(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、端子とコネクタハウジングには、挿入後の抜けを防止するために、係止機構が設けられている。この係止機構は、いったん係止されてしまうと、引っ張るだけでは端子を取り外すことができない。コネクタハウジングから端子を取り外すためには、特別な工具及び作業が必要であるとともに、この作業を行う際に端子又はコネクタハウジングが破損することがある。そのため、端子付き電線が誤ったキャビティに挿入されて係止されること(以下、誤配列)を防止することが好ましい。
【0008】
この点を考慮すると、挿入作業の終了後でなく、挿入作業の途中でワイヤハーネスの回路構成を検査することが好ましいと考えられる。しかし、ワイヤハーネスの回路構成を検出する装置は大規模になり易い。これは、例えばワイヤハーネスが100端子から構成される場合、1の端子を電源に接続して他の99の端子との導通を確認した後に、次の端子を電源に接続するという工程が必要となるからである。
【0009】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、簡素な構成で挿入作業中に導通パターンの確認を行って誤配列を確実に防止する挿入作業補助装置を提供することにある。
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0011】
本発明の第1の観点によれば、端子付き電線
の一方及び他方をコネクタハウジングのキャビティに挿入する挿入作業を補助装置において、以下の構成が提供される。即ち、この挿入作業補助装置は、挿入検出部と、マトリックス出力回路と、制御部と、電流検出部と、判定部と、を備える。前記挿入検出部は、コネクタハウジングのキャビティ毎に配置され、挿入された端子付き電線がコネクタハウジングに係止される前に、当該端子付き電線と電気的に接続される。前記マトリックス出力回路は、
端子付き電線の少なくとも一方が挿入されるキャビティ毎に配置された前記挿入検出部に個別に電流を流すための回路であり、格子状に配置されたフォトカプラ
を有しており、前記挿入検出部毎に
当該フォトカプラの受光素子が接続される。前記制御部は、
前記マトリックス出力回路のフォトカプラの発光素子を発光させることで、当該フォトカプラに接続される端子付き電線
の一方を電源に接続する。前記電流検出部は、前記制御部が端子付き電線
の一方を電源に接続する
とともに、当該端子付き電線の他方が別の電源に接続されることで流れる電流を検出する。前記判定部は、前記電流検出部の検出結果
に基づいて、導通が確認された際に端子付き電線の一方と他方に接続されている前記挿入検出部同士の組合せを求め、当該組合せと、予め設定された導通パターンと、
が一致しているか否かに基づいて、端子付き電線が正しいキャビティに挿入されたか誤ったキャビティに挿入されたか判定する。
【0012】
これにより、デコーダ、マルチプレクサ、及びコンパレータ等を用いることなく導通確認ができるので、簡素な構成の挿入作業補助装置が実現できる。また、端子付き電線が係止される前に正しいキャビティに挿入されたか否かを判定できるので、誤配列を確実に防止できる。従って、作業者がミスをした場合であっても、即座にやり直すことができるので、作業効率を向上させることができる。
【0013】
前記の挿入作業補助装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、
挿入作業補助装置は、前記電流検出部としてのマトリックス入力回路を備える。端子付き電線の一方に、
前記挿入検出部を介して前記マトリックス出力回路が接続される。端子付き電線の他方に、前記挿入検出部毎に
前記マトリックス入力回路のフォトカプラの発光素子が接続される。
【0014】
これにより、2つのマトリックス回路以外に電流検出部を設ける必要がないので、より簡素な構成で導通確認を行うことができる。
【0015】
前記の挿入作業補助装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、端子付き電線の一方に、
前記挿入検出部を介して正極側の電源に接続される前記マトリックス出力回路が接続される。端子付き電線の他方に、
前記挿入検出部を介して負極側の電源に接続される前記マトリックス出力回路が接続される。制御部は、一方の前記マトリックス出力回路に接続される端子付き電線のうち選択した端子付き電線を正極側の電源に接続する。制御部は、他方の前記マトリックス出力回路に接続される端子付き電線のうち選択した端子付き電線を負極側の電源に接続する。
【0016】
これにより、マトリックス入力回路が設けられる構成と異なり、発光素子を発光させるだけの電流を流す必要がないので、複数の電流が集中してもフォトカプラが破損することなく導通確認を行うことができる。
【0017】
前記の挿入作業補助装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、端子付き電線の一方及び他方のそれぞれに、正極側の電源に接続される前記マトリックス出力回路と、負極側の電源に接続される前記マトリックス出力回路と、
の両方が接続される。前記制御部は、選択された端子付き電線を、
前記マトリックス出力回路を介して、正極側の電源又は負極側の電源に接続する。
【0018】
これにより、端子付き電線を正極側の電源又は負極側の電源の両方に接続できるので、極性を考慮することなく電流を流して導通確認を行うことができる。
【0019】
前記の挿入作業補助装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この挿入作業補助装置は、駆動部を備える。前記駆動部は、端子付き電線が誤ったキャビティに挿入されたと前記判定部が判定したときに、端子付き電線が前記コネクタハウジングに係止される前に、コネクタハウジングの位置又は姿勢を変更する。
【0020】
これにより、作業者が自らの意思で端子付き電線の挿入を止めることなく誤配列を防止できるので、作業者のストレスを軽減できる。また、作業者が警告を聞いてから端子付き電線の挿入を止めるまではタイムラグがあるので、上記の構成は、より確実に誤配列を防止できる。
【0021】
本発明の第2の観点によれば、端子付き電線
の一方及び他方をコネクタハウジングのキャビティに挿入する挿入作業を補助する挿入作業補助方法において、以下の工程を含む方法が提供される。即ち、この挿入作業補助方法は、電源接続工程と、電流検出工程と、判定工程と、を含む。前記電源接続工程では、コネクタハウジングのキャビティ毎に配置され、挿入された端子付き電線と電気的に接続する挿入検出部毎にフォトカプラの受光素子が接続されたマトリックス出力回路のフォトカプラの発光素子を発光させることで、当該フォトカプラに接続される端子付き電線
の一方を電源に接続する。前記電流検出工程では、前記電源接続工程で端子付き電線を電源に接続する
とともに、当該端子付き電線の他方が別の電源に接続されることで流れる電流を検出する。前記判定工程では、前記電流検出工程における検出結果
に基づいて、導通が確認された際に端子付き電線の一方と他方に接続されている前記挿入検出部同士の組合せを求め、当該組合せと、予め設定された導通パターンと、
が一致しているか否かに基づいて、端子付き電線が正しいキャビティに挿入されたか誤ったキャビティに挿入されたか判定する。
【0022】
これにより、簡素な構成の挿入作業補助装置が実現できる。また、誤配列を確実に防止できるので、作業者がミスをしても即座にやり直すことができるため、作業効率を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。初めに、
図1(a)を参照して、ワイヤハーネスの製造工程の一部である端子付き電線の挿入作業の概要について説明する。
【0025】
作業者が挿入作業を行う作業台には、
図1に示すようにコネクタベース10が配置されている。コネクタベース10には、複数のコネクタハウジング11が配置されている。コネクタハウジング11には、それぞれ、複数のキャビティ12が形成されている。なお、キャビティ12の内部には、図略の凹部が形成されている。
【0026】
挿入作業とは、このキャビティ12に端子付き電線20を挿入する作業である。端子付き電線20は、導体部及び被覆部から構成される電線21と、電線21の両端部に圧着された端子22と、から構成されている。端子22には図略の係止突起が形成されており、端子22をキャビティ12に挿入することで、端子22の係止突起がキャビティ12の凹部に入り込み、端子22がコネクタハウジング11に係止される。
【0027】
その後、作業者は、端子付き電線20の他方の端子22を同一又は異なるコネクタハウジング11のキャビティ12に挿入する。以上の挿入作業を繰り返し、端子付き電線20の両端の端子22をキャビティ12に挿入していくことで、ワイヤハーネス23を製造することができる。
【0028】
次に、第1実施形態に係る挿入作業補助装置1について
図2及び
図3を参照して説明する。
【0029】
電線21には様々な種類があり、それぞれの電線21は、予め定められたキャビティ12に挿入する必要がある。挿入作業補助装置1は、端子付き電線20がキャビティ12に挿入されたときに、導通パターンの検出を行い、予め設定された導通パターンと一致しているか否かを判定する。
【0030】
具体的には、
図2に示すように挿入作業補助装置1は、プローブピン(挿入検出部)31と、正極側電源32と、負極側電源33と、ドライバ34と、演算装置35と、駆動部38と、マトリックス出力回路40と、マトリックス入力回路50と、を備える。
【0031】
プローブピン31は、導通性を有する細長状の部材であり、少なくとも一部がキャビティ12の内部に配置されている。プローブピン31は、キャビティ12毎に配置されている。端子付き電線20は、作業者が端子付き電線20をキャビティ12に挿入することで、当該キャビティ12の内部に配置されたプローブピン31と、端子付き電線20と、が接触する(電気的に接続する)。
【0032】
正極側電源32及び負極側電源33は電源であり、両者を電気的に接続することで、両者の間に電流を流すことができる。なお、以下の説明では、正極側電源32に接続されるプローブピン31を符号31aで表し、負極側電源33に接続されるプローブピン31を符号31bで表すことがある。
【0033】
ドライバ34は、トランジスタ等で構成され、接続される機器(具体的には後述のフォトカプラ41又はフォトカプラ51)に電流を供給することができる。
【0034】
演算装置35は、CPU等で構成され、様々な制御を行う。演算装置35は、制御部36と判定部37とを備える。制御部36は、ドライバ34、マトリックス出力回路40及びマトリックス入力回路50を制御する。判定部37は、検出された導通パターンが、予め設定された正しい導通パターンと一致しているか否かを判定する(詳細は後述)。
【0035】
駆動部38は、エアシリンダ又はソレノイド等で構成されている。誤ったキャビティ12に端子付き電線20が挿入されたと判定部37が判定した場合、演算装置35は駆動部38を制御して駆動力を発生させる。この駆動力により、
図1(b)に示すように、コネクタベース10(即ちコネクタハウジング11)を挿入方向奥側へ移動させる。
【0036】
これにより、コネクタベース10を挿入方向奥側に移動させることで、端子22をキャビティ12から離すことができるので、端子22がコネクタハウジング11に係止されることを確実に防止することができる。
【0037】
マトリックス出力回路40は、格子状に配置された複数のフォトカプラ41と、それらと他の部品とを接続する配線と、から構成されている。フォトカプラ41は、発光ダイオード(発光素子)42とフォトトランジスタ(受光素子)43とから構成されている。なお、図では、スペースの関係上、一部のフォトカプラ41についてのみ、内部の発光ダイオード42とフォトトランジスタ43を表示している。
【0038】
発光ダイオード42の両端は、ドライバ34に接続されている。発光ダイオード42は、制御部36によってドライバ34から電流が供給されることで発光する。
【0039】
フォトトランジスタ43の一端はプローブピン31bに接続されており、他端は負極側電源33に接続されている。フォトトランジスタ43は、発光ダイオード42の発光を受光したときに、プローブピン31bと負極側電源33とを電気的に接続する。なお、フォトトランジスタ43(つまりフォトカプラ41)は、プローブピン31b毎(つまりキャビティ12毎)に接続されている。
【0040】
以上の構成により、制御部36は、選択したフォトカプラ41に電流を供給することで、任意のプローブピン31bを負極側電源33に接続することができる。
【0041】
マトリックス入力回路50は、格子状に配置された複数のフォトカプラ51と、それらと他の部品とを接続する配線と、から構成されている。
【0042】
フォトカプラ51は、フォトカプラ41と同様に、発光ダイオード52とフォトトランジスタ53とから構成されている。
【0043】
発光ダイオード52は、一端が正極側電源32に接続されており、他端がプローブピン31aに接続されている。発光ダイオード52(つまりフォトカプラ51)は、プローブピン31a毎(つまりキャビティ12毎)に接続されている。
【0044】
フォトトランジスタ53は、発光ダイオード52の発光を受光することで導通し、制御部36に伝達する。
【0045】
以上の構成により、プローブピン31aに電流が流れた場合、制御部36には、それに対応するフォトトランジスタ53から電気信号が入力される。従って、制御部36は、電流が流れたプローブピン31aを特定することができる。即ち、マトリックス入力回路50は電流検出部としての機能を有する。
【0046】
次に、上記で説明した第1実施形態の挿入作業補助装置1を用いて、導通の有無を検出する方法について
図2及び
図3を参照して説明する。以下では、
図2に示す未挿入の端子22を右端のキャビティ12に挿入してプローブピン31bに接触させたときの流れを説明する。
【0047】
端子22をキャビティ12に挿入して、
図3に示すように、端子22とプローブピン31bが電気的に接続されたとする。その後、制御部36が、当該プローブピン31bに接続されるフォトカプラ41(太枠で図示)に電流を供給することで、挿入された端子22が負極側電源33に接続される。
【0048】
この結果、電線21を介して端子22に接続されたプローブピン31a(右から2番目)が負極側電源33に接続されることとなる。なお、プローブピン31aは、フォトカプラ51を介して正極側電源32に接続されている。従って、正極側電源32と負極側電源33が接続されるので、この経路(図の太線)に沿って電流が流れる。
【0049】
これにより、太枠で示したフォトカプラ51に電流が流れるため、当該フォトカプラ51の発光ダイオード52が発光する。この結果、フォトトランジスタ53が制御部36へ電気信号を出力する。
【0050】
制御部36は、電気信号を出力したフォトカプラ51を特定する。制御部36は、電気信号の出力元のフォトカプラ51を特定することで、どのプローブピン31a(即ちどの端子付き電線20)に電流が流れたかを特定することができる。制御部36は、以上の処理を行うことで、導通の有無を検出することができる。
【0051】
次に、第1実施形態の挿入作業補助装置1を用いて、端子付き電線20が誤ったキャビティ12に挿入されたこと(誤挿入)を検出する流れについて、
図4から
図6を参照して説明する。
【0052】
図4には、マトリックス出力回路40のフォトカプラ41及びマトリックス入力回路50のフォトカプラ51を識別するための番号が記載されている。初めに、図略の入力装置を用いて、演算装置35に正しい導通パターンを入力して記憶させる。例えば、o(2,1)−i(2,1),o(3,1)−i(2,1),o(4,1)−i(3,1)の組合せが演算装置35に記憶されるものとする。
【0053】
次に、制御部36は、マトリックス出力回路40のo(1,1)の発光ダイオード42に電流を流す(以下、ONにする等と称する)。その後、制御部36は、マトリックス入力回路50の各素子i(1,1)〜i(4,4)の16個を掃引して導通のある素子を特定する(
図5を参照)。なお、本実施形態の挿入作業補助装置1は、縦一列(例えばi(1,1)からi(1,4)まで)の4つの入力を一度に取り込むことができるので、この4つの入力を一度に取り込み、内部で1個ずつ処理した後に、次の縦一列を取り込む。なお、一度に取り込む入力の数及び掃引の順序(方向)は任意であり、適宜変更することができる。上記の処理の結果、今回で示す例では、何れの素子も導通しない。その後、制御部36は、マトリックス出力回路40のo(1,1)をOFFにする。
【0054】
次に、制御部36は、マトリックス出力回路40のo(2,1)をONにして、マトリックス入力回路50の各素子i(1,1)〜i(4,4)の16個を上記と同様に掃引して導通のある素子を特定する(
図6を参照)。この結果、今回で示す例では、i(2,1)の素子だけが導通する。制御部36は、導通があった組合せであるo(2,1)−i(2,1)を記憶し、マトリックス出力回路40のo(2,1)をOFFにする。
【0055】
次に、制御部36は、マトリックス出力回路40のo(3,1)をONにして、同様の処理を行い、導通があった組合せであるo(3,1)−i(2,1)を記憶する。次に、制御部36は、マトリックス出力回路40のo(4,1)をONにして、同様の処理を行い、導通があった組合せであるo(4,1)−i(3,1)を記憶する。
【0056】
次に、制御部36は、マトリックス出力回路40のo(1,2)をONにして、同様の処理を行う。この結果、今回で示す例では、何れの素子も導通しない。このように、制御部36は、マトリックス出力回路40の各素子のON、マトリックス入力回路50の掃引、導通した素子の組合せの記憶、マトリックス出力回路40のOFFという処理を、o(1,1)〜o(4,4)の全てについて(合計16回)行う。
【0057】
これにより、制御部36は、o(2,1)−i(2,1),o(3,1)−i(2,1),o(4,1)−i(3,1)の導通パターンを検出して記憶する。判定部37は、上記で記憶した正しい導通パターンと、検出した導通パターンと、を比較する。
【0058】
正しい導通パターンと、検出した導通パターンと、が一致した場合は、誤配列がなく、挿入作業が全て正常に完了したことになる。この場合、挿入作業補助装置1は、挿入作業が完了したことを通知する。
【0059】
また、正しい導通パターンに、検出した挿入パターンが完全に含まれており、かつ、検出した導通の組合せが不足している場合は、未挿入の端子付き電線20が存在することになる。言い換えれば、誤配列は無いが挿入作業が完了しておらず、正常に進行中であることを示す。この場合、挿入作業補助装置1は、今までに挿入した端子付き電線20及び現在挿入中の端子付き電線20が正しいキャビティ12に挿入されたことを通知する。
【0060】
また、正しい導通パターンに、検出した導通パターンが完全に含まれず、一致しない導通の組合せが存在した場合は、誤挿入が発生したことを示す。この場合、挿入作業補助装置1は、図略の表示装置に警告を表示するとともに、上述の駆動部38を駆動してコネクタベース10を移動させる。これにより、誤配列を確実に防止することができる。
【0061】
なお、更に、警告音を発生させたり、コネクタベース10又は作業台を振動させたり、作業者が身に付けている物を振動させたりすることができる。これらの手段は、複数組み合わせることが好ましい。また、コネクタベース10を移動させる代わりに、コネクタベース10を回転させたり、コネクタベース10の姿勢を傾けたりしても良い。
【0062】
演算装置35は、挿入作業の開始から完了までの間、導通パターンの検出処理及び判定処理を常時繰り返し行う。演算装置35は、導通パターンの検出処理及び判定処理が例えば0.1秒以内で完了するように、マトリックス出力回路40を駆動する。なお、導通パターンの検出処理は、上記で示した方法以外に、電卓や電光掲示板で公知となっている駆動方法を用いても良い。
【0063】
このように、演算装置35は、導通パターンの検出処理及び判定処理を高速で行うため、端子付き電線20がコネクタハウジング11に係止されるまでに、挿入中の端子付き電線20について誤挿入か否かを判定することができる。従って、作業者が端子付き電線20を誤ったキャビティ12に挿入した場合は、端子付き電線20がコネクタハウジング11に係止される前に、コネクタベース10を移動させることができる。従って、端子付き電線20が誤ったキャビティ12に係止されることを確実に防止することができる。
【0064】
次に、
図7から
図9を参照して第2実施形態及び第3実施形態について説明する。なお、第2実施形態及び第3実施形態の説明において、第1実施形態と同一又は類似の構成については説明を簡略化又は省略することがある。
【0065】
図7に示すように、第2実施形態の挿入作業補助装置1は、正極側のプローブピン31aにマトリックス入力回路50ではなくマトリックス出力回路40を接続し、マトリックス入力回路50の代わりに電流検出回路55を設けた点で、第1実施形態と異なる。
【0066】
第2実施形態の挿入作業補助装置1では、例えば以下のようにして導通パターンを検出する。即ち、初めに、負極側の1つのフォトカプラ41を選択して当該フォトカプラ41に対応するプローブピン31bを負極側電源33に接続する。制御部36は、この状態で、正極側のフォトカプラ41に順次電流を流していき、電流が流れるか否か(プローブピン31aとプローブピン31bが接続されているか否か)を検出する。これにより、制御部36は、導通パターンを検出できる。
【0067】
また、第2実施形態の挿入作業補助装置1は、第1実施形態の挿入作業補助装置1と比較して以下の利点を有する。即ち、第1実施形態の挿入作業補助装置1では、発光ダイオード52を発光させて電流を検出するため、発光ダイオード52を発光させる程度(例えば10mA)の電流を流す必要がある。
【0068】
そのため、
図9(a)の破線に示すように複数の正極側のプローブピン31aが1つの負極側のプローブピン31bに接続される場合、大きな電流がフォトトランジスタ43に流れ、当該フォトトランジスタ43が破損することがある。そのため、第1実施形態の挿入作業補助装置1では、1つのプローブピン31に複数のプローブピン31が接続され得る場合は、当該1つのプローブピン31が正極側に配置されるように調整を行う必要がある。
【0069】
この点、第2実施形態の挿入作業補助装置1は、電流検出回路55を別途設ける構成であるが、微小な電流であっても検出できる。従って、
図9(b)の左側に示すように、複数のプローブピン31aが1つのプローブピン31bに接続される場合であっても、挿入作業補助装置1を問題なく動作させることができる。
【0070】
図8に示すように、第3実施形態の挿入作業補助装置1について、プローブピン31は、正極側電源32及び負極側電源33の両方に接続される。従って、第3実施形態の挿入作業補助装置1では、第2実施形態(
図7)におけるプローブピン31a及びプローブピン31bは等価であり、正極側等といった概念は存在しない。
【0071】
第3実施形態の挿入作業補助装置1では、正極と負極の区別がないので、例えば以下のようにして導通パターンを検出する。即ち、1つ目のプローブピン31を正極側電源32に接続し、他のプローブピン31を負極に接続しながら電流が流れるか否かを検出する。次に、2つ目のプローブピン31を正極側電源32に接続し、他のプローブピン31を負極に接続しながら電流が流れるか否かを検出する。この処理を全てのプローブピン31に行うことで、導通パターンを検出することができる。
【0072】
また、第3実施形態の挿入作業補助装置1は、第1実施形態及び第2実施形態の挿入作業補助装置1と比較して、以下の利点を有する。即ち、第1実施形態及び第2実施形態の挿入作業補助装置1は、正極側電源32と負極側電源33とを接続する必要があるため、
図9(b)の破線に示すように、正極側(又は負極側)同士を接続する場合の導通を検出することができない。
【0073】
この点、第3実施形態の挿入作業補助装置1は、全てのプローブピン31が正極側電源32及び負極側電源33に接続されているので、フォトカプラ41を適切に選択することで、どのように接続されても導通を検出することができる。
【0074】
以上に説明したように、本実施形態の挿入作業補助装置1は、プローブピン31と、マトリックス出力回路40と、制御部36と、電流検出部(マトリックス入力回路50又は電流検出回路55)と、判定部37と、を備える。プローブピン31は、コネクタハウジング11のキャビティ12毎に配置され、挿入された端子付き電線20がコネクタハウジング11に係止される前に、当該端子付き電線20と電気的に接続される。マトリックス出力回路40は、格子状に配置されたフォトカプラ41で構成された回路であり、プローブピン31毎にフォトカプラ41のフォトトランジスタ43が接続される。制御部36は、フォトカプラ41の発光ダイオード42を発光させることで、当該フォトカプラ41に接続される端子付き電線20を電源に接続する。電流検出部は、制御部36が端子付き電線20を電源(正極側電源32又は負極側電源33)に接続することで流れる電流を検出する。判定部37は、電流検出部の検出結果と、予め設定された導通パターンと、に基づいて、端子付き電線20が正しいキャビティ12に挿入されたか誤ったキャビティ12に挿入されたか判定する。
【0075】
これにより、デコーダ、マルチプレクサ、及びコンパレータ等を用いることなく導通確認ができるので、簡素な構成の挿入作業補助装置1が実現できる。また、端子付き電線20が係止される前に正しいキャビティ12に挿入されたか否かを判定できるので、誤配列を確実に防止できる。従って、作業者がミスをした場合であっても、即座にやり直すことができるので、作業効率を向上させることができる。
【0076】
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0077】
上記で説明したそれぞれの実施形態で導通パターンを検出する方法は一例であり、適宜変更することができる。
【0078】
受光素子及び発光素子は、トランジスタ及びダイオードに限られず、適宜変更することができる。
【0079】
上記で説明した他にも、本発明の構成を実現できる限り、各部材の有無、形状、配置等は適宜変更することができる。また、上記で説明した挿入作業補助装置は、ワイヤハーネスの製造工程以外にも、端子付き電線をコネクタハウジングのキャビティに挿入する挿入作業全般に用いることができる。この場合であっても、誤配列を確実に防止する等の同様の効果を発揮することができる。