(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態について、添付の図面を参照して説明する。
【0014】
実施形態を説明する前に、基礎となる予備的事項について説明する。
図1(a)に示すように、配線基板100は、その製造工程での加熱処理などの影響により凸状の反りが発生している。
【0015】
搭載される半導体チップに凹状の反りが発生している場合、配線基板100に凸状の反りが発生していると、半導体チップを信頼性よくフリップチップ接続できなくなるため、配線基板100の反りを矯正する必要がある。
【0016】
図1(b)〜(d)は、
図1(a)の配線基板100が反り矯正装置に配置された様子を示す図である。
図1(b)は平面図、
図1(c)は
図1(b)をA方向からみた側面図、
図1(d)は
図1(b)をB方向からみた側面図である。
【0017】
図1(b)〜(d)に示すように、反り矯正装置は、下側部材200及び上側部材300を備えている。下側部材200は、両端側に対向して配置された基板受け220を備えている。下側部材200の基板受け220の上に
図1(a)の配線基板100が配置される。
図1(b)に示すように、配線基板100はその中央部にチップ実装領域Mを備えている。
【0018】
図1(b)及び(d)に注目すると、上側部材300は下面の両端部にポンチ320を備えており、ポンチ320は配線基板100の両端部に対応する位置に配置されている。
【0019】
そして、
図1(e)に示すように、上側部材300のポンチ320で配線基板100を下側に押圧することにより、配線基板100を水平又は凹状になるように反りを矯正する。
【0020】
このとき、上側部材300のポンチ320で配線基板100を押圧する際に、配線基板100のチップ実装領域Mに損傷を与えないように、チップ実装領域Mを避けた領域を押圧する必要がある。
【0021】
図1(b)〜(e)の例のように、配線基板100のチップ実装領域Mが小さい場合は、配線基板100の押圧する領域が比較的制限されない。このため、配線基板100の端側から内側までの広い領域を上側部材300のポンチ320で押圧することができるので、十分に反りの矯正を行うことができる。
【0022】
図2(a)及び(b)には、中央主要部に大きなチップ実装領域Mを備えた配線基板100の反りを矯正する場合について示されている。
図1(b)及び(c)と同様に、
図2(a)は平面図であり、
図2(b)は
図2(a)をA方向からみた側面図である。
【0023】
図2(a)及び(b)に示すように、配線基板100のチップ実装領域Mが大きい場合は、上側部材300のポンチ320で押圧する配線基板100の領域が端部に制限されてしまう。このため、配線基板100を十分に押圧することができず、反りの矯正を十分に行うことができなくなる。
【0024】
また、
図3(a)及び(b)には、中央主要部に2つのチップ実装領域Mを備えた配線基板100の反りを矯正する場合について示されている。
図1(b)及び(c)と同様に、
図3(a)は平面図であり、
図3(b)は
図3(a)をA方向からみた側面図である。
【0025】
図3(a)及び(b)に示すように、配線基板100が2つのチップ実装領域Mを備える場合においても、それらの大きさや位置関係によっては、上側部材300のポンチ320で押圧する配線基板100の領域が端部に制限されてしまう。このため、同様に、配線基板100の反りの矯正を十分に行うことができなくなる。
【0026】
以下に説明する実施形態では、前述した不具合を解消することができる。
【0027】
(第1実施形態)
図4は第1実施形態に係る反りの矯正を行う配線基板の一例を示す断面図、
図5は第1実施形態の基板の反り矯正装置を示す断面図、
図6は
図5の反り矯正装置の下側部材及び上側部材を上側から透視的にみた平面図である。
【0028】
図4に示すように、第1実施形態で使用する配線基板5は、上面側にチップ実装領域Mを備えており、平面視して四角状の形状を有する。そして、配線基板5には、全体にわたって凸状に反りが発生している。
図4の部分拡大図に示すように、配線基板5は、厚み方向の中央部にガラスエポキシ樹脂などから形成されるコア基板10を備えている。
【0029】
コア基板10には厚み方向に貫通するスルーホールTHが設けられており、その中に貫通電極TEが形成さている。コア基板10の両面には貫通電極TEを介して相互接続される第1配線層11がそれぞれ形成されている。
【0030】
なお、コア基板10のスルーホールTHの側壁に形成されたスルーホールめっき層を介して両面側の第1配線層11が相互接続され、スルーホールTH内の残りの孔が樹脂で充填されていてもよい。
【0031】
また、コア基板10の両面側に、第1配線層11に到達するビアホールVHが設けられた層間絶縁層14がそれぞれ形成されている。さらに、両面側の層間絶縁層14の上にはビアホールVH内のビア導体を介して第1配線層11に接続される第2配線層12がそれぞれ形成されている。
【0032】
また、両面側の層間絶縁層14の上には第2配線層12の接続部を露出させるソルダレジスト16がそれぞれ形成されている。
図4の例では、コア基板10の両面側に2層の第1、第2配線層11,12が形成されているが、配線層の積層数は任意に設定することができる。
【0033】
配線基板として、コア基板を有さないコアレスタイプの配線基板を使用してもよい。
【0034】
配線基板5では、そのチップ実装領域Mの第2配線層12に半導体チップがフリップチップ接続される。
【0035】
コア基板10に樹脂フィルムを貼付して加熱処理を行って層間絶縁層14を形成する工程などを繰り返すと、内部に発生する熱応力に対してコア基板10が耐えることができず、配線基板5に反りが発生しやすい。
【0036】
配線基板5に凸状の反りが発生すると、凹状に反った半導体チップを信頼性よくフリップチップ接続することが困難になるため、配線基板5の反りを矯正する必要がある。
【0037】
次に、第1実施形態の基板の反り矯正装置について説明する。
図5の断面図に示すように、第1実施形態の基板の反り矯正装置1は、下側部材20とその上に配置された上側部材30とを備えている。
【0038】
図6の透視的にみた平面図を加えて参照すると、下側部材20の上面側の中央部に四角状の凹部C1が形成されている。また、基板の反り矯正装置1は、下側部材20の凹部C1の周縁部に配置された環状のスペーサ40を備えている。
【0039】
下側部材20及び上側部材30は、例えば、スチール(鋼鉄)などの金属から形成される。スペーサ40は、例えば、ステンレス鋼から形成される。
【0040】
そして、前述した
図4の配線基板5の周縁部がスペーサ40の上に配置されている。各種の配線基板5の大きさに合わせて大きさの異なるスペーサ40を用意しておくことにより、スペーサ40を変更することで各種の配線基板5に容易に対応することができる。下側部材20の凹部C1の大きさは最大の配線基板の面積に対応するように形成される。
【0041】
上側部材30は、その下面側の中央部に凹部C2が設けられている。上側部材30の凹部C2は配線基板5の主要部に対応する領域に配置されている。また、上側部材30は、その中心部に厚み方向に貫通するガス供給穴32を備えている。
【0042】
上側部材30のガス供給穴32は下面側の凹部C2の中央部に連通して繋がっている。上側部材30のガス供給穴32にはガス配管34が取り付けられており、ガスコンプレッサ(不図示)からガスが所定の圧力で供給される。
【0043】
例えば、下側部材20及び上側部材30の面積が3cm×3cmの場合は、ガス供給穴32の直径は3mm〜5mm程度である。
【0044】
また、スペーサ40の上に配置された配線基板5上の周縁部に環状の密封部材50が配置されている。そして、配線基板5上の周縁部に配置された密封部材50を介して上側部材30が下側部材20の上に配置されている。
【0045】
また、
図5の例のように、上側部材30及び下側部材20がクランプ治具70などにより固定されていてもよい。
【0046】
密封部材50は、下側部材20と上側部材30とを密着させる際に、配線基板5及び上側部材30に隙間なく密着する弾性材料から形成される。そのような密封部材50の好適な一例としては、フッ素系ゴムなどから形成されるゴムパッキンを使用することができる。
【0047】
また、下側部材20及び上側部材30の中にはヒータ60が設けられており、配線基板5を所望の温度に加熱することができる。ヒータ60は、例えば、電熱線ヒータなどが使用される。
【0048】
次に、配線基板5の反りを矯正する方法について説明する。
図5に示したように、まず、凸状の反りが発生した配線基板5を下側部材20の凹部C1に配置されたスペーサ40の上に配置する。これにより、配線基板5は、下側部材20の凹部C1を覆うようにスペーサ40を介して下側部材20の上に配置される。
【0049】
続いて、配線基板5上の周縁部に密封部材50を配置し、密封部材50を介して上側部材30を下側部材20の上に配置する。さらに、下側部材20及び上側部材30の端部をクランプ治具70で挟んで固定する。
【0050】
これにより、配線基板5、密封部材50及び上側部材30の凹部C2の内面によってガス供給空間Sが形成される。ガス供給空間Sは、密封部材50の作用によりガス供給穴32からガスを供給する際にガス漏れのない密封空間となる。
【0051】
次いで、
図7に示すように、上側部材30のガス供給穴32からガスを所定の圧力でガス供給空間Sに供給することにより、凸状に反った配線基板5をガスの圧力によって下側に押圧して変形させる。ガスとしては、好適に空気(エア)が使用されるが、窒素(N
2)ガス、酸素(O
2)ガス、アルゴン(Ar)などの不活性ガスを使用してもよい。
【0052】
このとき、ガス供給空間Sでは密封部材50の作用でガス漏れが発生せず密封空間となるため、配線基板5に効率よく押圧力をかけることができる。これにより、凸状に反った配線基板5が水平又は凹状に反りが矯正される。配線基板5はスペーサ40よりも内側の領域がガスの押圧力によって下側に撓んで反りが矯正される。
【0053】
このように、第1実施形態では、スペーサ40の上に配置された配線基板5を密封部材50を介して上側部材30で固定し、上側部材30のガス供給穴32からガスを供給して配線基板5を下側に押圧している。
【0054】
このため、予備的事項で説明したポンチで押圧する方法と違って、配線基板5のチップ実装領域Mの大きさや配置位置を考慮する必要はなく、配線基板5の押圧領域が制限されることはない。従って、各種の仕様の配線基板の反りを容易に矯正することができる。
【0055】
また、配線基板の反りが大きな場合であっても、ガスの圧力を調整することにより配線基板の反りを容易に矯正することができる。
【0056】
なお、配線基板5と上側部材30との間隔を十分に得るために上側部材30の下面側に凹部C2を形成することが好ましいが、上側部材30の凹部C2を省略することも可能である。この場合は、大きな直径の密封部材50を使用して上側部材30の配置高さを高くすることにより、配線基板5と上側部材30とが接触しないようにすればよい。
【0057】
図8には第1実施形態の変形例の基板の反り矯正装置1aが示されている。
図8の変形例の基板の反り矯正装置1aのように、同じ大きさの配線基板5のみを処理する場合は、前述した
図5においてスペーサ40を省略してもよい。
【0058】
この形態では、下側部材20の凹部C1の外側領域Pに配線基板5の周縁部が配置される。このようにして、
図8の例では、配線基板5が下側部材20の凹部C1を覆うようにして下側部材20の上に直接配置される。
【0059】
そして、配線基板5上の周縁部に配置された密封部材50を介して上側部材30が下側部材20の上に配置され、それらがクランプ治具70で固定される。
【0060】
変形例の基板の反り矯正装置1aにおいても、同様な方法でガス供給穴32からガスを供給して配線基板5を下側に押圧することにより、配線基板5の反りを矯正することができる。
【0061】
なお、
図5及び
図8の基板の反り矯正装置1,1aにおいて、下側部材30にも同様なガス供給穴が形成されていてもよい。さらに、
図5において、密封部材50は配線基板5と上側部材30との間だけではなく、スペーサ40と配線基板5との間に配置されていてもよい。また、
図8において、密封部材50は配線基板5と上側部材30との間だけではなく、下側部材20と配線基板5との間に配置されていてもよい。
【0062】
スペーサ40と配線基板5とが
密封部材50を介して密着する場合は、スペーサ40の材料は金属でよいが、スペーサ40と配線基板5とが直接接触する場合は、スペーサ40の材料は樹脂などの柔らかい材料が使用される。
【0063】
本願発明者は、前述した基板の反り矯正装置1で配線基板の反りを矯正する方法において、配線基板の反り量の温度依存性について実験を行った。
【0064】
配線基板の温度を常温(15℃)、30℃〜140℃まで10℃刻みで変化させ、配線基板のチップ実装領域の反り量について、矯正前、矯正後、及び再加熱後に調査した。再加熱は、配線基板のチップ実装領域に半導体チップをフリップチップ接続する際のリフロー加熱を想定した処理であり、加熱温度を250℃に設定した。
【0065】
評価基板としてはBGA(Ball Grid Array)タイプに適用されるコア基板を有する配線基板を使用した。サンプル数は、各条件において1ピースとした。
【0066】
また、各条件において、ガスの圧力を0.5MPaに設定し、処理時間を1秒に設定した。
【0067】
その結果が
図9〜
図11に示されている。
図10は
図9の各温度での反り量のデータについて、矯正前、矯正後、再加熱後の反り量をグラフ化したものである。また、
図11は
図9の各温度での反り量のデータについて、「(矯正後の反り量)―(再加熱後の反り量)」から反り量の差分を算出し、その値をグラフ化したものである。
【0068】
配線基板の反り量がプラス値の場合は凸状の反りが発生しており、逆に反り量がマイナス値の場合は凹状の反りが発生していることを意味する。
【0069】
図9及び
図10に示すように、矯正前の各配線基板の反り量は概ね20μm〜22μmであり、凸状の反りが発生していた。これに対して、前述した
図5の反り矯正装置1で配線基板を処理すると、全ての各温度において配線基板の反り量がマイナス値になっており、凸状の反りから凹状の反りに矯正されたことが確認された。
【0070】
また、配線基板の温度を常温から140℃まで昇温するにつれて、マイナス値の絶対値が大きくなっていることから凹方向に大きく反りが矯正されることが分かった。
【0071】
また、再加熱後の配線基板の反り量に注目すると、常温から80℃までの温度範囲では、矯正後と比較すると再加熱後の方がマイナス値の絶対値が大きくなっている。このことから、常温から80℃までの温度範囲では、矯正後に再加熱すると、さらに凹方向に反り、凹状の反りから凸状の反りに戻らないことが分かった。これは、
図10のグラフの常温〜80℃のデータを加えて参照すると分かりやすい。
【0072】
一方、90℃〜130℃の温度範囲では、矯正後と比較すると再加熱後の方がマイナス値の絶対値が小さくなっていることから、矯正後の凹状の反りから凸方向に反りが多少戻ったことになる。これは、
図10のグラフの90〜130℃のデータを加えて参照すると分かりやすい。
【0073】
また、
図11を参照すると、太線で囲まれたデータで示されるように、矯正後から再加熱後での反り量の変化量は70℃〜90℃の温度範囲で最小値になることが分かった。
【0074】
半導体チップは凹状に反っているため、半導体チップがフリップチップ接続される前の状態の配線基板のチップ実装領域内の反り形状は凹状である必要がある。この観点からは、配線基板の設定温度は常温〜90℃の範囲であることが好ましい。
【0075】
また、矯正後から再加熱後での反り量の変化量に注目すると、70℃〜90℃の温度範囲が最小値になるため好ましい。半導体チップを実装した後に、配線基板の反りが凸方向に大きく戻ると、半導体チップの接続の信頼性が得られなくなるためである。
【0076】
また、常温(15℃)においても、配線基板の反りの矯正を十分に行うことができる。この場合は、
図5の基板の反り矯正装置1においてヒータ60を省略できるため、反り矯正装置の構成を簡略化することができる。
【0077】
また、本願発明者は、前述した
図5のように配線基板の反りを密封空間で矯正する場合と、比較例としてオープンの状態で矯正する場合とにおいて、矯正効果を比較する実験を行った。
【0078】
図12に示すように、比較例の基板の反り矯正装置2は、
図5の基板の反り矯正装置1において密封部材50が省略されており、上側部材30の凹部C2の外側領域が配線基板5の周縁部に直接接触する構造とした。
図12のその他の要素は
図5と同一である。
【0079】
評価基板のサンプル数は、各条件において3ピースとした。処理時間は、各条件において、1秒、5秒、10秒で変化させた。また、各条件において、ガスの圧力を0.5MPaに設定した。
【0080】
その結果が
図13及び
図14に示されている。
図14は
図13の反り量のデータについて、矯正前、矯正後のデータをグラフ化したものである。
【0081】
図13及び
図14に示すように、
図5の基板の反り矯正装置1のように密封空間で行う場合は、全ての条件において、矯正前にプラス値であった反り量がマイナス値の反り量に変化しており、前述の実験結果と同様に十分な反り矯正効果が得られている。具体的には、矯正前の反り量が15μm〜23μm程度であり、矯正後には−18μm〜−30μm程度の反りに矯正されている。
【0082】
これに対して、
図12の比較例の基板の反り矯正装置2のようにオープンの状態で行うと、矯正前にプラス値であった反り量が多少小さくなっているだけであり、十分な反り矯正効果は得られなかった。具体的には、矯正前の反り量が16μm〜24μm程度であり、矯正後の反り量は14μm〜23μm程度であり、僅かな反り矯正効果しか得られなかった。
【0083】
図11の比較例の基板の反り矯正装置2は、密封部材50が省略されている。このため、ガスを供給して配線基板5を押圧する際に、配線基板5と上側部材30との微細な隙間からガスが漏れるため、配線基板5を十分に押圧できないためである。
【0084】
このように、
図5の基板の反り矯正装置1のように、密封部材50を使用してガス供給空間Sを密封した状態で配線基板5をガスで押圧することが必要である。
【0085】
以上にようにして、凸状の反った配線基板5を水平又は凹状に反りになるように矯正することができる。そして、
図15に示すように、配線基板5のチップ実装領域Mの第2配線層12の上に半導体チップ80のはんだバンプ82を配置し、230℃〜250℃の温度でリフロー加熱する。これにより、半導体チップ80のはんだバンプ82が配線基板5にフリップチップ接続される。
【0086】
このとき、前述したように、半導体チップ80は凹状に反っているため、配線基板5が凹方向に反るように矯正する必要がある。このようにすることにより、半導体チップ80をより信頼性よく配線基板5にフリップチップ接続することができる。
【0087】
その後に、半導体チップ80と配線基板5との隙間にアンダーフィル樹脂84を充填する、さらに、配線基板5の下面側の第2配線層12にはんだボールを搭載するなどして外部接続端子86を形成する。これにより、半導体装置3が製造される。
【0088】
前述したように、半導体チップ80をフリップチップ接続する際に、再加熱となるリフロー加熱を行うとしても、矯正後に凹状に反った配線基板5は凸状の反りに戻らないため、半導体装置3の高い信頼性が得られる。
【0089】
第1実施形態では、配線基板5の反りを矯正する例を示したが、各種の基板の反りを矯正することができる。
【0090】
(第2実施形態)
図16及び
図17は第2実施形態の基板の反り矯正装置を示す断面図、
図18及び
図19は第2実施形態の基板の反り矯正方法を説明するための図である。
【0091】
前述した第1実施形態の基板の反り矯正装置1,1aは、上側部材30にガス供給穴32を形成しているため、凸状に反った基板を凹状に矯正することができる。
【0092】
しかし、基板の反り形状として凸形状及び凹形状が混在する場合、凹状に反った基板を矯正するとさらに凹状側に反りが発生し、過剰矯正となり品質を満たすことができなくなる。
【0093】
そこで、第2実施形態では、基板の反り矯正装置の下側部材にもガス供給穴を形成して、基板を表面側からだけではなく、裏面側からも矯正できるようにしている。
【0094】
図16に示すように、第2実施形態の基板の反り矯正装置2は、下側部材20とその上に配置される上側部材30とを備えている。下側部材20の上面側の中央部に四角状の凹部C1が形成されている。
【0095】
また、下側部材20の凹部C1の底面の中央には厚み方向に貫通して凹部C1に繋がるガス供給穴22が形成されている。下側部材20のガス供給穴22にはガス配管24が取り付けられており、ガスコンプレッサ(不図示)からガスが所定の圧力で供給される。
【0096】
下側部材20の凹部C1の内面には、下側部材20のガス供給穴22の上に開口部42aが設けられた下側スペーサ42が配置されている。下側スペーサ42は、下側部材20の凹部C1の側壁に沿って上側に突き出る環状の突出部42xを備えている。
【0097】
これにより、下側スペーサ42は下側部材20の凹部C1に沿った凹部C3が内面に形成されている。そして、下側スペーサ42の突出部42xの上面に環状の下側密封部材52が配置される。
【0098】
また、上側部材30は平板状であり、その中央部に厚み方向に貫通するガス供給穴32が形成されている。上側部材30の下面にはガス供給穴32の下に開口部44aが設けられた上側スペーサ44が配置されている。
【0099】
上側スペーサ44は、下側スぺ―サ42の突出部42xに対応するように下側に突き出る環状の突出部44xを備えて形成されている。これにより、上側スペーサ44の内面に凹部C4が形成されている。
【0100】
上側スペーサ44の突出部44xの下面には環状の上側密封部材54が配置される。
【0101】
上側部材30のガス供給穴32にはガス配管34が取り付けられており、ガスコンプレッサ(不図示)からガスが所定の圧力で供給される。
【0102】
なお、下側スペーサ42及び上側スペーサ44として、第1実施形態の
図5及び
図6の環状のスペーサ40と同様に、本体が環状に形成されたスペーサを使用してもよい。
【0103】
そして、下側部材20と上側部材30との間に反りの矯正が行われる基板6が配置される。下側部材20及び上側部材30の中にはヒータ60が設けられており、基板6を所望の温度に加熱することができる。
【0104】
このように、第2実施形態の基板の反り矯正装置2では、上側部材30にガス供給穴32が形成されているだけではなく、下側部材20にもガス供給穴22が形成されている。これにより、配線基板5の表面側及び裏面側の両方からガスを供給して基板6の反りを矯正することができる。これにより、凸状に反った基板6は上側部材30のガス供給穴32からガスを供給することにより、所望の凹状の反り量に矯正することができる。
【0105】
また逆に、過剰に大きく凹状に反った基板6は下側部材20のガス供給穴22からガスを供給することにより、凹状の反りを凸状側に矯正して所望の凹状の反り量に矯正することができる。
【0106】
図17には、第2実施形態の変形例の基板の反り矯正装置2aが示されている。
図17の変形例の基板の反り矯正装置2aのように、
図16の下側スペーサ42及び上側スペーサ44を省略してもよい。
【0107】
この形態の場合は、下側部材20の凹部C1の周囲の上面に下側密封部材52が配置される。また、上側部材30の下面側に凹部C5が形成され、凹部C5の周囲の下面に上側密封部材54が配置される。このようにして、基板6の周縁部の両面が下側密封部材52及び上側密封部材54を介して下側部材20及び上側部材30に密着する。
【0108】
図18は、比較例の反り矯正方法と第2実施形態の反り矯正方法とを比較した図である。
【0109】
比較例では、上側部材のみにガス供給穴を備えた反り矯正装置が使用される。
図18に示すように、比較例及び第2実施形態の反り矯正方法の例では、共に、反り矯正前の複数の基板6の反り量は+30μm〜−30μmの範囲であり、凸状の反り(プラス値)と凹状の反り(マイナス値)が混在している。
【0110】
比較例の基板の反り矯正装置では、上側部材のみにガス供給穴が設けられているため、凹状側にしか反りを矯正できない。このため、各基板に反り矯正処理を行うと、複数の基板6の反り量は−50μm〜−80μmの範囲の反り量となり、基板によっては凹状側に過剰矯正となり品質を満たすことができなくなる。
【0111】
これに対して、第2実施形態の基板の反り矯正装置2では、
図19(a)を加えて参照すると、最初に、下側部材20のガス供給穴22から各基板6の裏面に第1のガスを所定の圧力で供給する。これにより、
図18に示すように、複数の基板6の反り量は+25μm〜+60μmの範囲となり、反り量の狙い値(−25μm程度)とは逆の反り量になるようにする。
【0112】
次いで、
図19(b)を加えて参照すると、上側部材30のガス供給穴32から各基板6の表面に第2のガスを所定の圧力で供給する。これにより、
図18に示すように、複数の基板6の反り量は−25μm前後の値となり、反り量の狙い値に調整することができる。
【0113】
第1のガスを供給した後では、複数の基板6の反り量は+25μm〜+60μmの範囲でばらついている。このため、各基板6ごとに、ガスの圧力及び処理時間などを調整することにより、反り量が−20μm前後の値になるようにする。
【0114】
このように、凸状及び凹状の反りが混在している複数の基板6を一旦凸状の反りになるようにし、その後に、凹状の反りになるように矯正することにより、複数の基板6を所望の凹状の反り量の範囲に設定することができる。
【0115】
この例の他に、例えば、凹状に大きく過剰に反った基板6に対しては、最初に、下側部材20のガス供給穴22から第1のガスを供給して凹状の反りをゼロ付近まで矯正する。その後に、上側部材30のガス供給穴32から基板6に第2のガスを供給して狙い値の凹状の反り量に設定してもよい。
【0116】
あるいは、上側部材30のガス供給穴32及び下側部材20のガス供給穴22から同時にガスを供給してもよい。この場合は、上下からの供給されるガスの圧力を変えることで、上下からのガス圧の差が基板6の反り矯正圧力となるため、細かい圧力の調整が可能になり、基板6の反りを精度よく矯正することができる。
【0117】
さらには、上側部材30のガス供給穴32及び下側部材20のガス供給穴22から交互にガスを供給するステップを多数回で繰り返してもよい。
【0118】
このように、第2実施形態の基板の反り矯正装置2では、上側部材30側及び下側部材20側の両側から矯正用のガスを供給できる。これにより、基板6の両面に様々なタイミングでガスを供給することにより、基板6を凹状側ばかりではなく凸状側にも矯正することができると共に、基板6を所望の反り量に精度よく調整することができる。
【0119】
また、基板6にかかる矯正力の調整方法として、下側スペーサ42及び上側スペーサ44の各凹部C1,C4のサイズを変更する方法がある。
【0120】
図20(a)では、前述した
図16と同様に、基板6の最外周部を下側密封部材52及び上側密封部材54で挟み込んでいる。
【0121】
これに対して、
図20(b)に示すように、下側スペーサ42及び上側スペーサ44の各凹部C1,C4のサイズを小さくすることにより、下側スペーサ42の突出部42xの間隔、及び上側スペーサ44の突出部44xの間隔をそれぞれ狭く設定する。これにより、基板6の中央側に近い部分を下側密封部材52及び上側密封部材54で挟み込むことができる。
【0122】
図20(b)の構造では、
図20(a)でのガス圧力と同じガス圧力をかけても
図20(a)よりも基板6の変形量を小さくできるため、基板6にかかる矯正力を小さく調整することができる。
【0123】
一般的なコンプレッサは、低いガス圧を印加する際に圧力が不安定になる傾向があるため、種々の圧力調整方法を併用することにより矯正精度を向上させることができる。