特許第6284094号(P6284094)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6284094誘電体用樹脂組成物および高周波誘電体デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284094
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】誘電体用樹脂組成物および高周波誘電体デバイス
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20180215BHJP
   C08K 7/00 20060101ALI20180215BHJP
   H01B 3/00 20060101ALI20180215BHJP
   H01B 3/44 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   C08L101/00
   C08K7/00
   H01B3/00 A
   H01B3/44 G
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-173840(P2013-173840)
(22)【出願日】2013年8月23日
(65)【公開番号】特開2015-40296(P2015-40296A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2016年8月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】599002043
【氏名又は名称】学校法人 名城大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】今井 祐介
(72)【発明者】
【氏名】堀田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】菅 章紀
(72)【発明者】
【氏名】小川 宏隆
(72)【発明者】
【氏名】高橋 奨
【審査官】 松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−116870(JP,A)
【文献】 特開2000−001622(JP,A)
【文献】 特開2013−062379(JP,A)
【文献】 特開2011−090868(JP,A)
【文献】 特開2012−036364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 − 101/16
CA/REGISTRY(STN)
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂中に分散された無機物質を含む誘電体用樹脂組成物であって、
前記無機物質は、板状の無機粒子を含み、該無機粒子は、六方晶窒化ホウ素、酸化アルミニウム、タルク、および雲母からなる群から選定された材料を有し、
当該誘電体用樹脂組成物は、12GHzの周波数および25℃の温度において、
比誘電率εが5以下であり、
誘電正接tanδが5×10−4以下であることを特徴とする誘電体用樹脂組成物。
【請求項2】
前記無機粒子は、平均アスペクト比が2以上1000以下であることを特徴とする請求項1に記載の誘電体用樹脂組成物。
【請求項3】
前記無機粒子は、100nm以上50μm以下の平均長軸寸法を有することを特徴とする請求項1または2に記載の誘電体用樹脂組成物。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂、ポリ環状オレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂ポリフェニレンスルフィド系樹脂、フッ素化ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹脂、サーモトロピック液晶ポリマー系樹脂、芳香族ポリサルホン系樹脂、および芳香族ポリエーテル系樹脂からなる群から選定された少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の誘電体用樹脂組成物。
【請求項5】
前記熱硬化性樹脂は、トリアジン系樹脂、熱硬化性ポリフェニレンエーテル類スチレン系樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、エポキシ系樹脂、および不飽和ポリエステル樹脂からなる群から選定された少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の誘電体用樹脂組成物。
【請求項6】
1GHz以上の周波数帯域において使用される高周波誘電体デバイスであって、
当該高周波誘電体デバイスは、回路基板、伝送線路、誘電体フィルタ、誘電体アンテナ、誘電体共振器、キャパシタ、インダクタ、埋設デバイス、およびマルチチップモジュールのいずれか一つであり、
当該高周波誘電体デバイスは、請求項1乃至5のいずれか一つに記載の誘電体用樹脂組成物を含むことを特徴とする高周波誘電体デバイス。
【請求項7】
さらに導体を有し、
該導体は、前記誘電体用樹脂組成物の表面または内部に配置されることを特徴とする請求項6に記載の高周波誘電体デバイス。
【請求項8】
1GHz以上の周波数帯域において使用される高周波誘電体デバイスであって、
当該高周波誘電体デバイスは、凸レンズ、フレネルレンズ、および凹レンズのいずれかであり、
当該高周波誘電体デバイスは、請求項1乃至5のいずれか一つに記載の誘電体用樹脂組成物を含むことを特徴とする高周波誘電体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体用樹脂組成物および高周波誘電体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
共振器、フィルタ、アンテナ、回路基板、および積層回路素子基板等の誘電体デバイスの分野では、近年の情報量の増大、通信技術の高度化、および利用周波数帯域の枯渇化に伴い、高周波数帯(センチメートル波〜ミリ波)の利用が進められている。
【0003】
しかしながら、一般に、誘電体デバイスの寸法は、利用周波数および使用材料の比誘電率に依存することが知られている。従って、例えば、高周波数帯域において、比誘電率の高い材料を使用しようとすると、誘電体デバイスの設計寸法が極端に小さくなってしまうという問題が生じる。これは、誘電体デバイスの加工を難しくし、製造歩留まりの低下につながる。
【0004】
また、信号の伝播速度は、デバイス使用材料の比誘電率の平方根に反比例することが知られている。このため、比誘電率が高い材料をデバイスに使用した場合、伝送遅延が生じ、信号の高速処理に支障が生じる。
【0005】
さらに、デバイス使用材料の誘電損失は、周波数の増大とともに増加する。このため、高周波数帯において、誘電損失が高い材料をデバイスに使用した場合、信号の伝搬損失が許容できない値にまで上昇するおそれがある。
【0006】
このように、高周波数帯域において誘電体デバイスを適用することを想定した場合、材料の誘電特性に関して、解決すべき多くの課題が存在する。また、このような背景から、近年、比誘電率が低く、誘電損失が低いマイクロ波誘電体材料の開発が進められている。
【0007】
ところで、一般に、無機材料は、誘電損失が比較的低い傾向にあるが、比誘電率の低下を図ることは難しいという問題がある。逆に、有機材料には、比較的比誘電率の低いものが多く存在する。このため、無機材料と有機材料とを複合化することにより、高周波数帯域で使用可能な誘電体用材料を構成することが提案されている(特許文献1〜6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−331003号公報
【特許文献2】特開2000−40421号公報
【特許文献3】特開2004−2653号公報
【特許文献4】特開2007−126605号公報
【特許文献5】特開2009−96979号公報
【特許文献6】国際公開第WO2010−47349号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述のように、特許文献1〜6には、樹脂系の有機材料に無機材料粒子または無機材料繊維を分散することにより構成された誘電体用材料が記載されている。
【0010】
しかしながら、特許文献1〜6に開示されている誘電体材料においても、誘電特性は、未だ十分であるとは言い難い。特に、これらの文献に記載されている誘電体材料は、誘電損失が比較的大きいという問題がある。このため、現在においても、高周波数帯域において、比誘電率および誘電損失が十分に抑制された誘電体用樹脂組成物について、未だ大きな要望がある。
【0011】
本発明は、このような背景に鑑みなされたものであり、本発明では、1GHz以上の高周波数帯域において、比誘電率および誘電損失が十分に低い誘電体用樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明では、そのような誘電体用樹脂組成物を含む高周波誘電体デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では、熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂中に分散された無機物質を含む誘電体用樹脂組成物であって、
前記無機物質は、板状の無機粒子を含み、該無機粒子は、六方晶窒化ホウ素、酸化アルミニウム、タルク、および雲母からなる群から選定された材料を有し、
当該誘電体用樹脂組成物は、1GHz以上の周波数および25℃の温度において、
比誘電率εが5以下であり、
誘電正接tanδが5×10−4以下であることを特徴とする誘電体用樹脂組成物が提供される。
【0013】
ここで、本発明による誘電体用樹脂組成物において、前記無機粒子は、平均アスペクト比が2以上1000以下であっても良い。
【0014】
また、本発明による誘電体用樹脂組成物において、前記無機粒子は、100nm以上50μm以下の平均長軸寸法を有しても良い。
【0015】
また、本発明による誘電体用樹脂組成物において、前記熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂、ポリ環状オレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、5−メチルペンテン樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、フッ素化ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹脂、サーモトロピック液晶ポリマー系樹脂、芳香族ポリサルホン系樹脂、および芳香族ポリエーテル系樹脂からなる群から選定された少なくとも1種を含んでも良い。
【0016】
また、本発明による誘電体用樹脂組成物において、前記熱硬化性樹脂は、トリアジン系樹脂、熱硬化性ポリフェニレンエーテル類、多官能スチレン系樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、エポキシ系樹脂、および不飽和ポリエステル樹脂からなる群から選定された少なくとも1種を含んでも良い。
【0017】
さらに、本発明では、1GHz以上の周波数帯域において使用される高周波誘電体デバイスであって、
当該高周波誘電体デバイスは、回路基板、伝送線路、誘電体フィルタ、誘電体アンテナ、誘電体共振器、キャパシタ、インダクタ、埋設デバイス、およびマルチチップモジュールのいずれか一つであり、
当該高周波誘電体デバイスは、前述のような誘電体用樹脂組成物を含むことを特徴とする高周波誘電体デバイスが提供される。
【0018】
ここで、本発明による高周波誘電体デバイスは、さらに導体を有し、
該導体は、前記誘電体用樹脂組成物の表面または内部に配置されても良い。
【0019】
また、本発明では、1GHz以上の周波数帯域において使用される高周波誘電体デバイスであって、
当該高周波誘電体デバイスは、凸レンズ、フレネルレンズ、および凹レンズのいずれかであり、
当該高周波誘電体デバイスは、前述のような誘電体用樹脂組成物を含むことを特徴とする高周波誘電体デバイスが提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、1GHz以上の高周波数帯域において、比誘電率および誘電損失が十分に低い誘電体用樹脂組成物を提供することができる。また、本発明では、そのような誘電体用樹脂組成物を含む高周波誘電体デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明による誘電体用樹脂組成物が適用された伝送線路の模式図である。
図2】本発明による誘電体用樹脂組成物が適用された別の伝送線路の模式図である。
図3】本発明による誘電体用樹脂組成物が適用されたさらに別の伝送線路の模式図である。
図4】本発明による誘電体用樹脂組成物が適用された誘電体フィルタの模式図である。
図5】本発明による誘電体用樹脂組成物が適用された誘電体アンテナの模式図である。
図6】本発明による誘電体用樹脂組成物が適用された誘電体共振器の模式図である。
図7】本発明による誘電体用樹脂組成物が適用されたキャパシタの模式図である。
図8】本発明による誘電体用樹脂組成物が適用されたインダクタの模式図である。
図9】本発明による誘電体用樹脂組成物が適用された多層基板の模式図である。
図10】本発明による誘電体用樹脂組成物が適用された凸レンズの模式図である。
図11】本発明による誘電体用樹脂組成物が適用されたフレネルレンズの模式図である。
図12】本発明による誘電体用樹脂組成物が適用された凹レンズの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0023】
本発明では、熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂中に分散された無機物質を含む誘電体用樹脂組成物であって、
前記無機物質は、板状の無機粒子を含み、該無機粒子は、六方晶窒化ホウ素、酸化アルミニウム、タルク、および雲母からなる群から選定された材料を有し、
当該誘電体用樹脂組成物は、1GHz以上の周波数および25℃の温度において、
比誘電率εが5以下であり、
誘電正接tanδが5×10−4以下であることを特徴とする誘電体用樹脂組成物が提供される。
【0024】
前述のように、特許文献1〜6に記載の誘電体材料は、高周波帯域で使用されるデバイスへの適用を考慮した場合、未だ十分な誘電特性を有するとは言い難い。特に、これらの文献に記載されている誘電体材料は、誘電損失が比較的大きいという問題がある。
【0025】
これに対して、本発明による誘電体用樹脂組成物は、1GHz以上の高周波帯域においても、有意に低い比誘電率、および有意に低い誘電損失を有するため、高周波帯域で使用されるデバイスに対しても、十分に適用することができる。
【0026】
なお、一般に、材料の誘電損失は、誘電正接(tanδ)を用いて表される。誘電正接(tanδ)は、誘電体内を伝播する電気信号が熱に変換されることにより損失する量を表すパラメータである。従って、誘電正接(tanδ)が小さい材料ほど、電気信号の損失が少なくなり、信号伝達率が向上する。
【0027】
(本発明による誘電体用樹脂組成物の構成)
次に、本発明による誘電体用樹脂組成物に含まれる各材料について、詳しく説明する。
【0028】
(無機粒子)
本発明による誘電体用樹脂組成物は、無機物質として、板状の無機粒子を含む。
【0029】
ここで、本願において、「板状」(の無機粒子)とは、以下のように定義される形状を意味する。
【0030】
まず、測定対象粒子の寸法を各方角から測定する。粒子の寸法が最も大きくなる方向をx軸方向と規定し、その方向の粒子の寸法をaとする。次に、粒子をx軸と直交する方向から測定した寸法のうち、最も短い寸法を与える方向をz軸方向と規定し、その粒子の寸法をcとする。また、x軸およびz軸と直交する方向をy軸方向と規定し、y軸方向で最も大きな寸法をbとする。
【0031】
この場合、粒子の各軸の関係から、a≧b≧cとなる。このような定義の下、比率(a/c)が比率(a/b)の2倍以上となる場合、その粒子は板状であると言う。
【0032】
以降、比率(a/c)を、粒子のアスペクト比と称する。さらに、aを粒子の長軸寸法と称し、cを粒子の厚さと称する。
【0033】
なお、本願では、「平均アスペクト比」および「平均長軸寸法」を用いて、樹脂組成物中に含まれる無機粒子の寸法を規定する。ここで、「平均アスペクト比」は、樹脂組成物に含まれる100個以上の無機粒子のアスペクト比を計測し、得られた数値を小さい順に並べた際に、中央に位置する値(中央値)を意味する。同様に、「平均長軸寸法」は、樹脂組成物に含まれる100個以上の無機粒子の長軸寸法を計測し、得られた数値を小さい順に並べた際に、中央に位置する値(中央値)を意味する。
【0034】
無機粒子の平均アスペクト比は、2以上1000以下の範囲であることが好ましい。また、無機粒子の平均長軸寸法は、100nm以上50μm以下の範囲であることが好ましい。
【0035】
なお、このような無機粒子の各種寸法は、走査型電子顕微鏡を用いて測定することができる。
【0036】
板状の無機粒子は、六方晶窒化ホウ素、板状酸化アルミニウム、タルク、および雲母のような材料で構成されても良い。
【0037】
特に、板状の無機粒子は、六方晶窒化ホウ素の粒子であることが好ましい。六方晶窒化ホウ素の粒子としては、公知の方法により製造された市販品をそのまま使用しても良く、あるいは市販品を加工して用いても良い。
【0038】
そのような粒子の市販品としては、例えば、昭和電工(株)製の「ショウビーエヌUHP」シリーズ(例えば、「ショウビーエヌUHP−1」など)、電気化学工業(株)製の「デンカボロンナイトライド粉」シリーズ(例えばGPグレードなど)などが挙げられる。
【0039】
なお、市販品の六方晶窒化ホウ素の粒子を加工して用いる場合、加工法として、公知の技術を用いた分級処理、粉砕処理、薄片化処理、剥離処理、および/または表面修飾剤による表面処理などを実施しても良い。
【0040】
(樹脂材料)
本発明では、誘電体用樹脂組成物に使用される樹脂材料として、熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂が使用される。
【0041】
本発明による誘電体用樹脂組成物に使用される熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂の種類は、最終的に得られる誘電体用樹脂組成物が前述の比誘電率εおよび誘電正接(tanδ)を満たす限り、特に限られない。
【0042】
本発明による誘電体用樹脂組成物に使用される熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリ環状オレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、5−メチルペンテン樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、フッ素化ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹脂、サーモトロピック液晶ポリマー系樹脂、芳香族ポリサルホン系樹脂、および芳香族ポリエーテル系樹脂が挙げられる。これらは、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0043】
ちなみに、これらの熱可塑性樹脂は、いずれも、1GHz以上の周波数および25℃において、比誘電率が4以下であり、誘電正接が5×10−3以下である。
【0044】
本発明による誘電体用樹脂組成物に使用される熱硬化性樹脂としては、例えば、トリアジン系樹脂、熱硬化性ポリフェニレンエーテル類、多官能スチレン系樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、エポキシ系樹脂、および不飽和ポリエステル樹脂が挙げられる。これらは、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0045】
ちなみに、これらの熱硬化性樹脂は、いずれも、1GHz以上の周波数および25℃において、比誘電率が4以下であり、誘電正接が5×10−3以下である。
【0046】
前述の熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とは、混合して使用しても良い。
【0047】
(誘電体用樹脂組成物)
本発明による誘電体用樹脂組成物は、前述の樹脂材料中に、前述のような材料を含む板状の無機粒子、例えば六方晶窒化ホウ素の板状の粒子を分散させることにより製造される。
【0048】
例えば、混練機または攪拌機等を用いて、樹脂材料中に板状の無機粒子を直接分散させることにより、誘電体用樹脂組成物を製造しても良い。あるいは、樹脂材料を溶剤中に溶解させた後、この溶液に板状の無機粒子を加えて混合しても良い。その後、溶剤を除去することにより、樹脂組成物が製造される。
【0049】
この他にも、各種方法で本発明による誘電体用樹脂組成物を製造することができる。
【0050】
なお、本発明による誘電体用樹脂組成物において、板状の無機粒子の含有率は、5体積%以上90体積%未満であることが好ましい。
【0051】
板状の無機粒子の含有率が5体積%未満の場合、十分に良好な特性が得られない場合がある。また、板状の無機粒子の含有率が90体積%以上の場合、樹脂組成物の成形が難しくなる場合がある。
【0052】
本発明による誘電体用樹脂組成物には、本発明の目的に反しない範囲で、非板状の形状を有する無機粒子、難燃剤、安定剤、可塑化剤、および/または強化剤等の添加剤をさらに加えても良い。
【0053】
本発明による誘電体用樹脂組成物の提供形態は、特に限られない。本発明による誘電体用樹脂組成物は、例えば、成形体の状態で提供しても良い。
【0054】
そのような成形体は、これに限られるものではないが、例えば、射出成形、プレス成形、真空プレス成形、押出成形、および注型成形等の公知の方法により、製造することができる。
【0055】
板状の無機粒子を含む樹脂組成物では、無機粒子の形状異方性のため、無機粒子の含有率に加え、無機粒子の配向によっても、その特性が変化する場合がある。例えば、六方晶窒化ホウ素の粒子の場合、無機粒子の面内(xy面内)方向と板厚(z軸)方向において、特性が異なることが知られている。このため、異なる成形方法を用いることにより、成形体内の粒子の配向を変化させることができ、それに応じて、樹脂組成物の特性を変化させることができる。
【0056】
また、本発明による誘電体用樹脂組成物は、熱膨張係数が小さいことが好ましい。
【0057】
本発明による誘電体用樹脂組成物は、以下に述べるように、導体(金属)や半導体部品と組み合わせて、各種高周波誘電体デバイスとして用いることができる。その際、金属や半導体と誘電体用樹脂組成物の間で熱膨張係数が大きく異なると、温度変化が与えられた場合に熱膨張係数の差異に由来するひずみが生じ、接合が剥がれてしまう等の不具合が生じるおそれがある。一般に、樹脂材料は、金属に比べて熱膨張係数が大きい。熱膨張係数の小さい板状の形状を有する無機粒子と複合化することにより、樹脂組成物の熱膨張係数を樹脂材料の値よりも小さくすることができる。
【0058】
例えば、本発明による誘電体用樹脂組成物は、5ppm/℃〜100ppm/℃の範囲の熱膨張係数を有しても良い。
【0059】
また、本発明による誘電体用樹脂組成物は、熱伝導率が大きいことが好ましい。
【0060】
前述のように、本発明による誘電体用樹脂組成物は、導体(金属)や半導体部品と組み合わせて、各種高周波誘電体デバイスとして用いることができる。そのようなデバイスを駆動させた場合、導体や半導体に発熱が生じる。発生した熱を効率的に散逸させることは、デバイスを安定して動作させる上で重要である。誘電体用樹脂組成物の熱伝導率が大きい場合、デバイスからより効果的に熱を散逸させることが可能になる。
【0061】
例えば、本発明による誘電体用樹脂組成物は、0.2W/m・K〜5.0W/m・Kの範囲の熱伝導率を有しても良い。
【0062】
(本発明による誘電体用樹脂組成物の適用例)
本発明による誘電体用樹脂組成物は、1GHz以上の周波数帯域で使用される各種高周波誘電体デバイスに適用することができる。
【0063】
そのような高周波誘電体デバイスには、例えば、回路基板、伝送線路、誘電体フィルタ、誘電体アンテナ、誘電体共振器、キャパシタ、インダクタ、埋設デバイス、およびマルチチップモジュール等が含まれる。
【0064】
以下、本発明による誘電体用樹脂組成物を有する高周波誘電体デバイスの一例について説明する。
【0065】
図1には、本発明による誘電体用樹脂組成物が適用された伝送線路の模式図(斜視図)を示す。伝送線路(マイクロストリップ線路)100において、両導体110、120の間に、本発明による誘電体用樹脂組成物180が配置されている。
【0066】
図2には、本発明による誘電体用樹脂組成物が適用された別の伝送線路の模式図(斜視図)を示す。伝送線路(コプレーナ線路)200において、上部導体210a、210b、210cと下部導体220の間に、本発明による誘電体用樹脂組成物280が配置されている。
【0067】
図3には、本発明による誘電体用樹脂組成物が適用されたさらに別の伝送線路の模式図(斜視図)を示す。伝送線路300(スロット線路)において、上部導体310a、310bと下部導体320の間に、本発明による誘電体用樹脂組成物380が配置されている。
【0068】
図4には、本発明による誘電体用樹脂組成物が適用された誘電体フィルタの模式図(斜視図)を示す。誘電体フィルタ(帯域透過フィルタ)400において、上部導体410a〜410dと下部導体420の間に、本発明による誘電体用樹脂組成物480が配置されている。
【0069】
図5には、本発明による誘電体用樹脂組成物が適用された誘電体アンテナの模式図(斜視図)を示す。誘電体アンテナ(パッチアンテナ)500において、給電点515を有する上部導体510と下部導体520の間に、本発明による誘電体用樹脂組成物580が配置されている。
【0070】
図6には、本発明による誘電体用樹脂組成物が適用された誘電体共振器の模式図(斜視図)を示す。誘電体共振器(リング共振器)600において、リング導体610と下部導体620の間に、本発明による誘電体用樹脂組成物680が配置されている。
【0071】
図7には、本発明による誘電体用樹脂組成物が適用されたキャパシタの模式図(上面図)を示す。キャパシタ(インターディジタルキャパシタ)700において、櫛形導体710aおよび710bが本発明による誘電体用樹脂組成物780上に配置されている。
【0072】
図8には、本発明による誘電体用樹脂組成物が適用されたインダクタの模式図(上面図)を示す。インダクタ(スパイラルインダクタ)800において、スパイラル状の導体810aが本発明による誘電体用樹脂組成物880上に配置されている。
【0073】
図9には、本発明による誘電体用樹脂組成物が適用された多層基板の模式図(断面図)を示す。多層基板900は、本発明による誘電体用樹脂組成物980(980a〜980d)を複数積層することにより構成される。各誘電体用樹脂組成物980a〜980の表面、底面、および/または内部には、多層基板900の最表面に配置された半導体部品950と電気的に接合された配線910a、および半導体部品950と電気的に接合されていない配線910b等が設置される。
【0074】
前述のように、本発明による誘電体用樹脂組成物は、高周波帯域においても、有意に低い比誘電率、および有意に低い誘電損失を有する。
【0075】
従って、本発明による誘電体用樹脂組成物180〜980を備える高周波誘電体デバイス100〜900は、1GHz以上の高周波帯域においても、信号の伝送遅延および信号の損失が有意に抑制され、適正に作動させることができる。
【0076】
あるいは、本発明による誘電体用樹脂組成物が利用される高周波誘電体デバイスは、凸レンズ、フレネルレンズ、または凹レンズであっても良い。
【0077】
図10には、本発明による誘電体用樹脂組成物が適用された凸レンズの模式図(側面図)を示す。凸レンズ1000において、本発明による誘電体用樹脂組成物1080が利用されている。
【0078】
図11には、本発明による誘電体用樹脂組成物が適用されたフレネルレンズの模式図(側面図)を示す。フレネルレンズ1100において、本発明による誘電体用樹脂組成物1180が利用されている。
【0079】
図12には、本発明による誘電体用樹脂組成物が適用された凹レンズの模式図(側面図)を示す。凹レンズ1200において、本発明による誘電体用樹脂組成物1280が利用されている。
【0080】
なお、図1図12に示した高周波誘電体デバイスは、単なる一例であって、本発明による誘電体用樹脂組成物は、他の高周波誘電体デバイスに適用されても良い。
【実施例】
【0081】
以下、本発明による実施例について説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0082】
(例1)
以下の方法で、誘電体用樹脂組成物(以下、「サンプル1」と称する)を製造し、その特性を評価した。
【0083】
(サンプル1の製造)
まず、板状の六方晶窒化ホウ素の粒子(昭和電工製UHP−1)を準備した。この六方晶窒化ホウ素の粒子の平均長軸寸法は9.9μmであり、平均厚さは0.41μmであり、平均アスペクト比は24である。
【0084】
また、熱可塑性樹脂として、アイソタクティックポリプロピレン(商品名:ノバテックPP MA3、日本ポリケム株式会社製)(以下、「iPP」と称する)を準備した。
【0085】
次に、小型二軸混練機(ThermoHAAKE社製MiniLab)を用い、この熱可塑性樹脂中に六方晶窒化ホウ素の粒子Aを混合し、200℃で溶融混練を行った。六方晶窒化ホウ素の粒子の混合量は、全体に対して10vol%とした。
【0086】
その後、射出成形機(井元製作所製18D1)を用いて、得られた混練物を押出処理し、50mmΦ×厚さ1mmの板状試験片(サンプル1と称する)を作製した。
【0087】
以下の表1の「サンプル1」の欄には、例1において使用された樹脂、六方晶窒化ホウ素の粒子の混合比、および製造プロセスをまとめて示した。
【0088】
【表1】
【0089】
(サンプル1の評価)
得られたサンプル1を用いて、比誘電率ε、誘電正接tanδ、比誘電率の温度係数、共振周波数の温度係数、熱膨張係数、および熱伝導率の各種特性を評価した。
【0090】
誘電特性(比誘電率ε、誘電正接tanδ、比誘電率の温度係数、共振周波数の温度係数)の測定は、JIS R 1641に準拠し、12GHzの空洞共振器をネットワークアナライザ(Agilent社製8720ES Sパラメータ・ベクトル・ネットワーク・アナライザ)に接続し、空洞共振法で測定した。測定は25℃で行なった。
【0091】
サンプル1の比誘電率および共振周波数の温度依存性は、同様の装置により、0℃と80℃における比誘電率と共振周波数を測定し、両者の差異を求めることにより評価した。
【0092】
熱膨張係数の測定には、ブルカー・エイエックスエス株式会社製熱膨張計TD5200SAを用いた。
【0093】
熱伝導率の測定には、英弘精機株式会社製熱伝導率測定装置HC−110を用い、1枚法により実施した。
【0094】
前述の表1の「サンプル1」の欄には、比誘電率ε、誘電正接tanδ、比誘電率の温度係数、共振周波数の温度係数、熱膨張係数、および熱伝導率の各種測定結果をまとめて示した。
【0095】
(例2)
前述の例1の場合と同様の方法で、誘電体用樹脂組成物(以下、「サンプル2」と称する)を製造し、その特性を評価した。
【0096】
ただし、この例2では、六方晶窒化ホウ素の粒子の混合量は、全体に対して20vol%とした。その他の製造条件は、例1の場合と同様である。
【0097】
得られたサンプル2を用いて、例1の場合と同様の方法で、比誘電率ε、誘電正接tanδ、比誘電率の温度係数、共振周波数の温度係数、熱膨張係数、および熱伝導率の各種特性を評価した。
【0098】
前述の表1の「サンプル2」の欄には、サンプル2の製造条件と、各種評価結果とをまとめて示した。
【0099】
(例3)
前述の例1の場合と同様の方法で、誘電体用樹脂組成物(以下、「サンプル3」と称する)を製造し、その特性を評価した。
【0100】
ただし、この例3では、六方晶窒化ホウ素の粒子の混合量は、全体に対して30vol%とした。その他の製造条件は、例1の場合と同様である。
【0101】
得られたサンプル3を用いて、例1の場合と同様の方法で、比誘電率ε、誘電正接tanδ、比誘電率の温度係数、共振周波数の温度係数、熱膨張係数、および熱伝導率の各種特性を評価した。
【0102】
前述の表1の「サンプル3」の欄には、サンプル3の製造条件と、各種評価結果とをまとめて示した。
【0103】
(例4)
前述の例1の場合と同様の方法で、誘電体用樹脂組成物(以下、「サンプル4」と称する)を製造し、その特性を評価した。
【0104】
ただし、この例4では、六方晶窒化ホウ素の粒子の混合量は、全体に対して40vol%とした。その他の製造条件は、例1の場合と同様である。
【0105】
得られたサンプル4を用いて、例1の場合と同様の方法で、比誘電率ε、誘電正接tanδ、比誘電率の温度係数、共振周波数の温度係数、熱膨張係数、および熱伝導率の各種特性を評価した。
【0106】
前述の表1の「サンプル4」の欄には、サンプル4の製造条件と、各種評価結果とをまとめて示した。
【0107】
(例5)
前述の例1の場合と同様の方法で、溶融混練を実施した。また、得られた混練物を、真空加熱プレス成形機(井元製作所製IMC−11FA型)を用いてプレス成形し、50mmΦ×厚さ1mmの板状試験片(サンプル5と称する)を作製した。
【0108】
得られたサンプル5を用いて、例1の場合と同様の方法で、比誘電率ε、誘電正接tanδ、比誘電率の温度係数、共振周波数の温度係数、熱膨張係数、および熱伝導率の各種特性を評価した。
【0109】
前述の表1の「サンプル5」の欄には、サンプル5の製造条件と、各種評価結果とをまとめて示した。
【0110】
(例6)
前述の例5の場合と同様の方法で、誘電体用樹脂組成物(以下、「サンプル6」と称する)を製造し、その特性を評価した。
【0111】
ただし、この例6では、六方晶窒化ホウ素の粒子の混合量は、全体に対して20vol%とした。その他の製造条件は、例5の場合と同様である。
【0112】
得られたサンプル6を用いて、例1の場合と同様の方法で、比誘電率ε、誘電正接tanδ、比誘電率の温度係数、共振周波数の温度係数、熱膨張係数、および熱伝導率の各種特性を評価した。
【0113】
前述の表1の「サンプル6」の欄には、サンプル6の製造条件と、各種評価結果とをまとめて示した。
【0114】
(例7)
前述の例5の場合と同様の方法で、誘電体用樹脂組成物(以下、「サンプル7」と称する)を製造し、その特性を評価した。
【0115】
ただし、この例7では、六方晶窒化ホウ素の粒子の混合量は、全体に対して30vol%とした。その他の製造条件は、例5の場合と同様である。
【0116】
得られたサンプル7を用いて、例1の場合と同様の方法で、比誘電率ε、誘電正接tanδ、比誘電率の温度係数、共振周波数の温度係数、熱膨張係数、および熱伝導率の各種特性を評価した。
【0117】
前述の表1の「サンプル7」の欄には、サンプル7の製造条件と、各種評価結果とをまとめて示した。
【0118】
(例8)
前述の例5の場合と同様の方法で、誘電体用樹脂組成物(以下、「サンプル8」と称する)を製造し、その特性を評価した。
【0119】
ただし、この例8では、六方晶窒化ホウ素の粒子の混合量は、全体に対して40vol%とした。その他の製造条件は、例5の場合と同様である。
【0120】
得られたサンプル8を用いて、例1の場合と同様の方法で、比誘電率ε、誘電正接tanδ、比誘電率の温度係数、共振周波数の温度係数、熱膨張係数、および熱伝導率の各種特性を評価した。
【0121】
前述の表1の「サンプル8」の欄には、サンプル8の製造条件と、各種評価結果とをまとめて示した。
【0122】
(例9)
前述の例1と同様の六方晶窒化ホウ素の粒子およびiPPを用い、次の方法で誘電体用樹脂組成物を製造した。
【0123】
まず、10.0gのiPPを、120℃に加温した50mLのキシレンに溶解した。次に、この溶解物中に2.5g(10vol%に相当)の六方晶窒化ホウ素の粒子を投入し、1時間攪拌した。その後、溶解物からキシレンを留去して固形物を得た。
【0124】
次に、真空加熱プレス成形機(井元製作所製IMC−11FA型)を用いて、固形物を50mmΦ×厚さ1mmの寸法にプレス成形した。これにより、板状試験片(サンプル9と称する)が作製された。
【0125】
得られたサンプル9を用いて、例1の場合と同様の方法で、比誘電率ε、誘電正接tanδ、比誘電率の温度係数、共振周波数の温度係数、熱膨張係数、および熱伝導率の各種特性を評価した。
【0126】
前述の表1の「サンプル9」の欄には、サンプル9の製造条件と、各種評価結果とをまとめて示した。
【0127】
(例10)
前述の例9の場合と同様の方法で、誘電体用樹脂組成物(以下、「サンプル10」と称する)を製造し、その特性を評価した。
【0128】
ただし、この例10では、六方晶窒化ホウ素の粒子の混合量は、全体に対して20vol%とした。その他の製造条件は、例9の場合と同様である。
【0129】
得られたサンプル10を用いて、例1の場合と同様の方法で、比誘電率ε、誘電正接tanδ、比誘電率の温度係数、共振周波数の温度係数、熱膨張係数、および熱伝導率の各種特性を評価した。
【0130】
前述の表1の「サンプル10」の欄には、サンプル10の製造条件と、各種評価結果とをまとめて示した。
【0131】
(例11)
前述の例9の場合と同様の方法で、誘電体用樹脂組成物(以下、「サンプル11」と称する)を製造し、その特性を評価した。
【0132】
ただし、この例11では、六方晶窒化ホウ素の粒子の混合量は、全体に対して30vol%とした。その他の製造条件は、例9の場合と同様である。
【0133】
得られたサンプル11を用いて、例1の場合と同様の方法で、比誘電率ε、誘電正接tanδ、比誘電率の温度係数、共振周波数の温度係数、熱膨張係数、および熱伝導率の各種特性を評価した。
【0134】
前述の表1の「サンプル11」の欄には、サンプル11の製造条件と、各種評価結果とをまとめて示した。
【0135】
(例12)
前述の例9の場合と同様の方法で、誘電体用樹脂組成物(以下、「サンプル12」と称する)を製造し、その特性を評価した。
【0136】
ただし、この例12では、六方晶窒化ホウ素の粒子の混合量は、全体に対して40vol%とした。その他の製造条件は、例9の場合と同様である。
【0137】
得られたサンプル12を用いて、例1の場合と同様の方法で、比誘電率ε、誘電正接tanδ、比誘電率の温度係数、共振周波数の温度係数、熱膨張係数、および熱伝導率の各種特性を評価した。
【0138】
前述の表1の「サンプル12」の欄には、サンプル12の製造条件と、各種評価結果とをまとめて示した。
【0139】
(例13)
前述の例9の場合と同様の方法で、誘電体用樹脂組成物(以下、「サンプル13」と称する)を製造し、その特性を評価した。
【0140】
ただし、この例13では、六方晶窒化ホウ素の粒子の混合量は、全体に対して50vol%とした。その他の製造条件は、例9の場合と同様である。
【0141】
得られたサンプル13を用いて、例1の場合と同様の方法で、比誘電率ε、誘電正接tanδ、比誘電率の温度係数、共振周波数の温度係数、熱膨張係数、および熱伝導率の各種特性を評価した。
【0142】
前述の表1の「サンプル13」の欄には、サンプル13の製造条件と、各種評価結果とをまとめて示した。
【0143】
(例14)
前述の例9の場合と同様の方法で、誘電体用樹脂組成物(以下、「サンプル14」と称する)を製造し、その特性を評価した。
【0144】
ただし、この例14では、六方晶窒化ホウ素の粒子の混合量は、全体に対して60vol%とした。その他の製造条件は、例9の場合と同様である。
【0145】
得られたサンプル14を用いて、例1の場合と同様の方法で、比誘電率ε、誘電正接tanδ、比誘電率の温度係数、共振周波数の温度係数、熱膨張係数、および熱伝導率の各種特性を評価した。
【0146】
前述の表1の「サンプル14」の欄には、サンプル14の製造条件と、各種評価結果とをまとめて示した。
【0147】
表1に示すように、今回製造した誘電体用樹脂組成物(サンプル1〜サンプル14)は、いずれも、5以下の低い比誘電率ε、および5.0×10−4よりも低い誘電正接tanδを示した。従って、サンプル1〜サンプル14に係る誘電体用樹脂組成物は、高周波誘電体デバイス等に好適に用いることができる。
【0148】
また、サンプル1〜サンプル14は、いずれも、比誘電率の温度係数の絶対値が小さく(絶対値で176ppm/℃以下)、共振周波数の温度係数の絶対値が小さく(最大8.6ppm/℃以下)、熱膨張係数が小さい(最大73ppm/℃以下)ことがわかった。特に、同じ製造プロセスで比較した場合、六方晶窒化ホウ素の粒子の添加量の増加とともに、これらのパラメータの減少が顕著になることがわかる。
【0149】
比誘電率の温度係数の絶対値および共振周波数の温度係数の絶対値が小さい誘電体用樹脂組成物は、使用中に温度が上昇しても誘電特性が変化しにくいため、安定な誘電特性を発揮することができる。同様に、熱膨張係数が小さい誘電体用樹脂組成物は、使用中に温度が上昇しても変形が生じにくく、安定な誘電特性を発揮することができ、また、金属や半導体との熱膨張係数の差が小さいことから、接合部の剥がれ等の不具合を防ぐことができる。
【0150】
一方、表1から、同じ成形方法で比較すると、六方晶窒化ホウ素の粒子の添加量の増加とともに、誘電体用樹脂組成物の熱伝導率は、上昇する傾向にあることがわかった。また、異なる成形方法を用いることにより、同じ六方晶窒化ホウ素の粒子の添加量であっても、熱伝導率が異なることがわかった。これは、板状形状を有する六方晶窒化ホウ素粒子の配向の違いに起因すると考えられる。これらのことは、板状の無機粒子の添加量または配向によって、誘電体用樹脂組成物の熱伝導率を制御することができることを示唆するものである。すなわち、本発明による誘電体用樹脂組成物は、用途に応じて、熱伝導率を適正な値に調整し得ることが予想される。
【産業上の利用可能性】
【0151】
本発明は、例えば、回路基板、伝送線路、誘電体フィルタ、誘電体アンテナ、誘電体共振器、キャパシタ、インダクタ、埋設デバイス、マルチチップモジュール、凸レンズ、フレネルレンズ、および凹レンズ等の誘電体デバイスに適用することができる。
【符号の説明】
【0152】
100 伝送線路
110 導体
120 導体
180 誘電体用樹脂組成物
200 伝送線路
210a〜210c 上部導体
220 下部導体
280 誘電体用樹脂組成物
300 伝送線路
310a、310b 上部導体
320 下部導体
380 誘電体用樹脂組成物
400 誘電体フィルタ
410a〜410d 上部導体
420 下部導体
480 誘電体用樹脂組成物
500 誘電体アンテナ
510 上部導体
515 給電点
520 下部導体
580 誘電体用樹脂組成物
600 誘電体共振器
610 リング導体
620 下部導体
680 誘電体用樹脂組成物
700 キャパシタ
710a、710b 櫛形導体
780 誘電体用樹脂組成物
800 インダクタ
810a 導体
880 誘電体用樹脂組成物
900 多層基板
910a、910b 配線
950 半導体部品
980a〜980d 誘電体用樹脂組成物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12