特許第6282128号(P6282128)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282128
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置及びFSVの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20180208BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   H01L21/302 101C
   H05H1/46 L
   H05H1/46 R
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-19912(P2014-19912)
(22)【出願日】2014年2月5日
(65)【公開番号】特開2015-149323(P2015-149323A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2016年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100091720
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 重美
(72)【発明者】
【氏名】湯原 崇弘
(72)【発明者】
【氏名】西尾 良司
【審査官】 齊田 寛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−138613(JP,A)
【文献】 特開2012−129222(JP,A)
【文献】 特開2011−253916(JP,A)
【文献】 特開2011−124191(JP,A)
【文献】 特開2006−286306(JP,A)
【文献】 特開2003−268557(JP,A)
【文献】 特開2003−179045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料がプラズマ処理される真空処理室と、
前記真空処理室外に配置された誘導結合アンテナと、
整合器を介して前記誘導結合アンテナに高周波電力を供給する高周波電源と、
前記真空処理室の上部を気密に封止する誘電体窓と前記誘導結合アンテナの間に配置されたファラデーシールドとを備え、
前記ファラデーシールドに印加される高周波電圧をFSVとしたとき、前記整合器は、可変コンデンサとインダクタンスから構成された直列共振回路と、前記可変コンデンサを駆動させるモータを制御するモータ制御部と、前記FSVを検出する検出部と、前記検出部により検出されたFSV値が所望のFSV値となるように前記モータ制御部を制御する制御部とを具備し、
前記可変コンデンサは、第一の可変コンデンサと前記第一の可変コンデンサより静電容量が小さい第二の可変コンデンサとを具備し、
前記検出されたFSVと前記所望のFSVとの偏差が所定の値より大きい場合、前記制御装置は、前記第一の可変コンデンサを用いて前記偏差が小さくなるような制御を行うことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
試料がプラズマ処理される真空処理室と、
前記真空処理室外に配置された誘導結合アンテナと、
整合器を介して前記誘導結合アンテナに高周波電力を供給する高周波電源と、
前記真空処理室の上部を気密に封止する誘電体窓と前記誘導結合アンテナの間に配置されたファラデーシールドとを備え、
前記ファラデーシールドに印加される高周波電圧をFSVとしたとき、前記整合器は、可変コンデンサとインダクタンスから構成された直列共振回路と、前記可変コンデンサを駆動させるモータを制御するモータ制御部と、前記FSVを検出する検出部と、前記検出部により検出されたFSV値が所望のFSV値となるように前記モータ制御部を制御する制御部とを具備し、
前記可変コンデンサは、第一の可変コンデンサと前記第一の可変コンデンサより静電容量が小さい第二の可変コンデンサとを具備するプラズマ処理装置を用いて前記FSVを制御するFSVの制御方法において、
前記検出されたFSVと前記所望のFSVとの偏差が所定の値より大きい場合、前記第一の可変コンデンサを用いて前記偏差が小さくなるようして前記FSVを制御することを特徴とするFSVの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置及び前記プラズマ処理装置を用いたFSVの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省電力化等の利点から次世代メモリとして、不揮発性材料を使用した磁気抵抗メモリ(Magnetoresistive Random Access Memory:MRAM)や強誘電体メモリ(Ferroelectric Random Access Memory:FeRAM)などが注目されている。
【0003】
不揮発性材料のエッチングでは、反応生成物がチャンバ内に付着することで生産性が低下するため、従来のプラズマエッチング装置として、例えば、特許文献1には誘導結合アンテナ1と静電容量結合アンテナ8の間からインピーダンスの大きさを可変可能な負荷17を介してアースに接地し、負荷17のインピーダンスの大きさを調整することで、静電容量結合放電で生成されるプラズマの割合を調整し、真空容器内壁への反応生成物の付着を抑制するプラズマエッチング装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、試料をプラズマ処理する真空処理室と真空処理室内に配置され、試料を載置する試料台と真空処理室外に設けられた誘導アンテナと誘導アンテナに高周波電力を供給する高周波電源とプラズマと容量結合し、高周波電源から整合器を介して高周波電圧を印加されるファラデーシールドとを具備するプラズマ処理装置において、整合器は、可変コンデンサとインダクタンスから構成された直列共振回路と可変コンデンサのモータを制御するモータ制御部とファラデーシールドに印加される高周波電圧を検出する高周波電圧検出部とを備え、ファラデーシールドに印加される高周波電圧をフィードバック制御することを特徴とするプラズマ処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−323298号公報
【特許文献2】特開2012−129222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したプラズマエッチング装置において、材料の加工に最適なエッチング中と生産性低下を防ぐために真空容器内壁の反応生成物を除去するプラズマクリーニング中では、ファラデーシールドに印加される高周波電圧(以下、FSVと称する)の必要な大きさが異なるため、広範囲のFSVを制御する必要があった。
【0007】
しかし、上述したプラズマエッチング装置で広範囲のFSVを制御するには、FSVの調整手段である可変コンデンサの可変範囲を広く、変化の傾きが大きいものを選定しなければならないため、制御分解能が低くなる。その結果、FSVの制御精度が悪くなるという問題があった。
【0008】
このため、本発明は、広範囲のFSVを高精度に安定して制御することができるプラズマ処理装置及びFSVの制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、試料がプラズマ処理される真空処理室と、前記真空処理室外に配置された誘導結合アンテナと、整合器を介して前記誘導結合アンテナに高周波電力を供給する高周波電源と、前記真空処理室の上部を気密に封止する誘電体窓と前記誘導結合アンテナの間に配置されたファラデーシールドとを備え、前記ファラデーシールドに印加される高周波電圧をFSVとしたとき、前記整合器は、可変コンデンサとインダクタンスから構成された直列共振回路と、前記可変コンデンサを駆動させるモータを制御するモータ制御部と、前記FSVを検出する検出部と、前記検出部により検出されたFSV値が所望のFSV値となるように前記モータ制御部を制御する制御部とを具備し、前記可変コンデンサは、第一の可変コンデンサと前記第一の可変コンデンサより静電容量が小さい第二の可変コンデンサとを具備し、前記検出されたFSVと前記所望のFSVとの偏差が所定の値より大きい場合、前記制御装置は、前記第一の可変コンデンサを用いて前記偏差が小さくなるような制御を行うことを特徴とするプラズマ処理装置である
【発明の効果】
【0010】
本発明により、広範囲のFSVを高精度に安定して制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係るプラズマエッチング装置の概略断面図である。
図2】FSV検出・制御回路19の構成を示す図である。
図3】可変コンデンサの静電容量と可変範囲内の位置との関係を示す図である。
図4】本発明に係るFSVの制御の概念を示す図である。
図5】本発明のFSVの制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を図面を参照しながら説明する。
【0013】
本発明に係るプラズマエッチング装置の概略断面図を図1に示す。真空容器2は、この場合、内部にプラズマ生成部を形成する絶縁材料(例えば、石英、セラミック等)からなる放電部2aと、例えば、ウエハである試料13を載置する試料台5が配置された処理部2bとからなる。処理部2bは、アースに接地されており、試料台5は、絶縁材を介して処理部2bに取り付けられている。
【0014】
誘電体窓である放電部2aの外側にはコイル状の第一の誘導結合アンテナ1aと前記第一の誘導アンテナ1aの下方に配置されコイル状の第二の誘導結合アンテナ1bとが配置されている。また、放電部2aの上方には、プラズマと静電容量結合し容量結合アンテナであるファラデーシールド8が配置されている。さらに第一の誘導結合アンテナ1aと第二の誘導結合アンテナ1bとファラデーシールド8は、整合器であるマッチングボックス3の中のインピーダンスマッチング回路12を介して第一の高周波電源10に直列に接続されている。
【0015】
また、第二の誘導結合アンテナ1bにはインピーダンスの大きさを所望の値に制御できる第一の可変コンデンサ16が直列に接続されており、ファラデーシールド8には並列に接続された第二の可変コンデンサ17および第三の可変コンデンサ26ならびにコイル18を介してアースに接地されている。さらに、第一の誘導結合アンテナ1aと第二の誘導結合アンテナ1bは、第一の電流センサ14aと第二の電流センサ14bを介してアンテナ電流比制御回路15に接続されており、ファラデーシールド8には 、FSV検出・制御回路19に接続されている。
【0016】
また、真空容器2内には、ガス供給装置4から処理ガスが供給され、真空容器2内は、排気装置7によって所定の圧力に減圧排気されている。また、試料台5には、第二の高周波電源11が接続されている。
【0017】
上述のように構成されたプラズマエッチング装置では、ガス供給装置4によって真空容器2内に処理ガスを供給し、該処理ガスを第一の誘導結合アンテナ1aと第二の誘導結合アンテナ1bにより発生された誘導磁場によってプラズマ化することにより、プラズマを生成する。プラズマ化されたガスは、後に排気装置7によって排気される。
【0018】
第一の高周波電源10により、例えば、13.56MHz、27.12MHz,40.68MHzなどのHF帯や、さらに周波数が高いVHF帯などの高周波電力を第一の誘導結合アンテナ1aと第二の誘導結合アンテナ1bおよびファラデーシールド8に供給することにより、プラズマ生成用の誘導磁場と電場を得ているが、高周波電力の反射を抑えるためにインピーダンスマッチング回路12を用いて、第一の誘導結合アンテナ1aと第二の誘導結合アンテナ1bのインピーダンスを第一の高周波電源10の出力インピーダンスに一致させている。
【0019】
インピーダンスマッチング回路12は、一般的な逆L型とも呼ばれる静電容量を可変可能なバリコンを2個用いたものを使用している。また、処理される試料13は、試料台5上に載置され、プラズマ中に存在するイオンを試料13に引き込むために、第二の高周波電源11は試料台5にバイアス電圧を印加する。
【0020】
次に、FSV検出・制御回路19の機能について図を参照しながら説明する。FSV検出・制御回路19は、図2に示すように制御部23とFSV検出回路24と第一のステッピングモータ駆動回路25と第二のステッピングモータ駆動回路27と第一のステッピングモータ28と第二のステッピングモータ29と第一の位置検出器21と第二の位置検出器22を備える。FSV検出回路24は、FSVを検出する回路であり、第一のステッピングモータ28は第二の可変コンデンサ17の容量を、第二のステッピングモータ29は第三の可変コンデンサ26の容量をそれぞれ調整するためのステッピングモータである。
【0021】
また、制御部23は、FSV検出回路24により検出されたFSV信号を基に第一のステッピングモータ駆動回路25により第一のステッピングモータ28を、第二のステッピングモータ駆動回路27により第二のステッピングモータ29をそれぞれ駆動させることにより所望のFSVとなるように制御する。尚、第一の位置検出器21と第二の位置検出器22は、それぞれ第二の可変コンデンサ17の静電容量と第三の可変コンデンサ26の静電容量が可変範囲のどの位置にあるのかを示す情報を制御部23に伝送している。
【0022】
次に第二の可変コンデンサ17の静電容量と可変範囲内の位置の関係と、第三の可変コンデンサ26の静電容量と可変範囲内の位置の関係を図3に示す。図3に示すように第二の可変コンデンサ17の最大の静電容量は大きく、かつ静電容量の変化の傾きも大きい仕様とした。一方、第三の可変コンデンサ26の最大の静電容量は、第二の可変コンデンサ17に対して小さく、かつ第二の可変コンデンサ17より静電容量の変化の傾きも小さい仕様とした。
【0023】
次にFSVの制御方法について説明する。先ず、第二の可変コンデンサ17と第三の可変コンデンサ26とコイル18からなる直列共振回路におけるキャパシタンスCとFSVの関係を図4に示す。 キャパシタンスCの容量は、第二の可変コンデンサ17と第三の可変コンデンサ26の合成容量である。また、第二の可変コンデンサ17または第三の可変コンデンサ26のいずれの可変コンデンサの静電容量を増減させてもFSVを変化させることができる。ある時刻のFSVのモニタ値であり図4のAからFSVの設定値(目標値)であり図4のBへFSVを減少させる場合について、以下、図5を参照しながら説明する。
【0024】
最初にステップ1にてFSVの目標値(B)の設定信号が制御部23に伝送されてFSVの制御を開始する。次にステップ2では、第三の可変コンデンサ26の静電容量が可変範囲の中心の位置の静電容量となるように第二の位置検出器22からの信号より調整する。これは、第三の可変コンデンサ26によるFSVの調整を増加方向または減少方向のどちらの方向でも調整可能とするためである。そして、ステップ3では目標値であるBと現状のFSVのモニタ値との差である偏差の算出を行う。続いてステップ4では、ステップ3で算出された偏差が予め求められた目標値(B)の許容値内かどうかを判定し、目標値(B)の許容値内であればステップ8に進んでFSVの制御を終了する。
【0025】
また、ステップ4にて偏差が許容値より大きい場合、ステップ5以降に進んで第二の可変コンデンサ17または第三の可変コンデンサ26の静電容量を変化させてFSVを調整する。具体的にはステップ5では、第二の可変コンデンサ17または第三の可変コンデンサ26のいずれかの可変コンデンサでFSVの制御を行うかを判定する。予め設定されたしきい値Cとステップ3で算出された偏差とを比較して偏差の方がしきい値Cより大きい場合は、ステップ7にて第二の可変コンデンサ17を用いて予め決められた第一のステッピングモータ28の駆動量だけFSVを変化させた後、ステップ3に戻る。尚、ステップ7にて第二のステッピングモータ29が駆動している場合、第二のステッピングモータ29の駆動を停止する。つまり、ステップ7では、第二の可変コンデンサ17だけを用いてFSVの制御を行う。
【0026】
一方、ステップ5にて予め設定されたしきい値Cとステップ3で算出された偏差とを比較して偏差の方がしきい値C以下と判定した場合は、ステップ6にて第三の可変コンデンサ26を用いて予め決められた第二のステッピングモータ29の駆動量だけFSVを変化させた後、ステップ3に戻る。尚、ステップ6にて第一のステッピングモータ28が駆動している場合、第一のステッピングモータ28の駆動を停止する。つまり、ステップ6では、第三の可変コンデンサ26だけを用いてFSVを制御する。以後、FSVのモニタ値がFSVの目標値(B)の許容値内になるまでステップ3ないしステップ7を繰り返す。
【0027】
以上、上述したとおり、静電容量の可変範囲が大きい第二の可変コンデンサ17による広範囲のFSVの制御と静電容量の可変範囲が小さい第三の可変コンデンサ26による高精度のFSVの制御を組み合わせたFSVの制御である本発明によって、広範囲かつ高精度にFSVの制御を行うことができる。
【0028】
また、本実施例のしきい値Cは、目標値(B)の許容値より大きく、第二の可変コンデンサ17または第三の可変コンデンサ26のいずれかを選択する際に基準とする値である。
【0029】
さらに本発明は、FSVの制御範囲が広くなっても所望のFSVを高い精度で安定して制御することができる。また、本発明は、FSVの制御を複数の可変コンデンサで分担して制御しているため、可変コンデンサ単体の動作範囲は狭くなり、可変コンデンサへの負担が減る。このことによって可変コンデンサの寿命が長くなる。
【0030】
また、本発明は、静電容量の異なる複数の可変コンデンサを用いて段階的にFSVの制御を行うことで、広範囲のFSVを高精度に制御する発明である。
【符号の説明】
【0031】
1a 第一の誘導結合アンテナ
1b 第二の誘導結合アンテナ
2 真空容器
2a 放電部
2b 処理部
3 マッチングボックス
4 ガス供給装置
5 試料台
7 排気装置
8 ファラデーシールド
10 第一の高周波電源
11 第二の高周波電源
12 インピーダンスマッチング回路
13 試料
14a 第一の電流センサ
14b 第二の電流センサ
15 アンテナ電流比制御回路
16 第一の可変コンデンサ
17 第二の可変コンデンサ
18 コイル
19 FSV検出・制御回路
21 第一の位置検出器
22 第二の位置検出器
23 制御部
24 FSV検出回路
25 第一のステッピングモータ駆動回路
26 第三の可変コンデンサ
27 第二のステッピングモータ駆動回路
28 第一のステッピングモータ
29 第二のステッピングモータ
図1
図2
図3
図4
図5