特許第6284412号(P6284412)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284412
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】蓄熱式燃料加熱装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 53/02 20060101AFI20180215BHJP
   F28D 15/02 20060101ALI20180215BHJP
   F28D 20/02 20060101ALI20180215BHJP
   F02M 55/02 20060101ALI20180215BHJP
   F01P 3/12 20060101ALI20180215BHJP
   F01P 3/20 20060101ALI20180215BHJP
   F02M 31/16 20060101ALI20180215BHJP
   F02M 53/00 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   F02M53/02
   F28D15/02 Q
   F28D15/02 D
   F28D20/02 F
   F02M55/02 350G
   F01P3/12
   F01P3/20 F
   F02M31/16 E
   F02M31/16 F
   F02M31/16 A
   F02M53/00 J
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-82472(P2014-82472)
(22)【出願日】2014年4月14日
(65)【公開番号】特開2015-203340(P2015-203340A)
(43)【公開日】2015年11月16日
【審査請求日】2017年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】田中 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】岩野 勇輝
【審査官】 櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−108508(JP,A)
【文献】 特開2009−275544(JP,A)
【文献】 実開昭59−062260(JP,U)
【文献】 実開昭61−009550(JP,U)
【文献】 特開昭60−240866(JP,A)
【文献】 特開昭60−081592(JP,A)
【文献】 特開2009−264216(JP,A)
【文献】 実開昭60−128176(JP,U)
【文献】 実開平04−113778(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0312279(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 53/02
F02M 31/16
F02M 53/00
F02M 55/02
F01P 3/12
F01P 3/20
F28D 15/02
F28D 20/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄熱式燃料加熱装置であって、
燃料噴射装置に接続される燃料パイプと、
前記燃料パイプの内部に一部が配置されるヒートパイプと、
前記燃料パイプから露出する前記ヒートパイプに接続され、蓄熱材が封入される蓄熱部と、
前記蓄熱材を相変化させる発核装置と、
を具備し、
前記燃料パイプ内に位置する前記ヒートパイプの外面の一部には断熱部材が設けられ、
前記断熱部材は、前記燃料噴射装置の近傍を除く部位に設けられることを特徴とする蓄熱式燃料加熱装置。
【請求項2】
蓄熱式燃料加熱装置であって、
燃料噴射装置に接続される燃料パイプと、
前記燃料パイプの内部に一部が配置されるヒートパイプと、
前記燃料パイプから露出する前記ヒートパイプに接続され、蓄熱材が封入される蓄熱部と、
前記蓄熱材を相変化させる発核装置と、
を具備し、
前記燃料パイプには、複数の前記燃料噴射装置が併設され、
それぞれの前記燃料噴射装置ごとに、それぞれ対応する前記ヒートパイプが設けられ、それぞれの前記ヒートパイプの先端が、対応する前記燃料噴射装置の近傍に位置し、
前記ヒートパイプの先端近傍を除く部位に断熱部材が設けられることを特徴とする蓄熱式燃料加熱装置。
【請求項3】
前記ヒートパイプの長手方向が、前記燃料パイプ内の燃料の流れ方向に略平行であって、前記ヒートパイプの前記燃料パイプ内における端部が、前記ヒートパイプが前記燃料パイプを貫通する貫通部より前記流れ方向の上流側に配置されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蓄熱式燃料加熱装置。
【請求項4】
前記燃料パイプから露出する前記ヒートパイプには、前記蓄熱部に加え、さらに、冷却水との熱交換を行う熱交換部が接続されることを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載の蓄熱式燃料加熱装置。
【請求項5】
少なくとも前記燃料噴射装置が配置される範囲の前記燃料パイプの内面には、断熱材が設けられることを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載の蓄熱式燃料加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の燃料を加熱するための蓄熱式燃料加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジンのシリンダ内に噴射される燃料をエンジン始動前にあらかじめ加熱しておくことでエンジンの始動性向上、燃料消費量の低減、エミッションの低減などの効果があることが知られている。通常、エンジン始動後所定時間が経過し、エンジン自体が温まると、燃料パイプ内の燃料自体も加温される。しかし、エンジンが温まる前のエンジン始動初期において燃料を温めるためには、別途、燃料を加温するための装置が必要となる。
【0003】
このような燃料の加温装置としては、例えば、エンジンのコモンレールの周囲に、潜熱蓄熱材を収容した潜熱蓄熱材収容室を形成し、冷間始動時は潜熱蓄熱材を発核させて燃料を加温する方法がある(特許文献1)。
【0004】
また、フューエルインジェクションレールの外周に、潜熱蓄熱材が収容された加熱装置がある。(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−316775号公報
【特許文献2】特開2009−275544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
燃料加温のタイミングは運転者がこれから自動車を運転することが確実であるエンジン始動時のみである。そのためエンジン始動時に蓄熱材の発熱で加温開始するが、特許文献1、特許文献2の構成では、燃料パイプの外周に蓄熱材を配置するものであるため、まず燃料パイプ自体が温まらなければ、内部の燃料を加温することができず、エンジン始動直後に即座に燃料を温めることが困難である。
【0007】
また、蓄熱材は結晶化の進行とともに熱が生じるが、発核装置側から順に生じるため、発核装置から遠い側の燃料噴射装置近傍の燃料を即座に加温することが困難である。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、エンジン始動直後から効率よく燃料を加温することが可能な蓄熱式燃料加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するため、第1の発明は蓄熱式燃料加熱装置であって、燃料噴射装置に接続される燃料パイプと、前記燃料パイプの内部に一部が配置されるヒートパイプと、前記燃料パイプから露出する前記ヒートパイプに接続され、蓄熱材が封入される蓄熱部と、前記蓄熱材を相変化させる発核装置と、を具備し、前記燃料パイプ内に位置する前記ヒートパイプの外面の一部には断熱部材が設けられ、前記断熱部材は、前記燃料噴射装置の近傍を除く部位に設けられることを特徴とする蓄熱式燃料加熱装置である。
第2の発明は、蓄熱式燃料加熱装置であって、燃料噴射装置に接続される燃料パイプと、前記燃料パイプの内部に一部が配置されるヒートパイプと、前記燃料パイプから露出する前記ヒートパイプに接続され、蓄熱材が封入される蓄熱部と、前記蓄熱材を相変化させる発核装置と、を具備し、前記燃料パイプには、複数の前記燃料噴射装置が併設され、それぞれの前記燃料噴射装置ごとに、それぞれ対応する前記ヒートパイプが設けられ、それぞれの前記ヒートパイプの先端が、対応する前記燃料噴射装置の近傍に位置し、前記ヒートパイプの先端近傍を除く部位に断熱部材が設けられることを特徴とする蓄熱式燃料加熱装置である。
【0010】
前記ヒートパイプの長手方向が、前記燃料パイプ内の燃料の流れ方向に略平行であって、前記ヒートパイプの前記燃料パイプ内における端部が、前記ヒートパイプが前記燃料パイプを貫通する貫通部より前記流れ方向の上流側に配置されることが望ましい。
【0013】
前記燃料パイプから露出する前記ヒートパイプには、前記蓄熱部に加え、さらに、冷却水との熱交換を行う熱交換部が接続されてもよい。
【0014】
少なくとも前記燃料噴射装置が配置される範囲の前記燃料パイプの内面には、断熱材が設けられてもよい。
【0015】
本発明によれば、燃料パイプの内部にヒートパイプが挿入され、燃料パイプの内部から燃料を加温することができる。このため、燃料パイプが温まるよりも早く、燃料自体を加温することができる。したがって、エンジン始動直後に、即座に燃料を加温することが可能である。
【0016】
また、ヒートパイプが燃料パイプの内部において、燃料の流れに略平行に配置され、燃料の流れの下流側から燃料パイプに挿通することで、熱移動が対向流になるためヒートパイプと燃料との熱交換効率を高くすることが可能である。
【0017】
また、燃料パイプ内において、燃料噴射装置近傍以外のヒートパイプを断熱することで、燃料噴射装置へ流れる燃料を効率よく温めることができる。
【0018】
また、ヒートパイプを複数本用い、各燃料噴射装置毎に対応するヒートパイプを設け、それぞれのヒートパイプに対し、燃料噴射装置近傍の先端部以外を断熱部材で覆うことで、それぞれの燃料噴射装置へ流れる燃料を略均一に温めることができる。
【0019】
また、ヒートパイプの一部に冷却水との熱交換が可能な熱交換部を設けることで、エンジンの暖機が十分完了した後に、燃料の温度が過剰に上昇することを抑制することができる。
【0020】
また、燃料パイプの内面に断熱部材を設けることで、燃料の熱が、燃料パイプや、燃料パイプの外部に放出されることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、エンジン始動直後から効率よく燃料を加温することが可能な蓄熱式燃料加熱装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】蓄熱式燃料加熱装置1を示す部分断面図。
図2】蓄熱式燃料加熱装置1aを示す部分断面図。
図3】(a)は蓄熱式燃料加熱装置1bを示す部分断面図、(b)は(a)の3B−3B線断面図。
図4】蓄熱式燃料加熱装置1cを示す部分断面図。
図5】(a)は、図4の5A−5A線断面図、(b)は、図4の5B−5B線断面図、(c)は、図4の5C−5C線断面図、(d)は、図4の5D−5D線断面図。
図6】蓄熱式燃料加熱装置1dを示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施形態1)
以下、本発明の実施の形態にかかる蓄熱式燃料加熱装置について説明する。図1は、蓄熱式燃料加熱装置1を示す部分断面図である。蓄熱式燃料加熱装置1は、主に、燃料パイプ3、蓄熱部5、燃料噴射装置7、発核装置9等から構成される。なお、燃料パイプ3に設けられるリターンパイプ(バルブ)等の図示は省略する。
【0024】
燃料パイプ3には、複数の燃料噴射装置7が設けられる。燃料パイプ3は、燃料ポンプによって供給される燃料13が流れる部位である。なお、燃料噴射装置7の配置数は図示した例には限られない。
【0025】
燃料パイプ3の内面の一部には、必要に応じて断熱部材11が設けられる。例えば、燃料噴射装置7が配置される範囲の燃料パイプ3の内面に断熱部材11が設けられる。より具体的には、ヒートパイプ17が設けられる範囲の燃料パイプ3の内面に断熱部材11が設けられる。断熱部材11は、燃料13の熱が、燃料パイプ3に伝わることを抑制する。断熱部材11は、例えば樹脂である。
【0026】
燃料パイプ3の端部近傍から、ヒートパイプ17が挿通される。燃料パイプ3とヒートパイプ17の間は、シール部材によって封止される。また、燃料パイプ3とヒートパイプ17の間には、シール部材に加えて、必要に応じて断熱部材19が設けられる。断熱部材19は、ヒートパイプ17の熱が、燃料パイプ3に移動することを抑制する。断熱部材19は、例えば樹脂である。
【0027】
ヒートパイプ17は、燃料パイプ3内の燃料13の流れ方向(図中矢印A方向)に略平行に配置される。また、ヒートパイプ17が、燃料13の流れの下流側から燃料パイプ3に挿通される。燃料13の流れの下流側の燃料パイプ3の端部からは、ヒートパイプ17の一部が突出する。
【0028】
なお、ヒートパイプ17の形状は円断面であってもよく、矩形等の多角形であってもよい。また、ヒートパイプ17は、1本でなくてもよく、複数本を束ねてもよく、または、複数本のヒートパイプ17を束ねずに用いてもよい。
【0029】
燃料パイプ3の端部から突出するヒートパイプ17は、蓄熱部5に収容される。蓄熱部5は蓄熱材15が封入されるケースである。蓄熱部5は、周囲との断熱性に優れる、例えば樹脂製である。また、蓄熱部5には、発核装置9が設けられる。発核装置9は、蓄熱部5の内部の蓄熱材15の相変化を開始させる部材である。
【0030】
蓄熱材15は、過冷却型潜熱蓄熱材であり、例えば、酢酸ナトリウム3水和物や硫酸ナトリウム10水和物、チオ硫酸ナトリウム五水和物である。蓄熱材15は、物質の相変化に伴う潜熱を利用する過冷却型蓄熱材であり、凝固点温度以下になっても液体から固体への相変化(結晶化)が起きずに液体状態(過冷却液体)を保つが、衝撃、振動、摩擦といった外部からのエネルギーにより、過冷却液体中に結晶の核ができ、結晶の核を起点として連続的に結晶が成長し、放熱しながら結晶化が完了する材料である。
【0031】
蓄熱部5内のヒートパイプ17には、フィン21が接合される。フィン21によって、蓄熱材15とヒートパイプ17とが効率よく熱交換を行うことができる。
【0032】
次に、蓄熱式燃料加熱装置1の機能について説明する。エンジンが冷えた状態から始動すると、燃料13は、燃料パイプ3内を流れだす。また、同時に発核装置9が作動し、蓄熱材15が相変化を開始する。このため、蓄熱材15が、蓄熱していた熱を放出する。
【0033】
蓄熱材15の熱は、フィン21等を介してヒートパイプ17に伝わる。ヒートパイプ17は、即座に作動温度以上となり、熱の輸送を開始する。すなわち、蓄熱材15の熱が、燃料パイプ3の内部に輸送される。
【0034】
燃料パイプ3の内部では、ヒートパイプ17で輸送された熱が放出される。すなわち、ヒートパイプ17の周囲の燃料13が加温される。加温された燃料13は、各燃料噴射装置7からエンジンのシリンダへ噴射される。
【0035】
なお、エンジンの暖機が進行すると、燃料パイプ3内の燃料13は、エンジンからの熱で温められる。また、この際、燃料13の熱は、ヒートパイプ17によって蓄熱部5に輸送される。このため、熱を蓄熱部5(蓄熱材15)に蓄熱することができる。
【0036】
以上、本実施の形態によれば、蓄熱材15の熱を、燃料パイプ3を介さずに直接燃料13に輸送することができるため、エンジン始動直後から即座に燃料13を温めることができる。
【0037】
ヒートパイプ17が燃料パイプ3の内部において、燃料13の流れに略平行に配置され、燃料13の下流側から燃料パイプ3に挿通することで、ヒートパイプ17と燃料13との熱交換効率を高くすることができる。
【0038】
この際、ヒートパイプ17と燃料パイプ3との間には、断熱部材19が設けられるため、ヒートパイプ17の熱が、燃料パイプ3に伝わることを抑制することができる。
【0039】
また、燃料パイプ3の内面の断熱部材11によって、燃料13の熱が燃料パイプ3に逃げることを抑制することができる。
【0040】
(実施形態2)
次に、第2の実施の形態について説明する。図2は、蓄熱式燃料加熱装置1aを示す部分断面図である。なお、以下の説明において、蓄熱式燃料加熱装置1と同様の機能を奏する構成については、図1と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0041】
蓄熱式燃料加熱装置1aは、蓄熱式燃料加熱装置1とほぼ同様の構成であるが、熱交換部23が設けられる点で異なる。熱交換部23は、蓄熱部5と併設される。すなわち、燃料パイプ3と熱交換部23とで蓄熱部5が挟まれるように配置される。なお、熱交換部23と蓄熱部5の配置は図示した例には限られない。
【0042】
熱交換部23は、エンジンの冷却水回路の一部に形成される。すなわち、熱交換部23には、冷却水25が流れる。より具体的には、熱交換部23には、流入口と流出口とが設けられ、流入口から流入した冷却水は(図中矢印B)、流出口から流出する(図中矢印C)。なお、冷却水回路を流れる冷却水25の熱は、ラジエータ等によって外部に放出される。
【0043】
熱交換部23の内部には、ヒートパイプ17の端部が挿通される。すなわち、ヒートパイプ17は蓄熱部5を貫通し、ヒートパイプ17の両端部が、蓄熱部5の両側に設けられた燃料パイプ3および熱交換部23内部に、それぞれ配置される。
【0044】
熱交換部23内のヒートパイプ17には、フィン27が接合される。フィン27によって、冷却水25とヒートパイプ17とが効率よく熱交換を行うことができる。
【0045】
次に、蓄熱式燃料加熱装置1aの機能について説明する。エンジンが冷えた状態から始動すると、前述した蓄熱式燃料加熱装置1と同様に、直ちに、蓄熱材15が発した熱が燃料パイプ3内に輸送され、燃料13を加温する。なお、蓄熱材15の熱の一部は熱交換部23に運ばれるが、十分な総発熱量があれば、必要な熱量を燃料パイプ3内に輸送することができる。
【0046】
所定時間が経過し、エンジンが温まると、燃料パイプ3を含めて燃料13が十分に昇温する。すなわち、エンジン表面はかなりの高温となるため、燃料13は、エンジン自体によって高温となる。
【0047】
一方、冷却水25の温度も、エンジン温度の上昇に伴い上昇する。しかし、冷却水25は、エンジンの温度を一定に保つためにラジエータで外気へ放熱する役割のものであるため、エンジン温度に対してかなり低い温度で安定する。例えば、80℃以下の温度で安定する。したがって、燃料13の温度が、冷却水25の温度よりも高くなる。
【0048】
燃料13の温度が所定温度以上に上昇し、蓄熱部5および熱交換部23の温度が低温部となると、ヒートパイプ17が逆向きに作動する。すなわち、燃料13の熱が、ヒートパイプ17によって蓄熱部5および熱交換部23に輸送される。前述した様に、蓄熱部5に輸送された熱は、蓄熱材15に蓄熱される。
【0049】
蓄熱部5に十分に熱が蓄熱されると、余剰の熱は、熱交換部23に輸送される。熱交換部23に輸送された熱は、冷却水25に対して放熱される。すなわち、燃料13の温度が過度に上がりすぎることを抑制することができる。
【0050】
第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、エンジン始動初期の燃料13の昇温に加えて、定常時における燃料13の過度な温度上昇を抑えることができる。すなわち、燃料13の温度制御機構として機能させることができる。
【0051】
(実施形態3)
次に、第3の実施の形態について説明する。図3(a)は、蓄熱式燃料加熱装置1bを示す部分断面図であり、図3(b)は、図3(a)の3B−3B線断面図である。蓄熱式燃料加熱装置1bは、蓄熱式燃料加熱装置1とほぼ同様の構成であるが、ヒートパイプ17の一部に断熱部材29が設けられる点で異なる。
【0052】
断熱部材29は、ヒートパイプ17の長手方向に対して、所定の位置に設けられる。断熱部材29は、ヒートパイプ17の少なくとも一部を全周にわたり被覆する。なお、断熱部材29は、例えば樹脂である。ヒートパイプ17は、断熱部材29が設けられない部位が燃料パイプ3内に露出する。すなわち、断熱部材29が設けられない部位のヒートパイプ17が、燃料13と接触する。
【0053】
断熱部材29は、燃料噴射装置7近傍のみ、ヒートパイプ17が露出するように設けられる。すなわち、少なくとも燃料噴射装置7に対応する位置ではヒートパイプ17が露出し、断熱部材29は、燃料噴射装置7同士の間の少なくとも一部に設けられる。
【0054】
金属製のヒートパイプ17は、通常、周囲との熱伝導性が高い。したがって、ヒートパイプ17の全表面が燃料13と接触していると、ヒートパイプ17と接触する部位の燃料13全体と熱交換が行われる。一方、燃料13の一部は、対流するかリターンパイプから戻される。したがって、燃料噴射装置7へ供給される燃料13へ与えられる熱量が少なくなる恐れがある。
【0055】
これに対し、燃料噴射装置7近傍以外を断熱部材29で被覆することで、燃料噴射装置7近傍の燃料13を効率よく加温することができる。このため、ヒートパイプ17で輸送した熱を有効に利用することができる。
【0056】
第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、燃料噴射装置7へ供給される直前の燃料13を効率よく加温することができる。なお、蓄熱式燃料加熱装置1bに対して、さらに熱交換部23を設けてもよい。
【0057】
(第4実施形態)
次に、第4の実施の形態について説明する。図4は、蓄熱式燃料加熱装置1cを示す部分断面図である。また、図5(a)は、図4の5A−5A線断面図、図5(b)は、図4の5B−5B線断面図、図5(c)は、図4の5C−5C線断面図、図5(d)は、図4の5D−5D線断面図である。蓄熱式燃料加熱装置1cは、蓄熱式燃料加熱装置1とほぼ同様の構成であるが、ヒートパイプ17a、17b、17c、17d(以下、まとめてヒートパイプ17と称する場合がある)が複数本設けられる点で異なる。
【0058】
ヒートパイプ17の本数は、燃料噴射装置7の個数に対応する。したがって、図では、4本のヒートパイプ17a、17b、17c、17dが設けられる例を示す。ヒートパイプ17の一方の端部は、蓄熱部5内に設けられる。なお、フィン21は、全てのヒートパイプ17に対して接合される。
【0059】
ヒートパイプ17a、17b、17c、17dは、それぞれ長さが異なる。それぞれのヒートパイプ17a、17b、17c、17dの先端位置は、各燃料噴射装置7の近傍位置に対応する。図に示す例では、燃料13の流れの下流側(図中右側)から上流側の燃料噴射装置7に対し、それぞれヒートパイプ17a、17b、17c、17dの順に配置される。
【0060】
それぞれのヒートパイプ17a、17b、17c、17dは、先端部近傍以外が断熱部材29で被覆される。すなわち、ヒートパイプ17a、17b、17c、17dは、先端部近傍のみが燃料パイプ3内に露出する。すなわち、少なくとも燃料噴射装置7に対応する位置ではヒートパイプ17が露出し、断熱部材29は、ヒートパイプ17の基部側の少なくとも一部に設けられる。
【0061】
このようにすることで、それぞれのヒートパイプ17a、17b、17c、17dは、先端部近傍でのみ周囲の燃料13と熱交換を行うことができる。すなわち、例えば、下流側の燃料噴射装置7に供給される直前の燃料13は、ヒートパイプ17aによって加温される。また、下流側から二番目の燃料噴射装置7に供給される直前の燃料13は、ヒートパイプ17bによって加温される。また、下流側から三番目の燃料噴射装置7に供給される直前の燃料13は、ヒートパイプ17cによって加温される。また、最も上流側の燃料噴射装置7に供給される直前の燃料13は、ヒートパイプ17dによって加温される。
【0062】
このように、それぞれの燃料噴射装置7に供給される燃料13ごとに、それぞれ対応するヒートパイプ17a、17b、17c、17dを設けることで、各燃料噴射装置7に対して供給される燃料を均一に加温することができる。
【0063】
第4の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、燃料噴射装置7の位置によらず、均等に燃料13を加温することができる。なお、蓄熱式燃料加熱装置1cに対して、さらに熱交換部23を設けてもよい。
【0064】
(第5実施形態)
次に、第5の実施の形態について説明する。図6は、蓄熱式燃料加熱装置1dを示す部分断面図である。蓄熱式燃料加熱装置1dは、蓄熱式燃料加熱装置1cとほぼ同様の構成であるが、ヒートパイプ17の向きが異なる。
【0065】
前述した実施形態では、ヒートパイプ17は、燃料パイプ3に対して、燃料13の流れに略平行の向きで挿通された例を示した。これに対し、蓄熱式燃料加熱装置1dは、ヒートパイプ17が、燃料パイプ3に対して、燃料13の流れに略垂直の向きで挿通される。
【0066】
なお、図示は省略するが、燃料パイプ3と蓄熱部5との間で露出するヒートパイプ17には、断熱部材で被覆してもよい。また、ヒートパイプ17a、17b、17c、17dは、蓄熱部5内で束ねられなくてもよい。また、ヒートパイプ17a、17b、17c、17dの曲げ方は、図示した例には限られない。
【0067】
実施形態4と同様に、ヒートパイプ17の本数は、燃料噴射装置7の個数に対応する。また、ヒートパイプ17の一方の端部近傍は、蓄熱部5内に設けられる。
【0068】
それぞれのヒートパイプ17a、17b、17c、17dの先端位置は、各燃料噴射装置7の近傍位置に対応する。図に示す例では、燃料13の下流側(図中右側)から上流側の燃料噴射装置7に対し、それぞれヒートパイプ17a、17b、17c、17dの順に配置される。
【0069】
第5の実施の形態によれば、第4の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、ヒートパイプ17a、17b、17c、17dの長さの違いを小さくすることができる。なお、蓄熱式燃料加熱装置1dに対して、さらに熱交換部23を設けてもよい。
【0070】
このように、本発明では、ヒートパイプ17の挿通方向は、特に限定されない。但し、実施形態1〜4に示すように、ヒートパイプ17を、燃料パイプ3に対して、燃料13の流れに略平行の向きで、燃料の下流側から挿通することが望ましい。
【0071】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0072】
1、1a、1b、1c、1d………蓄熱式燃料加熱装置
3………燃料パイプ
5………蓄熱部
7………燃料噴射装置
9………発核装置
11………断熱部材
13………燃料
15………蓄熱材
17、17a、17b、17c、17d………ヒートパイプ
19………断熱部材
21………フィン
23………熱交換部
25………冷却水
27………フィン
29………断熱部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6