンタセン、ピレン、クリセン等が挙げられる。炭素数6〜60の炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基等が挙げられる。尚、これらの具体例は上述した式(I)と同様である。炭化水素基としてはアリール基が好ましく、なかでも、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フルオレニル基等が好ましい。これらは置換基を有していてもよい。
含窒素複素環基としては、ピリジン環、トリアジン等が挙げられる。
【0101】
Bは、単結合、又は置換もしくは無置換の芳香族環基である。芳香族環基としては、フェニレン基が好ましい。
R
31及びR
32は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜60の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の含窒素複素環基、又は、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基である。各基の具体例は、上述した式(I)、A
14と同様である。
【0102】
式(9)に示した化合物の具体例として、以下の式(9−1)〜式(9−49)等の化合物を挙げることができる。尚、「Ar(α)」は、式(9)中のR
31,R
32を含むベンゾイミダゾール骨格に対応し、「B」は式(9)中のBに対応する。また、「Ar(1)」及び「Ar(2)」は式(9)中のA
14に対応し、Ar(1),Ar(2)の順にBに結合する。
【0103】
【化43】
【化44】
【化45】
【化46】
【化47】
【化48】
【0104】
尚、N層に用いる有機化合物は、上記の化合物のようにアントラセン骨格を有する化合物が好ましいが、これに限定するものではない。例えば、アントラセン骨格に変えて、ピレン骨格又はクリセン骨格を備えたベンゾイミダゾール誘導体を用いてもよい。また、有機材料は、1種類だけでなく、複数種類を混合又は積層して用いてもよい。
【0105】
上記金属、化合物及び錯体の添加形態としては、界面領域に層状又は島状に形成することが好ましい。形成方法としては、抵抗加熱蒸着法により上記金属、化合物及び錯体の少なくともいずれかを蒸着しながら、界面領域を形成する発光材料や電子注入材料である有機物を同時に蒸着させ、有機物中に上記金属、化合物及び錯体の少なくともいずれかを分散する方法が好ましい。分散濃度は通常、膜厚比で有機物:上記金属、化合物及び錯体=1000:1〜1:1000であり、好ましくは100:1〜1:1である。
【0106】
上記金属、化合物及び錯体の少なくともいずれかを層状に形成する場合は、界面の有機層である発光材料や電子注入材料を層状に形成した後に、上記金属、化合物及び錯体の少なくともいずれかを単独で抵抗加熱蒸着法により蒸着し、好ましくは層の厚み0.1nm以上15nm以下で形成する。
【0107】
上記金属、化合物及び錯体の少なくともいずれかを島状に形成する場合は、界面の有機層である発光材料や電子注入材料を島状に形成した後に、上記金属、化合物及び錯体の少なくともいずれかを単独で抵抗加熱蒸着法により蒸着し、好ましくは島の厚み0.05nm以上1nm以下で形成する。
【0108】
また、本発明の有機EL素子における、主成分と、上記金属、化合物及び錯体の少なくともいずれかの割合としては、膜厚比で、主成分:電子供与性ドーパント及び/又は有機金属錯体=100:1〜1:1であると好ましく、50:1〜4:1であるとさらに好ましい。
【0109】
N層の膜厚は、0.1nm〜100nmが好ましく、特に、1nm〜50nmが好ましい。
【0110】
P層は、上述したとおり、上記式(I)で表される化合物を含有する。P層は、式(I)で表される化合物のみからなる層でもよく、他の材料との混合物からなる層であってもよい。本発明では、P層が式(I)で表される化合物と、少なくとも1種類の正孔輸送材料を含む層であることが好ましい。
正孔輸送材料としては、上述した正孔輸送帯域で使用される材料が使用できる。なかでも、芳香族第三級アミン化合物が好ましい。
P層における、式(I)で表される化合物の含有率は、0.1重量%〜100重量%であることが好ましく、特に、10重量%〜70重量%であることが好ましい。
【0111】
P層の膜厚は、1nm〜50nmが好ましく、特に、5nm〜20nmが好ましい。
【0112】
本発明では、発光ユニットの少なくとも1つが正孔輸送層を有し、電荷発生層のP層が正孔輸送層と接していることが好ましい。例えば、
図1に示す有機EL素子1のように、第2の発光ユニット30Bの正孔輸送層31Bと電荷発生層のP層42が接していることが好ましい。これにより電荷発生層から第2の発光ユニット30Bの正孔輸送層31Bへの正孔注入が効率よく行なわれ、素子の低電圧化が実現する。
【0113】
電荷発生層は、N層とP層の2層のみからなっていてもよく、また、N層とP層の間に介在層を有していてもよい。
【0114】
(陰極)
陰極としては仕事関数の小さい(4eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム・銀合金、アルミニウム、アルミニウム/酸化アルミニウム、アルミニウム・リチウム合金、インジウム、希土類金属等が挙げられる。
この陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。
【0115】
ここで発光層からの発光を陰極から取り出す場合、陰極の発光に対する透過率は10%より大きくすることが好ましい。また陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜1μm、好ましくは50〜200nmである。
【0116】
(他の構成部材)
本発明においては陰極と有機層との間に絶縁体や半導体で構成される電子注入層を設けてもよい。これにより、電流のリークを有効に防止して、電子注入性を向上させることができる。
【0117】
このような絶縁体としては、アルカリ金属カルコゲナイド、アルカリ土類金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群から選択される少なくとも一つの金属化合物を使用するのが好ましい。電子注入層がこれらのアルカリ金属カルコゲナイド等で構成されていれば、電子注入性をさらに向上させることができる点で好ましい。
【0118】
具体的に、好ましいアルカリ金属カルコゲナイドとしては、例えば、Li
2O、LiO、Na
2S、Na
2Se及びNaOが挙げられ、好ましいアルカリ土類金属カルコゲナイドとしては、例えば、CaO、BaO、SrO、BeO、BaS、及びCaSeが挙げられる。また、好ましいアルカリ金属のハロゲン化物としては、例えば、LiF、NaF、KF、CsF,LiCl、KCl及びNaCl等が挙げられる。また、好ましいアルカリ土類金属のハロゲン化物としては、例えば、CaF
2、BaF
2、SrF
2、MgF
2及びBeF
2といったフッ化物や、フッ化物以外のハロゲン化物が挙げられる。
【0119】
電子注入層を構成する半導体としては、Ba、Ca、Sr、Yb、Al、Ga、In、Li、Na、Cd、Mg、Si、Ta、Sb及びZnの少なくとも一つの元素を含む酸化物、窒化物又は酸化窒化物等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
また、電子注入層を構成する無機化合物が、微結晶又は非晶質の絶縁性薄膜であることが好ましい。
尚、このような無機化合物としては、上述したアルカリ金属カルコゲナイド、アルカリ土類金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物等が挙げられる。
【0120】
本発明の有機EL素子の形態について、
図1の有機EL素子1を例示して説明したが、本発明は有機EL素子1の形態に限定されるものではない。例えば、有機EL素子1では発光ユニットを2つ形成したが、3つ以上形成してもよい。
【0121】
図2は本発明の第2の実施形態の有機EL素子の概略断面図である。
有機EL素子2は、基板10上に、陽極20、第1の発光ユニット30A、電荷発生層40、第2の発光ユニット30B、電荷発生層42、第3の発光ユニット30C及び陰極50を、この順に備える。有機EL素子2は、発光ユニットを3つ形成した他は
図1に示す有機EL素子1と同じ構成を有する。
本実施形態では、例えば、各発光ユニットの発光色を異ならせ、赤色、緑色、青色とすることにより、3つの波長領域の光を調和よく有する演色性の高い白色発光EL素子が得られる。
【0122】
本発明の有機EL素子は、例えば、表示装置の画素のように、複数の素子が基板上に形成されている場合に、特に、優れた効果を発揮する。
図3は、基板上に3つの有機EL素子を形成した例を示す概略図である。
基板10上には、ストライプ状にパターン化された陽極20A,20B,20Cがある。基板10及び各陽極上に、第一の発光ユニット30A、電荷発生層40及び第2の発光ユニット30Bが共通してこの順に形成されている。第2の発光ユニット30B上に、陰極50が陽極20に直交するようにストライプ状に形成されている。
有機EL素子A〜Cは、対向する陽極20A〜20C及び陰極50間に電圧が印加されたときに発光する。例えば、陽極20Bと陰極50間に電圧を印加すると、素子Bが発光する。
【0123】
ITO等の透明導電体等、従来の材料を電荷発生層に使用した素子の場合、素子間で共通して形成した電荷発生層を介して電荷が隣接する素子に流れ、その結果、本来、発光すべきでない隣接素子が発光するという問題が生じた。その結果、発光効率の低下や、表示装置としたときの色純度の低下を生じていた。
本発明の有機EL素子では、電荷発生層のP層に上述した式(I)の化合物を使用することにより、隣接する素子への電荷の漏れを抑制できる。
【0124】
本発明の有機EL素子は、特に、カラーフィルターを使用したカラー表示装置の発光素子として好適である。
図4は本発明の有機EL素子を使用したカラー表示装置の概略断面図である。
カラー表示装置は、
図3に示す有機EL素子の光取り出し側に、赤色カラーフィルター(RCF)61、緑色カラーフィルター(GCF)62及び青色カラーフィルター(BCF)63を有するカラーフィルター60を形成したものである。本実施形態では、第1の発光ユニット30Aの発光色を黄色とし、第2の発光ユニット30Bの発光色を青色とすることにより、白色発光する有機EL素子とする。カラーフィルターにより白色光から所望の色のみを表示装置の外部に取り出す。
【0125】
本発明の有機EL素子は、上述したとおり隣接する素子への電荷の漏洩を抑制できる。即ち、隣接素子の不要な発光を低減させ、所望の素子(画素)のみを発光させることができるため、表示装置の色再現性を向上できる。
【0126】
本発明の有機EL素子は、公知の方法によって作製できる。具体的に、陽極や陰極は、蒸着やスパッタリング等の方法により形成できる。発光ユニット等の各有機層は、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法等の方法により行うことができる。
【実施例】
【0127】
[青色EL素子]
実施例1
図1に示す層構成を有する、発光を基板側から取り出すボトム発光方式の有機EL素子を作製した。尚、実施例1で使用した有機化合物の構造を以下に示す。尚、電荷輸送層のP層で使用した化合物である(P1)〜(P4)の合成は、WO2010/064655及びWO2009/011327を参照して実施した。
【化49】
【0128】
30mm×30mmのガラス板からなる基板上に、陽極としてITOを240nmの膜厚で形成した。次に、SiO
2蒸着により2mm×2mmの発光領域以外を絶縁膜(図示省略)でマスクした有機EL素子用のセルを作製した。
陽極上に、正孔注入層として、上記の構造を有するヘキサニトリルアザトリフェニレン(HAT)を10nmの膜厚で形成した。
正孔注入層上に、正孔輸送層、青色発光層及び電子輸送層からなる青色発光ユニット(第1の発光ユニット)を形成した。
具体的に、正孔輸送層として上記α−NPDを真空蒸着法により90nm(蒸着速度0.2〜0.4nm/sec)の膜厚で形成した。
続いて、正孔輸送層上に、青色発光層を形成した。発光層のホストには上記式(1)の化合物を、ドーパントには式(2)の化合物を使用した。ドーパントの添加量が膜厚比で5%となるように真空蒸着し膜厚30nmの発光層とした。
次いで、青色発光層上に、電子輸送層として、上記Alq3を30nmの膜厚で形成した。
青色発光ユニットに続けて電荷発生層を形成した。
発光ユニットの電子輸送層上に、N層としてAlq3とLiの混合層を10nmの膜厚で形成した。続けて、P層として上記式(P1)で表される化合物を10nmの膜厚で形成した。
電荷発生層に続いて、第2の青色発光ユニットを形成した。形成方法は上述した第1の青色発光ユニットと同様にした。
その後、LiFを真空蒸着法により約0.3nm(蒸着速度〜0.01nm/sec)の膜厚で形成し、次いで、Alを真空蒸着法により200nmの膜厚で形成し、2層構造の陰極を形成し、有機EL素子を作製した。
【0129】
実施例2
P層として上記式(P1)の代わりに下記式(P2)で表される化合物を使用した他は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
【化50】
【0130】
実施例3
P層として上記式(P1)の代わりに下記式(P3)で表される化合物を使用した他は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
【化51】
【0131】
実施例4〜6
N層としてAlq3の代わりに下記式(9−23)で表される化合物を使用した他は、実施例1〜3と同様にして有機EL素子を作製した。
【化52】
【0132】
比較例1
電荷発生層及び第2の青色発光ユニットを形成せずに陰極を形成した他は実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。本例の素子は発光ユニットを1つのみ有する素子であるため、タンデム型の有機EL素子ではない。
【0133】
比較例2
電荷発生層のP層を形成しなかった他は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
【0134】
比較例3
P層として上記式(P1)の代わりに酸化モリブデン(MoO
3)を使用した他は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
【0135】
実施例1〜6及び比較例1〜3で作製した有機EL素子について、10mAcm
−2の電流密度における電圧(V)及び発光効率(cd/A)を測定した。結果を表1に示す。
【0136】
【表1】
【0137】
実施例1〜3と比較例1の結果より、上記化合物(P1)〜(P3)を含む電荷発生層を利用してタンデム素子を作製することにより、単ユニット素子と比べ2倍の効率が得られ、電圧も2倍の値となった。これにより、化合物(P1)〜(P3)を含む電荷発生層を利用したタンデム素子はMPE素子として機能することがわかった。
実施例1〜3と比較例2の結果より、電荷発生層において、陰極側発光ユニットとの界面層に化合物(P1)〜(P3)を含む層がない場合は、効率は単ユニット素子である比較例1と変わらず、MPE素子として機能しないことがわかった。
実施例1〜3と比較例3の結果より、電荷発生層において、陰極側発光ユニットとの界面層にMoO
3を用いた場合は、MPE素子として機能するものの、実施例1〜3に比べて電圧が高くなった。これにより電荷発生層として化合物(P1)〜(P3)が優れていることがわかった。
N層に含窒素複素環化合物である式(9−23)を使用した実施例4〜6では、さらに、駆動電圧が低下することが確認できた。
【0138】
[白色EL素子]
実施例7
解像度が100ppiとなるように下部電極をパターン化したガラス基板を使用し、第1の青色発光ユニットに代えて、下記の黄色発光ユニットを形成した他は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
・パターン電極基板の作製
ガラス基板上に平坦化絶縁膜を形成した。平坦化絶縁膜材料はポジ型感光性の絶縁材料であれば特に限定しないが、ここではポリイミドを2.0umの厚さで形成した。基板上にポリイミドをスピンコート法により塗布し、露光装置にて露光を行い、パドル式現像装置にて現像し、所定の形状にパターニングした。ポリイミドを硬化させるためクリーンベーク炉にて本焼成し、厚さ2.0μmの平坦化絶縁膜を形成した。
次に、平坦化絶縁膜上に下部電極を形成した。平坦化絶縁膜上に、ITOを240nm成膜し、通常のリソグラフィ技術を用いて所定の形状にパターニング、エッチングして下部電極を形成した。
パターン化した下部電極(ITO)間に、ポリイミドを2.0μmの厚さで形成し電極間絶縁層を形成した。電極間絶縁層は、基板上にポリイミドをスピンコート法により塗布し、露光装置にて露光を行い、パドル式現像装置にて現像した。これで感光性絶縁材料であるポリイミドが所定の形状にパターニングされたことになる。次に、ポリイミドを硬化させるためクリーンベーク炉にて本焼成し電極間絶縁層を形成した。
・黄色発光ユニットの形成
上記ヘキサニトリルアザトリフェニレン(HAT)からなる正孔注入層上に、正孔輸送層、黄色発光層及び電子輸送層からなる黄色発光ユニット(第1の発光ユニット)を形成した。
正孔輸送層として、上記α−NPDを真空蒸着法により30nm(蒸着速度0.2〜0.4nm/sec)の膜厚で形成した。
続いて、正孔輸送層上に、黄色発光層を形成した。発光層のホストには下記式(3)で表される化合物を、ドーパントには式(4)で表される化合物を使用した。ドーパントの添加量が膜厚比で5%となるように真空蒸着し膜厚30nmの発光層とした。
次いで、黄色発光層上に、電子輸送層として、上記Alq3を20nmの膜厚で形成した。
以下、実施例1と同様にして電荷発生層と第2の発光ユニットを形成し、有機EL素子を作製した。
【化53】
【0139】
実施例8
P層として上記式(P1)の代わりに実施例2で使用した式(P2)で表される化合物を使用した他は、実施例7と同様にして有機EL素子を作製した。
【0140】
実施例9
P層として上記式(P1)の代わりに実施例3で使用した式(P3)で表される化合物を使用した他は、実施例7と同様にして有機EL素子を作製した。
【0141】
実施例10
P層として上記式(P1)の代わりに、式(P1)とα−NPDからなる混合層[(P1:α−NPD=1:1、重量比)]を使用した他は、実施例7と同様にして有機EL素子を作製した。
【0142】
実施例11
P層として上記式(P1)からなる単一層の代わりに、式(P1)からなる層と式(P1)と上記α−NPDからなる混合層[(P1:α−NPD=1:1、重量比)]の積層体を使用した他は、実施例7と同様にして有機EL素子を作製した。尚、式(P1)層単独層の膜厚を5nm、式(P1)と上記α−NPDからなる混合層の膜厚を5nmとした。
【0143】
実施例12
P層として上記式(P1)の代わりに下記式(P4)で表される化合物を使用した他は、実施例7と同様にして有機EL素子を作製した。
【化54】
【0144】
実施例13〜15
N層としてAlq3の代わりに式(9−23)で表される化合物を使用した他は、実施例7〜9と同様にして有機EL素子を作製した。
【0145】
比較例4
電荷発生層及び第2の青色発光ユニットを形成せずに陰極を形成した他は実施例4と同様にして有機EL素子を作製した。本例の素子は黄色発光ユニットを1つのみ有する素子であるため、タンデム型の有機EL素子ではない。
【0146】
比較例5
電荷発生層のP層を形成しなかった他は、実施例7と同様にして有機EL素子を作製した。
【0147】
比較例6
P層として上記式(P1)の代わりに下記に示すHATを使用した他は、実施例7と同様にして有機EL素子を作製した。
【0148】
比較例7
P層として上記式(P1)の代わりにITOを使用した他は、実施例7と同様にして有機EL素子を作製した。
【0149】
実施例7〜15及び比較例4〜7で作製した有機EL素子について、10mAcm
−2の電流密度における電圧(V)及び発光効率(cd/A)を測定した。また、分光放射輝度計により、発光のCIE色度を求めた。
結果を表2に示す。
【0150】
実施例7〜15及び比較例4〜7で作製した有機EL素子の各画素に、赤色、緑色及び青色のカラーフィルターを形成し、RGB各色により包含される色再現性をNTSC比で評価した。有機EL素子の作製は以下のとおりとした。
ガラス基板上の開口部となる箇所に、RGBそれぞれのカラーフィルターを順番に形成し、その上に、実施例7と同様にして、平坦化絶縁膜を形成し、カラーフィルターの凹凸を平坦化した。これにより、カラーフィルターを有するガラス基板を得た。以後、実施例7と同様にしてパターン電極基板を作製し、さらに、発光ユニットを形成した。
作製した素子は、パッシブ方式の駆動が可能になるよう、上部電極、下部電極を配線し、RGBそれぞれの画素が個々に発光できるようにした。これによりRGBそれぞれの単色での発光が可能となる。
尚、NTSC比とは、表示装置の色再現範囲がアメリカNational Television System Committee(NTSC)により定められた標準方式の3原色、赤(0.670,0.330)、緑(0.210,0.710)、青(0.140,0.080)により囲まれる面積に対する比(単位は%)である。
図5にXYZ表色系色度図においてNTSCが定めた赤、緑、青の色度座標を結んで得られる領域を示す。本領域を100%する。
結果を表2に示す。
【0151】
【表2】
【0152】
実施例7〜9、12と比較例1及び比較例4の結果より、上記化合物(P1)〜(P4)を含む電荷発生層を利用してタンデム素子を作製することにより、黄色単ユニット素子と青色単ユニット素子を足した効率が得られ、白色発光が得られることが確認できた。
実施例7〜9、12と比較例5の結果より、電荷発生層において、陰極側発光ユニットとの界面層に上記化合物(P1)〜(P4)を含む層がない場合は、陽極側の第1発光ユニットである黄色発光ユニットしか発光せず、MPE素子として機能しないことがわかった。
実施例7〜9、12と比較例6及び比較例7の結果より、電荷発生層において、陰極側発光ユニットとの界面層にHAT又はITOを用いた場合は、MPE素子として機能するものの、実施例4に比べて、カラーフィルターを設けてディスプレイパネルを作製した際に、色再現性においてNTSC比の低下が見られた。これはHAT及びITOの抵抗値が低すぎるために、キャリアが電荷発生層を経由して隣接画素までリークし、隣接画素が発光するために、赤色、緑色又は青色の単色表示時において各色の色純度の低下を引き起こしたことによると考えられる。
以上から、スタック型白色素子において、電荷発生層に上記化合物(P1)〜(P4)を含む層を採用することによって、混色の少ない、色再現性の高い有機ELディスプレイパネルの作製が可能であることがわかった。
また、実施例10、実施例11ともに、黄色発光ユニット及び青色発光ユニット両方から発光し、実施例7と同様の白色発光が得られた。これにより、(P1)とα−NPDの混合層、又は(P1)と、(P1)とα−NPDの混合層の積層膜を電荷発生層として利用したタンデム素子はMPE素子として機能し、スタック型白色素子の作製が可能であることがわかった。また、カラーフィルターを設けてディスプレイパネルを作製した際の色再現性においてNTSC比も良好であり、隣接画素への電流リークが従来の電荷発生層構造よりも抑制され、高い色再現性が実現できることがわかった。
N層に含窒素複素環化合物である式(9−23)を使用した実施例13〜15では、さらに、駆動電圧が低下することが確認できた。
【0153】
実施例16〜19、比較例8,9
実施例7〜9、比較例6,7のP層の膜厚を、それぞれ30nmに変更した他は、同様にして有機EL素子を作製し、評価した。
また、実施例19として、P層材料を(P4)として実施例13と同様の素子を作製した。結果を表3に示す。
【0154】
【表3】
【0155】
実施例16〜19、比較例8及び比較例9の結果より、30nmの厚みにおいて、電荷発生層の陰極側発光ユニットとの界面層を上記化合物(P1)〜(P4)を含む層にした場合は、カラーフィルターを設けてディスプレイパネルを作製した際にも高いNTSC比を有していることから、色再現性を保持しているといえる。一方、HAT及びMoO
3とした場合には、NTSC比が大幅に低下し、色再現性の低下を招いている。これは、電荷発生層の膜厚が厚い場合には、電荷発生層経由の隣接画素間電流リークへの影響が大きく、より隣接画素発光による混色が顕著となり、色再現性の大幅な低下をもたらすためである。
また、MoO
3では高電圧化が見られるが、上記化合物(P1)〜(P4)では大幅な高電圧化は見られないため、膜厚を厚くした場合にも電荷発生層として良好な特性が得られることがわかった。
【0156】
実施例20〜23、比較例10,11
実施例7〜9、比較例6,7の解像度を、1000ppiに変更した他は、同様にして有機EL素子を作製し、評価した。
また、実施例23として、P層材料を(P4)として実施例20と同様の素子を作製した。結果を表4に示す。
【0157】
【表4】
【0158】
実施例20〜23、比較例10及び比較例11の結果より、カラーフィルターを設けて、より高解像度なディスプレイパネルを作製した際に、電荷発生層の陰極側発光ユニットとの界面層を上記化合物(P1)にした場合は、高いNTSC比が得られ、高い色再現性を保持していることが確認できた。一方、HAT及びMoO
3の場合には、NTSC比が大幅に低下し、色再現性の低下を招いていることがわかる。これは、解像度が高いと画素間の距離が短くなり、電荷発生層を経由した隣接画素間の電流リークしやすくなるため、隣接画素発光による混色がより顕著となったことが原因である。