(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記遮光部が互いに間隔をおいてマトリックス状に配列され、隣接する前記遮光部の間の領域に前記半透光部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3に記載のフォトマスク。
カラーフィルタ基板上に配設された感光性材料を露光した後に現像処理することにより、線幅2μm〜10μmの精細部分を有するブラックマトリクスと、該ブラックマトリクスを囲繞する周辺領域とを形成するカラーフィルタの製造方法であって、
マスク基板上に設けた遮光膜及び半透光膜を各々パターニングすることにより、遮光部と、前記ブラックマトリクスに対応する半透光部と、前記遮光部及び前記半透光部を囲繞し、前記周辺領域に対応する透光部とからなる転写パターンが設けられ、前記半透光部が、前記遮光部の間を埋めるように配設された透過率が30〜70%の範囲である特性を有する前記半透光膜により構成され、当該半透光膜が配設された前記遮光部の間の形状が前記ブラックマトリクスの線幅方向において、前記ブラックマトリクスの前記精細部分よりも幅広であるフォトマスクに対して、露光光を照射して前記感光性材料を露光する工程と、
露光後の前記感光性材料を現像して前記ブラックマトリクスを形成する工程と、
を備えることを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【背景技術】
【0002】
フォトリソグラフィにより基板上にパターンを形成する技術が広く普及しているが、近年、線幅が10μm以下の精細部分を有するラインパターンを形成することが強く望まれている。
これに関して、表示装置の分野を例にとって説明すれば、近年、液晶表示装置、プラズマディスプレイ装置、有機EL表示装置をはじめとする様々な表示装置の実用化が盛んである。この中で、液晶表示装置に用いられるカラー表示の液晶表示素子に用いられるカラーフィルタは、透明基板上に各画素電極に対応する約1μmの厚みの薄い三原色のフィルタ(赤フィルタ、緑フィルタ、及び青フィルタ)を有し、各フィルタ間の隙間から入射光が漏れて液晶ディスプレイのコントラストが低下しないように、各フィルタの間に、遮光部分であるブラックマトリクスが配列されたものがある。
このブラックマトリクスは、表示に寄与していない部分、即ち、液晶表示素子のソース配線や、画素電極とソース配線との間の隙間等を全て遮光するものである。ここで、液晶表示を明るくするためには、ブラックマトリクスによる遮光部分をできるだけ少なくすること、即ちブラックマトリクスの線幅を精細化することが望ましい。
【0003】
従来、下記に示される特許文献1に記載されるように、カラーフィルタのブラックマトリクスは以下の手順で製造されていた。
まず、カラーフィルタ基板上に、ネガ型の感光性材料を配設する。次いで、この感光性材料とは所定の距離をおいてフォトマスクを配置し、該フォトマスクを介して感光性材料の露光を行う。そして、露光後の感光性材料を現像し、露光部分がカラーフィルタのブラックマトリクスとして形成される。
【0004】
このとき、特に、液晶表示を明るくするため、カラーフィルタのブラックマトリクスの精細化が求められ、具体的には、ブラックマトリクスの幅を2μm〜10μmの範囲にすることが求められている。そのために、上記フォトマスクにおいて、遮光膜に微細パターンを形成することにより、カラーフィルタ基板上の感光性材料における露光領域の線幅を細くすることが考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、カラーフィルタの製造においては、フォトマスク及び被感光基板の間隔を僅かに設けて光を照射することにより、マスクパターンを基板に転写する近接露光方式を用いて、大面積の基板上の一面に配設された感光性材料を、一括して露光するのが主流になっている。具体的には、水銀ランプ等の光源から波長365nm(i線)〜波長436nm(g線)の露光光を照射して、基板から一定の隙間を介して配置されたフォトマスクを通して露光する。したがって、上記のように、フォトマスクの遮光膜に微細パターンを形成すると、パターンエッジにおける光の回折の影響が大きくなり、感光性材料に対する露光量が減少する。そうすると、光量が感光性材料を感光させるための閾値に達せず、感光性材料の硬化度が低下し、解像性が低下するといった問題がある。
【0007】
上記の解像性低下という問題に対しては、近接露光ではなく、従来からLSI製造用の技術として開発されてきた、レンズ投影ステッパー及びミラープロジェクションステッパー(MPA:Mirror Projection Aligner)を用いた投影露光を用いることが考えられる。さらには、露光機の開口数(NA)拡大、露光光の波長(λ)を短波長化する、及び位相シフトマスクの適用が考えられる。しかし、これらの技術を適用することは、莫大な投資と技術開発を必要とし、さらには生産効率も低下するため容易ではない。
【0008】
また、フォトリソグラフィ工程における露光量を増加するためには、露光機の光源の出力を上げる又は露光時間を増やす必要があり、装置改造等の追加投資や生産効率の低下を招くため、実現が困難である。
なお、露光量を増加させる場合には、感光性材料に対する露光量が増加するに伴い、硬化したブラックマトリクスの線幅が広くなり、ブラックマトリクスの精細化を達成することができないという問題も生じる。
このように、莫大な追加投資を行わず、且つ生産効率を損なわずに、カラーフィルタのブラックマトリクスの線幅を細くすることが望まれている。
【0009】
以上のように、本発明は、設備投資の増加及び生産効率の低下を抑制しながら、フォトリソグラフィにより、線幅2μm〜10μmの精細部分を有するラインパターンを形成することができるフォトマスク、及びこのフォトマスクを用いた基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明のフォトマスクの1つの実施態様は、線幅2μm〜10μmの精細部分を有するラインパターンと、該ラインパターンを囲繞する周辺領域とを形成するために用いられるフォトマスクであって、遮光部と、前記ラインパターンに対応する半透光部と、前記遮光部及び前記半透光部を囲繞し、前記周辺領域に対応する透光部とを有し、前記半透光部は、前記ラインパターンの前記精細部分よりも幅広であることを特徴とする。
【0011】
本実施態様によれば、ラインパターンに対応する各々の半透光部の幅が、ラインパターンの各々よりも幅広であることにより、光の回折が生じても感光性材料を感光させるために十分な光量が得られる(つまりコントラストが取れる)領域を用いることができ、且つ半透光膜を用いることによって、ラインパターンが形成される領域に照射する露光光量を調整して、幅2μm〜10μmの範囲における所望の幅の精細部分を有するラインパターンを形成することができる一方、透光部に十分な露光光量の光を照射して、確実にラインパターンを囲繞する周辺領域を形成することができる。
【0012】
以上のように、本実施態様によれば、フォトマスクを変更するだけで、半導体分野で用いるような高価な露光装置に変更することなく、従来の生産効率の高い設備を継続して使用することができる。つまり、設備投資の増加及び生産効率の低下を抑制しながら、線幅2μm〜10μmの精細部分を有するラインパターンと、該ラインパターンを囲繞する周辺領域とを確実に形成することができる。
【0013】
本発明のフォトマスクの製造方法のその他の実施態様は、さらに、前記ラインパターンの精細部分の幅をWbとし、前記半透光部の幅をWsとするとき、前記Wb及びWsが;1.2 ≦ Ws/Wb ≦ 3 の関係を満たすことを特徴とする。
【0014】
本実施態様によれば、半透光部の幅寸法が、ラインパターンの精細部分の幅寸法の1.2倍以上3倍以内の範囲にあれば、上記のような作用効果を確実に奏することができる。
【0015】
本発明のフォトマスクの製造方法のその他の実施態様は、さらに、上記フォトマスクが、近接露光に用いられることを特徴とする。
【0016】
本実施形態によれば、十分な露光光量が得られる(コントラストが取れる)領域において露光するので、近接露光ギャップが変動した場合であっても、ラインパターンの線幅のバラツキを抑えることができる。
【0017】
本発明のフォトマスクの製造方法のその他の実施態様は、さらに、前記遮光部が互いに間隔をおいてマトリックス状に配列され、隣接する前記遮光部の間の領域に前記半透光部が形成されていることを特徴とする。
【0018】
本実施態様のような、遮光部が間隔をおいてマトリックス状に配列され、隣接する遮光部の間の領域に半透光部が形成されているフォトマスクを用いることによって、精細部分を有するラインパターンが格子状に配列されたパターンを形成することができ、表示装置を始めとする幅広い技術分野で適用することができる。
【0019】
本発明のフォトマスクの製造方法のその他の実施態様は、さらに、前記ラインパターンがブラックマトリクスであることを特徴とする。
【0020】
本実施態様によれば、産業界で強く望まれている、幅2μm〜10μmの精細化されたブラックマトリクスを提供することができる。
【0021】
本発明のカラーフィルタの製造方法の1つの実施態様は、カラーフィルタ基板上に配設された感光性材料を露光した後に現像処理することにより、線幅2μm〜10μmの精細部分を有するブラックマトリクスと、該ブラックマトリクスを囲繞する周辺領域とを形成するカラーフィルタの製造方法であって、マスク基板上に設けた遮光膜及び半透光膜を各々パターニングすることにより、遮光部と、前記ブラックマトリクスに対応する半透光部と、前記遮光部及び前記半透光部を囲繞し、前記周辺領域に対応する透光部とからなる転写パターンが設けられ、前記半透光部が、前記ブラックマトリクスの前記精細部分よりも幅広であるフォトマスクに対して、露光光を照射して前記感光性材料を露光する工程と、露光後の前記感光性材料を現像して前記ブラックマトリクスを形成する工程と、を備えることを特徴とする。
【0022】
本実施態様によれば、フォトマスクの半透光部がブラックマトリクスの精細部分よりも幅広であることにより、線幅2μm〜10μmの精細部分を有するブラックマトリッス、及びブラックマトリックスを囲繞する周辺領域を有するカラーフィルタを確実に形成することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のフォトマスクにより、設備投資の増加及び生産効率の低下を抑制しながら、線幅2μm〜10μmの精細部分を有するラインパターンと、該ラインパターンを囲繞する周辺領域とを確実に形成することができ、さらに、該フォトマスクを用いた本発明の製造方法により、設備投資の増加及び生産効率の低下を抑制しながら、線幅2μm〜10μmの精細部分を有するブラックマトリックスと、該ブラックマトリックスを囲繞する周辺領域とを有するカラーフィルタを確実に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、フォトリソグラフィにより、基板上に精細なパターン、特に、線幅2μm〜10μmの精細部分を有するラインパターンを形成するためのフォトマスク、及びこのフォトマスクを用いた基板の製造方法に関するものである。本発明に係るフォトマスクを用いて製造された基板は、液晶表示装置、プラズマディスプレイ装置、有機EL表示装置をはじめとする各種表示装置や、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)に関連する各種機器等に適用可能である。
その中で、以下の説明においては、液晶表示装置用のカラーフィルタ基板に適用した場合を例にとって、本発明を説明する。
【0026】
本発明のフォトマスクの1つの実施形態は、液晶表示装置用のカラーフィルタ基板である被露光基板の一面に配設されたネガ型の感光性材料を用いて、近接露光により、現像後に2μm〜10μmの精細部分を有するブラックマトリクスを形成するためのフォトマスクである。
ここで、近接露光は、フォトマスクと被転写体とを接触させる密着露光に比べ、マスクが汚れないという利点があり、また、レンズ投影ステッパー方式、ミラープロジェクションステッパー方式等を用いる縮小投影露光に比べ、高額な光学系が不要であるため、装置コストを低減することができるという利点がある。本実施形態におけるフォトマスクは、近接露光に使用されるものであって、カラーフィルタのブラックマトリクスを微細に形成することができる。
【0027】
液晶表示装置用のカラーフィルタ形成用基板では、R(赤)、G(緑)、B(青)の各画素に対応して、透明基板上に、各画素電極に対応する厚みが約1μmの薄い赤フィルタ、緑フィルタ、及び青フィルタが設けられている。各フィルタ間には、各フィルタの隙間から入射光が漏れて液晶ディスプレイのコントラストが低下しないように、ブラックマトリクスが配列される。
図6は、液晶表示装置用のカラーフィルタ基板の一例であって、カラーフィルタ(R、G、B)及びブラックマトリクスBMから構成される画素部GSと、画素部を囲繞する周辺領域BWとを備える。これらの構成は、後述の
図1に示すフォトマスクを用いることによって、カラーフィルタ基板上に形成することができる。
【0028】
図6に示すように、ブラックマトリクスBMは、互いに間隔をおいて縦方向において平行に伸びる第1ライン部L1の各々と、互いに間隔をおいて横方向において平行に伸びる第2ライン部L2の各々とが交差するよう配列され、全体として複数のラインが格子状に交差するように形成されている。ブラックマトリクスBMの周辺には、該ブラックマトリクスBMを囲繞する周辺領域BWが形成される。本実施形態においては、ブラックマトリクスBMを構成する第1ライン部L1の線幅は2μm〜10μmであり、第2ライン部L2の線幅は8μm〜30μmである。
【0029】
次に、
図1に、本発明のフォトマスクの1つの実施形態を示す。
図1は、フォトマスクの転写パターンを上方から見た図であり、フォトマスクの一部の領域を示している。
図2は、
図1のフォトマスクをX−X’線で切断した(a)断面図、(b)該断面図の部分拡大図、及び(c)このフォトマスクを用いて、近接露光により、カラーフィルタ基板上に形成されるブラックマトリクスを示す断面図である。
図3は、本発明のフォトマスクの製造方法の具体例を示す図である。
図4は、近接露光用の露光装置の概略構成を示す図である。
図5は、本発明のフォトマスクによる効果を検証するために行ったシミュレーション結果を示す図である。
【0030】
図1に示すように、本実施形態におけるフォトマスクは、遮光部Sと、半透光部Hと、透光部Qとからなる転写パターンが設けられた、3階調のフォトマスクである。フォトマスクは、マスク基板上Qzに設けた遮光膜及び半透光膜を各々パターニングすることにより、露光光を透過しない遮光部Sと、露光光を一部透過させるライン状の半透光部Hと、遮光部S及び半透光部Hを囲繞し、露光光を実質的に全て透過させる環状の透光部Qとからなる転写パターンTが設けられている。半透光部Hは上記ブラックマトリクスBMに対応する。環状の透光部Qは、半透光部Hよりも格段に幅広に形成され、上記周辺領域BWに対応する。以下、フォトマスクの転写パターンについて説明する。
【0031】
図1に示すように、本発明のフォトマスクは、各々矩形状に形成されて、間隔をあけてマトリックス配列された遮光部Sと、該遮光部Sの各々の間に、その隙間を埋めるように格子状に配列された半透光部Hの各々と、遮光部S及び半透光部Hを囲繞する環状の透光部Qとを有する。環状の透光部Qは、半透光部Hの各々よりも幅広に形成されている。
図1に示すフォトマスクでは、縦方向と横方向とで半透光部Hの幅が異なっている。即ち、
図1に示すように、半透光部Hの各々は、ブラックマトリクスBMの第1ライン部L1に対応する第1半透光部H1の各々と、ブラックマトリクスBMの第2ライン部L2に対応する第2半透光部H2の各々とで構成される。第1半透光部H1及び第2半透光部H2の各々は互いに直交し、第2半透光部H2の各々が、第1半透光部H1の各々よりも幅広に形成されている。さらに、
図2に示すように、第1半透光部H1は、ブラックマトリクスBMの第1ライン部L1よりも幅広である。図示しないが、第2半透光部H2は、ブラックマトリクスBMの第2ライン部L2よりも幅広である。かかる本発明のフォトマスクは、縦方向と横方向とで線幅が異なるブラックマトリクスを製造する場合に有効である。
【0032】
本発明のフォトマスクの実施形態についてさらに説明する。
図2(a)に示すように、マスク基板Qz上には、マスク基板Qzに密接した遮光膜がパターニングされることにより、矩形状に形成された遮光部Sの各々と開口Kの各々とが交互に配列され、開口Kの各々に対応してパターニングされた半透光膜が設けられて、第1半透光部H1(半透光部H)が形成されている。遮光部S及び半透光部Hの外側には、遮光膜及び半透光膜が除去されてマスク基板表面が露出されることにより、透光部Qが形成されている。
遮光部Sは、
図2に示すように、マスク基板Qz上に遮光膜のみが形成されていても良いし、図示されていないが、マスク基板Qz上に遮光膜及び半透光膜が積層されていても良い。尚、
図2に示す例では、開口Kの各々に対応するように半透光膜をパターニングしているが、必ずしも、このようにパターニングする必要はない。即ち、
図3(f)に示すように、半透光膜の透光部に対応する領域のみが除去されるよう、半透光膜をパターニングすることもできる。
【0033】
フォトマスクの第1半透光部H1部分を拡大した
図2(b)、及び対応するカラーフィルタ基板に形成されるブラックマトリクスの第1ライン部BM1を拡大した
図2(c)に示すように、第1半透光部H1の幅Wsは、カラーフィルタ基板に形成されるブラックマトリクスの第1ライン部BM1の幅Wbよりも広い。
フォトマスクの開口部を通過する露光光は、
図5のグラフに示すように、光の回折の影響により、開口の端部に近づくにつれて光強度(光量)が低下する。よって、もし、第1半透光部H1の幅(開口Kの幅)を、形成するブラックマトリクスの第1ライン部BM1の幅Wbと同じ寸法にした場合、開口Kの端部近傍では光の回折の影響が大きくなり、感光性材料に対する露光量が減少する。よって、開口Kの端部近傍における光量が、感光性材料を感光させるための閾値に達せず、感光性材料の硬化度が低下し、形成されるブラックマトリックスの幅はWbより小さくなる。
【0034】
一方、本実施形態のように、第1半透光部H1の幅Wsが、形成されるブラックマトリクスの第1ライン部BM1の幅Wbよりも広い、つまり、上記の感光性材料が十分に感光しない領域の分以上に開口Kの幅を広げれば、光の回折が生じても感光性材料を感光させるために十分な光量が得られる領域(つまり中央寄りの領域)を用いて露光することができる。さらに、半透光膜を用いることによって、ブラックマトリックスが形成される領域に照射する露光光量を適切に調整して、幅2μm〜10μmの範囲における所望の幅の第1ライン部BM1を有するブラックマトリックスを形成することができる。つまり、半透光膜の光の透過率を適切に選択することによって、感光性材料が十分感光する部分の幅寸法を調整して、所望の幅の第1ライン部BM1を形成することができる。
【0035】
その一方、ブラックマトリクスの第1ライン部BM1に対応する領域への露光光量を調整するだけであれば、例えば、光源の出力を落としたりフィルタを設けたりして、フォトマスクに入射する光量を落とすことも可能である。しかし、その場合には、透光部Qへの感光光量が、感光性材料を感光させるための閾値に達せず、周辺領域BWが適切に形成されない問題が生じる。よって、半透光膜を用いることによって、はじめて、幅2μm〜10μmの幅の第1ライン部BM1及び周辺領域BWの両方を確実に形成することができる。
なお、第1半透光部H1の幅Wsが後述の範囲内であると、回折の効果により露光光の強度が強くなる場合がある。このような場合には半透光部においても露光光強度が十分に得られるため第1ライン部BM1及び周辺領域BWともに適切に硬化させることができる。
本実施形態のように、十分な露光光量が得られる(コントラストが取れる)領域において露光する場合には、フォトマスクとカラーフィルタ基板との間の間隔が変動した場合であっても、ブラックマトリックスの線幅のバラツキを抑えることができるという作用項を有する。この点については、
図5を用いて後述する。
【0036】
第1半透光部H1の幅Ws及びブラックマトリクスの第1ライン部BM1の幅Wbについて、さらに詳細に述べると、Ws、Wbは以下の式(1)の関係を満たすことが好ましい。
式(1) ; 1.2 ≦ Ws/Wb ≦ 3
上記式(1)を満たすことにより、光の回折が生じても十分な感光光量が得られる(コントラストが取れる)領域を用いて露光することができ、且つ半透光膜を用いることによって、カラーフィルタ基板に照射する光量を適切に調整して、幅2μm〜10μmの範囲における所望の幅の第1ライン部BM1を形成することができる。さらに、半透光膜を用いて第1ライン部BM1が形成される領域に照射する光量を調整するので、第1ライン部BM1を確実に形成するとともに、透光部Qに十分な光量を照射して、確実に画素部GSを囲繞する周辺領域BWを形成することができる。
【0037】
一方、Ws/Wbの値が1.2を下回る場合は、光の回折の影響で、予定していたブラックマトリックスの第1ライン部BM1の幅寸法が取れない虞がある。また、フォトマスクに入射した露光量よりも開口Kを通過する光量が低下しているところに、さらに半透光膜の透過率分だけ透過光量が減少するため、実プロセスにおいて、露光量(露光時間)の増加による生産効率の低下といったデメリットがある。
一方、Ws/Wbの値が3を超える場合は、開口Kを半透過状態にしても、空間像の元々の幅が広くなりすぎるため、ブラックマトリクスの第1ライン部BM1を形成することが困難になる。
【0038】
その他の数値例を挙げると、第1半透光部H1の幅Ws及びブラックマトリクスの第1ライン部BM1の幅Wbについては、カラーフィルタ基板上に形成されるブラックマトリクスBMの第1ライン部L1の幅Wbは、2μm〜10μmなので、第1半透光部H1の幅Wsは2.4μm〜30μmとなる。
また、半透光膜の露光光を透過させる透過率としては、30〜70%の範囲が好ましく、40〜60%の範囲がさらに好ましい。フォトマスクとカラーフィルタ基板との間の距離としては、40μm〜300μmの範囲に調整することが好ましく、100μm〜150μmの範囲に調整することがさらに好ましい。
【0039】
本実施形態のフォトマスクを構成する、マスク基板、半透光膜、遮光膜について詳細に説明する。マスク基板としては、例えば、合成石英、ソーダライムガラス、無アルカリガラス等の、露光光に対して透明な基板を用いることができる。本発明のフォトマスクで使用する露光光は、波長300nm〜450nmの範囲に亘り、ブロードなスペクトルを持つ連続光である。
【0040】
半透光膜は、金属と珪素を含む金属シリサイドを原料とするものであり、例えば、モリブデンシリサイド(MoSi)、タンタルシリサイド(TaSi)、チタンシリサイド(TiSi)、タングステンシリサイド(WSi)や、これらの酸化物、窒化物、酸窒化物等の膜である。本実施形態において、半透光膜は、遮光膜上に積層されたモリブデンシリサイドの膜である。半透光膜は、MoSi膜、MoSi
2膜、MoSi
4膜であることが好ましいが、MoSiO膜、MoSiN膜、MoSiON膜等であっても良い。
遮光膜は、例えば金属シリサイドに対してエッチング選択性を有するクロム(Cr)系の材料により、基板上に形成される。遮光膜は、例えば、CrN膜、CrC膜、CrCO膜、CrO膜、CrON膜、又はこれらの積層膜である。
【0041】
図3には、
図1に示すフォトマスクの製造方法の一例を示す。
図3(a)に示すように、マスク基板Qz上に、遮光膜sm及び感光性材料膜km1をこの順に形成する。感光性材料は、遮光膜をパターニングするためのエッチングマスクとなるレジストであり、例えば、ポジ型のレジストを使用することができる。ここでは、ポジ型レジストを使用した場合について説明する。
【0042】
感光性材料膜km1において、開口を形成すべき箇所に電子ビーム又はレーザー光を照射して露光を行った後に、感光性材料膜を現像液に浸漬して、電子ビーム又はレーザー光が照射された部分の感光性材料膜を溶解することにより、
図3(b)に示すように、半透光部及び透光部に相当する部分を除去し、感光性材料膜にパターンkm1’を形成する。
そして、
図3(c)に示すように、上記感光性材料膜のパターンkm1’をマスクとして使用し、遮光膜を、例えばエッチングにより除去すると共に不要になった感光性材料膜を剥離することにより、遮光膜に開口を形成する。
次に、
図3(d)に示すように、パターニングされた遮光膜S上に半透光膜hm、感光性材料膜km2をこの順に形成する。
【0043】
次いで、透光部Qに対応する感光性材料膜のみが除去されるように、電子ビームないしはレーザー光による露光及び現像を行って、
図3(e)に示すように、感光性材料膜にパターンkm2’を形成する。ここでは、半透光膜の透光部Qに対応する領域のみが除去されるようパターニングしているが、
図2に示すように、開口の各々に対応するように半透光膜をパターニングしてもよい。
その後、
図3(f)に示すように、該感光性材料膜のパターンkm2’をマスクとして用いて、半透光膜をエッチングするとともに、不要となった感光性材料膜を剥離する。
このようにして、基板に密着した遮光膜がパターニングされてなる、露光光を遮光する遮光部Sの各々と、遮光膜のパターニングにより形成された開口の各々を覆う半透光膜が設けられた半透光部Hと、マスク基板表面が露出した透光部Qと、からなる転写パターンが形成される。
尚、
図3(f)に示す工程終了後のパターニングされた半透光膜については、遮光膜と重なった部分の半透光膜はそのまま残しても良いし(
図3(f)の状態)、アライメントエラーのマージン分を除いて除去しても良い(
図2に示す形態)。
【0044】
本発明のフォトマスクは、
図4に示す近接露光用の露光装置を用いて、液晶表示素子のカラーフィルタ基板上に塗布されたネガ型の感光性材料に対して、近接露光を行うことにより、露光されたネガ型の感光性材料が硬化して、
図2(c)及び
図6に示すブラックマトリクスが形成される。
図4に示す露光装置10は、波長300nm〜450nmの紫外線を含む光を放射する超高圧水銀ランプ等の放電ランプと、集光鏡と、ミラーと、各種レンズ等から構成された光源ユニット20を備えている。そして、放電ランプが放射する紫外光を含む光は、上記の光学部材を介して、光源ユニット20から出射される。露光装置10は、さらに、フォトマスクMが載置・固定されるマスクステージ30、カラーフィルタ基板等のワーク(被転写体)WKが固定されるワークステージ40、マスクとワークの間のギャップを調整するギャップ調整機構50、及びワークを位置調整するXYZθステージ60を備えている。
【0045】
本発明のフォトマスクを介して、カラーフィルタ基板上にブラックマトリクスを形成するカラーフィルタの製造方法について説明する。本発明のカラーフィルタの製造方法は、カラーフィルタ基板上に塗布されたネガ型の感光性材料に対して露光を行い、感光性材料を感光させて硬化させた後に現像することにより、
図6に示すブラックマトリクスを形成する。
まず、
図4に示す露光装置10に本発明のフォトマスクMを搭載し、フォトマスクMと被転写体であるカラーフィルタ基板WKとの間のギャップGを、40μm〜300μmの範囲に、好ましくは100μm〜150μmの範囲に調整する。次いで、カラーフィルタ基板上に、スリットコート等の手段により感光性材料を塗布する。
【0046】
ここで、感光性材料は、ネガ型の感光性材料であり、以下のものを使用することができる。
本発明におけるネガ型感光材料としては、顔料やカーボン、金属粒子等を分散した感光性樹脂が考えられる。既に顔料分散法によるパターニングとして公知なものであり、詳細な説明は省く。簡略に説明すれば、上記感光材料としては、着色剤と、反応性官能基を有するモノマーとを含有するもの、又はポリマーと、露光によりこれらを重合させる光重合開始剤と、溶剤とを含有するものが好ましい。その他、分散剤、界面活性剤などの添加物を含んでもよい。着色剤としては、顔料、カーボン粒子、金属粒子などを用いる。
【0047】
図4に示す露光装置を用いて、カラーフィルタ基板上に塗布された感光性材料に対して、
図1に示す本発明のフォトマスクを介して、フォトマスクのマスク基板側から露光光を照射して近接露光を行う。露光光は、フォトマスクにおける半透光部を介してカラーフィルタ基板に塗布された感光性材料に照射され、感光性材料の露光光照射領域を硬化させる。次いで、感光性材料を現像し、
図2(c)、6に示すように、カラーフィルタ基板上にブラックマトリクスを形成する。
【0048】
(本発明のフォトマスクに係るシミュレーションの結果)
次に、本発明のその他の効果を検証するため、下記に示すようなシミュレーションを行った。
図5に、シミュレーションの結果を示す。シミュレーションの条件は下記のとおりである。
<実施例:本発明のフォトマスク>
・半透光部の幅;11.0μm
・半透光膜の透過率;60%
ここで、半透光部の幅とは、
図2のWsで示す半透光膜が設けられた開口の幅を意味する。
<比較例:従来のバイナリフォトマスク>
・透光部の幅;6.0μm
・半透光膜無
ここで、バイナリフォトマスクとは、マスク基板上の遮光膜をパターニングして、マスク基板上に遮光部と透光部を形成した2階調のフォトマスクを意味する。
<実施例と比較例の共通事項>
・露光光の波長;波長313nmと波長365nmの混合
・近接露光ギャップ;75μm、100μm、125μm、150μm、175μm、
200μm、225μmの7通り
ここで、近接露光ギャップとは、フォトマスクの転写パターンと被加工物との距離を意味する。
【0049】
図5は、実施例及び比較例の各々について、近接露光ギャップを、75μm〜225μmの上記7通りに変化させたときの、透過光の光強度分布を示す。
図5のシミュレーション結果に基いて、近接露光ギャップが85μm〜115μm(近接露光ギャップ100μmを中心として±15%)の範囲において、実施例及び比較例の各々について、光強度の変化割合(グラフにおける傾き)を算出したところ、実施例のフォトマスクにおける光強度の変化割合は8.3%であり、比較例のフォトマスクにおける光強度の変化割合は28.2%であった。即ち、実施例のフォトマスクは、比較例のフォトマスクに比べ、近接露光のギャップが変化した場合において、光強度変化割合が小さいことが分かる。
【0050】
このように、カラーフィルタ基板上に形成するブラックマトリクスの第1ライン部よりも幅広であり、且つ露光光を一部透過させる半透光部を有する本発明のフォトマスクを使用したカラーフィルタの製造方法は、近接露光を行う場合に特に有効である。つまり、本発明のカラーフィルタの製造方法は、上記のように近接露光ギャップが様々に変化した場合であっても、感光性材料に照射される光強度の変化割合が小さい。よって、近接露光ギャップが様々に変化した場合であっても、感光性材料に対する光強度の変化が少ないため、カラーフィルタ基板上に形成されるブラックマトリクスの第1ライン部の線幅のばらつきを抑制することができる。