(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0011】
本実施例では、上述の薬効評価のための成分分析方法について
図2の工程0〜6に則して説明する。また、工程4〜6については、
図3を用いて詳述する。
【0012】
尚、以下の複数の実施例においては、薬効成分の評価方法に基づいて説明するが、あくまでも本願発明を説明するための一例であって、薬剤以外の化学物質、さらには薬物代謝物の評価にも本願発明の成分分析方法を適用できることは言うまでもない。また、本実施例にて示す、バッファ液や温度、時間等の具体的な条件は、あくまでも一例であって、技術思想として同様の効果を有するのであれば別の条件を適用してもよいことは言うまでもない。
【0013】
本実施例においては、試験区1〜3の、少なくとも3つの試験区を用いた場合について説明する。各試験区には、細胞を保持する保持領域が存在するが、これら保持領域は、各試験区ごとに別々の容器を用いてもよいし、複数の保持領域を有する一つの容器内を区切って、各試験区を設定してもよい。
【0014】
<工程0:肝細胞の調製と培養>
本工程では、まず薬剤の効果を検証するための肝細胞の調製・培養を行う。以下一例を示す。
【0015】
肝細胞の調製は、in situコラゲナーゼかん流法にしたがった。詳しくは以下の通りで
ある。ラット(5〜6週齢)を、ペントバルビタール麻酔下で開腹し、門脈にカテーテルを挿入して前かん流液(Ca
2+とMg
2+不含、EGTAを含むハンクス液)を注入する。肝臓からの
脱血が十分になされたことを確認した後にかん流を止める。かん流液をコラゲナーゼ溶液に換えて、かん流を行う。本実施例では0.05%コラゲナーゼ含むハンクス液を用いてかん流を行うが、この限りではない。細胞間組織がコラゲナーゼにより消化されたことを確認した後、かん流を止める。肝臓を切り離し、冷したハンクス液中で細切りし、ピペッティングにより細胞まで分散する。等張パーコール液を使用して500G、5分の遠心分離で傷害
のある肝細胞を除去する。得られた肝細胞の生存率はトリパンブルー排除法で計測し、生存率85%以上の肝細胞を培養に使用する。ここでは、生存率85%以上の肝細胞を培養に使用するが、必ずしも当該条件に限られるものではないことは言うまでもない。また、肝細胞の調製は必ずしもin situコラゲナーゼかん流法に限られるものではない。用いる肝
細胞もラット由来のものに限らないし,ラットの系統も限定されない。本実施例では肝細胞を利用したが、これに限らない。
【0016】
前述の通りin situコラゲナーゼかん流法により調製した肝細胞を培地に懸濁し、市販
のコラーゲンコート培養ディッシュに肝細胞を5X10
5 cells/mLの密度で培地に懸濁し播種する。播種密度、培地、培養プレート001は特に限定されない。培養プレートを
図1に示す。ここでは24個の培養領域(ウェル、002)を含む24ウェル培養プレートを示したが、これに限らず所定の細胞を保持できる容器であれば他の形状の容器を用いても良い。播種後、CO
2インキュベータを用いて5%CO
2、37℃の条件下で培養を開始する。18時間以
上経過した後に、最初の培地交換を行う。播種後18時間目以降の培養に用いる培地は特に限定されるものではないが、本実施例では、培地(10%FCS+)からFCSを除いた培地(以
下、培地(FCS-))にマトリゲルを添加した培地を用いた。以降24時間毎に培地(FCS-)
を用いて培地交換を行う。後述するように、工程5で3種類の異なる条件下での試験(試
験区1、2、3:工程5で詳述)を行うため、この時点で同条件の培養プレートを独立に3プレート用意する。工程0から4、および工程5においては、3種類の試験区とも同一の試験操作を行う。
【0017】
<工程1:肝細胞のコンディショニング>
本工程では、工程0にて培養した細胞を、薬剤評価に適したコンディショニングに整える。以下一例を示す。
【0018】
工程0によって4日間培養した細胞の培養上清を除去し、バッファとしてハンクス液を400・L添加し、37℃で10分インキュベーションする(
図2工程1)。バッファの種類と量
は特に限定されるものではない。
【0019】
工程1の操作は2回繰り返すのが望ましい。このように工程0の培養にて使用した培地から、バッファ液(例えばハンクス液)へ細胞が馴染む成分を置換させることにより、以下の工程で正確な測定・解析を行うための下地を整えることができる。ただし、工程1を何度繰り返すかは、使用するバッファ液の種類や細胞の種類によって、任意に変更してもよいことは言うまでもない。
【0020】
<工程2:薬液投与>
本工程では、評価を行う薬液を細胞に投与する。以下一例を示す。
【0021】
バッファを除去後、10・MのCDF(蛍光試薬)200・Lをウェルに添加し、37℃で30分
間インキュベーションし、その後に4℃で5分間保持した(
図2工程2)。試薬の種類、濃
度、量は特に限定されるものではない。CDFは蛍光を発するため、モデル試薬としてプレートリーダで簡便に定量できる。また、投与量を200μLとしたが、これはウェル内の細胞全体が試薬に浸る量として選択した。CDFの濃度は細胞の蛍光アッセイとして従来用いられている濃度であれば良い。プレートリーダで検出するための試薬量としても本濃度を適用することが望ましい。インキュベーションの時間は30分としたが、これは薬剤の取り込みと排出がほぼ平衡状態になるまでの時間が30分であるという予備検討の結果をもとに採用した。投与された薬剤の細胞外への漏出を防ぐ目的で、30分インキュベーション後にプレート温度を4℃にした。容器内の温度を低くすることにより、細胞は薬剤を外部へ排出すること抑制する現象を生じさせるからである。
【0022】
このように薬剤の温度を所定の温度以下にすることにより、薬剤は細胞内へ留まり、細胞外へ漏出する現象を抑制することができる。本実施例では4℃としたが、投与された薬剤が細胞外へ漏出することを抑制できる温度であればこれに限られるものではない。また
、投与された薬剤が細胞外へ漏出することを抑制できる、例えばインヒビターを投与するような方法があれば、温度を下げる方法に限らない。いずれにせよ、工程1で設定したプレート温度よりも、工程2における温度の方が低い温度となる。工程1でのコンディショニングでは工程2とは逆に、細胞内が薬剤を吸収・排出する現象が活性化する温度(例えば37℃)の方が望ましいからである。
【0023】
薬剤投与のタイミングは、本実施例に限定されるものではない。例えば、薬剤投与を試験日の前日もしくは数日前から行う場合もある。この場合は、工程0の段階で薬剤を投与し、工程1、2は省略してもよい。
【0024】
<工程3:細胞洗浄>
本工程では、工程3によって細胞内に含まれた薬液以外を洗い流す。以下一例を説明する。
【0025】
次に、プレートを4℃に保持したまま、氷冷したハンクス液400μLを用いて3回洗浄した(
図2工程3)。4℃の目的は上記と同様である。培養時の培地の量が400μL
であり、ウェル内壁に残留している培地成分を除去する目的で、洗浄ハンクス液の量を400μLとした。一般的な生化学アッセイでの洗浄回数は3回が通例となっており、踏襲した。各条件は限定されない。これにより、測定対象となる薬液以外を除去し、後の工程における薬効評価の精度をより向上させることが可能となる。
【0026】
<工程4:血管側排出画分回収>
薬効を評価する一つの指標として、投与した薬剤が、細胞内に長時間留まりやすいものであるか、または短期間しか留まりにくいものであるかを分析することが有効である。そこで本工程では、上記指標のためのデータを取得するべく、後述の工程5にて各試験区内の細胞を評価する前に、薬剤が細胞内から所定時間以内に漏出させる。以下一例を示す。
【0027】
まず、前処理用のバッファ液(例えばハンクス液)を投与し、37℃で30分間インキュベーションし、薬剤を含むハンクス液(上清)を回収した(
図2工程4)。バッファ液
は、工程5にて使用するバッファ液と同一種のものを使用してもよいし、別の種類のものを使用してもよい。工程3までにより肝細胞(
図3、101)内に貯留させた薬剤を、ハンクス液中に、第一血管側排出、つまりは受動拡散経由(
図2工程4、(1)’)および
、トランスポータ(TP)経由(
図2工程4、(2)’およびイメージ図中102)で排出
させるため、37℃に維持した。後述の通り、工程5においても血管側排出が行われるため、区別するため、工程4おける血管側排出を第一血管側排出、工程5における血管側排出を第二血管側排出と定義した。本質的には、ともに細胞内から血管側(Basal/Basolateral)(上清)に排出される工程である。トランスポータは細胞膜上に
発現している物質輸送を担う膜タンパク質である。細胞内外での能動的な物質輸送を担う
。また、受動拡散は、トランスポータ経由以外による細胞外への排出であり、細胞膜からの漏出等を含む。工程4でハンクス液に排出された薬剤を血管側排出画分と定義したのは
、ハンクス液に面している細胞上面部分は、ベーサル(Basal)/バソラテラル(Basolate
ral)面(
図3、104)に相当し、生体内では血管に面している部分と想定されるため
である。
【0028】
次に説明する工程5では、異なる3種類の操作で薬剤の回収を行う工程(試験区1、2
、3)となるが、工程5の前に、工程4にて上述のように第一血管側排出画分(ハンクス液に排出された薬剤)を取得しておくことにより、薬剤が細胞に留まりやすいものかどうかを検証する指標を取得することができる。
【0029】
尚、血管側排出各分を把握するのに用いるハンクス液は、どの試験区のハンクス液を用いてもよい。例えば、後述の試験区1〜3すべてのハンクス液について評価してもよいし
、一部のみ用いても良い。
【0030】
また、工程3や4は本発明による分析をより詳細に実施し高精度の評価を行うための工程であって、本発明をスキップして工程5の作業を行うことも可能であることは言うまでもない。上記工程0〜4は、
図2に示すように、少なくとも試験区1〜3において行われるものである。工程5では、本発明で求める複数の指標データを後述の解析によって取得するべく、試験区1〜3夫々について、別条件で処理を行う。以下一例を示す。
【0031】
<工程5、試験区1:37℃崩壊系による上清の回収>
試験区1では、
図3の試験区1にて示すように、細胞からバッファ液(例えばハンクス(−)液)に、胆管側排出(3)と、第二血管側排出(つまりは拡散(1)とトランスポータ(TP)(2)とからの排出)との合算分を排出させる。ハンクス(−)液は、カルシ
ウムイオンやマグネシウムイオンを含まないハンクス液のことであり、本試験区のような細胞間接着あえてを強化しない場合等に用いる。細胞間接着を積極的に解除する目的としては、以下述べるようにEGTAのようなキレーターを用いる。次に、1mMのEGTAを含むハンクス(−)液を200μL添加した。EGTAは細胞間接着分子の接着に関与しているCa2+、Mg2+の作用を抑えるキレート作用を持ち、細胞間接着を解除する
ための試薬である。これにより培養過程において形成された胆管を崩壊させる。37℃で30分間インキュベーションした後に、上清を回収した。キレート作用を持つ試薬であればEGTAに限定されない。EGTAを含むバッファの種類、量、およびインキュベーション温度と時間は特に限定されない。工程5の試験区1では、工程4が終了した段階で細胞内に貯留している薬剤(
図3工程5、およびイメージ図(1)、(2))、および胆管
に排出されている薬剤(
図3工程5およびイメージ図(3))がすべて上清中に排出され
、回収される(
図3工程5、試験区1)。工程5で(3)を胆管側排出画分と定義したの
は、細胞間接着部分に形成される間隙周囲の細胞膜部分は、アピカル(Apical)面(
図3
、105)に相当し、かつ間隙は毛細胆管(
図3、103)に想定されるためである。工程5試験区1では、温度は37℃に維持されているため、細胞内から血管側に排出される画分には受動拡散経由(
図3工程5、(1))、およびトランスポータ経由(
図3工程5
、(2))が含まれる。
【0032】
<工程5、試験区2:37℃維持系による上清の回収>
試験区2は、試験区1のように胆管を崩壊させず、
図3に言う第二血管側排出(拡散(
1)とトランスポータ(2))のみを排出させる。
【0033】
ハンクス液は200μL添加した。試験区2は、試験区1とは異なり、EGTA等のキレート剤を含まないため、細胞間接着は維持されたままであり、したがって、毛細胆管の崩壊も誘起されない試験区である。37℃で30分間インキュベーションした後に、上清を回収した。工程5の試験区2では、工程4が終了した段階で細胞内に貯留している薬剤(
図3工程5、およびイメージ図(1)、(2))が上清中に排出され、回収される(図
3工程5、試験区2)。これまでの説明にしたがい、上清中に排出される薬剤は、第二血
管側排出画分と定義される。工程5試験区2では、温度は37℃に維持されているため、細胞内から血管側に排出される画分には受動拡散経由(
図3工程5、(1))、およびト
ランスポータ経由(
図3工程5、(2))が含まれる。
【0034】
工程5の試験区1と試験区2から、回収した薬剤の量を定量的に解析することにより、例えば、試験区1で回収した薬剤量を定量化した値から、試験区2で回収した薬剤量を定量化した値を減算することにより、胆管側排出(3)の薬剤量と、第二血管側排出の薬剤量を夫々算出することができる。
【0035】
<工程5、試験区3:4℃維持系による上清の回収>
試験区3は、後述のように試験区1,2よりも低い温度条件とすることで、第二血管側排出のうち、トランスポータ(1)から排出される薬剤を抑制し、拡散(2)による排出分のみを排出させる。
【0036】
ハンクス液を200μL添加し、4℃で30分間インキュベーションした後に、上清を回収した。同じ維持系の工程5試験区2とは試験温度が異なる。これは、4℃にすることにより、トランスポータ経由の血管側排出を抑制させるためである。工程5試験区3において、トランスポータ活性を抑制させる低温4℃の試験区を採用することにより、受動拡散経由の排出量のみを定量し(
図3工程5、(1))、工程5試験区2との比較において
トランスポータ経由による血管側薬剤排出量を算出(定量)することが可能となる。各薬剤には細胞内外を移動するための特異的なトランスポータが存在する。したがって、受動拡散経由の排出量を排除し、トランスポータ経由での排出量を定量できることは、各薬剤に特異的は排出量を定量できることを意味する。バッファの種類、量、およびインキュベーション温度と時間は特に限定されない。上述同様に、工程5の試験区2と試験区3から
、回収薬剤を定量することにより、トランスポータ経由の排出画分を算出することができる。尚、本実施例では試験区1,2,3を用いて排出画分を夫々算出する例について示したが、試験区の数は必ず3つである必要はない。例えば、胆管側排出(3)と、第二血管側排出((1)+(2))のみを分離したいのであれば、試験区1および2のみを実施す
ればよいし、第二血管側排出において、拡散(1)とトランスポータ(2)を単に分離したいのであれば、試験区2,3のみを実施すればよい。また、必要に応じて、別途4℃の
崩壊系を設けることにより、毛細胆管側への排出のうち、トランスポータ経由の排出を抑制し、拡散による排出分のみを測定することができる。これにより、例えば、この4℃崩
壊系と試験区3との比較から、拡散による毛細胆管側への排出とトランスポータ経由による毛細胆管側への排出分を切り分けて評価することが可能となる。
【0037】
上述した試験区1〜3夫々における工程は、どの順番で行ってもよいし、各工程を並行して実施してもよい。
【0038】
<工程6:胆管画分、細胞内画分の回収>
再び工程6では3試験区とも共通の操作に戻る。工程6では、細胞内残留画分の定量を行うための薬剤の回収を行う。蛍光薬剤等をプレートリーダ等を用いて定量を行う場合には、1%の界面活性剤を含むハンクス液を例えば200μL添加し、懸濁し、全量を回収することが望ましい(
図2工程6)。これにより、細胞膜を破砕し、細胞内に残留する薬
剤を排出させることが可能となる。得られたサンプルを培養プレートに移し、プレートリーダを用いて蛍光計測を行った。ブランク測定用にハンクス液のみを添加したウェルを準備する。励起波長484nm、吸収波長519nmで蛍光強度を測定する。
【0039】
また、薬剤を質量分析(LCMS)装置等を用いて定量する場合には、水添加による低張化、有機溶剤処理等により、細胞内残留分抽出後にメタノール等の有機溶剤を用いて懸濁し、全量を回収する(
図2工程6)。その後、LCMS装置を用い、後述のように薬剤
の定量を行う。
【0040】
<測定結果をもとにした各画分への分配比率の決定、およびスコア付け>
上記工程により得られた薬剤量を反映した蛍光強度をもとに、各画分への分配比率を計算する。ここでは、工程5、6の総和(
図3、B#+C#=(1)+(2)+(3)+(
4))を薬剤量100%とする。この場合を「パターン1」とする。
【0041】
蛍光量測定により求めた6種類の値(B1、B2、B3、C1、C2、C3)から、
図4のパターン1に示すような各区分への分配比率が求められる。これらの値から、
・拡散のみによる第二血管側排出画分(Extracellular Efflux by Diffusion、ExEfx-D
if)はB3、
・トランスポータ経由のみによる第二血管側排出画分(Extracellular Efflux by
Transporter、ExEfx-TP)はB2−B3、
・胆管側排出画分(Bile Canaliculi Efflux、BCEfx)はB1−B2、
・細胞内残留画分(Cell)はC1
に対応づけられる。この結果をもとに、
図5のパターン1のような円グラフが描画でき、各画分への分配比率の全体像を視覚的に理解することが可能となる。
【0042】
さらに、定量結果をもとに、以下のような薬剤固有のスコア付けが可能になる。本実施例では、算出したCDFのスコアの一例を示す。算出されるスコアはこれらに限らない。
【0043】
トランスポータ経由での血管側排出を評価するスコアは、
・第二血管側排出薬剤量に対するトランスポータ経由で排出された薬剤量の割合(Rati
o of Extracellular Efflux by Diffusion、RexEMTP)として(B2−B3)/B2
によって求められる。
【0044】
胆管への排泄を評価するスコアは、
・細胞内に取り込まれた全薬剤量に対する胆管排泄薬剤量の割合(Biliary Retention
Drug、BiRD)として(B1−B2)/(C1+C2)、
または、別法の、
・細胞内に残留している薬剤量に対する胆管排泄薬剤量の割合として(C2−C1)/C2、あるいは(B1−B2)/C1
等によって求められる。
【0045】
<異なる薬剤間の分配比率およびスコアの比較>
CDFをRhodamine123に変えて上記と同様の操作により、
図6に示す結果(パターン1)を得ることができる。CDFの結果を示す
図5(パターン1)とは明らかに異なる分配比率を検出できることが分かる。
【0046】
また、例えば、CDFの血管側排出薬剤量に対するトランスポータ経由で排出された薬剤量の割合(RexEMTP)と、細胞内に取り込まれた全薬剤量に対する胆管排泄薬剤量の割
合(BiRD)は、それぞれ、41.08、18.58であるのに対し、Rhodamine123のそれらは、52.52、4.92となり、CDFはRhodamine123に比べて胆管に排泄さ
れやすく、血管側には排出されにくい性質を保持した薬剤であることがわかる。以上のように、本発明により、それぞれの化合物がどのような薬物動態を示すかを評価することが可能になる。
【実施例2】
【0047】
実施例2では、測定結果をもとにした各画分への分配比率の決定、およびスコア付けについて、実施例1とは異なる方法を用いた場合について説明する。
【0048】
本実施例では、
図3に記載のS#(工程4に相当)の定量値を利用することにより、実施例1のパターン1で示した各画分への分配比率に加えて、投与薬物が細胞内に留まりやすいのか、留まりにくいのかの情報も与えることができ、より精密な評価をすることが可能となる。すなわち、工程4、5、6の総和(
図3、S#+B#+C#=(1)’+(2
)’+(1)+(2)+(3)+(4))を100%の投与薬物量とする。この場合を「
パターン2」とする。したがって、工程4、5、6の各試験区により求められる9種類(
S1、S2、S3、B1、B2、B3、C1、C2、C3)を評価指標として用いることができる。
【0049】
蛍光量測定により求めた9種類の値から、
図4のパターン2に示すような各区分への分配比率が求められる。これらの値から、
・第一血管側排出画分(Sup画分)はS1(≒S2≒S3)、
・拡散のみによる第二血管側排出画分(Extracellular Efflux by Diffusion、ExEfx-D
if)はB3、
・トランスポータ経由のみによる第二血管側排出画分(Extracellular Efflux by
Transporter、ExEfx-TP)はB2−B3、
・胆管側排出画分(Bile Canaliculi Efflux、BCEfx)はB1−B2、
・細胞内残留画分(Cell)はC1
に対応づけられる。この結果をもとに、
図5のパターン2のような円グラフが描画でき、各画分への分配比率全体像を視覚的に理解することが可能となる。実施例2で示した方法を用いることにより、細胞内に留まりやすいか留まりにくいかの指標となるSup画分が
、CDFでは70.82であるのに対し、Rhodamine123では39.29(
図6、パターン2)となり、CDFが血管側に排出されやすい傾向にあることがわかる。このことは、実施例1の細胞内残留画分評価に一致する。
【0050】
さらに、定量結果をもとに、薬剤固有のスコア付けが可能になるが、これは実施例1に記載の通りである。
【実施例3】
【0051】
実施例3では、実施例1および2で述べてきた一連の工程を自動化を実現する装置の一例について述べる。尚、後述する装置の動作の目的、各構成の役割等について、上記実施例1,2と重複する場合は、記載を省略する場合がある。
【0052】
実施例1〜2で示した試験区1〜3の夫々に設定される細胞を保持する領域について、後述する装置構成においては、「試験区1用ウェル」「試験区2用ウェル」「試験区3用
ウェル」等の表現を用いて説明するが、これらは、例えば上述の「ウェル培養プレート」の複数の容器を夫々の試験区ごとに設定してもよいし、一つのウェル培養プレートの中の複数のウェルを区切って、区切った領域ごとに、例えば「第1容器」「第2容器」「第3
容器」等として設定してもよい。
【0053】
特に試験区1用ウェルと試験区2用ウェルは、ほぼ同じ温度調整を行うため、ひとつの
ウェル培養プレート内を区切って設定した方が精度や速度の観点から効率的に評価することが可能となる。
【0054】
尚、後述の装置動作について各試験区用ウェル(容器)の交換作業については、自動で交換しても手作業で交換してもよい。当該容器の交換や設置作業については、以下省略して説明することとする。
【0055】
本装置は、
図7に示すように、培養部106、サンプル調製部107(含む入力部107A)、分析部108、および表示部109により構成される。さらにサンプル調製部1
07は、後述する各容器(プレート)内の温度を調整する温度調整部107Bと、液体を容器に供給または回収可能な送液部107C等を有している。分析部108は、薬剤等の成分の量を測定する測定部108Aと、測定部から取得した薬剤等の成分の量から、トランスポータ経由、胆管経由、細胞内残存、トランスポータと胆管以外から排出される分(
拡散)の夫々の量を解析する解析部108Bを有する。上記装置構成は一例であり、例えば解析部のみ別の装置に実行させ、当該別の装置に測定部から取得した情報を送信する等の構成としてもよいことは言うまでもない。
【0056】
また、サンプル調製部の詳細構成を
図8、および9に示す。サンプル調製部では、これまで実施例1−2で述べてきたように、分析対象となる各画分を自動調製することが目的となる。各構成要素の説明は、後述のフローチャートにしたがって述べる。
【0057】
自動計測装置動作フローチャートは
図10に示す。
図10のフローチャートは一例にすぎず、実施例1<工程2>に記載の通り、薬剤投与のタイミングが異なる場合は、この限りではない。本実施例においては、細胞を保持する容器について、複数の細胞保持領域(
ウェル)を有するプレートを一例として用いて説明するが、容器はプレートに限られるものでなく、細胞を保持できるものであれば良いことは言うまでもない。
【0058】
<培養部からサンプル調製部への移送>
まず、肝細胞が培養部106において培養される(
図7、10)(
図10(a)サブ工程
1)。その後、培養された肝細胞を保持したプレートはサンプル調製部の第一温調機能付
きプレートホルダ210上、および第二温調機能付きプレートホルダ(211)上に移送される(
図7、10)(
図10(a)サブ工程2)。
【0059】
<サンプル調製:実施例1、2の工程1に相当>
送液部107Cに設置されている、液体を吸引するための吸引ノズルが付加された吸引
ヘッド205が、上記プレートホルダ上の、除去すべき培地が満たされた培養プレート001のウェル002に移動し、ウェルから培地を吸引して全量除去する(
図10サブ工程3)。除去された培地は、廃液槽206に廃棄回収される。
【0060】
次に、液体301を保持するチップ302を、吸引ノズルに取り付けられたチップヘッド204に、複数のチップが保管されているチップラック207から装着する。チップヘッドが常温薬液ラック209に移動し、バッファを吸引する(
図10サブ工程4)。目的
のウェルに移動し、バッファを添加した後(
図10(a)サブ工程5)、チップヘッドがダ
ストボックス214に移動し、チップを廃棄する。コンタミネーション等を防ぐため、取替え可能なチップをここでは利用するが、その限りではない。
【0061】
吸引ヘッドは、バッファで満たされているウェルに移動し、バッファの除去を行う(
図10(a)サブ工程6)。除去された培地は、廃液槽206に廃棄回収される。この工程を
合計2回繰り返す(洗浄工程)(
図10(a)サブ工程7)。
【0062】
次に、チップヘッド204にチップラック207内のチップを装着し、チップヘッドが常温薬液ラック209に移動し、バッファを吸引する(
図9サブ工程8)。目的のウェル
に移動し、バッファを添加した後、チップヘッドがダストボックス214に移動し、チップを廃棄する。37℃で10分間待機する(コンディショニング)(
図10(a)サブ工程
9)。その後、吸引ヘッド205が、バッファで満たされているウェルに移動し、バッフ
ァを全量除去する(
図9(a)サブ工程10)。
【0063】
<サンプル調製:実施例1、2の工程2に相当>
チップヘッド204にチップラック207内のチップを装着し、チップヘッドが常温薬液ラック209に移動し、薬液を吸引する(
図10(a)サブ工程11)。目的のウェルに
移動し、薬液を添加した後(
図10(a)サブ工程12)、チップヘッド204がダストボ
ックス214に移動し、チップを廃棄する。37℃で30分間待機する(
図10(a)サブ
工程12)。その後、容器を保持する容器保持部の一構成例である、第一温調機能付きプ
レートホルダ210、および第二温調機能付きプレートホルダ211が37℃から4℃に変化した後(
図10(a)サブ工程13)、吸引ヘッド205が、薬液で満たされているウ
ェルに移動し、薬液を全量除去する(
図10(a)サブ工程14)。
尚、本実施例における温度調整部は、プレートフォルダに温調機能を搭載する説明としたが、温度調節部が容器保持部と別離して存在しても良いことは言うまでもない。
【0064】
<サンプル調製:実施例1、2の工程3に相当>
チップヘッド204にチップラック207内のチップを装着し、チップヘッドが冷蔵薬液ラック208に移動し、バッファを吸引する(
図10(a)サブ工程15)。冷蔵した薬
液を用いるのは、トランスポータ活性のような能動的な生命現象を停止させるためであることは前述の通りである。冷蔵薬液ラック208はこの目的のため、薬液、バッファ等を低温に保持するためのものである。目的のウェルに移動し、バッファを添加した後(
図10(a)サブ工程16)、チップヘッド204がダストボックス214に移動し、チップを
廃棄する。吸引ヘッドがバッファで満たされているウェルに移動し、バッファを除去する(
図10(a)サブ工程17)。除去された培地は、廃液槽206に廃棄される。この工程
を合計3回繰り返す(洗浄工程)(
図10(a)サブ工程18)。
【0065】
<サンプル調製:実施例1、2の工程4に相当>
第一温調機能付きプレートホルダ210、および第二温調機能付きプレートホルダ211が4℃から37℃に変化した後(
図10(a)サブ工程19)、チップヘッド204にチ
ップラック207内のチップを装着し、チップヘッドが冷蔵薬液ラック208に移動し、バッファを吸引する(
図10(a)サブ工程20)。目的のウェルに移動し、バッファを添
加した後(
図10(a)サブ工程21)、チップヘッド204がダストボックス214に移
動し、チップを廃棄する。37℃で30分間待機する(
図10(a)サブ工程20)。その
後、第一温調機能付きプレートホルダ210、および第二温調機能付きプレートホルダ211が37℃から4℃に変化した後(
図10(a)サブ工程22)、チップヘッド204に
チップラック207内のチップを装着し、薬剤を含むバッファで満たされたウェルに移動し、薬剤を含むバッファ(上清)を吸引し、第一プレートホルダ212、および第二プレートホルダ213上の回収用の回収プレートに分注する(回収)(
図10(a)サブ工程2
3)。
【0066】
<サンプル調製:実施例1、2の工程5に相当>
第一温調付きプレートホルダ210が4℃から37℃に変化した後(
図10(a)サブ工
程24)、チップヘッド204にチップラック207内のチップを装着し、チップヘッド
が常温薬液ラック(209)に移動し、EGTAを含むバッファを吸引する(
図10(a)サブ工程24)。第一プレートホルダ212上の試験区1用のウェルに移動し、EGTA
を含むバッファを添加した後(
図10(b)サブ工程25)、チップヘッド204がダスト
ボックス214に移動し、チップを廃棄する。37℃で30分間待機する(
図10(b)サ
ブ工程26)。
【0067】
チップヘッド204にチップラック207内のチップを装着し、チップヘッドが常温薬液ラック209に移動し、バッファを吸引する(
図10(b)サブ工程27)。第一プレー
トホルダ212上の試験区2用のウェルに移動し、バッファを添加した後(
図10(b)サ
ブ工程28)、チップヘッド204がダストボックス214に移動し、チップを廃棄する
。37℃で30分間待機する(
図10(b)サブ工程28)。
【0068】
チップヘッド204にチップラック207内のチップを装着し、チップヘッドが冷蔵薬液ラック209に移動し、バッファを吸引する(
図10(b)サブ工程29)。
【0069】
第二プレートホルダ213上の試験区3用のウェルに移動し、バッファを添加した後(
図10(b)サブ工程30)、チップヘッド204がダストボックス214に移動し、チッ
プを廃棄する。4℃で30分間待機する(
図10(b)サブ工程30)。
【0070】
チップヘッド204にチップラック207内のチップを装着し、薬剤を含むEGTAバッファで満たされたウェルに移動し、薬剤を含むEGTAバッファ(上清)を吸引し、第一プレートホルダ212上の回収用の回収プレートに分注(回収)する(
図10(b)サブ
工程31)。
【0071】
チップヘッド204にチップラック207内のチップを装着し、薬剤を含むバッファで満たされたウェルに移動し、薬剤を含むバッファ(上清)を吸引し、第一プレートホルダ212上の回収用の回収プレートに分注(回収)する(
図10(b)サブ工程32)。
【0072】
チップヘッド204にチップラック207内のチップを装着し、薬剤を含むEGTAバッファで満たされたウェルに移動し、薬剤を含むバッファ(上清)を吸引し、第一プレートホルダ213上の回収用の回収プレートに分注する(回収)する(
図10(b)サブ工程
33)。
【0073】
第一温調機能付きプレートホルダ210、および第二温調機能付きプレートホルダ211がともに室温に変化した後(
図10(b)サブ工程34)、チップヘッド204にチップ
ラック207内のチップを装着し、チップヘッドが常温薬液ラック209に移動し、1%TritonX−100あるいは、純水/メタノールを吸引する(
図10(b)サブ工程35
)。第一温調機能付きプレートホルダ(210)、および第二温調機能付きプレートホル
ダ211上の試験区1、2、3用のウェルに移動し、1%TritonX−100あるいは、純水/メタノールを添加した後(
図10(b)サブ工程36)、チップヘッド204がダ
ストボックス214に移動し、チップを廃棄する。
【0074】
チップヘッド204にチップラック207内のチップを装着し、上記試薬で満たされたウェルに移動し、細胞懸濁液を全量吸引し、第一プレートホルダ212および、第二プレートホルダ213上の回収用の回収プレートに分注する(回収)(
図10(b)サブ工程3
7)。
【0075】
上記装置の動作は、実施例1,2の試験区1〜3の夫々工程における動作を順次実施した場合について述べたが、各工程は順番で行ってもよいし、各工程を並行して実施してもよい。
【0076】
<サンプル調製部から測定部への移送>
培養プレートの回収された薬剤は、測定部に移送される(
図10(b)サブ工程38)。
測定部において、プレートリーダ、あるいはLCMSによる薬剤の測定がおこなわれる(
図10(b)サブ工程39)。
【0077】
<解析部による分配比率とスコアの算出および結果の表示>
測定結果から各画分への分配比率とスコアを算出する(
図10(b)サブ工程40)。そ
の後、得られた算出値を表示部に表示する(
図10(b)サブ工程41)。
【0078】
以上、実施例1〜3にて説明した構成について、あくまで一例として挙げると、例えば以下のようになる。
【0079】
<構成1>
所定の細胞を保持する複数の容器を保持する保持部と、前記複数の容器内の温度を調整する温度調整部と、前記複数の容器内の成分を測定し、当該測定した前記成分を解析する分析部と、を備え、
前記複数の容器は、少なくとも第1容器、第2容器であって、前記第1容器内及び前記第2容器は、夫々第1バッファ液を保持し、前記温度調整部は、前記第1容器内の温度と、前記第2容器内の温度とが異なる温度となるように調整し、前記分析部は、前記第1容器内の細胞から、前記第1容器内の前記第1バッファ液へ排出された成分の量と、前記第2容器内の細胞から、前記第2容器内の前記第1バッファ液へ排出された成分の量と、を測定し、前記細胞のトランスポータを介して排出される前記成分の量を解析することを特徴とする成分分析装置である。
【0080】
<構成2>
前記所定の細胞は肝細胞であって、前記複数の容器は、少なくとも前記第1容器、前記第2容器、及び第3容器であって、前記第3容器内に、所定の物質が添加された第2バッファ液が保持され、
前記温度調整部は、前記第1容器内及び前記第3容器内の第1温度よりも、前記第2容器内の第2温度の方が低くなるように調整し、前記分析部は、前記第1容器内の肝細胞から
、前記第1容器内の前記第1バッファ液へ排出された成分の量と、前記第2容器内の肝細胞から、前記第2容器内の前記第1バッファ液へ排出された前記成分の量と、前記第3容器内の肝細胞から、前記第3容器内の前記第2バッファ液へ排出された前記成分の量と、を測定し、前記肝細胞のトランスポータを介して排出される前記成分の量と、前記肝細胞の毛細胆管を介して排出される前記成分の量と、前記肝細胞のトランスポータ及び毛細胆管以外から排出される前記成分の量と、を解析することを特徴とする構成1記載の成分分析装置である。
【0081】
<構成2>
前記複数の容器内の液体を供給または回収する送液部をさらに有し、前記送液部は、前記複数の容器に前記成分を含む成分溶液を供給し、前記成分溶液を回収した後、第3バッファ液を前記複数の容器内に供給し、前記第3バッファ液を回収した後、前記第1容器及び前記第2容器に前記第1バッファ液を供給し、前記第3容器に前記第2バッファ液を供給し、前記分析部は、前記複数の培養容器の何れかに保持された前記肝細胞から、前記第3バッファ液内へ排出された成分の量を測定することを特徴とする構成2記載の成分分析装置である。
【0082】
<構成4>
前記第3バッファ液と前記第1バッファ液は、同一種のバッファ液であることを特徴とする構成3記載の成分分析装置である。
【0083】
<構成5>
前記温度調整部は、前記第1温度よりも、前記第3バッファ液を保持しているときの前記複数の容器内のうち少なくとも一つの容器内の温度の方が低くなるように温度を調整することを特徴とする請構成3記載の成分分析装置である。
【0084】
<構成6>
前記分析部は、前記第3容器内の肝細胞内に残留している前記成分の量と、前記第1容器または前記第2容器のうち少なくとも一つの容器内の肝細胞に残留している成分の量と
、を測定し、前記肝細胞の毛細胆管以外に残留する前記成分の量を解析することを特徴とする請求項1記載の成分分析装置である。
【0085】
<構成7>
薬剤を吸収した肝細胞を保持する複数の容器を保持する保持部と、前記複数の容器内の液体を供給する送液部と、前記複数の容器内の温度を調整する温度調整部と、前記複数の容器内の薬剤の量を測定し、当該測定した薬剤を解析する分析部と、を備え、前記複数の容器は、第1容器、第2容器及び第3容器であって、前記送液部は、前記第1容器及び前記第2容器に、第1バッファ液を供給し、前記第3容器に、前記肝細胞の毛細胆管から前記薬剤が排出されることを促す第2バッファ液を供給し、前記温度調整部は、前記第1容器内及び前記第3容器内の温度よりも、前記第2容器内の温度の方が低くなるように温度を調整し、前記分析部は、前記第1容器内の肝細胞から前記第1バッファ液内に排出された前記薬剤の量と、前記第2容器内の肝細胞から前記第1バッファ液内に排出された前記薬剤の量と、前記第3容器内の肝細胞から前記第2バッファ液内に排出された前記薬剤の量と、
前記肝細胞のトランスポータから排出される前記薬剤の量と、前記肝細胞の毛細胆管から排出される前記薬剤の量と、前記肝細胞のトランスポータ及び毛細胆管以外から排出される前記成分の量と、を夫々解析することを特徴とする薬剤成分分析装置である。
【0086】
<構成8>
薬剤を吸収した肝細胞を保持する複数の容器を保持する保持部と、前記複数の容器内の液体を供給または排出する送液部と、前記複数の容器内の温度を調整する温度調整部と、前記複数の容器内の薬剤の量を測定し、当該測定した薬剤を解析する分析部と、を備え、前記送液部は、前記複数の容器に、前記薬剤を供給し、前記薬剤を前記複数の容器から排出した後、前処理用バッファ液を供給し、前記前処理用バッファ液を前記複数の容器から回収した後、前記複数の培養容器のうち、前記第1容器及び前記第2容器に、第1バッファ液を供給し、前記第3容器に、前記肝細胞の毛細胆管から前記薬剤が排出されることを促す第2バッファ液を供給し、前記温度調整部は、前記第1容器内及び前記第3容器内の第1温度よりも、前記第2容器内の第2温度の方が低くなるように温度を調整し、
前記分析部は、前記複数の容器内の肝細胞から前記前処理用バッファ液内に排出された前記薬剤の量と、前記第1容器内の肝細胞から前記第1バッファ液内に排出された前記薬剤の量と、前記第2容器内の肝細胞から前記第1バッファ液内に排出された前記薬剤の量と
、前記第3容器内の肝細胞から前記第2バッファ液内に排出された前記薬剤の量と、前記肝細胞を前処理する段階で前記肝細胞から排出される前記薬剤の量と、前記肝細胞のトランスポータから排出される前記薬剤の量と、前記肝細胞の毛細胆管から排出される前記薬剤の量と、前記肝細胞のトランスポータ及び毛細胆管以外から排出される前記薬剤の量と
、を夫々解析することを特徴とする薬剤成分分析装置である。
【0087】
<構成9>
前記前処理用バッファ液と前記第1バッファ液は、同一種のバッファ液であることを特徴とする構成8記載の薬剤成分分析装置である。
【0088】
<構成10>
前記温度調整部は、前記前処理用バッファ液を保持しているときの、前記複数の容器内のうち少なくとも一つの容器内の温度よりも、前記第1温度の方が高くなるように温度を調整することを特徴とする構成8記載の薬剤成分分析装置である。
【0089】
<構成11>
前記分析部は、前記第3容器内の肝細胞内に残留している前記成分の量と、前記第1容器または前記第2容器のうち少なくとも一つの容器内の肝細胞に残留している成分の量と
、を測定し、前記肝細胞の毛細胆管以外に残留する前記成分の量を解析することを特徴とする構成7から10迄の記載の薬剤成分分析装置である。
【0090】
<構成12>
所定の細胞を保持する第1容器内の温度よりも、前記所定の細胞を保持する第2容器内の温度の方が低くなるように温度を調整する温調工程と、前記第1容器内の細胞から、前記第1容器内の前記第1バッファ液へ排出された成分の量と、前記第2容器内の細胞から
、前記第2容器内の前記第1バッファ液へ排出された成分の量と、を測定する測定工程と
、前記測定工程によって測定した結果に基づいて、前記細胞のトランスポータを介して排出される前記成分の量を解析する解析工程と、を有することを特徴とする成分分析方法である。
【0091】
<構成13>
前記細胞は肝細胞であって、前記肝細胞が保持された前記第3容器内に、所定の物質が添加された第2バッファ液が保持されており、前記温調工程において、前記第1容器内及び前記第3容器内の第1温度よりも、前記第2容器内の第2温度の方が低くなるように調整し、前記測定工程において、前記第1容器内の肝細胞から、前記第1容器内の前記第1バッファ液へ排出された成分の量と、前記第2容器内の肝細胞から、前記第2容器内の前記第1バッファ液へ排出された前記成分の量と、前記第3容器内の肝細胞から、前記第3容器内の前記第2バッファ液へ排出された前記成分の量と、を測定し、前記解析工程において、前記肝細胞のトランスポータを介して排出される前記成分の量と、前記肝細胞の毛細胆管を介して排出される前記成分の量と、前記肝細胞のトランスポータ及び毛細胆管以外から排出される前記成分の量と、を夫々解析することを特徴とする構成12記載の成分分析方法である。
【0092】
<構成14>
前記温調工程よりも前に、少なくとも前記第1容器、前記第2容器、及び前記第3容器
を含む複数の容器内の液体を供給または回収する送液工程をさらに有し、前記送液工程において、前記複数の容器に前記成分を含む成分溶液を供給し、前記成分溶液を回収した後
、第3バッファ液を前記複数の容器内に供給し、前記第3バッファ液を回収した後、前記第1容器及び前記第2容器に前記第1バッファ液を供給し、前記第3容器に前記第2バッファ液を供給し、前記測定工程において、前記複数の培養容器の少なくとも一つに保持された前記肝細胞から、前記第3バッファ液内へ排出された成分の量を解析することを特徴とする構成13記載の成分分方法である。
【0093】
<構成15>
前記第3バッファ液と前記第1バッファ液は、同一種のバッファ液であることを特徴とする構成14記載の成分分析方法である。
【0094】
<構成16>
前記温調工程よりも前に、前記第1温度よりも、前記前記第3バッファ液を保持しているときの前記複数の容器内のうち少なくとも一つの容器内の温度の方が低くなるように温度を調整する前処理温調工程を有することを特徴とする構成14記載の成分分析方法である。
【0095】
<構成17>
薬剤を吸収した肝細胞を保持する複数の容器に、液体を供給する送液工程と、前記複数の容器内の温度を調整する温調工程と、前記複数の容器内の薬剤の量を測定する測定工程と、前記測定工程において測定した薬剤を解析する解析工程と、を備え、前記複数の容器は、第1容器、第2容器及び第3容器であって、前記送液工程において前記第1容器及び前記第2容器に、第1バッファ液を供給し、前記第3容器に、前記肝細胞の毛細胆管から前記薬剤が排出されることを促す第2バッファ液を供給し、前記温調工程において、前記第1容器内及び前記第3容器内の温度よりも、前記第2容器内の温度の方が低くなるように温度を調整し、前記計測工程において、前記第1容器内の肝細胞から前記第1バッファ液内に排出された前記薬剤の量と、前記第2容器内の肝細胞から前記第1バッファ液内に排出された前記薬剤の量と、前記第3容器内の肝細胞から前記第2バッファ液内に排出された前記薬剤の量と、前記第3容器内の肝細胞内に残留している前記成分の量と、前記第1容器または前記第2容器のうち少なくとも一つの容器内の肝細胞に残留している成分の量と、を測定し、前記解析工程において、前記肝細胞のトランスポータから排出される前記薬剤の量と、前記肝細胞の毛細胆管から排出される前記薬剤の量と、前記肝細胞のトランスポータ及び毛細胆管以外から排出される前記薬剤の量と、前記肝細胞の毛細胆管以外に残留する前記成分の量と、を夫々解析することを特徴とする薬剤成分分析方法である。
【0096】
<構成18>
薬剤を吸収した肝細胞を保持する複数の容器内の液体を供給または排出する送液工程と
、前記複数の容器内の温度を調整する温調工程と、前記複数の容器内の薬剤の量を測定する測定工程と、前記測定工程によって測定した薬剤を解析する解析工程と、を備え、前記送液工程において、前記複数の容器に、前記薬剤を供給し、前記薬剤を前記複数の容器から排出した後、前処理用バッファ液を供給し、前記前処理用バッファ液を前記複数の容器から回収した後、前記複数の培養容器のうち、前記第1容器及び前記第2容器に、第1バッファ液を供給し、前記第3容器に、前記肝細胞の毛細胆管から前記薬剤が排出されることを促す第2バッファ液を供給し、前記温調工程において、前記第1容器内及び前記第3容器内の第1温度よりも、前記第2容器内の第2温度の方が低くなるように温度を調整し
、前記測定工程において、前記複数の容器内の肝細胞から前記前処理用バッファ液内に排出された前記薬剤の量と、前記第1容器内の肝細胞から前記第1バッファ液内に排出された前記薬剤の量と、前記第2容器内の肝細胞から前記第1バッファ液内に排出された前記薬剤の量と、前記第3容器内の肝細胞から前記第2バッファ液内に排出された前記薬剤の量と、前記第3容器内の肝細胞内に残留している前記成分の量と、前記第1容器または前記第2容器のうち少なくとも一つの容器内の肝細胞に残留している成分の量と、を測定し
、前記解析工程において、前記肝細胞を前処理する段階で前記肝細胞から排出される前記薬剤の量と、前記肝細胞のトランスポータから排出される前記薬剤の量と、前記肝細胞の毛細胆管から排出される前記薬剤の量と、前記肝細胞のトランスポータ及び毛細胆管以外から排出される前記薬剤の量と、前記肝細胞の毛細胆管以外に残留する前記成分の量と、を夫々解析することを特徴とする薬剤成分分析方法である。
【0097】
<構成19>
前記前処理用バッファ液と前記第1バッファ液は、同一種のバッファ液であることを特徴とする構成18記載の成分分析方法である。
【0098】
<構成20>
前記温調工程より前に、前記前処理用バッファ液を保持しているときの、前記複数の容器内のうち少なくとも一つの容器内の温度よりも、前記第1温度の方が高くなるように温度を調整する前処理温調工程を有することを特徴とする請求項18記載の薬剤成分分析方法である。