特許第6283312号(P6283312)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283312
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】発酵乳食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23C 9/13 20060101AFI20180208BHJP
   A23C 9/123 20060101ALI20180208BHJP
   A23G 1/46 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   A23C9/13
   A23C9/123
   A23G1/46
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-536952(P2014-536952)
(86)(22)【出願日】2013年9月24日
(86)【国際出願番号】JP2013075636
(87)【国際公開番号】WO2014046276
(87)【国際公開日】20140327
【審査請求日】2016年8月2日
(31)【優先権主張番号】特願2012-208214(P2012-208214)
(32)【優先日】2012年9月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【弁理士】
【氏名又は名称】衡田 直行
(72)【発明者】
【氏名】新井 秀武
(72)【発明者】
【氏名】千原 聡
【審査官】 池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−333755(JP,A)
【文献】 特公昭40−001978(JP,B1)
【文献】 特開平09−065832(JP,A)
【文献】 特開平08−126473(JP,A)
【文献】 特開2005−46139(JP,A)
【文献】 特開平10−262559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C 1/00−23/00
A23G 1/46
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵微生物の生菌を含む固形状の発酵乳食品の製造方法であって、
融点が30〜40℃である食用油脂を含む油相の形成材料と、水相の形成材料を混合して、50℃以上の温度で撹拌した後、20℃以下に冷却し、次いで、上記食用油脂の融点を基準として−2℃〜+4℃の範囲内の温度に昇温させて、油相及び水相からなる乳化物を得る工程と、
上記食用油脂の融点を基準として−2℃〜+4℃の範囲内に温度を調整した上記油相及び水相からなる乳化物と、発酵乳及び/又はナチュラルチーズを混合して、上記食用油脂の融点を基準として−2℃〜+4℃の範囲内の温度を有する油中水型乳化物を得る混合工程と、
上記油中水型乳化物を10℃以下に冷却して、上記固形状の発酵乳食品を得る冷却工程、
を含むことを特徴とする固形状の発酵乳食品の製造方法
【請求項2】
上記食用油脂がカカオバターを含む請求項1に記載の発酵乳食品の製造方法
【請求項3】
上記発酵微生物の生菌が、乳酸菌を含む請求項1又は2に記載の発酵乳食品の製造方法
【請求項4】
上記乳酸菌が、ラクトバチルス・ブルガリカス及びストレプトコッカス・サーモフィルスを含む請求項3に記載の発酵乳食品の製造方法
【請求項5】
上記発酵乳食品は、カカオバターの含有率が3重量%以上で、かつ、発酵微生物の生菌数が1×10cfu/g以上の油脂性菓子材料、該油脂性菓子材料及び他の材料を含む菓子、又は、上記食用油脂の中にナチュラルチーズを含有させてなる食品である請求項1〜4のいずれか1項に記載の発酵乳食品の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵乳食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、乳酸菌等の発酵微生物の生菌が、摂取者の腸内環境の改善効果等を有することに着目され、以前から知られているヨーグルト等の発酵乳食品以外の食品についても、発酵微生物の生菌を含有させることが検討されている。
例えば、特許文献1に、発酵微生物が生菌の状態で含有されている発酵乳食品において、発酵乳と食用固形脂を混合し、油中水型の乳化物とすることを特徴とする発酵乳食品の製造方法が記載されている。
この文献には、実施例として、10℃に冷却させた食用固形脂と、10℃に冷却させた発酵乳を各々混合機に送液し、この混合機にてインライン混合し、スプレッド様の発酵乳食品を得たことが記載されている。
【0003】
また、特許文献2に、カカオマス、水分および糖を含む原料を、乳酸菌により乳酸発酵して得られることを特徴とする乳酸発酵食品組成物が記載されている。
この文献には、実施例として、チョコレート含有物に乳酸菌スターターを接種して培養してなる発酵物(乳酸発酵食品組成物)を−80℃で数時間静置することで凍結固化品を得て、この凍結固化品を凍結乾燥させることで、水分を取り除き、固形物(凍結乾燥発酵チョコレート)を得たことが記載されている。
【0004】
また、特許文献3に、チョコレート生地に水性成分を添加して、含水チョコレートを製造するに際し、乳化剤として、サポニン又はサポニンを主成分として含有する抽出物を使用することを特徴とする含水チョコレートの製造方法が記載されている。
この文献には、チョコレート生地に添加される水性成分として、ヨーグルトなどの発酵乳を用い得ることも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−333755号公報
【特許文献2】特開2008−167747号公報
【特許文献3】特開平09−248132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、上述のとおり、10℃で送液可能な食用固形脂と、10℃で送液可能な発酵乳を混合して、発酵乳食品を得た実施例が記載されている。この実施例で得られた発酵乳食品は、10℃で送液可能なもの同士を混合してなるものであり、10℃の温度下では固形状の形態を有しないものである。
特許文献2には、上述のとおり、凍結乾燥等の工程を経て得られた凍結乾燥発酵チョコレートが記載されている。この凍結乾燥発酵チョコレートは、乳酸発酵食品組成物中に分散する水分を氷結させた後、昇華により水分を除去して、微細な多孔質の固形物としたものであり、さくさくとした食感を有するものである。
特許文献3には、上述のとおり、チョコレート生地にヨーグルトなどの発酵乳を添加して、含水チョコレートを製造することが示唆されている。しかし、特許文献3の含水チョコレートを製造するためには、乳化剤であるサポニンが必須である。このため、サポニンに由来する収斂味及び咽頭に残る不快な食感の発生を避けることができない。
本発明は、発酵微生物の生菌を含み、良好な風味、速やかな口溶け、及び、滑らかな食感を有する固形状の発酵乳食品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、融点が30〜40℃である食用油脂と、発酵乳及び/又はナチュラルチーズを混合してなる油中水型乳化物を、10℃以下に冷却すれば、発酵微生物の生菌を含み、良好な風味、速やかな口溶け、及び、滑らかな食感を有する固形状の発酵乳食品が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
本発明は、以下の[1]〜[8]を提供するものである。
[1] 融点が30〜40℃である食用油脂と、発酵乳及び/又はナチュラルチーズを混合してなる油中水型乳化物を、10℃以下に冷却してなり、かつ、発酵微生物の生菌を含むことを特徴とする固形状の発酵乳食品。
[2] 上記食用油脂がカカオバターを含む、上記[1]に記載の発酵乳食品。
[3] 上記発酵微生物の生菌が、乳酸菌、ビフィズス菌、プロピオン酸菌などを含む、上記[1]又は[2]に記載の発酵乳食品。
[4] 上記乳酸菌が、ラクトバチルス・ブルガリカス及びストレプトコッカス・サーモフィルスを含む、上記[3]に記載の発酵乳食品。
[5] 上記発酵乳食品は、カカオバターの含有率が3重量%以上で、かつ、発酵微生物の生菌数が1×10cfu/g以上の油脂性菓子材料、該油脂性菓子材料及び他の材料を含む菓子、又は、上記食用油脂の中にナチュラルチーズを含有させてなる食品である上記[1]〜[4]のいずれかに記載の発酵乳食品。
[6] 上記[1]〜[5]のいずれかに記載の発酵乳食品を製造するための方法であって、融点を基準として−2℃〜+4℃の範囲内に温度を調整した、融点が30〜40℃である食用油脂と、発酵乳及び/又はナチュラルチーズを混合して、上記食用油脂の融点を基準として−2℃〜+4℃の範囲内の温度を有する油中水型乳化物を得る混合工程と、上記油中水型乳化物を10℃以下に冷却して、発酵微生物の生菌を含む固形状の発酵乳食品を得る冷却工程、を含むことを特徴とする発酵乳食品の製造方法。
[7] 上記混合工程が、上記食用油脂を含む油相及び水相からなる乳化物と、発酵乳を混合することによって行われる、上記[6]に記載の発酵乳食品の製造方法。
[8] 上記混合工程で用いる乳化物は、上記食用油脂を含む油相の形成材料と、水相の形成材料を混合して、50℃以上の温度で撹拌した後、20℃以下に冷却し、次いで、上記食用油脂の融点を基準として−2℃〜+4℃の範囲内の温度に昇温させることによって製造される、上記[7]に記載の発酵乳食品の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の発酵乳食品は、発酵微生物の生菌を含むため、摂取者に対して、腸内環境の改善等の種々の効果を与えることができる。
また、本発明の発酵乳食品は、良好な風味(特に、発酵乳に由来する風味)、速やかな口溶け、及び、滑らかな食感を有する固形状の食品であるため、例えば、チョコレート、チョコレート風味の食品(例えば、ガナッシュ、チョコレート風味のチルドデザート、チョコレート風味のナチュラルチーズ含有食品等)、ヨーグルト風味の食品(例えば、ヨーグルト風味のチルドデザート、ヨーグルト風味のナチュラルチーズ含有食品等)等として製造することができる。
また、本発明の発酵乳食品は、風味や食感に悪影響を及ぼさない乳化剤(例えば、レシチンやジグリセリンの含量が3%以下のポリグリセリン)以外の乳化剤を配合しなくても、良好な性状を有するので、乳化剤(ただし、風味や食感に影響を及ぼさないレシチンなどの乳化剤を除く。)に由来する不快な風味や食感を有しない食品として提供することができる。なお、レシチンなどは、乳化作用を有するため、以前から食品業界等において、乳化剤として用いられており、収斂味や不快な食感を与えないことが知られている。
さらに、本発明の発酵乳食品を10℃以下に冷蔵保存すれば、長期間(例えば、3〜4週間)、発酵微生物の生菌数を適度(例えば、1×10cfu/g以上)に維持して、酸味の増大による風味の劣化を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の発酵乳食品は、融点が30〜40℃である食用油脂と、発酵乳及び/又はナチュラルチーズを混合してなる油中水型乳化物を、10℃以下に冷却してなり、かつ、発酵微生物の生菌を含むものである。
融点が30〜40℃である食用油脂の例としては、カカオバター、ラード、中融点の精製パーム油(融点の例:34〜36℃)、菜種硬化油、大豆硬化油(大豆硬化油のうち低融点のもの;融点の例:39℃)、ヘッド等が挙げられる。
カカオバターは、32〜36℃の融点を有するので、本発明において、油脂性菓子材料(例えば、チョコレート)を製造する場合に、好ましく用いられる。なお、本明細書中、油脂性菓子材料とは、最終製品である菓子を製造するために他の材料と組み合わせて用いられる材料(例えば、ガナッシュの材料の一つであるチョコレート)と、他の材料と組み合わせることなくそれ自体が本発明の発酵乳食品に該当する材料(例えば、最終製品であるチョコレートを構成するもの)の両方を包含するものである。
本発明の発酵乳食品が油脂性菓子材料である場合、融点が30〜40℃である食用油脂中のカカオバターの割合は、良好なチョコレート風味を与える観点から、好ましくは10〜100重量%、より好ましくは20〜100重量%、さらに好ましくは30〜100重量%、特に好ましくは40〜100重量%である。
【0011】
また、本発明の発酵乳食品が油脂性菓子材料である場合、発酵乳食品中のカカオバターの割合は、良好なチョコレート風味を与える観点から、好ましくは3重量%以上、より好ましくは6重量%以上、さらに好ましくは12重量%以上、特に好ましくは18重量%以上である。当該割合の上限値は、良好な性状の油中水型乳化物を得る観点から、好ましくは90重量%、より好ましくは80重量%、さらに好ましくは70重量%、特に好ましくは60重量%である。
中融点の精製パーム油は、例えば34〜36℃の融点を有するので、例えば、カカオバターと組み合わせ、油脂性菓子材料を製造するために用いることができる。なお、中融点の精製パーム油は、チョコレート等の油脂性菓子材料の油脂の材料として、以前から広く用いられている。
本発明の発酵乳食品中の、融点が30〜40℃である食用油脂の割合は、良好な性状の油中水型乳化物を得る観点から、好ましくは25〜60重量%、より好ましくは30〜55重量%、さらに好ましくは35〜50重量%である。
【0012】
本発明において、融点が30〜40℃である食用油脂に加えて、融点が30℃未満である食用油脂と、融点が40℃を超える食用油脂のいずれか一方又は両方を用いることができる。
なお、本明細書(本発明)において、「融点が30〜40℃である食用油脂」とは、食用油脂が複数の成分を含む場合において、融点が30〜40℃である特定の化学構造(例えば、化学式、結晶構造等)を有する化合物(油脂)のみを意味するものではなく、融点が30〜40℃の範囲外である化合物(油脂)を含む食用油脂全体として、融点が30〜40℃であるものを意味するものとする。例えば、カカオバターは、融点が30℃未満である化合物(油脂)を含むものであるが、カカオバター全体として、30〜40℃の融点を有するものであるので、「融点が30〜40℃である食用油脂」に該当するものである。また、融点が30〜40℃である食用油脂の量も、融点が30〜40℃である特定の化学構造を有する化合物(油脂)の量で示されるものではなく、融点が30〜40℃の範囲外である化合物(油脂)を含む食用油脂全体の量(例えば、カカオバターの全量)で示すものとする。
【0013】
融点が30℃未満である食用油脂としては、菜種油、大豆油等が挙げられる。
融点が30℃未満である食用油脂の量は、本発明の発酵乳食品の固形状の形態を良好なものにする観点から、融点が30〜40℃である100重量部の食用油脂に対して、好ましくは0〜30重量部、より好ましくは0〜20重量部、さらに好ましくは0〜10重量部である。
融点が40℃を超える食用油脂としては、ヘッド(融点の例:41℃)、大豆硬化油(高融点のもの;融点の例:42℃)等が挙げられる。
融点が40℃を超える食用油脂の量は、発酵乳及び/又はナチュラルチーズと混合する際の作業性等の観点から、融点が30〜40℃である100重量部の食用油脂に対して、好ましくは0〜20重量部、より好ましくは0〜10重量部、さらに好ましくは0〜5重量部である。
融点が40℃を超える食用油脂を用いる場合、当該食用油脂の融点は、好ましくは55℃以下、より好ましくは50℃以下、さらに好ましくは45℃以下である。
【0014】
本明細書において、発酵乳とは、原料乳を含む原料を発酵させてなるものをいう。
原料乳の例としては、牛乳等の獣乳や、その加工品(例えば、脱脂乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、れん乳、カゼイン、乳清、生クリーム、コンパウンドクリーム、バター、バターミルクパウダー等)や、大豆由来の豆乳等の植物性乳等が挙げられる。
発酵乳の原料として、例えば、発酵乳原料ミックスと呼ばれるものが挙げられる。
発酵乳原料ミックスとは、原料乳及び他の成分を含む混合物であり、例えば、原料乳、水、他の任意成分(例えば、砂糖、糖類、甘味料、酸味料、ミネラル、ビタミン、香料等)等の発酵乳の製造に常用される原料を加温して溶解し、混合することによって得ることができる。また、発酵乳は、脱脂粉乳やホエイ分解物などの培養液にペクチン
、グアーガム、キサンタンガム、カラギーナン、加工でんぷんなどの増粘剤やゲル化剤を使用して、粘度を100〜5000mPa・sに調整することもできる。
【0015】
発酵乳の原料にスターターとして接種する発酵微生物としては、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス・ラクティス(Lactobacillus lactis)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)等の乳酸桿菌や、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)等の乳酸球菌や、ビフィズス菌や、プロピオン酸菌や、酵母等の中から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。さらに、これらの発酵微生物の生菌に加え、腸内環境の改善の改善効果等を有する発酵微生物の死菌を含むこともできる。
この中でも、ラクトバチルス・ブルガリカスとストレプトコッカス・サーモフィルスの組み合わせである、いわゆる、ヨーグルト(国際規格で規定されたもの)は、本発明の製造方法の条件下で、生菌数の多い発酵乳食品を容易に、かつ、効率的に製造することができるなどの観点から、好ましく用いられる。
発酵乳を得る際の発酵温度は、発酵乳の製造の効率性等の観点から、30〜48℃、好ましくは35〜48℃、より好ましくは37〜45℃、さらに好ましくは38〜43℃である。
発酵時間は、発酵乳の製造の効率性等の観点から、2〜20時間、好ましくは2〜15時間、より好ましくは3〜10時間、さらに好ましくは3〜6時間である。
【0016】
本発明で用いる発酵乳の乳脂肪分は、本発明の油中水型乳化物を構成する観点では、特に制限はないが、発酵乳食品に良好な風味を与える観点から、好ましくは0.5〜8重量%、より好ましくは1〜7重量%、さらに好ましくは2〜6重量%、特に好ましくは3〜5重量%である。
本発明で用いる発酵乳の無脂乳固形分は、発酵微生物の生菌数の確保、及び、発酵乳食品への良好な風味の付与等の観点から、好ましくは1〜30重量%、より好ましくは3〜25重量%、さらに好ましくは4〜20重量%、特に好ましくは5〜15重量%である。
発酵乳のpHは、好ましくは3〜5、より好ましくは3.5〜4.5である。pHが3以上であると、pHが3未満の場合に比べ、食用油脂と発酵乳の混合物のpHを高くすることができるので、より円滑に乳化させることができる。pHが5以下であると、pHが5を超える場合に比べ、発酵乳の性状が食用油脂と乳化し易いものとなるので、より円滑に乳化させることができる。
発酵乳としては、水中油型乳化物(通常の発酵乳)の他、油中水型乳化物も用いることができる。
【0017】
本発明の発酵乳食品中の発酵乳の割合は、発酵乳食品に発酵乳の風味を与え、かつ、発酵微生物の生菌の数を多く与える観点から、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは15重量%以上、特に好ましくは20重量%以上である。当該割合の上限値は、融点が30〜40℃である食用油脂の量を十分に確保する観点から、好ましくは70重量%、より好ましくは60重量%、さらに好ましくは50重量%、特に好ましくは40重量%である。
本発明で用いるナチュラルチーズとしては、エダム、エメンタール、カマンベール、クリーム(クリームチーズ)、ゴーダ、チェダー、パルメザン、ブルー、クワルク、マスカルポーネ等が挙げられる。ナチュラルチーズの中でも、味や食感及び適度な物性を有する特性から、クワルク、マスカルポーネ、クリームチーズは、本発明で好ましく用いられる。
【0018】
本発明で用いるナチュラルチーズに含まれる発酵微生物の生菌としては、乳酸菌、ビフィズス菌、プロピオン酸菌、酵母等が挙げられる。好ましい生菌の一例として、プロピオン酸菌が挙げられる。
本発明の発酵乳食品は、食用油脂及び発酵乳及び/又はナチュラルチーズ以外の他の成分を含むことができる。
このような他の成分としては、食品、食品添加物又はこれらの混合物に該当するものであれば、特に制限はなく、例えば、発酵乳との混合前の食用油脂を含む後述の乳化物を調製するための水や、レシチンや、香料等が挙げられる。
本発明の発酵乳食品(ただし、発酵乳食品が、油脂性菓子材料を含む菓子である場合は、油脂性菓子材料)の水分(発酵乳及び/又はナチュラルチーズの水分、及び、他の水分)の割合は、良好な性状の油中水型乳化物を得る観点から、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは30〜70重量%、さらに好ましくは40〜60重量%である。
【0019】
本発明の発酵乳食品は、上述の食用油脂及び発酵乳及び/又はナチュラルチーズを用いてなる油中水型乳化物を、10℃以下に冷却させたものである。10℃以下に冷却することによって、つまんで食することのできる固形状の形態にすることができる。
本明細書において、「固形状」とは、マーガリンやファットスプレッドのような塗布可能な程度の流動性を有さず、少なくとも、10℃の温度下で、外力を徐々に加えた時に、最終的に割れて、複数の破片になる形態をいう。
本発明の固形状の発酵乳食品(ただし、発酵乳食品が、油脂性菓子材料を含む菓子である場合は、油脂性菓子材料)は、製造された時に、好ましくは1×10cfu/g以上、より好ましくは1×10cfu/g以上、特に好ましくは1×10cfu/g以上の発酵微生物の生菌を含む。
本発明の固形状の発酵乳食品は、製造された時から2週間後に、好ましくは1×10cfu/g以上、より好ましくは1×10cfu/g以上、特に好ましくは1×10cfu/g以上の発酵微生物の生菌を含む。
【0020】
本発明の発酵乳食品の例としては、チョコレート類や、チョコレート類を含む菓子や、チルドデザートや、食用油脂の中にナチュラルチーズを含有させてなる食品等が挙げられる。
このうち、チョコレート類としては、チョコレート、準チョコレート、チョコレート菓子、準チョコレート菓子等が挙げられる。チョコレート類は、常温で保存可能なものでもよいし、10℃以下での保存を要する要冷蔵のもの(例えば、生チョコレート)でもよい。
チョコレート類を含む菓子としては、ガナッシュ等が挙げられる。
チルドデザートとしては、チョコレートムース様の食品等が挙げられる。ここで、チョコレートムース様の食品の一例として、ヨーグルトを水相として含むW/O型のチョコレート様の連続相(第一液;上記油脂性菓子材料に該当するもの)を、寒天液のようなゲル化液(第二液)の中に混ぜて分散させた後、固めてなるデザートが挙げられる。
食用油脂の中にナチュラルチーズを含有させてなる食品としては、食用油脂の中にヨーグルトと同程度の流動性を有するナチュラルチーズを含有させてなる食品等が挙げられる。
【0021】
次に、本発明の発酵乳食品の製造方法について説明する。
本発明の発酵乳食品の製造方法は、融点を基準として−2℃〜+4℃の範囲内に温度を調整した、融点が30〜40℃である食用油脂と、発酵乳及び/又はナチュラルチーズを混合して、上記食用油脂の融点を基準として−2℃〜+4℃の範囲内の温度を有する油中水型乳化物を得る混合工程と、上記油中水型乳化物を10℃以下に冷却して、発酵微生物の生菌を含む固形状の発酵乳食品を得る冷却工程、を含むものである。
以下、各工程について詳しく説明する。
【0022】
[混合工程]
まず、融点が30〜40℃である食用油脂の温度を、当該食用油脂の融点を基準として、−2℃〜+4℃の範囲内、好ましくは−1℃〜+3℃の範囲内、より好ましくは0℃〜+3℃の範囲内に調整する。なお、ここでの温度の調整は、発酵乳及び/又はナチュラルチーズと混合される食用油脂が、融点が30〜40℃の範囲外である任意成分の食用油脂を含む場合であっても、融点が30〜40℃である食用油脂の融点を基準とするものとする。
調整で目的とする温度が、融点を基準として−2℃未満であると、食用油脂と、発酵乳及び/又はナチュラルチーズの混合によって、油中水型乳化物を得ることが困難となる。
調整で目的とする温度が、融点を基準として+4℃を超えると、食用油脂の連続相中に水相を封じ込めることが困難となり、食用油脂と発酵乳及び/又はナチュラルチーズを混合してなる油中水型乳化物を冷却した後に、油分が油中水型乳化物の硬化物(固形状の発酵乳食品)の表面に浮き出てしまい、外観が不良になったり、あるいは、水滴が油中水型乳化物の硬化物の表面に浮き出てしまい、発酵乳食品にカビが発生し易くなるなど、発酵乳食品の保存性が悪化する。
融点が30〜40℃である食用油脂を2種以上で用いる場合、1種について、「融点を基準として−2℃〜+4℃の範囲内」の条件を満たしていればよいが、これら2種以上の全てについて、「融点を基準として−2℃〜+4℃の範囲内」の条件を満たすことが好ましい。特に、食用油脂がカカオバターを含む場合、カカオバターの融点を基準として、−2℃〜+4℃の範囲内、好ましくは−1℃〜+3℃の範囲内、より好ましくは0℃〜+3℃の範囲内に食用油脂の温度を調整する。
【0023】
食用油脂と混合される発酵乳及び/又はナチュラルチーズの温度及び量は、融点が30〜40℃である食用油脂の融点を基準として−2℃〜+4℃の範囲内の温度を有する油中水型乳化物を調製することのできる温度及び量であることが必要である。
例えば、食用油脂の融点が36℃である場合、食用油脂と発酵乳及び/又はナチュラルチーズを混合してなる油中水型乳化物の温度が34〜40℃の範囲内に収まればよく、発酵乳及び/又はナチュラルチーズの温度は34℃未満または40℃を超えていてもよい。
ただし、食用油脂との混合前の発酵乳及び/又はナチュラルチーズの温度は、より良好な性状の油中水型乳化物を得る観点から、融点が30〜40℃である食用油脂の融点を基準として、好ましくは−4℃〜+6℃の範囲内、より好ましくは−3℃〜+5℃の範囲内、さらに好ましくは−2℃〜+4℃の範囲内、特に好ましくは−1℃〜+3℃の範囲内である。
【0024】
融点が30〜40℃である食用油脂は、発酵乳及び/又はナチュラルチーズと混合する前に、乳化物の形態としておくことが好ましい。
この場合、乳化物の形態を有する食用油脂の製造方法の一例としては、乳化物全体を100重量%とした場合、40〜80重量%の食用油脂(ただし、融点が30〜40℃の範囲外の食用油脂を含む場合、この食用油脂を含む油脂の全体量の割合である。)及び0.1〜3重量%のレシチンを含む油相の形成材料を調製した後、この油相の形成材料と、19.9〜59.9重量%の水、及び任意で配合可能な水溶性成分(例えば、香料)を含む水相の形成材料を混合して、乳化物を得る方法が挙げられる。
【0025】
次に、融点が30〜40℃である食用油脂と、発酵乳及び/又はナチュラルチーズを混合する。
混合時の食用油脂の粘度(ただし、融点が30〜40℃の範囲外である食用油脂を併用する場合、この食用油脂を含む油脂全体の粘度であり、食用油脂が乳化物の形態を有する場合、乳化物としての粘度である。)及び発酵乳及び/又はナチュラルチーズの粘度は、各々、油中水型乳化物の形成の容易性等の観点から、好ましくは100〜5000mPa・s、より好ましくは500〜4000mPa・s、さらに好ましくは1000〜3000mPa・sである。
食用油脂の粘度と発酵乳及び/又はナチュラルチーズの粘度は、油中水型乳化物の形成の容易性等の観点から、同程度であることが好ましい。食用油脂の粘度と発酵乳の粘度の差は、好ましくは2000mPa・s以下、より好ましくは1000mPa・s以下、さらに好ましくは500mPa・s以下である。
混合方法の一例としては、食用油脂と発酵乳及び/又はナチュラルチーズのそれぞれをサニタリー配管で送液した後、混合機でインライン混合する方法が挙げられる。
なお、サニタリー配管とは、管の内部を無菌状態にして、雑菌による送液対象物の汚染の可能性がないようにした配管をいう。
インライン混合とは、食用油脂及び発酵乳及び/又はナチュラルチーズの供給(送液)、混合、及び、混合後の貯液の全てに亘って、サニタリー配管で接続した設備を用いて混合することをいう。
【0026】
[冷却工程]
上述の混合工程の後、得られた油中水型乳化物を10℃以下に冷却することによって、発酵微生物の生菌を含む固形状の発酵乳食品を得ることができる。
冷却の温度は、発酵微生物の生菌の数の急激な増大を防ぎ、発酵乳食品の酸味の増大による風味の劣化を抑える観点から、好ましくは10℃以下、より好ましくは9℃以下、さらに好ましくは8℃以下である。
冷却の温度の下限値は、発酵微生物の生菌の数の減少を抑制する観点から、好ましくは0℃、より好ましくは1℃、さらに好ましくは2℃である。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例によって説明する。以下の実施例及び比較例の中の「%」は、乳酸酸度を除き、重量基準である。
[実施例1]
60℃に加温した中融点の精製パーム油(融点:34℃):30%(カカオバター入りのファットスプレッドの全量100%中の割合;以下、同じ)と、60℃に加温したカカオバター(融点:34℃):30%と、レシチン:0.5%を混合して、油相の形成材料を調製した。また、60℃に加温した水:39.5%と、少量の香料を混合して、水相の形成材料を調製した。次いで、油相の形成材料に水相の形成材料を添加し、得られた混合物を、約60℃で10分間、撹拌することによって予備乳化した後、95℃で30分間、殺菌処理し、その後、10℃に急冷してから、練り合わせて、油脂の含有率が60%である、カカオバター入りのファットスプレッドを得た。
【0028】
一方、水:80%(発酵乳の全量:100%中の割合;以下、同じ)と、脱脂粉乳:10%と、乳脂肪分:47%の生クリーム:10%を混合・撹拌して溶解及び均質化した後、90℃で5分間、加熱殺菌し、その後、約40℃まで冷却した後、乳酸菌として、ラクトバチルス・ブルガリカス及びストレプトコッカス・サーモフィルスを接種して、乳酸菌が均一となるように混合した後、40℃で発酵させた。乳酸酸度が1.0%になった時点(乳酸菌の接種から6時間後の時点)で10℃に冷却して、発酵を停止し、乳脂肪分:4.7%、無脂乳固形分:10%の発酵乳を得た。
【0029】
得られたファットスプレッド(油中水型乳化物)と、得られた発酵乳をそれぞれ35℃まで加温し、ポンプ(製品名:ヘイシンモーノポンプ(登録商標)、兵神装備社製)によって、それぞれ流量が105kg/h、45kg/hとなるように送液し、混合機(製品名:ミクロブレンダー、イズミフードマシナリ社製)を使用して、回転数3000rpmでインライン混合し、ファットスプレッド:発酵乳の重量比が70:30である油中水型乳化物を得た。
なお、混合時のファットスプレッド(油中水型乳化物)及び発酵乳の粘度は、各々、2100mPa・s、2500mPa・sであった。
この油中水型乳化物を型に流し込み、冷蔵庫(収容空間の温度:5℃)で当該乳化物の温度が10℃以下になるように一晩(約15時間)冷却した。
冷却後の油中水型乳化物は、通常のチョコレートと同様な固形状の形態を有しており、発酵乳が含まれているにもかかわらず、つまんで食することのできるものであった。
この油中水型乳化物は、製造直後に15×10cfu/gの乳酸菌の生菌数を有し、10℃の温度下で2週間冷蔵保存した時点で5×10cfu/g、の乳酸菌の生菌数を有していた。
得られた油中水型乳化物は、製造時、及び、製造時から2週間、冷蔵保存した後の時点において、それぞれで、速やかな口溶け、及び、滑らかな食感を有し、表面に油分等が浮き出ることもなく、カカオバター:21%を含むチョコレートとして提供されうることが確認された。
【0030】
[比較例1]
インライン混合のために送液する前のカカオバター入りのファットスプレッドと発酵乳のそれぞれの温度を、35℃から10℃以下(約8℃)に変えた以外は、実施例1と同様にして実験した。
その結果、カカオバター入りのファットスプレッドを送液して混合機に押し出すことができず、油中水型乳化物を得ることができなかった。
【0031】
[比較例2]
インライン混合のために送液する前のカカオバター入りのファットスプレッドと発酵乳のそれぞれの温度を、35℃から50℃に変えた以外は、実施例1と同様にして実験した。
その結果、カカオバター入りのファットスプレッドと発酵乳の混合物が油中水型乳化物にならず、冷蔵庫で冷却しても、油中水型乳化物である固形状物を得ることができなかった。
また、冷蔵庫で冷却して得られたものは、固形状ではあるが、油中水型乳化物ではないため、実施例1で得られた油中水型乳化物に比べて、風味及び食感(特に、滑らかな食感)が劣るものであった。また、冷却後に、固形状物の表面に油分が浮き出ていた。
さらに、冷却後の固形状物に含まれている乳酸菌の生菌を調べたところ、乳酸菌が死滅しており、生菌数は、1×10cfu/g以下であった。