(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のエアーベアリングに作用する前記ボールねじの振れまわりの力と前記第2のエアーベアリングに作用する前記ボールねじの振れまわりの力とが略等しく、且つ前記スライダの前記ボールねじまわりの回転が抑制される位置に、前記ボールねじが配置されている請求項1に記載の並進機構。
前記第1のエアーベアリングに作用する前記ボールねじの振れまわりの力と前記第2のエアーベアリングに作用する前記ボールねじの振れまわりの力とが略等しく、且つ前記スライダの前記ボールねじまわりの回転が抑制される位置に、バランサーが配置されている請求項1に記載の並進機構。
前記第1のエアーベアリング及び前記第2のエアーベアリングは、前記スライダの重心を通る、前記ボールねじの回転軸に対する垂線を中心とする線対称に配置されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載の並進機構。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図8(a)及び
図8(b)に示す並進機構100は、ボールねじ102の振れに起因する微小な変位がスライダ104に伝達される。このとき、
図8(a)の矢印方向に力が作用するが、第1のエアーベアリング105に作用する力と、第2のエアーベアリング106に作用する力と、が異なり、スライダ104がボールねじ102まわりに回転しようとする。
【0006】
そこで、第1のエアーベアリング105及び第2のエアーベアリング106のいずれか一方のエアーベアリングが、他方のエアーベアリングに比べて、大きく抵抗する。今度は、他方のエアーベアリングは、一方のエアーベアリングの抵抗によってスライダ104がボールねじ102まわりに回転しないように、大きく抵抗する。結果として、このような動作を交互に繰り返し、スライダ104が微小にボールねじ102まわりに回転する課題を有する。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、ボールねじまわりのスライダの回転を抑制することができる並進機構及び三次元測定機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態に係る並進機構は、ガイドと、前記ガイドと略平行に配置され、駆動源によって回転駆動するボールねじと、前記ボールねじからの回転駆動力が伝達され、前記ガイドに沿って移動するスライダと、前記ガイドと前記スライダとの間に配置され、前記ボールねじに対して前記スライダにおける一方の領域に設けられた第1のエアーベアリングと、前記ガイドと前記スライダとの間に配置され、前記ボールねじに対して前記スライダにおける他方の領域に設けられた第2のエアーベアリングと、を備え、前記第1のエアーベアリングに作用する前記ボールねじの振れまわりの力と前記第2のエアーベアリングに作用する前記ボールねじの振れまわりの力とが略等しい状態で、前記スライダの前記ボールねじまわりの回転が抑制される。
【0009】
上述の並進機構において、前記第1のエアーベアリングに作用する前記ボールねじの振れまわりの力と前記第2のエアーベアリングに作用する前記ボールねじの振れまわりの力とが略等しく、且つ前記スライダの前記ボールねじまわりの回転が抑制される位置に、前記ボールねじが配置されていることが好ましい。
【0010】
上述の並進機構において、前記第1のエアーベアリングに作用する前記ボールねじの振れまわりの力と前記第2のエアーベアリングに作用する前記ボールねじの振れまわりの力とが略等しく、且つ前記スライダの前記ボールねじまわりの回転が抑制される位置に、バランサーが配置されていることが好ましい。
【0011】
上述の並進機構において、前記第1のエアーベアリング及び前記第2のエアーベアリングは、前記ガイドを挟んで対向するように配置されていることが好ましい。
【0012】
上述の並進機構において、前記第1のエアーベアリング及び前記第2のエアーベアリングは、前記スライダの重心を通る、前記ボールねじの回転軸に対する垂線を中心とする線対称に配置されていることが好ましい。
【0013】
本発明の一形態に係る三次元測定機は、被測定対象物が載置されるテーブルと、前記被測定対象物に接触するプローブと、前記プローブと前記テーブルとをX方向に相対的に移動させるX方向駆動機構と、前記プローブと前記テーブルとをY方向に相対的に移動させるY方向駆動機構と、前記プローブと前記テーブルとをZ方向に相対的に移動させるZ方向駆動機構と、を備え、前記X方向駆動機構は、上述の並進機構を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ボールねじまわりのスライダの回転を抑制することができる並進機構及び三次元測定機を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明する。但し、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0017】
<実施の形態1>
先ず、本実施の形態の三次元測定機の基本構成を簡単に説明する。ここで、
図1は、三次元測定機を概略的に示す斜視図である。
図2は、三次元測定機の制御系ブロック図である。
【0018】
図1及び
図2に示すように、三次元測定機1は、基台2、テーブル3、門型フレーム4、プローブ5、X方向駆動機構6、Y方向駆動機構7及びZ方向駆動機構8等を備えている。なお、本実施の形態においては、テーブル3の上面で互いに直交する二方向をそれぞれX方向(左右方向)、Y方向(前後方向)とする。また、テーブル3の上面に垂直な方向をZ方向(上下方向)とする。
【0019】
基台2は、テーブル3及び門型フレーム4等を支持する。ここで、基台2は、積層ゴム等の除振台上に配置されていることが好ましい。テーブル3は、被測定対象物を載せるために精密平坦加工された上面を有する。このテーブル3は、基台2の上面にY方向に摺動可能に配置されている。門型フレーム4は、テーブル3をX方向に跨ぐように基台2に設けられている。
【0020】
プローブ5は、例えばテーブル3上に載置された被測定対象物に接触し、接触信号をホストコンピュータ9に出力する。ホストコンピュータ9は、入力された接触信号に基づいて、被測定対象物の位置及び座標の一方又は両方を測定する。つまり、三次元測定機1とホストコンピュータ9とで三次元測定システムを構築する。
【0021】
X方向駆動機構6は、プローブ5をX方向に移動させる。本実施の形態のX方向駆動機構6は、門型フレーム4内に収容されている。Y方向駆動機構7は、テーブル3をY方向に移動させる。本実施の形態のY方向駆動機構7は、基台2内に収容されている。Z方向駆動機構8は、プローブ5をZ方向に移動させる。本実施の形態のZ方向駆動機構8は、門型フレーム4内に収容されている。
【0022】
次に、X方向駆動機構6の構成を具体的に説明する。なお、Y方向駆動機構7及びZ方向駆動機構8については、発明の本質的部分でないため、具体的な説明を省略する。ここで、
図3は、
図4のIII−III矢視断面図である。
図4は、X方向駆動機構におけるボールねじとエアーベアリングとの配置関係を説明するための図である。
図5は、ボールねじ周辺の構成を概略的に示す図である。
【0023】
図3及び
図4に示すように、X方向駆動機構6は、ガイド10、ボールねじ11、スライダ12、第1のエアーベアリング13、第2のエアーベアリング14、第3のエアーベアリング15及び第4のエアーベアリング16等を備えている。
【0024】
ガイド10は、スライダ12の案内部材であり、X方向に延在する。本実施の形態のガイド10は、断面視が矩形状の長尺部材であって、両端部が門型フレーム4に支持されている。
【0025】
ボールねじ11は、ガイド10と略平行に配置されている。つまり、ボールねじ11は、X方向に延在する。なお、ボールねじ11の具体的な配置については後述する。このボールねじ11の両端部は、
図5に示すフレーム固定用の固定冶具17を介して門型フレーム4に支持されている。
【0026】
ボールねじ11の一方の端部には、
図5に示すように、サーボモータ18が設けられている。ボールねじ11は、サーボモータ18の回転駆動が伝達されて回転駆動する。サーボモータ18は、パルスジェネレータ19によって生成されたパルス信号に基づいて所定量回転する。パルスジェネレータ19は、ホストコンピュータ9から出力される制御信号に基づいてパルス信号を生成する。但し、本実施の形態では、駆動源としてサーボモータ18を用いたが、ボールねじ11を回転駆動できればモータの種類は特に限定されない。
【0027】
スライダ12は、ボールねじ11から回転駆動力が伝達され、ガイド10に沿って移動する。詳細には、スライダ12は、
図3及び
図5に示すように、ガイドブロック20を介してボールねじ11に連結されており、当該ガイドブロック20を介してボールねじ11の回転駆動力が伝達される。
【0028】
ちなみに、ガイドブロック20は、フローティング機構を介してボールねじ11に螺合されていると、当該フローティング機構によってボールねじ11の振れを吸収することができる。
【0029】
本実施の形態のスライダ12は、
図3に示すように、X方向から見てガイド10を囲む形状とされている。つまり、スライダ12は、ガイド10の各面と略平行に配置された内周面を有する、中空の矩形状(筒状)に形成されている。但し、スライダ12の形状は、ガイド10に沿って良好に移動できれば良く、特に限定されない。
【0030】
スライダ12におけるボールねじ11側の側部12aの外方面には、ガイドブロック20が連結されている。スライダ12の側部12aに対して向かい合う側部12bの外方面には、Z方向駆動機構8のエアーベアリング21が設けられている。
【0031】
このエアーベアリング21を介してスライダ12にプローブ5がZ方向に移動可能に支持されている。ちなみに、
図4に示すように、スライダ12のX方向の中央を通る垂線L1上にプローブ5の中心軸が配置されていることが好ましい。
【0032】
第1のエアーベアリング13は、
図3及び
図4に示すように、ガイド10とスライダ12との間に配置され、ボールねじ11に対してスライダ12の側部の一方の領域(
図3及び
図4では上側、Z軸方向の+側の領域)に設けられている。
【0033】
本実施の形態の第1のエアーベアリング13は、
図3に示すように、X方向から見てガイド10を挟んで向かい合うように配置されている。そして、Y方向の+側に配置された第1のエアーベアリング13は、スライダ12の側部12aの内方面に設けられている。一方、Y方向の−側に配置された第1のエアーベアリング13は、スライダ12の側部12bの内方面に設けられている。
【0034】
ガイド10を挟んでY方向の+側に配置された第1のエアーベアリング13及びガイド10を挟んでY方向の−側に配置された第1のエアーベアリング13は夫々、Y方向から見てX方向に2個間隔を開けて配置されている。
【0035】
また、ガイド10におけるY方向の両側に設けられた第1のエアーベアリング13は、
図4に示すように、スライダ12のX方向の中心を通る垂線L1から略等しい距離で、X軸方向に2個配置されていることが好ましい。また、第1のエアーベアリング13は、相互の間隔が広くなるように、スライダ12におけるX方向の両端部に設けられていることが好ましい。これにより、スライダ12におけるY方向に延在する軸まわりの回転を抑制することができる。
【0036】
第2のエアーベアリング14は、
図3及び
図4に示すように、ガイド10とスライダ12との間に配置され、ボールねじ11に対してスライダ12の側部の他方の領域(
図3及び
図4では下側の領域)に設けられている。
【0037】
本実施の形態の第2のエアーベアリング14は、ガイド10を挟んで向かい合うように配置されている。そして、ガイド10を挟んでY方向の+側に配置された第2のエアーベアリング14は、スライダ12の側部12aの内方面に設けられている。一方、ガイド10を挟んでY方向の−側に配置された第2のエアーベアリング14は、スライダ12の側部12bの内方面に設けられている。
【0038】
ここで、第2のエアーベアリング14の中心は、スライダ12のX方向の中心を通る垂線L1上に配置されていることが好ましい。これにより、第1のエアーベアリング13及び第14のエアーベアリング14は、スライダ12のX方向の中心を通る垂線L1を中心とする線対称に配置される。そのため、スライダ12におけるY方向に延在する軸まわりの回転を抑制することができる。
【0039】
第3のエアーベアリング15は、
図3及び
図4に示すように、ガイド10とスライダ12との間に配置され、スライダ12のZ方向の+側に配置された側部12c(
図3及び
図4では上側の側部)の内方面に設けられている。
【0040】
第4のエアーベアリング16は、
図3及び
図4に示すように、ガイド10とスライダ12との間に配置され、スライダ12のZ方向の−側に配置された側部12d(
図3及び
図4では下側の側部)の内方面に設けられている。
【0041】
ここで、第3のエアーベアリング15の中心及び第4のエアーベアリング16の中心が、スライダ12のY方向の中央を通る垂線L2上に配置されていることが好ましい。これにより、スライダ12のX方向に延在する軸まわりの回転を抑制することができる。
【0042】
このような第1〜第4のエアーベアリング13〜16は、一般的なエアーベアリングを備えている。つまり、既に公知であるので具体的な説明は省略するが、第1〜第4のエアーベアリング13〜16は、ガイド10側にエアーを噴出することで、スライダ12が所定の姿勢を維持するように、ガイド10とスライダ12との継手として機能する。
【0043】
以上の構成により、本実施の形態のX方向駆動機構8は、サーボモータ18の回転駆動力がボールねじ11、ガイドブロック20を介してスライダ12に伝達され、スライダ12は、第1〜第4のエアーベアリング13〜16によって所定の姿勢に維持されつつ、ガイド10によってX方向に移動する。
【0044】
次に、ボールねじ11と第1〜第4のエアーベアリング13〜16との配置関係を説明する。本実施の形態においては、第1のエアーベアリング13に作用するボールねじ11の振れまわりの力と第2のエアーベアリング14に作用するボールねじ11の振れまわりの力とが略等しい状態で、スライダ12のボールねじ11まわりの回転が抑制されるように、ボールねじ11が配置されている。
【0045】
ここで、エアーベアリングの配置とスライダに作用するY方向の力(ボールねじ11まわりの力)との関係を説明する。
図6は、エアーベアリングの配置とスライダに作用するY方向の力との関係を一般化して示した図である。
【0046】
図6に示すように、エアーベアリングの配置とスライダに作用するY方向の力との関係を、バネ付き三脚におけるプレートに見立てて考察する。バネによって支持された3本の脚A、B、Cによって水平に支持されたプレートの上面に、質量M(kg)の物体を置くとき、物体をどこに配置すれば、プレートはモーメントを受けず水平を維持するかを考える。ここで、脚A、B、Cを支持するバネは、それぞれ異なり、それぞれのバネ定数(N/m)がk
a、k
b、k
cであるとき、プレートを支持する剛性の中心(剛心)位置X
m、Z
mは以下の式1、式2で求められる。
【0048】
【数2】
但し、k
a+k
b+k
c=k
gは合成されたバネ定数を表す。
【0049】
また、推定されるプレートの変位δ(m)は式3で求められる。
【数3】
但し、Gは重力加速度:9.8m/s
2
【0050】
ちなみに、脚A、B、Cを支持するバネのバネ定数が全て等しく、k
a=k
b=k
cのとき、剛性の中心の位置(X
m、Z
m)は、脚A、B、Cを直線で結んで得られる三角形の重心位置に一致する。
【0051】
図7(a)及び(b)は、上述の内容を三次元測定機のX方向駆動機構におけるエアーベアリングの配置に置き換えた場合に対応する寸法を示した図である。詳細には、
図7(a)は、
図7(b)のVII−VII位置でのスライダ周辺の矢視断面図であり、X方向から見た当該エアーベアリングの配置を示している。また、
図7(b)は、Y方向から見た当該エアーベアリングの配置を示している。本実施の形態の第1のエアーベアリング13及び第2のエアーベアリング14の剛性及び配置は、スライダ12のX方向の中心を通る垂線L1を中心とする線対称に配置されているため、X
a=X
b、Z
a=Z
b、及びk
a=k
bである。したがって、X
m=0であり、X
zは式4で求められる。
【0053】
以上の考えによれば、ボールねじ11のZ方向における位置をZ
mにすればスライダ12はボールねじ11の振れまわりの力によっても傾くことなく並進移動を行い、3個のエアーベアリングの合成した剛性を有効に生かすことができる。このとき、プローブ5の先端のZ方向の変位量δを最も小さくすることができる。
【0054】
例えば、本実施の形態では、X方向から見て2個の第1のエアーベアリング13それぞれの中心と1個の第2のエアーベアリング14の中心とを結んで形成される二等辺三角形の重心位置を、ボールねじ11の回転軸が通過するように、ボールねじ11が配置されている。
【0055】
このような並進機構及び三次元測定機は、第1のエアーベアリング13に作用するボールねじ11の振れまわりの力と第2のエアーベアリング14に作用するボールねじ11の振れまわりの力とが略等しい状態で、スライダ12のボールねじ11まわりの回転が抑制されるように、各エアーベアリングとボールねじとが配置されている。これにより、従来のようにボールねじを挟んで配置された第1のエアーベアリングと第2のエアーベアリングとが交互に強く抵抗することがなく、それ故にスライダ12のボールねじ11まわりの回転を抑制することができる。そのため、スライダ12の並進精度を向上させることができる。
【0056】
<実施の形態2>
実施の形態1の並進機構は、第1のエアーベアリング13に作用するボールねじ11の振れまわりの力と第2のエアーベアリング14に作用するボールねじ11の振れまわりの力とが略等しい状態で、スライダ12のボールねじ11まわりの回転が抑制されるように、ボールねじの配置を工夫したが、この限りでない。
【0057】
即ち、図示は省略するが、第1のエアーベアリング13に作用するボールねじ11の振れまわりの力と第2のエアーベアリング14に作用するボールねじ11の振れまわりの力とが略等しい状態で、スライダ12のボールねじ11まわりの回転が抑制されるように、スライダ12にバランサーを設けてもよい。
【0058】
本発明は上述の実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0059】
例えば、上述の実施の形態では、テーブル3がY方向に移動することで、プローブ5と被測定対象物とがY方向に相対的に移動しているが、門型フレーム4がY方向に移動することで、プローブ5と被測定対象物とがY方向に相対的に移動する構成としてもよい。
【0060】
例えば、上述の実施の形態では、並進機構を三次元測定機のX方向駆動機構に用いたが、一般的に並進機構が用いられる装置であれば、本発明の並進機構を広く適用することができる。