特許第6282517号(P6282517)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282517
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】形状測定機
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/20 20060101AFI20180208BHJP
【FI】
   G01B5/20 C
【請求項の数】19
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-79997(P2014-79997)
(22)【出願日】2014年4月9日
(65)【公開番号】特開2015-200589(P2015-200589A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2017年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】山本 武
(72)【発明者】
【氏名】松宮 貞行
(72)【発明者】
【氏名】島岡 敦
(72)【発明者】
【氏名】日高 和彦
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 智之
(72)【発明者】
【氏名】森 康則
【審査官】 三好 貴大
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭55−036377(JP,U)
【文献】 特開平11−141537(JP,A)
【文献】 特開2000−074616(JP,A)
【文献】 米国特許第06295866(US,B1)
【文献】 特開2008−180587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00− 5/30
G01B 7/00− 7/34
G01B 21/00−21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物と接触する測定子が設けられた第1の部材と、
一方の端部が前記第1の部材の端部と接合される第2の部材と、
前記第1の部材及び前記第2の部材の回転運動の支点となる回転支点部と、
前記第2の部材の回転運動の変位量を検出する検出部と、
前記回転運動の変位量に応じて、前記回転運動の軸回りのトルクを前記第1の部材及び前記第2の部材に与える弾性部材と、
対向配置された少なくとも2つの磁性部材間の磁力により生じる引力により、前記弾性部材によるトルクと反対方向のトルクを前記第1の部材及び前記第2の部材に与える測定力調整部と、を備える、
形状測定機。
【請求項2】
前記弾性部材は、前記回転支点部に組み込まれる十字ばねであり、
前記十字ばねが前記第1の部材及び前記第2の部材にトルクを与えていない状態で、前記測定力調整部は、前記測定子を被測定物に押し付けるように第1の方向のトルクを前記第1の部材及び前記第2の部材に与える、
請求項1に記載の形状測定機。
【請求項3】
前記十字ばねが前記第1の方向のトルクを前記第1の部材及び前記第2の部材に与える場合、前記十字ばねによるトルクは、前記測定力調整部によるトルクよりも大きく、
前記十字ばねが前記第1の方向と反対の第2の方向のトルクを前記第1の部材及び前記第2の部材に与える場合、前記十字ばねによるトルクは、前記測定力調整部によるトルクよりも小さい、
請求項2に記載の形状測定機。
【請求項4】
前記測定力調整部は、
前記第2の部材に接合された第1の固定部と、
前記回転支点部に対する相対位置が固定された第2の固定部と、
前記第1の固定部に固定された第1の磁性部材と、
前記第1の磁性部材との間で、前記回転運動の周方向の引力が働くように前記第2の固定部に固定された第2の磁性部材と、
前記第1の固定部に固定された第3の磁性部材と、
前記第3の磁性部材との間で、前記回転運動の周方向の引力が働くように前記第2の固定部に固定された第4の磁性部材と、を備え、
前記第3の磁性部材は、前記第1の固定部を介して、前記回転運動の周方向で前記第1の磁性部材と対向して配置される、
請求項3に記載の形状測定機。
【請求項5】
前記第1の磁性部材及び前記第2の磁性部材の一方又は両方は、他方の磁性部材に近づくに従って断面積が小さくなるテーパ形状であり、
前記第3の磁性部材及び前記第4の磁性部材の一方又は両方は、他方の磁性部材に近づくに従って断面積が小さくなるテーパ形状である、
請求項4に記載の形状測定機。
【請求項6】
前記第1の磁性部材及び前記第2の磁性部材の一方又は両方は永久磁石であり、
前記第3の磁性部材及び前記第4の磁性部材の一方又は両方は永久磁石である、
請求項4又は5に記載の形状測定機。
【請求項7】
前記第1の磁性部材と前記第2の磁性部材との間の距離、及び、前記第3の磁性部材と前記第4の磁性部材との間の距離の一方又は両方は、測定条件に応じて可変であり、かつ、被測定物の測定時には一定である、
請求項4乃至6のいずれか一項に記載の形状測定機。
【請求項8】
前記測定力調整部は、
前記第2の部材に接合された第5の磁性部材と、
前記回転運動の周方向と交差する方向に前記第5の磁性部材と離隔して、前記第5の磁性部材との間で引力が働くように配置され、かつ、前記回転支点部に対する相対位置が固定された第6の磁性部材と、を備え、
前記第5の磁性部材と前記第6の磁性部材との間の距離は、前記第6の磁性部材の前記回転運動の周方向の中央部が前記第5の磁性部材と対向する場合に最大となり、
前記第6の磁性部材の前記第5の磁性部材と対向する位置が前記回転運動の周方向に遠ざかるにつれて小さくなる、
請求項3に記載の形状測定機。
【請求項9】
前記第5の磁性部材と前記第6の磁性部材との間に挿入された磁性流体を更に備える、
請求項8に記載の形状測定機。
【請求項10】
前記第5の磁性部材及び前記第6の磁性部材の一方又は両方は永久磁石である、
請求項8又は9に記載の形状測定機。
【請求項11】
前記第5の磁性部材と前記第6の磁性部材との間の距離は、測定条件に応じて可変であり、かつ、被測定物の測定時には一定である、
請求項8乃至10のいずれか一項に記載の形状測定機。
【請求項12】
前記回転運動の周方向と交差する方向に前記第5の磁性部材と離隔して、前記第5の磁性部材との間で引力が働くように配置され、かつ、前記回転支点部に対する相対位置が固定された第7の磁性部材を更に備え、
前記第5の磁性部材と前記第7の磁性部材との間の距離は、前記第7の磁性部材の前記回転運動の周方向の中央部が前記第5の磁性部材と対向する場合に最大となり、
前記第7の磁性部材の前記第5の磁性部材と対向する位置が前記回転運動の周方向に遠ざかるにつれて小さくなり、
前記第6の磁性部材と前記第7の磁性部材とは、前記第5の磁性部材を挟んで対向配置される、
請求項8乃至11のいずれか一項に記載の形状測定機。
【請求項13】
前記第5の磁性部材と前記第7の磁性部材との間に挿入された磁性流体を更に備える、
請求項12に記載の形状測定機。
【請求項14】
前記第5の磁性部材及び前記第7の磁性部材の一方又は両方は永久磁石である、
請求項12又は13に記載の形状測定機。
【請求項15】
前記第5の磁性部材と前記第7の磁性部材との間の距離は、測定条件に応じて可変であり、かつ、被測定物の測定時には一定である、
請求項12乃至14のいずれか一項に記載の形状測定機。
【請求項16】
前記弾性部材は、一端が第2の部材に固定され、他端が前記回転支点部に対して相対位置が固定され、前記測定子を被測定物に押し込む方向のトルクを前記第2の部材に与え、
前記測定力調整部は、
前記第2の部材に接合された第3の固定部と、
前記回転支点部に対する相対位置が固定された第4の固定部と、
前記第3の固定部に固定された第8の磁性部材と、
前記第8の磁性部材との間で、前記回転運動の周方向の引力が働くように前記第4の固定部に固定された第9の磁性部材と、を備える、
請求項3に記載の形状測定機。
【請求項17】
前記第8の磁性部材及び前記第9の磁性部材の一方又は両方は、他方の磁性部材に近づくに従って断面積が小さくなるテーパ形状である、
請求項16に記載の形状測定機。
【請求項18】
前記第8の磁性部材及び前記第9の磁性部材の一方又は両方は永久磁石である、
請求項16又は17に記載の形状測定機。
【請求項19】
前記第8の磁性部材と前記第9の磁性部材との間の距離は、測定条件に応じて可変であり、かつ、被測定物の測定時には一定である、
請求項16乃至18のいずれか一項に記載の形状測定機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状測定機に関し、例えばてこ式検出器を用いた形状測定機に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、てこ式検出器を有する形状測定機が広く用いられている。形状測定機としては、例えば、輪郭形状測定機、表面粗さ測定機、真円度測定機などが知られている。
【0003】
てこ式検出器の回転軸に十字ばねを組み込んだ場合、ヒステリシスが少なく再現性が高い測定値を得ることができる。しかし、測定位置に伴って測定力が変化するため、測定値に偏りが生じやすい。また、ワーク(被測定物)の変形やダメージを抑えるためには低測定力による測定を行うことも考えられるが、応答性(掃引した際に測定子がワーク形状に追従する速度)の点で問題が有る。ただし、低測定力では測定精度はあまり劣化しない。
【0004】
これに対し、てこ式検出器の測定力の変動を抑えるため、測定力を検出して制御を行うことで、測定力を安定化する手法が知られている(特許文献1)。
【0005】
また、弾性ヒンジ機構を用いた計測装置において、磁石を用いて弾性ヒンジの復元特性を調整する技術が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−74616号公報
【特許文献2】特開平11−141537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、発明者らは、上述の手法には以下で説明する問題点が有ることを見出した。特許文献1に記載の手法では、制御に伴って熱が発生するため形状測定機の熱変形などの熱による影響が生じ、測定精度が低下してしまう。かつ、制御の実施に伴う電気的ノイズも生じるので、更なる測定精度の低下を招く。また、制御装置を搭載する必要が有るので、形状測定機の高コスト化を招いてしまう。
【0008】
特許文献2では、そもそも測定力の安定化が考慮されていないので、このままでは形状測定機での測定力の安定化は実現し得ない。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、本発明の目的は、形状測定機の測定力を簡易な構成で安定化することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様である形状測定機は、被測定物と接触する測定子が設けられた第1の部材と、一方の端部が前記第1の部材の端部と接合される第2の部材と、前記第1の部材及び前記第2の部材の回転運動の支点となる回転支点部と、前記第2の部材の回転運動の変位量を検出する検出部と、前記回転運動の変位量に応じて、前記回転運動の軸回りのトルクを前記第1の部材及び前記第2の部材に与える弾性部材と、対向配置された少なくとも2つの磁性部材間の磁力により生じる引力により、前記弾性部材によるトルクと反対方向のトルクを前記第1の部材及び前記第2の部材に与える測定力調整部と、を備えるものである。これにより、弾性部材と測定力調整部とで生じる互いに反対方向の2つのトルクの合成トルクが測定力となる。そして、反対方向の2つのトルクは、検出部が検出する変位量に伴って大きくなるので、合成トルクからなる測定力を変位量にかかわらず安定化することができる。
【0011】
本発明の第2の態様である形状測定機は、上述の形状測定機であって、前記弾性部材は、前記回転支点部に組み込まれる十字ばねであり、前記十字ばねが前記第1の部材及び前記第2の部材にトルクを与えていない状態で、前記測定力調整部は、前記測定子を被測定物に押し付けるように第1の方向のトルクを前記第1の部材及び前記第2の部材に与えるものである。これにより、回転支点部と弾性部材を一体化させ、形状測定機の構成をコンパクトにまとめることができる。
【0012】
本発明の第3の態様である形状測定機は、上述の形状測定機であって、前記十字ばねが前記第1の方向のトルクを前記第1の部材及び前記第2の部材に与える場合、前記十字ばねによるトルクは、前記測定力調整部によるトルクよりも大きく、前記十字ばねが前記第1の方向と反対の第2の方向のトルクを前記第1の部材及び前記第2の部材に与える場合、前記十字ばねによるトルクは、前記測定力調整部によるトルクよりも小さいものである。これにより、検出部が検出する変位量にかかわらず、被測定部に一定方向の測定力を加えることができる。
【0013】
本発明の第4の態様である形状測定機は、上述の形状測定機であって、前記測定力調整部は、前記第2の部材に接合された第1の固定部と、前記回転支点部に対する相対位置が固定された第2の固定部と、前記第1の固定部に固定された第1の磁性部材と、前記第1の磁性部材との間で、前記回転運動の周方向の引力が働くように前記第2の固定部に固定された第2の磁性部材と、前記第1の固定部に固定された第3の磁性部材と、前記第3の磁性部材との間で、前記回転運動の周方向の引力が働くように前記第2の固定部に固定された第4の磁性部材と、を備え、前記第3の磁性部材は、前記第1の固定部を介して、前記回転運動の周方向で前記第1の磁性部材と対向して配置されるものである。これにより、対向する2つの磁性部材の引力を発生させ、かつ、引力の大きさを2つの磁性部材間の距離が変わることで変化させることができる。よって、弾性部材によるトルクと反対方向のトルクを発生させ、かつ、弾性部材によるトルクの大きさの変化に伴って反対方向のトルクの大きさを変化させることができる。
【0014】
本発明の第5の態様である形状測定機は、上述の形状測定機であって、前記第1の磁性部材及び前記第2の磁性部材の一方又は両方は、他方の磁性部材に近づくに従って断面積が小さくなるテーパ形状であり、前記第3の磁性部材及び前記第4の磁性部材の一方又は両方は、他方の磁性部材に近づくに従って断面積が小さくなるテーパ形状であるものである。これにより、対向する2つの磁性部材間の引力の変化を磁性部材の形状により調整することができる。よって、例えば、対向する2つの磁性部材間の距離の変化にともなう引力の変化をより線形にすることも可能となる。
【0015】
本発明の第6の態様である形状測定機は、上述の形状測定機であって、前記第1の磁性部材及び前記第2の磁性部材の一方又は両方は永久磁石であり、前記第3の磁性部材及び前記第4の磁性部材の一方又は両方は永久磁石であるものである。これにより、対向する2つの磁性部材間に引力を生じさせることができる。
【0016】
本発明の第7の態様である形状測定機は、上述の形状測定機であって、前記第1の磁性部材と前記第2の磁性部材との間の距離、及び、前記第3の磁性部材と前記第4の磁性部材との間の距離の一方又は両方は、測定条件に応じて可変であり、かつ、被測定物の測定時には一定であるものである。これにより、被測定物の測定開始に先立って対向する2つの磁性部材間の距離を設定し、測定力の大きさを調整することができる。よって、求められる測定条件に対応して、測定の応答性を調整することができる。
【0017】
本発明の第8の態様である形状測定機は、上述の形状測定機であって、前記測定力調整部は、前記第2の部材に接合された第5の磁性部材と、前記回転運動の周方向と交差する方向に前記第5の磁性部材と離隔して、前記第5の磁性部材との間で引力が働くように配置され、かつ、前記回転支点部に対する相対位置が固定された第6の磁性部材と、を備え、前記第5の磁性部材と前記第6の磁性部材との間の距離は、前記第6の磁性部材の前記回転運動の周方向の中央部が前記第5の磁性部材と対向する場合に最大となり、前記第6の磁性部材の前記第5の磁性部材と対向する位置が前記回転運動の周方向に遠ざかるにつれて小さくなるものである。これにより、対向する2つの磁性部材の引力を発生させ、かつ、引力の大きさを2つの磁性部材間の距離が変わることで変化させることができる。よって、弾性部材によるトルクと反対方向のトルクを発生させ、かつ、弾性部材によるトルクの大きさの変化に伴って反対方向のトルクの大きさを変化させることができる。
【0018】
本発明の第9の態様である形状測定機は、上述の形状測定機であって、前記第5の磁性部材と前記第6の磁性部材との間に挿入された磁性流体を更に備えるものである。これにより、対向する2つの磁性部材間の引力を大きくすることができる。
【0019】
本発明の第10の態様である形状測定機は、上述の形状測定機であって、前記第5の磁性部材及び前記第6の磁性部材の一方又は両方は永久磁石であるものである。これにより、対向する2つの磁性部材間に引力を生じさせることができる。
【0020】
本発明の第11の態様である形状測定機は、上述の形状測定機であって、前記第5の磁性部材と前記第6の磁性部材との間の距離は、測定条件に応じて可変であり、かつ、被測定物の測定時には一定であるものである。これにより、被測定物の測定開始に先立って対向する2つの磁性部材間の距離を設定し、測定力の大きさを調整することができる。よって、求められる測定条件に対応して、測定の応答性を調整することができる。
【0021】
本発明の第12の態様である形状測定機は、上述の形状測定機であって、前記回転運動の周方向と交差する方向に前記第5の磁性部材と離隔して、前記第5の磁性部材との間で引力が働くように配置され、かつ、前記回転支点部に対する相対位置が固定された第7の磁性部材を更に備え、前記第5の磁性部材と前記第7の磁性部材との間の距離は、前記第7の磁性部材の前記回転運動の周方向の中央部が前記第5の磁性部材と対向する場合に最大となり、前記第7の磁性部材の前記第5の磁性部材と対向する位置が前記回転運動の周方向に遠ざかるにつれて小さくなり、前記第6の磁性部材と前記第7の磁性部材とは、前記第5の磁性部材を挟んで対向配置されるものである。これにより、対向する2つの磁性部材の引力を更に発生させ、かつ、引力の大きさを2つの磁性部材間の距離が変わることで変化させることができる。よって、弾性部材によるトルクと反対方向のトルクを発生させ、かつ、弾性部材によるトルクの大きさの変化に伴って反対方向のトルクの大きさを変化させることができる。
【0022】
本発明の第13の態様である形状測定機は、上述の形状測定機であって、前記第5の磁性部材と前記第7の磁性部材との間に挿入された磁性流体を更に備えるものである。これにより、対向する2つの磁性部材間の引力を大きくすることができる。
【0023】
本発明の第14の態様である形状測定機は、上述の形状測定機であって、前記第5の磁性部材及び前記第7の磁性部材の一方又は両方は永久磁石である。これにより、対向する2つの磁性部材間に引力を生じさせることができる。
【0024】
本発明の第15の態様である形状測定機は、上述の形状測定機であって、前記第5の磁性部材と前記第7の磁性部材との間の距離は、測定条件に応じて可変であり、かつ、被測定物の測定時には一定であるものである。これにより、被測定物の測定開始に先立って対向する2つの磁性部材間の距離を設定し、測定力の大きさを調整することができる。よって、求められる測定条件に対応して、測定の応答性を調整することができる。
【0025】
本発明の第16の態様である形状測定機は、上述の形状測定機であって、前記弾性部材は、一端が第2の部材に固定され、他端が前記回転支点部に対して相対位置が固定され、前記測定子を被測定物に押し込む方向のトルクを前記第2の部材に与え、前記測定力調整部は、前記第2の部材に接合された第3の固定部と、前記回転支点部に対する相対位置が固定された第4の固定部と、前記第3の固定部に固定された第8の磁性部材と、前記第8の磁性部材との間で、前記回転運動の周方向の引力が働くように前記第4の固定部に固定された第9の磁性部材と、を備えるものである。これにより、対向する2つの磁性部材の引力を発生させ、かつ、引力の大きさを2つの磁性部材間の距離が変わることで変化させることができる。よって、弾性部材によるトルクと反対方向のトルクを発生させ、かつ、弾性部材によるトルクの大きさの変化に伴って反対方向のトルクの大きさを変化させることができる。
【0026】
本発明の第17の態様である形状測定機は、上述の形状測定機であって、前記第8の磁性部材及び前記第9の磁性部材の一方又は両方は、他方の磁性部材に近づくに従って断面積が小さくなるテーパ形状である。これにより、対向する2つの磁性部材間の引力の変化を磁性部材の形状により調整することができる。よって、例えば、対向する2つの磁性部材間の距離の変化にともなう引力の変化をより線形にすることも可能となる。
【0027】
本発明の第18の態様である形状測定機は、上述の形状測定機であって、前記第8の磁性部材及び前記第9の磁性部材の一方又は両方は永久磁石であるものである。これにより、対向する2つの磁性部材間に引力を生じさせることができる。
【0028】
本発明の第19の態様である形状測定機は、上述の形状測定機であって、前記第8の磁性部材と前記第9の磁性部材との間の距離は、測定条件に応じて可変であり、かつ、被測定物の測定時には一定であるものである。これにより、被測定物の測定開始に先立って対向する2つの磁性部材間の距離を設定し、測定力の大きさを調整することができる。よって、求められる測定条件に対応して、測定の応答性を調整することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、形状測定機の測定力を簡易な構成で安定化することができる。
【0030】
本発明の上述及び他の目的、特徴、及び長所は以下の詳細な説明及び付随する図面からより完全に理解されるだろう。付随する図面は図解のためだけに示されたものであり、本発明を制限するためのものではない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】実施の形態1にかかる形状測定機の構成を模式的に示す正面図である。
図2】実施の形態1にかかる測定力調整部近傍の拡大正面図である。
図3】実施の形態1にかかる形状測定機の測定時の態様を示す正面図である。
図4】実施の形態1にかかる形状測定機に作用する力(トルク)を示すグラフである。
図5】実施の形態2にかかる形状測定機の構成を模式的に示す正面図である。
図6】実施の形態2にかかる測定力調整部近傍の拡大正面図である。
図7】実施の形態2にかかる形状測定機に作用する力(トルク)を示すグラフである。
図8】実施の形態3にかかる形状測定機の構成を模式的に示す正面図である。
図9】実施の形態3にかかる測定力調整部近傍の拡大正面図である。
図10】実施の形態4にかかる形状測定機の構成を模式的に示す正面図である。
図11】実施の形態4にかかる測定力調整部を図10に表示したA方向から見た場合の拡大図である。
図12】実施の形態5にかかる形状測定機の構成を模式的に示す正面図である。
図13】実施の形態5にかかる測定力調整部を図12に表示したB方向から見た場合の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。各図面においては、同一要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略される。
【0033】
実施の形態1
まず、実施の形態1にかかる形状測定機100について説明する。図1は、実施の形態1にかかる形状測定機100の構成を模式的に示す正面図である。形状測定機100は、ステム1(第1の部材とも称する)、測定子2、アーム(第2の部材とも称する)3、検出部4、回転支点部5、測定機本体6及び測定力調整部10を有する。図1では形状測定機100の水平方向(左から右へ向かう方向)をX方向、紙面手前から奥へ向かう方向をY方向、形状測定機100の鉛直方向(鉛直線上を下から上へ向かう方向)をZ方向としている。
【0034】
ステム1は、X方向に延在する部材であり、その先端にはZ(−)側に突出する測定子2を有する。測定子2の先端(図1での測定子2のZ(−)側の端部)は、形状測定の際に被測定物と接触する。
【0035】
アーム3は、X方向に延在する部材である。アーム3の一端(図1でのアーム3のX(−)側の端部)にはステム1が差し込まれ、他端(図1でのアーム3のX(+)側の端部)には検出部4が接合されている。また、ステム1が差し込まれた側のアーム3の端部(図1でのアーム3のX(−)側の端部)近傍が回転支点部5と接合されている。これにより、ステム1及びアーム3は、回転支点部5を中心として(すなわち、Y方向を回転軸として)回転可能に構成されている。なお、図1では、アーム3は、測定時の被測定物との干渉を避けるため、X(+)側に向かうにつれてアーム3が細くなるように、アーム3のZ(−)側の面が傾斜している。しかし、これは測定時の被測定物との干渉を避けるための例であり、アーム3の必須の形状を示すものではない。
【0036】
検出部4は、測定時のアーム3の回転支点部5を支点とするアーム3の基準位置からの回転変位を検出する。なお、基準位置とは、検出部4が検出するアーム3の回転変位が「0」となる位置を指すものとする。
【0037】
回転支点部5は、内部に十字ばね(弾性材とも称する)が組み込まれており、測定機本体6に固定されている。これにより、測定子2が変位してステム1及びアーム3が基準位置から回転変位すると、回転支点部5の十字ばねにより、回転方向とは反対方向へのトルクが生じる。
【0038】
測定力調整部10は、アーム3と測定機本体6との間に設けられ、永久磁石によりアーム3に回転支点部5の十字ばねとは逆向きのトルクを与える機構である。測定力調整部10は、図1では、永久磁石11〜14、アーム側磁石固定部15及び本体側磁石固定部16を有する。
【0039】
アーム側磁石固定部15(第1の固定部とも称する)は、アーム3に固定される。アーム側磁石固定部15のZ(+)側の面には永久磁石11(第1の磁性部材とも称する)が固定され、アーム側磁石固定部15のZ(−)側の面には永久磁石12(第3の磁性部材とも称する)が固定される。
【0040】
本体側磁石固定部16(第2の固定部とも称する)は、測定機本体6に固定される。本体側磁石固定部16では、永久磁石11に対向する位置に永久磁石13(第2の磁性部材とも称する)が固定され、永久磁石12に対向する位置に永久磁石14(第4の磁性部材とも称する)が固定される。
【0041】
本構成では、永久磁石11と永久磁石13との間には、磁力による引力が作用する。永久磁石12と永久磁石14との間には、磁力による引力が作用する。図2は、実施の形態1にかかる測定力調整部10近傍の拡大正面図である。この例では、永久磁石11〜14のZ(+)側の面がN極、Z(−)側の面がS極である。また、永久磁石11〜14は、回転支点部5を軸とするアーム3の回転方向に沿うように並んで配置されることが望ましい。
【0042】
次いで、形状測定機100の動作について説明する。図3は、実施の形態1にかかる形状測定機100の測定時の態様を示す正面図である。測定時には、測定子2は被測定物90に接触する。
【0043】
図4は、実施の形態1にかかる形状測定機100に作用する力(トルク)を示すグラフである。図4では、測定子2の変位量について、基準位置に対して反時計回りの変位を+、基準位置に対して時計回りの変位を−としている。また、トルクに関しては、反時計回りを+、時計回りを−としている。また、図4では、永久磁石11及び13により生じるトルクをN1、永久磁石12及び14により生じるトルクをN2、測定力調整部10により生じるトルク(永久磁石11〜14による合成トルク)をNa、回転支点部5の十字ばねに生じるトルクをNs、測定力をNmとしている。この例では、基準位置において回転支点部5の十字ばねに生じるトルクNsを0としている。
【0044】
ステム1及びアーム3が基準位置にある場合、回転支点部5の十字ばねにはトルクが生じない。この状態では、測定力調整部10の永久磁石11〜14による反時計回りのトルクが生じる。よって、基準位置では、測定力調整部10の永久磁石11〜14による反時計回りのトルクが測定力となる。
【0045】
測定時には、測定子2が被測定物90の形状に応じて変位することで、回転支点部5の十字ばねによりトルク及び測定力調整部10によりトルクも変化する。
【0046】
測定時には、測定子2が被測定物90の形状に応じて変位することで、十字ばねによるトルク及び測定力調整部10によるトルクも変化する。測定子2が+方向(反時計回り)に変位するにつれて、十字ばねによる−方向(時計回り)のトルクが大きくなり、測定力調整部10による+方向(反時計回り)のトルクが大きくなる。ここで、測定子2が+方向(反時計回り)に変位する場合には、被測定物90に測定力が加わるように、回転支点部5の十字ばねによるトルクの大きさが測定力調整部10によるトルクの大きさよりも小さくなるように、回転支点部5の十字ばね及び測定力調整部10が構成される。
【0047】
また、測定子2が−方向(時計回り方向)に変位するにつれて、十字ばねによる+方向(反時計回り)のトルクが大きくなり、測定力調整部10による−方向(時計回り)のトルクが大きくなる。この際、いずれの場合にも、測定力調整部10によるトルクは、十字ばねによるトルクを打ち消すように作用するので、測定子2の変動を抑制し、測定力を安定化することができる。ここで、測定子2が−方向(時計回り)に変位する場合には、被測定物90に測定力が加わるように、回転支点部5の十字ばねによるトルクの大きさが測定力調整部10によるトルクの大きさよりも大きくなるように、回転支点部5の十字ばね及び測定力調整部10が構成される。
【0048】
以上より、測定子2の測定力は、回転支点部5の十字ばねによるトルクと測定力調整部10によるトルクとを合成した+方向のトルクにより生じる。この際、回転支点部5の十字ばねによるトルクは、測定力調整部10によるトルクに対して逆向きである。したがって、本構成によれば、弾性部材(十字ばね)のみを用いる場合と比べて、測定力を軽減できることが理解できる。
【0049】
また、図4に示すように、回転支点部5の十字ばねによるトルクは基準位置からの変位に伴って大きくなるのに対し、測定力調整部10によるトルクも基準位置からの変位に伴って大きくなる。よって、本構成によれば、基準位置からの変位量にかかわらず、測定力の安定化を実現することができる。
【0050】
なお、形状測定機100で形状測定を行うにあたっては、測定力Nmの変動がなるべく小さい、平坦な範囲で行うことが望ましい。このような範囲で形状測定を行うことで、測定力をほぼ一定に保つことができる。その結果、測定子2の先端と被測定物との間に生じる摩擦力をほぼ一定にすることができるので、摩擦力に起因する測定誤差を抑制し、より高精度な測定を実現することができる。これは、本実施の形態及び以降の実施の形態にかかる形状測定機において、同様である。
【0051】
また、測定力Nmの平坦部分を+側にするためには、基準位置において、回転支点部5の十字ばねに生じるトルクNsをプラス側にシフトさせる必要がある。なお、上述の通り、基準位置とは、検出部4が検出する変位が0となる位置のことを意味する。つまり、十字ばねを用いる場合、ステム1が水平位置よりも少しZ(+)側に回転した位置が基準位置となる。または、基準位置において測定力調整部10によるトルクが生じるように、測定力調整部10の永久磁石の取付け位置を決定してもよい。換言すれば、基準位置において、被測定物に測定力を与えることができるように、十字ばね及び測定力調整部の両方又は一方によるトルクが生じるように、形状測定機の設計を行う必要が有る。これは、本実施の形態及び以降の実施の形態にかかる形状測定機の設計において、同様である。
【0052】
よって、本構成によれば、磁性部材を用いて構成される測定力調整部を形状測定機に設ける簡易な構成により、形状測定機の測定力の安定化を実現できる。加えて、本構成では、制御による熱や電気的ノイズは生じないので、測定精度の低下を招かずに測定力を安定化できる。
【0053】
なお、本実施の形態では、永久磁石11〜14が存在するものとして説明したが、これは例示に過ぎない。永久磁石11及び13の一方は、磁性材料からなる部材であってもよい。永久磁石12及び14の一方は、磁性材料からなる部材であってもよい。本実施の形態及び以降の実施の形態では、永久磁石と磁性材料からなる部材とを、磁性部材とも称するものとする。
【0054】
実施の形態2
実施の形態2にかかる形状測定機200について説明する。図5は、実施の形態2にかかる形状測定機200の構成を模式的に示す正面図である。形状測定機200は、ステム1、測定子2、アーム3、検出部4、測定機本体6、回転支点部7、スプリング8(弾性材とも称する)及び測定力調整部20を有する。形状測定機200のステム1、測定子2、アーム3、検出部4、測定機本体6は、実施の形態1にかかる形状測定機100と同様であるので、説明を省略する。
【0055】
形状測定機200では、形状測定機100の回転支点部5が回転支点部7に置換されている。回転支点部7は、回転支点部5と異なり、十字ばねが組み込まれておらず、トルクは生じない。
【0056】
アーム3と測定機本体6との間には、アーム3に反時計回りのトルクを与えるスプリング8が取り付けられている。
【0057】
図6は、実施の形態2にかかる測定力調整部20近傍の拡大正面図である。測定力調整部20は、アーム3と測定機本体6との間に設けられ、スプリング8によるトルクを軽減する機構である。測定力調整部20は、永久磁石21及び22、アーム側磁石固定部25(第3の固定部とも称する)及び本体側磁石固定部26(第4の固定部とも称する)を有する。永久磁石21及び22(それぞれ第8の磁性部材及び第9の弾性部材とも称する)は、それぞれ形状測定機100の測定力調整部10における永久磁石12及び14に対応する。アーム側磁石固定部25及び本体側磁石固定部26は、それぞれ形状測定機100の測定力調整部10におけるアーム側磁石固定部15及び本体側磁石固定部16に対応する。永久磁石21及び22により生じるトルクは、測定力調整部10の永久磁石12及び14により生じるトルクと同様であるので、説明を省略する。
【0058】
図7は、実施の形態2にかかる形状測定機200に作用する力(トルク)を示すグラフである。図7では、測定子2の変位量について、基準位置に対して反時計回りの変位を+、基準位置に対して時計回りの変位を−としている。また、トルクに関しては、反時計回りを+、時計回りを−としている。また、図7では、測定力調整部20に生じるトルク(永久磁石21及び22によるトルク)をNa、スプリング8に生じるトルクをNs、測定力をNmとしている。
【0059】
ステム1及びアーム3が基準位置にある場合、スプリング8による反時計回り(+)のトルクが生じ、かつ、測定力調整部20による時計回り(−)のトルクが生じる。測定力Nmは、これらのトルク(N3、Ns)の合成トルクで与えられ、反時計回り(+)となる。
【0060】
測定時には、測定子2が被測定物90の形状に応じて変位することで、スプリング8によるトルク及び測定力調整部20によるトルクが変化する。
【0061】
測定子2が+方向(反時計回り)に変位するにつれて、スプリング8による+方向(反時計回り)のトルクが小さくなり、測定力調整部20による−方向(時計回り)のトルクも小さくなる。測定子2が−方向(時計回り方向)に変位するにつれて、スプリング8による反時計回り(+)のトルクが大きくなり、測定力調整部20の−方向(時計回り)のトルクも大きくなる。
【0062】
この際、いずれの場合にも、測定力調整部20によるトルクはスプリング8によるトルクを打ち消すように作用するので、測定子2の変動を抑制し、測定力を安定化することができる。ここで、被測定物90に測定力が加わるように、スプリング8によるトルクの大きさが測定力調整部20によるトルクよりも小さくならないように、スプリング8及び測定力調整部20が構成される。
【0063】
以上より、測定子2の測定力は、スプリング8によるトルクと測定力調整部20によるトルクとを合成した+方向のトルクにより生じる。この際、スプリング8によるトルクは、測定力調整部20によるトルクに対して逆向きである。したがって、本構成によれば、実施の形態1と同様に、弾性部材(スプリング)のみを用いる場合と比べて、測定力を軽減できることが理解できる。
【0064】
また、図7に示すように、スプリング8によるトルクは基準位置からの変位に伴って変化するのに対し、測定力調整部20によるトルクも基準位置からの変位に伴って変化する。よって、本構成によれば、基準位置からの変位量にかかわらず、測定力の安定化を実現することができる。
【0065】
なお、本実施の形態では、永久磁石21及び21が存在するものとして説明したが、これは例示に過ぎない。永久磁石21及び22の一方は、磁性材料からなる部材であってもよい。
【0066】
実施の形態3
実施の形態3にかかる形状測定機300について説明する。図8は、実施の形態3にかかる形状測定機300の構成を模式的に示す正面図である。形状測定機300は、実施の形態1にかかる測定力調整部10を測定力調整部30に置換した構成を有する。形状測定機300のその他の構成は、形状測定機100と同様であるので、説明を省略する。
【0067】
図9は、実施の形態3にかかる測定力調整部30近傍の拡大正面図である。測定力調整部30は、アーム3と測定機本体6との間に設けられ、永久磁石によりアーム3に回転支点部5の十字ばねとは逆向きのトルクを与える機構である。測定力調整部30は、実施の形態1にかかる測定力調整部10の永久磁石13及び14を、それぞれ永久磁石33及び34に置換した構成を有する。
【0068】
永久磁石33(第2の磁性部材とも称する)は、永久磁石13と異なり、永久磁石11に近づくにつれて幅が狭くなるテーパ形状(又は錐形状)である。永久磁石34(第4の磁性部材とも称する)は、永久磁石14と異なり、永久磁石12に近づくにつれて幅が狭くなるテーパ形状(又は錐形状)である。
【0069】
以上、本構成によれば、測定力調整部30での永久磁石の形状を変更することで、磁力により生じる測定力調整部30でのトルクを細やかに調整することができる。これにより、測定力調整部30によるトルクを測定子2の変位対してより線形に変化させることができる。その結果、実施の形態1と比べ、基準位置からの変位量にかかわらず、測定力の更なる安定化を実現することができる。
【0070】
なお、本実施の形態では、永久磁石33及び34がテーパ形状であるとしたが、永久磁石11及び12をテーパ形状としてもよい。また、永久磁石11、12、33及び34をテーパ形状としてもよい。
【0071】
実施の形態4
実施の形態4にかかる形状測定機400について説明する。図10は、実施の形態4にかかる形状測定機400の構成を模式的に示す正面図である。形状測定機400は、実施の形態1にかかる測定力調整部10を測定力調整部40に置換した構成を有する。形状測定機400のその他の構成は、形状測定機100と同様であるので、説明を省略する。
【0072】
図11は、実施の形態4にかかる測定力調整部40を図10に表示したA方向から見た場合の拡大図である。測定力調整部40は、アーム3と測定機本体6との間に設けられ、永久磁石によりアーム3に回転支点部5の十字ばねとは逆向きのトルクを与える機構である。測定力調整部40は、永久磁石41〜43(それぞれ、第5〜第7の磁性部材とも称する)を有する。
【0073】
永久磁石41は、アーム3からZ(+)側に延びる固定部3Aの上端(Z(+)側の端部)に取り付けられる。永久磁石41のY(+)側の面がS極、Y(−)側の面がN極となる。
【0074】
永久磁石42及び43は、測定機本体6のZ(−)面に、Y方向に離隔して取り付けられる。永久磁石42及び43のY(+)側の面がS極、Y(−)側の面がN極となる。永久磁石42及び43は、基準位置(図11の永久磁石41の位置)で永久磁石41との間の距離が最大となり、かつ、基準位置からZ(+)側及びZ(−)側に行くにつれて永久磁石41との間の距離が徐々に小さくなるように成形されている。
【0075】
以上より、測定力調整部40では、実施の形態1と同様に、測定子2の変位に伴って、磁力により生じる測定力調整部40によるトルクを大きくすることができる。よって、実施の形態1と同様に、測定力の低減と安定化を実現することができる。
【0076】
なお、上述では、永久磁石42及び43が存在するものとして説明したが、永久磁石42及び43のいずれか一方を設ければ、実施の形態1と同様に、測定子2の変位に伴って、磁力により生じる測定力調整部によるトルクを大きくすることができる。
【0077】
本実施の形態では、永久磁石41〜43が存在するものとして説明したが、これは例示に過ぎない。永久磁石41及び42の一方は、磁性材料からなる部材であってもよい。永久磁石41及び43の一方は、磁性材料からなる部材であってもよい。
【0078】
実施の形態5
実施の形態5にかかる形状測定機500について説明する。図12は、実施の形態5にかかる形状測定機500の構成を模式的に示す正面図である。形状測定機500は、実施の形態4にかかる測定力調整部40を測定力調整部50に置換した構成を有する。形状測定機500のその他の構成は、形状測定機400と同様であるので、説明を省略する。
【0079】
図13は、実施の形態5にかかる測定力調整部50を図12に表示したB方向から見た場合の拡大図である。測定力調整部50は、測定力調整部40と同様に、アーム3と測定機本体6との間に設けられ、永久磁石によりアーム3に回転支点部5の十字ばねとは逆向きのトルクを与える機構である。但し、測定力調整部50は、測定力調整部40に磁性流体51及び52を追加した構成を有する。
【0080】
磁性流体51は、永久磁石41と永久磁石42との間に充填される。磁性流体52は、永久磁石41と永久磁石43との間に充填される。磁性流体51及び52は、永久磁石41が変位すると、永久磁石41の磁力に引き寄せられ、永久磁石41とともに移動する。
【0081】
以上より、測定力調整部50では、永久磁石の間に磁性流体が存在するので、磁力を強めることができる。その結果、実施の形態4と比べ、測定力調整部の小型化を実現することができる。
【0082】
なお、上述では、磁性流体51及び52が存在するものとして説明したが、磁性流体51及び52のいずれか一方を設ければ、実施の形態4と同様に、測定子2の変位に伴って、磁力により生じる測定力調整部によるトルクを大きくすることができる。
【0083】
その他の実施の形態
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。上述の実施の形態では、対向配置される磁性部材の間の距離は、測定の目的に応じて変化させることができる。すなわち、対向配置される磁性部材の間の距離を可変とする機構を上述の実施の形態にかかる測定力調整部に付加し、測定の開始に先立って、対向配置される磁性部材の間の距離を適宜変更させてもよい。すなわち、上述の実施の形態において、永久磁石11と永久磁石13との間の距離、及び、永久磁石12と永久磁石14との間の距離、永久磁石21と永久磁石22との間の距離、永久磁石11と永久磁石33との間の距離、永久磁石12と永久磁石34との間の距離、永久磁石41と永久磁石42との間の距離、永久磁石41と永久磁石43との間の距離は、それぞれ可変とすることができる。対向する磁性部材間の距離を変えることで、大きな測定力が必要な測定に対応したり、測定力を小さくすることで、ワーク(被測定物)の変形やダメージを抑えることが可能である。
【0084】
実施の形態2にかかる形状測定機において、対向する磁性部材(永久磁石21及び22)の一方又は両方を、実施の形態3と同様にテーパ形状とすることができる。また、実施の形態2にかかる形状測定機に対して、実施の形態4にかかる測定力調整部40又は実施の形態5にかかる測定力調整部50を適用することも可能である。
【0085】
上述の実施の形態では、ステム1(第1の部材)とアーム3(第2の部材)とが独立しているが、これは例示に過ぎない。よって、ステム1(第1の部材)とアーム3(第2の部材)とは、一体の部材とすることができる。
【符号の説明】
【0086】
100、200、300、400、500 形状測定機
1 ステム
2 測定子
3 アーム
3A 固定部
4 検出部
5 回転支点部
6 測定機本体
8 スプリング
10、20、30、40、50 測定力調整部
11〜14、21、22、33、34、41〜43 永久磁石
15、25 アーム側磁石固定部
16、26 本体側磁石固定部
51、52 磁性流体
90 被測定物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13