(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
全遊離アミノ酸中、グルタミン酸12〜50質量%、グリシン6〜25質量%、リジン8〜34質量%、スレオニン8〜34質量%及びプロリン15〜60質量%である遊離アミノ酸を含有するベーカリー用風味改善組成物。
さらに、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のベーカリー用風味改善組成物。
請求項1〜6のいずれか一項に記載のベーカリー用風味改善組成物を、ベーカリー生地に含まれる澱粉類100質量部に対し、遊離アミノ酸が0.001〜2質量部となる量で含有するベーカリー生地。
請求項1〜6のいずれか一項に記載のベーカリー用風味改善組成物を、ベーカリー生地に含まれる澱粉類100質量部に対し、遊離アミノ酸が0.001〜2質量部となる量で、ベーカリー生地原料中にあらかじめ配合して添加するか、又はベーカリー生地に添加することを特徴とするベーカリー生地の製造方法。
【背景技術】
【0002】
ベーカリー生地に、脱脂粉乳、練乳、ホエー蛋白濃縮物、あるいはバターなどの乳製品を使用するとコクのある良好な乳風味のベーカリー製品が得られることから、製菓・製パン業界で乳製品は広く使用されてきた。
【0003】
最近ではより深いコクと旨味を目指し、発酵乳や発酵バターなどの発酵乳製品を使用する例も増加してきている。
【0004】
しかし、発酵乳製品を使用する方法は、鋭い酸味を感じること、やや旨味が弱いことに加え、特にパンを製造する際には小麦粉の風味が感じにくくなるという問題があった。
【0005】
そのため、特に、製パン業界では、発酵種を使用することも多く見られるようになってきた。
この発酵種とは、上記発酵乳製品が発酵の基質として乳製品を使用するのに対し、製パンの主体である澱粉質、とくに小麦粉を発酵の基質として使用した発酵製品であり、元来は製パン時にイーストを使用せずにこの発酵種を使用してパンの発酵を行っていたのであるが、近年は、ベーカリー用イースト製品を使用したパンに、一部添加することでパンに深いコクと旨味を付与する目的で使用されることが多くなってきているのである。この発酵種には、ライ麦と小麦粉を含有する生地にライ麦の皮(ふすま)に付着している菌を培養していくルヴァン種やサワー種、ホップを使用したホップス種、レーズンに付着している菌を培養していくレーズン種、米麹を使用する酒種などがある。
【0006】
しかし、これらの発酵種は製造条件や保管条件、さらには植え継ぎによる品質のばらつきが大きく、そのため発酵種を使用したパンも風味が安定しないという問題があった。また、発酵種を使用したパンはコクと旨味の改良効果以上に酸味が強くなりやすく、更に、その酸味も鋭い酸味であるため、日本人の嗜好には必ずしもマッチしていない問題があった。
これらの問題により、発酵種を使用したパンはオーブンフレッシュベーカリーの一部で製造されるのみで、大規模なホールセールでは製造されることがなかった。
【0007】
一方、最近は上記のような発酵乳製品を使用するのではなく、発酵の最終産品であるアミノ酸や脂肪酸、脂肪酸エステルなどをブレンドした組成物を用いて発酵風味を演出する方法が考案されているが、中でもアミノ酸を活用した技術としては例えば特定の9種のアミノ酸を特定比で配合した発酵乳風味組成物や発酵乳風味改善剤(例えば特許文献1参照)、甘味主体のアミノ酸と甘味と苦味を有するアミノ酸を含有し特定のpHの水相を含有する、醗酵バターの風味を有する製パン用油中水型乳化油脂組成物(例えば特許文献2参照)、少なくとも3種のアミノ酸を含有するコク味付与剤(例えば特許文献3参照)などが提案されている。
【0008】
しかし、これらの組成物を使用してベーカリー食品、とくにパンを製造した場合、特許文献1に記載の方法では酸味が強く旨味が不足するという問題があり、特許文献2に記載の方法はやや酸味が鋭すぎるという問題があり、特許文献3に記載の方法は逆に酸味が不足し旨味がやや不足するという問題があった。
【0009】
そしてこれらの方法によって得られる風味は特定の風味であり、例えば特許文献1の方法では発酵乳風味、特許文献2の方法では醗酵バター風味、特許文献3の方法は乳製品の香りと呈味しか得られておらず、これらの方法では、醗酵種を使用したときの様な香りや深いコクと旨味を有するベーカリー製品は得られるものではなかった。
【0010】
このように、発酵種を使用せずとも発酵種を使用したかのような香り、深いコクと旨味を有するベーカリー製品を安定して製造する方法が求められていた。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のベーカリー用風味改善組成物について詳述する。
本発明のベーカリー用風味改善組成物は、全遊離アミノ酸中、グルタミン酸を12〜50質量%、好ましくは21〜50質量%、さらに好ましくは21〜36質量%含有する。グルタミン酸の含有量が12質量%未満であると、得られるベーカリー製品は不自然な香りとなり、トップの甘味が感じられず、醗酵種を使用したかのような深いコクや旨味が感じられないという問題があり、反対に50質量%を超えると得られるベーカリー製品の酸味が強くなりすぎてしまうという問題がある。
【0018】
本発明のベーカリー用風味改善組成物は、全遊離アミノ酸中、グリシンを6〜25質量%、好ましくは9〜25質量%、さらに好ましくは9〜20質量%含有する。グリシンの含有量が6質量%未満であると、得られるベーカリー製品は香りが弱くなり、また、甘味が弱く、醗酵種を使用したかのような深いコクや旨味が感じられないという問題があり、反対に25質量%を超えると得られるベーカリー製品に不自然な甘味が感じられる場合がある。
【0019】
本発明のベーカリー用風味改善組成物は、全遊離アミノ酸中、リジンを8〜34質量%、好ましくは10〜30質量%、さらに好ましくは10〜23質量%含有する。リジンの含有量が8質量%未満であると、得られるベーカリー製品は甘味が弱く、醗酵種を使用したかのような深いコクや旨味が不足するという問題があり、反対に34質量%を超えると得られるベーカリー製品に苦味が感じられるおそれがある。
【0020】
本発明のベーカリー用風味改善組成物は、全遊離アミノ酸中、スレオニンを8〜34質量%、好ましくは10〜30質量%、さらに好ましくは10〜23質量%含有する。スレオニンの含有量が8質量%未満であると、得られるベーカリー製品は香りが弱く、また全体的に呈味が薄く、醗酵種を使用したかのような深いコクや旨味が感じられないという問題があり、反対に34質量%を超えると得られるベーカリー製品に不自然な甘味が感じられる場合がある。
【0021】
本発明のベーカリー用風味改善組成物は、全遊離アミノ酸中、プロリンを15〜60質量%、好ましくは20〜50質量%、さらに好ましくは20〜40質量%含有する。プロリンの含有量が15質量%未満であると、得られるベーカリー製品は香りが弱く、トップに風味が感じられず、醗酵種を使用したかのような深いコクや旨味が感じられないという問題があり、反対に60質量%を超えると得られるベーカリー製品に強い苦味が感じられる場合がある。
【0022】
なお、本発明において、遊離アミノ酸とは、遊離アミノ酸、又は、アミノ酸の塩酸塩や、ナトリウム塩、カルシウム塩等の塩の形態の状態、或いはこれらの塩の水和物の状態を指し、ペプチドや蛋白質を構成する等の2個以上のアミノ酸結合体は含まない。2個以上のアミノ酸結合体の形態である場合は、本発明の効果は得られない。
【0023】
本発明のベーカリー用風味改善組成物における、上記5種の遊離アミノ酸を所定の割合で含有する遊離アミノ酸の含有量は、ベーカリー用風味改善組成物の形態や、ベーカリー生地への添加量に依存するため、特に限定されるものではなく、0.01質量%〜100質量%の範囲から適宜選択可能であるが、添加量が少なくなりすぎるとベーカリー原料の秤量時に扱いにくいこと、また、ベーカリー製品の生地物性やベーカリー製品の食感に大きな影響を与えることなく使用可能である点で、好ましくは0.01〜50質量%、より好ましくは0.1〜20質量%、更に好ましくは0.1〜10質量%である。
【0024】
本発明のベーカリー用風味改善組成物は、上記5種(グルタミン酸、グリシン、リジン、スレオニン及びプロリン)に加え、全遊離アミノ酸中、アルギニンを6〜25質量%、好ましくは9〜25質量%、さらに好ましくは9〜20質量%含有することにより、トップに感じる酸味がマイルドであるベーカリー製品を得ることができる。アルギニンの含有量が6質量%未満であると、ベーカリー製品の配合・製法によっては、得られるベーカリー製品のトップに酸味が強く感じられるおそれがあり、反対に25質量%を超えると得られるベーカリー製品に苦味が感じられる場合がある。
【0025】
なお、本発明のベーカリー用風味改善組成物においては、上記6種(グルタミン酸、グリシン、リジン、スレオニン、プロリン及びアルギニン)以外の遊離アミノ酸を含有させることができる。但し、良好な発酵種風味を得るためには、ベーカリー用風味改善組成物中に含まれる遊離アミノ酸に占める上記6種以外の遊離アミノ酸の合計量を、好ましくは50%未満、より好ましくは0〜30%とする。ベーカリー用風味改善組成物中の遊離アミノ酸含量中、上記6種以外の遊離アミノ酸の合計量が50%以上であると雑味が多くなり、深いコクと旨味を有するベーカリー食品が得られないおそれがある。
【0026】
本発明のベーカリー用風味改善組成物は、発酵種はもちろん発酵乳製品を含有せずとも、深いコクと旨味をベーカリー製品に付与することができるものであるが、該ベーカリー用風味改善組成物が発酵乳製品を含有するものであると、強いコク味を付与することができる点、さらには、その強いコク味が、使用する発酵乳製品の品質にかかわらず安定して得ることができる点で好ましい。本発明のベーカリー用風味改善組成物における上記発酵乳製品の含有量は、遊離アミノ酸1質量部に対し、好ましくは1〜50質量部、より好ましくは1〜40質量部である。
【0027】
本発明のベーカリー用風味改善組成物は、上記遊離アミノ酸に加え、乳清ミネラルを併用することが、さらに深いコク味を付与することができる点やアミノ酸の鋭い風味を抑える点に加え、乳風味付与効果を有する点や、生地改良効果(べたつきの防止)を有する点で好ましい。
【0028】
乳清ミネラルとは、乳又はホエー(乳清)から、可能な限り蛋白質や乳糖を除去したものであり、高濃度に乳の灰分を含有するという特徴を有する。そのため、そのミネラル組成は、原料となる乳やホエー中のミネラル組成に近い比率となる。
【0029】
本発明で使用する乳清ミネラルとしては、上記の乳清ミネラルの高い効果が得られる点で、固形分中のカルシウム含量が2質量%未満、特に1質量%未満の乳清ミネラルを使用することが好ましい。尚、該カルシウム含量は低いほど好ましい。
【0030】
牛乳から通常の製法で製造された乳清ミネラルは、固形分中のカルシウム含量が5質量%以上である。上記カルシウム含量が2質量%未満の乳清ミネラルは、乳又はホエーから、膜分離及び/又はイオン交換、さらには冷却により、乳糖及び蛋白質を除去して乳清ミネラルを得る際に、あらかじめカルシウムを低減した乳を使用した酸性ホエーを用いる方法、あるいは、甘性ホエーから乳清ミネラルを製造する際にカルシウムを除去する工程を挿入することで得ることができるが、工業的に実施する上での効率やコストの点で、甘性ホエーから乳清ミネラルを製造する際にある程度ミネラルを濃縮した後に、カルシウムを除去する工程を挿入することで得る方法を採ることが好ましい。ここで使用する脱カルシウムの方法としては、特に限定されず、調温保持による沈殿法等の公知の方法を採ることができる。
【0031】
本発明のベーカリー用風味改善組成物において、上記乳清ミネラルの含有量は、遊離アミノ酸100質量部に対して、固形分として好ましくは10〜4000質量部、より好ましくは30〜300質量部、さらに好ましくは30〜80質量部である。上記乳清ミネラルの含有量がこの範囲であれば、本発明のベーカリー用風味改善組成物をベーカリー生地に配合する際に、ベーカリー生地における後述の好ましい遊離アミノ酸量及び乳清ミネラル量を同時に満足させることが容易になる。
【0032】
本発明のベーカリー用風味改善組成物は、乳固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を含有することが、ベーカリー製品、とくにパンに使用した場合に上記アミノ酸の呈味性を向上させると共にパン生地に添加した際の分散性を高めることができ、さらには得られるパンの歯切れを向上させることができる点で好ましい。乳原料の乳固形分中のリン脂質の含有量は、好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは4質量%以上、最も好ましくは5〜40質量%である。
本発明のベーカリー用風味改善組成物における上記乳原料の配合量は、遊離アミノ酸1質量部に対し、上記乳原料に含まれる固形分が好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは0.3〜3質量部となる量である。
【0033】
また、上記の乳原料は、牛乳、ヤギ乳、ヒツジ乳、人乳などの乳から製造されたものであるのが好ましく、特に牛乳から製造されたものであるのが好ましい。
上記の乳原料としては、乳固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料であればどのようなものでも構わないが、具体的な例としてクリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分があげられる。
【0034】
上記のクリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の製造方法は、例えば以下の通りである。まず、牛乳を遠心分離して得られる脂肪濃度30〜40質量%のクリームをプレートで加温し、遠心分離機によってクリームの脂肪濃度を70〜95質量%まで高める。次いで、乳化破壊機で乳化を破壊し、再び遠心分離機で処理することによってバターオイルが得られる。本発明で用いられる上記水相成分は、最後の遠心分離の工程でバターオイルの副産物として発生するものである。
【0035】
上記のバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の製造方法は、例えば以下の通りである。まず、バターを溶解機で溶解し熱交換機で加温する。これを遠心分離機で分離することによってバターオイルが得られる。本発明で用いられる上記水相成分は、最後の遠心分離の工程でバターオイルの副産物として発生するものである。該バターオイルの製造に用いられるバターとしては、通常のものが用いられる。
【0036】
本発明では、上記の乳原料をさらに濃縮したものや乾燥したもの、冷凍処理をしたものなどを用いることも可能である。溶剤を用いて濃縮したものは風味上の問題から用いないことが好ましい。
【0037】
本発明で用いる上記の乳原料における乳固形分中のリン脂質の定量方法は、例えば以下のような方法にて測定することができる。但し、抽出方法などについては、乳原料の形態などによって適正な方法が異なるため、以下の定量方法に限定されるものではない。
【0038】
まず、乳原料の脂質をFolch法を用いて抽出する。次いで、抽出した脂質溶液を湿式分解法(日本薬学会編、衛生試験法・注解2000 2.1食品成分試験法に記載の湿式分解法に準じる)にて分解した後、モリブデンブルー吸光度法(日本薬学会編、衛生試験法・注解2000 2.1食品成分試験法に記載のリンのモリブデン酸による定量に準じる)によりリン量を求める。求められたリン量から以下の計算式を用いて乳原料の乳固形分100g中のリン脂質の含有量(g)を求める。
リン脂質(g/100g)=〔リン量(μg)/(乳原料−乳原料の水分(g))×25.4×(0.1/1000)
【0039】
また、本発明では、上記の乳原料中のリン脂質の一部または全部がリゾ化されたリゾ化物を使用することもできる。該リゾ化物は、乳原料をそのままリゾ化したものであっても良く、また乳原料を濃縮した後にリゾ化したものであっても良い。また、得られたリゾ化物に、さらに濃縮あるいは噴霧乾燥処理などを施しても良い。これらのリゾ化物は本発明におけるリン脂質の含有量に含めるものとする。
【0040】
上記の乳原料中のリン脂質をリゾ化するには、ホスホリパーゼAで処理すれば良い。ホスホリパーゼAは、リン脂質分子のグリセロール部分と脂肪酸残基とを結びつけている結合を切断し、この脂肪酸残基を水酸基で置換する作用を有する酵素である。ホスホリパーゼAは、作用する部位の違いによってホスホリパーゼA1とホスホリパーゼA2とに分かれるが、ホスホリパーゼA2が好ましい。ホスホリパーゼA2の場合、リン脂質分子のグリセロール部分の2位の脂肪酸残基が選択的に切り離される。
【0041】
また、本発明では、上記の乳原料は、上記アミノ酸の呈味性とベーカリー生地への分散性を高めることができる点で、好ましくはpHが3〜6、より好ましくはpH4〜6、さらに好ましくは4.7〜5.8となるように酸処理を行ったものであることが好ましい。
【0042】
上記酸処理を行うには、酸を添加する方法であっても、また、乳酸醗酵などの醗酵処理を行う方法であってもよいが、好ましくは酸を添加する。該酸としては、無機酸であっても有機酸であってもよいが、有機酸であることが好ましい。該有機酸としては、酢酸、乳酸、クエン酸、グルコン酸、フィチン酸、ソルビン酸、アジピン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、アスコルビン酸等が挙げられ、果汁、濃縮果汁、発酵乳、ヨーグルトなどの有機酸を含有する飲食品も用いることができるが、本発明においてはより酸味が少なく、風味に影響しない点でフィチン酸及び/又はグルコン酸を使用することが好ましい。
【0043】
また、本発明では、上記の乳原料は、上記アミノ酸の呈味性とベーカリー生地への分散性を高めることができる点で、リン脂質含有量1質量部あたり、好ましくは0.01〜1質量部、より好ましくは0.02〜0.5質量部、さらに好ましくは0.05〜0.3質量部のカルシウム塩を添加しても良い。
【0044】
上記カルシウム塩としては塩化カルシウム、乳酸カルシウム、リン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、炭酸カルシウム、グルタミン酸カルシウム、アスコルビン酸カルシウム等が例示され、このうち1種又は2種以上を組み合わせて用いることができるが、本発明においては得られるベーカリー用風味改善組成物の風味が良好である点で塩化カルシウム及び/又は乳酸カルシウムを使用することが好ましい。
【0045】
また、本発明で用いる上記の乳原料は、ベーカリー生地への分散性を高めることが可能である点及び得られるベーカリー製品、とくにパンの歯切れ感向上効果をより高めることができる点で、均質化処理を行なったものであることが好ましい。とくに上記リゾ化処理、酸処理、カルシウム塩添加を行なう場合は、その効果を高めるために均質化処理を行なうことが特に好ましい。均質化処理は1回でも良く、2回以上行っても良い。また、粘性が高いなどの場合は、加水により粘度を調整してから均質化処理を行なってもよい。該均質化処理に用いられる均質化機としては、例えば、ケトル型チーズ乳化釜、ステファンミキサーの様な高速せん断乳化釜、スタティックミキサー、インラインミキサー、バブル式ホモジナイザー、ホモミキサー、コロイドミル、ディスパーミルなどがあげられる。均質化圧力は特に制限はないが、好ましくは0〜100MPaである。2段式ホモゲナイザーを用いて均質化処理をする場合は、例えば、1段目3〜100MPa、2段目0〜5MPaの均質化圧力にて行っても良い。
【0046】
さらに本発明で用いる上記の乳原料は、UHT加熱処理を行っても良い。UHT加熱処理の条件としては特に制限はないが、処理温度は好ましくは120〜150℃であり、処理時間は好ましくは1〜6秒である。
【0047】
このようにして得られる本発明で用いる上記の乳原料や乳原料加工品は、液状、ペースト状、粉末状、固形状などの状態のものとすることができ、本発明のベーカリー用風味改善組成物ではいずれの状態のものでも使用できる。
【0048】
また、本発明のベーカリー用風味改善組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、上記の遊離アミノ酸、乳清ミネラル及び乳固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料以外の、その他の原料を配合することが出来る。上記のその他の原料としては、水、油脂類、澱粉類、ゲル化剤や安定剤、乳化剤、金属イオン封鎖剤、糖類や甘味料、乳や乳製品、卵類、タンパク質及びその分解物、食物繊維、食塩、無機塩、有機酸塩、酵素、ジグリセライド、植物ステロール、植物ステロールエステル、果汁、果肉、野菜、野菜汁、香辛料、香辛料抽出物、ハーブ、デキストリン、カカオ及びカカオ製品、コーヒー及びコーヒー製品、イースト、イーストフード、ペプチド、アルコール、その他各種食品素材、重炭安・重曹・ベーキングパウダー等の膨張剤、アスコルビン酸・シスチン等の酸化剤や還元剤、調味料、着香料、着色料、保存料、酸化防止剤、pH調整剤、強化剤等を挙げることができる。本発明のベーカリー用風味改善組成物において、その他の成分の含有量は、成分の種類等によって適宜選択すればよく特に制限されるものではない。
【0049】
上記の油脂類としては、特に限定されないが、バター、ラード、ヘット、マーガリン、ショートニング、サラダ油、食用油脂、食用精製加工油脂、水中油型クリーム、濃縮牛乳状組成物等を挙げることができ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。これらの油脂類に使用する油脂としては、特に限定されず、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂、動物油脂並びにこれらに水素添加、分別及びエステル交換から選択される一又は二以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。
【0050】
上記の澱粉類としては、特に限定されるものではないが、例えば、薄力粉・中力粉・強力粉・全粒粉・デュラム粉等の小麦粉、大麦粉、米粉、ライ麦粉、大豆粉、ハトムギ粉等の穀粉類をはじめ、小麦でんぷん、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、米でんぷん、甘薯でんぷん、じゃがいもでんぷん、タピオカでんぷん等の食用澱粉、さらにはこれらの穀粉類や食用澱粉に酵素処理、酸処理、アルカリ処理、エステル化、リン酸架橋化、焙焼、湿熱等の物理的、化学的処理を行った化工澱粉類、水に溶解し易いように予め加熱処理あるいはアルカリ処理等により糊化させた糊化澱粉類を挙げることができる。本発明では、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0051】
上記ゲル化剤や安定剤としては、ゼラチン、アルギン酸、アルギン酸塩、ペクチン、LMペクチン、HMペクチン、海藻抽出物、海藻エキス、寒天、グルコマンナン、ローカストビーンガム、グアーガム、ジェランガム、タラガントガム、キサンタンガム、カラギーナン、カードラン、タマリンドシードガム、カラヤガム、タラガム、トラガントガム、アラビアガム、カシアガム、デキストラン等が挙げられる。本発明では、上記ゲル化剤や安定剤の中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0052】
上記乳化剤としては、レシチン、酵素処理レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。本発明では、上記の乳化剤の中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0053】
上記糖類としては、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、酵素糖化水飴、乳糖、還元澱粉糖化物、異性化液糖、ショ糖結合水飴、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、ソルビトール、還元乳糖、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、イヌリン、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖等が挙げられる。また、上記甘味料としては、スクラロース、アセスルファムカリウム、ステビア、アスパルテーム等が挙げられる。本発明では、上記の糖類・甘味料の中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0054】
なお、本発明のベーカリー用風味改善組成物は油脂を含有する場合、油分と水分を含有する乳化油脂の形態であることが好ましい。その場合、その乳化型は水中油型であっても油中水型であってもよいが、下記のベーカリー生地へ含有させる方法として折り込み用を選択する場合以外はベーカリー生地への分散性が高い点において水中油型であることが好ましい。なお油中水型には油中水中油型や油中油型を含み、水中油型には水中油中油型を含む。
【0055】
なお、本発明のベーカリー用風味改善組成物が、水中油型乳化油脂の形態である場合、好ましい油分含量は、上記のその他の成分中に含まれる油脂分も含めた油分含量が、好ましくは3質量%〜50質量%、さらに好ましくは5質量%〜40質量%、より好ましくは8質量%〜40質量%であり、最も好ましくは12質量%〜30質量%となる量である。
また、その場合の好ましい水分含量は、上記のその他の成分中に含まれる水分も含めた水分含量が、好ましくは20質量%〜90質量%、さらに好ましくは40質量%〜70質量%、より好ましくは50質量%〜70質量%であり、最も好ましくは50質量%〜60質量%となる量である。
【0056】
本発明のベーカリー用風味改善組成物が、油中水型乳化油脂の形態である場合、好ましい油分含量は、上記のその他の成分中に含まれる油脂分も含めた油分含量が、好ましくは30質量%〜98質量%、さらに好ましくは50質量%〜98質量%、より好ましくは70質量%〜95質量%である。
また、その場合の好ましい水分含量は、上記のその他の成分中に含まれる水分も含めた水分含量が、好ましくは1質量%〜70質量%、さらに好ましくは1質量%〜50質量%、より好ましくは4質量%〜30質量%である。
【0057】
本発明のベーカリー用風味改善組成物の性状としては、特に制限されず、固形、顆粒状、粉末状、ペースト状、流動状、液状、可塑性のいずれの形態であってもよいが、ベーカリー生地、とくにパン生地の場合に均質にすばやく分散させることが容易である点で、ペースト状、流動状、液状、可塑性のいずれかの形態であることが好ましい。
【0058】
本発明のベーカリー用風味改善組成物の製造方法としては特に制限されず、公知の方法を使用することができる。
【0059】
例えば、本発明のベーカリー用風味改善組成物の形態が顆粒状、あるいは粉末状の場合は、粉体混合用混合機を使用し、各原料を混合することによって得る方法や、各原料を含有する水溶液や懸濁液あるいは水中油型乳化物を製造後、スプレードライやフリーズドライ等により粉末化する方法を挙げることができる。
また、本発明のベーカリー用風味改善組成物の形態が液状、流動状、あるいはペースト状の場合は、水や食用油脂等に各原料を溶解又は分散し、必要に応じ、さらに均質化することによって得ることができる。水を使用する場合を例に挙げると、まず水に、上記5種(グルタミン酸、グリシン、リジン、スレオニン及びプロリン)の遊離アミノ酸を溶解し、必要に応じさらにその他の水溶性の原料を溶解させた水相を用意する。そして、この水相を殺菌することが好ましい。なお、本発明における殺菌には滅菌も含む。
該殺菌は、インジェクション式、インフュージョン式等の直接加熱方式、あるいはプレート式・チューブラー式・掻き取り式等の間接加熱方式を用いたUHT・HTST・バッチ式、レトルト、マイクロ波加熱等の加熱滅菌もしくは加熱殺菌処理、あるいは直火等の加熱調理により行うことができる。そして冷却することにより、本発明のベーカリー用風味改善組成物が得られる。
また、殺菌する前又は後で、ホモジナイザーにより均質化しても良い。均質化処理を行う場合の均質化圧力は、3MPa〜30MPaとするのが好ましい。
【0060】
次に、本発明のベーカリー用風味改善組成物が油脂を含有する場合であって、その形態が水中油型乳化物の場合の好ましい製造方法を説明する。
【0061】
詳しくは、まず水に、遊離アミノ酸組成がグルタミン酸12〜50質量%、グリシン6〜25質量%、リジン8〜34質量%、スレオニン8〜34質量%及びプロリン15〜60質量%となるように遊離アミノ酸を溶解し、必要に応じさらにその他の水溶性の原料を溶解させた水相を用意する。一方、食用油脂に油溶性の原料を溶解させた油相を用意する。そして、この水相と油相を、好ましくは45℃〜75℃で予備乳化し、水中油型の予備乳化物を得る。次いでこの予備乳化物を殺菌することが好ましい。なお、本発明における殺菌には滅菌も含む。
該殺菌は、インジェクション式、インフュージョン式等の直接加熱方式、あるいはプレート式・チューブラー式・掻き取り式等の間接加熱方式を用いたUHT・HTST・バッチ式、レトルト、マイクロ波加熱等の加熱滅菌もしくは加熱殺菌処理、あるいは直火等の加熱調理により行うことができる。そして冷却することにより、本発明のベーカリー用風味改善組成物が得られる。
【0062】
また、殺菌する前又は後で、ホモジナイザーにより均質化しても良い。均質化処理を行う場合の均質化圧力は、3MPa〜30MPaとするのが好ましい。
【0063】
次に、本発明のベーカリー用風味改善組成物が油脂を含有する場合であって、その形態が油中水型乳化物の場合の好ましい製造方法を説明する。
【0064】
詳しくは、まず水に、遊離アミノ酸組成がグルタミン酸12〜50質量%、グリシン6〜25質量%、リジン8〜34質量%、スレオニン8〜34質量%及びプロリン15〜60質量%となるように遊離アミノ酸を溶解し、必要に応じさらにその他の水溶性の原料を溶解させた水相を用意する。一方、食用油脂に油溶性の原料を溶解させた油相を用意する。そして、この水相と油相を、好ましくは45〜75℃で予備乳化し、油中水型の予備乳化物を得る。次いでこの予備乳化物を殺菌することが好ましい。なお、本発明における殺菌には滅菌も含む。殺菌方法は、タンクでのバッチ式、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式等の何れの方法を用いてもよい。
次に、冷却し、結晶化する。好ましくは冷却可塑化する。冷却条件は、好ましくは−0.5℃/分以上、さらに好ましくは−1℃/分以上とする。この際、徐冷却よりも、急速冷却の方が好ましい。なお、冷却可塑化する機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えば、ボテーター、コンピネーター、パーフェクター等のマーガリン製造機やプレート型熱交換機等が挙げられ、また、開放型のダイアクーラーとコンプレクターとの組み合わせも挙げられる。
【0065】
本発明のベーカリー用風味改善組成物を製造する際の何れかの工程で、窒素、空気等を含気させてもよい。
【0066】
本発明のベーカリー用風味改善組成物のベーカリー生地への添加量は、ベーカリー生地に含まれる澱粉類100質量部に対し、遊離アミノ酸が好ましくは0.001〜2質量部、より好ましくは0.01〜1質量部、さらに好ましくは0.01〜0.2質量部となる量である。上記遊離アミノ酸の含有量が0.001質量部未満であると、本発明の効果が見られず、2質量部を超えると、雑味を感じることがある。
【0067】
本発明のベーカリー用風味改善組成物が、さらに乳清ミネラルを含有する場合は、ベーカリー生地に含まれる澱粉類100質量部に対し、乳清ミネラルが、固形分として好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.1〜2質量部となる量とする。上記乳清ミネラルの含有量が0.01質量部未満であると、乳清ミネラルの併用効果が見られにくく、5質量部を超えると、苦味を感じるおそれがある。
【0068】
次に、本発明のベーカリー生地について説明する。
本発明のベーカリー生地は、上記本発明のベーカリー用風味改善組成物を、ベーカリー生地に含まれる澱粉類100質量部に対し、遊離アミノ酸が0.001〜2質量部、好ましくは0.01〜1質量部、より好ましくは0.01〜0.2質量部となる量で含有するものである。
【0069】
また、本発明のベーカリー用風味改善組成物が、さらに乳清ミネラルを含有する場合は、ベーカリー生地に含まれる澱粉類100質量部に対し、乳清ミネラルが、固形分として好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.1〜2質量部となる量で、本発明のベーカリー用風味改善組成物を含有することが好ましい。
【0070】
上記のベーカリー生地としては、例えば、クッキー生地、パイ生地、シュー生地、サブレ生地、スポンジケーキ生地、バターケーキ生地、ケーキドーナツ生地等の菓子生地や、食パン生地、フランスパン生地、デニッシュ生地、スイートロール生地、イーストドーナツ生地等のパン生地が挙げられるが、本発明のベーカリー生地は、パン生地であることが好ましい。
【0071】
次に、本発明のベーカリー生地の製造方法について述べる。
本発明のベーカリー生地の製造方法は、本発明のベーカリー用風味改善組成物を含有させる以外は、通常のベーカリー生地の製造方法でよい。本発明のベーカリー生地の製造方法においては、上記本発明のベーカリー用風味改善組成物を、ベーカリー生地に含まれる澱粉類100質量部に対し、遊離アミノ酸が0.001〜2質量部、好ましくは0.01〜1質量部、より好ましくは0.01〜0.2質量部となるように添加する。
【0072】
本発明のベーカリー用風味改善組成物をベーカリー生地へ含有させる方法は練り込みであっても折り込みであってもよいが、ベーカリー生地への分散性が高い点において練り込みであることが好ましい。また、澱粉類、油脂類、水等のベーカリー生地原料にあらかじめ混合して添加する方法や、出来上がったベーカリー生地に添加して混合する方法であってもよい。なお、ベーカリー生地原料にあらかじめ混合する場合には、ミックス粉とすることもできる。
【0073】
ベーカリー生地が菓子生地の場合、シュガーバッター法、フラワーバッター法、オールインミックス法、後粉法など各種の製造方法により製造することができる。
ベーカリー生地がパン生地の場合、中種法でも、直捏法でも、液種法でも製造することができる。
【0074】
パン生地を中種法で製造する場合は、本発明のベーカリー用風味改善組成物を中種生地及び/または本捏生地に含有させることにより製造することができ、直捏法で製造する場合は、本発明のベーカリー用風味改善組成物を生地に含有させることにより製造することができ、液種法で製造する場合は、本発明のベーカリー用風味改善組成物を液種生地及び/または本捏生地に含有させることにより製造することができる。
【0075】
なお、本発明のベーカリー用風味改善組成物が乳化油脂である場合、ベーカリー生地に本発明のベーカリー用風味改善組成物を含有させる方法としては、練り込みであっても折り込みであってもよく、併用してもよい。
なお、得られた上記ベーカリー生地は、冷蔵、冷凍保存することが可能である。
【0076】
次に、本発明のベーカリー食品について述べる。
本発明のベーカリー食品は、本発明のベーカリー生地を加熱処理、好ましくは焼成することによって得られるものであり、発酵種を使用せずとも発酵種を使用したかのような香り、深いコクと旨味を有するという特徴を有する。
【0077】
加熱処理方法としては、例えば、上記ベーカリー生地を、展板上又は焼き型や紙型に積置又は充填後、焼成する方法等が挙げられる。あるいは、上記ベーカリー生地を、他のベーカリー生地と複合させ、焼成してもよい。複合の方法としては、他のベーカリー生地上に上記ベーカリー生地を積置する方法や、上記ベーカリー生地の上に他のベーカリー生地を積載する方法や、他のベーカリー生地中に上記ベーカリー生地を充填あるいは包餡する方法、上記ベーカリー生地中に他のベーカリー生地を充填あるいは包餡する方法等が挙げられる。
焼成条件は、好ましくは160〜240℃で5〜30分、より好ましくは180〜220℃で8〜30分、さらに好ましくは180〜210℃で10〜20分である。
【実施例】
【0078】
以下に実施例を比較例とともに挙げるが、本発明は、これらの実施例に制限されるものではない。
【0079】
〔実施例1〜9及び比較例1〜11〕
<ベーカリー用風味改善組成物の製造I、及び、ベーカリー試験>
グルタミン酸、グリシン、リジン、スレオニン、プロリン及びアルギニンを表1に記載の比率で混合したアミノ酸組成物0.5質量部を水99.5質量部に溶解し、本発明及び比較例のベーカリー用風味改善組成物1〜20とした。得られたベーカリー用風味改善組成物を用いて、下記の配合・製法でプルマン型食パンを製造し、得られた食パンの風味について評価し、結果を表2に示した。なお、表1中の%は、質量%を意味する。
【0080】
<プルマン型食パンの配合・製法>
強力粉70質量部、生イースト2質量部、イーストフード0.1質量部、及び水40質量部をミキサーボウルに投入し、フックを使用し、低速で3分、中速で2分混合し、中種生地を得た。捏ね上げ温度は24℃であった。この中種生地を生地ボックスに入れ、温度28℃、相対湿度80%の恒温室で4時間、中種醗酵を行なった。終点温度は29℃であった。この中種醗酵の終了した生地を再びミキサーボウルに投入し、さらに、強力粉30質量部、上白糖6質量部、脱脂粉乳2質量部、食塩1.8質量部、ベーカリー用風味改善組成物10質量部(ベーカリー生地に含まれる澱粉類100質量部に対し、遊離アミノ酸が0.05質量部)及び水12.5質量部を添加し、低速で3分、中速で3分ミキシングした。ここで、ショートニング5質量部を投入し、フックを使用し、低速で3分、中速で3分、高速で1分ミキシングを行ない、食パン生地を得た。得られた食パン生地の捏ね上げ温度は28℃であった。ここで、フロアタイムを30分とった後、220gに分割・丸めを行なった。次いで、ベンチタイムを30分とった後、 モルダー成形し、6本をU字にして3斤型プルマン型に入れ、38℃、相対湿度85%で50分ホイロをとった後、200℃に設定した固定オーブンに入れ40分焼成してプルマン型食パンを得た。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
〔実施例10〜16〕
<ベーカリー用風味改善組成物の製造II>
グルタミン酸、グリシン、リジン、スレオニン、プロリン、アルギニン、乳清ミネラル、発酵乳製品、クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(リン脂質含有量3.7質量%、蛋白質含有量12質量%、乳固形分38質量%、乳固形分中のリン脂質の含有量9.8質量%)、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料の酸処理物、を表3に記載の比率で混合・溶解した水相に、パーム軟部油のランダムエステル交換油脂、パームステアリン、レシチン、及びグリセリンモノステアリン酸エステルを表3に記載の配合で混合・溶解した油相を添加・混合して水中油型の予備乳化物を得、これをホモゲナイザーにて均質化圧力3MPaにて均質化後、UHT加熱処理(142℃、4秒)を行った。そして、再度、ホモゲナイザーにて均質化圧力12MPaにて均質化を行った。これを5〜10℃に冷却し、水中油型の乳化油脂組成物の形態である本発明のベーカリー用風味改善組成物21〜27とした。
なお、乳清ミネラル、発酵乳製品、及び、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料の酸処理物については以下の配合・製法によって得られたものを使用した。
【0084】
<乳清ミネラルの調製>
チーズを製造する際に副産物として得られる甘性ホエーをナノ濾過膜分離後、更に、逆浸透濾過膜分離により固形分が20質量%となるまで濃縮した後、更に80℃で20分間の加熱処理をして生じた沈殿を遠心分離して除去し、これを更にエバポレーターで濃縮し、スプレードライ法により、固形分97質量%、固型分中のカルシウム含量が0.4質量%である乳清ミネラルを得た。
【0085】
<発酵乳製品の調製>
脱脂粉乳10質量部、ホエイパウダー2質量部及び水87.69質量部を混合し、55℃に加熱し、ケミコロイド社製シャーロットコロイドミルにてクリアランス0.2mm、回転数3500rpmにて均質化し、プレート式熱交換器にて80℃で3分間加熱殺菌後、プレート式熱交換器にて30℃に冷却し、乳原料を含有するミックス液を調製した。第1乳酸発酵工程として、この乳原料を含有するミックス液にLactococcus lactis subsp. lactis var. diacetylactis及びLeuconostoc mesenteroides subsp. Cremorisの2種から成る乳酸菌スターター0.01質量部を加え、30℃で15回転/分で攪拌しながら5時間発酵した。ここで、クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(リン脂質含量3.7質量%、蛋白質含量12質量%、無脂乳固形分33.4質量%、乳由来の固形分38質量%、乳由来の固形分中のリン脂質含量9.8質量%)5質量部を添加し、更に第2乳酸発酵工程として、30℃で10回転/分で攪拌しながら7時間発酵し、pHが4.71である発酵乳製品を得た。
【0086】
<乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料の酸処理物の調製>
「クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(リン脂質含有量3.7質量%、蛋白質含有量12質量%、乳固形分38質量%、乳固形分中のリン脂質の含有量9.8質量%)75質量%に、水25質量%を加え、混合し、55〜60℃に加温した後、ホモゲナイザーにて均質化圧力12MPaにて均質化したものにフィチン酸0.18質量%を加えて、pHを4.7に調整した。さらにこれをホモゲナイザーにて均質化圧力3MPaにて均質化後、UHT加熱処理(142℃、4秒)を行った。そして、再度、ホモゲナイザーにて均質化圧力12MPaにて均質化を行った。これを5〜10℃に冷却し、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料の酸処理物を得た。
【0087】
〔実施例17〜25〕
<ベーカリー試験II>
得られたベーカリー用風味改善組成物21〜27を用いて、表4に記載の配合で、且つ、上記の製法でプルマン型食パンを製造し、得られた食パンの風味について下記の評価基準にしたがって評価を行い、結果を表5に示した。なお、表3及び表4中の数値は質量部である。
【0088】
【表3】
【0089】
【表4】
【0090】
【表5】
【0091】
〔評価基準〕
・乳風味
◎+ :濃厚な乳風味を強く感じる
◎ :良好な乳風味を強く感じる
○+ :乳風味を強く感じる
○ :乳風味を感じる
△ :乳風味が弱い
× :乳風味が感じられない
・香り
◎ :極めて良好
○ :良好
△ :やや弱い
× :弱い
・コク
◎ :極めて良好
○ :良好
△ :やや弱い
× :弱い
・旨味
◎ :極めて良好
○ :良好
△ :やや弱い
× :弱い
【0092】
〔実施例26〜30〕
<ベーカリー用風味改善組成物の製造III>
グルタミン酸、グリシン、リジン、スレオニン、プロリン、乳清ミネラル、発酵乳製品、を表6に記載の比率で混合・溶解した水相を、パーム軟部油のランダムエステル交換油脂、パームステアリン、レシチン、及びグリセリンモノステアリン酸エステル0.2質量部を表6に記載の配合で混合・溶解した油相に添加・混合して油中水型の予備乳化物を得た。そして、90℃で1分間、蒸気を用いて殺菌処理したのち、コンビネーターを用いて急冷可塑化工程(−20℃/分以上)にかけ、15℃まで冷却し、これを縦420mm、横285mm、厚さ9mmのシート状に成形し、さらに5℃にて2週間保管し、油中水型の乳化油脂組成物の形態である本発明のベーカリー用風味改善組成物28〜32とした。なお、表6中の数値は質量部である。
【0093】
なお、乳清ミネラル、発酵乳製品、及び、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料の酸処理物については上記<ベーカリー用風味改善組成物の製造II
>記載の配合・製法によって得られたものを使用した。
【0094】
〔実施例31〜35〕
<ベーカリー試験III>
得られたベーカリー用風味改善組成物28〜32を用いて、下記の配合・製法でデニッシュを製造し、得られたデニッシュの風味について上記のベーカリー試験IIと同様の評価
基準にしたがって評価を行い、結果を表7に示した。
【0095】
【表6】
【0096】
(デニッシュの配合・製法)
<配合>
強力粉 70質量部
薄力粉 30質量部
イーストフード 0.1質量部
イースト 4質量部
食塩 1.6質量部
砂糖 6質量部
脱脂粉乳 3質量部
練り込み油脂(ショートニング) 5質量部
水 58質量部
ベーカリー用風味改善組成物 54質量部
【0097】
<製法>
ベーカリー用風味改善組成物以外の原料を、たて型ミキサーにて低速3分及び中速5分ミキシングした小麦粉生地(捏ね上げ温度=24℃)を2℃の冷蔵庫内で一晩リタードした。この小麦粉生地に実施例26〜30で得られたベーカリー用風味改善組成物28〜32それぞれをのせ、常法によりロールイン(4つ折1回、3つ折2回)し、36層に折り畳み、厚さ30mmのデニッシュ生地を得た。この生地を2℃の冷蔵庫内で30分レストを取った後、厚さ3mmに圧延し、直径100mmの型で生地を打ち抜き展板に載せ、32℃、相対湿度85%、60分のホイロを取った後、210℃の固定窯で11分焼成し、それぞれ、実施例31〜35のデニッシュを得た。
【0098】
【表7】