(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シールされた前面部と背面部とが剥離される剥離強度が、包装袋の周囲にて前面部と背面部とをシールしたシール部よりも低い易剥離シール部を有する分割シール部で前記前面部と前記背面部とをシールすることによって該包装袋の内部を複数の部屋に分けた包装袋の製造方法であって、
重ね合わされた帯状のフィルム材をその長手方向に連続的に送り、前記フィルム材の長手方向に直交する幅方向の所定の位置に、一対のヒートローラで前記フィルム材の長手方向に連続的にヒートシールするヒートシール工程を含み、
一対の前記ヒートローラの少なくとも1つのヒートローラは、回転軸と外周面との距離が相対的に長い領域と、前記回転軸と前記外周面との距離が相対的に短い領域とが該ヒートローラの周方向の異なる領域に設けられている異形ヒートローラであり、
前記長い領域が、前記フィルム材を相対的に高い圧力で挟み込むことによって、剥離強度が相対的に高い強シール部を形成し、前記短い領域が、前記フィルム材を相対的に低い圧力で挟み込むことによって、剥離強度が相対的に低い易剥離シール部を形成することを特徴とする包装袋の製造方法。
前記異形ヒートローラの前記回転軸と前記外周面との距離と、前記異形ヒートローラの回転数とが、1つの前記包装袋に形成される前記易剥離シール部の数に応じて設定されている、請求項1又は2に記載の包装袋の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に提案されている包装袋は、分割シール部が延びる長手方向の全長にわたって剥離強度が相対的に低い。そのため、包装袋に予期しない圧力が加わったとき、分割シール部が剥離するリスクはその全長にわたって存在する。特に、複数の包装袋を積み重ねて輸送する場合、包装袋に予期しない外力が加わることにより、分割シールが剥離するおそれが高い。
【0008】
特許文献2に提案されている包装袋も同様に、輸送時等に弱シール部が剥離するリスクは、弱シール部の全長にわたって存在する。また、特許文献2に提案されている包装袋の製造方法は、弱シール部を低い温度でシールしているため、シールする温度の管理が煩雑になる。
【0009】
前面部と背面部とが剥離する強度が相対的に低いシール部を分割シール部に部分的に設ける構成は、分割シール部の全体で前面部と背面部とが剥離するリスクを、前面部と背面部とが部分的に剥離することに低減させることができる。
【0010】
上述したように特許文献1は、端部シール部のシール幅を広くして高い剥離強度を形成し、分割シール部のシール幅を狭くすることによって低い剥離強度を構成している。この考え方を参考にして、分割シール部にシール幅が部分的に狭い領域を設けることによって前面部と背面部とが剥離する強度が相対的に低いシール部を分割シール部に部分的に設けることが考えられる。一方、特許文献2は、シール温度を包装袋の周囲を閉じている強シール部のシール温度よりも低く設定することによって弱シール部を形成している。この考え方を参考にして、高いシール温度でシールする部分と、低いシール温度でシールする部分とを分けて分割シール部を形成することによって、剥離強度が相対的に低いシール部を分割シール部に部分的に設けることが考えられる。
【0011】
ところが、広いシール幅の部分と狭いシール幅の部分を形成することによって剥離強度の高い部分と低い部分とを形成する方法は、例えば、シール幅が広い部分と狭い部分とを異なるシールバーでシールすることが必要になる。そのため、分割シール部を形成する工程が複雑になる。一方、高い温度でシールする部分と低い温度でシール部分とを形成することによって剥離強度の強弱を形成する方法は、異なる温度でシールすることが必要になる。そのため、温度の管理が複雑になる。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、包装袋の内部を複数の部屋に分けるためのシール部に、剥離強度が相対的に低い易剥離シール部を、分割シール部の長手方向の一部又は複数部分に形成された包装袋を効率よく形成することができる包装袋の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明に係る包装袋の製造方法は、シールされた前面部と背面部とが剥離される剥離強度が包装袋の周囲にて前面部と背面部とをシールしたシール部よりも低い易剥離シール部を有する分割シール部で該包装袋の正面部と背面部とをシールすることによって該包装袋の内部を複数の部屋に分けた包装袋の製造方法であって、重ね合わされた帯状のフィルム材をその長手方向に連続的に送り、前記フィルム材の長手方向に直交する幅方向の所定の位置に、一対のローラで前記フィルム材の長手方向に連続的にヒートシールするヒートシール工程を含み、一対の前記ローラの少なくとも1つのローラは、回転軸と外周面との距離が相対的に長い領域と、前記回転軸と前記外周面との距離が相対的に短い領域とが該ローラの周方向の異なる領域に設けられている異形ヒートローラであり、前記長い領域が、前記フィルム材を相対的に高い圧力で挟み込むことによって、剥離強度が相対的に高い強シール部を形成し、前記短い領域が、前記フィルム材を相対的に低い圧力で挟み込むことによって、剥離強度が相対的に低い易剥離シール部を形成することを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、ヒートシール工程が異形ヒートローラを用いて上記のようにフィルム材に分割シール部を形成するので、剥離強度が相対的に高い強シール部と剥離強度が相対的に低い易剥離シール部とが、分割シール部の長手方向に交互に現れるように分割シール部を形成することができる。そのため、易剥離シール部が分割シール部の一部又は複数部分に効率的に形成することができる。その結果、完成された包装袋に不測の圧力がかかった場合、分割シール部が剥離するリスクは、分割シール部の全長のなかの易剥離シール部が形成されている部分に限定することができる。
【0015】
本発明に係る包装袋の製造方法において、前記短い領域の外周面が、前記フィルム材の長手方向に直交する方向に蛇行する波形シール面を有するように構成することができる。
【0016】
この発明によれば、波形の易剥離シール部を包装袋に形成することができる。この波形の易剥離シール部は、波形の山の部分又は谷の部分に応力が集中するので、直線状の易剥離シール部よりも容易に剥離させることができる。
【0017】
本発明に係る包装袋の製造方法において、前記異形ヒートローラに設けられた、前記短い領域の数が、完成される1つの前記包装袋に形成される前記易剥離シール部の数に対応し、前記ヒートシール工程は、1つの前記包装袋の上縁と下端とを結ぶ高さ又は両側縁同士を結ぶ幅に相当する距離だけ前記フィルム材が該フィルム材の長手方向に送られる間に、前記異形ヒートローラを1回転させるように構成することができる。
【0018】
この発明によれば、1つの包装袋の形成される易剥離シール部の数と、異形ヒートローラの外周面のうち上述した短い領域の数とが一致しているので、異形ヒートローラを1回転させるだけで、所望の数の易剥離シール部を1つの包装袋に形成することができる。異形ヒートローラを1回転させるだけで、所望の数の易剥離シール部を1つの包装袋に形成することができるので、異形ヒートローラの回転速度とフィルム材を送る速度の制御を容易に行うことができる。
【0019】
本発明に係る包装袋の製造方法において、前記異形ヒートローラの前記回転軸と前記外周面との距離と、前記異形ヒートローラの回転数とが、1つの前記包装袋に形成される前記易剥離シール部の数に応じて設定されるように構成することができる。
【0020】
この発明によれば、異形ヒートローラの回転軸と外周面との距離と、異形ヒートローラ又は異形ヒートローラの回転数とを変えることによって、1つの包装袋に所望の数の易剥離シール部を形成することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る包装袋の製造方法によれば、包装袋の内部を複数の部屋に分割する分割シール部に、剥離強度が相対的に低い易剥離シール部を、分割シール部の長手方向に部分的に形成された包装袋を効率よく形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本発明の技術的範囲は、以下の記載や図面にのみ限定されるものではない。
【0024】
[基本構成]
本発明に係る包装容器の製造方法は、
図1から
図3に示すように、シールされた前面部2と背面部3とが剥離される剥離強度が、包装袋1の周囲にて前面部2と背面部3とをシールしたシール部11,12,13よりも低い易剥離シール部21,22を有する分割シール部15で前面部2と背面部3とをシールすることによって包装袋1の内部を複数の部屋8,9に分けた包装袋の製造方法である。
【0025】
この包装袋の製造方法は、
図2に示すように、重ね合わされた帯状のフィルム材30をその長手方向に連続的に送り、フィルム材30の長手方向に直交する幅方向の所定の位置に、一対のローラ60でフィルム材30の長手方向に連続的にヒートシールするヒートシール工程を含んでいる。一対のヒートローラ60の少なくとも1つのヒートローラ60は、
図3に示すように、回転軸64と外周面63との距離が相対的に長い領域61と、回転軸64と外周面との距離が相対的に短い領域62とがヒートローラ60の周方向の異なる領域に設けられている異形ヒートローラである。
【0026】
本明細書において、異形ヒートローラとは、次の3つのタイプのヒートローラを意味する。第1タイプの異形ヒートローラは、回転軸と外周面との距離が相対的に長い領域(以下、単に「長い領域」ということがある。)と、回転軸と外周面との距離が相対的に短い領域(以下、単に「短い領域」ということがある。)とが周方向に組み合わされて外周面が構成されたヒートローラを意味する。この異形ヒートローラの代表例は、周方向の一定の範囲で半径が一定である扇状の部分と、その扇状の部分の半径にさらに一定の距離を加えた半径を有する扇状の部分とにより構成されたヒートローラである。第2タイプの異形ヒートローラは、横断面の形状が楕円であるヒートローラである。第3タイプの異形ヒートローラは、横断面の形状が円形であり、ヒートローラの回転軸がヒートローラ自体の中心よりも外側にずれた位置にあるヒートローラである。
【0027】
ヒートシール工程では、長い領域61が、フィルム材30を相対的に高い圧力で挟み込むことによって、剥離強度が相対的に高い強シール部51を形成している。一方、短い領域62が、フィルム材30を相対的に低い圧力で挟み込むことによって、剥離強度が相対的に低い易剥離シール部52を形成している。
【0028】
本発明に係る包装袋の製造方法によれば、包装袋1の内部を複数の部屋8,9に分割する分割シール部15に、剥離強度が相対的に低い易剥離シール部21,22を、分割シール部15の長手方向に部分的に形成された包装袋1を効率よく形成することができるという特有の効果を奏する。
【0029】
[易剥離シール部を備えた包装袋の構成の概要]
本発明に係る包装袋の製造方法によって製造された包装袋1の構成の概要を、
図1を参照して説明する。
【0030】
包装袋1は、二つ折りされた一枚のフィルム材によって構成されている。二つ折りされた一方の面は前面部2として構成され、二つ折りされた他方の面は背面部3として構成されている。包装袋1の上端4は、フィルム材の二つ折りされた折り線4aにより構成されている。これに対し、包装袋1の下端5は、前面部2と背面部3とがヒートシールされたヒートシール部13によって閉じられている。また、包装袋の両側縁6,7は、前面部2と背面部3とがヒートシールされたヒートシール部11,12によって閉じられている。包装袋1の下端5を閉じているヒートシール部13及び両側縁6,7を閉じているヒートシール部11,12は、前面部2と背面部3とが剥離される剥離強度が相対的に高い強シール部である。
【0031】
この包装袋1は、さらに、分割シール部15を備えている。この分割シール部15は、包装袋1の内部を上側の部屋8と下側の部屋9とに分けている。
【0032】
分割シール部15は、前面部2と背面部3とが包装袋1の幅方向に延びるようにヒートシールされることによって形成されており、包装袋1の両側縁6,7同士を結んでいる。この分割シール部15は、剥離強度が相対的に高い強シール部16,17,18と、剥離強度が相対的に低い易剥離シール部21,22とが分割シール部15が延びる長手方向に交互に現れるようにして形成されている。分割シール部15において、直線状に延びているヒートシール部は剥離強度が相対的に高い強シール部16,17,18であり、波形のヒートシール部は剥離強度が相対的に低い易剥離シール部21,22である。
【0033】
具体的には、包装袋1の各側縁6,7と、これらの各側縁6,7よりも内側の点P1,P2との間に位置するヒートシール部は、剥離強度が相対的に高い強シール部16,17である。この強シール部16,17は直線状にそれぞれ延びている。この強シール部16,17よりも包装袋1の中央側に配置された点P1と点Q1との間のヒートシール部及び点P2と点Q2との間のヒートシール部は、剥離強度が相対的に低い易剥離シール部21,22である。この易剥離シール部21,22は波形をなしている。包装袋1の幅方向の中央部に位置し、易剥離シール部同士の間に配置された、点Q1と点Q2との間に設けられたヒートシール部は、剥離強度が相対的に高い強シール部18である。この強シール部18は、直線状に延びている。
【0034】
図1に示す包装袋1は、易剥離シール部21,22が包装袋1の上下方向に蛇行して波形をなしているので、包装袋1に圧力が加えられたとき、易剥離シール部21,22に生じる応力が波形の山の位置又は谷の位置に集中する。そのため、波形に形成された易剥離シール部21,22は、直線状に延びる易剥離シール部よりも容易に剥離される。
【0035】
なお、
図1に示した包装袋1は、二つ折りにされたフィルム材を用いて製造されている。しかしながら、包装袋は、2枚のフィルム材で前面部と背面部とを構成するように製造することもできる。
【0036】
また、易剥離シール部は、
図1に示す包装袋1のように、波形に形成することには限定されず、直線状に延びるように形成してもよい。また、
図1は、易剥離シール部21,22を2箇所に備えている包装袋1を一つの例として示しているが、易剥離シール部は2箇所に設けることには限定されず、1箇所だけに設けたり、3箇所以上に設けたりすることもできる。
【0037】
[分割シール部を備えた包装袋の製造方法]
分割シール部を備えた包装袋の製造方法、特に、分割シール部を形成する工程を
図2〜
図4を参照して説明する。
【0038】
この包装袋の製造方法は、
図2に示すように、帯状のフィルム材30がその幅方向の中央で折り畳まれ、二枚重ねにされた状態でフィルム材30の長手方向に連続的に送る工程を有している。帯状のフィルム材30は、例えば、フィルム材30が巻かれたフィルムロール(図示せず)から送り出され、
図2の状態に至るまでの途中の工程で幅方向の中心で折り畳まれて、二枚重ねの状態にされる。
図2において、帯状のフィルム材30は、
図2の上側の位置に折り線34を有し、この折り線34の位置で折り畳まれて完成される包装袋1の前面部2として構成される領域31と、完成される包装袋1の背面部3として構成される領域32とが重ね合わされている。なお、特に図面には示していないが、フィルム材30は、別体として設けられた2枚の帯状のフィルム材を重ね合わせることで二枚重ねにしてもよい。
【0039】
フィルム材30を連続的に送る工程は、完成される包装袋1の側縁6,7として構成される部分を閉じるヒートシール部41を形成する工程を備えている。また、フィルム材30を連続的に送る工程は、完成される包装袋1の下端5として構成される部分を閉じるヒートシール部43を形成するシール工程を備えている。さらに、フィルム材30を連続的に送る工程は、完成される包装袋1の内部を複数の部屋8,9に分割するための分割シール部45を形成するシール工程を備えている。
【0040】
フィルム材30は、フィルム材30の幅方向の端縁35同士が一致されている。ヒートシール部43は、一致された端縁35同士がフィルム材30の長手方向にヒートシールされることにより形成される。このヒートシール部43は、例えば、二枚重ねにされたフィルム材30の一面側と他面側とから一対の図示しないヒートローラで挟み込むと共に、所定の温度に加熱することによって形成される。換言すれば、ヒートシール部43は、
図2の紙面の表面側と裏面側からフィルム材30を図示しないヒートローラで挟み込み、挟み込まれたフィルム材30を所定の温度に加熱することによって形成される。ヒートシールされたフィルム材30の端縁35は、例えば、完成された包装袋1の下端5として構成される。また、ヒートシール部43は、完成された包装袋1の下端5を閉じるヒートシール部13として構成される。なお、ヒートシール部43は、ヒートローラにかえてシールバーで形成してもよい。
【0041】
また、フィルム材30は、送られる方向に一定の間隔を空けて、フィルム材30が送られる方向に直交する方向に延びる帯状のヒートシール部41が順次に形成される。換言すれば、二枚重ねの状態にされたフィルム材30は、フィルム材30の長手方向に一定の間隔を空けて、フィルム材30の幅方向に延びる帯状のヒートシール部41が順次に形成される。このヒートシール部41は、例えば、フィルム材30の一面側と他面側、換言すれば、
図2の紙面における表面側と裏面側とから図示しないシールバーで挟み込むと共に、所定の温度に加熱することによって形成される。ヒートシール部41は、例えば、完成された包装袋1の側縁6,7のヒートシール部11,12として構成される。
【0042】
フィルム材30は、さらに、分割シール部45が形成される。この分割シール部45は、フィルム材30が送られる方向に直線状に延びるように形成される。また、分割シール部45は、フィルム材30が送られる方向に対し直交する方向(フィルム材30の幅方向)のあらかじめ設定された位置に形成される。
図2に示す例では、分割シール部45は、フィルム材30が送られる方向に直交する方向(フィルム材30の幅方向)の中心よりも、フィルム材30が折り畳まれた折り線34側にずれた位置に形成されている。
【0043】
[第1タイプの異形ヒートローラを用いて分割シール部を形成する場合]
この分割シール部45は、例えば、
図3に示す一対の異形ヒートローラ60によって形成される。異形ヒートローラ60は、二枚重ねされたフィルム材30の一面側と他面側とに1つずつ配置されており、各異形ヒートローラ60の外周面63同士が対向されている。この2つの異形ヒートローラ60は、対向する外周面63同士の間に送り込まれたフィルム材30を挟み込むと共に所定の温度に加熱することによってヒートシールする。
【0044】
一対の異形ヒートローラ60は、回転軸64と外周面63との距離が長い領域61と、回転軸64と外周面63との距離が短い領域62とが、周方向に組み合わされて構成されている。
図3に示す一対の異形ヒートローラ60は、1つの例を示したものであり、各異形ヒートローラ60は、周方向の一定の範囲で半径が一定である扇状の部分(短い領域62)と、その扇状の部分の半径にさらに一定の距離を加えた半径を有する扇状の部分(長い領域61)とが、周方向に交互に配置されて構成されている。
【0045】
なお、
図3は異形ヒートローラ60の長い領域61と短い領域62とを区別し易くするために、回転軸64と外周面63との距離が長い領域61と短い領域62とで極端に異なる長さになるように図示している。しかしながら、回転軸64と外周面63との距離は、長い領域61と短い領域62とで極端に大きな差はない。そのため、長い領域61同士が対向したときに、長い領域61同士が干渉することがなく、かつ、短い領域62同士が対向したときに、異形ヒートローラ60とフィルム材30との間に隙間が形成されることがない。このことは、
図5に示す一対のヒートローラ60,70、
図6及び
図7に示した異形ヒートローラ80,90、
図8(A)に示した一対のヒートローラ100,105、
図8(B)に示した一対のヒートローラ110,115、及び
図9に示した一対のヒートローラ120についても同じである。
【0046】
一対の異形ヒートローラ60は、対向する外周面63同士の間に送り込まれたフィルム材30を挟み込むときの圧力を変化させることによって、ヒートシールされたフィルム材30の剥離強度に強弱を与えている。
【0047】
具体的には、
図3(A)に示すように、長い領域61同士でフィルム材30を挟み込むとき、一対の異形ヒートローラ60は、相対的に高い圧力でフィルム材30を挟み込む。そのため、一対の異形ヒートローラ60は、フィルム材30に剥離強度が相対的に高い強シール部51を形成する。一方、
図3(B)に示すように、短い領域62同士でフィルム材30を挟み込むとき、一対の異形ヒートローラ60は、相対的に低い圧力でフィルム材30を挟み込む。そのため、一対の異形ヒートローラ60は、フィルム材30に剥離強度が相対的に低い易剥離シール部52を形成する。
【0048】
各異形ヒートローラ60は、回転軸64を中心にそれぞれ回転するため、長い領域61と短い領域62とでフィルム材30を交互に挟み込む。そのため、剥離強度が相対的に高い強シール部51と剥離強度が相対的に低い易剥離シール部52とが分割シール部45の長手方向に交互に形成される。長い領域61の半径が一定であり、且つ短い領域62の半径も一定であるため、フィルム材30は、各領域61,62で一定の圧力で挟み込まれる。また、長い領域61と短い領域62とは、連続的(段差がなく)につながれているので長い領域61と短い領域62との境界部分では、圧力が連続的に変化する。各異形ヒートローラ60は、包装袋1の1つ分に相当する長さのフィルム材30が送られる間にそれぞれ1回転し、完成される包装袋1の2箇所に相当する位置に易剥離シール部52を形成する。
【0049】
図1に示した包装袋1の易剥離シール部21,22は、包装袋1の上下方向に蛇行する波形をなしている。
図4は、この易剥離シール部21,22を形成する異形ヒートローラ60の一例を示している。
図4に示す異形ヒートローラ60は、外周面63が異形ヒートローラ60の幅方向に蛇行する波形シール面65を備えている。この波形シール面65は、異形ヒートローラ60の周方向において、回転軸64と異形ヒートローラ60の外周面63との距離が相対的に短い領域62に設けられている。
【0050】
一方、
図1に示した包装袋の強シール部16,17,18は、異形ヒートローラ60のシール面66により形成される。シール面66の両側縁は、シール面66を正面から見たときに相互に平行をなして直線状に延びている。このシール面66は、異形ヒートローラ60の周方向において、回転軸64と異形ヒートローラ60の外周面63との距離が相対的に長い領域61に設けられている。
【0051】
一対の異形ヒートローラ60は、フィルム材30に対して対称になるように、外周面63がそれぞれ形成されている。また、各異形ヒートローラ60は、回転の速さが同じで、かつ、回転の向きが相互に逆向きに回転されている。そのため、2つの異形ヒートローラ60が回転されるとき、強シール部51を形成するシール面66同士が必ず対向した状態でフィルム材30を挟み込むと共に、波形のシール面65同士が必ず対向した状態でフィルム材30を挟み込んでいる。その結果、易剥離シール部52及び強シール部51が形成される。
【0052】
以上、一対のヒートローラの両方のヒートローラが異形ヒートローラである場合を例に説明した。しかしながら、一対のヒートローラは、横断面の形状が円形のヒートローラと、異形ヒートローラとを組み合わせて構成することもできる。
【0053】
[一方のヒートローラのみが異形ヒートローラである場合]
図5は、分割シール部45を形成する一対のヒートローラ60,70のうち、一方のヒートローラ60のみが異形ヒートローラ60であり、他方のヒートローラ70の横断面の形状が円形である場合を示している。
図5において、フィルム材30よりも下側に配置されている異形ヒートローラ60は、周方向の一定の範囲で半径が一定である扇状の部分(短い領域62)と、その扇状の部分の半径にさらに一定の距離を加えた半径を有する扇状の部分(長い領域61)とが、周方向に交互に配置されて構成され、長い領域61と短い領域62とが周方向に組み合わされて外周面63が構成されている。これに対し、フィルム材30よりも上側に配置されているヒートローラ70は横断面の形状が円形をなし、回転軸74と外周面73との距離がヒートローラ70の全周にわたって一定である。
【0054】
一対のヒートローラ60,70は、各ヒートローラ60,70の外周面63,73が対向されており、外周面63,73同士の間に送り込まれたフィルム材30をヒートシールしている。具体的には、一対のヒートローラ60,70は、異形ヒートローラ60の長い領域61が、ヒートローラ70の外周面73に対向するときに、相対的に高い圧力でフィルム材30を挟み込み、剥離強度が相対的に高い強シール部51を形成する。また、一対のヒートローラ60,70は、異形ヒートローラ60の短い領域62が、ヒートローラ70の外周面73に対向するときに、相対的に低い圧力でフィルム材30を挟み込み、剥離強度が相対的に低い易剥離シール部52を形成する。
【0055】
この
図5に示す一対のヒートローラ60,70は、包装袋1の1つ分に相当する長さのフィルム材30が送られる間にそれぞれ1回転し、完成される包装袋1の2箇所に易剥離シール部21,22に対応する易剥離シール部52を形成している。
【0056】
以上、一対のヒートローラのうち少なくとも一方に設けられる異形ヒートローラ60が、周方向の一定の範囲で半径が一定である扇状の部分(短い領域62)と、その扇状の部分の半径にさらに一定の距離を加えた半径を有する扇状の部分(長い領域61)とが、周方向に交互に配置されて構成された場合を例に説明した。ただし、異形ヒートローラの横断面の形状は、この形状には限定されない。
【0057】
[第2タイプの異形ヒートローラとその変形例]
異形ヒートローラは、断面形状が楕円状をなす第2タイプのものを使用することもできる(
図8を参照)。楕円は、長軸と短軸とを有している。そのため、楕円の外周面は、長軸の位置を含む周方向の一定の領域が長い領域として構成され、短軸の位置を含む周方向の一定の領域が短い領域として構成される。異形ヒートローラは、その他に、例えば、
図6及び
図7に示す断面形状を有するものを使用することができる。
【0058】
図6に示す異形ヒートローラ80は、回転軸84と外周面83との距離が相対的に長い領域81と、回転軸84と外周面83との距離が相対的に短い領域82とを周方向に交互に組み合わせて外周面83を形成することによって構成されている。長い領域81と短い領域82とは、異形ヒートローラ80の周方向に交互に並ぶようにして配置されており、周方向の3箇所にそれぞれ設けられている。異形ヒートローラ80の長い領域81は、フィルム材30を相対的に高い圧力で挟み込み、剥離強度が相対的に高い強シール部51を形成する。一方、異形ヒートローラ80の短い領域82は、フィルム材30を相対的に低い圧力で挟み込み、剥離強度が相対的に低い易剥離シール部52を形成する。
【0059】
なお、
図6は、1つの異形ヒートローラ80のみを示しているが、フィルム材30の一面側及び他面側の両方に配置してフィルム材に分割シール部45を形成してもよいし、フィルム材30の一面側又は他面側のいずれか一方にのみ異形ヒートローラ80を配置し、他方には断面形状が円形のヒートローラ70(
図5を参照)を配置してフィルム材30に分割シール部45を形成してもよい。
【0060】
図6に示した異形ヒートローラ80を用いて分割シール部45を形成する場合、包装袋1の1つ分に相当する長さのフィルム材30が流れる間に異形ヒートローラ80を1回転させ、完成される包装袋1の3箇所に易剥離シール部52を形成する。
【0061】
図7に示す異形ヒートローラ90は、回転軸94と外周面93との距離が相対的に長い領域91と、回転軸94と外周面93との距離が相対的に短い領域92とを周方向に交互に組み合わせて外周面93を形成することによって構成されている。長い領域91と短い領域92とは、異形ヒートローラ90の周方向に交互に並ぶようにして配置されており、周方向の4箇所にそれぞれ設けられている。この異形ヒートローラ90についても、長い領域91は、フィルム材30を相対的に高い圧力で挟み込み、剥離強度が相対的に高い強シール部51を形成する。また、短い領域92は、フィルム材30を相対的に低い圧力で挟み込み、剥離強度が相対的に低い易剥離シール部52を形成する。
【0062】
この異形ヒートローラ90は、包装袋1の1つ分に相当する長さのフィルム材30が流れる間に1回転し、完成される包装袋1の4箇所に易開封シール部52を形成する。
【0063】
以上、回転軸と外周面との距離が相対的に長い領域と、回転軸と外周面との距離が相対的に短い領域の数に応じて、1つの包装袋1に相当する長さのフィルム材30に強シール部51と易剥離シール部52とを所望の数だけ形成する場合について説明した。ただし、異形ヒートローラの回転軸と外周面との距離(異形ヒートローラの外径)及び異形ヒートローラの回転数を任意に設定することによって、1つの包装袋1に相当する長さのフィルム材30に所望の数の強シール部51と易剥離シール部52を形成することもできる。
【0064】
図8は、外径が小さな一対の異形ヒートローラ100,105を高い回転数で回転させることによって分割シール部45を形成する態様と、外径が大きな一対の異形ヒートローラ110,115を低い回転数で回転させて分割シール部45を形成する態様とを比較して示している。なお、
図8において、異形ヒートローラ100,105は、横断面の形状が楕円である第2タイプの異形ヒートローラである。
【0065】
図8(A)は、外径が相対的に小さい一対のヒートローラ100,105を用い、高い回転数で各ヒートローラ100,105を回転させることによってフィルム材30に分割シール部45を形成する態様を示している。フィルム材30の上側に配置されたヒートローラは横断面の形状が楕円をなす異形ヒートローラ100である。一方、下側に配置されたヒートローラは、横断面の形状が円形をなすヒートローラ105である。
【0066】
図8(B)は、外径が相対的に大きい一対のヒートローラ110,115を用い、低い回転数で各ヒートローラ110,115を回転させることによってフィルム材30に分割シール部45を形成する態様を示している。フィルム材30の上側に配置されたヒートローラは横断面の形状が楕円をなす異形ヒートローラ110である。一方、下側に配置されたヒートローラは、横断面の形状が円形をなすヒートローラ115である。
【0067】
外径が相対的に小さいヒートローラ100,105を用い、高い回転数で各ヒートローラ100,105を回転させる場合、
図8(A)に示すように、フィルム材30が流される一定の長さL1に対し、フィルム材30を挟み込む長い領域101と短い領域102とが入れ替わる回数が多い。そのため、フィルム材30に、数多くの易剥離シール部52を形成することができる。
【0068】
一方、外径が全周にわたって相対的に大きいヒートローラ110,115を用い、低い回転数で各ヒートローラ110,115を回転させる場合、
図8(B)に示すように、フィルム材が流される一定の長さL1に対し、フィルム材を挟み込む長い領域111と短い領域112とが入れ替わる回数が少ない。そのため、フィルム材30に形成される易剥離シール部52の数が少なくなる。
【0069】
そのため、ヒートローラの外径と、ヒートローラの回転数とを任意に設定することによって、フィルム材30の所定長さの範囲に所望の数の易剥離シール部を設けることができる。
【0070】
以上、回転軸と外周面との距離が長い領域と、回転軸と外周面との距離が短い領域とを周方向に交互に組み合わせて形成された外周面を有する異形ヒートローラについて説明した。換言すれば、横断面の形状が円形以外の異形をなす異形ヒートローラについて説明した。しかし、分割シール部45は、フィルム材30の一面側及び他面側の両方に配置されるヒートローラの横断面の形状が円形であり、回転軸が各ヒートローラの中心よりも径方向の外側に位置する形態の異形ヒートローラを用いて形成することもできる。
【0071】
[第3タイプの異形ヒートローラを用いて分割シール部を形成する場合]
図9は、第3タイプの異形ヒートローラ120を一対用いてフィルム材30に分割シール部45を形成する工程の概要を示している。異形ヒートローラ120は、送り込まれるフィルム材30の一面側と他面側とに1つずつ配置されており、各異形ヒートローラ120の外周面123同士が相互に対向している。
【0072】
第3タイプの異形ヒートローラ120の横断面の形状は円形である。各異形ヒートローラ120の回転軸124は、各異形ヒートローラ120自体の中心Cの位置よりも径方向の外側に設けられている。具体的には、各異形ヒートローラ120の回転軸124は、フィルム材30が送られる方向(
図9の左右方向)については、異形ヒートローラ120自体の中心Cに一致する位置に設けられている。一方、各異形ヒートローラ120の回転軸124は、フィルム材30に対して鉛直をなす方向(
図9の上下方向)については、異形ヒートローラ120自体の中心Cの位置よりもフィルム材30から離れる方向にそれぞれ位置している。すなわち、
図9において、フィルム材30よりも上側に配置された異形ヒートローラ120の回転軸124は、異形ヒートローラ120自体の中心Cよりも上側に位置し、フィルム材30よりも下側に配置された異形ヒートローラ120の回転軸124は、異形ヒートローラ120自体の中心Cよりも下側に位置している。
【0073】
一対の異形ヒートローラ120は、回転の位相と速度が設定されている。そのため、回転軸124と外周面123との距離が相対的に長い領域121同士が対向し、かつ、回転軸124と外周面123との距離が相対的に短い領域122同士が対向する。そして、一対の異形ヒートローラ120は、長い領域121同士でフィルム材30を挟み込んだときに剥離強度が相対的に高い強シール部51を形成し、短い領域122同士でフィルム材30を挟み込んだときに剥離強度が相対的に低い易剥離シール部52を形成する。
【0074】
第3タイプの異形ヒートローラ120を用いて分割シール部45を形成する場合、異形ヒートローラ120の直径と各異形ヒートローラ120の回転数とを適宜に設定することによって、フィルム材30の所定長さの範囲に易剥離シール部52を所望の数だけ設けることができる。
【0075】
[製造された包装袋の作用]
以上の製造方法によって製造された包装袋1は、分割シール部15によって分割された各部屋8,9に異なる種類の流体を収容させることができる。分割シール部15を構成している易剥離シール部21,22の剥離強度は、分割シール部15を構成する強シール部16,17,18の剥離強度、並びに包装袋1の下端5を閉じているヒートシール部13及び側縁6,7を閉じているヒートシール部11,12の剥離強度よりも低い。そのため、包装袋1に圧力を加えた場合、易剥離シール部21,22のみが剥離して各部屋8,9に収容された流体同士が混ざる。
【0076】
易剥離シール部21,22が分割シール部15の2箇所以上に設けられている場合、圧力が加えられる包装袋1の位置に関係なく、2箇所以上に設けられた易剥離シール部21,22は、剥離する。
図10を参照して具体的に説明する。
【0077】
図10は、分割シール部15の2箇所に易剥離シール部21,22を有する包装袋1を示している。
図10(A)は、包装袋1の左側に設けられた易剥離シール部21の近傍に圧力を加えた場合であり、
図10(B)は、包装袋1の右側に設けられた易剥離シール部22の近傍に圧力を加えた場合である。
【0078】
包装袋1に設けられた易剥離シール部21,22のどちから一方の近傍に圧力を加えた場合、
図10(A)及び
図10(B)に示すように、包装袋1の上側に設けられた部屋8に収容された液体の内圧は、全体が一様に上昇する。そのため、部屋8の内圧は、包装袋1の右側と左側とに離れて設けられた2箇所の易剥離シール部21,22の両方に作用し、2箇所の易剥離シール部21,22のうち、少なくとも一方は剥離する。その結果、各部屋8,9に収容された流体同士が混ざり合う。
【0079】
また、包装袋1の内部を分割する分割シール部15は、易剥離シール部21,22が分割シール部15の長手方向に部分的に設けられている。そのため、各部屋8,9に流体が収容された状態で包装袋1を積み重ねて搬送する場合に、包装袋1に予期しない圧力が加えられたときでも、分割シール部15が剥離するリスクは、易剥離シール部に限定することができる。