特許第6282394号(P6282394)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6282394-パワーモジュール用基板 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282394
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】パワーモジュール用基板
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/12 20060101AFI20180208BHJP
【FI】
   H01L23/12 K
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-238636(P2012-238636)
(22)【出願日】2012年10月30日
(65)【公開番号】特開2014-90048(P2014-90048A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2015年10月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】391039896
【氏名又は名称】NGKエレクトロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】鎌江 隆行
(72)【発明者】
【氏名】金原 尚之
(72)【発明者】
【氏名】松永 秀樹
【審査官】 麻川 倫広
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−151637(JP,A)
【文献】 特開2003−218268(JP,A)
【文献】 特開2004−014827(JP,A)
【文献】 特表平09−507614(JP,A)
【文献】 特開2000−052329(JP,A)
【文献】 特開2004−095690(JP,A)
【文献】 特開2003−318330(JP,A)
【文献】 特開2001−156196(JP,A)
【文献】 特開平7−321447(JP,A)
【文献】 特開昭58−219751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 37/00−37/04
H01L 21/54
23/00−23/04
23/06−23/26
23/29
23/34−23/36
23/373−23/427
23/44
23/467−23/473
23/50
H05K 1/03
3/10−3/26
3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック基板の一方の主面にそれぞれパターンが形成された複数の表銅板、他方の主面にベタ状の裏銅板が直接接合法で接合されて有するパワーモジュール用基板において、
少なくとも1つの前記表銅板の一方側が前記セラミック基板に接合され、他方側が前記セラミック基板の外周縁部から中空状態で外部に延設され、前記表銅板の前記他方側は、前記セラミック基板の前記外周縁部に形成された面取り状の曲部に当接されていることを特徴とするパワーモジュール用基板。
【請求項2】
セラミック基板の一方の主面にそれぞれパターンが形成された複数の表銅板、他方の主面にベタ状の裏銅板が直接接合法で接合されて有するパワーモジュール用基板において、
前記セラミック基板の外周縁部及び前記セラミック基板に設けられる貫通孔の外周である内周縁部には面取り状の曲部が形成され、
少なくとも1つの前記表銅板の一方側が前記セラミック基板の前記内周縁部に重なって接合されると共に、他方側が前記セラミック基板の前記外周縁部から中空状態で外部に延設され、前記表銅板の前記他方側は、前記セラミック基板の前記外周縁部に形成された前記面取り状の曲部に当接されることを特徴とするパワーモジュール用基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック基板の両主面の内の一方の主面に島状のパターンからなる表銅板、他方の主面にベタ状のパターンからなる裏銅板を直接接合法や、活性金属ろう材接合法で接合して設けるパワーモジュール用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、パワーモジュール用基板は、大電力化、高速化、高集積化の進む民生機器用や、自動車、電気自動車等の車載用等に採用されるパワートランジスタ等の半導体素子を搭載して、半導体素子からの発熱を速やかに放熱させて半導体素子の信頼性を維持させることができるために用いられている。このパワーモジュール用基板は、通常、1枚板、あるいは所定の部位に貫通孔を設けるセラミック基板と、このセラミック基板の両主面のそれぞれに様々なパターンからなる表銅板や、大きな面積からなる裏銅板を銅の融点を利用して直接加熱接合する直接接合法、あるいは、活性金属ろうを介して加熱接合する活性金属ろう材接合法で接合することで構成されている。また、最近のパワーモジュール用基板には、表銅板の中に外部の電気的接続用パッドと電気的に接続状態とするためのセラミック基板の表面から水平状態で、あるいは、折り曲げ状態で外部に突出する外部接続リード端子状の表銅板が設けられているものがある。なお、表銅板や、裏銅板とセラミック基板11を直接接合、あるいは活性金属ろう材接合で加熱接合させる場合には、表銅板や、裏銅板とセラミック基板11とが互いを密着して当接させた上で加熱することが重要となっている。
【0003】
上記のパワーモジュール用基板は、定められた銅板上に接合材で接合される半導体素子と、半導体素子が接合される銅板とは異なる銅板上に外部接続リード端子を垂直状態にして接合材で接合した銅板との間をボンディングワイヤで接続して電気的な導通回路を形成し、外部接続リード端子を介して半導体素子に高電圧且つ高電流が流せるようにしている。あるいは、パワーモジュール用基板は、定められた銅板上に接合材で接合された半導体素子と、半導体素子が接合される銅板とは異なるセラミック基板の表面から水平状態、又は折り曲げ状態で外部に突出する外部接続リード端子状の銅板との間をボンディングワイヤで接続して電気的な導通回路を形成し、外部接続リード端子状の銅板を介して半導体素子に高電圧且つ高電流が流せるようにしている。また、このパワーモジュール用基板は、高電圧且つ高電流が流れることで発生する半導体素子からの発熱を速やかに熱伝導率のよい銅板を介して裏銅板側に伝熱させると共に、通常、裏銅板に接合材等で接合されるヒートシンク板から放熱させている。
【0004】
セラミックス回路基板という発明の名称のもとに、従来のパワーモジュール用基板には、セラミック基板と、このセラミック基板表面に所望のパターン形状に設けられた回路構成部と、セラミック基板の外側に突出して設けられたリードとを有するパワーモジュール用基板において、回路構成部とリードとが、セラミック基板表面に直接加熱接合された銅板によって一体に形成されているものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、電子部品搭載用基板及びその製造方法、並びに電子部品搭載用基板製造用の金属板材及び接合防止マスクという発明の名称のもとに、従来の電子部品搭載用基板の製造方法には、配線パターン状をなす断片を備えた金属板材(銅板)を基材(セラミック基板)に接合することにより、基材上に所定の配線パターンを形成する方法であって、断片の一部に外部接続リード端子として使用されうる未接合部が設けられるように、共晶法(直接接合法)により金属板を接合するものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−72696号公報
【特許文献2】特開平7−321447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述したような従来のパワーモジュール用基板は、次のような問題がある。
従来のパワーモジュール用基板や、特開平2−72696号公報、特開平7−321447号公報で開示されようなパワーモジュール用基板は、表銅板の少なくとも1つにセラミック基板の縁部に重なって、あるいは、セラミック基板の縁部から外れて外部に延設して接合される場合に、セラミック基板の縁部の部分的な突出や、バリ状の突起によって表銅板がセラミック基板から浮き上がった状態となりセラミック基板との当接部に空隙部であるボイドが発生したり、不着面積が多くなって、セラミック基板と銅板との間の熱伝導性が低下すると共に、銅板のセラミック基板との接着強度が低くなり、接合信頼性の低下となっている。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、銅板とセラミック基板間の熱伝導性に優れ、銅板とセラミック基板の接着強度が高く接合信頼性の高いパワーモジュール用基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的に沿う本発明に係るパワーモジュール用基板は、セラミック基板の一方の主面にそれぞれパターンが形成された複数の表銅板、他方の主面にベタ状の裏銅板が直接接合法で接合されて有するパワーモジュール用基板において、少なくとも1つの表銅板の一方側がセラミック基板に接合され、他方側がセラミック基板の外周縁部から中空状態で外部に延設され、表銅板の他方側は、セラミック基板の外周縁部に形成された面取り状の曲部に当接されている。
【0009】
前記目的に沿う本発明に係る他のパワーモジュール用基板は、セラミック基板の一方の主面にそれぞれパターンが形成された複数の表銅板、他方の主面にベタ状の裏銅板が直接接合法で接合されて有するパワーモジュール用基板において、セラミック基板の外周縁部及び前記セラミック基板に設けられる貫通孔の外周である内周縁部には面取り状の曲部が形成され、少なくとも1つの表銅板の一方側がセラミック基板の内周縁部に重なって接合されると共に、他方側がセラミック基板の外周縁部から中空状態で外部に延設され、表銅板の他方側は、セラミック基板の外周縁部に形成された面取り状の曲部に当接されている。
【発明の効果】
【0010】
上記のパワーモジュール用基板は、少なくとも1つの表銅板の一方側がセラミック基板に接合され、他方側がセラミック基板の外周縁部から中空状態で外部に延設されるセラミック基板の外周縁部に面取り状の曲部を有するので、セラミック基板の外周縁部に部分的な突出や、バリ状の突起がなく、そこに当接される表銅板がセラミック基板に密着して当接でき、当接部のボイドの発生を防止し、接着面積を大きくして接着でき、表銅板とセラミック基板間の熱伝導性に優れ、接着強度が高く接合信頼性の高いパワーモジュール用基板を提供することができる。
【0011】
上記の他のパワーモジュール用基板は、少なくとも1つの表銅板の一方側がセラミック基板に設けられる貫通孔の外周であるセラミック基板の内周縁部に重なって接合されると共に、他方側がセラミック基板の外周縁部から中空状態で外部に延設されるセラミック基板の外周縁部、及び内周縁部に面取り状の曲部を有するので、セラミック基板の外周縁部や、内周縁部に部分的な突出や、バリ状の突起がなく、そこに当接される表銅板がセラミック基板に密着して当接でき、当接部のボイドの発生を防止し、接着面積を大きくして接着でき、表銅板とセラミック基板間の熱伝導性に優れ、接着強度が高く接合信頼性の高いパワーモジュール用基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(A)、(B)はそれぞれ本発明の一実施の形態に係るパワーモジュール用基板の斜視説明図、A−A’線拡大縦断面図である。
図2】(A)、(B)はそれぞれ本発明の一実施の形態に係る他のパワーモジュール用基板の斜視説明図、B−B’線拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。
図1(A)、(B)に示すように、本発明の一実施の形態に係るパワーモジュール用基板10は、焼成済の所定寸法からなる平板状のセラミック基板11の一方の主面である上面側にそれぞれパターンが形成された表銅板12と、セラミック基板11の他方の主面である下面側にベタ状態のパターンからなる裏銅板13を有している。この表銅板12や、裏銅板13は、アルミナ(Al)、ジルコニア系アルミナ、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックからなる焼成済のセラミック基板11に直接接合、又は活性金属ろう材接合で加熱接合されるようになっている。
【0014】
なお、上記の直接接合での接合方法とは、予め表面を酸化させた表銅板12や、裏銅板13用の銅板をセラミック基板11の表面に当接させ、窒素雰囲気中で酸化銅の融点(1083℃)以下、銅と酸化銅の共晶温度(1065℃)以上の温度で加熱して銅と微量の酸素との反応により生成するCu−O共晶液相を結合剤として直接セラミック基板11に接合する方法である。なお、セラミック基板11がAlNからなる場合には、AlN基板の表面にAlからなる酸化膜を形成しておく必要がある。
【0015】
また、活性金属ろう材接合での接合方法とは、チタン、ジルコニウム、ベリリウム等のような極めて反応性の大きい、いわゆる活性な金属をAg−Cu系ろう等に加えた活性金属ろう材を用いてセラミック基板11と、表銅板12や、裏銅板13用の銅板を接合する方法である。この方法での接合は、先ず、それぞれのセラミック基板11の間で最も反応性の高い1又は複数種の活性金属をAg−Cu系ろう等に加えた活性金属ろう材ペーストをセラミック基板11の表面にスクリーン印刷等で塗布し、その上に予め表面を酸化させた表銅板12や、裏銅板13用の銅板を当接させ、約750〜850℃程度で加熱して活性金属の酸素との親和力の強さを利用して、直接セラミック基板11に接合する方法である。
【0016】
上記のパワーモジュール用基板10は、島状に点在する複数の表銅板12中の少なくとも1つの表銅板12aの一方側がセラミック基板11の表面に接合され、他方側がセラミック基板11の外周縁部から中空状態で外部に延設される外部接続リード端子状の表銅板12aを備えている。そして、パワーモジュール用基板10は、外部接続リード端子状の表銅板12aが接合されるセラミック基板11の外周縁部に面取り状の曲部14を有している。
【0017】
このセラミック基板11の外周縁部に設ける面取り状の曲部14は、特に、その形状を限定するものではないが、通常、断面視して、1又は複数の角部からなるC面形状や、全体がなだらかなR面形状を有するのが好ましい。また、曲部14は、セラミック基板11としての形状を断面視してたときに、セラミック基板11の表面中央部から外周縁部にいくにつれて厚みが薄くなり、外周縁部においてC面形状や、R面形状の曲部14を有する、又は表面中央部では平らで、外周縁部近傍から厚みが薄くなり、外周縁部においてC面形状や、R面形状の曲部14を有するような俵形状であるのが好ましい。
【0018】
更に、曲部14は、特に、その形成方法を限定するものではないが、例えば、焼成前のセラミックグリーンシートの両面に切り刃で押圧する分割溝を設け、焼成後に分割溝から分割することで形成することができる。また、例えば、曲部14は、焼成前のセラミックグリーンシートの成形体、又は焼成後のセラミック基板11の外周縁部を研削することで形成することができる。
【0019】
上記のパワーモジュール用基板10は、外周縁部に面取り状の曲部14を有するセラミック基板11の外周縁部から延設して接合される外部接続リード端子状の表銅板12aがセラミック基板11の表面との間に空間部を作ることなく密着して載置できる。そして、外周縁部に面取り状の曲部14を有するセラミック基板11の表面と、全ての表銅板12との間は、ボイドの発生を防止し、接着面積を大きくして接着でき、セラミック基板11との間の熱伝導性に優れ、接着強度が高く接合信頼性の高いパワーモジュール用基板10とすることができる。なお、外部接続リード端子状の表銅板12aは、セラミック基板11の外周縁部から水平に外部に延設しているものや、セラミック基板11の外周縁部から下方にL字状に折り曲げて外部に延設しているもの等がある。
【0020】
上記のパワーモジュール用基板10には、所定位置の表銅板12にパワートランジスタ等の高熱を発する半導体素子15を搭載し、半導体素子15と外部接続リード端子状の表銅板12a間や、表銅板12間同士等をボンディングワイヤ16で連結させることで、電気的導通状態が形成できるようにしている。また、このパワーモジュール用基板10は、所定位置の表銅板12上面に接合される半導体素子15からの発熱を速やかにセラミック基板11及び裏銅板13を介して裏銅板13に接合させたヒートシンク板(図示せず)に伝熱させ、ヒートシンク板から外部に放熱できるようにしている。
【0021】
次いで、図2(A)、(B)を参照しながら、本発明の一実施の形態に係る他のパワーモジュール用基板10aを説明する。
図2(A)、(B)に示すように、パワーモジュール用基板10aは、焼成済の所定寸法からなる平板のセラミック基板11aの所定位置には、所定寸法からなる貫通孔17が設けられている。そして、パワーモジュール用基板10aには、セラミック基板11aの一方の主面である上面側にそれぞれパターンが形成された表銅板12が貫通孔17の開口を露出するようにして設けられている。また、パワーモジュール用基板10aには、セラミック基板11aの他方の主面である下面側にベタ状態のパターンからなる裏銅板13が貫通孔17の開口を塞ぐようにして設けられている。このパワーモジュール用基板10aは、表銅板12や、裏銅板13がアルミナ(Al)、ジルコニア系アルミナ、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックからなる焼成済のセラミック基板11aに直接接合、又は活性金属ろう材接合で加熱接合されるようになっている。なお、この直接接合での接合方法や、活性金属ろう材接合での接合方法とは、前記のパワーモジュール用基板10の場合と同様な接合方法である。
【0022】
上記の変形例のパワーモジュール用基板10aは、島状に点在する複数の表銅板12中の少なくとも1つの表銅板12bの一方側がセラミック基板11aの設けられた貫通孔17の外周であるセラミック基板11aの内周縁部に重なって表面に接合され、他方側がセラミック基板11aの外周縁部から中空状態で外部に延設される外部接続リード端子状の表銅板12bを備えている。そして、パワーモジュール用基板10aは、外部接続リード端子状の表銅板12bが接合されるセラミック基板11aの外周縁部に面取り状の曲部14と、貫通孔17の外周であるセラミック基板11aの内周縁部に面取り状の曲部14aを有している。なお、変形例のパワーモジュール用基板10aには、島状に点在する複数の表銅板12中の少なくとも1つの表銅板12aの一方側がセラミック基板11の表面に接合され、他方側がセラミック基板11の外周縁部から中空状態で外部に延設される外部接続リード端子状の表銅板12aを備えていてもよい。
【0023】
上記のセラミック基板11aの外周縁部に設ける面取り状の曲部14や、貫通孔17の外周であるセラミック基板11aの内周縁部に設ける面取り状の曲部14aは、パワーモジュール用基板10の場合と同様に、特に、その形状を限定するものではないが、通常、断面視して、1又は複数の角部からなるC面形状や、全体がなだらかなR面形状を有するのが好ましい。また、セラミック基板11aとしての形状は、断面視して、セラミック基板11aの表面中央部から外周縁部にいくにつれて厚みが薄くなり、又は表面中央部では平らで、外周縁部近傍から厚みが薄くなり、外周縁部においてC面形状や、R面形状の曲部14を有すると共に、貫通孔17の外周であるセラミック基板11aの内周縁部においてC面形状や、R面形状の曲部14aを有するような俵形状であるのが好ましい。更に、セラミック基板11aの外周縁部に設ける曲部14の形成方法は、パワーモジュール用基板10の場合と同様にして形成することができる。一方、セラミック基板11aの貫通孔17の外周であるセラミック基板11aの内周縁部に設ける曲部14aの形成方法は、例えば、打ち抜き加工機等でセラミックグリーンシートに貫通孔17用の穿設孔を形成した後、焼成前のセラミックグリーンシートの成形体、又は焼成後のセラミック基板11aの外周縁部を研削することで形成することができる。
【0024】
上記のパワーモジュール用基板10aは、セラミック基板11aの外周縁部に面取り状の曲部14と、貫通孔17の外周であるセラミック基板11aの内周縁部に面取り状の曲部14aを有するセラミック基板11aの内周縁部に重なると共に、外周縁部から延設して接合される外部接続リード端子状の表銅板12bがセラミック基板11aの表面との間に空間部を作ることなく密着して載置できる。そして、内周縁部に面取り状の曲部14aと、外周縁部に面取り状の曲部14を有するセラミック基板11aの表面と、全ての表銅板12、12a、12bとの間は、ボイドの発生を防止し、接着面積を大きくして接着でき、セラミック基板11aとの間の熱伝導性に優れ、接着強度が高く接合信頼性の高いパワーモジュール用基板10aとすることができる。なお、外部接続リード端子状の表銅板12a、12bは、パワーモジュール用基板10の場合と同様に、セラミック基板11aの外周縁部から水平に外部に延設しているものや、セラミック基板11aの外周縁部から下方にL字状に折り曲げて外部に延設しているもの等がある。
【0025】
上記のパワーモジュール用基板10aには、貫通孔17の開口から露出する裏銅板13にパワートランジスタ等の高熱を発する半導体素子15を搭載し、半導体素子15と外部接続リード端子状の表銅板12a、12b間や、他の表銅板12間同士等をボンディングワイヤ16で連結させることで、電気的導通状態が形成できるようにしている。また、このパワーモジュール用基板10aは、貫通孔17の開口から露出する裏銅板13上面に接合される半導体素子15からの発熱を速やかに裏銅板13を介して裏銅板13に接合させたヒートシンク板(図示せず)に伝熱させ、ヒートシンク板から外部に放熱できるようにしている。
【0026】
上記のパワーモジュール用基板10、10a用のセラミック基板11、11aには、通常、酸化アルミニウム(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、又はジルコニア入り酸化アルミニウム等のセラミックが用いられ、これらのセラミックからなるセラミック基板11、11aが、絶縁性、耐熱性、熱伝導性、基板強度等に優れ、半導体素子15にかかる高電圧、及び半導体素子15からの高熱に対して十分な耐熱性と、高熱伝導性をもって問題なく使用することができる。ここで、セラミックの一例であるAlからなるセラミック基板11、11aの製造方法を簡単に説明する。セラミック基板11、11aは、アルミナ粉末にマグネシア、シリカ、カルシア等の焼結助剤を適当量加えた粉末に、ジオクチルフタレート等の可塑剤と、アクリル樹脂等のバインダー、及び、トルエン、キシレン、アルコール類等の溶剤が加えられ、十分に混練した後、脱泡して粘度2000〜40000cpsのスラリーをドクターブレード法等によって、例えば、厚さ0.64mm程度のロール状のシートに形成され、適当なサイズにカットしてセラミックグリーンシートを作製し、大気中約1550℃程度で焼成して作製している。
【0027】
また、セラミックの一例であるAlNからなるセラミック基板11、11aを作製するには、窒化アルミニウム粉末に焼結助剤を添加し、可塑剤、バインダー、及び溶剤を加えてシート状のセラミックグリーンシートとし、これを適当なサイズにカットし、窒素雰囲気中約1700℃程度の高温で焼成して形成している。
【0028】
更に、セラミックの一例であるジルコニア入り酸化アルミニウムからなるセラミック基板11、11aを作製するには、主成分の酸化アルミニウムを70〜97wt%の範囲にして、これにジルコニア(ZrO)を2〜29.9wt%の範囲で添加し、イットリア、カルシア、マグネシア、セリアのいずれか1種以上の焼結助剤を0.1〜2wt%の範囲で添加し、可塑剤、バインダー、及び溶剤を加えて、例えば、厚さ0.25mmのシート状のセラミックグリーンシートとしている。そして、このセラミックグリーンシートは、適当なサイズにカットし、大気中約1550℃程度で焼成してセラミック基板11、11aを作製している。なお、Alを主成分として、これに上記割合のZrOが添加された焼成体からなるセラミック基板11、11aは、Al単体の基板と熱伝導率を同等程度に保ちながら基板強度、特に曲げ強度を大幅に高めることができる(Al単体では、3.1MPa・m0.5、ジルコニア系アルミナセラミックでは、4.4MPa・m0.5)。また、イットリア、カルシア、マグネシア、セリアのいずれか1種以上を添加することで、基板の焼成温度をAl単体の基板と同等程度に抑えつつ、ZrO結晶粒の靭性を改善することができる。これらによって、セラミック基板11、11aは、AlNの基板より熱伝導率が低下するものの、厚みを薄くすることで熱伝導率の低さを補って、Al単体の基板より優れ、AlNの基板に匹敵する優れた放熱性を有することができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明のパワーモジュール用基板は、高電圧が流れ、大量の熱を発生する半導体素子を実装し、例えば、インバーター用や、自動車部品用等として用いるためのパワーモジュール用基板に利用することができる。
【符号の説明】
【0030】
10、10a:パワーモジュール用基板、11、11a:セラミック基板、12、12a:表銅板、13:裏銅板、14、14a:曲部、15:半導体素子、16:ボンディングワイヤ、17:貫通孔
図1
図2