(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
リソグラフィ技術は、半導体デバイスプロセスのコアテクノロジーであり、近年の半導体集積回路(IC)の高集積化に伴い、更なる配線の微細化が進行している。微細化手法としては、より短波長の光源、例えば、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、F
2レーザー、EUV(極端紫外光)、EB(電子線)、X線等を用いる光源波長の短波長化や、露光装置のレンズの開口数(NA)の大口径化(高NA化)等が一般的である。しかしながら、光源波長の短波長化は、高額な新たな露光装置が必要となってしまう。
【0003】
このような状況のもと、Chouらによって、インプリントリソグラフィが提案された(特許文献1参照)。インプリントリソグラフィでは、所定のパターンが形成されたモールドを、表面に樹脂層が形成された基体に対して押し付け、モールドのパターンを樹脂層に転写している。
【0004】
Chouらによって最初に提案されたインプリントリソグラフィは、樹脂層に熱可塑性樹脂であるポリメタクリル酸メチル(PMMA)が用いられ、樹脂層を変形させる前に加熱により樹脂を軟化させておき、次いで、モールドを押し付けて樹脂層を変形させ、その後、樹脂層を冷却して固化させる工程を経ることから、「熱インプリントリソグラフィ」と呼ばれている。
しかしながら、この熱インプリントリソグラフィには、樹脂層の昇温及び冷却に時間を要するためスループットが低いという問題があった。
【0005】
また、インプリントリソグラフィは、半導体用途以外の用途、例えば、CMOSセンサーや反射防止膜等の加工後の製品にそのまま用いられる永久膜としての用途にも用いられてきている。そのような用途には、加工のプロセスが簡便な「室温インプリント」(特許文献2参照)と呼ばれる方法が用いられることが多い。
しかし、室温インプリントによる方法では、モールドを押し付ける際の圧力を低減させることができないという問題、一定サイズ以下のパターンが形成しにくいという問題等があった。
【0006】
他方、インプリントリソグラフィとしては、他に、光(紫外線又は電子線)で硬化する光硬化性樹脂を用いたインプリントリソグラフィが提案されている。このプロセスでは、光硬化性樹脂を含む樹脂層にモールドを押し付け、次いで、光を照射して樹脂を硬化させ、その後、モールドを剥離することにより転写パターン(構造体)を得る。この手法は、光を利用して樹脂層を硬化させることから、「光インプリントリソグラフィ」と呼ばれている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<光インプリント用組成物>
本発明に係る光インプリント用組成物は、上記一般式(a1)で表される構造単位1及び上記一般式(a2)で表される構造単位2を有するポリシロキサンと、重合開始剤とを含有し、上記ポリシロキサン中の全構造単位に対して、上記構造単位1の含有量は30〜85モル%であり、上記構造単位2の含有量は15〜70モル%である。本発明に係る光インプリント用組成物は、モールド形状の転写性に優れ、この光インプリント用組成物を用いて光インプリント及びその後の加熱を行うことにより、高温下での耐アルカリ性に優れるパターンを得ることができる。
【0017】
[一般式(a1)で表される構造単位1及び一般式(a2)で表される構造単位2を有するポリシロキサン]
本発明に係る光インプリント用組成物は、上記一般式(a1)で表される構造単位1及び上記一般式(a2)で表される構造単位2を有するポリシロキサンを含有する。上記ポリシロキサンは、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0018】
上記一般式(a1)において、R
1としては、末端にエチレン性二重結合を含有する基が好ましく、アクリロイルオキシアルキル基又はメタクリロイルオキシアルキル基(ここで、アルキル基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、具体的には、下記でR
3について例示する基が挙げられる。)がより好ましく、アクリロイルオキシプロピル基又はメタクリロイルオキシプロピル基が特に好ましい。
【0019】
上記一般式(a2)において、R
2は、置換基を有していてもよい炭素数6〜15のアリール基であり、好ましくは置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基である。R
2としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられ、これらのアリール基は置換基を有していてもよい。R
2は、好ましくは置換基を有していてもよいフェニル基及び置換基を有していてもよいナフチル基であり、より好ましくは置換基を有していてもよいフェニル基である。置換基としては、アルキル基等が挙げられる。置換基として用いられるアルキル基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、具体的には、下記でR
3について例示する基が挙げられる。
【0020】
上記ポリシロキサン中の全構造単位に対して、上記構造単位1の含有量は、30〜85モル%であり、好ましくは40〜80モル%である。上記構造単位1の含有量が30〜85モル%であると、上記構造単位2の含有量を適切な範囲に設定しつつ、本発明に係る光インプリント用組成物の光硬化性及び保管安定性を確保しやすい。
【0021】
上記ポリシロキサン中の全構造単位に対して、上記構造単位2の含有量は、15〜70モル%であり、好ましくは20〜60モル%である。上記構造単位2の含有量が15〜70モル%であると、本発明に係る光インプリント用組成物はモールド形状の転写性に優れたものとなりやすく、この光インプリント用組成物を用いて光インプリント及びその後の加熱を行うことにより得られたパターンは、高温下での耐アルカリ性に優れたものとなりやすい。
【0022】
上記ポリシロキサンの質量平均分子量は、本発明の効果が損なわれない限り特に限定されず、好ましくは500〜10000、より好ましくは1000〜5000、更により好ましくは1000〜3000である。上記質量平均分子量が500〜10000であると、押し圧の低減効果の向上と、形成されるパターン形状の特性向上とのバランスに優れる。なお、本明細書において、質量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定された標準ポリスチレン換算のものをいう。
【0023】
上記ポリシロキサンは、下記一般式(a3)で表されるポリシロキサンであることが好ましい。
【0024】
【化2】
(式中、R
1及びR
2は上記の通りであり、R
3は炭素数1〜6のアルキル基であり、添え字p、q、及びrは、上記ポリシロキサン中の全構造単位に対する上記添え字が付された構造単位のモル百分率を表し、pは30〜85モル%であり、qは15〜70モル%であり、rは0〜40モル%であり、ただし、p、q、及びrの合計は100モル%であり、rはp以下である。)
【0025】
上記一般式(a3)において、R
3は、炭素数1〜6のアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。R
3としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、メチル基及びエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0026】
上記一般式(a3)において、pは、30〜85モル%であり、好ましくは40〜80モル%である。pが30〜85モル%であると、qの値を適切な範囲に設定しつつ、本発明に係る光インプリント用組成物の光硬化性及び保管安定性を確保しやすい。
【0027】
上記一般式(a3)において、qは、15〜70モル%であり、好ましくは20〜60モル%である。qが15〜70モル%であると、本発明に係る光インプリント用組成物はモールド形状の転写性に優れたものとなりやすく、この光インプリント用組成物を用いて光インプリント及びその後の加熱を行うことにより得られたパターンは、高温下での耐アルカリ性に優れたものとなりやすい。
【0028】
上記一般式(a3)において、rは、0〜40モル%であり、好ましくは1〜30モル%であり、より好ましくは1〜20モル%であり、更により好ましくは1〜10モル%であり、ただし、rはp以下である。上記一般式(a3)で表されるポリシロキサン中に、添え字rが付された構造単位が存在すると、即ち、rが0モル%超であると、100nm以下の間隔を有する微細パターンの形成能力が向上しやすい。また、rが40モル%以下であると、上記一般式(a3)で表されるポリシロキサンの粘度が高くなりすぎることを抑制しやすい。更に、rがp以下であると、炭素数1〜6のアルキル基R
3のモル数が、エチレン性二重結合を含有する基R
1のモル数よりも多くならず、反応部位であるエチレン性二重結合の割合を十分に確保しやすくなるため、得られる光インプリント用組成物の光硬化性が良好となりやすく、光インプリントを容易に行うことができる。
【0029】
[重合開始剤]
重合開始剤は、光照射時に上記ポリシロキサンの重合を開始及び促進させる化合物であれば、特に限定されない。重合開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾル−3−イル]−1−(o−アセチルオキシム)、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、4−ベンゾイル−4’−メチルジメチルスルフィド、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸ブチル、4−ジメチルアミノ−2−エチルヘキシル安息香酸、4−ジメチルアミノ−2−イソアミル安息香酸、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール、ベンジルジメチルケタール、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、チオキサンテン、2−クロロチオキサンテン、2,4−ジエチルチオキサンテン、2−メチルチオキサンテン、2−イソプロピルチオキサンテン、2−エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、クメンパーオキシド、2−メルカプトベンゾイミダール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、3,3−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、α,α−ジクロロ−4−フェノキシアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジベンゾスベロン、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス−(9−アクリジニル)ヘプタン、1,5−ビス−(9−アクリジニル)ペンタン、1,3−ビス−(9−アクリジニル)プロパン、p−メトキシトリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(フラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−n−ブトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(2−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(2−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジン;メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;イソブチリルパーオキサイド、ビス(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;p−メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類;2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等のジアルキルパーオキサイド類;1,1−ビス(t−ブチルパ−オキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のパーオキシケタール類;t−ブチルパ−オキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルパーオキシネオデカノエート等のパーオキシエステル類;ジn−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類;アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチレート等のアゾ化合物類等が挙げられる。
【0030】
中でも、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、ヨードニウム,(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]−ヘキサフルオロフォスフェート、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルと2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルとの混合物、フェニルグリコシレート、ベンゾフェノン等が好ましい。
【0031】
重合開始剤としては市販のものを用いることができ、例えば、IRGACURE 907、IRGACURE 369、IRGACURE 651、(いずれもBASF社製)等が市販されている。重合開始剤は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
本発明に係る光インプリント用組成物において、重合開始剤の含有量は、上記ポリシロキサン100質量部に対し、0.01〜20質量部であることが好ましく、0.05〜10質量部であることがより好ましく、0.08〜5質量部であることが更により好ましい。上記重合開始剤の含有量が上記範囲内であると、得られる光インプリント用組成物の光硬化性が良好となりやすい。
【0033】
[有機溶剤]
本発明に係る光インプリント用組成物は、上記ポリシロキサン、重合開始剤等の全ての成分を適当な有機溶剤に溶解して溶液の形態で用いるのが好ましい。有機溶剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。有機溶剤としては、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール等のアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチル−n−アミルケトン、メチルイソアミルケトン、2−ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、又はジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、上記多価アルコール類又は上記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテル若しくはモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体;ジオキサン等の環状エーテル類;乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、アミルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤等が挙げられる。中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、n−ブタノールを用いることが好ましい。
【0034】
有機溶剤の配合量は、特に限定されないが、上記ポリシロキサンの濃度が0.1〜40質量%となる量であることが好ましく、1〜30質量%となる量であることがより好ましい。
【0035】
[その他の成分]
本発明に係る光インプリント用組成物は、必要に応じて、上記ポリシロキサン、重合開始剤、及び有機溶剤に加え、その他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、界面活性剤が挙げられる。本発明に係る光インプリント用組成物が界面活性剤を含有することにより、モールド形状の転写性がより良好なものとなりやすい。界面活性剤としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。
【0036】
<パターンの製造方法>
本発明に係るパターンの製造方法は、本発明に係る光インプリント用組成物からなる組成物層を基板上に形成する組成物層形成工程と、上記組成物層にモールドを押圧し、上記組成物層を変形させる変形工程と、上記モールドが押圧された状態で、上記組成物層を露光する露光工程と、露光された上記組成物層から上記モールドを剥離させるモールド剥離工程と、上記モールド剥離工程後に上記組成物層を加熱する加熱工程とを含む。以下、
図1を参照して、パターンの製造方法について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るパターンの製造方法を示す工程図である。
【0037】
まず、
図1(A)に示すように、基板10に光インプリント用組成物20を塗布し、光インプリント用組成物20からなる組成物層を基板10上に形成する。基板10は、ガラス基板、半導体微細加工が施されるSiウェハ、銅配線、絶縁層等からなる。
【0038】
光インプリント用組成物20を塗布する際は、スピンコーター、バーコーター、ダイコーター、ロールコーター、リバースコーター、スリットコーター、スプレー等を用いる。光インプリント用組成物20は、その後に実施されるパターン形成等の加工のため基板10に塗布されたときの厚みが均一であることが好ましい。このため、光インプリント用組成物20を基板10上に積層する際には、スピンコーター、バーコーター、又はダイコーターが好適である。組成物層の膜厚は、10〜500nmが好ましく、30〜150nmがより好ましい。
【0039】
次に、
図1(B)に示すように、光インプリント用組成物20が積層された基板10に、凹凸構造の所定パターンが形成されたモールド30を、光インプリント用組成物20に対向して押し付け、光インプリント用組成物20をモールド30の凹凸構造のパターンに合わせて変形させる。
【0040】
次に、
図1(C)に示すように、モールド30を押圧した状態で、光インプリント用組成物20に露光を行う。具体的には、紫外線(UV)等の電磁波が光インプリント用組成物20に照射される。露光により、モールド30が押圧された状態で光インプリント用組成物20が硬化し、モールド30の凹凸構造が転写された光インプリント用組成物20の硬化物からなる硬化膜が形成される。なお、モールド30は、照射される電磁波に対して透過性を有する。
【0041】
次に、
図1(D)に示すように、基板10からモールド30を剥離する。これにより、硬化した状態の光インプリント用組成物20が基板10上にパターニングされる。このように、光インプリント用組成物20が硬化した状態でモールド30を基板10から剥離することにより、モールド30の押圧を低圧化しつつ、形成されるパターン形状の、モールド30の凹凸構造に対する追随性を向上させることができる。
【0042】
その後、硬化した状態の光インプリント用組成物20を加熱する。これにより、光インプリント用組成物20の硬化が更に促進される。加熱温度は、200〜400℃が好ましく、250〜350℃がより好ましい。このようにして、高温下での耐アルカリ性に優れるパターンを得ることができる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0044】
(インプリント用組成物の調製)
表1に示す通り、ポリシロキサンと有機溶剤又はアルコキシシランと重合開始剤とを混合し、インプリント用組成物を調製した。なお、ポリシロキサンと有機溶剤又はアルコキシシランとの質量比は10:90である。また、重合開始剤の含有量は、比較例1ではポリシロキサンとアルコキシシランとの合計に対して0.1質量%であり、比較例1以外では、ポリシロキサンに対して0.1質量%である。
表1における各成分の詳細は下記の通りである。
【0045】
比較例5以外のポリシロキサン(質量平均分子量:2500)
【化3】
(式中、添え字p1、q1、及びr1は、上記ポリシロキサン中の全構造単位に対する上記添え字が付された構造単位のモル百分率を表し、p1、q1、及びr1の値は表1に示す通りである。)
【0046】
HSQ:ハイドロジェンシルセスキオキサン(商品名:OCD T−12、東京応化工業(株)製、インプリント材料)
OKE:オルトケイ酸テトラエチル
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
MMPOM:プロピレングリコールジメチルエーテル(商品名:ハイソルブMMPOM、東邦化学工業(株)製)
IR−907:IRGACURE 907(商品名、BASF社製)
IR−369:IRGACURE 369(商品名、BASF社製)
【0047】
(転写性の評価)
ガラス基板上に、実施例又は比較例の組成物を、スピンナーを用いて塗布し、100℃で2分間、プリベークを行い、膜厚100nmの組成物層を形成した。ただし、比較例1では、有機溶剤を用いていないため、プリベークを省略した。次に、ナノインプリンターST200(東芝機械製)を用いて、室温(25℃)において、上記組成物層に対して凹型の石英モールドをプレス圧力0.5MPaで10秒間押し付けた。次いで、モールドを押し当てた状態で、ST200付属のi−Line LED(強度:33mW/cm
2)により30秒間の露光を行い、モールドを剥離した。最後に、300℃で10分間の加熱を行い、ガラス基板上に、上記組成物の硬化物からなる構造体を得た。
【0048】
得られた構造体を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、以下の評価基準で評価した。結果を表1に示す。
○:ガラス基板上に、寸法70nm、ピッチ250nmのラインアンドスペースパターン状の構造体が形成されたことが確認できた。
△:ガラス基板上に、ラインアンドスペースパターン状の構造体は形成されたが、寸法及びピッチは不均一であった。
×:組成物層が硬すぎて、モールドを押し付けてもパターンを転写することができなかった。
【0049】
(耐アルカリ性の評価)
上記転写性の評価で得られた構造体をガラス基板とともに50℃のアルカリ溶液(40質量ppm水酸化ナトリウム水溶液、pH10)に浸漬した。30分後、ガラス基板を取り出し、表面を目視で観察し、以下の評価基準で評価した。結果を表1に示す。
○:構造体は形状を保持しており、ガラス基板からの剥離もアルカリ溶液への溶解も観察されなかった。
×:構造体はアルカリ溶液に溶解した。
【0050】
【表1】
【0051】
表1に示すように、上記一般式(a4)において添え字p1が付された構造単位の含有量が30〜85モル%であり、上記一般式(a4)において添え字q1が付された構造単位の含有量が15〜70モル%である実施例の光インプリント用組成物を用いた場合には、転写性及び耐アルカリ性のいずれにも優れていた。これに対し、上記一般式(a4)において添え字p1が付された構造単位の含有量が85モル%超であり、上記一般式(a4)において添え字q1が付された構造単位の含有量が15モル%未満である比較例1、2、及び4の光インプリント用組成物を用いた場合には、転写性には優れていたものの、耐アルカリ性に劣っていた。また、上記一般式(a4)において添え字p1が付された構造単位の含有量が30モル%未満であり、上記一般式(a4)において添え字q1が付された構造単位の含有量が70モル%超である比較例3の光インプリント用組成物を用いた場合には、転写性に劣っていた。更に、室温インプリント材料を用いた比較例5のインプリント用組成物を用いた場合には、転写性にやや劣っており、耐アルカリ性に劣っていた。