(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一方向にテープまたはシート状に配列した複数の強化繊維と同方向にテープまたはシート状に配列した複数の熱可塑性繊維とが積層されて形成されたテープまたはシート状の繊維基材であって、前記繊維基材の繊維配列方向に垂直方向の断面における少なくとも前記積層界面において、前記強化繊維の単繊維と前記熱可塑性繊維の単繊維の断面が混合して分布しており、前記熱可塑性繊維の少なくとも一部の断面が前記強化繊維の断面と断面との間を融着しており、前記熱可塑性繊維が繊維形態をとどめた状態で部分溶融していることを特徴とする、前記強化繊維と前記熱可塑性繊維とが一方向に配列した繊維基材テープまたはシート。
前記の一方向にテープまたはシート状に配列した複数の強化繊維の片面または両面に前記の同方向にテープまたはシート状に配列された複数の熱可塑性繊維が積層されている請求項1に記載の繊維基材テープまたはシート。
前記の一方向にテープまたはシート状に配列した複数の強化繊維と同方向にテープまたはシート状に配列した複数の熱可塑性繊維との積層が一段または多段である請求項1または2に記載の繊維基材テープまたはシート。
前記の一方向にテープまたはシート状に配列した複数の強化繊維と前記の同方向にテープまたはシート状に配列した複数の熱可塑性繊維とに、さらにバインダーが加えられて前記バインダーによる繊維間の接合が形成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の繊維基材テープまたはシート。
前記熱可塑性繊維が、ポリエーテルイミド系繊維、ポリエーテルエーテルケトン系繊維、ポリエーテルケトンケトン系繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリスルフォン繊維、熱可塑性ポリイミド系繊維、ポリカーボネート系繊維および半芳香族ポリアミド系繊維からなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1〜5のいずれか1項に記載の繊維基材テープまたはシート。
前記強化繊維が、炭素繊維、ガラス繊維、全芳香族ポリエステル繊維、アラミド繊維、セラミック繊維およびメタル繊維からなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1〜6のいずれか1項に記載の繊維基材テープまたはシート。
一方向に引き揃えられ、幅方向に拡げられた強化繊維の連続繊維束と同方向に引き揃えられ、幅方向に拡げられた熱可塑性繊維の連続繊維束を、積層して一体化し、ついで、加熱・加圧装置を通過させて、前記熱可塑性繊維の少なくとも一部を軟化させながら前記強化繊維の繊維間を接合して、テープまたはシート状の繊維基材を製造することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の繊維基材テープまたはシートの製造方法。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維やガラス繊維等の強化繊維とマトリックス樹脂からなる繊維強化複合材料は、軽量であり、且つ比強度、比剛性に優れていることから、電気・電子分野、土木・建築、航空機・自動車・鉄道・船舶分野等において広く用いられている。特に、土木分野や輸送機器分野における主要な構造部材として用いられる場合には、材料には極めて優れた力学特性や、高温下使用に耐えうる耐熱性、耐久性、難燃性等が求められる。
【0003】
こうした部材で用いられる繊維強化複合材料としては、高い力学物性を発揮するために、一般的に強化繊維として炭素繊維等の連続繊維を用いることが知られている。特に、一方向における力学物性が要求される場合には、強化繊維の強力利用率が高いことから、強化繊維が一方向に引き揃えられた材料を用いる場合がある。このような強化繊維が引き揃えられた材料のマトリックスとしてなる樹脂は、エポキシ樹脂やフェノール樹脂のような熱硬化性樹脂が用いられることが知られており、既に航空機分野等においても広く使用されている。
【0004】
熱硬化性樹脂をマトリックスとする繊維強化複合材料は、硬化前の熱硬化樹脂の粘度が低く、強化繊維への含浸性が良好であることから、優れた力学物性を発揮する。一方で、成形において硬化工程が必要であり、該工程は長時間を要することから量産性や成形コスト面での問題がある。
【0005】
そこで近年注目を集めるのは、熱可塑性樹脂をマトリックスとする繊維強化複合材料であり、これら材料は短い成形サイクルを可能とし、ハイサイクル生産の実現、つまりは単位時間当たりの生産性を高めることができることから、従来問題となっていた成形コストの問題を解決できる可能性がある。又、熱可塑性樹脂複合材料は、リサイクル性、リペア性にも優れ、環境面にも配慮した材料として幅広い分野において用いることが可能である。更には、熱可塑性樹脂が本来持つ高靭性の特性を活かし、損傷許容量を高めることができることから航空機の構造部材としても期待できる。
【0006】
熱可塑性樹脂複合材料用の繊維基材テープまたはシートを製造する方法としては、(1)強化繊維束、或いは織物、編み物等のシート状物へ熱可塑性樹脂からなるフィルム成形物を重ね合わせ、加熱・加圧を施す方法(例えば、特許文献1及び2)、(2)同じく強化繊維シート状物へ熱可塑性樹脂の粉体(パウダー状物)を塗布し、これを加熱・加圧を施す方法(例えば、特許文献3及び4)、(3)更にもう1つは強化繊維シート状物へ熱可塑性樹脂を溶解させた溶剤を含浸させ、該溶剤を揮発させることにより熱可塑性樹脂を強化繊維シート状物へ担持させる方法(例えば、特許文献5)が知られている。さらに、(4)強化繊維に組み合わせる熱可塑性樹脂成分として、熱可塑性繊維を用いる方法が提案されている(特許文献6)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記(1)のフィルム成形物を重ね合わせる方法においては、十分に樹脂が含浸できていないことから、得られる複合材料の力学物性は不十分なものに留まる。フィルム成形物の使用に当たっては、通常フィルム成形物は厚みを調整するために、延伸されていることが一般的であり、加熱成形時においてフィルム成形物が収縮するとの問題点がある。とくに、熱可塑性樹脂は溶融粘度が高いため、含浸する強化繊維シート状物の強化繊維が高度に引き揃えられている場合においては、強化繊維間に樹脂が流動する隙間が少ないことから、十分に樹脂を含浸できないとの問題点がある。
【0009】
前記(2)の方法、熱可塑性樹脂の粉体(パウダー状物)を強化繊維シート状物上へまぶす手法においては、パウダー状物を均一にまぶすことが難しく、又材料パウダーの粒径を揃えることも難しいことから、強化繊維シート状物へ熱可塑性樹脂を均一に付着させることが難しいとの問題点がある。
【0010】
前記(3)の方法、熱可塑性樹脂を溶解させた溶剤を用いて強化繊維シート状物へ含浸する手法は、強化繊維シート状物へ高比率で樹脂を含浸させることは難しい他、十分な含浸を行うためには含浸工程と溶剤を乾燥させる工程を繰り返す必要があり、取扱い性が悪いとの問題がある。更に、主に有機溶剤を用いることから、成形前には十分に溶剤を乾燥除去させることが必要であり、溶剤除去が不十分な場合には加熱成形時に溶剤が揮発する結果となり、成形体の中での発泡それに伴う物性低下、或いは揮発した溶剤を体内へ吸引する等の人体への影響も懸念される。
【0011】
前記(4)の方法では、熱可塑性樹脂繊維は、強化繊維基材の繊維束層と繊維束層とを接着して、強化繊維基材の形態を保持するために用いられており、成形材料の形成は別途添加しているマトリックス樹脂粉末の含浸によって行っており、このため、前記(2)の方法における問題点の解決には至っていない。
【0012】
本発明の目的は、上述の先行技術の問題点を解消するために、繊維強化熱可塑性樹脂複合材料を形成するために用いられる、一方向に配列した強化繊維からなり、強化繊維間に熱可塑性樹脂が充分に含浸されるとともに、強化繊維間の接合が均一に行われた繊維基材テープまたはシートを提供することであり、その製造方法を、溶剤除去のようなプロセスに依存することなく提供することである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、上記の新規な繊維基材テープまたはシートを用いて、優れた力学物性と耐熱性、難燃性、寸法安定性を兼ね備えた繊維強化熱可塑性樹脂複合材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、一方向にテープまたはシート状に配列した複数の強化繊維と同方向にテープまたはシート状に配列した複数の熱可塑性繊維とを積層して、加熱・加圧を行うことにより、熱可塑性繊維が軟化して強化繊維間に接合が形成されることにより、熱可塑性繊維が均一に含有されるとともに強化繊維間が均一に接合された繊維基材テープまたはシートが得られることを見出し、上記の目的が達成されることを見出した。
【0015】
本発明第1の構成は、一方向にテープまたはシート状に配列した複数の強化繊維と同方向にテープまたはシート状に配列した複数の熱可塑性繊維とが積層されて形成されたテープまたはシート状の繊維基材であって、前記繊維基材の繊維配列方向に垂直方向の断面における少なくとも前記積層界面において、前記強化繊維の単繊維と前記熱可塑性繊維の単繊維の断面が混合して分布しており、前記熱可塑性繊維の少なくとも一部の断面が前記強化繊維の断面と断面との間を融着していることを特徴とする、前記強化繊維と前記熱可塑性繊維とが一方向に配列した繊維基材テープまたはシートである。
【0016】
前記の繊維基材テープまたはシートにおいて、前記の一方向にテープまたはシート状に配列した複数の強化繊維の片面または両面に前記の同方向にテープまたはシート状に配列された複数の熱可塑性繊維が積層されていることが好ましい。
【0017】
前記の繊維基材テープまたはシートにおいて、前記の一方向にテープまたはシート状に配列した複数の強化繊維と同方向にテープまたはシート状に配列した複数の熱可塑性繊維とが一段または多段に積層されていることが好ましい。
【0018】
上記の繊維基材テープまたはシートは、以下の条件を全て満たすことが好ましい。
(1)前記繊維基材の全繊維重量に対して、前記強化繊維の割合が10重量%〜90重量%である。
(2)前記繊維基材を構成する前記熱可塑性繊維の単繊維の繊度が0.5〜10dtexであり、フィラメント数が10〜
24000本である。
(3)前記テープまたはシートの幅が0.1〜50mmであり、厚みが0.1〜10mmである。
【0019】
前記の一方向にテープまたはシート状に配列した複数の強化繊維と前記の同方向にテープまたはシート状に配列した複数の熱可塑性繊維とに、さらにバインダーが加えられて前記バインダーによる繊維間の接合が形成されている、繊維基材テープまたはシートであることが好ましい。
【0020】
前記熱可塑性繊維が、ポリエーテルイミド系繊維、ポリエーテルエーテルケトン系繊維、ポリエーテルケトンケトン系繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリスルフォン繊維、熱可塑性ポリイミド系繊維、ポリカーボネート系繊維および半芳香族ポリアミド系繊維からなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
【0021】
前記強化繊維が、炭素繊維、ガラス繊維、全芳香族ポリエステル繊維、アラミド繊維、セラミック繊維およびメタル繊維からなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
【0022】
本発明第2の構成は、一方向に引き揃えられ、幅方向に拡げられた強化繊維の連続繊維束と同方向に引き揃えられ、幅方向に拡げられた熱可塑性繊維の連続繊維束を、積層して一体化し、ついで、加熱・加圧装置を通過させて、前記熱可塑性繊維の少なくとも一部を軟化させながら前記強化繊維の繊維間を接合して、テープまたはシート状の繊維基材を製造することを特徴とする、前記強化繊維と前記熱可塑性繊維とが一方向に配列した繊維基材テープまたはシートの製造方法である。
【0023】
上記の方法において、前記加熱・加圧装置が、プレスローラであることが好ましい。
【0024】
本発明第3の構成は、前記の繊維基材テープまたはシートを織製または編製して形成された布帛であり、織製された布帛は、繊維基材テープまたはシートを経糸および/または緯糸として用いて織製されていてよい。
【0025】
本発明第4の構成は、前記繊維基材テープまたはシートを加熱成形してなる繊維強化熱可塑性樹脂複合材料である。
【発明の効果】
【0026】
本発明第1の構成により得られる、強化繊維と熱可塑性繊維とが一方向に配列した繊維基材テープまたはシートを用いて熱可塑性樹脂複合材料を形成すると、一方向に配列した強化繊維層中に、熱可塑性樹脂が十分かつ均一に含浸された繊維強化熱可塑性樹脂複合材料を得ることができるという利点がある。
【0027】
本発明第2の構成によれば、一方向に配列した強化繊維束を幅方向にテープ状またはシート状に拡げながら、同時に、別途、一方向に配列した熱可塑性繊維束を幅方向にテープ状またはシート状に拡げながら、両方のテープまたはシート状物を積層しながら、加熱・加圧手段により加熱・加圧処理することにより、熱可塑性繊維を軟化させて強化繊維間を接合することにより繊維基材テープまたはシートを製造することができるので、基本的な製造方式としては、強化繊維間の接合のためのプロセスに溶媒の使用を必要とせず、したがって、従来技術におけるような環境上、作業員の健康上の負担を軽減することができる。
【0028】
本発明第3の構成によれば、上記の本発明第1の構成に係る強化繊維と熱可塑性繊維とが一方向に配列した繊維基材テープまたはシートを経糸および/または緯糸として使用して織製する、あるいは繊維基材テープまたはシートを編製することにより形成される布帛は、一方向FRP用ではなく、織物、編物等を補強材とするFRP用として好適に用いられる。この場合も、強化繊維と熱可塑性繊維とが一方向に配列した繊維基材テープまたはシートから布帛が形成されるため、力学的性能などに優れた布帛補強熱可塑性樹脂複合材料が得られる。
【0029】
本発明第4の構成によれば、優れた力学物性と耐熱性、難燃性、寸法安定性を兼ね備え、特に一方向における高い力学物性と耐熱性、難燃性、寸法安定性が要求される用途に適した繊維強化熱可塑性樹脂複合材料を提供することが可能である。更に、本発明の繊維強化熱可塑性樹脂複合材料は、特別な成形方法を用いることなく、熱可塑性樹脂の強化繊維束への高い含浸性を達成し、その結果、高い力学物性を有する熱可塑性樹脂複合材料を工業的に効率良く、且つ経済的に製造することができる。更に、本発明の繊維強化熱可塑性樹脂複合材料は、その高い力学物性を活かし、一般産業資材分野、電気・電子分野、土木・建築分野等の幅広い分野において有効に用いることができ、特に航空機・自動車、鉄道・船舶等の輸送機器分野においては、その主要な構造を成す部材として有効に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(繊維基材テープまたはシートの構成)
本発明の繊維基材テープまたはシートは、(1)一方向にテープまたはシート状に配列した複数の強化繊維と同方向にテープまたはシート状に配列した複数の熱可塑性繊維とが積層されて形成され、(2)繊維基材の繊維配列方向に垂直方向の断面における少なくとも前記積層界面において、前記強化繊維の単繊維と前記熱可塑性繊維の単繊維の断面が混合して分布しており、前記熱可塑性繊維の少なくとも一部の断面が前記強化繊維の断面と断面との間を融着している。
本発明の繊維基材テープまたはシートを製造するための出発原料としては、一方向に配列した強化繊維束および熱可塑性繊維束が用いられるが、この強化繊維束および熱可塑性繊維束をテープ状またはシート状に幅を拡げながら、テープまたはシート状に拡げられた一方向配列強化繊維(A)と同様にテープまたはシート状に拡げられた同方向配列熱可塑性繊維
(B)とが積層される。積層は、それぞれ1層が積層されるA−B型、強化繊維または熱可塑性繊維のどちらか1層の両面に他層が形成されたA−B−A型、B−A−B型、これらの単位が重ねあわされた、A−B−A−B、A−B−A−B−A−B型など、要求性能に応じて積層数は適宜選択可能である。
テープまたはシート状強化繊維とテープまたはシート状熱可塑性繊維は、少なくとも積層界面においては、この二つの繊維の単繊維は入り乱れて存在しており、そして熱可塑性繊維の少なくとも一部が軟化して、強化繊維の単繊維間を融着しており、この融着により繊維基材シートまたはテープが形成されている。
本発明において、「少なくとも一部の断面」における「少なくとも一部」とは、本発明に係る繊維基材テープまたはシートを形成可能な程度に、強化繊維の断面と断面とが融着していることを意味する。
本発明において、「繊維基材」とは、強化繊維を単層または複層のテープ状またはシート状にした、繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の前駆体を意味する。
本発明において、テープとは、強化繊維束または熱可塑性繊維束が開繊拡幅されて、平行に引き揃えて面状に並べたものを意味し、その幅が250mm未満のものを言い、シートとは、その幅が250mm以上のものをいう。
【0031】
(熱可塑性繊維)
本発明で用いられる熱可塑性樹脂からなる繊維(熱可塑性繊維)は、加熱溶融或いは加熱流動するものであれば特に制限されることはないが、力学物性や耐熱性、難燃性、寸法安定性の観点から、ポリエーテルイミド系繊維、ポリエーテルエーテルケトン系繊維、ポリエーテルケトンケトン系繊維、ポリフェニレンサルファイド系繊維、ポリスルフォン系繊維、熱可塑性ポリイミド系繊維、ポリカーボネート系繊維、半芳香族ポリアミド系繊維が好適に用いられる。特に、本発明の熱可塑性樹脂複合材料を航空宇宙分野で用いるために、難燃性及び耐熱性に優れるという理由から、ポリエーテルイミド系繊維、ポリエーテルエーテルケトン系繊維、ポリエーテルケトンケトン系繊維、熱可塑性ポリイミド系繊維を用いることが好ましく、自動車分野で用いるために、耐熱性に優れるという理由から、半芳香族ポリアミド系繊維を用いることがより好ましい。特に、高い耐熱性、難燃性、寸法安定性が要求される航空宇宙、自動車、船舶等の輸送機器分野においては、前記性能に優れるポリエーテルイミド系繊維、ポリエーテルエーテルケトン系繊維、ポリエーテルケトンケトン系繊維、熱可塑性ポリイミド系繊維、半方向族ナイロン系繊維を好適に用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上の繊維を組み合わせて用いても良い。
また、異種または同種で特性の異なる熱可塑性樹脂の組合せからなる、芯鞘型やサイドバイサイド型の複合繊維も用いることができる。
【0032】
本発明で用いる熱可塑性繊維は、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、帯電防止剤、ラジカル抑制剤、艶消し剤、顔料、染料、紫外線吸収剤、相容化剤、難燃剤、無為物等を含んでいても良い。かかる無機物の具体例としては、黒鉛、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、ガラス、タルク、ゼオライト、マイカ、クレー、シリカ、ベンナイト、スメクタイト等に代表されるケイ酸塩、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化チタン、酸化鉄等の金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物等が用いられる。
【0033】
本発明で用いる熱可塑性繊維の製造方法は、特に制限されることはないが、公知の溶融紡糸装置を用いて製造することができる。すなわち、溶融押出し機で熱可塑性樹脂のペレットや粉体を溶融混練し、溶融樹脂を紡糸筒に導き、続いてギヤポンプで軽量し、紡糸ノズルから吐出させて糸条を巻取り機にて巻き取ることにより得られる。その際の引き取り速度は特に限定されるものではないが、500〜4000m/分の範囲で引き取ることが好ましい。500m/分未満にでは生産性の観点から好ましくなく、一方で4000m/分を超えるような高速での巻き取りは、繊維化が難しくなり、断糸が頻発するため生産性が低下し、更に得られる糸は紡糸線上での分子配向が進行するため、その後の熱成形時において高温に晒された際に繊維が大きく収縮することから好ましくない。
【0034】
本発明で用いられる熱可塑性繊維の製造においては、耐熱性樹脂成形体の製造工程での工程通過性や得られる成形体の寸法安定性を確保するために、延伸工程を施さないことが好ましい。従来の繊維製造工程で実施されるような延伸を施すと、加熱成形時に分子運動の増大に起因するエントロピー収縮が起こり、大きな収縮を伴うことになり、繊維基材を加熱成形する際の工程通過性を悪化させ、得られた成形体の外観不良や十分な力学物性が発現しない等の懸念がある。
【0035】
本発明で用いられる熱可塑性繊維に付与するサイズ剤は特に制限されることはないが、公知のサイズ剤を付与することができる。特に、紡糸工程、引き揃え糸作成工程に必要なサイズ剤を付与することができ、成形物となるまでにいくつかある各工程において、それらを洗浄により取り除き、新たに付与することもできる。
【0036】
本発明で用いられる熱可塑性繊維は、フィラメント形態のものを拡幅して用いられることが望ましく、その単繊維の平均繊度は、0.5〜10dtexが好ましい。平均繊度が細くなるほど、同重量下における繊維表面積が大きくなることから、加熱成形する際には熱可塑性繊維がより融解しやすい状態となる。又、繊維を拡幅する際にはより薄い引き揃えテープまたはシートを作成することができ、より薄い繊維基材、或いは複合材料の作成にも適している。一方で、単糸繊度が0.5dtex以下となる場合には、繊維製造や拡幅が難しくなる他、繊維同士が絡まること等から、取扱い性が低下することが懸念される。好ましくは、単繊維の平均繊度は、1.0〜5.0dtex、好ましくは、1.5〜4.0dtex、更に好ましくは、2.0〜3.0dtexである。
【0037】
更に、繊維基材テープまたはシートを形成する熱可塑性繊維の総フィラメント数は、10〜24000本が好ましく、更に好ましくは20〜12000本である。総フィラメント数は、繊維束を拡幅し、一方向引き揃えのテープ状物とした際の、テープ幅やテープの厚みに影響を及ぼす。フィラメント数が多すぎる場合には、薄く且つ小さい幅のテープの作成が難しくなり、逆にフィラメント数が小さすぎる場合には、取扱いに十分な幅のテープを作成することが困難となる。
【0038】
(強化繊維)
本発明で用いる強化繊維については、本発明の効果を損なわない限りにおいては特に制限されず、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、セラミックファイバー、金、銀、銅、鉄、ニッケル、チタン等の各種金属繊維、パラ系アラミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維を例示することができる。
【0039】
これら強化繊維のうち、力学物性や難燃性、耐熱性、入手し易さの観点から、炭素繊維、ガラス繊維、全芳香族ポリエステル繊維、パラ系アラミド繊維が好適に用いられる。この中でも特に炭素繊維は、非常に高い強度、弾性率、耐熱性、及び難燃性を有し、且つ近年多くの企業が製造に参入していることから比較的入手もし易い、更には、炭素繊維を広幅のテープ状にする拡幅技術も目覚しく、容易に可能となることから好適に用いることができる。
【0040】
繊維基材テープまたはシートを形成する上記強化繊維の総フィラメント数は、10〜24000本が好ましく、更に好ましくは20〜12000本である。総フィラメント数は、繊維束を拡幅し、一方向引き揃えのテープ状物とした際の、テープ幅やテープの厚みに影響を及ぼす。フィラメント数が多すぎる場合には、薄く且つ小さい幅のテープの作成が難しくなり、逆にフィラメント数が小さすぎる場合には、取扱いに十分な幅のテープを作成することが困難となる。
【0041】
(バインダー)
本発明の繊維基材テープまたはシートにおいて、テープまたはシート状の熱可塑性繊維及び強化繊維の、それぞれの繊維と繊維の間における接合、或いはテープまたはシート状の熱可塑性繊維と強化繊維との積層界面における接合を、バインダーを加えてバインダーにより補強してもよい。バインダーにより、繊維間を接合させることにより、加熱成形前の繊維基材テープまたはシートの取扱い性を向上させ、加熱成形前或いは加熱成形時において、一方向に引き揃えられた強化繊維の方向性が乱れることを防ぎ、その結果、力学物性が高く、外観の良好な熱可塑性樹脂複合材料を得ることが可能となる。
【0042】
上述のバインダーは、繊維基材テープまたはシートの全重量に対する割合が、0〜30%であることが好ましい。バインダー成分が30%を越える場合には、熱可塑性樹脂複合材料の力学物性や耐熱性、難燃性、寸法安定性等の性能について、マトリックスを形成する熱可塑性樹脂による特徴に影響を及ぼすことが懸念される。バインダーは、より好ましくは0〜10%、更に好ましくは0〜5%である。
【0043】
本発明で用いるバインダーとして、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、ポリアセテート、エチレンビニルアセテート、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などを用いることができる。
【0044】
また、本発明で用いるバインダーの形態は、特に限定されるものではなく、粉体(パウダー状物);フィラメント、ステープル、ショートカット等の形態の繊維状物;或いは、水又は有機溶剤を分散媒とするエマルジョン分散液等を使用することができる。
上述したように、成形時における強化繊維の方向性が乱れることを防ぐ方法として、繊維基材テープまたはシート内にバインダーを配し、強化繊維を固定化させる方法について述べたが、これらを効率的に活用するために、上述した熱可塑性繊維が流動する温度での加熱・加圧成形の前に、バインダー成分が溶融する温度域にて予備加熱してもよい。
【0045】
(強化繊維と熱可塑性繊維との積層)
本発明の繊維基材テープまたはシートは、一方向に引き揃えられた強化繊維からなる連続繊維束を拡幅してテープまたはシート状にした物と、同じく一方向に引き揃えられた熱可塑性繊維からなる連続繊維束を拡幅してテープまたはシート状にした物とを積層・複合化した、繊維基材テープまたはシートである。このように、熱可塑性繊維及び強化繊維をそれぞれ一方向に引き揃えることで、積層した際にテープまたはシート状の熱可塑性繊維層とテープまたはシート状の強化繊維層とが隙間なく密着するため、熱成形した際に、容易に強化繊維と強化繊維の間に熱可塑性繊維が溶融して熱可塑性樹脂が含浸し、高い含浸率の複合材料を容易に得ることができ、結果として得られた複合材料は高い力学物性を有する。面内に含まれる強化繊維の量が多くなり、マトリックスである熱可塑性樹脂に対する補強効果が大きくなる。
【0046】
繊維基材の全繊維重量に対する強化繊維の割合は、10〜90重量%が好ましく(熱可塑性繊維の割合は、90〜10重量%)、更に好ましくは、強化繊維の割合は30〜70重量%(熱可塑性繊維の割合は、70〜30重量%)である。強化繊維が10重量%未満となる場合では強化繊維の割合が少ないため、補強効果が少なくなるため、高い力学物性の複合材料を得ることができない。一方で90重量%を超えるとマトリックスとなる樹脂が少なく、強化繊維束に十分に樹脂が含浸しないため、望ましい力学物性の材料を得ることができないため好ましくない。
【0047】
一方向に引き揃えられた熱可塑性繊維からなる連続繊維束、及び一方向に引き揃えられた強化繊維からなる連続繊維束をそれぞれ開繊拡幅してテープまたはシート状物とする方法は、特に制限されることはなく、公知の方法により作成することができる。一方向に引き揃えた際の幅が0.1〜50mm、厚みが0.1〜10mmであることが好ましい。幅が0.1mm未満となる場合には、熱可塑性繊維と強化繊維との張り合わせやその後の成形における取扱い性が悪くなるとの懸念があり、一方で幅が50mmを超える場合には、繊維引き揃えの斑が発生するとの懸念があるため好ましくない。また、厚みが0.1mm未満の場合には、厚み斑等の問題が発生し、また10mmを超える場合には、成形時における樹脂含浸が難しくなるとの懸念がある。
【0048】
本発明の繊維基材テープまたはシートの製造は、熱可塑性繊維と強化繊維をそれぞれ別個に一度幅広に開繊して一方向に引き揃えた後、互いに積層し、再び所望の厚みへと調整して複合テープ状物を得ることが好ましい。このように、一度開繊工程を経ることにより、強化繊維束への熱可塑性樹脂の含浸が容易になることから、より高い力学物性の複合材料を得ることが可能となる。ここで用いる開繊方法は、特に限定されることはなく、公知の方法を用いることができる(例えば、特許第3064019号公報)。
【0049】
(積層後の加熱・加圧)
本発明の熱可塑性樹脂複合材料は、上述した一方向に引き揃えられたテープまたはシート状の強化繊維と一方向に引き揃えられたテープまたはシート状の熱可塑性繊維とを積層したシート状物、或いはテープまたはシート状の両方の繊維を平行に並べたシート状物を積層して形成されたテープまたはシート状物を、熱可塑性繊維の流動開始温度以上の温度で加熱・加圧成形することにより得られる。
【0050】
加熱・加圧成形方法については特に制限はなく、加熱手段を備えた加圧成形装置、圧縮成形装置、真空圧着成形装置、ロールプレス等を用いることができる。成形に必要な温度は、マトリックス素材として用いる熱可塑性繊維の材質によるが、該繊維の流動開始温度と熱分解温度を考慮して設定すれば良い。
更に、加熱温度と加圧圧力及び成形時間を調整することにより、熱可塑性繊維が強化繊維束へ完全な含浸(繊維形態をとどめることなく溶融)をしていない半含浸の状態とすることが可能である。このような半含浸の状態の繊維基材テープまたはシートは、十分に樹脂が含浸していないことから、期待する力学物性を発現することはできないが、十分な含浸が達成された素材と比較して柔軟性を有しており、成形の自由度が増すため、賦形成形に適している。また、このような工程を経ることにより、繊維基材テープまたはシートを薄くし、半含浸ではあるものの、未含浸部分を少なくすることに寄与しており、結果として最終的な本成形後の樹脂含浸性を上げることが可能となる。
【0051】
(繊維基材テープまたはシートから繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の成形)
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂複合材料を得る方法としては、例えば、細幅の一方向に引き揃えられた繊維基材テープを経糸や緯糸、或いはその両方として用いた織物とし、これらを加熱成形する方法や、本発明の一方向に引き揃えられた繊維基材テープまたはシートを平行に並べて成形する方法などが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。織物を加熱成形する方法では、薄肉且つ含浸性が良好であり、結果として力学物性に優れた熱可塑性樹脂複合材料を得ることができる。また、繊維基材テープまたはシートを平行に並べて成形する方法では、ある一方向に極めて優れた力学物性を有する薄物の繊維強化熱可塑性複合材料のシート状物を得ることが可能であり、該シート状物をさらに様々な方向性を持たせて積層し、これを加熱成形して得られる熱可塑性樹脂複合材料は、薄肉で且つあらゆる方向において優れた力学物性を有する。
本発明においては、繊維基材テープまたはシートは、熱可塑性繊維を含んで形成されているので、繊維基材テープまたはシートを積層して成形材料を製造するにあたり、繊維基材シートと繊維基材シートとの間に熱可塑性樹脂フィルムを挟むことなく、積層・加熱プレスすることにより成形材料を製造することが可能である。この積層・加熱プレスにおいて、繊維基材テープまたはシート中の熱可塑性繊維は溶融して繊維形態をとどめることなく、強化繊維間のマトリックス樹脂として機能している。
【0052】
本発明の一方向に引き揃えられた強化繊維と熱可塑性繊維から構成される繊維基材テープまたはシートは、筒状の金型に巻きつけることにより容易にパイプ形状の複合材料を得ることができる。作成方法は特に限定さえることはないが、筒状金型にテープを巻きつけた後、これをオートクレーブで加熱・加圧することにより得られる。また、フィラメントワインディング法等を用いて、例えばガスタンクのような形状とすることも容易にできる。
【0053】
(用途)
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂複合材料は、その特徴を活かし、一般産業資材分野、電気・電子分野、土木・建築分野等の幅広い分野において有効に用いることができ、特に航空機・自動車、鉄道・船舶等の輸送機器分野においては、その主要な構造を成す部材として有効に用いることができる。
本発明の熱可塑性樹脂複合材料は、優れた力学物性と耐熱性、難燃性、寸法安定性等の機能特性を兼ね備えていることから、一般産業資材分野、電気・電子分野、土木・建築分野などの幅広い分野において有効に用いることができ、特に、航空機・自動車、鉄道・船舶等の輸送機器分野等の幅広い分野においては、その主要な構造をなす部材として有効に用いることができる。
例えば、パソコン、ディスプレイ、OA機器、携帯電話、携帯情報端末、デジタルビデオカメラ、光学機器、オーディオ、エアコン、照明機器、玩具用品、その他家電製品などの筐体、トレイ、シャーシ、内装部材、またはそのケースなどの電気、電子機器部品、支柱、パネル、補強材などの土木、建材用部品、各種メンバ、各種フレーム、各種ヒンジ、各種アーム、各種車軸、各種車輪用軸受、各種ビーム、各種ピラー、各種メンバ、各種フレーム、各種ビーム、各種サポート、各種レール、各種ヒンジなどの、外板、またはボディー部品、バンパー、モール、アンダーカバー、エンジンカバー、整流板、スポイラー、カウルルーバー、エアロパーツなど外装部品、インストルメントパネル、シートフレーム、ドアトリム、ピラートリム、ハンドル、各種モジュールなどの内装部品、またはモーター部品、CNGタンク、ガソリンタンク、燃料ポンプ、エアーインテーク、インテークマニホールド、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、各種配管、各種バルブなどの燃料系、排気系、または吸気系部品などの自動車、二輪車用構造部品、ランディングギアポッド、ウィングレット、スポイラー、エッジ、ラダー、エレベーター、フェイリング、リブなどの航空機用部品に好適に用いられる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は本実施例により何ら限定されるものではない。尚、以下の実施例において、各種評価により得られた数値等のデータは、下記の方法により測定した。
【0055】
[平均繊度 dtex]
熱可塑性繊維の平均繊度は、マルチフィラメントから無作為に100本抜き出し、それぞれの繊度を測定して平均を求めた。
【0056】
[平均巾 mm]
熱可塑性繊維束及び強化繊維束を一方向に引き揃えてテープ状にした際の平均巾は、無作為に10箇所を選定し、それぞれの巾長を測定して平均を求めた。
【0057】
[曲げ強度 MPa、曲げ弾性率 GPa]
繊維基材テープまたはシートから得られた熱可塑性樹脂複合材料の24℃ならびに100℃における曲げ強度ならびに曲げ弾性率は、ASTM790に準拠して測定した。
【0058】
[含浸率 %]
熱可塑性樹脂複合材料の含浸率は、断面を切り出し、走査型電子顕微鏡にて観察し、単位面積当たりにおける未含浸部分(空隙部分)の面積の割合を測定することにより求めて、これから含浸部分の割合を求めた。
【0059】
[難燃性]
熱可塑性樹脂複合材料の難燃性は、UL94V規格の方法に準拠して測定した。
【0060】
[実施例1]
(1)ポリエーテルイミド系ポリマー(サービックイノベイティブプラスチックス社製「ULTEM9001」)を150℃で12時間真空乾燥した。
(2)上記(1)のポリマーを紡糸ヘッド温度390℃、紡糸速度1500m/分、吐出量50g/分の条件で丸孔ノズルより吐出し、2640dtex/1200fのマルチフィラメントを得た。
(3)上記(2)で得られたポリエーテルイミド系繊維のマルチフィラメントを3本あわせた後、これらを20mm巾へと拡幅し、一方向に配列したテープ状にし、このテープ状物を別途一方向に引き揃えた12Kの炭素繊維束(単繊維の繊度:0.7dtex)を20mm巾へと拡幅したテープ状物と積層した後、220℃、2MPaのローラープレスを通して、炭素繊維とポリエーテルイミド系繊維からなり、軟化(部分溶融)したポリエーテルイミド系繊維を介して炭素繊維間に接合が形成された、複合繊維基材テープを得た。
(4)得られた複合繊維基材テープを、繊維配列方向を同一にして、18枚積層させた後、320℃で5分間圧縮成形して、ポリエーテルイミド系繊維が完全溶融し、炭素繊維間に含浸した、厚さ約1mmの平棒状の繊維強化熱可塑性樹脂複合材料を作成した。
(5)得られた繊維強化熱可塑性樹脂複合材料は強化繊維束の配向乱れも殆どなく、外観は良好であり、室温での曲げ強度、曲げ弾性率はそれぞれ、1.5GPa、115GPa、であった。含浸率は96%と比較的良好であり、難燃性はUL94規格V−0に合格した。
【0061】
[実施例2]
(1)ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー(ビクトレックス社製「Victrex PEEK150G」)を150℃で12時間真空乾燥した。
(2)上記(1)のポリマーを紡糸ヘッド温度370℃、紡糸速度1500m/分、吐出量50g/分の条件で丸孔ノズルより吐出し、2640dtex/1200fのマルチフィラメントを得た。
(3)上記(2)で得られたポリエーテルエーテルケトン系繊維のマルチフィラメントを3本あわせた後、これらを20mm巾へと拡幅し、一方向に配列したテープ状にし、このテープ状物を別途一方向に引き揃えた12Kの炭素繊維束を20mm巾へと拡幅したテープ状物と積層した後、330℃、2MPaのローラープレスを通して、炭素繊維とポリエーテルエーテルケトン繊維からなり、炭素繊維間に接合が形成された、複合繊維基材テープを得た。
(4)得られた複合繊維基材テープを18枚積層させた後、370℃で5分間圧縮成形して厚さ約1mmの平棒状の繊維強化熱可塑性樹脂複合材料を作成した。
(5)得られた繊維強化熱可塑性樹脂複合材料は強化繊維束の配向乱れも殆どなく、外観は良好であり、室温での曲げ強度、曲げ弾性率はそれぞれ、1.4GPa、120GPa、であった。含浸率は98%と比較的良好であり、難燃性はUL94規格V−0に合格した。
【0062】
[実施例3]
(1)半芳香族ポリアミド系ポリマー(クラレ社製「ジェネスタ」)を120℃で12時間真空乾燥した。
(2)上記(1)のポリマーを紡糸ヘッド温度330℃、紡糸速度1500m/分、吐出量50g/分の条件で丸孔ノズルより吐出し、2640dtex/1200fのマルチフィラメントを得た。
(3)上記(2)で得られた半芳香族ポリアミド系繊維のマルチフィラメントを3本あわせた後、これらを20mm巾へと拡幅し、一方向に配列したテープ状にし、このテープ状物を別途一方向に引き揃えた12Kの炭素繊維束を20mm巾へと拡幅したテープ状物と積層した後、300℃、2MPaのローラープレスを通して、炭素繊維と半芳香族ポリアミド繊維からなり、炭素繊維間に接合が形成された、複合繊維基材テープを得た。
(4)得られた複合繊維基材テープを18枚積層させた後、320℃で5分間圧縮成形して厚さ約1mmの平棒状の繊維強化熱可塑性樹脂複合材料を作成した。
(5)得られた繊維強化熱可塑性樹脂複合材料は強化繊維束の配向乱れも殆どなく、外観は良好であり、室温での曲げ強度、曲げ弾性率はそれぞれ、1.4GPa、118GPa、であった。含浸率は96%と比較的良好であった。ただし、難燃性はUL94規格に合格しなかった。
【0063】
[比較例1]
(1)ポリエーテルイミド系ポリマーフィルム(住友ベークライト社製「スミライトFS1450」)を20mm巾へと切り出し、別途20mm巾へと拡幅して一方向に引き揃えた12Kの炭素繊維束のテープ状物と積層した後、220℃、2MPaのローラープレスを通して複合テープ状物を得た。
(2)得られた複合テープ状物を18枚積層させた後、320℃で5分間圧縮成形して厚さ約1mmの平棒状の繊維強化熱可塑性樹脂複合材料を作成した。
(3)得られた繊維強化熱可塑性樹脂複合材料は強化繊維束の配向乱れも殆どなく、外観は良好であり、室温での曲げ強度、曲げ弾性率はそれぞれ、1.3GPa、102GPa、であった。含浸率は91%とやや低く、それに伴い力学物性も本発明の実施例と比較して低いものに留まる。ただし、難燃性はUL94規格V−0に合格した。
【0064】
[比較例2]
(1)ポリエーテルイミド系ポリマーフィルム(サービックイノベーティブプラスチック
ス社製「ULTEM1000」)を粉砕機にかけて粉末(0.1〜300μmの広範囲な粒径分布を有する)にした後、これを別途一方向に引き揃えた12Kの炭素繊維束を20mm巾へと拡幅したテープ状物上へ塗布し、220℃、2MPaのローラープレスを通して複合テープを得た。
(2)得られた複合テープを18枚積層させた後、320℃で5分間圧縮成形して厚さ約1mmの平棒状の熱可塑性樹脂複合材料を作成した。
(3)得られた熱可塑性樹脂複合材料はパウダー塗布斑による外観不良が部分的に発生した。室温での曲げ強度、曲げ弾性率はそれぞれ、1.3GPa、100GPa、であった。含浸率は、部分的な斑も発生しており、且つ89%とやや低く、難燃性は、UL94規格V−0に合格した。