(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
自動車の駆動エンジン又は駆動モーターの起動及び/又は停止を検知する検知手段と、該検知手段からの信号により前記殺菌機構を所定時間稼働させる制御手段と、を更に有することを特徴とする、請求項1に記載の自動車用空気調和装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2に記載されている技術では、抗菌性金属やポリアニリン等のエバポレータの表面に析出した成分により抗菌効果を奏するが、該成分がドレン排水とともに析出し、経時的に抗菌効果が低下してしまうことがあった。また、該抗菌効果は上記成分が析出している表面で奏されるため、一旦汚れ等が付着して表面が被覆されてしまうと、該汚れ等の上からさらに付着した有害微生物に対しては抗菌作用を及ぼすことができず、有害微生物が繁殖してしまうことがあった。
特許文献3に開示されている技術ではドレンパンの殺菌はできるものの、エバポレータの殺菌は行うことができない。
また、特許文献4に開示されている技術は、エバポレータを通過した空気を殺菌対象とするものであり、エバポレータ表面にも一部紫外線が照射されるものの、上記の通り入り組んだ構造を有するエバポレータ表面を効果的に殺菌することが困難であった。
【0006】
そこで本発明は、エバポレータの上流側及び/又は下流側表面の全範囲に殺菌に有効な紫外光を照射することにより、エバポレータ表面の形状及び抗菌性に依らず、長期継続的にエバポレータ表面を殺菌することが可能な殺菌機構を備えた自動車用空気調和装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、エバポレータの殺菌機構を備えた自動車用空気調和装置であって、上記殺菌機構は、波長300nm以下の紫外光を出射する一以上の紫外線発光ダイオードを用いた紫外光源を有し、上記紫外光源は、上記エバポレータの上流側又は下流側表面の全面積に対して限定的な照射面積を有し、機械的又は光学的な手法により上記エバポレータの上記上流側又は下流側表面の全範囲を照射可能である、自動車用空気調和装置である。
【0008】
本発明において、「上流側」とは、自動車用空気調和装置に取り込まれた空気がエバポレータに進入する側を意味し、「下流側」とは、除湿冷却された空気がエバポレータから排出される排出される側を意味する。
【0009】
本発明において、上記紫外光源が回動することが好ましい。
【0010】
本発明において、上記紫外光源が移動することが好ましい。
【0011】
本発明において、上記殺菌機構が、上記紫外光源から照射される上記紫外光を上記エバポレータに向けて反射するミラーを有し、上記ミラーが回動することにより、上記エバポレータ表面における上記紫外光の照射範囲が変化することが好ましい。
【0012】
本発明において、上記紫外光が、帯状の光束を有することが好ましい。
【0013】
本発明において、上記ミラーが移動することが好ましい。
【0014】
本発明において、自動車の駆動エンジン又は駆動モーターの起動及び/又は停止を検知する検知手段と、該検知手段からの信号により前記殺菌機構を所定時間稼働させる制御手段と、を更に有することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、エバポレータの上流側及び/又は下流側表面の全範囲に殺菌に有効な紫外光を照射することにより、エバポレータ表面の形状及び抗菌性に依らず、長期継続的にエバポレータ表面を殺菌することが可能な殺菌機構を備えた自動車用空気調和装置を提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の上記した作用および利得は、以下に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。ただし、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。なお、図面は必ずしも正確な寸法を反映したものではない。また図では、一部の符号を省略することがある。本明細書においては特に断らない限り、数値A及びBについて「A〜B」という表記は「A以上B以下」を意味するものとする。かかる表記において数値Bのみに単位を付した場合には、当該単位が数値Aにも適用されるものとする。また「又は」及び「若しくは」の語は、特に断りのない限り論理和を意味するものとする。本明細書において、「紫外光」と「紫外線」とは同義である。
【0018】
図1は、本発明の第一の形態に係る自動車用空気調和装置100を模式的に説明する断面図である。自動車用空気調和装置100は、公知の自動車用空気調和装置と同様に、自動車のダッシュボード下部に設置される。
図1において、紙面右側が自動車前方、紙面左側が自動車後方である。
自動車用空気調和装置100は、内部が2分割されたケース1を有し、一方の領域A(紙面右側)にブロアファン2、及び、エバポレータ3が配置されており、他方の領域B(紙面左側)にヒーターコア4が配置されている。一方の領域Aと他方の領域Bとはエアミックスドア5により連通しており、ケース1内部には
図1にI〜IVで示した空気が流通する経路(以下、「空気流路I〜IV」という。)が形成されている。
【0019】
自動車用空気調和装置100の運転が開始されると、ブロアファン2が回転することにより、外気又は車内空気が、空気流路Iによりケース1内に導入される。空気流路Iにはフィルタ6が配置されており、これによりゴミ等の所定サイズ以上の異物がケース1内に侵入することを防止する。フィルタ6を通過した空気は、空気流路IIにより、エバポレータ3へと送られる。
【0020】
エバポレータ3は周知の冷凍サイクルを構成するものであり、空気流路IIで送られてきた空気を除湿冷却する冷却機として機能する。該冷却過程において、空気中に含まれていた水分が冷却されて凝縮し、エバポレータ3表面に付着する。付着した凝縮水は所定量集まると重力によりケース1の底部へと滴下し、
図1に矢印Dで示した流路により、車外へ排出される。
【0021】
エバポレータ3の下流側には、エバポレータ3を通過した空気を、空気流路IIIcと空気流路IIIhとに振り分けるエアミックスドア5が配置されており、空気流路IIIhにより領域Bに送られた空気は全てヒーターコア4へと送られ、空気流路IIIcにより領域Bに送られた空気はヒーターコア4をバイパスする。ヒーターコア4は自動車エンジンの冷却水を熱源として、空気流路IIIhにより該ヒーターコア4を通過する空気を加熱する加熱器である。該構成によれば、空気流路IIIcを通過した空気はエバポレータ3により冷却されたまま領域Bへと送られ、空気流路IIIhを通過した空気はヒーターコア4により加熱されて領域Bへと送られ、これらは領域Bの下流において混合される。エアミックスドア5は空気流路IIIhを通過する空気の量と空気流路IIIcを通過する空気の量とを調節可能となっており、該2つの流路を通過する空気の量を調節することにより、領域Bにおいて所望の温度に調節された空気を得ることが可能となっている。所望の温度に調節された空気は、空気流路IVによりフロントガラス内側のデフロスタ吹出口(DEF)へ、空気流路Vにより搭乗者の顔面方向吹出口(FACE)へ、空気流路VIにより足元方向吹出口(FOOT)へとそれぞれ排出される。なお、図示しない吹出モード切替ドアにより、空気流路IV〜VIのうち一つ又は複数の流路から選択的に空気を排出することができる。
【0022】
上記のように、エバポレータ周辺は凝縮水の存在により常に多湿な環境にあり、空気流路Iから吸入される空気に含まれる有害微生物が繁殖し易い環境にある。殺菌機構を備える本発明の自動車用空気調和装置によれば、有害微生物の繁殖を予防すること、及び、ある程度有害微生物が繁殖してしまった後にも事後的に殺菌することが可能である。
【0023】
本発明の自動車用空気調和装置が備える殺菌機構は、波長300nm以下の紫外光を出射する一以上の紫外線発光ダイオードを用いた紫外光源を有し、紫外光源は、エバポレータの上流側又は下流側表面の全面積に対して限定的な照射面積を有し、機械的又は光学的な手法によりエバポレータの上流側又は下流側表面の全範囲を照射可能である。
【0024】
以下、
図1、2を参照しつつ、本発明の第一の形態に係る自動車用空気調和装置100が備える殺菌機構20について説明する。殺菌機構20は、波長300nm以下の紫外光を出射する一以上の紫外線発光ダイオードを用いた紫外光源11を有する。紫外光源11は、エバポレータ3の上流側表面の全面積に対して限定的な照射面積を有し、機械的な手法として回動軸11aを中心に紫外光源11が回動することにより、エバポレータ3の上流側表面の全範囲を照射可能である。
図1には、紫外光源11の回動方向として、紙面上時計回りを矢印R、反時計回りを矢印Lで示した。
【0025】
図2は
図1と同一の視点から見た図であり、本発明の第一の形態に係る自動車用空気調和装置100が備える殺菌機構20が作動している様子を模式的に説明する図である。
図2(a)は、エバポレータ3の上流側表面の上端部を含む領域に紫外光が照射されている様子を示す図、
図2(b)は、エバポレータ3の上流側表面の下端部を含む領域に紫外光が照射されている様子を示す図である。
殺菌機構20が作動すると、まず、紫外光源11は、不図示の駆動装置により
図1に示す位置から回動軸11aを中心に矢印R方向に回動し、
図2(a)に示す姿勢を取る。なお、殺菌に要する時間を短縮する観点から、紫外光源11は作動前にこの位置で停止していてもよい。
【0026】
紫外光源11は
図2(a)に示す姿勢において、自動車のバッテリーから電力を供給されて発光し、エバポレータ3へと紫外光を照射する。紫外光源11から照射された紫外光は紫外光透過窓12を通過してケース1内に進入し、エバポレータ3に照射される。
図2(a)にケース1内における光の進行方向を白抜き矢印で示した。
図2(a)に一点鎖線で示したように、紫外光源11から照射された紫外光は、エバポレータ3の上流側表面の全面積に対して、上端部を含む限定的な照射面積を有する範囲に照射される。
殺菌に要する所定時間の経過後、紫外光源11は、発光状態を維持したまま回動軸11aを中心に矢印L方向に所定の角度回動し、照射範囲を変えて、再び所定時間、紫外光を照射する。これを
図2(b)に示す位置まで繰り返す。
図2(b)では、エバポレータ3の上流側表面の全面積に対して、下端部を含む限定的な照射面積を有する。
図2(b)に示す姿勢で、所定時間紫外線を照射後、紫外光源11は発光を停止し、
図1に示した姿勢へと戻り、殺菌を終了する。
【0027】
上記紫外光源11の回動により変化する照射範囲は、回動の前後で重複していてもよいが、例えばエバポレータの上流側表面積に合わせて所定の指向角αを有する光源を選択することにより、回動ごとに異なる範囲を照射し、所定回数の回動により、エバポレータ3の上流側表面の全面積が照射される形態としてもよい。
【0028】
紫外光源11は、波長300nm以下の紫外光を出射する一以上の紫外線発光ダイオードを用いた光源である。紫外光の波長の上限を300nmとすることにより、波長260nm付近にピークを有する有害微生物のDNA(デオキシリボ核酸)の光吸収スペクトルに含まれる波長帯の大部分をカバーすることができ、殺菌作用が最も強い波長253.7nmの紫外光を含むことができる。また、空気中の酸素から殺菌効果の高いオゾンを生成する波長185nmの紫外光、及び、オゾンを活性化する波長254nmの紫外光も含むことができる。よって、十分な殺菌効果を奏することができる。紫外光源11は、一つ以上の紫外発光ダイオード(DUV−LED)を用いている。紫外発光ダイオードは波長300nm以下の紫外光を選択的に照射し易く、長寿命で消費電力が小さいという利点を有する。紫外発光ダイオードを用いる場合には、例えば、基板上に紫外発光ダイオードを配置すればよい。紫外発光ダイオードは、パッケージ化またはモジュール化されていることが好ましく、平行光のような指向性の強められた光を出射するような構造、例えばコリメートレンズを有するパッケージ内に収納されていることが好ましい。
【0029】
紫外光源11から照射される紫外光の放射照度は特に限定されないが、効率的な殺菌が行えるという観点から、上記波長250nm以下、好ましくは210〜240nmの紫外線の放射照度は、エバポレータ3の表面において、1mW/cm
2以上であることが好ましく、50mW/cm
2以上であることがより好ましい。波長250nm以下、好ましくは210〜240nmの紫外線の放射照度が上記下限値以上であることにより、より効率的に殺菌及び有機物汚れを分解することが可能になる。放射照度の上限は特に制限されるものではないが、通常5000mW/cm
2以下である。
【0030】
紫外線照射に際しては、光源の出力に応じて光源とエバポレータ表面との距離及び照射時間を制御することにより、エバポレータ表面の少なくとも一部における積算照射量を50mJ/cm
2以上とすることが好ましく、100mJ/cm
2以上となるようにすることが特に好ましい。
【0031】
なお、高強度の紫外線を出射できるという理由から、光源としては、特許第5591305号公報(特許文献5)に開示されているような光源を使用することが好ましい。すなわち、特許第5591305号公報(特許文献5)に開示されている光源は、紫外線を出射する棒状光源と、該棒状光源から出射された深紫外線を集光する集光装置とを有し、前記棒状光源は、円筒状または多角柱状の基体と、複数の紫外発光ダイオードとを有する棒状光源であって、該複数の紫外発光ダイオードが、各紫外発光ダイオードの光軸が前記円筒状または多角柱状の基体の中心軸を通るように前記円筒状または多角柱状の基体の側面に配置されていることにより、前記中心軸に対して放射状に紫外線を出射し、前記集光装置が、長楕円反射ミラーを有し、前記長楕円反射ミラーの焦点軸上に前記棒状光源が配置され、前記長楕円反射ミラーは、該長楕円反射ミラーの集光軸において集光された紫外線を出射するための紫外線出射用開口部を有し、前記紫外線出射用開口部に、前記集光された紫外線の指向性を高めるコリメート光学系を有する光源であり、集光により高強度の紫外線を出射することができる。該光源は、紫外線を帯状の光束として出射するので、たとえば帯状の光束の長さをエバポレータの幅と同等にして、該帯状の光束を順次ずらしながらエバポレータ3の表面の全面に紫外線を照射することによって、広い面積を有するエバポレータに対しても、確実な効果を得ることができる。
【0032】
紫外光透過窓12はケース1の一部を構成し、紫外光源11から出射された紫外光を、ケース1内のエバポレータ3に向けて透過する部材である。紫外光透過窓12の形状及び大きさは、紫外光を遮蔽しない範囲で適宜設定が可能である。紫外光透過窓12を構成する材料としては、例えばサファイア、石英等を好ましく採用できる。このほか、紫外光透過窓12は紫外線透過性樹脂によって好適に構成できる。そのような紫外線透過性樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、メタアクリル樹脂、エポキシ樹脂、脂環式ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール樹脂など(照射する紫外線を吸収するような紫外線吸収剤や可塑剤等の添加剤を含まないもの)を好ましく例示できる。
なお、紫外光透過窓を紫外線透過性樹脂で構成した場合には、紫外線照射により樹脂が劣化することがあるので、紫外光透過窓を交換しやすくする観点から、紫外光透過窓は筐体に着脱可能に取り付けられることが好ましい。
【0033】
次に、本発明の第二の形態に係る自動車用空気調和装置110について、
図3を参照しつつ説明する。
図3は、
図1、2と同一の視点から見た図であり、自動車用空気調和装置110が備える殺菌機構30が作動している様子を模式的に説明する図である。自動車用空気調和装置110を構成する部材のうち、殺菌機構30以外の部材については、上記説明した自動車用空気調和装置100と同一である。
【0034】
殺菌機構30は、波長300nm以下の紫外光を照射可能な紫外光源21、及び、ガイドレール13を有する。紫外光源21は、エバポレータ3の上流側表面の全面積に対して限定的な照射面積を有し、機械的な手法として、紫外光源21がガイドレール13に沿って移動することにより、エバポレータ3の上流側表面の全範囲を照射可能である。
【0035】
紫外光源21は、
図1に示した紫外光源11と略同一の位置に、ガイドレール13に沿って紙面上下方向に移動可能に設置されている。
殺菌機構30が作動すると、まず、紫外光源21は、不図示の駆動装置により、ガイドレール13の中央位置から
図3の紙面上方向へ移動し、ガードレール13の上端部に点線で示した位置(Top)で停止する。なお、殺菌に要する時間を短縮する観点から、紫外光源21は作動前にこの位置で停止していてもよい。
【0036】
紫外光源21は、自動車のバッテリーから電力を供給されて発光し、エバポレータ3へと紫外光を照射する。紫外光源21から照射された紫外光は紫外光透過窓12を通過してケース1内に進入し、エバポレータ3の上流側表面の全面積に対して、下端部を含む限定的な照射面積を有する領域に照射される。
殺菌に要する所定時間の経過後、紫外光源21は、発光状態を維持したままガイドレール13に沿って
図3の紙面下方向に所定の距離移動し、照射範囲を変えて、再び所定時間、当該照射範囲に紫外光を照射する。これを、ガードレール13の下端部に点線で示した位置(Bottom)まで繰り返す。当該位置(Bottom)において、紫外光源21から照射された紫外光は、エバポレータ3の上流側表面の全面積に対して、上端部を含む限定的な照射面積を有する範囲に照射される。当該位置(Bottom)で所定時間紫外光を照射後、紫外光源21は発光を停止し、ガードレール13の中央位置へと戻り、殺菌を終了する。なお、上記紫外光源21の移動により変化する照射範囲は、移動の前後で重複していてもよいが、例えばエバポレータの上流側表面積に合わせて所定の指向角βを有する光源を選択することにより、移動ごとに異なる範囲を照射し、所定回数の移動により、エバポレータ3の上流側表面の全面積が照射される形態としてもよい。
このように、本発明によれば、エバポレータ3の上流側表面の全面積に対して限定的な照射面積を有する紫外光源21により、エバポレータの上流側表面の全範囲に紫外光を照射することが可能となる。紫外光源21の種類や特性については、上記紫外光源11について説明したものと同一とすることができる。
【0037】
本発明の第二の形態において、紫外光源21は、上記ガイドレール13上の移動に加えて、第一の形態と同様に、回動軸21aを中心に回動可能であることが好ましい。すなわち、限定的な照射面積を有する紫外光源21を用いてエバポレータ3の上流側表面の全範囲を照射可能とする機械的手法として、紫外光源21が回動且つ移動可能であることが好ましい。紫外光源21が回動且つ移動可能であることにより、エバポレータ3の上流側表面に紫外光が入射する角度を自在に変更することができるため、エバポレータ3が複雑に入り組んだ表面形状を有する場合でも、エバポレータ3表面にムラ無く紫外光を照射することが可能となる。
【0038】
次に、本発明の第三の形態に係る自動車用空気調和装置120について、
図4を参照しつつ説明する。
図4は、
図1〜3と同一の視点から見た図であり、自動車用空気調和装置120が備える殺菌機構40が作動している様子を模式的に説明する図である。
図4(a)は、エバポレータ3の上流側表面の上端部を含む領域に紫外光が照射されている様子を示す図、
図4(b)は、エバポレータ3の上流側表面の下端部を含む領域に紫外光が照射されている様子を示す図である。自動車用空気調和装置120を構成する部材のうち、殺菌機構40以外の部材については、上記説明した自動車用空気調和装置100と同一である。
殺菌機構40は、波長300nm以下の紫外光を照射可能な紫外光源31、及び、ミラー14を有する。紫外光源31は、エバポレータ3の上流側表面の全面積に対して限定的な照射面積を有し、機械的な手法としてミラー14が回動することにより、光学的な手法としてミラー14の回動により紫外光の反射角が変化することにより、エバポレータ3の上流側表面の全範囲を照射可能である。
【0039】
殺菌機構40が作動すると、紫外光源31は自動車のバッテリーから電力を供給されて発光し、
図4(a)に示すようにミラー14に向けて紫外光を照射する。
図4では説明のため、紫外光を一点鎖線の矢印で示した。紫外光源31から照射された紫外光はミラー14により反射され、紫外光透過窓12を通過してケース1内に進入し、エバポレータ3に照射される。ミラー14により反射された紫外光は、エバポレータ3の上流側表面の全面積に対して、上端部を含む限定的な照射面積を有する範囲に照射される。
殺菌に要する所定時間の経過後、紫外光源31は発光状態を維持したまま、ミラー14矢印L方向に所定の角度回動し、照射範囲を変えて、再び所定時間紫外光を照射する。これを
図4(b)に示す位置まで繰り返す。
図4(b)では、エバポレータ3の上流側表面の全面積に対して、下端部を含む限定的な照射面積を有する。
図4(b)に示す姿勢で、所定時間経過後、紫外光源31は発光を停止し、
図4(a)に示した姿勢へと戻り、殺菌を終了する。なお、ミラー14の回動により変化する照射範囲は、回動の前後で重複していてもよいが、例えば、帯状の光束を有する紫外光を照射可能な光源を選択することにより、回動ごとに異なる範囲を照射し、所定回数の回動により、エバポレータ3の上流側表面の全面積が照射される形態としてもよい。紫外光源31から帯状の光束を有する紫外光を照射することにより、ミラー14により反射される紫外光の進路をエバポレータに向かう方向へ集中させ、紫外光の照射効率を高めることができるため好ましい。
このように、本発明によれば、エバポレータ3の上流側表面の全面積に対して限定的な照射面積を有する紫外光源31により、エバポレータの上流側表面の全範囲に紫外光を照射することが可能となる。
【0040】
上記第三の形態に関する説明では、ミラー14が回動することにより、エバポレータ3表面における紫外光の照射範囲が変化する形態を例示したが、本発明はこれに限定されず、ミラー14の回動に代えて、又は、ミラー14の回動に加えて、ミラー14が移動する形態としてもよい。例えば、
図5に示すように、
図4(a)に示した姿勢のまま、反射角を変化させずにミラー14を紙面下方向へ移動させることにより、エバポレータ3の上流側表面上における照射面積を変えることなく、ミラー14の移動量と同一の移動量で、照射範囲を下方向へスライドさせることが可能である。この場合、ミラー14により反射された紫外光は、ケース1の底部を通過して、エバポレータ3の上流側表面に照射されるため、
図5に示すように、上記紫外光透過窓12がケース1の底部の一部を構成することを要する。
【0041】
本発明の第三の形態において、ミラー14が回動且つ移動可能であることが好ましい。紫外光源21が回動且つ移動可能であることにより、ミラー14が紫外光を反射する方向(すなわち、紫外光がエバポレータ3の上流側表面に入射する角度)を自在に変更することができるため、エバポレータ3が複雑に入り組んだ表面形状を有する場合でも、エバポレータ3表面にムラ無く紫外光を照射することが可能となる。
【0042】
ミラー14は紫外光源31から照射された紫外光をエバポレータ3に向けて反射する部材である。
図3には、半円形の断面を有して紙面奥手前方向に延在する半円柱のミラー14を例示したが、ミラー14の形状は紫外光源31から照射された紫外光を反射可能な反射面を有するものであれば特に限定されない。ミラー14の反射面は、紫外光、特に265nmの紫外光に対する反射率が40%以上、好ましくは60%以上、最も好ましくは70%以上の紫外光反射材料で構成することが好ましい。本発明で好適に使用できる紫外光反射材料を例示すれば、クロム(紫外光反射率:約50%)、白金(紫外光反射率:約50%)、ロジウム(紫外光反射率:約65%)、硫酸バリウム(紫外光反射率:約95%)、炭酸マグネシウム(紫外光反射率:約75%)、炭酸カルシウム(紫外光反射率:約75%)、酸化マグネシウム(紫外光反射率:約90%)、アルミニウム(紫外光反射率:約90%)などを挙げることができる。これらの中でも、メッキ法や蒸着法などの表面処理により高い反射率の表面とすることができるという理由から、紫外光反射材料としては、ロジウム、白金又はアルミニウムを用いることが特に好ましい。なお、紫外光反射材料として金属材料を採用する場合には、表面が酸化されたり傷付いたりすることによって反射率が低下することを防止する観点から、石英、サファイア、ポリテトラフルオロエチレン膜などの紫外光透過性材料で紫外光反射材料の表面を被覆することが好ましい。
【0043】
本発明において、殺菌機構20、30、40は、自動車の駆動エンジン又は駆動モーターの起動及び/又は停止を検知する検知手段と、該検知手段からの信号により前記殺菌機構20を所定時間稼働させる制御手段と、を更に有することが好ましい。こうすることによりエバポレータ3の殺菌がこまめに確実に行われるので、常に清浄な状態を長期にわたって保つことができる。有害微生物の繁殖は主に自動車が長時間停止している間に起こるので、停止時に前記殺菌機構を作動させるのがより好ましい。
【0044】
また、本発明において、任意のタイミングで、殺菌機構20、30、40により、殺菌を行うことも勿論可能である。
【0045】
以上説明したように、本発明によれば、エバポレータ3の上流側表面の全面積に対して限定的な照射面積を有する紫外光源11、21、31を用いていても、機械的又は光学的な手法により、エバポレータの上流側表面の全範囲に殺菌に有効な紫外光を照射することができる。これにより、光源を小型化することができるため、光源を配置する場所の自由度が大きくなり、エンジンルームの小さな自動車にも搭載可能となる。また、本発明によれば、エバポレータの上流側表面の形状及び抗菌性に依らず、長期継続的にエバポレータの上流側表面を殺菌することが可能である。
【0046】
本発明に関する上記説明では、エバポレータの上流側から、紫外光を照射する形態の自動車用空気調和装置100、110、120を例示したが、本発明はこれに限定されず、エバポレータの下流側から、エバポレータに紫外光を照射する形態としてもよい。
【0047】
本発明に関する上記説明では、紫外光源又はミラーが回動及び/又は移動することにより、エバポレータ表面の全範囲のみに紫外光が照射される形態を例示したが、本発明はこれに限定されず、紫外光源又はミラーがさらに回動及び/又は移動することにより、ブロアファンやケースの内面等に紫外光が照射される形態としてもよい。
【0048】
本発明に関する上記説明では、紫外光の照射範囲がエバポレータの上端部から下端部へ又は下端部から上端部へと移動する形態を例示したが、本発明はこれに限定されず、紫外光の照射範囲がエバポレータの上端部と下端部との間を一回又は複数回往復する形態としてもよい。
【0049】
本発明に関する上記説明では、紫外光源がケースの外部に配置されている形態の自動車用空気調和装置を例示したが、本発明はこれに限定されず、紫外光源がケースの内部に設けられ、紫外光透過窓を介さずに直接エバポレータに照射される形態としてもよい。
【0050】
本発明に関する上記説明では、ブロアファン、エバポレータ、ヒーターコアが同一のケース内に収められている形態の自動車用空気調和装置を例示したが、本発明はこれに限定されず、これら部材は異なるケース内に収められていてもよい。この場合、エバポレータを収容するケースに上記例示した殺菌機構を備えさせることが可能である。
本発明の第三の形態に関する上記説明では、限定的な照射面積を有る紫外光源を用いて、エバポレータ表面の全範囲を照射可能とするための光学的手法として、ミラーにより紫外光の反射角度を変化させる方法を例示したが、本発明における光学的手法はこれに限定されるものではなく、例えは、紫外光透過窓に代えて、又は、紫外光透過窓に加えて光拡散フィルム、レンズ等を通過させることにより、照射面積を拡大する方法としてもよい。