特許第6283224号(P6283224)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283224
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】大腸内視鏡検査用食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20180208BHJP
【FI】
   A23L7/10 B
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-530035(P2013-530035)
(86)(22)【出願日】2012年8月22日
(86)【国際出願番号】JP2012071147
(87)【国際公開番号】WO2013027750
(87)【国際公開日】20130228
【審査請求日】2015年4月28日
【審判番号】不服2016-12242(P2016-12242/J1)
【審判請求日】2016年8月12日
(31)【優先権主張番号】特願2011-182522(P2011-182522)
(32)【優先日】2011年8月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福士 亜矢子
【合議体】
【審判長】 千壽 哲郎
【審判官】 田村 嘉章
【審判官】 窪田 治彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−60460(JP,A)
【文献】 特開2004−275185(JP,A)
【文献】 特開2011−10580(JP,A)
【文献】 特開2003−61596(JP,A)
【文献】 小川 千里他,大腸内視鏡治療前における食事の検討−低残渣5分粥食と常食との比較−,群馬県立がんセンター年報,2008年 9月,No.36,P.131
【文献】 娘が大腸内視鏡検査を受けるのですが消化の良い…,[online],2010年10月26日,[2016年6月15日検索],インターネット http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1349341613
【文献】 大腸内視鏡+大腸ポリープ切除術してきました1(準備編),[online],2011年 3月25日,[2016年6月15日検索],インターネット http://dsamano.blog74.fc2.com/blog−entry−169.html
【文献】 大腸内視鏡検査の前の食事とは?,[online],2010年 6月24日,[2016年6月15日検索],インターネット http://ameblo.jp/iloveperorinman/entry−10572041625.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/10 B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧加熱殺菌してなる密封容器詰雑炊からなる大腸内視鏡検査用食品であって、
加工澱粉0.5〜5%、還元澱粉糖化物0.1〜3.0%および加熱凝固した卵を含み、
加熱凝固した卵が薄膜状、鱗片状または薄肉偏平状である、
大腸内視鏡検査用食品。
【請求項2】
還元澱粉糖化物の平均分子量が500〜3000である請求項1記載の大腸内視鏡検査用食品。
【請求項3】
米に対する卵の質量配合比(卵/米)が0.1〜2.0である請求項1または2に記載の大腸内視鏡検査用食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧加熱殺菌してなる密封容器詰雑炊であって、還元澱粉糖化物および加熱凝固した卵を含む、粒残りがあって食べ応えのある大腸内視鏡検査用食品に関する。
【背景技術】
【0002】
大腸癌は日本人の癌の中で近年増加傾向にあり、早期発見、早期治療のため、大腸癌検診等の大腸検査の実施が推奨されている。大腸検査法は大きく分けて、バリウム等の造影剤を腸内に注入しX線造影を行う「注腸検査法」と、内視鏡を腸内に挿入して直接腸内の様子を観察する「内視鏡検査法」がある。近年、手技の進歩や内視鏡の細径化等により、的確な診断と治療を行うことができる内視鏡検査法が注腸検査法に代わり大腸検査法の主流となりつつある。
【0003】
大腸内視鏡検査法は、検査当日に経口腸管洗浄剤を約2〜4L飲用することで、大腸の中を完全に空にし、肛門から内視鏡を挿入して大腸内の様子を直接観察することにより病変を検査する方法である。正確な検査を行うためには、検査時の腸内残渣が少ないことが求められる。そのため、前日の食事は食物繊維が多い野菜の摂取を控えたり、病院から指示された低繊維、低脂肪の味気のない検査食を摂取したりする等の制限がある。したがって、検査に支障のない範囲で食感に富み、食事としての満足感が得られる検査食が求められている。
【0004】
検査食の主食は主にお粥や雑炊が提供されるが、市販の密封容器詰め雑炊は、加熱加圧殺菌中に炊飯を行うことにより炊飯中に米が糊っぽくなり、べちゃべちゃとした仕上がりになりがちで、また、保存中に米が液を吸うことでも米の粒感が失われてしまい、粒残りが悪く食べ応えがない。特に上記のようにただでさえ味気がなく満足感を得がたい検査食を使用する場面では、主食のお粥や雑炊に食べ応えのないことが被験者の不満となっている。さらには、レトルト食品等の市販の密閉容器詰め雑炊は容器の中で米同士が結着してダマになりやすく、大腸内視鏡検査用食品として用いるのには適していなかった。
【0005】
雑炊の粒残り改善に関して、特許文献1には、分子量750以上の還元澱粉糖化物を配合すると軟飯の粒残りが良くなることが記載されている。また、特許文献2には、塩分が1.0%以下の軟飯において、還元澱粉糖化物と炭酸水素ナトリウムを配合することで密封容器から出しやすい軟飯を提供できることが示されている。
しかしながら、前述のように水分量の多い雑炊においては、加圧加熱殺菌中に米同士が結着してダマができるという問題もあり、そのようなダマができてしまうと、大腸内視鏡検査において支障をきたす恐れがある。本発明者等は上記特許文献1、2のように還元澱粉糖化物を本発明の大腸内視鏡検査食である密封容器詰雑炊に配合することも試みたが、還元澱粉糖化物を配合するだけでは、粒残りとダマの両方を改善することはできず、粒残りが良く大腸内視鏡検査食として優れた食べ応えを有する上、ダマがなく検査に支障をきたす恐れのない大腸内視鏡検査用食品を実現することはできなかった。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−61596
【特許文献2】特開2011−10580
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
市販の密封容器詰めお粥は腸内の残渣が少なく検査に支障をきたしにくいことから、大腸内視鏡検査用食品としては有用であったが、米の粒感が少なく食事としての食べ応えは少ないものであるため、被験者にとって食事としての満足感を得られるものではなかった。また、レトルト食品等の市販の密封容器詰め雑炊は容器の中で米同士が結着してダマになりやすく、大腸内視鏡検査用食品として用いるのには適していなかった。
そこで、本発明は、粒残りが良く大腸内視鏡検査食として優れた食べ応えを有する上、ダマがなく検査に支障をきたす恐れのない大腸内視鏡検査用食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、鋭意研究を重ねた結果、大腸内視鏡検査用食品に還元澱粉糖化物および加熱凝固した卵を含有させることで、加圧加熱殺菌してなる密封容器詰雑炊において、意外にも、粒残りがあって大腸内視鏡検査食として優れた食べ応えを有する上に、ダマもなく検査に支障をきたさない大腸内視鏡検査用食品を実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)加圧加熱殺菌してなる密封容器詰雑炊からなる大腸内視鏡検査用食品であって、
加工澱粉0.5〜5%、還元澱粉糖化物および加熱凝固した卵を含み、
加熱凝固した卵が薄膜状、鱗片状または薄肉偏平状である、
大腸内視鏡検査用食品、
(2)還元澱粉糖化物の平均分子量が500〜3000である(1)記載の大腸内視鏡検査用食品、
(3)米に対する卵の質量配合比(卵/米)が0.1〜2.0である(1)または(2)に記載の大腸内視鏡検査用食品、
(4)還元澱粉糖化物の配合割合が0.1〜3.0質量%である(1)乃至(3)のいずれかに記載の大腸内視鏡検査用食品、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、大腸内視鏡検査用食品に還元澱粉糖化物および加熱凝固した卵を含有させることで、加圧加熱殺菌してなる密封容器詰雑炊において、粒残りがあって大腸内視鏡検査食として優れた食べ応えを有する上に、ダマもなく検査に支障をきたさない大腸内視鏡検査用食品を実現することができる。これにより、大腸内視鏡検査前の被験者の不満を解消でき、大腸内視鏡検査の浸透ひいては、大腸癌の早期発見、早期治療に貢献できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」を意味する。
【0011】
本発明の大腸内視鏡検査用食品は、大腸癌等の検査や治療の目的で内視鏡を肛門から挿入し、大腸内粘膜の様子を観察する大腸内視鏡検査において、検査前日に被験者が摂取するための食品であり、検査時の視野に支障のない程度に腸内残渣が低減されるよう設計された大腸内視鏡検査専用の食品である。
【0012】
本発明の大腸内視鏡検査用食品は、密封容器詰め雑炊である。大腸内視鏡検査食の喫食場面としては、検査前日の朝食、昼食、間食、夕食等が挙げられ、本発明の密封容器詰め雑炊は、1食分の雑炊が密封容器に入っていればよい。また、本発明で用いる密封容器は、密封および加圧加熱殺菌可能であればよく、材質、形状等は特に制限はない。例えば、アルミ製、ポリエチレン製、ポリプロピレン製の容器等が挙げられる。
【0013】
本発明における雑炊は、還元澱粉糖化物および加熱凝固した卵を含有する。
【0014】
本発明における還元澱粉糖化物は、澱粉を酵素等で加水分解して得られた糖化物に水素を添加して糖化物中のカルボニル基を水酸基に還元したものであり、様々な重合度のグルコースを骨格とする糖アルコールの混合糖質である。市販されている還元澱粉糖化物は、その平均分子量が主に200〜9000程度のものであるが、本発明では、後述の試験例で示しているとおり、米の粒残りとダマの改善効果の点から平均分子量が500以上の還元澱粉糖化物が好ましく、平均分子量が500〜3000の還元澱粉糖化物がより好ましい。還元澱粉糖化物の平均分子量が500以下であると米の粒残りが悪くなる場合があり、また3000よりも大きいと粘り気が出て、糊っぽい食感になる傾向がある。
【0015】
本発明における還元澱粉糖化物の分子量は、高速液体クロマトグラフィー(カラム:CK02AS三菱化成(株)製、温度:80℃、溶離液:蒸留水、流速:1.0ml/min、検出器:示差屈折計)に供し、1〜20糖類に相当する成分を分離し、分離できない20糖相当以上の高分子成分は便宜上20糖類に含めてその組成から計算で求めた値である。但し、20糖以上の割合が60%以上のものについては、分子量10000分画のウルトラフィルター(UFP−1TGC24ミリポア製)でろ過し、ろ過によって通過しない成分は分子量を便宜上10000(62糖類)と見なして、ろ過前の組成を補正して求めた値である。
【0016】
本発明における還元澱粉糖化物の配合割合は、ダマの改善効果の点から0.1〜3.0%が好ましい。さらに好ましくは、0.5〜2.0%である。
【0017】
本発明における加熱凝固した卵とは、少なくとも卵白タンパク質を含有していればよく、卵白液、卵白液と卵黄液の混合物、又は、これらの乾燥物を水戻ししたものからなる液卵を凝固させたものであり、調味液等を混合し凝固させたものも含むものである。また、卵の凝固物の形状は、鱗片状、薄膜状、薄肉偏平状の小片、大豆状、掻き玉汁に具として含有している形状の掻き玉状や、卵丼や親子丼などの丼物の具として含有している形状も含むものである。また、これらの形状の中でも薄膜状、鱗片状または薄肉偏平状の卵の凝固物は、米の粒残りとダマの改善効果の点から望ましい。なお、上記のような形状の卵凝固物は、後述する実施例に示しているように加熱した調味液をゆっくり攪拌しながら卵を投入することにより得られるが、さらに、配合原料として、加工澱粉および/またはクエン酸三ナトリウムのようなクエン酸塩を配合した調味液を用いることで、より得られやすくなる。加工澱粉の配合量としては、0.5〜5.0%が好ましい。クエン酸塩の配合割合としては、0.01〜0.5%が好ましい。
【0018】
本発明における卵の配合割合は、米の粒残りとダマの改善効果の点から、米に対する卵の質量配合比(卵/米)が0.1〜2.0であることが好ましく、0.5〜2.0がさらに好ましい。なお、本発明において米に対する卵の配合比(卵/米)とは、卵の配合量を米の配合量で割った結果の値をいう。米に対する卵の質量配合比(卵/米)が0.1よりも小さいとダマができやすくなり、また2.0よりも多いと雑炊全体の味が薄まり、雑炊らしい食味を呈しにくいため、好ましくない。なお、米は無洗米あるいは生米、卵は生卵換算での配合量である。

【0019】
本発明における雑炊は、上記の還元澱粉糖化物および加熱凝固した卵の他、通常、米と調味液分を含んでなり、さらに野菜、肉、魚介などの具材を含んでもよい。一般に雑炊やリゾットといわれるもののほか、ミネストローネのようなスープの具材のひとつとして米を含む料理でもよい。好ましくは液分が全体の重量の40%以上、さらに好ましくは60〜95%とする。このような具材は、それを適宜調理後、前記調味液に加えるか、炊飯時に添加してもよい。
【0020】
次に、本発明の大腸内視鏡検査用食品である密封容器詰め雑炊の製造方法について説明する。本発明の密封容器詰め雑炊は上述の各原料を混合後、常法により加圧加熱殺菌して製造すれば特に限定されないが、米の粒残りとダマの改善効果の点から、具材と調味液を混合し加熱した後に、ゆっくりと攪拌しながら卵を投入し凝固させ、卵を薄膜状、鱗片状または薄肉偏平状に凝固させることが好ましい。
【0021】
次に、本発明を実施例、比較例および試験例に基づき、さらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0022】
〔実施例1〕鶏と卵の雑炊
下記の配合割合に準じ、本発明の大腸内視鏡検査用食品として鶏と卵の雑炊を製造した。すなわち、ニーダーに清水、旨味調味料、食塩、クエン酸三ナトリウム、還元澱粉糖化物(平均分子量800)、加工澱粉を投入し、90℃まで加熱しながら攪拌した。さらに加熱を続け、ゆっくりと攪拌している状態でにんじん、卵を投入し、卵を凝固させ、雑炊の調味液を得た。その後、300mL容量の耐熱性パウチ容器に米、鶏モモ肉、上記により得た雑炊の調味液を投入し、250g充填、密封し、121℃で15分間、加圧加熱殺菌を行って、鶏と卵の雑炊を得た。
【0023】
にんじん 2.0%
生卵 5.0%
鶏モモ肉 4.0%
加工澱粉 1.0%
還元澱粉糖化物(平均分子量800) 1.0%
旨味調味料 2.0%
食塩 0.2%
クエン酸三ナトリウム 0.1%
無洗米 6.4%
清水 78.3%
合計 100.0%

【0024】
実施例1の鶏と卵の雑炊を耐熱性パウチ容器から皿に出したところ、米の粒残りは良好でダマもなく、大腸内視鏡検査食としてこれまでにない優れた食べ応えを有していた。またこの雑炊において、米に対する卵の配合比(卵/米)は0.8、加熱凝固した卵は綺麗に分散した薄膜状、鱗片状または薄肉偏平状であった。さらに、実施例1で調製した鶏と卵の雑炊を、大腸内視鏡検査前日の朝食として、被験者に摂取させた。
【0025】
大腸内視鏡検査被験者に検査前日の就寝前に大腸刺激性下剤として、センノシド製剤(商品名「アローゼン」、(株)ポーラファルマ製)2包をコップ2〜3杯の水で服用させた。また、大腸内視鏡検査当日は、検査が済むまで、食事を摂取しないようにし、検査開始の2、3時間前から、経口腸管洗浄剤(商品名「ニフレック、味の素ファルマ(株)製」)を2Lの水に溶解した溶解液を1時間に約1Lの速度で服用し、便が透明になったことを確認した。その後、専門医により大腸内視鏡による検査を行った。その結果、大腸内粘膜を観察する際の内視鏡の視界には問題なく検査を実施できた。
【0026】
〔試験1〕糖類の違い
本発明の大腸内視鏡検査用食品に使用する還元澱粉糖化物が、大腸内視鏡検査用食品の粒残り及びダマに与える影響を調べた。具体的には、大腸内視鏡検査用食品に用いる還元澱粉糖化物を表1に示すデキストリンに変更した以外は、実施例1に準じて大腸内視鏡検査用食品を製し比較例1を得た。得られた大腸内視鏡検査用食品は、以下の評価方法に従って評価した。なお、還元澱粉糖化物を粉末状のデキストリンに置き換える場合は、固形分換算で含有量を揃えた。即ち、大腸内視鏡検査用食品の還元澱粉糖化物(固形分70%)10%を、粉末状デキストリン7%に変更した。実施例1と比較した結果を表1に示す。
【0027】
〔評価方法〕
大腸内視鏡検査用食品を製造翌日に耐熱性パウチ容器から、平皿に出し、米の粒残りとダマを目視により観察した。
【0028】
〔米の粒残りの評価基準〕
A:米粒の形が炊飯前と同程度に確認できる。
B:米粒が所々欠けている。
C:多くの米粒に欠けや割れが見られ、元の米粒の形が残っていない。
【0029】
〔ダマの評価基準〕
A:ダマがない。
B:米同士が一部付着しているが、問題ない程度である。
C:大きなダマがいくつもあり、箸等でほぐさないとバラけない。
【0030】
【表1】
【0031】
表1の結果より、還元澱粉糖化物をデキストリンに置き換えた場合(比較例1)は、ダマがひどく、大腸内視鏡検査食として適した雑炊ではなかった。
【0032】
〔試験2〕還元澱粉糖化物の平均分子量の違い
本発明の大腸内視鏡検査用食品に使用する還元澱粉糖化物の分子量の違いが、大腸内視鏡検査用食品の米の粒残り及びダマへ与える影響を調べた。具体的には、大腸内視鏡検査用食品に用いる還元澱粉糖化物を表2に示すものに変更した以外は、実施例1に準じて大腸内視鏡検査用食品を製し、実施例2および実施例3を得た。得られた大腸内視鏡検査用食品は、試験1と同様の評価方法に従って評価した。結果を表2に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
表2の結果より、還元澱粉糖化物の分子量が500以上のものを用いた実施例2では実施例1と同様に米の粒残りが良好でダマもないことが確認できた。また、還元澱粉糖化物の分子量が500以下のものを用いた場合(実施例3)は雑炊の米の粒が所々欠けていた。
【0035】
〔試験3〕還元澱粉糖化物の配合割合の違い
本発明の大腸内視鏡検査用食品に使用する還元澱粉糖化物の配合割合の違いが、大腸内視鏡検査用食品の米の粒残り及びダマへ与える影響を調べた。具体的には、大腸内視鏡検査用食品に用いる還元澱粉糖化物の配合割合を表3に示す割合に変更した以外は、実施例1に準じて大腸内視鏡検査用食品を製し、実施例4、実施例5、比較例2を得た。得られた大腸内視鏡検査用食品は、試験1と同様の評価方法に従って評価した。これらの結果を表3に示す。
【0036】
【表3】
【0037】
表3の結果より、還元澱粉糖化物の配合割合が0.5〜2.0%である実施例1は米の粒残りが良好でダマもないことが確認できた。還元澱粉糖化物の配合割合が0.5よりも少ない場合(実施例4)や2.0%よりも多い場合(実施例5)は、問題ない程度ではあるがダマがみられた。一方、還元澱粉糖化物を配合しない場合(比較例2)はダマがひどく、大腸内視鏡検査食として適した雑炊ではなかった。
【0038】
〔試験4〕米に対する卵の質量配合比の違い
本発明の大腸内視鏡検査用食品に使用する卵の米に対する質量配合比の違いが大腸内視鏡検査用食品の米の粒残り及びダマへ与える影響を調べた。具体的には、大腸内視鏡検査用食品に用いる卵の米に対する質量配合比を表4に示す割合に変更した以外は、実施例1に準じて大腸内視鏡検査用食品を製し、実施例6および比較例3を得た。得られた大腸内視鏡検査用食品は、試験1と同様の評価方法に従って評価した。これらの結果を表4に示す。

【0039】
【表4】
【0040】
表4の結果より、米に対する卵の質量配合比(卵/米)が0.1〜2.0である実施例1および実施例6は粒残りが良好でダマもないことが確認できたが、一方、米に対する卵の質量配合比(卵/米)が0.1より小さいとき(比較例3)はダマがひどく、大腸内視鏡検査食として適した雑炊ではなかった。
【0041】
〔試験5〕卵の凝固状態の違い
本発明の大腸内視鏡検査用食品に使用する卵の凝固状態が、大腸内視鏡検査用食品の米の粒残り及びダマに与える影響を調べた。具体的には、大腸内視鏡検査用食品に用いる卵の凝固状態を表5に示すものに調整した以外は、実施例1に準じて大腸内視鏡検査用食品を製した。卵を投入する際に、過度に高速で攪拌し卵を粉々に縮れて凝固させ、実施例7を製した。また、卵を投入する際に調味液の温度を40℃まで下げてから投入することで、卵を凝固させない比較例4を製した。得られた大腸内視鏡検査用食品は、試験1と同様の評価方法に従って評価した。これらの結果を表5に示す。
【0042】
【表5】
【0043】
表5の結果より、卵の状態が薄膜状、鱗片状または薄肉偏平状に凝固している実施例1は粒残りが良好でダマもないことが確認できた(実施例1)。また、粉々に縮れて凝固している場合(実施例7)は問題ない程度ではあるが、ダマがみられた。一方、凝固していない場合(比較例4)は、非常に粒残りが悪く、食べ応えの点で好ましい雑炊ではなかった。