(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282887
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】血圧測定装置および血圧測定方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/022 20060101AFI20180208BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
A61B5/02 634Z
A61B5/02ZDM
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-38510(P2014-38510)
(22)【出願日】2014年2月28日
(65)【公開番号】特開2015-160082(P2015-160082A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2017年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河本 昌志
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 昇
(72)【発明者】
【氏名】中村 隆治
(72)【発明者】
【氏名】鵜川 貞二
(72)【発明者】
【氏名】高柳 恒夫
(72)【発明者】
【氏名】森本 陽香
【審査官】
佐藤 高之
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第5094244(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0253209(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0324428(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0044290(US,A1)
【文献】
特開2012−205822(JP,A)
【文献】
特開2001−309894(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/100927(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00−5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の静脈および動脈を有する部位に装着されるカフによる前記部位への印加圧力を制御する圧力制御部と、
前記印加圧力に前記部位からの脈波成分が重畳された圧力波形を検出する検出部と、
一回の血圧測定で前記検出部により検出された前記圧力波形に基づいて、動脈圧の呼吸性変動および静脈圧を求める解析部と、
を備え、
前記解析部は、
前記圧力波形のうち、前記印加圧力が前記圧力制御部によって一定圧に保持されている第1過程における圧力波形のデータに基づいて前記動脈圧の呼吸性変動を求め、前記印加圧力が前記圧力制御部によって減圧または昇圧される第2過程における圧力波形のデータと前記第1過程における圧力波形のデータとに基づいて前記静脈圧を求める、
血圧測定装置。
【請求項2】
前記第1過程における印加圧力は、拡張期血圧以下であって、前記脈波成分に静脈の脈波成分を含まない範囲である、請求項1に記載の血圧測定装置。
【請求項3】
前記解析部は、前記第2過程における圧力波形のデータと前記第1過程における圧力波形のデータとの相関が低いとき、前記第2過程における圧力波形のデータに基づいて前記静脈圧を求める、請求項1または請求項2に記載の血圧測定装置。
【請求項4】
前記解析部は、前記一回の血圧測定で、さらに、前記圧力波形のうち、前記印加圧力が前記圧力制御部によって昇圧または減圧される第3過程における圧力波形のデータに基づいて動脈圧を求める、請求項1または請求項2に記載の血圧測定装置。
【請求項5】
前記解析部は、前記第2過程における圧力波形のデータと、前記第3過程における圧力波形のデータまたは前記第1過程における圧力波形のデータと、に基づいて前記静脈圧を求める、請求項4に記載の血圧測定装置。
【請求項6】
前記解析部は、前記第2過程における圧力波形のデータと前記第3過程の圧力波形のデータまたは前記第1過程の圧力波形のデータとの相関が低いとき、前記第2過程における圧力波形のデータに基づいて前記静脈圧を求める、請求項5に記載の血圧測定装置。
【請求項7】
表示部と、
前記表示部を制御する表示制御部と、
をさらに備え、
前記表示制御部は、求められた前記動脈圧の呼吸性変動の値と前記静脈圧の値とを、前記表示部に二次元グラフで表示する、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の血圧測定装置。
【請求項8】
前記二次元グラフには、表示された前記動脈圧の呼吸性変動の値と前記静脈圧の値とを判別する判別基準が表示されている、請求項7に記載の血圧測定装置。
【請求項9】
生体の静脈および動脈を有する部位にカフを装着し、前記カフによる前記部位への印加圧力を制御して、脈波成分が重畳された圧力波形を前記部位から検出し、検出された前記圧力波形に基づいて、動脈圧の呼吸性変動および静脈圧を求める血圧測定方法において、
前記圧力波形のうち、前記印加圧力が一定圧に保持されている第1過程における圧力波形のデータに基づいて前記動脈圧の呼吸性変動を求める段階と、
前記圧力波形のうち、前記印加圧力が減圧または昇圧される第2過程における圧力波形のデータと前記第1過程における圧力波形のデータとに基づいて前記静脈圧を求める段階と、
からなり、
前記第1過程および前記第2過程は一回の血圧測定で行われる、
血圧測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オシロメトリック方式を用いて血圧を測定する血圧測定装置および血圧測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
心機能の循環動態を把握するに際し、動脈圧の呼吸性変動や中心静脈圧は重要な指標になる。従来は、例えば中心静脈圧を得るために、カテーテルを挿入するなどして、正確な中心静脈圧を測定していた。しかしながら、この測定は侵襲的なものであるため、被検者に過度の負担を与えてしまう虞がある。また、測定するための装置も大がかりなものとなり、その測定時間も長くなるという欠点もある。そのため、非侵襲的で簡単に中心静脈圧を測定するための方法が提案されている。例えば、特許文献1には、オシロメトリック法の原理を利用して平均静脈圧を測定することが開示されている。また、特許文献2には、オシロメトリック法の血圧測定によって動脈圧を測定するとともに呼吸周期内の脈圧変動(動脈圧呼吸性変動)を測定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−205822号公報
【特許文献2】特表2011−511686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の方法で計測される平均静脈圧と特許文献2の方法で計測される動脈圧の呼吸性変動とはそれぞれ別々の方法で測定されるため、互いの関連性は必ずしも高いとは言えない。このため、測定されたこれらのパラメータに基づいて把握される心機能の循環動態は、必ずしも十分な信頼性を有するとは言い難い。また、各パラメータを別々に測定するため、測定に時間を要し迅速な診断を妨げる虞もあった。
【0005】
そこで、本発明は、簡単かつ正確に生体の循環動態を把握することが可能な血圧測定装置および血圧測定方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の血圧測定装置は、
生体の静脈および動脈を有する部位に装着されるカフと、
前記カフによる前記部位への印加圧力を制御する圧力制御部と、
前記印加圧力に前記部位からの脈波成分が重畳された圧力波形を検出する検出部と、
一回の血圧測定で前記検出部により検出された前記圧力波形に基づいて、動脈圧の呼吸性変動および静脈圧を求める解析部と、
を備え、
前記解析部は、
前記圧力波形のうち、前記印加圧力が前記圧力制御部によって一定圧に保持されている第1過程における圧力波形のデータに基づいて前記動脈圧の呼吸性変動を求め、前記印加圧力が前記圧力制御部によって減圧または昇圧される第2過程における圧力波形のデータと前記第1過程における圧力波形のデータとに基づいて前記静脈圧を求める。
【0007】
この構成によれば、一回の血圧測定における印加圧力とその印加圧力に重畳する脈波成分とに基づいて、動脈圧の呼吸性変動および静脈圧のパラメータを一挙に求めることが可能である。このため一連の測定工程において各パラメータを非侵襲的かつ簡単に求めることができる。また、一回の血圧測定で得られる印加圧力と脈波成分とに基づいて2つのパラメータを求めているので、例えば別々の機会の測定あるいは別々の部位にカフを装着した測定で得られる印加圧力と脈波成分とに基づいて求める場合よりも、互いに高い関連性のあるパラメータを得ることができる。よって、関連性の高いこれらのパラメータに基づき正確に循環動態を把握することができる。また、印加圧力が一定の圧力に制御されている期間に動脈圧の呼吸性変動を求めているので、圧力波形中に含まれる呼吸に基づく変動成分を正確に求めることができる。また、印加圧力が減圧または昇圧制御されている期間に静脈圧を求めているので、圧力波形に含まれる動脈圧の脈波成分を徐々に変化(減少または増加)させることができ、静脈圧を正確に求めることができる。
【0008】
また、本発明の血圧測定装置において、
前記第1過程における印加圧力は、拡張期血圧以下であって、前記脈波成分に静脈の脈波成分を含まない範囲であっても良い。
【0009】
この構成によれば、拡張期血圧以下であって静脈の脈波成分が含まれない圧力に印加圧力を保持しているので、より正確に呼吸性変動を求めることができる。
【0010】
また、本発明の血圧測定装置において、
前記解析部は、前記第2過程における圧力波形のデータと前記第1過程における圧力波形のデータとの相関が低いとき、前記第2過程における圧力波形のデータに基づいて前記静脈圧を求めても良い。
【0011】
この構成によれば、第1過程における圧力波形のデータに対する相関の低い第2過程における圧力波形のデータに基づいて静脈圧を求めているので、動脈圧の影響を抑制することができ、より正確に静脈圧を求めることができる。
【0012】
また、本発明の血圧測定装置において、
前記解析部は、前記一回の血圧測定で、さらに、前記圧力波形のうち、前記印加圧力が前記圧力制御部によって昇圧または減圧される第3過程における圧力波形のデータに基づいて動脈圧を求めても良い。
【0013】
この構成によれば、一回の血圧測定において、動脈圧、動脈圧の呼吸性変動および静脈圧の3つのパラメータを一挙に求めることが可能である。このため一連の測定工程において各パラメータを非侵襲的かつ簡単に求めることができる。また、印加圧力が昇圧制御されている期間に動脈圧を求める場合、動脈圧の測定を完了するまでの時間を短くすることができる。よって、一連の測定工程において動脈圧の呼吸性変動および静脈圧を求めるための時間をより長く確保することができ、確実かつ正確に3つのパラメータを求めることができる。
【0014】
また、本発明の血圧測定装置において、
前記解析部は、前記第2過程における圧力波形のデータと、前記第3過程における圧力波形のデータまたは前記第1過程における圧力波形のデータと、に基づいて前記静脈圧を求めても良い。
【0015】
この構成によれば、第1過程における圧力波形のデータおよび第3過程における圧力波形のデータのいずれかに基づいて静脈圧を求めているので、演算の自由度が増して、動脈圧の脈波成分との関連を十分に確認することができ、より正確に静脈圧を求めることができる。
【0016】
また、本発明の血圧測定装置において、
前記解析部は、前記第2過程における圧力波形のデータと前記第3過程の圧力波形のデータまたは前記第1過程の圧力波形のデータとの相関が低いとき、前記第2過程における圧力波形のデータに基づいて前記静脈圧を求めても良い。
【0017】
この構成によれば、第1過程および第3過程における圧力波形のデータのいずれかに対して相関の低い第2過程における圧力波形のデータに基づいて静脈圧を求めているので、動脈圧の影響を抑制することができ、より正確に静脈圧を求めることができる。
【0018】
また、本発明の血圧測定装置において、
表示部と、
前記表示部を制御する表示制御部と、
をさらに備え、
前記表示制御部は、求められた前記動脈圧の呼吸性変動の値と前記静脈圧の値とを、前記表示部に二次元グラフで表示しても良い。
【0019】
この構成によれば、求められた動脈圧の呼吸性変動の値と静脈圧の値との関係が表示部に二次元グラフとして表示されるので、生体情報の看視者は表示部を見ることにより動脈圧の呼吸性変動と静脈圧との2つのパラメータを総合的に判断して、的確に循環動態を把握することができる。
【0020】
また、本発明の血圧測定装置において、
前記二次元グラフには、表示された前記動脈圧の呼吸性変動の値と前記静脈圧の値とを判別する判別基準が表示されていても良い。
【0021】
この構成によれば、二次元グラフ上に表示された判別基準に基づいて動脈圧の呼吸性変動と静脈圧とを判別することができるので、生体情報の看視者は循環動態を容易に把握することができる。
【0022】
また、本発明の血圧測定方法は、
生体の静脈および動脈を有する部位にカフを装着し、前記カフによる前記部位への印加圧力を制御して、脈波成分が重畳された圧力波形を前記部位から検出し、検出された前記圧力波形に基づいて、動脈圧の呼吸性変動および静脈圧を求める血圧測定方法において、
前記圧力波形のうち、前記印加圧力が一定圧に保持されている第1過程における圧力波形のデータに基づいて前記動脈圧の呼吸性変動を求める段階と、
前記圧力波形のうち、前記印加圧力が減圧または昇圧される第2過程における圧力波形のデータと前記第1過程における圧力波形のデータとに基づいて前記静脈圧を求める段階と、
からなり、
前記第1過程および前記第2過程は一回の血圧測定で行われる。
【0023】
この構成によれば、一回の血圧測定における印加圧力とその印加圧力に重畳する脈波成分とに基づいて、動脈圧の呼吸性変動および静脈圧のパラメータを一挙に求めることが可能である。このため一連の測定工程において各パラメータを非侵襲的かつ簡単に求めることができる。また、一回の血圧測定で得られる印加圧力と脈波成分とに基づいて2つのパラメータを求めているので、例えば別々の回の測定あるいは別々の部位にカフを装着した測定で得られる印加圧力と脈波成分とに基づいて求める場合よりも、互いに高い関連性のあるパラメータを得ることができる。よって、関連性の高いこれらのパラメータに基づき正確に循環動態を把握することができる。また、印加圧力が一定の圧力に制御されている期間に動脈圧の呼吸性変動を求めているので、圧力波形中に含まれる呼吸に基づく変動成分を正確に求めることができる。また、印加圧力が減圧または昇圧制御されている期間に静脈圧を求めているので、圧力波形に含まれる動脈圧の脈波成分を徐々に変化(減少または増加)させることができ、静脈圧を正確に求めることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の血圧測定装置によれば、簡単かつ正確に生体の循環動態を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係る血液測定装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】血液測定装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図3】(a)は血圧測定装置の測定におけるカフ圧の変化を示す図であり、(b)は(a)のカフ圧に重畳した脈波成分を示す図である。
【
図4】動脈圧測定期間に重畳した脈波成分を示す図である。
【
図5】呼吸性変動測定期間に重畳した脈波成分を示す図である。
【
図6】静脈圧測定期間に重畳した脈波成分を示す図である。
【
図7】呼吸性変動と静脈圧との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る血圧測定装置の実施形態の一例について、図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
図1は、本実施形態に係る血圧測定装置1の構成を示す機能ブロック図である。
図1に示すように、血圧測定装置1は、カフ2と、圧力制御部3と、圧力センサ(検出部の一例)4と、圧力波形解析部(解析部の一例)5と、判定部6と、表示制御部7と、表示部8と、を備えている。
【0028】
カフ2は、被検者(生体の一例)Hの静脈および動脈を検出することが可能な生体の一部分、例えば腋窩部近傍の上腕部(部位の一例)に巻かれることで装着される。カフ2は、図示を省略する圧力袋を備えており、圧力袋の空気圧によりカフ2から上腕部にカフ圧(印加圧力の一例)が加わる。
【0029】
圧力制御部3は、カフ2の圧力袋の空気圧を制御する。圧力袋の空気圧は、圧力制御部3に含まれる加圧ポンプ、電磁弁、制御回路等(いずれも図示省略)により制御される。
【0030】
圧力センサ4は、カフ圧に脈波成分が重畳された圧力波形を検出する。上腕部にカフ圧が加わると被検者Hの脈拍に同期して血管壁の振動である脈波がカフ圧に重畳する。圧力センサ4はこの上腕部からの脈波成分が重畳された圧力波形を検出して、検出した圧力波形を圧力波形解析部5に伝達する。
【0031】
圧力波形解析部5は、圧力波形に含まれるカフ圧と脈波成分とに基づいて、拡張期血圧、平均血圧および収縮期血圧(動脈圧の一例)と、動脈圧の呼吸性変動と、腋窩部近傍の上腕部の静脈で測定した平均静脈圧(静脈圧の一例)とを求める。圧力波形解析部5は、血圧を測定する一回の測定工程において、血圧とともに動脈圧の呼吸性変動と平均静脈圧を求める。なお、腕部の静脈で測定した平均静脈圧は、観血法で測定した中心静脈圧とほぼ同等であると言われている。
【0032】
判定部6は、圧力波形解析部5によって求められた動脈圧の呼吸性変動および平均静脈圧の信頼性を判定する。判定部6は、動脈圧の呼吸性変動を求めている期間中および平均静脈圧を求めている期間中にそれぞれのカフ圧に重畳した脈波と代表脈波との相関をそれぞれ取ることにより信頼性を判定する。
【0033】
表示制御部7は、圧力波形解析部5によって求められた拡張期血圧、収縮期血圧、平均血圧、動脈圧の呼吸性変動、平均静脈圧等の情報を表示部8に表示させる。表示部8は、例えばタッチパネル式の液晶画面によって構成されている。
【0034】
次に、
図3〜
図6を参照しつつ、
図2に示すフローチャートに基づいて、血圧測定装置1の動作を説明する。以下の説明では、脈波成分の測定と、動脈圧、動脈圧の呼吸性変動および平均静脈圧の決定とをほぼ同時に行っているが、例えばカフ圧および脈波成分の測定のみを行っておいて、動脈圧、動脈圧の呼吸性変動および平均静脈圧の決定は測定されたカフ圧等のデータを用いて別途行うようにしても良い。
【0035】
図2に示すように、血圧測定装置1による測定が開始されると、まず血圧値の測定が行なわれる(ステップS101)。血圧値の測定は、オシロメトリック法により非侵襲的に行なわれる。上腕部に巻き付けられたカフ2のカフ圧が、圧力制御部3によって徐々にあるいは段階的に昇圧される。この昇圧過程(第3過程)における圧力波形が圧力センサ4によって検出され、圧力波形に含まれるカフ圧と脈波成分(圧力波形のデータの一例)とが圧力波形解析部5によって測定され解析される。圧力波形解析部5は、脈波成分の変化に基づいて、拡張期血圧、平均血圧および収縮期血圧を求める。
【0036】
具体的には、カフ圧が昇圧されていくとそれに伴いカフ圧に重畳する脈波成分の振幅が増加し、カフ圧と血管壁にかかる血液の圧力とが等しくなったとき脈波成分の振幅が最大になる。そして、さらにカフ圧が昇圧されると脈波成分の振幅は減少して行く。圧力波形解析部5は、脈波成分の振幅が最大になった時点のカフ圧を平均血圧として決定する。また、圧力波形解析部5は、脈波成分の最大振幅に基づいて、所定の計算式により拡張期血圧時の脈波振幅と収縮期血圧時の脈波振幅とを求める。このとき、拡張期血圧は、平均血圧より低いカフ圧であって、測定している脈波振幅が上記計算式により求められた拡張期血圧時の脈波振幅に一致したときのカフ圧とする。また、収縮期血圧は、平均血圧より高いカフ圧であって、測定している脈波振幅が上記計算式により求められた収縮期血圧時の脈波振幅に一致したときのカフ圧とする。なお、カフ圧を収縮期血圧よりも高い圧力まで急速に上昇させ、そこから徐々に減圧する過程で、平均血圧、収縮期血圧および拡張期血圧を測定するようにしても良い。
【0037】
図3は血圧測定装置1の一回の測定において検出される圧力の変化を示したものである。上段の(a)は、血圧測定装置1の測定経過時間に対する圧力波形(カフ圧に脈波成分が重畳したもの)の変化を示す。また、下段の(b)は、(a)の圧力波形における脈波成分を示す。
【0038】
拡張期血圧、平均血圧および収縮期血圧は、
図3(a)に示されたA期間であるカフ圧の昇圧過程において測定される。これらの血圧の測定は、収縮期血圧が測定された時点で完了する。A期間の血圧の測定は、測定を開始してから約15秒で完了している。
【0039】
続いて、圧力波形解析部5は、ステップS101で求められた血圧のうちの平均血圧における脈波成分を代表脈波成分として抽出する(ステップS102)。
【0040】
図4は、
図3におけるA期間の脈波成分を取り出して示したものである。A期間の脈波成分のうちの最も振幅が大きい脈波成分が平均血圧における脈波成分である代表脈波成分a1として抽出される。
【0041】
続いて、動脈圧の呼吸性変動を求めるために、カフ圧を拡張期血圧以下であって静脈の脈波成分を含まない範囲の圧力、例えば40〜50mmHgに減圧する(ステップS103)。この範囲の圧力にカフ圧を減圧することで、動脈圧の呼吸性変動を求めるに際し、動脈を閉塞し過ぎず、かつ静脈の脈波の影響を受けないようにする。
【0042】
動脈圧の呼吸性変動は、
図3(a)に示されたB期間であるカフ圧の一定圧(約50mmHg)過程(第1過程)において求められる。B期間において複数回の動脈圧の呼吸性変動が求められる。このためにカフ圧は所定時間(例えば60秒間)継続して拡張期血圧以下の一定圧力に保持される。なお、一定に保持される圧力は、静脈圧の脈波の影響が現れない圧力であれば拡張期血圧以下の圧力に限定されるものではなく、例えば、拡張期血圧近傍の圧力であっても良い。
【0043】
続いて、判定部6は、一定圧に保持されたカフ圧に重畳する脈波成分とステップS102で抽出された代表脈波成分a1との相関係数R1を算出する(ステップS104)。
【0044】
図5は、
図3におけるB期間の脈波成分を取り出して示したものである。B期間における一つ一つの脈波成分b1,b2,b3・・・が圧力波形解析部5によって抽出される。抽出された一つ一つの脈波成分b1,b2,b3・・・と代表脈波成分a1との相関係数R1が算出される。
【0045】
続いて、判定部6は、相関係数R1に基づき相関の低い脈波成分を抽出して、動脈圧の呼吸性変動を求めるための脈波成分として使用しないように、抽出した脈波成分を除外する(ステップS105)。より信頼性の高い動脈圧の呼吸性変動を求めるためには、B期間の脈波成分b1,b2,b3・・・に静脈の脈波成分の影響が及んでいないことが望ましい。静脈の脈波成分が影響していない脈波成分b1,b2,b3・・・は、動脈の典型的な脈波である代表脈波成分a1との相関が高い。そのため、相関の低い脈波成分が除外され相関の高い脈波成分が動脈圧の呼吸性変動を求めるための脈波成分として使用される。これにより求める動脈圧の呼吸性変動の信頼性を高める。
【0046】
続いて、圧力波形解析部5は、抽出された脈波成分b1,b2,b3・・・の振幅を算出し、振幅の変化から被検者Hの呼吸周期を算出する(ステップS106)。続いて、動脈圧の呼吸性変動の測定が開始されてから60秒経過したか判別され(ステップS107)、経過していない場合にはステップS104からの各ステップが繰り返される。これに対して、60秒経過した場合には、圧力波形解析部5は、算出した複数の呼吸周期における脈波成分の振幅変動に基づいて被検者Hの呼吸性変動を求める(ステップS108)。
【0047】
図5に示す太線pが脈波成分のピークをつないだ包絡線を示し、期間T1が呼吸周期を示す。また、振幅Hmaxが脈波成分の最大振幅を示し、振幅Hminが脈波成分の最小振幅を示す。動脈圧の呼吸性変動は、((Hmax−Hmin)/((Hmax+Hmin)/2))*100[%]で算出される。この計算式により、複数の呼吸周期において、呼吸性変動を求める。
【0048】
図3(a)に示されるように、動脈圧の呼吸性変動の測定は、測定を開始してから約75秒後に完了している。
【0049】
続いて、平均静脈圧を求めるために、圧力制御部3はカフ圧を段階的に(例えば5mmHgずつ)減圧する(ステップS109)。
【0050】
平均静脈圧は、
図3(a)に示されたC期間であるカフ圧の減圧過程(第2過程)において求められる。平均静脈圧の測定は動脈圧の呼吸性変動の測定に継続して行われ、カフ圧は、時間の経過とともに、動脈圧の呼吸性変動を測定していた一定圧(約50mmHg)から段階的に減圧されていく。
【0051】
続いて、圧力波形解析部5は、5mmHg減圧したカフ圧に重畳する脈波成分の振幅を算出する(ステップS110)。そして、判定部6は、5mmHg減圧したカフ圧に重畳する脈波成分とステップS102で抽出された代表脈波成分a1との相関係数R2を算出する(ステップS111)。
【0052】
図6は、
図3におけるC期間の脈波成分を取り出して示したものである。C期間における一つ一つの脈波成分c1,c2,c3・・・が抽出され、それらの振幅が算出される。抽出された一つ一つの脈波成分c1,c2,c3・・・と代表脈波成分a1との相関係数R2が算出される。
【0053】
続いて、カフ圧を5mmHg減圧してから6秒経過したか否か判別される(ステップS112)。6秒経過していない場合には、ステップS110からの各処理を繰り返す。これに対して、6秒経過している場合には、血圧の測定を開始してからの時間が140秒経過したか否か判別される(ステップS113)。そして、140秒経過していない場合には、ステップS109に戻ってさらにカフ圧を5mmHg減圧した後、ステップS110からの各処理を繰り返す。これに対して、140秒経過している場合には、圧力波形解析部5は、ステップS110で算出した脈波成分の振幅とステップS111で算出した相関係数R2とに基づいて平均静脈圧を求める(ステップS114)。
【0054】
具体的には、カフ圧が段階的に減圧されていくと、それに伴ってカフ圧に重畳する動脈の脈波成分が減少していくと共に静脈の脈波成分が徐々に増加していく。このため、動脈の典型的な脈波である代表脈波成分a1との相関係数R2は徐々に小さくなっていく。さらにカフ圧を減圧すると静脈の脈波成分がさらに増加していく。そして、カフ圧と血管壁にかかる血液の圧力とが等しくなったとき静脈の脈波成分の振幅がピークを示す。これらをもとに、第2過程の脈波成分を見るとともに、第2過程の脈波成分と第1過程の脈波成分との相関を見て、平均静脈圧を求めていく。なお、静脈の脈波成分は動脈の脈波成分と比較すると小さいため、カフ圧が減圧されて動脈の脈波成分が減少しても動脈の脈波成分が静脈の脈波成分の観測に影響を及ぼす場合もある。この場合、静脈の脈波成分による振幅のピークが明瞭に検出できないことがある。これらのことから、圧力波形解析部5は、相関が低いことと脈波成分の振幅がピークを示したこととを条件として総合的に解析し、その時点におけるカフ圧を平均静脈圧であると決定する。そして、決定した平均静脈圧を中心静脈圧であると推定する。
【0055】
このようにして、各パラメータの測定を終了する。
【0056】
次に、
図7を参照して、血圧測定装置1の表示部8に表示される事項について説明する。
図7に示されるように、表示部8には、上述のようにして求められた動脈圧の呼吸性変動の値と平均静脈圧の値とが二次元のグラフとして表示される。また、二次元のグラフ上には、動脈圧の呼吸性変動の値および平均静脈圧の値を判別するための判別基準が、例えば閾値線m,nとして表示される。
【0057】
この二次元グラフの表示に基づき被検者の循環動態が以下のように判別される。例えば求められた動脈圧の呼吸性変動の値と平均静脈圧の値とがグラフ上のq点であり、動脈圧の呼吸性変動の値が閾値線nを下回り平均静脈圧の値が閾値線mを上回っている場合、血液の循環量が過剰であると判別される。また、例えば求められた値がr点であり、動脈圧の呼吸性変動の値が閾値線nを上回り平均静脈圧の値が閾値線mを下回っている場合、血液の循環量が不足していると判別される。
【0058】
また、
図7では省略されているが表示部8にはこの他に、上述のようにして求められた拡張期血圧、収縮期血圧および平均血圧の値も二次元グラフの表示と同時に表示される。
【0059】
以上説明した本実施形態の血圧測定装置1によれば、オシロメトリック法による一回の血圧測定において、カフ2から上腕部に加わるカフ圧とそのカフ圧に重畳する脈波成分とに基づき、拡張期血圧、平均血圧、収縮期血圧、動脈圧の呼吸性変動および平均静脈圧のパラメータを一挙に求めることが可能である。このため一連の測定工程で各パラメータを非侵襲的かつ簡単に求めることができる。また、これら全てのパラメータは、一回の血圧測定の中で得られるカフ圧とそれに重畳する脈波成分とに基づいて求められているので、例えば別々の回における測定あるいは別々の部位にカフ2を装着した測定で得られるカフ圧とそれに重畳する脈波成分とに基づいて求める場合よりも、互いのパラメータ間の関連性が極めて高い。つまり、従来の方法で非侵襲的に求められた呼吸性変動や平均静脈圧は信頼性の低い指標であったが、本実施形態によれば、関連性の高いこれらのパラメータに基づき被検者Hの循環動態を正確に把握することができる。
【0060】
また、カフ圧の昇圧過程において拡張期血圧、平均血圧および収縮期血圧を測定しているので、カフ圧を収縮期血圧よりも高く加圧した後にそのカフ圧の減圧過程においてこれらの血圧を測定する場合と比べて、これらの血圧の測定を完了するまでの時間を短くすることができる。これにより、一連の測定工程において動脈圧の呼吸性変動および平均静脈圧を求めるための時間をより長く確保することができ、確実かつ正確にこれらのパラメータを求めることができる。
【0061】
また、カフ圧を一定圧に保持している期間に動脈圧の呼吸性変動を求めているので、脈波成分のピークをつなぐ包絡線pを明確に描くことができ、圧力波形中に含まれる被検者の呼吸に基づく変動成分を正確に求めることができる。また、カフ圧を一定圧に保持する期間を約60秒確保しているので、複数回の呼吸周期における動脈の呼吸性変動を算出することができ、より正確な測定結果を得ることができる。また、カフ圧を拡張期血圧の近傍であって静脈の脈波成分が含まれない範囲の一定圧に保持しているので、動脈圧の呼吸性変動を求めるに際し静脈の脈波の影響を受け難く、正確に動脈圧の呼吸性変動を抽出することができる。
【0062】
なお、被検者によっては、拡張期血圧の値が低いために、動脈圧の呼吸性変動を求めるに際し、動脈の脈波成分に静脈の脈波成分が重畳して影響を及ぼす場合がある。そこで、抽出された脈波成分b1,b2,b3・・・と動脈の典型的な脈波である代表脈波成分a1との相関係数R1を算出し、その相関係数R1に基づいて相関の低い(静脈の脈波成分が重畳している割合が高い)脈波成分を除外することにより動脈圧の呼吸性変動の信頼性を高めている。この場合、一回の血圧測定で求められた脈波成分b1,b2,b3・・・と代表脈波成分a1との相関係数R1に基づいて相関の低い脈波成分を除外している。したがって、例えば各血圧と動脈圧の呼吸性変動とを別々の回の測定あるいは別々の部位にカフ2を装着した測定で求め、そこから抽出された脈波成分の相関係数R1に基づいて相関の低い脈波成分を除外する場合よりも、互いに関連性の高い脈波成分を用いて行うことができる。これにより、信頼性の高い動脈圧の呼吸性変動を求めることができ、正確な循環動態を把握することができる。
【0063】
また、カフ圧の減圧過程において平均静脈圧を求めているので、動脈圧の脈波成分を徐々に減少させつつ静脈の脈波成分を観測することができる。このため静脈の脈波成分の振幅変動を容易に検出することができ、正確に平均静脈圧を求めることができる。また、段階的にカフ圧を減圧しているので、カフ圧を連続して減圧する場合よりも電磁弁の影響を受け難く、より正確に平均静脈圧を求めることができる。
【0064】
なお、被検者によっては、拡張期血圧の値が低いためにカフ圧を減圧しても動脈の脈波成分が消失しきれずに残って平均静脈圧を求めるのに影響を及ぼす場合がある。そこで、抽出された脈波成分c1,c2,c3・・・と動脈の典型的な脈波である代表脈波成分a1との相関係数R2を算出し、その相関係数R2に基づいて相関の高い(動脈の脈波成分が重畳している割合が大きい)脈波成分を除外している。そして、関連の低い圧力波形のデータに基づいて平均静脈圧を求めている。この場合、一回の血圧測定で求められた脈波成分c1,c2,c3・・・と代表脈波成分a1との相関係数R2に基づいて相関の高い脈波成分を除外している。したがって、例えば各血圧と平均静脈圧とを別々の回の測定あるいは別々の部位にカフ2を装着した測定で求め、そこから抽出された脈波成分の相関係数R2に基づいて相関の高い脈波成分を除外する場合よりも、互いに関連性の高い脈波成分を用いて行うことができる。これにより、動脈圧の影響が少なく信頼性の高い平均静脈圧を容易に求めることができ、正確な循環動態を把握することができる。
【0065】
また、各パラメータは非侵襲的に求めることができ、さらに一連の測定工程は約140秒という短い時間で完了するので、被検者の負担を大幅に軽減することができる。
【0066】
また、求められた動脈圧の呼吸性変動の値と静脈圧の値との関係を表示部8に二次元グラフとして表示するので、生体情報の看視者は表示部8を見ることにより動脈圧の呼吸性変動と静脈圧との2つのパラメータを総合的に判断して、的確に被検者の循環動態を把握することができる。さらに、二次元グラフ上には動脈圧の呼吸性変動の値と平均静脈圧の値とを判別する基準の閾値線m,nが表示されているので、生体情報の看視者は循環動態を容易に把握することできる。
【0067】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0068】
例えば、拡張期血圧の値が低く平均静脈圧を求める際に静脈の脈波成分に動脈の脈波成分が重畳してしまう場合には、動脈圧の呼吸性変動を求める際に検出した動脈の脈波成分を、重畳した脈波成分から減算する。これにより正確な相関係数R2を算出することができ、平均静脈圧の信頼性を高めることができる。同様に、拡張期血圧の値が低く動脈圧の呼吸性変動を求める際に動脈の脈波成分に静脈の脈波成分が重畳してしまう場合には、例えば平均静脈圧を算出し終えた後、平均静脈圧の算出時に検出した静脈の脈波成分を減算する。これにより正確な相関係数R2を算出することができ、動脈圧の呼吸性変動の信頼性を高めることができる。
【0069】
また、平均静脈圧を求めるC期間におけるカフ圧の減圧は、段階的な減圧に限定されるものではなく、例えば連続的に減圧させるようにしても良い。さらに、段階的あるいは連続的にカフ圧を昇圧させて、その昇圧過程(第2過程)で平均静脈圧を求めるようにしても良い。また、平均静脈圧を求める際の脈波成分の相関係数R2を算出する場合、平均血圧における脈波成分を代表脈波成分a1として用いているが、例えばこの代表脈波成分a1と最も相関の高い動脈圧の呼吸性変動測定時における脈波成分b1,b2,b3・・・のいずれかを代表脈波成分として用いても良い。この場合、脈波成分b1,b2,b3・・・の方が測定経過時間において平均静脈圧の測定時により近いため相関係数R2の正確性を高めることができる。
【0070】
また、平均静脈圧を測定する場合、動脈圧の呼吸性変動を測定する過程における動脈の脈波成分の中から代表脈波を決定し、その代表脈波と平均静脈圧を求める脈波成分との相関を求めて、平均静脈圧を求める脈波成分を決定しても良い。さらに、脈波成分測定の順序は、動脈圧、動脈圧の呼吸性変動、平均静脈圧の順でなくても良い。例えば、平均静脈圧、動脈圧の呼吸性変動、動脈圧の順で測定することも可能である。また、動脈圧の呼吸性変動および平均静脈圧の測定のみでも良い。
【符号の説明】
【0071】
1:血圧測定装置、2:カフ、3:圧力制御部、4:圧力センサ(検出部)、5:圧力波形解析部(解析部)、6:判定部、7:表示制御部、8:表示部、H:被検者、a1:代表脈波成分、b1,b2,b3,c1,c2,c3:脈波成分、n,m:閾値線(判別基準)、R1,R2:相関係数