【文献】
Cheng-Chung Lee et. al.,A Novel Approach to Make Flexible Active Matrix Displays,2010 SID International Symposium Digest of Technical Papers,米国,Society for Infomation Display,2010年 5月27日,Volume XLI, Book II,810-813
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第一ポリイミド層が上記一般式(1)で表される構造単位を有するポリイミドであり、また、第二ポリイミド層が含フッ素ポリイミドであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の表示装置の製造方法。
第一ポリイミド層が上記一般式(1)で表される構造単位を有するポリイミドであり、また、第二ポリイミド層が含フッ素ポリイミドであることを特徴とする請求項8〜13のいずれかに記載の表示装置の製造方法。
請求項1又は請求項8で第二ポリイミド層から剥離分離された、支持体と第一ポリイミド層の積層体上に、再度第二ポリイミド層を形成した後に、更に第二ポリイミド層上に所定の表示部を形成し、その後、第一ポリイミド層と第二ポリイミド層との境界面で分離して、第二ポリイミド層からなるポリイミド基材上に表示部を備えた表示装置を得る表示装置の製造方法。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や有機EL表示装置等の表示装置は、テレビのような大型ディスプレイや、携帯電話、パソコン、スマートフォンなどの小型ディスプレイ等、各種のディスプレイ用途に使用されている。表示装置の代表的なものとして有機EL表示装置があるが、例えば、この有機EL表示装置では、支持基材であるガラス基板上に薄膜トランジスタ(以下、TFT)を形成し、電極、発光層、電極を順次形成し、最後に別途ガラス基板や多層薄膜等で気密封止して作られる。
【0003】
ここで、支持基材であるガラス基板を従来のガラス基板から樹脂基材へと置き換えることにより、薄型・軽量・フレキシブル化が実現でき、表示装置の用途を更に広げることができる。しかしながら、樹脂は一般にガラスと比較して寸法安定性、透明性、耐熱性、耐湿性、ガスバリア性等に劣るため、現時点では研究段階にあり種々の検討がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1は、フレキシブルディスプレー用プラスチック基板として有用なポリイミド、及びその前駆体に係る発明に関し、シクロへキシルフェニルテトラカルボン酸等のような脂環式構造を含んだテトラカルボン酸類を用いて、各種ジアミンと反応させたポリイミドが透明性に優れることを報告している。この他にも、支持基材にフレキシブルな樹脂を用いて軽量化を図る試みがなされており、例えば、下記の非特許文献1及び2では、透明性の高いポリイミドを支持基材に適用した有機EL表示装置が提案されている。
【0005】
このように、ポリイミド等の樹脂フィルムがフレキシブルディスプレー用プラスチック基板に有用であることは知られているが、表示装置の製造工程は、既にガラス基板を用いて行なわれており、その生産設備の大半はガラス基板を使用することを前提に設計されている。したがって、既存の生産設備を有効活用しながら、表示装置を生産することを可能とすることが望ましい。
【0006】
その検討の具体例の一つとして、ガラス基板上に樹脂フィルムを積層した状態で所定の表示装置の製造工程を完了させ、その後にガラス基板を取り除くことで、樹脂基材上に表示部を備えた表示装置の製造方法が知られている(特許文献2、非特許文献3、非特許文献4参照)。そして、これらの場合、樹脂基材上に形成された表示部(ディスプレイ部)に損傷を与えずに樹脂基材とガラスとを分離することが必要となる。
【0007】
すなわち、非特許文献3では、ガラス基板上に塗布して固着した樹脂基材に対し、所定の表示部を形成した後、EPLaR(Electronics on Plastic by Laser Release)プロセスと呼ばれる方法によりガラス側からレーザーを照射して、表示部を備えた樹脂基材をガラスから強制分離する。ただし、この方式では高価なレーザー装置が必要であるだけでなく、分離に時間がかかるため生産性が低い欠点がある。しかも、分離の際に、樹脂基材の表面性状や、それに搭載された表示部に対して悪影響を及ぼすおそれがある。
【0008】
一方、非特許文献4記載の方法は、EPLaR法の欠点を改善した方法であって、剥離層をガラス基板に塗布して形成した後、剥離層の上にポリイミド樹脂を塗布し、有機EL表示装置の製造工程が完了した後に剥離層からポリイミドフィルム層を剥離する方法である。ここで、
図1、
図2に非特許文献4に記載された有機EL表示装置の製造方法を示す。この方法は、剥離層2をガラス基板1に形成した後に、剥離層2よりも一回り大きくポリイミド層3を形成し、その後、所定のTFT及び有機EL工程のプロセス処理を行い、TFT/有機ELパネル部(表示部)4を形成した後、剥離層2の内側の切断線5に沿って剥離層2まで切断して、ポリイミド層3及びTFT/有機ELパネル部(表示部)4を剥離層2から剥離するというものである。しかしながら、非特許文献4には、その剥離層にどのようなものを使用するかなど具体的記載がない。そのため、実際に剥離層からの分離がどの程度の力を要するのか、また、分離されたポリイミド層3の表面性状がどのような状態になるのか不明である。また、剥離層の面積をポリイミド層の面積より小さくする必要があるため、有機EL表示装置の形成可能な面積に制限があり、生産性に課題がある。生産性の低下を防止するために剥離層の面積を大きくすると、剥離層の外周部でガラスに接着しているポリイミド層の面積が小さくなり、工程中の応力により剥離が発生しやすくなるといった問題がある。
【0009】
更に、特許文献2記載の方法は、ガラス基板上にパリレンまたは環状オレフィン共重合体からなる剥離層を形成した後に、非特許文献4記載の方法と同様に剥離層よりも一回り大きくポリイミド層を形成し、その上に電子デバイスの作成を行なった後、ポリイミド層を剥離する方法である。ディスプレイ用途に必要となるTFTの形成には、一般に400℃程度に達するアニール工程が必要であるが、この方法では、剥離層の耐熱性がポリイミドより劣るため、ポリイミド層の熱処理温度や電子デバイスを作成する際の最高温度が剥離層の耐熱性に制限されるという課題がある。また、ガラスと剥離層との間、及び、剥離層とポリイミド層との間の接着は弱いため、工程中の応力に耐えられず剥離の原因となりうる。さらに剥離層の熱膨張係数はポリイミドより大きく、樹脂種の違いによる熱膨張係数の差が反りの要因となりうる。
【0010】
また、特許文献3には、支持基板上に、剥離層を介して形成した樹脂フィルムの上層に半導体素子を形成した後、樹脂フィルムから支持基板を剥離する半導体装置の製造方法が記載されている。この特許文献3では、樹脂フィルムとして、ポリベンゾオキサゾールが開示されている。一般的にポリベンゾオキサゾールはポリイミドと比較し、他材料との剥離性に優れる。ここで、一般に、他材料との良好な剥離性を確保するためには、被着物と接した状態での熱処理時間は短時間であることが好ましいが、ポリイミドベンゾオキサゾールの場合、複素環と芳香環が共平面構造をとるため結晶性が高くなりやすく、反応を完結させフィルム中に残存する揮発分濃度を十分に低くするためには、高温での比較的長時間の熱処理時間が必要である。ところが、この特許文献3では、剥離層からの分離がどの程度の力を要するのか不明であるが、剥離層と樹脂フィルムの剥離は温水に浸漬することにより可能であることが開示されている。また、結晶性が高いためフィルムが脆くなりやすく、これを防ぐために柔軟な構造である脂環式構造を導入すると、耐熱性が低下するといった問題がある。さらに脂環式構造の導入により熱膨張性も低くなりにくくなる。
【0011】
これら特許文献2〜3、及び非特許文献3〜4に記載された方法は、いずれもガラスを支持体として用いて、ガラスに固定した樹脂基材に表示部を形成することで、樹脂基材の取り扱い性や寸法安定性を担保することができ、しかも、液晶表示装置や有機EL表示装置等の表示装置を製造する現行の製造ラインで、そのままガラス基板を使用できる利点がある。そのため、所定の表示部を形成した後に極めて簡便に分離でき、かつ、樹脂基材や表示部に影響を与えないようにすることができれば、量産性に優れた方法とすることができるばかりか、ガラス基板から樹脂基材への置き換えを更に促進させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本発明の目的は、予め支持体と一体化された樹脂基材に対して、所定の表示部を形成した後、支持体から樹脂基材を容易に分離できて、表示装置を簡便に得ることができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者等は上記課題を解決するために検討した結果、いずれもポリイミドからなる第一樹脂層と第二樹脂層とが支持体上に積層された状態で、第二樹脂層上に所定の表示部を形成し、その後、第一樹脂層と第二樹脂層との境界面で分離することで、第二樹脂層からなる樹脂基材上に表示部を備えた表示装置が極めて簡便に得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
【0016】
(1)支持体上に第一ポリイミド層と第二ポリイミド層とが積層されるように形成した後に、更に第二ポリイミド層上に所定の表示部を形成し、その後、第一ポリイミド層と第二ポリイミド層との境界面で分離して、第二ポリイミド層からなるポリイミド基材上に表示部を備えた表示装置を得る表示装置の製造方法であって、
第一ポリイミド層又は第二ポリイミド層が、下記一般式(1)で表される構造単位を有するポリイミドからなり、第二ポリイミド層の一部が第一ポリイミド層の周縁部より張り出すようにし、この第二ポリイミド層の張出部が支持体に固着されるようにすることを特徴とする表示装置の製造方法。
【化1】
[式中Ar
1は
、下記式から選ばれるいずれか1種以上の酸無水物残基である4価の有機基を表し、Ar
2はジアミン残基である2価の有機基であり、Ar
1、Ar
2の少なくとも一方が芳香族残基である。]
(2)
上記一般式(1)で表される構造単位を有するポリイミドは、原料である酸無水物が、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、
及びピロメリット酸二無水物から
なる群から選択される
1種以上の酸無水物であることを特徴とする(1)記載の表示装置の製造方法。
(3)
上記一般式(1)で表される構造単位を有するポリイミドは、原料であるジアミンが、1,4−フェニレンジアミン、2,2’−ジメチルベンジジン、
及び1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンから
なる群から選択される
1種以上のジアミンであることを特徴とする(1)記載の製造方法。
(4)第一ポリイミド層と第二ポリイミド層との剥離強度が1N/m以上500N/m以下であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の表示装置の製造方法。
(5)第一ポリイミド層と第二ポリイミド層との剥離強度が5N/m以上300N/m以下であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の表示装置の製造方法。
(6)第一ポリイミド層と第二ポリイミド層との剥離強度が10N/m以上200N/m以下であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の表示装置の製造方法。
(7)第一ポリイミド層が上記一般式(1)で表される構造単位を有するポリイミドであり、また、第二ポリイミド層が含フッ素ポリイミドであることを特徴とする請求項(1)〜(6)のいずれかに記載の表示装置の製造方法。
(8)支持体上に第一ポリイミド層と第二ポリイミド層とが積層されるように形成した後に、更に第二ポリイミド層上に所定の表示部を形成し、その後、第一ポリイミド層と第二ポリイミド層との境界面で分離して、第二ポリイミド層からなるポリイミド基材上に表示部を備えた表示装置を得る表示装置の製造方法であって、
第一ポリイミド層又は第二ポリイミド層が、下記一般式(1)で表される構造単位を有するポリイミドからなることを特徴とする表示装置の製造方法。
【化2】
[式中Ar
1は
、下記式から選ばれるいずれか1種以上の酸無水物残基である4価の有機基を表し、Ar
2はジアミン残基である2価の有機基であり、Ar
1、Ar
2の少なくとも一方が芳香族残基である。]
(9)
上記一般式(1)で表される構造単位を有するポリイミドは、原料である酸無水物が、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、
及びピロメリット酸二無水物から
なる群から選択される
1種以上の酸無水物であることを特徴とする(8)記載の表示装置の製造方法。
(10)
上記一般式(1)で表される構造単位を有するポリイミドは、原料であるジアミンが、1,4−フェニレンジアミン、2,2’−ジメチルベンジジン、
及び1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンから
なる群から選択される
1種以上のジアミンであることを特徴とする(8)記載の製造方法。
(11)第一ポリイミド層と第二ポリイミド層との剥離強度が1N/m以上500N/m以下であることを特徴とする(8)記載の表示装置の製造方法。
(12)第一ポリイミド層と第二ポリイミド層との剥離強度が5N/m以上300N/m以下であることを特徴とする(8)記載の表示装置の製造方法。
(13)第一ポリイミド層と第二ポリイミド層との剥離強度が10N/m以上200N/m以下であることを特徴とする(8)記載の表示装置の製造方法。
(14)第一ポリイミド層が上記一般式(1)で表される構造単位を有するポリイミドであり、また、第二ポリイミド層が含フッ素ポリイミドであることを特徴とする(8)〜(13)のいずれかに記載の表示装置の製造方法。
(15)請求項1又は請求項8で第二ポリイミド層から剥離分離された、支持体と第一ポリイミド層の積層体上に、再度第二ポリイミド層を形成した後に、更に第二ポリイミド層上に所定の表示部を形成し、その後、第一ポリイミド層と第二ポリイミド層との境界面で分離して、第二ポリイミド層からなるポリイミド基材上に表示部を備えた表示装置を得る表示装置の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、いずれもポリイミドからなる第一樹脂層と第二樹脂層とが支持体上に積層された状態にしておくことで、取り扱い性や寸法安定性を確保しながら、所定の表示部を形成することができる。表示部の形成後は、特にレーザー照射等を必要とせずに、第一樹脂層と第二樹脂層との界面を利用して容易に分離することができることから、極めて簡便に表示装置を得ることができる。しかも、分離後に樹脂基材となる第二樹脂層や表示部への影響がないことは勿論、支持体に損傷を与えるようなこともないことから、表示装置の製造において支持体を再利用することも可能であり、製造原価低減にも大きく寄与できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について図面を参照しつつ、より詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではない。
【0020】
本発明における表示装置の製造方法では、第一樹脂層と第二樹脂層とが支持体上に積層された状態で、第二樹脂層上に所定の表示部を形成し、その後、第一樹脂層と第二樹脂層との境界面で分離して、第二樹脂層からなる樹脂基材上に表示部を備えた表示装置を得ることを特徴とする。詳しくは以下で説明するとおりである。なお、下記では、好適な例として、第一樹脂層と第二樹脂層とが、いずれもポリイミドで形成される場合を説明するが、少なくとも一方の樹脂層はポリイミド以外の樹脂で形成してもよい。
【0021】
本発明の表示装置の製造方法では、予め支持体上に第一ポリイミド層及び第二ポリイミド層を備えたものを用いるようにする。そして、第二ポリイミド層側に所定の表示部を形成し、その後、第一ポリイミド層と第二ポリイミド層との境界面で分離することで、第二ポリイミド層からなる樹脂基材(ポリイミド基材)上に表示部を備えた表示装置を製造することができる。
【0022】
より具体的には、先ず、
図3に示したように、液晶表示装置や有機EL表示装置等における表示部の製造工程で台座となる支持体1を準備する。この支持体1については、各種表示装置を形成する表示部の製造過程での熱履歴や雰囲気等に耐え得るような化学的強度や機械的強度を備えたものであれば特に制限されず、ガラス基板や金属基板が例示されるが、好適には、ガラス基板を用いるのがよい。ガラス基板は、例えば、有機EL表示装置の製造において一般的に使用されるものを利用することができる。但し、本発明で製造する表示装置では、表示部の支持基材は第二ポリイミド層8からなるポリイミド基材である。つまり、ここで言うガラス基板は、ポリイミド基材上に表示部を形成する際に台座の役割をするものであって、表示部の製造過程でポリイミド基材の取り扱い性や寸法安定性等を担保することはあっても、最終的には除去されて表示装置を構成するものではない。なお、支持体は第一ポリイミド層7や第二ポリイミド層8の剥離性を制御するための表面処理を行なってもよい。
【0023】
本発明では、この支持体1の上に第一ポリイミド層と第二ポリイミド層とを設けるわけであるが、その方法としては、1)第一ポリイミド層と第二ポリイミド層を予め積層し、その積層したポリイミド積層フィルムを支持体に積層形成する方法(ラミネート法)、2)第一ポリイミド層及び第二ポリイミド層の形成を、ポリイミド又はポリイミド前駆体(以下、「ポリアミド酸」ともいう。)の樹脂溶液を塗布することによって行なう方法(塗布法)、3)支持体上にポリイミドフィルムを積層して第一ポリイミド層を形成し、第二ポリイミド層の形成をポリイミド又はポリイミド前駆体の樹脂溶液の塗布により行なう行う方法(併用法)、のいずれの方法でもよい。また、ここで、支持体1と第一ポリイミド層は、直接、接着させ積層させてもよく、または、
図3に示すように、接着層を介して積層させてもよい。
【0024】
なお、本発明において第一ポリイミド層と第二ポリイミド層のいずれかの層の少なくとも一部が他の層の周辺部より張り出すように形成してもよい。表示部が形成される部分よりも外側の周辺部にポリイミド層の厚みが薄い部分を設けることにより、工程中に発生する応力を分散でき、支持体とポリイミド層とが工程中に剥離することを防止できる。張り出す距離は特に限定されないが、第一ポリイミド層と第二ポリイミド層とを合わせた厚み以上であることが好ましく、その合計の厚みの10倍以上であることがさらに好ましい。
【0025】
以下、上記した3つの方法について個別に説明する。
<ラミネート法>
図3は、支持体1上にポリイミド積層フィルムを接着層6で貼り付け、更に表示部を積層した状態を表したものである。ここで、ポリイミド積層フィルムは、第一ポリイミド層7と第二ポリイミド層8とからなり、第一ポリイミド層7と第二ポリイミド層8とは、予め、直積積層された構造となっている。このようなポリイミド積層フィルムを得るには、例えば、第一ポリイミド層7となるポリイミドフィルム上に、第二ポリイミド層8となるポリアミド酸の樹脂溶液を塗布し、その後、熱処理により乾燥、イミド化する方法(キャスト法)が挙げられる。なお、接着層6としては、エポキシ樹脂やアクリル樹脂等の樹脂系接着剤のほか、支持フィルムの両面に粘着層を設けた粘着フィルム等を用いることができる。また、この
図3では接着層6を用いているが、
図7に示したように、加熱圧着等の手段により、直接第一ポリイミド層7側を支持体1に接着させるようにしてもよい。
【0026】
ここで、積層フィルムを構成する第二ポリイミド層8の厚みについては、好ましくは3μm以上50μm以下であるのがよい。第二ポリイミド層8の厚みが3μmに満たないと、表示装置の樹脂基材を形成した際の電気絶縁性や外的要因による樹脂層損傷の防止等を確保するのが難しくなり、反対に50μmを超えると表示装置のフレキシブル性、透明性等が低下するおそれがある。一方の第一ポリイミド層7は、表示装置を直接構成するものではないため、積層フィルムとしてのハンドリング性等を考慮すれば10μm以上であるのがよい。厚みの上限は特に制限されるものではないが、コスト性等を考慮すれば100μm以下であるのが望ましい。
【0027】
上記した通り、ポリイミド積層フィルムは、接着層6を介して、又は介さずに支持体1上に積層され一体化された状態で、続く、表示部を形成するための工程に移される。ここで、表示部を形成するための工程とは、例えば、有機EL表示装置の場合では、所定のTFT/有機EL工程のプロセス処理を指し、これによって形成されるTFT、電極、発光層を含む有機EL素子等が表示部に相当する。ここで、白色発光の有機ELにカラーフィルターを組合せることでカラー表示する有機ELも提案されている。このカラーフィルターはTFT/有機EL工程とは別途作成された後、TFT/有機EL側と貼り合わせることで製造されるが、このカラーフィルターも表示部に相当する。また、液晶表示装置の場合では、TFT工程のプロセス処理を指し、これによって形成されるTFT、駆動回路、必要に応じてカラーフィルター等が表示部に相当する。すなわち、表示部を形成する工程とは、有機EL表示装置や液晶表示装置のほか、電子ペーパーやMEMSディスプレー等の各種表示装置を含めて、従来、ガラス基板上に形成している種々の機能層であって、所定の映像(動画又は画像)を映し出すのに必要な部品を形成する工程を指し、それによって得られた部品を含めて表示部と総称する。その工程を経ることで、第一ポリイミド層7と一体化された第二ポリイミド層8側に表示部4を積層・形成させる。そして、全ての表示部積層工程が終了すれば、所定のサイズに切断する切断工程に進める。
【0028】
このうち、
図4は、切断工程を表したものである。本発明において、切断工程は必須ではなく、製造される装置や工程の態様によって任意に実施される。有機EL表示装置の製造を例にとって説明すると、切断は、
図4に示す切断線5に沿って表示部(TFT/有機ELパネル部)4及び第二ポリイミド層8まで完全に行なわれる。この際、
図4に示す切断領域9の拡大図を示す
図5にあるように、第一ポリイミド層7の中央付近まで切断線10が届くようにしながら、表示部の外周に沿って第一樹脂層に切れ目を入れれば、TFT/有機ELパネル部4に機械的損傷を与えることなく、第二ポリイミド層8は第一ポリイミド層7との境界面から確実に、かつ容易に分離することができる。
【0029】
ここで、第二ポリイミド層8が第一ポリイミド層7との境界面から容易に分離できるようにするためには、ポリイミド境界面を剥離しやすい状態とする必要がある。その手段は、特に限定されるものではないが、第一又は第二ポリイミド層の少なくともいずれか一方に、特定の化学構造を有するポリイミドを使用することが挙げられる。
【0030】
一般に、ポリイミドは、通常、原料である酸無水物とジアミンを重合して得られ、下記一般式(1)で表される。
【化3】
式中、Ar
1は酸無水物残基である4価の有機基を表し、Ar
2はジアミン残基である2価の有機基であるが、耐熱性の観点から、Ar
1、Ar
2の少なくとも一方は、芳香族残基であることが好ましい。
【0031】
本発明における第一ポリイミド層又は第二ポリイミド層に好適に使用されるポリイミド樹脂としては、例えば、下記繰り返し構造単位を有するポリイミドが挙げられ、
【化4】
特に好ましくは、下記繰り返し構造単位を有するポリイミドである。
【化5】
【0032】
また、これら以外には、含フッ素ポリイミドが挙げられる。ここで、含フッ素ポリイミドとは、ポリイミド構造中にフッ素原子を有するものを指し、ポリイミド原料である酸無水物、及びジアミンの少なくとも一方の成分において、フッ素含有基を有するものである。このような含フッ素ポリイミドとしては、例えば、上記一般式(1)で表されるもののうち、式中のAr
1が4価の有機基であり、Ar
2が下記一般式(2)又は(3)で表される2価の有機基で表されるものが挙げられる。
【0034】
上記一般式(2)又は一般式(3)におけるR
1〜R
8は、互いに独立に水素原子、フッ素原子、炭素数1〜5までのアルキル基若しくはアルコキシ基、又はフッ素置換炭化水素基であり、一般式(2)にあっては、R
1〜R
4のうち少なくとも一つはフッ素原子又はフッ素置換炭化水素基であり、また、一般式(3)にあっては、R
1〜R
8のうち少なくとも一つはフッ素原子又はフッ素置換炭化水素基である。
【0035】
このうち、R
1〜R
8の好適な具体的としては、−H、−CH
3、−OCH
3、−F、−CF
3などが挙げられるが、式(2)又は式(3)において少なくとも一つの置換基が、−F又は−CF
3の何れかであるのがよい。
【0036】
また、含フッ素ポリイミドを形成する際の一般式(1)中のAr
1の具体例としては、例えば、以下のような4価の酸無水物残基が挙げられる。
【化7】
【0037】
加えて、含フッ素ポリイミドを形成する際、ポリイミドの透明性や他の層との剥離性などを考慮すれば、一般式(1)におけるAr
2を与える具体的なジアミン残基としては、好ましくは以下のものが挙げられる。
【0039】
このような含フッ素ポリイミドであれば、仮に、含フッ素ポリイミド以外の他の構造を有するポリイミドとの界面においても良好な分離性を示すことができる(勿論、第一及び第二のポリイミド層の両方が含フッ素ポリイミドであれば、界面での分離性はより一層向上する)。加えて、このような含フッ素ポリイミドにおいて、次に挙げる一般式(4)又は(5)で表される構造単位のどちらか一方を80モル%以上の割合で有する場合には透明性と剥離性の他、熱膨張性が低く寸法安定性に優れることから、好適には、第二ポリイミド層を形成するポリイミドとして利用するのがよい。
【0041】
ここで、ポリイミドを一般式(4)又は(5)の構造に係るポリイミドとした場合、そのポリイミド以外に最大20モル%未満の割合で添加されてもよいその他のポリイミドについては、特に制限されるものではなく、一般的な酸無水物とジアミンを使用することができる。なかでも好ましく使用される酸無水物としては、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,2'−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物等が挙げられる。一方の、ジアミンとしては、4,4'−ジアミノジフェニルサルフォン、トランス−1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4'−ジアミノシクロヘキシルメタン、2,2'−ビス(4−アミノシクロヘキシル)−ヘキサフルオロプロパン、2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ジアミノビシクロヘキサン等が挙げられる。
【0042】
上記で説明したような各種ポリイミドは、ポリアミド酸をイミド化して得られるが、ここで、ポリアミド酸の樹脂溶液は、原料であるジアミンと酸二無水物とを実質的に等モル使用し、有機溶媒中で反応させることによって得ることができる。より具体的には、窒素気流下にN,N−ジメチルアセトアミドなどの有機極性溶媒にジアミンを溶解させた後、テトラカルボン酸二無水物を加えて、室温で5時間程度反応させることにより得ることができる。塗工時の膜厚均一化と得られるポリイミドフィルムの機械強度の観点から、得られたポリアミド酸の重量平均分子量は1万から30万が好ましい。なお、ポリイミド層の好ましい分子量範囲もポリアミド酸と同じ分子量範囲である。
【0043】
本発明では、好ましくは、第二ポリイミド層8を一般式(4)又は(5)で表される構造単位を有するポリイミドとすることで、熱膨張係数が25ppm/K以下、有利には10ppm/K以下のポリイミド層とすることができ、表示装置を形成するポリイミド基材として好都合である。また、これらの構造単位を有するポリイミドは、300℃以上のガラス転移温度(Tg)を示し、440nmから780nmの波長領域での透過率が80%以上を示す。
【0044】
上述したように、所定のポリイミドを利用して、第一ポリイミド層と第二ポリイミド層との界面で互いに容易に分離できるようにするには、好ましくは、少なくともいずれか一方のポリイミド層を含フッ素ポリイミドから形成するようにするのがよい。少なくとも一方のポリイミド層を含フッ素ポリイミドから形成することで、好適には、第一ポリイミド層と第二ポリイミド層との界面における接着強度が1N/m以上500N/m以下、より好適には5N/m以上300N/m以下、更に好適には10N/m以上200N/m以下になるため、人の手で容易に剥離できる程度の分離性を備える。そして、分離した表示装置は、ポリイミド基材となる第二ポリイミド層に皺や破断等の外観上の不良もなく、また、第二ポリイミド層の分離面はキャスト法によって得られる表面粗さ(一般的に表面粗さRa=1〜80nm程度)がそのまま維持されるため、表示装置の視認性等に悪影響を及ぼすようなこともない。
【0045】
本発明は、1)所定の表示部を形成した後、引き続き、第一ポリイミド層と第二ポリイミド層との境界面で分離する方法の他、2)所定の表示部を形成した後、先ず、第一ポリイミド層側の支持体を除去し、その後、残った第一ポリイミド層と第二ポリイミド層との境界面で分離して、ポリイミド基材(第二ポリイミド層)上に表示部を備えた表示装置を得る方法も包含する。上記2)の方法において、支持体1を除去した後の、第一ポリイミド層7と第二ポリイミド層8との分離は、第二ポリイミド層8及び表示部4の形状が分離中に一定に保持されるように固定しながら、第一ポリイミド層7を分離するのが好ましい。これにより、表示部4にかかる応力を小さくでき、第二ポリイミド層8をより薄くした場合でも、表示部4のデバイスの損傷の可能性を低減できる。ここで、上記2)の方法において、支持体を除去する手段については、表示部4や第二ポリイミド層8にダメージを与えなければ特に限定されるものではないが、後述するような方法を用いることができる。すなわち、
図3による上記説明では接着層6を使用した例を示したので、この点については、
図6による塗布法の説明箇所で補足する。ただし、ラミネート法であっても、第一ポリイミド層7に加熱圧着等の手段で支持体1との接着を直接行うことが出来れば、
図3のように接着層6を必須とする必要はなく、その場合には後記記載手段と同じ方法で支持体1を除去することができる。
【0046】
次に、本発明の塗布法での適用例について説明する
<塗布法>
図6は、支持体1上に第一ポリイミド層7、第二ポリイミド層8を順次塗布法で形成し、その後、更に表示部4を積層した状態を表したものである。この方法においては、先ず、支持体1を準備し、その上に第一ポリイミド層7となるポリアミド酸の樹脂溶液を塗布、熱処理により乾燥、イミド化を完了させ、第一ポリイミド層7とする。次いで、上記第一ポリイミド層7上に、第二ポリイミド層8となるポリアミド酸の樹脂溶液を塗布、熱処理により乾燥、イミド化を完了させ、第二ポリイミド層8とする。このようにして、支持体1上に第一ポリイミド層7、第二ポリイミド層8が順次形成された基板とすることができる。そして、その後、続く表示部形成工程以降の工程に供される。表示部形成工程以降の工程は上記ラミネート法と同様であることから詳細については省略し、上述した2)の方法における支持体1の除去に関し、以下で簡単に説明する。
【0047】
上記のとおり、
図6は、支持体1上に第一ポリイミド層7、第二ポリイミド層8及び表示部4が積層された状態を表したものである。本発明は、この状態から第一ポリイミド層7と第二ポリイミド層8との境界面で分離する工程の前に、支持体1を除去してもよいわけであるが、ここで、支持体1を除去する方法としては、第一ポリイミド層7として、支持体1から剥離し易いポリイミド材料を用いたり、支持体1として銅箔等の金属箔や金属基板を用いて、これらをエッチング液で除去するような方法が例示される。
【0048】
また、支持体1を除去する方法として公知の他の方法も適用してもよい。すなわち、非特許文献3にあるレーザー照射や、非特許文献4にある剥離層を利用することにより支持体1を除去してもよい。レーザー照射により支持体1を除去する場合、第一ポリイミド層がレーザーを吸収し、第2ポリイミド層や表示部へのレーザーの悪影響を防止することができる。剥離層を利用して支持体1を除去する場合でも、第一ポリイミド層が剥離時に発生する応力に対し、応力緩和層として機能し、剥離時の表示部へのダメージによる歩留り低下を防止することができる。
【0049】
ところで、特表2007-512568公報では、ガラス上にボリイミド等の黄色フィルムを形成、次いでこの黄色フィルム上に薄膜電子素子を形成した後、ガラスを通して黄色フィルムの底面にUVレーザー光を照射することにより、ガラスと黄色フィルムを剥離することが可能であることを開示している。しかしながら、黄色フィルムと異なり、透明プラスチックの場合はUVレーザー光を吸収しないため、アモルファスシリコンのような吸収/剥離層をあらかじめフィルムの下に設ける必要があることも開示されている。一方、特表2012-511173公報では、UVレーザー光の照射によりガラスとボリイミドフィルムの剥離を行なうためには、300〜410nmのスペクトルの範囲内のレーザーを用いる必要があることが開示されている。
【0050】
本発明において、レーザー光を用いて第一ポリイミド層から支持体を除去する場合は、第一ポリイミド層に有色ポリイミドを用いることが好ましい。第一ポリイミド層を有色ポリイミドとし、第二ポリイミド層を透明ポリイミドとすることは本発明の好ましい形態の一つである。
【0051】
塗布法においては、支持体1上に第一ポリイミド層7となるポリアミド酸の樹脂溶液を塗布し、熱処理するが、この時点で、十分な熱処理で第一ポリイミド層をイミド化しておくことが第二ポリイミド層の分離を容易にするためには好ましい。また、塗布法においても、ラミネート法で記載したと同様、第一又は第二ポリイミド層の少なくとも一方に、特定の化学構造を有するポリイミドを使用することが望ましい。第一ポリイミド層と第二ポリイミド層を同一の化学構造のポリイミドとしてもよい。
【0052】
塗布法においては、第一ポリイミド層、第二ポリイミド層ともに樹脂溶液を塗布後に熱処理により乾燥、又は乾燥・硬化させて得られるわけであるが、本発明において、上記熱処理における昇温時の最高加熱温度(最高到達温度)より20℃低い温度から最高到達温度までの高温加熱温度域での加熱時間(以下、高温保持時間という。)は必要な特性が得られる範囲で短い方が好ましい。そもそも塗布法において高温加熱温度域にて第一及び/又は第二ポリイミド層を保持する目的は、残存溶媒の完全除去、ポリイミド樹脂の配向を促す等によって本来のポリイミド層に要求される特性を得るためである。しかしながら、殊に第二ポリイミド層の高温保持時間が長いと、第一ポリイミド層との剥離性が低下したり、着色等によって透過率が低下したりする傾向にある。最適な高温保持時間は、加熱方式、ポリイミド厚み、ポリイミドの種類によって異なるが、0.5分以上60分未満とするのが好ましく、0.5分以上30分未満とするのがさらに好ましい。
【0053】
次に、本発明のフィルム積層と樹脂溶液塗布の併用法での適用例について説明する。
<併用法>
図8は、支持体1上に、支持体1よりも一回り小さくカットした第一ポリイミド層7を接着層6で貼り付け、その上に第二ポリイミド層8、及び表示部4を積層した状態を表したものである。
この方法においては、先ず、支持体1を準備し、その上に第一ポリイミド層7となるポリイミドフィルムを接着層6で貼り付ける。この点においては、上記ラミネート法と同じポリイミドフィルムを使用し、同じ方法を適用できる。
【0054】
次に、上記第一ポリイミド層7上に、第二ポリイミド層8となるポリアミド酸の樹脂溶液を塗布し、熱処理により乾燥して、イミド化を完了させ、第二ポリイミド層8とする。この点においては、上記塗布法と同じ樹脂溶液を使用し、同じ方法を適用できる。このようにして、支持体1上に第一ポリイミド層7、及び第二ポリイミド層8が順次形成された基板とすることができる。そして、その後、続く表示部形成工程以降の工程に供される。表示部形成工程以降の工程は上記したと同様であることから省略する。
【0055】
併用法では、第一ポリイミド層7と支持体1とを貼り合わせた後に、第二ポリイミド層8を与えるポリアミド酸の樹脂溶液をワニス状態で第一ポリイミド層7上にその全面が覆われるように塗布する。塗布されたポリアミド酸の樹脂溶液は、熱処理により乾燥し、イミド化され第二ポリイミド層8を形成するが、
図8に示すように、この状態において第二ポリイミド層8の積層面は、第一ポリイミド層より大きく、第二ポリイミド層8の第一ポリイミド層7と接していない部分の少なくとも一部は支持体1と接している。すなわち、第二ポリイミド層8の一部が第一ポリイミド層7の周縁部より張り出すようにして、この第二ポリイミド層8の張出部が支持体1に固着されるようにする。この方法においても、第二ポリイミド層8と第一ポリイミド層7とは、剥がれ易く構成されているが、第二ポリイミド層8と支持体1とは、第二ポリイミド層8の張出部により強固に接着可能であるため、支持体周辺で接着性を高め工程中の安定性をより確保できる。なお、表示部を形成した後は、上述したような切断工程と同様にすればよく、例えば
図9に示したように、表示部4を切り取る切断線5に沿って表示部4及び第二ポリイミド層8を切断し、第一ポリイミド層7と第二ポリイミド層8との境界面で分離すれば、第二ポリイミド層8からなるポリイミド基材上に表示部4を備えた表示装置を得ることができる。
【0056】
本発明において、上記のような3つの方法を採用する場合、及びそれら以外の方法を採用する場合を含めて、第一ポリイミド層は後に分離されるため、表示装置の機能には寄与しないが、表示部の製造工程時の温度変化を考慮すると分離するまでの特性は重要な一要素となり、そのような観点から第一ポリイミド層の熱膨張係数は25ppm/K以下であることが好ましい。加えて、ガラス転移温度Tgが300℃以上であるのがよい。このような第一ポリイミド層の具体例として、例えば、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とフェニレンジアミンとからなる構造単位を主成分とするポリイミド等が挙げられる。市販品としては、例えば、宇部興産株式会社製ユーピレックス-Sや東レ・デュポン株式会社製カプトン、東洋紡績株式会社ゼノマックスを用いることができる。
【0057】
また、本発明において、表示部を形成する際に、酸化珪素、酸化アルミニウム、炭化珪素、酸化炭化珪素、炭化窒化珪素、窒化珪素、窒化酸化珪素等の無機酸化物膜等からなる酸素や水蒸気等に対するバリア性を備えたガスバリア層を介するようにしてもよい。その際、得られた表示装置の反り等を低減するために、第二ポリイミド層とガスバリア層との熱膨張係数の差は10ppm/K以下となるようにすることが好ましい。
【0058】
第一又は第二ポリイミド層を特定の化学構造を有するポリイミドを使用すること以外の方法で、第一ポリイミド層7と第二ポリイミド層8とをその境界面から容易に分離できるようにするためには、例えば、第一ポリイミド層7の熱処理を行うなどして、第一ポリイミド層7の表面状態を変化させ表面の濡れ性を小さくした後に、速やかに第二ポリイミド層8の塗布を行った積層フィルムを使用する方法が挙げられる。この熱処理の適切な温度は第一ポリイミド層7の種類によって異なるが、第一ポリイミド層7を東レ・デュポン株式会社製カプトン、宇部興産株式会社製ユーピレックスなどのポリイミドフィルムとする場合、300℃以上500℃以下が好ましい。
【0059】
本発明において、所定の表示部を形成した後、第一ポリイミド層と第二ポリイミド層との境界面で分離する方法において、第二ポリイミド層を分離した、支持体と第一ポリイミド層の積層体の第一ポリイミド層側に、再度、第二ポリイミド層を形成することにより、支持体と第一ポリイミド層の積層体を再使用してもよい。繰り返し使用する場合、第二ポリイミド層を分離した後、支持体と第一ポリイミド層の積層体の洗浄を行なうようにしてもよい。また、支持体と第一ポリイミド層の積層体の熱処理を行い、第一ポリイミド層の表面の濡れ性を小さくした後に、第二ポリイミド層の塗布を行なうようにしてもよい。
【0060】
また、支持体と第一ポリイミド層の積層体を繰り返し使用する他の方法として、第二ポリイミド層を分離した、支持体と第一ポリイミド層の積層体の第一ポリイミド層側に、再度、第一ポリイミド層を形成し、その後、第二ポリイミド層を形成する方法もよい。
【0061】
更には、本発明において、第一ポリイミド層から除去された支持体は再使用してもよい。再使用前には、支持体の洗浄、熱処理、表面処理を行ってもよい。
【実施例】
【0062】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。なお、本発明は、下記実施例の内容に限定されるものではない。
【0063】
下記実施例において物性等の評価方法を示す。
〔透過率(%)〕
ポリイミドフィルム(50mm×50mm)をU4000形分光光度計にて、440nmから780nmにおける光透過率の平均値を求めた。
【0064】
〔ガラス転移温度(Tg)〕
ガラス転移温度は、粘弾性アナライザ(レオメトリックサイエンスエフィー株式会社製RSA−II)を使って、10mm幅のサンプルを用いて、1Hzの振動を与えながら、室温から400℃まで10℃/分の速度で昇温した際の、損失正接(Tanδ)の極大から求めた。
【0065】
〔熱膨張係数(CTE)〕
3mm×15mmのサイズのポリイミドフィルムを、熱機械分析(TMA)装置にて5.0gの荷重を加えながら一定の昇温速度(20℃/min)で30℃から260℃の温度範囲で引張り試験を行い、温度に対するポリイミドフィルムの伸び量から熱膨張係数(×10
-6/K)を測定した。
【0066】
[実施例1]
支持体であるガラス基材上にPDA(1,4−フェニレンジアミン)とBPDA(3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物)から得られたポリアミド酸の樹脂溶液を硬化後の厚みが20μm、300mm×380mmの塗布面積となるように塗布し、樹脂溶液中の溶剤(DMAc:N,N−ジメチルアセトアミド)を130℃で加熱乾燥し除去した。次に、160℃から360℃まで約1℃/分の昇温速度で熱処理することでイミド化し、厚み20μmの第一ポリイミド層(表面粗さRa=1.3nm、Tg=355℃)を形成した。
【0067】
この第一ポリイミド層上に、PMDA(ピロメリット酸二無水物)、6FDA(2,2'−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物)とTFMB(2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ジアミノビフェニル)から得られたポリアミド酸の樹脂溶液を、第一ポリイミド層の塗布面積より大きく、かつ第一ポリイミド層全体を覆うように310mm×390mmの塗布面積で、硬化後の厚みが25μmとなるように塗布し、樹脂溶液中の溶剤(DMAc:N,N−ジメチルアセトアミド)を130℃で加熱乾燥し除去した。次に、160℃から360℃まで約20℃/分の昇温速度で熱処理することでイミド化し、厚み25μmの第二ポリイミド層を形成した。このときの高温保持時間は1分であった。なお、上記ポリアミド酸の合成において、ジアミン成分と酸二無水物成分は略等モルとし、PMDA/6FDAの比は85/15とした。
【0068】
このようにしてガラス上に第一及び第二ポリイミド層が順次積層された積層体とし、この積層体の第二ポリイミド層側に表示部であるEL素子を形成した。その後、表示部を取り囲むようにして第二ポリイミド層に切り込みを入れ、第一ポリイミド層と第二ポリイミド層との界面を剥離分離し、第二ポリイミド層からなるポリイミド基材上にEL素子を有する表示装置を得た。この際、第一ポリイミド層と第二ポリイミド層との間は、TFT、電極などの表示部のデバイスにダメージを与えることなく、レーザー剥離等の手段を使わずに人が引き剥がすことで、容易に分離することが出来た。第一ポリイミド層と第二ポリイミド層の剥離強度は3.5N/mであった。なお、上記実施例において、第一ポリイミド層の線膨張係数は、12.0ppm/Kであり、第二ポリイミド層の線膨張係数は、9.7ppm/Kであった。また、第二ポリイミド層の440nm〜780nmの波長領域での透過率は83.5%であった。
【0069】
[実施例2]
支持体であるガラス基材上にPDA(1,4−フェニレンジアミン)とBPDA(3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物)から得られたポリアミド酸の樹脂溶液を硬化後の厚みが20μm、310mm×390mmの塗布面積となるように塗布し、樹脂溶液中の溶剤(DMAc:N,N−ジメチルアセトアミド)を120℃で加熱乾燥し除去した。次に、130℃から360℃まで約1℃/分の昇温速度で熱処理することでイミド化し、厚み25μmの第一ポリイミド層(表面粗さRa=1.3nm、Tg=355℃)を形成した。
【0070】
この第一ポリイミド層上に、PMDA(ピロメリット酸二無水物)、6FDA(2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物)とTFMB(2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル)から得られたポリアミド酸の樹脂溶液を、第一ポリイミド層上に310mm×390mmの塗布面積で、硬化後の厚みが5μmとなるように塗布し、樹脂溶液中の溶剤(DMAc:N,N−ジメチルアセトアミド)を130℃で加熱乾燥し除去した。次に、160℃から360℃まで約20℃/分の昇温速度で熱処理することでイミド化し、厚み5μmの第二ポリイミド層を形成した。なお、上記ポリアミド酸の合成において、ジアミン成分と酸二無水物成分は略等モルとし、PMDA/6FDAの比は60/40とした。
【0071】
このようにしてガラス上に第一及び第二ポリイミド層が順次積層された積層体とし、この積層体の第二ポリイミド層側に表示部であるEL素子を形成した。その後、表示部を取り囲むようにして第一ポリイミド層、及び第二ポリイミド層の厚み方向に切り込みを入れ、第一ポリイミド層側のガラスを剥がして取り除いた上で、第一ポリイミド層と第二ポリイミド層との界面で剥離し、第二ポリイミド層からなるポリイミド基材上にEL素子を有する表示装置を得た。この際、ガラスと第一ポリイミド層との間、及び、第一ポリイミド層と第二ポリイミド層との間は、TFT、電極などの表示部のデバイスにダメージを与えることなく、レーザー剥離等の手段を使わずに人が引き剥がすことで、容易に分離することが出来た。第一ポリイミド層と第二ポリイミド層の剥離強度は4.0N/mであった。なお、上記実施例において、第一ポリイミド層の線膨張係数は、7.0ppm/Kであり、第二ポリイミド層の線膨張係数は、20.4ppm/Kであった。また、第二ポリイミド層の440nm〜780nmの波長領域での透過率は86.7%であった。
【0072】
(実施例3)
実施例1で第二ポリイミド層から剥離分離された、支持体と第一ポリイミド層の積層体を再利用するため、残留する第二ポリイミド層の周辺部を取り除いた後、純水で洗浄し、さらに100℃、200℃、300℃、360℃の各温度で、それぞれ二分の熱処理を行った。
【0073】
この第一ポリイミド層上に、実施例1の第二ポリイミド層と同様にポリアミド酸樹脂溶液を塗布し、130℃で加熱乾燥を行い、次に、160℃から360℃まで約20℃/分の速度で昇温し、360℃で60分保持し、厚み25μmの第二ポリイミド層を形成した。このときの高温保持時間は61分であった。
【0074】
このようにしてガラス上に第一ポリイミド層および第二ポリイミド層が順次積層された積層体とし、実施例1と同様の手順で表示装置を得た。なお、第一ポリイミド層と第二ポリイミド層の剥離強度は10.0N/mであり、人手で容易に分離することができた。また、第二ポリイミド層の線膨張係数は9.3ppm/Kであり、第二ポリイミド層の440nm〜780nmの波長領域での透過率は78.5%であった。
【0075】
(実施例4)
支持体であるガラス基材上に、m−TB(2,2’−ジメチルベンジジン)17.70g、TPE−R(1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン4.3gとPMDA(ピロメリット酸ニ無水物)17.20g、BPDA(3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物)5.8gから得られたポリアミド酸の樹脂溶液を硬化後の厚みが25μm、310mm×390mmの塗布面積となるように塗布し、樹脂溶液中の溶剤(DMAc:N,N−ジメチルアセトアミド)を120℃で加熱乾燥し除去した。次に、130℃から160℃まで約15℃/分の昇温速度で熱処理することでイミド化し、厚み25μmの第一ポリイミド層(表面粗さRa=1.0nm、Tg=360℃)を形成した。
【0076】
この第一ポリイミド層上に、実施例1の第二ポリイミド層と同様にポリアミド酸樹脂溶液を306mm×386mmの塗布面積となるように塗布し、130℃で加熱乾燥を行い、次に、160℃から360℃まで約20℃/分の速度で昇温し、360℃で30分保持し、厚み25μmの第二ポリイミド層を形成した。このときの高温保持時間は31分であった。
【0077】
このようにしてガラス上に第一ポリイミド層および第二ポリイミド層が順次積層された積層体とし、実施例2と同様の手順で表示装置を得た。第一ポリイミド層と第二ポリイミド層の剥離強度は110N/mであり、人手で分離可能であった。なお、第一ポリイミド層の線膨張係数は20.0ppm/Kであり、第二ポリイミド層の線膨張係数は9.5ppm/Kであった。また、第二ポリイミド層の440nm〜780nmの波長領域での透過率は80.5%であった。
【0078】
(実施例5)
銅箔上にPDA(1,4−フェニレンジアミン)とBPDA(3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物)から得られたポリアミド酸の樹脂溶液を硬化後の厚みが20μmとなるように塗布し、樹脂溶液中の溶剤(DMAc:N,N−ジメチルアセトアミド)を130℃で加熱乾燥し除去した。次に、160℃から360℃まで約1℃/分の昇温速度で熱処理することでイミド化し、厚み20μmの第一ポリイミド層(表面粗さRa=1.3nm、Tg=355℃)を銅箔上に形成した。
【0079】
この第一ポリイミド層上に、PMDA(ピロメリット酸二無水物)、6FDA(2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物)とTFMB(2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル)から得られたポリアミド酸の樹脂溶液を硬化後の厚みが25μmとなるように塗布し、樹脂溶液中の溶剤(DMAc:N,N−ジメチルアセトアミド)を130℃で加熱乾燥し除去した。次に、160℃から360℃まで約20℃/分の昇温速度で熱処理することでイミド化し、厚み25μmの第二ポリイミド層を形成した。なお、上記ポリアミド酸の合成において、ジアミン成分と酸二無水物成分は略等モルとし、PMDA/6FDAの比は85/15とした。
【0080】
この銅箔/第一ポリイミド層/第二ポリイミド層からなる積層体の銅箔部分を塩化第二鉄エッチングにより除去し、第一ポリイミド層/第二ポリイミド層からなる積層フィルムを得た。
【0081】
この積層フィルムを支持体であるガラス基板上にエポキシ樹脂系接着剤で接着し、その後表示部であるEL素子を第二ポリイミド層側に形成した。その後、第一ポリイミド層と第二ポリイミド層との界面を剥離により分離し、ポリイミド基材上にEL素子を有する表示装置を得た。第一ポリイミド層と第二ポリイミド層は、TFT、電極などの表示部のデバイスにダメージを与えることなく容易に分離することが出来た。なお、上記実施例において、第一ポリイミド層の線膨張係数は、12.0ppm/Kであり、第二ポリイミド層の線膨張係数は、9.7ppm/Kであった。また、第二ポリイミド層の440nm〜780nmの波長領域での透過率は83.5%であった。