特許第6282875号(P6282875)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282875
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】製パン改良材
(51)【国際特許分類】
   A21D 2/18 20060101AFI20180208BHJP
   A21D 13/00 20170101ALI20180208BHJP
【FI】
   A21D2/18
   A21D13/00
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-19487(P2014-19487)
(22)【出願日】2014年2月4日
(65)【公開番号】特開2015-144592(P2015-144592A)
(43)【公開日】2015年8月13日
【審査請求日】2016年12月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 俊介
(72)【発明者】
【氏名】藪下 哲成
(72)【発明者】
【氏名】水谷 佳奈子
(72)【発明者】
【氏名】廣川 敏幸
(72)【発明者】
【氏名】三木 研司
【審査官】 飯室 里美
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/010548(WO,A1)
【文献】 特開平08−009872(JP,A)
【文献】 特開平06−038665(JP,A)
【文献】 特開2011−087513(JP,A)
【文献】 特開2006−204130(JP,A)
【文献】 特開2006−081515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量1万〜4万のデキストランを含有する製パン改良材を、パン生地に含まれる穀粉類100質量部に対し、分子量1万〜4万のデキストランが0.01質量部〜0.4質量部となる量を含有するパン生地
【請求項2】
上記製パン改良材が、さらに高度分岐環状デキストリンを含有することを特徴とする請求項1記載のパン生地
【請求項3】
上記製パン改良材が、さらに乳固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を含有することを特徴とする請求項1又は2記載のパン生地
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のパン生地を加熱処理したパン。
【請求項5】
パン生地に含まれる穀粉類100質量部に対し、分子量1万〜4万のデキストランを0.01質量部〜0.4質量部添加することを特徴とする製パン改良方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソフトで歯切れが良好であるパンを、生地物性を悪化させることなく得るための製パン改良材に関する。
【背景技術】
【0002】
パンに求められる食感としては、ソフト性やしとり感はもちろん、最近では、歯切れに対する関心が高く、プルマンブレッド等の食パンであっても、従来のパンに比べて、よりソフトでしとりがあり、歯切れが良好なパンが求められている。
【0003】
ここで、ソフトでしとりのあるパンを得るには、基本的には水分を多く配合すればよい。しかし、水分を多く配合したパン生地は、丸めや成型時にべたついて扱いにくい等、生地物性が悪化してしまう問題があった。また、得られたパンは、確かにソフトでしっとりとしているが、ねちゃついた食感になってしまう問題もあった。さらに水分含量の高いソフトなパンは老化しやすく、短期間でぱさついたパンになってしまうという問題もあった。
【0004】
一方、歯切れが良好であるパンを得るには、焼成時間を延長するなどの方法で水分を減らしたパンにすればよい。しかし、水分含量の低いパンは当然にしてソフト性やしとり感が絶対的に少なくなってしまう。
そのため、以前より、製パン時の生地物性の改良やパンの食感改良、老化防止については、乳化剤、増粘安定剤、酵素等様々な改良成分を用いた研究がなされており、その結果、それらの成分を単独で、あるいは組み合わせることで、上記問題を改善するための製パン改良材が多種紹介されている。
【0005】
とくに、ソフト性と歯切れを両立させる方法として、コンパウンド結晶を含有する油脂組成物を使用する方法(たとえば特許文献1参照)、直接β型の油脂結晶と特定の乳化剤とを含有する製パン練込油脂を使用する方法(例えば特許文献2参照)、特定の乳清ミネラルを使用する方法(例えば特許文献3参照)、低比重の可塑性油脂組成物を練りこむ方法(例えば特許文献4参照)、高度分岐環状デキストリンを使用する方法(例えば特許文献5参照)、特定の乳原料とゲル化剤と水とで構成される複合体を使用する方法(例えば特許文献6参照)、特定の乳原料を含有する懸濁液を使用する方法(例えば特許文献7参照)等が紹介されている。
【0006】
しかし、油脂結晶を使用する方法は油脂添加量の少ないパンでは効果が低いという問題があり、特定の乳原料を使用した複合体や懸濁液を使用する方法は歯切れの改善効果に比べソフト性の改善効果が低いという問題があった。またこれらの方法は、高い効果を得るためにはパン生地への添加量が多くなってしまう問題もあった。一方、乳清ミネラルや高度分岐環状デキストリンを使用する方法は、少量の添加量で高い効果が得られるが、乳清ミネラルを使用する方法は歯切れの改善効果に比べソフト性の改善効果が低いという問題があり、高度分岐環状デキストリンを使用する方法はややもちもち感が出てしまうという問題があった。
【0007】
ここで、製パン改良方法の中でも増粘安定剤を使用する方法は、比較的少量の添加量で求める効果が得られるため、様々な起源の異なる増粘安定剤が様々な効果を目的として使用されている。
【0008】
なかでもデキストランは、その分岐が多いという構造上の特徴から、グルテンとの相互作用があることが知られており、製パンにおいても老化防止(例えば特許文献8参照)や、冷凍障害の防止(例えば特許文献9参照)などの、グルテン構造の変化に起因する諸問題を解決する効果が知られている。
【0009】
しかし、これらの効果は特許文献8に記載されているように高分子量のデキストランを多量に添加した場合の効果であり、低分子量のデキストランを少量使用した場合は効果が得られないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−210107号公報
【特許文献2】特開2007−267654号公報
【特許文献3】特開2009−240261号公報
【特許文献4】特開2010−259411号公報
【特許文献5】特開2011−087513号公報
【特許文献6】特開2006−081515号公報
【特許文献7】特開2006−204130号公報
【特許文献8】特開平06−038665号公報
【特許文献9】特開平08−009872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、ソフトで歯切れが良好であるパンを、生地物性を悪化させることなく得るための製パン改良材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上記目的を達成すべく種々検討した結果、高分子量のデキストランを多く添加するのではなく、全く反対に、低分子量のデキストランを少量添加することで、従来知られていなかった、ソフトで歯切れが良好であるパンを、生地物性を悪化させることなく得ることができることを見出した。
【0013】
本発明は、上記知見により得られたものであり、分子量20万以下のデキストランを含有する製パン改良材を提供するものである。
【0014】
また、本発明は、上記の本発明の製パン改良材を含有したパン生地並びに該パン生地を加熱処理したパンを提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の製パン改良材を用いることにより、ソフトで歯切れが良好であるパンを、生地物性を悪化させることなく得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず、本発明で使用するデキストランについて述べる。
デキストランとは、グルコースを構成糖とし、α1−6結合による主鎖と、一部、α1−4結合やα1−3結合を有するという構造を有する、微生物が生産する多糖類の1種である。一般的には、乳酸菌等の細菌をショ糖を含有する培地で培養した際に、デキストランスクラーゼによるグルコース転移反応によって生成する。また、デキストランスクラーゼを蔗糖を含有する溶液や生地に作用させることにより得られる。
なお、市販品としては上記のようにして得られたデキストランに加え、デキストランを部分的に加水分解して精製した分岐構造の少ないものについても市販されている。
【0017】
本発明の製パン改良材では、これらのデキストランを単独または複数を使用して、その分子量が20万以下、好ましくは10万以下、より好ましくは5万以下となるようにして使用する。ここでデキストランの分子量が20万を超えると、得られるパンがソフトであるがもっちりした食感になってしまい、良好な歯切れが得られない。また、パン生地の物性に影響が出てしまうという問題がある。
なお、本発明において分子量とは質量平均分子量をいう。
また、デキストランの分子量の下限については、一般的に0.5万である。
【0018】
本発明の製パン改良材における上記分子量20万以下のデキストランの配合割合は、改良材の形態や、製パン改良材のパン生地への添加量に依存するため、特に限定されるものではなく、0.1質量%〜100質量%の範囲から適宜選択可能であるが、好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは1〜25質量%である。
ここで、本発明の製パン改良材における上記分子量20万以下のデキストランの配合割合が0.1質量%未満であると、少ない添加量で製パン改良効果を付与するという製パン改良材としての意義がなくなるおそれがある。
【0019】
本発明の製パン改良材の形態としては、特に制限されず、固形、顆粒状、粉末状、ペースト状、流動状、液状、可塑性のいずれの形態であってもよいが、パン生地へ均質に分散させることが容易である点で、ペースト状、流動状、液状、可塑性のいずれかの形態であることが好ましい。
なお、製パン改良材中の上記分子量20万以下のデキストランの存在形態は、上記分子量20万以下のデキストランが水性相に溶解した形態であることが好ましい。
上記水性相に使用する水としては、特に限定されず、天然水や水道水などが挙げられる。
【0020】
また、本発明の製パン改良材は油性相を含有するものであってもよい。
上記油性相に使用する油脂としては、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油、バター、バターオイル等の各種植物油脂、動物油脂並びにこれらを水素添加、分別及びエステル交換から選択される一又は二以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。本発明では、上記の油脂の中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
【0021】
なお、本発明の製パン改良材が油性相を含有する場合、油分と水分を含有する乳化油脂の形態であることが好ましい。その場合、その乳化型は水中油型であっても油中水型であってもよいが、本発明の効果、とくに歯切れがより良好なパンが得られる点で水中油型乳化物であることが好ましい。
【0022】
本発明の製パン改良材が、水中油型の形態である場合、好ましい油分含量は、下記のその他の原材料中に含まれる油脂分も含めた油分含量が、好ましくは3質量%〜50質量%、さらに好ましくは5質量%〜40質量%、より好ましくは8質量%〜40質量%であり、最も好ましくは12質量%〜30質量%となる量である。
また、その場合の好ましい水分含量は、下記のその他の原材料中に含まれる水分も含めた水分含量が、好ましくは20質量%〜90質量%、さらに好ましくは40質量%〜70質量%、より好ましくは50質量%〜70質量%であり、最も好ましくは50質量%〜60質量%となる量である。
【0023】
本発明の製パン改良材は、上記分子量20万以下のデキストランに加え、高度分岐環状デキストリンを含有することが好ましい。高度分岐環状デキストリンを併用することにより、パンのソフト性をより向上させることが可能となる。
【0024】
高度分岐環状デキストリンとは、内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する、重合度が50以上であるグルカンであり、従来の澱粉加水分解物とは異なり、環状を構成することにより還元末端がほとんどない構造を有し、DEは1以下であり、水溶性が高く、その溶液の透明性が高いこと、他のデキストリンと異なり分子量分布が狭いという特徴を有する。
この高度分岐環状デキストリンは、たとえば、α−1,4−グルコシド結合と、α−1,6−グルコシド結合とを有する糖類と、この糖類に作用して環状構造を形成し得る酵素とを反応させて製造することができ、市販品としては「クラスターデキストリン(江崎グリコ製)」を挙げることができる。
【0025】
本発明の製パン改良材における上記高度分岐環状デキストリンの配合割合は、上記分子量20万以下のデキストラン1質量部に対し好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部、さらに好ましくは0.2〜2質量部となる量である。
上記高度分岐環状デキストリンの配合割合が、上記分子量20万以下のデキストラン1質量部に対し、0.1質量部未満であると、上記分子量20万以下のデキストランとの相乗効果が認められず、10質量部を超えると、もちもちした食感となってしまう。
【0026】
本発明の製パン改良材は、乳固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を含有することが、パンの歯切れ感を維持しながらさらにソフト性を向上することができるため好ましい。乳原料の乳固形分中のリン脂質の含有量は、好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは4質量%以上、最も好ましくは5〜40質量%である。
【0027】
本発明の製パン改良材における上記乳原料の配合量は、上記分子量20万以下のデキストラン1質量部に対し、上記乳原料に含まれる固形分が好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは0.1〜1.5質量部となる量である。
【0028】
また、上記の乳原料は、牛乳、ヤギ乳、ヒツジ乳、人乳などの乳から製造されたものであるのが好ましく、特に牛乳から製造されたものであるのが好ましい。
【0029】
上記の乳原料としては、乳固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料であればどのようなものでも構わないが、具体的な例としてクリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分があげられる。
【0030】
上記のクリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の製造方法は、例えば以下の通りである。まず、牛乳を遠心分離して得られる脂肪濃度30〜40質量%のクリームをプレートで加温し、遠心分離機によってクリームの脂肪濃度を70〜95質量%まで高める。次いで、乳化破壊機で乳化を破壊し、再び遠心分離機で処理することによってバターオイルが得られる。本発明で用いられる上記水相成分は、最後の遠心分離の工程でバターオイルの副産物として発生するものである。
【0031】
上記のバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の製造方法は、例えば以下の通りである。まず、バターを溶解機で溶解し熱交換機で加温する。これを遠心分離機で分離することによってバターオイルが得られる。本発明で用いられる上記水相成分は、最後の遠心分離の工程でバターオイルの副産物として発生するものである。該バターオイルの製造に用いられるバターとしては、通常のものが用いられる。
【0032】
本発明では、上記の乳原料をさらに濃縮したものや乾燥したもの、冷凍処理をしたものなどを用いることも可能である。溶剤を用いて濃縮したものは風味上の問題から用いないことが好ましい。
【0033】
本発明で用いる上記の乳原料における乳固形分中のリン脂質の定量方法は、例えば以下のような方法にて測定することができる。但し、抽出方法などについては、乳原料の形態などによって適正な方法が異なるため、以下の定量方法に限定されるものではない。
【0034】
まず、乳原料の脂質をFolch法を用いて抽出する。次いで、抽出した脂質溶液を湿式分解法(日本薬学会編、衛生試験法・注解2000 2.1食品成分試験法に記載の湿式分解法に準じる)にて分解した後、モリブデンブルー吸光度法(日本薬学会編、衛生試験法・注解2000 2.1食品成分試験法に記載のリンのモリブデン酸による定量に準じる)によりリン量を求める。求められたリン量から以下の計算式を用いて乳原料の乳固形分100g中のリン脂質の含有量(g)を求める。
リン脂質(g/100g)=〔リン量(μg)/(乳原料−乳原料の水分(g))×25.4×(0.1/1000)
【0035】
また、本発明では、上記の乳原料中のリン脂質の一部または全部がリゾ化されたリゾ化物を使用することもできる。該リゾ化物は、乳原料をそのままリゾ化したものであっても良く、また乳原料を濃縮した後にリゾ化したものであっても良い。また、得られたリゾ化物に、さらに濃縮あるいは噴霧乾燥処理などを施しても良い。これらのリゾ化物は本発明におけるリン脂質の含有量に含めるものとする。
【0036】
上記の乳原料中のリン脂質をリゾ化するには、ホスホリパーゼAで処理すれば良い。ホスホリパーゼAは、リン脂質分子のグリセロール部分と脂肪酸残基とを結びつけている結合を切断し、この脂肪酸残基を水酸基で置換する作用を有する酵素である。ホスホリパーゼAは、作用する部位の違いによってホスホリパーゼA1とホスホリパーゼA2とに分かれるが、ホスホリパーゼA2が好ましい。ホスホリパーゼA2の場合、リン脂質分子のグリセロール部分の2位の脂肪酸残基が選択的に切り離される。
【0037】
また、本発明では、上記の乳原料は、パンのソフト性をさらに向上させることができる点で、好ましくはpHが3〜6、より好ましくはpH4〜6、さらに好ましくは4.7〜5.8となるように酸処理を行ったものであることが好ましい。
【0038】
上記酸処理を行うには、酸を添加する方法であっても、また、乳酸醗酵などの醗酵処理を行う方法であってもよいが、好ましくは酸を添加する。該酸としては、無機酸であっても有機酸であってもよいが、有機酸であることが好ましい。該有機酸としては、酢酸、乳酸、クエン酸、グルコン酸、フィチン酸、ソルビン酸、アジピン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、アスコルビン酸等が挙げられ、果汁、濃縮果汁、発酵乳、ヨーグルトなどの有機酸を含有する飲食品も用いることができるが、本発明においてはより酸味が少なく、風味に影響しない点でフィチン酸及び/又はグルコン酸を使用することが好ましい。
なお、上記酸の添加によるpHの調整は、上記酸を上記乳原料自体に添加することにより行ってもよいし、上記乳原料と、分子量20万以下のデキストラン等の製パン改良材の材料とを混合する際に、又は混合後に上記酸を添加することにより行ってもよい。
【0039】
また、本発明では、上記の乳原料に、パンのソフト性をさらに向上させることができる点で、リン脂質含有量1質量部あたり、好ましくは0.01〜1質量部、より好ましくは0.02〜0.5質量部、さらに好ましくは0.05〜0.3質量部のカルシウム塩を添加しても良い。
上記カルシウム塩としては塩化カルシウム、乳酸カルシウム、リン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、炭酸カルシウム、グルタミン酸カルシウム、アスコルビン酸カルシウム等が例示され、このうち1種又は2種以上を組み合わせて用いることができるが、本発明においては得られる製パン改良材の風味が良好である点で塩化カルシウム及び/又は乳酸カルシウムを使用することが好ましい。
【0040】
また、本発明で用いる上記の乳原料は、パン生地への分散性を高めることが可能である点及び得られるパンのソフト性向上効果をより高めることができる点で、均質化処理を行なったものであることが好ましい。とくに上記リゾ化処理、酸処理、カルシウム塩添加を行なう場合は、その効果を高めるために均質化処理を行なうことが特に好ましい。均質化処理は1回でも良く、2回以上行っても良い。また、粘性が高いなどの場合は、加水により粘度を調整してから均質化処理を行なってもよい。該均質化処理に用いられる均質化機としては、例えば、ケトル型チーズ乳化釜、ステファンミキサーの様な高速せん断乳化釜、スタティックミキサー、インラインミキサー、バブル式ホモジナイザー、ホモミキサー、コロイドミル、ディスパーミルなどがあげられる。均質化圧力は特に制限はないが、好ましくは0〜100MPaである。2段式ホモゲナイザーを用いて均質化処理をする場合は、例えば、1段目3〜100MPa、2段目0〜5MPaの均質化圧力にて行っても良い。
【0041】
さらに本発明で用いる上記の乳原料は、UHT加熱処理を行っても良い。UHT加熱処理の条件としては特に制限はないが、処理温度は好ましくは120〜150℃であり、処理時間は好ましくは1〜6秒である。
【0042】
このようにして得られる本発明で用いる上記の乳原料や乳原料加工品は、液状、ペースト状、粉末状、固形状などの状態のものとすることができ、本発明の製パン改良材ではいずれの状態のものでも使用できる。
【0043】
本発明の製パン改良材は、上記分子量20万以下のデキストラン、高度分岐環状デキストリン、乳固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料、水、油脂以外に、必要に応じその他の成分を含有させることができる。該その他の成分としては例えば、ゲル化剤や安定剤、乳化剤、金属イオン封鎖剤、糖類・甘味料、澱粉類、蛋白質、乳固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料以外の乳や乳製品、卵製品、穀類、無機塩、有機酸塩、キモシン等の蛋白質分解酵素、トランスグルタミナーゼ、ラクターゼ(β−ガラクトシダーゼ)、α―アミラーゼ、グルコアミラーゼ等の糖質分解酵素、ジグリセライド、植物ステロール、植物ステロールエステル、果汁、濃縮果汁、果汁パウダー、乾燥果実、果肉、野菜、野菜汁、香辛料、香辛料抽出物、ハーブ、高度分岐環状デキストリン以外のデキストリン類、カカオ及びカカオ製品、コーヒー及びコーヒー製品、その他各種食品素材、着香料、苦味料、調味料等の呈味成分、着色料、保存料、酸化防止剤、pH調整剤、強化剤等を配合してもよい。
【0044】
上記ゲル化剤や安定剤としては、アルギン酸、アルギン酸塩、ペクチン、LMペクチン、HMペクチン、海藻抽出物、海藻エキス、寒天、グルコマンナン、ローカストビーンガム、グアーガム、ジェランガム、タラガントガム、キサンタンガム、カラギーナン、カードラン、タマリンドシードガム、カラヤガム、タラガム、トラガントガム、アラビアガム、カシアガムが挙げられる。本発明では、上記ゲル化剤や安定剤の中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
ただし本発明では、得られるパンの食感がソフト性や歯切れ性の悪いものになることを避けるため、上記分子量20万以下のデキストランと高度分岐環状デキストリンを合計した含有量以上のゲル化剤や安定剤は使用しないことが好ましい。
【0045】
上記乳化剤としては、レシチン、酵素処理レシチンなどの天然乳化剤、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の合成乳化剤が挙げられる。本発明では、上記の乳化剤の中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
【0046】
上記糖類としては、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、酵素糖化水飴、乳糖、還元澱粉糖化物、異性化液糖、ショ糖結合水飴、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、ソルビトール、還元乳糖、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖等が挙げられる。また、上記甘味料としては、スクラロース、アセスルファムカリウム、ステビア、アスパルテーム等が挙げられる。本発明では、上記の糖類・甘味料の中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
【0047】
本発明の製パン改良材の製造方法としては特に制限されず、公知の方法を使用することができる。
例えば、本発明の製パン改良材の形態が顆粒状、あるいは粉末状の場合は、粉体混合用混合機を使用し、各原料を混合することによって得る方法や、各原料を含有する水溶液や懸濁液あるいは水中油型乳化物を製造後、スプレードライやフリーズドライ等により粉末化する方法を挙げることができる。
また、本発明の製パン改良材の形態が液状、流動状、あるいはペースト状の場合は、水や食用油脂等に各原料を溶解又は分散し、必要に応じ、さらに均質化することによって得ることができる。水を使用する場合を例に挙げると、まず水に、分子量20万以下のデキストランを溶解し、必要に応じさらにその他の水溶性の原料を溶解させた水相を用意する。そして、この水相を殺菌することが好ましい。なお、本発明における殺菌には滅菌も含む。
該殺菌は、インジェクション式、インフュージョン式等の直接加熱方式、あるいはプレート式・チューブラー式・掻き取り式等の間接加熱方式を用いたUHT・HTST・バッチ式、レトルト、マイクロ波加熱等の加熱滅菌もしくは加熱殺菌処理、あるいは直火等の加熱調理により行うことができる。そして冷却することにより、本発明の製パン改良材が得られる。
また、殺菌する前又は後で、ホモジナイザーにより均質化しても良い。均質化処理を行う場合の均質化圧力は、3MPa〜30MPaとするのが好ましい。
【0048】
次に、本発明の製パン改良材が油脂(油性相)を含有する場合であって、その形態が油中水型の場合の好ましい製造方法を説明する。
【0049】
詳しくは、まず水に、分子量20万以下のデキストランを溶解し、必要に応じさらにその他の水溶性の原料を溶解させた水相を用意する。一方、食用油脂に油溶性の原料を溶解させた油相を用意する。そして、この水相と油相を、好ましくは45〜75℃で予備乳化し、油中水型の予備乳化物を得る。次いでこの予備乳化物を殺菌することが好ましい。なお、本発明における殺菌には滅菌も含む。殺菌方法は、タンクでのバッチ式、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式等の何れの方法を用いてもよい。
【0050】
次に、冷却し、結晶化する。好ましくは冷却可塑化する。冷却条件は、好ましくは−0.5℃/分以上、さらに好ましくは−1℃/分以上とする。この際、徐冷却よりも、急速冷却の方が好ましい。なお、冷却可塑化する機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えば、ボテーター、コンピネーター、パーフェクター等のマーガリン製造機やプレート型熱交換機等が挙げられ、また、開放型のダイアクーラーとコンプレクターとの組み合わせも挙げられる。
【0051】
本発明の製パン改良材を製造する際の何れかの工程で、窒素、空気等を含気させてもよい。
【0052】
次に、本発明の製パン改良材が油脂(油性相)を含有する場合であって、その形態が水中油型の場合の好ましい製造方法を説明する。
【0053】
詳しくは、まず水に、分子量20万以下のデキストランを溶解し、必要に応じさらにその他の水溶性の原料を溶解させた水相を用意する。一方、食用油脂に油溶性の原料を溶解させた油相を用意する。そして、この水相と油相を、好ましくは45℃〜75℃で予備乳化し、水中油型の予備乳化物を得る。次いでこの予備乳化物を殺菌することが好ましい。なお、本発明における殺菌には滅菌も含む。
該殺菌は、インジェクション式、インフュージョン式等の直接加熱方式、あるいはプレート式・チューブラー式・掻き取り式等の間接加熱方式を用いたUHT・HTST・バッチ式、レトルト、マイクロ波加熱等の加熱滅菌もしくは加熱殺菌処理、あるいは直火等の加熱調理により行うことができる。そして冷却することにより、本発明の製パン改良材が得られる。
【0054】
また、殺菌する前又は後で、ホモジナイザーにより均質化しても良い。均質化処理を行う場合の均質化圧力は、3MPa〜30MPaとするのが好ましい。
【0055】
次に、本発明のパン生地について説明する。
本発明のパン生地は、本発明の製パン改良材を、パン生地に含まれる穀粉類100質量部に対し、分子量20万以下のデキストランが0.01質量部〜0.4質量部、好ましくは0.02質量部〜0.3質量部となる量を含有するものである。
【0056】
本発明のパン生地には、穀粉類、イースト、糖類、甘味料、油脂類、卵類、乳製品、水、食塩、澱粉類、調味料、香辛料、着香料、着色料、ココア、チョコレート、ナッツ類、ヨーグルト、チーズ、抹茶、紅茶、コーヒー、豆腐、黄な粉、豆類、野菜類、果実、果汁、ジャム、フルーツソース、果物、ハーブ、肉類、魚介類、酸化剤、還元剤、酵素、イーストフード、乳化剤、保存料、日持ち向上剤などを適宜用いることができる。
【0057】
なお、上記穀粉類としては、小麦粉(薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉)をはじめ、小麦胚芽、全粒粉、小麦ふすま、デュラム粉、大麦粉、米粉、ライ麦粉、ライ麦全粒粉、大豆粉、ハトムギ粉等を挙げることができ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。本発明では、これらの中でも、穀粉類中、好ましくは小麦粉を50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは100質量%使用する。
【0058】
なお、本発明の製パン改良材が高度分岐環状デキストリンを含有する場合は、パン生地に含まれる穀粉類100質量部に対し、高度分岐環状デキストリンが0.02質量部〜2.0質量部、好ましくは0.04質量部〜1.5質量部となる量であることが好ましい。
【0059】
なお、本発明の製パン改良材が乳固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を含有する場合は、パン生地に含まれる穀粉類100質量部に対し、乳固形分が0.02質量部〜0.4質量部、好ましくは0.03質量部〜0.3質量部となる量であることが好ましい。
【0060】
なお、本発明のパン生地は、中種法でも、直捏法でも、液種法でも製造することができる。
本発明のパン生地を中種法で製造する場合は、本発明の製パン改良材を中種生地及び/または本捏生地に練り込むことにより製造することができ、直捏法で製造する場合は、本発明の製パン改良材を生地に練り込むことにより製造することができ、本発明のパン生地を液種法で製造する場合は、本発明の製パン改良材を液種生地及び/または本捏生地に練り込むことにより製造することができる。
なお、得られた本発明のパン生地は、冷蔵、冷凍保存することが可能である。
【0061】
次に本発明のパンについて述べる。
本発明のパンは、本発明のパン生地を加熱処理することにより得られる。該加熱処理としては、パン生地を焼成したり、フライしたり、蒸したり、電子レンジ処理したりすることがあげられる。また、得られた本発明のパンを、冷蔵、冷凍保存したり、該保存後に電子レンジ加熱することも可能である。
本発明のパンの種類としては、特に制限はないが、例えば食パン、菓子パン、バラエティーブレッド、バターロール、ソフトロール、ハードロール、スイートロール、デニッシュ、ペストリー、フランスパンなどがあげられる。
【0062】
次に本発明の製パン改良方法について述べる。
本発明の製パン改良方法は、パン生地に含まれる穀粉類100質量部に対し、分子量20万以下のデキストランを0.01質量部〜0.4質量部、好ましくは0.02質量部〜0.3質量部添加するものである。
【0063】
なお、本発明の製パン改良方法において、分子量20万以下のデキストランに加え、高度分岐環状デキストリン及び/又は乳固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を併用する場合は、それらのデキストランとの添加量の比は上述のとおりであるが、さらに以下の条件をあわせもつことが好ましい。
【0064】
高度分岐環状デキストリンを使用する場合、パン生地に含まれる穀粉類100質量部に対し、0.02質量部〜2.0質量部、好ましくは0.04質量部〜1.5質量部となる量を添加することが好ましい。
【0065】
乳固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を使用する場合、パン生地に含まれる穀粉類100質量部に対し、乳固型分として0.02質量部〜0.4質量部、好ましくは0.03質量部〜0.3質量部となる量を添加することが好ましい。
【実施例】
【0066】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0067】
<製パン改良材の製造>
〔実施例1〕
分子量1万のデキストラン(名糖産業製)2質量部を水道水98質量部に溶解し、これを本発明の製パン改良材1とした。
【0068】
〔実施例2〕
分子量4万のデキストラン(名糖産業製)2質量部を水道水98質量部に溶解し、これを本発明の製パン改良材2とした。
【0069】
〔実施例3〕
分子量20万のデキストラン(名糖産業製)2質量部を水道水98質量部に溶解し、これを本発明の製パン改良材3とした。
【0070】
〔比較例1〕
分子量50万のデキストラン2質量部を水道水98質量部に溶解し、これを比較例の製パン改良材4とした。
【0071】
〔比較例2〕
分子量500万のデキストラン2質量部を水道水98質量部に溶解し、これを比較例の製パン改良材5とした。
【0072】
〔実施例4〕
分子量4万のデキストラン(名糖産業製)4質量部、クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(乳固形分38質量%、乳固形分中のリン脂質の含有量9.8質量%)10質量部に水86質量部を添加し、さらにこれをホモゲナイザーにて均質化圧力3MPaにて均質化後、UHT加熱処理(142℃、4秒)を行った。そして、再度、ホモゲナイザーにて均質化圧力12MPaにて均質化を行った。これを5〜10℃に冷却し本発明の製パン改良材6を得た。
【0073】
〔実施例5〕
分子量4万のデキストラン(名糖産業製)4質量部、クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(乳固形分38質量%、乳固形分中のリン脂質の含有量9.8質量%)10質量部に水85.97質量部を添加し、さらにフィチン酸0.03質量部を添加して、pHを5.5に調整した。さらにこれをホモゲナイザーにて均質化圧力3MPaにて均質化後、UHT加熱処理(142℃、4秒)を行った。そして、再度、ホモゲナイザーにて均質化圧力12MPaにて均質化を行った。これを5〜10℃に冷却し本発明の製パン改良材7を得た。
【0074】
〔実施例6〕
クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物の配合量を10質量部から7.2質量部に、水の配合量を85.97質量部から88.78質量部に、フィチン酸の添加量を0.03質量部から0.02質量部に変更した以外は実施例5と同様の配合・製法で本発明の製パン改良材8を得た。
【0075】
〔実施例7〕
クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物の配合量を10質量部から4質量部に、水の配合量を85.97質量部から91.99質量部に、フィチン酸の添加量を0.03質量部から0.01質量部に変更した以外は実施例5と同様の配合・製法で本発明の製パン改良材9を得た。
【0076】
〔実施例8〕
分子量4万のデキストラン(名糖産業製)2質量部、高度分岐環状デキストリン(商品名「クラスターデキストリン」(江崎グリコ製))4質量部、クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(乳固形分38質量%、乳固形分中のリン脂質の含有量9.8質量%)4質量部に水89.99質量部を添加し、さらにフィチン酸0.01質量部を添加してpHを5.5に調整した。さらにこれをホモゲナイザーにて均質化圧力3MPaにて均質化後、UHT加熱処理(142℃、4秒)を行った。そして、再度、ホモゲナイザーにて均質化圧力12MPaにて均質化を行った。これを5〜10℃に冷却し本発明の製パン改良材10を得た。
【0077】
〔実施例9〕
高度分岐環状デキストリン(商品名「クラスターデキストリン」(江崎グリコ製))の配合量を4質量部から1.6質量部に、水の配合量を89.99質量部から92.39質量部に変更した以外は実施例8と同様の配合・製法で本発明の製パン改良材11を得た。
【0078】
<ベーカリー試験>
〔実施例10〜25、比較例3〜4〕
得られた製パン改良材1〜11を用いて、下記の表1に記載の配合で、下記の製法によりプルマン型食パンを製造し、分割・丸め時の生地作業性、得られた食パンの食感(ソフト感、歯切れ)について、下記評価基準に従って4段階で評価し、結果を表2に示した。なお、表1中の数値は質量部である。
【0079】
[食パン生地の配合]
【表1】
【0080】
[食パンの製法]
中種配合の全ての原材料をミキサーボウルに投入し、フックを使用し、低速で3分、中速で2分混合し、中種生地を得た。捏ね上げ温度は24℃であった。この中種生地を生地ボックスに入れ、温度28℃、相対湿度80%の恒温室で4時間、中種醗酵を行なった。終点温度は29℃であった。この中種醗酵の終了した生地を再びミキサーボウルに投入し、さらに、本捏配合のうちのショートニング以外の全ての原材料を添加し、低速で3分、中速で3分ミキシングした。ここで、ショートニングを投入し、フックを使用し、低速で3分、中速で3分、高速で1分ミキシングを行ない、食パン生地を得た。得られた食パン生地の捏ね上げ温度は28℃であった。ここで、フロアタイムを30分とった後、220gに分割・丸めを行なった。次いで、ベンチタイムを30分とった後、 モルダー成形し、6本をU字にして3斤型プルマン型に入れ、38℃、相対湿度85%で50分ホイロをとった後、200℃に設定した固定オーブンに入れ40分焼成してプルマン型食パンを得た。
【0081】
<評価基準>
・生地作業性
◎:べとつきもなく伸展性もよく、極めて良好な作業性であった。
○+:べとつきもなく伸展性もよく、非常に良好な作業性であった。
○:良好な作業性であった。
△:ややべとつきが感じられるか、又はやや伸展性が悪く、若干劣る作業性であった。
×:べとつきがあるか、又は、伸展性が悪く、作業性が劣るものであった。
・食感(ソフト感)
◎+:この上なく良好
◎:きわめて良好
○+:非常に良好
○:良好
△:やや悪い
×:悪い
・食感(歯切れ)
◎+:この上なく良好
◎:きわめて良好
○+:良好
○:やや良好
△:ややねちゃつくか、またはボソボソして不良
×:ねちゃつき、又は、ぼそつきが激しい
【0082】
【表2】