【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度国立研究開発法人日本医療研究開発機構 医工連携事業化推進事業「オートプルバック式極細高画質血管内視鏡システムの開発・海外展開」に係る委託業務、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ライトガイドの前記第1の接続端子および前記イメージガイドの前記第2の接続端子を略平行に配置した接続プラグを備える前記軟性内視鏡と、前記受入口を介して接続可能である、請求項1から4のいずれかに記載の中継器装置。
前記接続プラグにおける前記ライトガイドの前記第1の接続端子の先端部と前記イメージガイドの前記第2の接続端子の先端部との間に段差が設けられている前記軟性内視鏡と、前記受入口を介して接続可能である、請求項5に記載の中継器装置。
前記接続プラグにおける前記イメージガイドの前記第2の接続端子の先端部が前記ライトガイドの前記第1の接続端子の先端部よりも突出するように段差が設けられている前記軟性内視鏡と、前記受入口を介して接続可能とするように、前記受入口に対して前記光供給部および前記光源が、前記鏡筒部および前記カメラ機構よりも近傍に配置されている、請求項5に記載の中継器装置。
【背景技術】
【0002】
近年、ヒトの身体内の診断、手術等を可能とする種々の内視鏡技術が開発されている。
【0003】
特に冠動脈等の血管内部における病変部の性状、長さ、および/または狭窄度を測定するために、血管内視鏡または血管内視鏡カテーテルと呼ばれる軟性内視鏡が使用される。こうした血管内視鏡は、例えば、消化器官の診断、手術等に使用される消化器内視鏡と比較して、血管内の前進および後退を容易にするために長軸かつ軸径が極めて細く設計されている。さらに、血管内視鏡は、その遠位先端部(すなわち、医師の手元から最も離れた側の内視鏡の先端部)にて、外部に光を照射し得る照明用ファイバーから構成されるライトガイドと、当該遠位先端部にて得られた画像情報を医師側に伝送するための画像伝送用ファイバーから構成されるイメージガイドとの少なくとも2つのガイド部材を備える。
【0004】
さらに、当該血管内視鏡はこうした2つのガイドが、近位端(すなわち、医師の手元に最も近い側の内視鏡の先端部)側にて中継器装置と接続され、中継器装置はまた、伝送された画像情報を表示、解析、保管等するための種々の情報処理機能を備えた医療用コンソールに電気的に接続されている。このような中継器装置として、例えば、特許文献1に記載されるような装置が知られている。
【0005】
ここで、血管内視鏡の2つのガイドと中継器装置との接続は、通常、医師以外の手術助手によって行われるが、ライトガイドとイメージガイドとの接続をそれぞれ行うことは煩雑である。このため、例えば、血管内視鏡における各ガイドを接続プラグの形態で一体化し、他方、中継器装置内では、ライトガイドの接続端子を受入れかつ接続するポートを備えた光供給部と、イメージガイドの接続端子を受入れかつ接続するポートを備えた鏡筒部とを配置し、これにより中継器装置のプラグ受入口に1回の操作で血管内視鏡を接続可能にすることが考えられる。
【0006】
しかし、このような接続方法では、中継器装置のプラグ受入口に対するライトガイドとイメージガイドとの受入れ誤差(すなわち、水平方向および鉛直方向の任意の方向における受入れ高さの誤差)が生じ易く、ライトガイドまたはイメージガイドの少なくともいずれかが接続不良となるおそれがある。
【0007】
上記のような軟性内視鏡を用いる内視鏡システムでは、通常、軟性内視鏡は使い捨てを想定した製品である一方、中継器装置および医療用コンソールが繰り返し使用を想定している製品である。上記ライトガイドとイメージガイドとの誤差を解消し得る改良を行うとしても、使い捨てを前提とした軟性内視鏡側に当該改良を施すことは、製造コスト等を考慮すれば得策とは言い難い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題の解決を課題とするものであり、その目的とするところは、ライトガイドおよびイメージガイドを備える軟性内視鏡に対して、これら2つのガイドの受入れ誤差を解消し、当該2つのガイドによる接続不良のリスクを低減し得る、軟性内視鏡と接続可能な中継器装置、およびそれを用いた内視鏡システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ライトガイドとイメージガイドとを備える軟性内視鏡と受入口を介して接続可能な中継器装置であって、
該軟性内視鏡の該ライトガイドから延びる第1の接続端子と該受入口を介して接続可能な、光供給部と、
該光供給部から該ライトガイドに光照射する光源と、
該軟性内視鏡の該イメージガイドから延びる第2の接続端子と該受入口を介して接続可能な、鏡筒部と、
該イメージガイドから該鏡筒部に伝送された画像を受容するカメラ機構と、
を備え、
該光供給部が弾性部材を介して固定されている、中継器装置である。
【0011】
1つの実施形態では、上記光供給部の軸心および上記鏡筒部の軸心が互いに略平行に配置されている。
【0012】
1つの実施形態では、上記弾性部材は、ゴム材、熱可塑性エラストマー材、熱硬化性エラストマー材、スプリング、または板バネである。
【0013】
1つの実施形態では、上記光供給部は1つの上記弾性部材で包囲されている。
【0014】
1つの実施形態では、本発明の中継器装置は、上記ライトガイドの上記第1の接続端子および上記イメージガイドの上記第2の接続端子を略平行に配置した接続プラグを備える上記軟性内視鏡と、上記受入口を介して接続可能である。
【0015】
さらなる実施形態では、本発明の中継器装置は、上記接続プラグにおける上記ライトガイドの上記第1の接続端子の先端部と上記イメージガイドの上記第2の接続端子の先端部との間に段差が設けられている上記軟性内視鏡と、上記受入口を介して接続可能である。
【0016】
さらなる実施形態では、上記接続プラグにおける上記イメージガイドの上記第2の接続端子の先端部が上記ライトガイドの上記第1の接続端子の先端部よりも突出するように段差が設けられている前記軟性内視鏡と、前記受入口を介して接続可能とするように、上記受入口に対して、上記光供給部および上記光源が、上記鏡筒部および上記カメラ機構よりも近傍に配置されている。
【0017】
1つの実施形態では、上記接続プラグに設けられたフランジを付勢して、該接続プラグを上記受入口に導入しかつ固定するための、ロック機構を備える。
【0018】
1つの実施形態では、上記鏡筒部の外周の少なくとも一部はジンバル部が包囲されている。
【0019】
1つの実施形態では、上記軟性内視鏡は血管内視鏡である。
【0020】
本発明はまた、内視鏡システムであって、
ライトガイドとイメージガイドとを備える軟性内視鏡であって、該ライトガイドから延びる第1の接続端子、および該イメージガイドから延びる第2の接続端子を備える、軟性内視鏡;
上記中継器装置であって、上記光供給部が、上記受入口を介して該軟性内視鏡の該第1の接続端子と接続され、かつ上記鏡筒部が、該受入口を介して該軟性内視鏡の該第2の接続端子と接続される、中継器装置;ならびに
該中継器装置とケーブルを介して接続されたコンソールであって、該中継器装置の上記カメラ機構から得られた画像情報が該ケーブルを介して伝送される、コンソール;
を備える、システムである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ライトガイドおよびイメージガイドを備える軟性内視鏡を、接続不良のリスクを低減して簡便に取り付けかつ取り外すことができる。さらに、本発明によれば、軟性内視鏡の2つのガイドに対する受入れ誤差を解消するための機構を軟性内視鏡側に設ける必要がなく、より単純な構造の軟性内視鏡を接続することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の中継器装置の一例を模式的に示す図である。
図1の(a)に示す、本発明の中継器装置100は、ハウジング102、およびハウジング102の側面に設けられたグリップ104,104’を備える。本発明の1つの実施形態では、ハウジング102の上面には、4つの操作ボタン106、108、110、112が設けられている。操作ボタン106、108、110、112は、中継器装置100と接続された医療用コンソール(図示せず;以下、「コンソール」と省略することがある)に設けられた画像記録機能を制御するための録画ボタンおよび停止ボタン、および軟性内視鏡の遠位先端部における光の照度の増減を調節するためのボタンである。さらに、
図1の(a)に示す中継器装置では、操作ボタン106、108、110、112が配置された場所の略中央およびハウジング102の側面において、後述するジンバル部の調整のための調整ネジがそれぞれ配置された孔114、116が設けられている。
【0025】
本発明の中継器装置100の正面側には、
図1の(b)に示すように、軟性内視鏡のライトガイドから延びる第1の接続端子およびイメージガイドから延びる第2の接続端子をそれぞれ受け入れるための受入口101が設けられている。さらに、受入口101には、当該第1の接続端子を受入れるための第1のポート103と、当該第2の接続端子を受け入れるための第2のポート105が配置されている。本発明の中継器装置100では、
図1の(b)に示すように、第1のポート103と第2のポート105とは、中継器装置100に対して好ましくは略水平方向に並んで設けられている。
【0026】
一方、本発明の中継器装置100の背面側には、
図1の(c)に示すように、軟性内視鏡から得られた画像情報を中継器装置100からコンソールに伝送するための、ケーブルを接続するためのポート114が設けられている。
【0027】
次に、本発明の中継器装置の内部構造について説明する前に、当該中継器装置に接続され得る軟性内視鏡について説明する。
【0028】
図2は、本発明の中継器装置に接続され得る軟性内視鏡400の模式図である。
【0029】
軟性内視鏡400は、内視鏡カテーテル部分402と接続プラグ404とを備える。内視鏡カテーテル部分402は可撓性を有する細長いシャフト部材で構成されており、その内部には複数の照明用ファイバーから構成されるライトガイド(図示せず)と、遠位先端部にて得られた画像情報を医師側に伝送するための複数の画像伝送用ファイバーから構成されるイメージガイド(図示せず)とを備える。
【0030】
ここで、本明細書にて用いられる用語「遠位」とは、内視鏡のような器具および装置の位置を表す用語であって、当該器具または装置を医師が使用する際に、当該器具または装置のうち、操作者に遠い側の部分を指し、そして用語「近位」とは、器具および装置の位置を表す用語であって、当該器具または装置を医師が使用する際に、当該器具または装置のうち、医師に近い側の部分を指して言う。
【0031】
内視鏡カテーテル部分402の長さは特に限定されないが、好ましくは、1000mm〜2500mm、より好ましくは1200mm〜2300mmであるように設計されている。これに対し、内視鏡カテーテル部分402の長さの平均外径は、好ましくは0.3mm〜3mmであり、より好ましくは0.5mm〜2mmである。
【0032】
さらに、
図2において、内視鏡カテーテル部分402のライトガイドは、接続プラグ404内の第1の接続端子406と連絡しており、イメージガイドは、接続プラグ404内の第2の接続端子408と連絡している。なお、本発明の中継器装置に対して使用される軟性内視鏡400では、接続プラグ404によって、ライトガイドの第1の接続端子406とイメージガイドの第2の接続端子408とが略平行になるように配置されていることが好ましい。
【0033】
このような軟性内視鏡の例としては、血管内視鏡、尿管鏡、および卵管鏡が挙げられる。本発明においては、軟性内視鏡は血管内視鏡であることが好ましい。
【0034】
図3は、
図2に示す軟性内視鏡の接続プラグ404の拡大図であって、(a)は接続プラグ404の平面図であり、そして(b)は接続プラグ404の上面図である。なお、
図3の(a)および(b)では、軟性内視鏡の内視鏡カテーテル部分の記載が省略されている。
【0035】
図3の(a)に示すように、本発明においては、接続プラグ404に設けられる(ライトガイドから延びる)第1の接続端子406の先端部410と、(イメージガイドから延びる)第2の接続端子408の先端部412との間には、所定の段差t
1が設けられていることが好ましい。このような段差t
1によって、後述する本発明の中継器装置内部の構成部品間の配置が決定される。段差t
1の長さ(mm)自体は必ずしも限定されないが、
図3に示す実施形態では、第2の接続端子408の基端部411と、第1の接続端子406の先端部410との間に段差t
2を生じ、当該段差t
2がt
2>0の関係式を満たす(すなわち、第2の接続端子408の基端部が第1の接続端子406の先端部410よりも近位側に位置する)ような長さ(mm)を有するように設計されていることが好ましい。このような段差t
2を有していることにより、本発明の中継器装置の受入口に設けられた第1のポートおよび第2のポートに対し、第1の接続端子406および第2の接続端子408が互いに誤って挿入されたとしても、接続プラグ404が本発明の中央器装置の内部まで充分に入らないため、簡単に誤接続に気付くことが可能となる。
【0036】
軟性内視鏡の接続プラグ404はまた、
図3の(b)に示すように、ライトガイドの第1の接続端子406とイメージガイドの第2の接続端子408との配置方向に直交する方向にフランジ414を備えることが好ましい。後述する本発明の中継器装置に設けられ得るロック機構と係合して中継器装置から接続プラグ404の着脱を一層容易にすることができるからである。
【0037】
図4は、本発明の中継器装置100に、
図3に示す軟性内視鏡の接続プラグ404を接続した状態を説明する図であり、(a)は、接続プラグ404を接続した中継器装置100の正面図であり、そして(b)は、当該(a)のA−A方向断面図である。なお、
図4の(a)および(b)では、軟性内視鏡の内視鏡カテーテル部分の記載が省略されている。
【0038】
図4の(b)に示すように、本発明の中継器装置100は、光源121、光供給部122、鏡筒部142、カメラ機構144を備える。
【0039】
光源121は、例えばLEDなどの発光素子であり、光供給部122内に光照射する。本発明において、光源121は光供給部122に対して間隔を設けることなく直接固定されていることが好ましい。
【0040】
光供給部122は、受入口101の第1のポート103を介して、軟性内視鏡のライトガイドから延びる第1の接続端子406と接続される中空部分を有する部材であり、光源121から得られた光を接続プラグ404の第1の接続端子406からライドガイドに導く役割を果たす。光供給部122の中空部分の長さは、第1の接続端子406と略同じ長さまたはそれ以下の長さとなるように設計されていることが好ましい。あるいは、本発明においては、光供給部122の中空部分の長さは、仮に光供給部122の中空部分が第1の接続端子406よりも長い場合であっても、それらの長さの差異ができる限り少なくなるように設計されていることがさらに好ましい。
【0041】
光供給部122の中空部分が第1の接続端子406よりも長くなるように設計されている場合、第1の接続端子406が光供給部122に挿入されると、第1の接続端子406の先端部と光供給部122の後方(上流)に設けられた光源121との間にエアギャップ(間隔)が生じることになる。このようなエアギャップの存在は、光源121からの光を第1の接続端子406に伝える際の光量を低下させるため、最終的に軟性内視鏡の遠位端先端部における光量を低下して、当該遠位端先端部から得られる画像を暗くする等の問題を導くおそれがある。したがって、本発明では、第1の接続端子406が光供給部122の中空部分に完全に挿入された際、第1の接続端子406の先端部が光源122と略当接することによって当該エアギャップが生じることのないよう、光供給部122の中空部分が設計されていることが好ましい。
【0042】
鏡筒部142は、受入口101の第2のポート105を介して、軟性内視鏡のイメージガイドから延びる第2の接続端子408と接続される中空部分を有する部材であり、好ましくは円筒形を有する。鏡筒部142は、軟性内視鏡のイメージガイドを通じて接続プラグ404の第2の接続端子408から得られた画像をカメラ機構144に伝送する役割を果たす。鏡筒部142の中空部分の長さは、必ずしも限定されないが、例えば、第2の接続端子408と同じ長さまたはそれ以上の長さとなるように設計されている。ここで、本発明の中継器装置100では、光供給部122の軸心と鏡筒部142の軸心とが互いに略平行となるように配置されていることが好ましい。本発明のさらなる実施形態では、光供給部122の軸心と鏡筒部142の軸心とは互いに水平かつ略平行となるように配置されていてもよい。
【0043】
カメラ機構144は、鏡筒部142の後方(下流)にて、好ましくは所定の間隔をおいて設けられている。本発明の1つの実施形態では、カメラ機構144に伝送された画像は、レンズ146を通じて内部に配置された画像センサ(例えば、CMOSイメージセンサ、CCDイメージセンサ)に導かれ、当該画像センサにて当該技術分野において周知の方法によりデジタル情報に変換される。変換されたデジタル情報は、本発明の中継器装置100の背面に接続されたケーブル(図示せず)を通じてコンソールまで伝送される。
【0044】
なお、本発明の中継器装置100では、
図4の(b)に示すように、鏡筒部142およびカメラ機構144に対して、光供給部122および光源121が前方(受入口101側)に配置されていることが好ましい。例えば、鏡筒部142、カメラ機構144、光供給部122および光源121がこのような関係を満たすように配置されることで、中継器装置100の幅方向の長さが抑制され、医師がより把持し易い外形を構成することができるからである。また、このような配置によって、軟性内視鏡の接続プラグ404内の第1の接続端子406と第2の接続端子408との間隔を狭めることが可能ともなる。
【0045】
図5は、
図1に示す本発明の中継器装置100からハウジング102を取り外した構造体200を説明するための図であり、(a)は、当該構造体の200の正面図であり、(b)は当該構造体200の側面図であり、そして(c)は、当該(a)のB−B方向断面図である。
【0046】
図5の(c)に示すように、本発明の中継器装置を構成する構造体200において、光供給部122は、フレーム部148に固定された弾性部材150を介して固定されている。言い換えれば、本発明の中継器装置100では、軟性内視鏡の接続プラグ404が挿入されていない状態、あるいは第1の接続端子406が未接続の状態において、光供給部122は弾性部材150とのみ接触して中継器装置のフレーム148内に固定されている。これにより、光供給部122は、周辺の部材に対し、弾性部材150を介して一種の浮揚した状態(フローティング構造)を形成するようになる。本発明の中継器装置において、光供給部122が、このようなフローティング構造を有していることにより、軟性内視鏡の接続プラグが中継器装置内に挿入される際、弾性部材150の「たわみ」によって中継器装置の任意の方向(すなわち、水平方向(X−Y方向)、鉛直方向(Z方向)およびそれらの組合せの方向)に対する、ライトガイドから延びる第1の接続端子とイメージガイドから延びる第2の接続端子との間の受入れ誤差を吸収することができる。
【0047】
さらに、本発明においては、上記弾性部材150を介して光供給部122が固定された「フローティング構造」を有する結果、光供給部122の後方(上流)に配置される光源121を、弾性部材150を構成する材料の「たわみ」(すなわち、弾性力)を考慮して、僅かな距離をもって光供給部122が位置する側(すなわち、前方または下流側)に配置することが好ましい。この「僅かな距離」とは、例えば、
図4の(b)に示す本発明の中継器装置100において、軟性内視鏡の接続プラグ404が受入口101に挿入され、当該接続プラグ404の第1の接続端子406が光供給部122の中空部分内を通って光源121と当接する際の当該中継器装置100における光源121の位置を基準にして、前方(下流)側に相当する距離である。当該「僅かな距離」は、例えば弾性部材150としてウレタンゴムまたはシリコンゴムが使用される場合、好ましくは0.3mm〜1mmである。
【0048】
このような「僅かな距離」をもって光供給部122側の前方(下流)に配置することが好ましい理由は、例えば、以下のように説明することができる。
【0049】
例えば、従来の光供給部が弾性部材で包囲されていない場合では、軟性内視鏡のライトガイドから延びる接続端子が光源と当接して最大の光量を得るために、接続を行う者(例えば、医師)は自らの感覚で接続端子の挿入程度を調節しなければならず、この調節が高度かつ重要な「技能」の1つとなっていた。
【0050】
これに対し、本発明では、再び
図5の(c)に示すように、光供給部122が弾性部材150を介して固定された「フローティング構造」を有するために、例えば、
図4の(b)に示すような接続プラグ404の第1の接続端子406が光供給部122の中空部分を通る際、光供給部122は、第1の接続端子406の挿入方向(例えば、
図4の(c)における受入口101から光源121の方向)に力が付与される。このとき、第1の接続端子406に加えられた力の少なくとも一部が、
図5の(c)に示す光供給部122を包囲する弾性部材150によって吸収されるので、光供給部122自体は僅かな距離だけ当該第1の接続端子406の挿入方向に移動する。次いで、光供給部122に固定された光源121もまた、当該僅かな距離に相当する距離だけ同様の方向に移動して、第1の接続端子406の先端部が光源121に対して激しく衝突することが回避される。その結果、第1の接続端子406の先端部は光源121に対して「マイルド」かつ「確実」な当接が可能となるとともに、衝突によって光源121が破損する危険も回避することができる。また、当該当接自体を簡便に達成することができるため、接続を行う者が上述したような高度かつ重要な「技能」を有する必要性も排除され得る。
【0051】
さらに、本発明においては、上記「マイルド」かつ「確実」な当接が簡便に達成されることにより、軟性内視鏡のライトガイドに対し、より大きな光量で光を提供することができる。その結果、軟性内視鏡自体を小径化することも可能となる。
【0052】
本発明において、上記弾性部材150を構成する部材としては、ゴム材、熱可塑性エラストマー材、熱可塑性エラストマー材、スプリング、または板バネが挙げられる。弾性部材150を構成する部材の好ましい例としては、シリコンゴム、およびウレタンゴムが挙げられる。なお、本発明においては、弾性部材150のみを介した光供給部122の固定は、上記フローティング構造を達成することができる限り、
図5の(c)に記載したような実施形態に限定されるものではない。
【0053】
図6は、本発明の中継器装置100に、
図3に示す軟性内視鏡の接続プラグ404を接続した状態を説明するための図であり、(a)は、接続プラグ404を接続した中継器装置100の正面図であり、そして(b)は、当該(a)のC−C方向断面図である。
【0054】
本発明の中継器装置100において、鏡筒部142は、その外周面の少なくとも一部がジンバル部160で包囲されている。ジンバル部160は、金属(例えば、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼)または樹脂(例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂)製の板状の部材である。
【0055】
図7は、本発明の中継器装置100に、
図3に示す軟性内視鏡の接続プラグ404を接続した状態を説明するための図であり、(a)は、接続プラグ404を接続した中継器装置100の側面図であり、(b)は、当該(a)のD−D方向断面図であり、そして(c)は当該(b)において円で囲まれた部分の部分拡大図である。なお、
図7の(a)では、軟性内視鏡の内視鏡カテーテル部分の記載が省略されている。
【0056】
図7の(b)において、ジンバル部160に対し、鏡筒部142がジンバル部160を厚さ方向に直交して貫通するように配置されている。そして、この鏡筒部142が貫通した部分を中心として、当該部分を不連続に囲むように、複数のスリット162が設けられている。本発明においてジンバル部160における、1つのスリット162とその内部または外部に配置されたスリットとの間に設けられた梁の間隔は、ジンバル部160に使用する材質や厚みによって変動するため必ずしも限定されない。例えば、ジンバル部160がアルミニウムまたはチタンのような金属で構成される場合、当該梁の間隔は好ましくは1mm〜2mmである。あるいは、ジンバル部160が樹脂で構成される場合、当該梁の間隔は上記金属の場合よりも大きく設定されることが好ましく、より好ましくは2mm〜4mmである。
【0057】
さらに、ジンバル部160には、鉛直方向および水平方向のそれぞれの方向に対して、調整ネジ164、166が配置されており、調整ネジ164、166のそれぞれの先端部が鏡筒部142に指向している。
図7の(c)に示すように、調整ネジ164、166の各先端部にはボス172、174が配置されており、ボス172、174は、ジンバル部160の中央に位置し、かつ当該ジンバル部160と一体となって、または当該ジンバル部160から独立して設けられた剛体部175内に埋め込まれている。なお、これら調整ネジ164、166は、上記
図1に記載した孔114、116を通じてねじ込みの調整を行うことができる。
【0058】
本発明の中継器装置100は、鏡筒部142の外周面の少なくとも一部が、上記構成のジンバル部160に包囲されていることにより、鏡筒部142の軸心を任意に微調整することができる。具体的には、上記
図1に記載した孔114、116を通じて、
図7の(b)または(c)に示す調整ネジ164、166のねじ込みの程度を調整することにより、ジンバル部160の剛体部175内に埋め込まれたボス172、174がそれぞれ剛体部175と当接し、鏡筒部142を中継器装置の高さ方向(鉛直方向)および幅方向(水平方向)の所望の方向に移動させることができる。その結果、鏡筒部142の軸心も移動するため、鏡筒部142の後方(下流)に設けられたカメラ機構に対する軸合わせを任意の段階で行うことができる。このようなカメラ機構に対する鏡筒部の軸合わせは、例えば、中継器装置のメンテナンスを一層簡便なものにする。
【0059】
本発明の中継器装置100はまた、軟性内視鏡の接続プラグ404の着脱を容易にするためのロック機構を備える。
【0060】
図8は、本発明の中継器装置100に設けられたロック機構を説明するための図であって、(a)は
図3に示す軟性内視鏡の接続プラグ404を中継器装置100の受入口101に挿入してロックされる前の状態を説明するための当該中継器装置の水平方向における断面図であり、そして(b)は当該接続プラグ404を中継器装置100の受入口101に挿入してロックされた後の状態を説明するための当該中継器装置の水平方向における断面図である。なお、
図8の(a)および(b)では、軟性内視鏡の内視鏡カテーテル部分の記載が省略されている。
【0061】
図8の(a)に示すように、本発明の中継器装置100は、受入口101側にロック機構として作用するロック用カム180が設けられている。ロック用カム180は、ハウジング102の外に突出するレバー182と、レバー182と対向して設けられている第1フック部184と、レバー182に対して略垂直な方向に指向し、かつ接続プラグ404を挿入する前の状態ではハウジング102の外に突出する第2フック部186から構成されており、カムシャフト188を中心にして回転可能である。
【0062】
軟性内視鏡の接続プラグ404が中継器装置100の受入口101に挿入される際、まず、接続プラグ404が
図8の(a)に示す位置に配置される。その後、レバー182を接続プラグ404側に回転させることにより、接続プラグ404に設けられたフランジ414が、ロック用カム180の第1フック部184を押し当てる。これにより、第1フック部184はカムシャフト188周りに回転する。また、このレバー182の回転によって、第3フック部185が、付勢されていたラッチ式板バネ187を乗り越えて回転し、当該ラッチ式板バネ187によって第3フック部185の逆方向の回転を阻害するように付勢する。さらに、レバー182の回転を継続すると、
図8の(b)に示すように、第2フック部186が接続プラグ404のフランジ414を後方から押し当てて、接続プラグ404を受入口101にさらに押し込むことができる。このとき、ラッチ式板バネ187は、第1フック部184の逆方向の回転を阻害するように、第1フック部184を付勢する。このように、ロック用カム180のレバー182の操作を行うことによって、接続プラグ404に設けられたフランジ414を付勢して、軟性内視鏡の接続プラグ404を、受入口101に導入かつ固定することができ、その後受入口101を介して中継器装置100に簡便に取り付けることができる。
【0063】
一方、接続プラグ404を中継器装置100から取り外す場合は、
図8の(b)に示す状態から、レバー182を接続プラグ404から離れる方向に回転(すなわち、上記と反対の方向に逆回転)させる。また、このレバー182の逆回転によって、第3フック部185が、付勢されていたラッチ式板バネ187を乗り越えて逆回転し、当該ラッチ式板バネ187によって第3フック部185の回転を促すように付勢する。これにより、接続プラグ404のフランジ414への第2フック部186の当接が解除され、第1フック部184がフランジ414の前方から押し当てられ、接続プラグ404は中継器装置100から離れる方向に付勢される。このように、レバー182について取付の場合と反対の操作を行うことによって、軟性内視鏡の接続プラグ404を中継器装置100から簡便に取り外すことができる。
【0064】
本発明の中継器装置100は、上記のようなロック用カム180を備えることにより、軟性内視鏡の接続プラグ404との接続のための特別な技能が一層不要となる。これにより、軟性内視鏡のライトガイドから延びる接続端子と光源との当接が一層容易となり、より大きな光量を確保することができる。
【0065】
図9に示すように、本発明の中継器装置100は、例えば、上記のように軟性内視鏡400と接続されるとともに、医療用コンソール500ともケーブル520を介して接続される。このようにして、内視鏡システム600が構築される。
【0066】
本発明において、内視鏡システム600は、医師が軟性内視鏡400の内視鏡カテーテル部分402を、例えば患者の血管内を通じて所望の位置にまで移動させ、中継器装置100を用いて内視鏡カテーテル部分402の遠位先端部から得られた患部の画像を医療用コンソール500のディスプレイ540に表示することができる。この際、医師は、中継器装置100に設けられた操作ボタンを通じて、ディスプレイに表示された画像の拡大および縮小、ならびに画像の録画またはその停止を医療用コンソールに指示することが可能となる。
【0067】
なお、上記では、中継器装置100と医療用コンソール500とがケーブル520を介して接続される例について説明したが、本発明はこのような実施形態にのみ限定されるものではない。本発明は、例えば、上記ケーブル520を介することなく、上記中継器装置100に含まれる部材がコンソール内に直接組み込まれ、全体として1つのコンソール装置を構成されているものであってもよい。このようなコンソール装置もまた、本発明の1つの実施形態として中継器装置に包含される。この場合、軟性内視鏡の接続プラグは、コンソール装置内に設けられた上記中継器装置100と同様の受入口を介して、当該コンソール装置と接続される。
【課題】 ライトガイドおよびイメージガイドを備える軟性内視鏡に対して、これら2つのガイドの受入れ誤差を解消し、当該2つのガイドによる接続不良のリスクを低減し得る、軟性内視鏡と接続可能な中継器装置、およびそれを用いた内視鏡システムを提供すること。
【解決手段】 軟性内視鏡と接続可能な中継器装置、およびそれを用いた内視鏡システムを開示する。本発明の中継器装置は、ライトガイドとイメージガイドとを備える軟性内視鏡と受入口を介して接続可能であり、該軟性内視鏡の該ライトガイドから延びる第1の接続端子と該受入口を介して接続可能な、光供給部;該光供給部から該ライトガイドに光照射する光源;該軟性内視鏡の該イメージガイドから延びる第2の接続端子と該受入口を介して接続可能な、鏡筒部;該イメージガイドから該鏡筒部に伝送された画像を受容するカメラ機構;を備え、該光供給部が弾性部材を介して固定されている。