特許第6284977号(P6284977)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284977
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】2’−O−修飾RNA
(51)【国際特許分類】
   C07H 19/067 20060101AFI20180215BHJP
   C07H 19/10 20060101ALI20180215BHJP
   C07H 19/167 20060101ALI20180215BHJP
   C07H 21/02 20060101ALN20180215BHJP
   C07H 1/00 20060101ALN20180215BHJP
   C07H 23/00 20060101ALN20180215BHJP
【FI】
   C07H19/067CSP
   C07H19/10
   C07H19/167
   !C07H21/02
   !C07H1/00
   !C07H23/00
【請求項の数】4
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2016-97667(P2016-97667)
(22)【出願日】2016年5月16日
(62)【分割の表示】特願2012-546840(P2012-546840)の分割
【原出願日】2011年11月28日
(65)【公開番号】特開2016-175933(P2016-175933A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2016年6月14日
(31)【優先権主張番号】61/418,384
(32)【優先日】2010年11月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508337972
【氏名又は名称】株式会社WAVE Life Sciences Japan
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】清水 護
(72)【発明者】
【氏名】和田 猛
(72)【発明者】
【氏名】新井 浩一郎
【審査官】 三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6093924(JP,B2)
【文献】 特開平03−074398(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/022323(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/108682(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/034072(WO,A1)
【文献】 BOBKOV,G.V. et al,Phosphoramidite building blocks for efficient incorporation of 2'-O-aminoethoxy(and propoxy)methyl n,Tetrahedron,2008年,Vol.64, No.27,p.6238-6251
【文献】 PONTIGGIA,R. et al,2-C-Methyluridine modified hammerhead ribozyme against the estrogen receptor,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2010年,Vol.20, No.9,p.2806-2808
【文献】 WU,X. et al,Synthesis of 5'-C- and 2'-O-(bromoalkyl)-substituted ribonucleoside phosphoramidites for the post-sy,Helvetica Chimica Acta,2000年,Vol.83, No.6,p.1127-1144
【文献】 SAKATSUME,O. et al,Solid phase synthesis of oligoribonucleotides by the phosphoramidite approach using 2'-O-1-(2-chloro,Tetrahedron,1991年,Vol.47, No.41,p.8717-28
【文献】 Tetrahedron Letters,1989年,Vol.30(46),p.6361-6364
【文献】 Nucleic Acids Research,1994年,Vol.22(1),p.94-99
【文献】 Tetrahedron,1995年,Vol.51(10),p.2991-3014
【文献】 Helvetica Chimica Acta,1998年,Vol.81(8),p.1545-1566
【文献】 Nucleic Acids Symposium Series,2008年,Vol.52(1),p.521-522
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H 19/067
C07H 19/10
C07H 19/167
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2’−位に保護基を有するリボヌクレオシド,又はリボヌクレオチドであって,前記保護基が下記一般式(I)で示される,リボヌクレオシド,又はリボヌクレオチド。
【化1】
式中,Oは,リボヌクレオシド,又はリボヌクレオチドの2’位水酸基の酸素原子を示し,
〜Rは,いずれも水素原子を示し,
は,ハロゲン原子,C1−3アルキル基,C2−3アルケニル基,C2−3アルキニル基,ヒドロキシC2−3アルキル基,又は1−3ハロアルキル基を示し,
は,水素原子,フッ素原子又は塩素原子を示し,
は,フッ素原子又は塩素原子を示す(ただし,Rが水素原子であり,Rがフッ素原子である組み合わせ,及びRが水素原子であり,Rが塩素原子である組み合わせを除く。)
【請求項2】
下記一般式(I)で示される2’−位に保護基を有するリボヌクレオシド,又はリボヌクレオチドの製造方法であって,
下記一般式(II)で示される化合物に下記一般式(III)で示される化合物を作用させる工程を含む,方法。
【化2】
(一般式(I)中,Oは,リボヌクレオシド,又はリボヌクレオチドの2’位水酸基の酸素原子を示し,
〜Rは,いずれも水素原子を示し,
は,ハロゲン原子,C1−3アルキル基,C2−3アルケニル基,C2−3アルキニル基,ヒドロキシC2−3アルキル基,又は1−3ハロアルキル基を示し,
は,水素原子,フッ素原子又は塩素原子を示し,
は,フッ素原子又は塩素原子を示す(ただし,Rが水素原子であり,Rがフッ素原子である組み合わせ,及びRが水素原子であり,Rが塩素原子である組み合わせを除く。)。)
【化3】
(一般式(II)中,Bは保護基で保護されてもよい核酸塩基を示し,R21,R22,R23及びR24は,同一でも異なってもよく,直鎖又は分岐してもよいC1−5アルキル基, C1−5アルコキシ基又はC1−5ハロアルキル基を示し,R及びRは一般式(I)におけるR及びRと同義である。)
【化4】
(一般式(III)中,R〜Rは,一般式(I)におけるR〜Rと同義である。)
【請求項3】
請求項2に記載の2’−位に保護基を有するリボヌクレオシド,又はリボヌクレオチドの製造方法であって,
前記一般式(II)で示される化合物に前記一般式(III)で示される化合物を作用させ,下記一般式(IV)で示される化合物を得た後,
前記一般式(IV)で示される化合物と,C1−3アルコールと反応させ,
下記一般式(V)で示される化合物を得る工程と,
前記一般式(V)で示される化合物とハロゲン化ジメトキシトリフェニルメチルと反応させ,一般式(VI)で示される化合物を得る工程を含む,方法。
【化5】
(一般式(IV)中,Bは保護基で保護されてもよい核酸塩基を示し,R〜Rは,一般式(I)におけるR〜Rと同義であり,R21〜R24は,一般式(II)におけるR21〜R24と同義である。)
【化6】
(一般式(V)中,Bは保護基で保護されてもよい核酸塩基を示し,R〜Rは,一般式(I)におけるR〜Rと同義である。)
【化7】
(一般式(VI)中,Bは保護基で保護されてもよい核酸塩基を示し,R〜Rは,一般式(I)におけるR〜Rと同義であり,式DMTrは4,4’−ジメトキシトリチル基を示す。)
る。)
【請求項4】
請求項3に記載の2’−位に保護基を有するリボヌクレオシド,又はリボヌクレオチドの製造方法であって,
前記一般式(VI)で示される化合物を得る工程の後に,
前記一般式(VI)で示される化合物と下記一般式(VII)で示される化合物を反応させ,下記一般式(VIII)で示される化合物を得る工程を含む,
方法。
【化8】
(一般式(VII)中,
31〜R34は,同一でも異なってもよく,水素原子,C1−3アルキル基,又はC1−3ハロアルキル基を示し,
35〜R36は,同一でも異なってもよく,C1−5アルキル基又はC1−5ハロアルキル基を示し,
37は,ハロゲン原子を示す。)
【化9】
(一般式(VIII)中,Bは保護基で保護されてもよい核酸塩基を示し,R〜Rは,一般式(I)におけるR〜Rと同義であり,R31〜R36は,一般式(VII)におけるR31〜R36と同義であり, 式DMTrは4,4’−ジメトキシトリチル基を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ハロゲン原子による置換基を有する2’−O−修飾RNAに関する。より詳しく説明すると,本発明は,高い二重鎖形成能を有し,製造が容易な,ハロゲン原子による置換基を有するRNAの2’−O−アルコキシメチル修飾体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年,核酸分子を医薬や機能性分子として利用することを目指し,様々な核酸類縁体が合成されている。その中で2’修飾型核酸は,適切な化学修飾を施すことで二重鎖形成能,酵素耐性を向上することが示され,有用な化学修飾型核酸であることが知られている。
【0003】
2’修飾型核酸の中で,2’−O−メチル修飾体は最も単純な2’−O−アルキル型の修飾体である。非特許文献1(Inoue, H; Miura, K.; Ohtsuka, E. et al,G Nucleic Acid Res.,
1987, 15, 6131-6148)には,核酸を2’−O−メチル修飾(O−CH)することにより,T値を向上できることが示唆されている。一方,非特許文献2(Saneyoshi, H.; Seio, K.; Sekine, M., J. Org. Chem. 2005, 70,
10453-10460)には,核酸の1ヵ所のみに2’−O−Me修飾を施した場合には,T値が減少することが示されている。
【0004】
特開2009−256335号公報(下記特許文献1)には,2’位にアルキル型保護基を有するリボ核酸の製造法が開示されている。
【0005】
また,非特許文献3(Martin,
P., Helv. Chim. Acta., 1995, 78, 486-504.)には,2’−O−メトキシエチル修飾体(O−COCH)が開示されている。
【0006】
上述した2’−O−メチル修飾体や2’−O−メトキシエチル修飾体をはじめとする2'修飾型RNAの多くは,核酸塩基の種類によっては導入が困難である。すなわち,2’−O−メチル修飾体及び2’−O−メトキシエチル修飾体は,ピリミジン核酸塩基を有するRNAの修飾体のみの合成例しか報告されていないものがある。またこれらの修飾体を製造する場合,核酸塩基の種類によって,合成方法を変えた適切な製造方法を探索する必要がある。
【0007】
非特許文献4(Tereshko, V.;
Portmann, S.; Tay, E.; Martin, P; Natt, F.; Altmann, K.; Egli, M. Biochemistry, 1998, 37,
10626 -10634.)には, 2’−O−エトキシメチル修飾体(O−CHOC)が開示されている。しかしながら,2’−O−エトキシメチル修飾を行うと,二重鎖融解温度Tが減少する。すなわち,2’−O−エトキシメチル修飾体は,二重鎖形成能が低い。このため2’−O−エトキシメチル修飾体はRNAの修飾体として有用ではないと考えられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009-256335号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Inoue, H; Miura, K.; Ohtsuka, E. et al,G Nucleic Acid Res.,1987, 15, 6131-6148
【非特許文献2】Saneyoshi, H.; Seio, K.; Sekine, M., J. Org. Chem. 2005, 70,10453-10460
【非特許文献3】Martin, P., Helv.Chim. Acta., 1995, 78, 486-504
【非特許文献4】Tereshko, V.;Portmann, S.; Tay, E.; Martin, P; Natt, F.; Altmann, K.; Egli, M. Biochemistry, 1998, 37,10626 -10634.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は,高い二重鎖形成能を有する新規の修飾RNAを製造することを目的とする。
本発明は,付加する核酸塩基によらずに採用できる修飾RNAの効果的な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は,基本的には,アルコキシメチル系保護基を有するリボヌクレオシド等の修飾体について,保護基部分にハロゲン原子を置換基として導入することで,高い二重鎖形成能を付与できたという実施例による知見に基づく。先述したとおり,アルコキシメチル系保護基を有するRNAの修飾体は,二重鎖形成能が低かった。しかし,本発明のハロゲン置換アルコキシメチル系保護基を有するRNAの修飾体は,核酸の2’−O−メチル修飾体と同程度の高い二重鎖形成能を示した。
【0012】
また,本発明は,アルコキシメチル骨格を有するリボヌクレオシド等の修飾体について,保護基部分にハロゲン原子を置換基として導入することで,RNAの核酸塩基の種類によらずRNAの修飾体を容易に合成できるという実施例による知見に基づく。先述したとおり,2’−O−メチル修飾体や2’−O−メトキシエチル修飾体は,RNAに含まれる核酸塩基により適切な合成方法を検討しなければならず,合成できていない修飾体もある。一方,本発明の製造方法は,RNAに含まれる核酸塩基によらず,共通の方法で2’−修飾体を製造することができる。すなわち,本発明の製造方法は,先に説明した高い二重鎖形成能を有する2’−修飾体を,RNA中の核酸塩基の種類によらず容易に合成できる方法であるといえる。
【0013】
本発明の第1の側面は,2’−位に保護基を有するリボヌクレオシド,リボヌクレオチド,またはそれらの誘導体に関する。そして, リボヌクレオシド,リボヌクレオチド,またはそれらの誘導体の2’−位の酸素原子をOとして表現した場合,保護基が下記一般式(I)で示される。
【0014】
【化1】
【0015】
式中,Oは,リボヌクレオシド,リボヌクレオチド,またはそれらの誘導体の2’位水酸基の酸素原子を示す。なお,上記の式(I)において,Oと接続されている部位が保護基部分である。このため上記一般式(I)では,リボース及び核酸塩基を含む部分をかっこで括っている。リボヌクレオチドは,RNAを構成する単位である。そして,リボヌクレオシドは,リボース及び核酸塩基を含む。リボヌクレオシドリン酸がリボヌクレオチドである。リボヌクレオシド又はリボヌクレオチドの誘導体は,RNAを構成するリボヌクレオシド又はリボヌクレオチドに1又は複数の置換基が付加したものである。置換基の例は,リボヌクレオシド又はリボヌクレオチドの水素原子と置換されるC1−3アルキル基,又はC1−3ハロアルキル基であるが,これらに限定されない。
【0016】
一般式(I)において,R及びRは,同一でも異なってもよく,水素原子, C1−3アルキル基,C2−3アルケニル基,C2−3アルキニル基,ヒドロキシC2−3アルキル基,又はC1−3ハロアルキル基を示す。
及びRは,同一でも異なってもよく,水素原子,ハロゲン原子,C1−3アルキル基,C2−3アルケニル基,C2−3アルキニル基,ヒドロキシC2−3アルキル基,又はC1−3ハロアルキル基を示す。
及びRは,同一でも異なってもよく,水素原子,ハロゲン原子, C1−3アルキル基,C2−3アルケニル基,C2−3アルキニル基,ヒドロキシC2−3アルキル基,C1−3ハロアルキル基,1つ又は2つのC6−12アリール基で置換されたC1−3アルキル基,又は置換基を有してもよいC6−12アリール基を示す。 Rは,ハロゲン原子又はC1−3ハロアルキル基を示す。
【0017】
「C1−3アルキル基」は,1から3個の炭素原子を持つ直鎖アルキル基,3個の炭素原子を持つ分鎖アルキル基,又は3個の炭素原子を持つ環状アルキル基を意味する。C1−3直鎖アルキル基の例は,メチル基,エチル基,及びプロピル基である。C1−3分鎖アルキル基の例は,イソプロピル基である。C1−3環状アルキル基の例は,シクロプロピル基である。C1−3アルキル基は,直鎖又は分鎖アルキル基が好ましい。
【0018】
「C2−3アルケニル基」は,2個又は3個の炭素原子を有し,少なくとも1つの二重結合を有する直鎖アルケニル基,3個の炭素原子を有する分鎖アルケニル基を意味する。C2−3アルケニル基の例は,ビニル基及びアリール基である。
【0019】
「C2−3アルキニル基」とは2個又は3個の炭素原子を有し,少なくとも1つの三重結合を有する直鎖アルキニル基を意味する。C2−3アルキニル基の例は,2−プロピニル基である。
【0020】
「ヒドロキシC2−3アルキル基」は,少なくとも1つのヒドロキシ基で置換されたC2−3アルキル基を意味する。ヒドロキシC2−3アルキル基の例は,2−ヒドロキシエチル基及び3−ヒドロキシプロピル基である。
【0021】
「C1−3ハロアルキル基」は,「ハロゲノC1−3アルキル基」と同義であり,フッ素原子,塩素原子,臭素原子及びヨウ素原子の少なくとも1つで水素原子が置換されたC1−3アルキル基を意味する。C1−3ハロアルキル基の例は,2−クロロエチル基,2−ブロモエチル基,2−ヨ−ドエチル基,及び3−クロロプロピル基である。
【0022】
「1つ又は2つのC6−12アリール基で置換されたC1−3アルキル基」は,C1−3アルキル基の水素原子の1つ又は2つがC6−12アリール基で置換されたものを意味する。1つ又は2つのC6−12アリール基で置換されたC1−3アルキル基の例は,ベンジル基;ジフェニルメチル基;2−フェニルエチル基;2−フェニルプロピル基;1−メチル−1−フェニルエチル基;2−ニトロベンジル基;3−ニトロベンジル基;4−ニトロベンジル基;2,4−ジニトロベンジル基;2,4,6−トリニトロベンジル基;2−フェニルベンジル基;3−フェニルベンジル基;4−フェニルベンジル基;2−ヒドロキシベンジル基;3−ヒドロキシベンジル基;4−ヒドロキシベンジル基;2−クロロベンジル基;3−クロロベンジル基;4−クロロベンジル基;2−フルオロベンジル基;3−フルオロベンジル基;4−フルオロベンジル基;2−ブロモベンジル基;3−ブロモベンジル基;4−ブロモベンジル基;2−ヨ−ドベンジル基;2,3−ジクロロベンジル基;2,4−ジクロロベンジル基;2,5−ジクロロベンジル基;2,6−ジクロロベンジル基;3,4−ジクロロベンジル基;3,5−ジクロロベンジル基;2−メチルベンジル基;3−メチルベンジル基;4−メチルベンジル基;2−エチルベンジル基;3−エチルベンジル基;4−エチルベンジル基;2−イソプロピルベンジル基;3−イソプロピルベンジル基;4−イソプロピルベンジル基;2−メトキシベンジル基;3−メトキシベンジル基;4−メトキシベンジル基;2,3−ジメトキシベンジル基;2,4−ジメトキシベンジル基;2,5−ジメトキシベンジル基;2,6−ジメトキシベンジル基;3,4−ジメトキシベンジル基;3,5−ジメトキシベンジル基;2−エトキシベンジル基;3−エトキシベンジル基;4−エトキシベンジル基;2−イソプロポキシベンジル基;3−イソプロポキシベンジル基;4−イソプロポキシベンジル基;2−メトキシメチルベンジル基;3−メトキシメチルベンジル基;4−メトキシメチルベンジル基;2−イソプロポキシメチルベンジル基;3−イソプロポキシメチルベンジル基;4−イソプロポキシメチルベンジル基;2−トリフルオロメチル基;3−トリフルオロメチル基;4−トリフルオロメチル基;2−ヒドロキカルボニルベンジル基;3−ヒドロキカルボニルベンジル基;4−ヒドロキカルボニルベンジル基;2−アミノベンジル基;3−アミノベンジル基;4−アミノベンジル基;2−アミノメチルベンジル基;3−アミノメチルベンジル基;4−アミノメチルベンジル基;2−シアノベンジル基;3−シアノベンジル基;4−シアノベンジル基;2−ヒドロキシメチルベンジル基;3−ヒドロキシメチルベンジル基;4−ヒドロキシメチルベンジル基;2−フェノキシベンジル基;3−フェノキシベンジル基;及び4−フェノキシベンジル基である。
【0023】
6−12アリール基は,炭素数が6〜12の多環芳香族を意味する。C6−12アリール基の例は,フェニル基,1−ナフチル基及び2−ナフチル基である。「置換基を有してもよいC6−12アリール基」は,C6−12アリール基における1又は2以上の水素原子が,他の原子又は基により置換されたものを意味する。置換基を有してもよいC6−12アリール基における置換基の例は,ハロゲン原子,C1−3アルキル基,C1−3アルコキシ基,及びヒドロキシC2−3アルキル基である。
【0024】
ハロゲン原子の例は,フッ素原子,塩素原子,臭素原子及びヨウ素原子である。ハロゲン原子として,フッ素原子又は塩素原子が好ましく用いられる。
【0025】
第1の側面の好ましい態様は,上記した2’−位に保護基を有するリボヌクレオシド,リボヌクレオチド,またはそれらの誘導体であって,置換基が以下の基で示されるものである。すなわち,R〜Rは,同一でも異なってもよく,水素原子,メチル基又はエチル基を示す。R及びRは,同一でも異なってもよく,水素原子,ハロゲン原子,又はC1−3ハロアルキル基を示す。そして,Rは,ハロゲン原子を示す。
【0026】
第1の側面の好ましい態様は,上記した2’−位に保護基を有するリボヌクレオシド,リボヌクレオチド,またはそれらの誘導体であって,置換基が以下の基で示されるものである。すなわち,R〜Rは,いずれも水素原子を示す。R及びRは,同一でも異なってもよく,水素原子,フッ素原子,塩素原子又は臭素原子を示す。Rは,フッ素原子,塩素原子又は臭素原子を示す。
【0027】
第1の側面の好ましい態様は,上記した2’−位に保護基を有するリボヌクレオシド,リボヌクレオチド,またはそれらの誘導体であって,置換基が以下の基で示されるものである。すなわち,R〜Rは,いずれも水素原子を示す。Rは,水素原子,フッ素原子又は塩素原子を示す。Rは,フッ素原子又は塩素原子を示す。
【0028】
第1の側面の好ましい態様は,上記した2’−位に保護基を有するリボヌクレオシド,リボヌクレオチド,またはそれらの誘導体であって,置換基が以下の基で示されるものである。すなわち,R〜Rは,いずれも水素原子を示す。Rは,水素原子,又は塩素原子を示し,Rは,塩素原子を示す。
【0029】
後述する実施例により示された通り,2−クロロエトキシキメチル基及び2,2−ジクロロエトキシキメチル基を2’−位の保護基として有する核酸は,高い二重鎖形成能を有する新規物質である。
【0030】
第1の側面の好ましい態様は,上記した2’−位に保護基を有するリボヌクレオシド,リボヌクレオチド,またはそれらの誘導体であって,上記一般式(I)において,RがC1−3ハロアルキル基である場合,C1−3ハロアルキル基の例は, クロロメチル基;ジクロロメチル基;トリクロロメチル基;1−クロロエチル基;2−クロロエチル基;1,1,−ジクロロエチル基;1,2−ジクロロエチル;2,2−ジクロロエチル基;1−クロロプロピル基;2−クロロプロピル基;1,1,−ジクロロプロピル基;1,2−ジクロロプロピル;又は2,2−ジクロロプロピル基であることが好ましい。RがC1−3ハロアルキル基である場合,R〜Rは,水素原子であるものが好ましい。
【0031】
第1の側面の好ましい態様は,核酸塩基Bを,アデノシン,グアノシン,シチジン又はウリジンとしたときに,以下の化合物である。核酸塩基Bは,リボヌクレオシド,リボヌクレオチド,またはそれらの誘導体を構成する核酸塩基である。
【0032】
すなわち,好ましい化合物は,
2’−O−(2−クロロ)エトキシメチル−3’,5’−O−(1,1,3,3,−テトライソプロピルジシロキサン−1,3ジイル)核酸塩基B,
2’−O−(2,2−ジクロロ)エトキシメチル−3’,5’−O−(1,1,3,3,−テトライソプロピルジシロキサン−1,3ジイル)核酸塩基B,
2’−O−(2,2−ジフルオロ)エトキシメチル−3’,5’−O−(1,1,3,3,−テトライソプロピルジシロキサン−1,3ジイル)核酸塩基B,
2’−O−(2−クロロ)エトキシメチル−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)核酸塩基B,
2’−O−(2,2−ジクロロ)エトキシメチル−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)核酸塩基B,
2’−O−2,2−ジフルオロエトキシメチル−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)核酸塩基B,
2’−O−(2−クロロ)エトキシメチル−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)核酸塩基B 3’−(2−シアノエチル ジイソプロピルホスホロアミダイト),
2’−O−(2,2−ジクロロ)エトキシメチル−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)核酸塩基B 3’−(2−シアノエチル ジイソプロピルホスホロアミダイト),又は
2’−O−(2,2−ジフルオロ)エトキシメチル−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)核酸塩基B 3’−(2−シアノエチル ジイソプロピルホスホロアミダイト),である。
【0033】
第1の側面の好ましい態様は,核酸塩基Bを,アデノシン,グアノシン,シチジン又はウリジンとしたときに,
2’−O−(2−クロロ)エトキシメチル−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリイル)核酸塩基B 3’−(2−シアノエチル ジイソプロピルホスホロアミダイト),又は2’−O−(2,2−ジクロロ)エトキシメチル−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリイル)核酸塩基B 3’−(2−シアノエチル ジイソプロピルホスホロアミダイト)である。
【0034】
本発明の第2の側面は,下記一般式(I)で示される2’−位に保護基を有するリボヌクレオシド,リボヌクレオチド,またはそれらの誘導体の製造方法に関する。この方法において,リボヌクレオシド,リボヌクレオチド,またはそれらの誘導体は,第1の側面において説明したいずれの化合物をも採用できる。そして,この方法は,下記一般式(II)で示される化合物に下記一般式(III)で示される化合物を作用させる工程を含む。
【0035】
【化2】
【0036】
(一般式(I)中,Oは,リボヌクレオシド,リボヌクレオチド,またはそれらの誘導体の2’位水酸基の酸素原子を示し,
〜Rは,先に説明したと同義である。)
【0037】
【化3】
【0038】
(一般式(II)中,Bは保護基で保護されてもよい核酸塩基を示し,R21,R22,R23及びR24は,同一でも異なってもよく,直鎖又は分岐してもよいC1−5アルキル基, C1−5アルコキシ基又はC1−5ハロアルキル基を示し,R及びRは一般式(I)におけるR及びRと同義である。)
【0039】
「保護基で保護されてもよい核酸塩基」における核酸塩基は,RNAに含まれる塩基を含む置換基を意味し,具体的にはアデノシン,グアノシン,シチジン又はウリジンである。本発明における核酸塩基の例は,アデニン,グアニン,シトシン,ウラシル又はそれらの誘導体である。核酸塩基の誘導体の例は,5−メチルシトシン;5−ヒドロキシメチルシトシン;5−フルオロウラシル;チオウラシル;6−アザウラシル;5−ヒドロキシウラシル;2,6−ジアミノプリン;アザアデニン;アザグアニン;及びイソグアニンである。
【0040】
「保護基で保護されてもよい核酸塩基」における,保護基で保護された核酸塩基の例は,核酸塩基中のアミノ基中の原子が脱離できる基により置換されたものである。核酸塩基中のアミノ基の保護基の例は,アセチル基;プロピオニル基;ブチリル基;イソブチリル基等の脂肪族アシル基;ベンゾイル基;4−メチルベンゾイル基;4−メトキシベンゾイル基;フェニルアセチル基;フェノキシアセチル基;4−tert−ブチルフェノキシアセチル基;4−イソプロピルフェノキシアセチル基等の芳香族アシル基;ハロゲン原子;C1−10アルキル基;C1−10アルキルオキシ基等の置換基を有する脂肪族アシル基又は芳香族アシル基;2−シアノエチル基;2−(p−ニトロフェニル)エチル基;2−(ベンゼンスルホニル)エチル基;ジメチルアミノメチレン基;ジブチルアミノメチレン基;2−シアノエトキシカルボニル基;2−(p−ニトロフェニル)エトキシカルボニル基;2−(ベンゼンスルホニル)エトキシカルボニル基である。
【0041】
「C1−5アルキル基」は,炭素数が1個〜5個のアルキル基である。C1−5直鎖アルキル基の例はメチル基,エチル基,プロピル基,ブチル基,及びペンチル基である。C1−5分鎖アルキル基の例はイソプロピル基,イソブチル基,1−メチルプロピル基,t−ブチル基,1−メチルブチル基,2−メチルブチル基,3−メチルブチル基,1−エチルプロピル基,1,1−ジメチルプロピル基,2,2−ジメチルプロピル基,1,2−ジメチルプロピル基である。C1−5環状アルキル基の例はシクロプロピル基,シクロブチル基,及びシクロペンチル基である。
【0042】
「C1−5アルコキシ基」は,炭素数が1個〜5個のアルコキシ基である。C1−5アルコキシ基の例は,メトキシ基,エトキシ基,及びプロピルオキシ基である。
【0043】
1−5ハロアルキル基は,炭素数が1個〜5個のハロアルキル基である。
【0044】
21〜R24の好ましい例は,C2−4アルキル基であり,具体的なR21〜R24は,エチル基,プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,sec−ブチル基,イソブチル基,又はter−ブチル基である。
【0045】
【化4】
【0046】
(一般式(III)中,R〜Rは,一般式(I)におけるR〜Rと同義である。)
【0047】
この工程は,たとえば,一般式(II)で示される化合物を適切な溶媒により乾燥させた後,溶媒に溶解させる。溶媒の例は,THFである。この溶液に,一般式(III)で示される化合物を加える。そして,溶液を−50℃以上−20℃以下,好ましくは−45℃以上−30℃以下に冷却する。その後,NISやNBSといったハロゲン源及びトルエンスルホン酸やトリフロオロメタンスルホン酸等の有機酸を撹拌しつつ添加する。撹拌時間の例は,30分以上2時間以下である。反応を中止させるためには,トリエチルアミンなどの塩基を添加すればよい。その後,精製する。このようにして後述する一般式(IV)で示されるリボヌクレオシドを得ることができる。この一般式(IV)で示される化合物を用いることで,後述するように一般式(I)で示される化合物を得ることができる。
【0048】
本発明の第2の側面は,上記の工程の後に以下の工程を含むものが好ましい。すなわち,先に説明した工程で,一般式(II)で示される化合物に一般式(III)で示される化合物を作用させ,下記一般式(IV)で示される化合物を得る。その後,前記一般式(IV)で示される化合物とC1−3アルコールとを反応させ,脱保護することにより,下記一般式(V)で示される化合物を得る。
【0049】
【化5】
【0050】
一般式(IV)中,Bは保護基で保護されてもよい核酸塩基を示し,R〜Rは,一般式(I)におけるR〜Rと同義であり,R21〜R24は,一般式(II)におけるR21〜R24と同義である。保護基で保護されてもよい核酸塩基は,一般式(II)におけるものと同義である。
【0051】
【化6】
【0052】
一般式(V)中,Bは保護基で保護されてもよい核酸塩基を示し,R〜Rは,一般式(I)におけるR〜Rと同義である。
【0053】
この工程は,たとえば,一般式(IV)で示される化合物を乾燥させた後に行う。そして,C1−3アルコール(低級アルコール)に溶解させる。低級アルコールの例は,メタノール又はエタノールである。溶液に例えばフッ化アンモニウムを添加し,撹拌する。撹拌時の温度は,30℃以上60℃以下であっても,45℃以上55℃以下であってもよい。反応時間は,3時間以上1日以下であり,4時間以上7時間以下でもよい。得られた化合物を公知の方法で濃縮又は抽出する。
【0054】
次に,前記一般式(V)で示される化合物とハロゲン化ジメトキシトリフェニルメチルと反応させ,一般式(VI)で示される化合物を得る。
【0055】
【化7】
【0056】
一般式(VI)中,Bは保護基で保護されてもよい核酸塩基を示し,R〜Rは,一般式(I)におけるR〜Rと同義であり,式DMTrは4,4’−ジメトキシトリチル基を示す。
【0057】
ハロゲン化ジメトキシトリフェニルメチルの例は,4,4’−ジメトキシトリチルクロライドである。
【0058】
本発明の第2の側面は,先に説明した工程の後に,さらに以下の工程を有するものが好ましい。すなわち,先に説明した工程で得られた一般式(VI)で示される化合物と下記一般式(VII)で示される化合物を反応させ,下記一般式(VIII)で示される化合物を得る工程を含む。
【0059】
【化8】
【0060】
(一般式(VII)中,
31〜R34は,同一でも異なってもよく,水素原子,C1−3アルキル基,又はC1−3ハロアルキル基を示し,
35及びR36は,同一でも異なってもよく,C1−5アルキル基又はC1−5ハロアルキル基を示し,
37は,ハロゲン原子を示す。)
【0061】
31〜R34の好ましい例は,同一でも異なってもよく,水素原子,又はメチル基である。なお,R31〜R34は,いずれも水素原子であるものが最も好ましい。
35及びR36の好ましい例は,C2−4アルキル基であり,具体的なR21〜R24は,エチル基,プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,sec−ブチル基,イソブチル基,又はter−ブチル基である。
37の好ましい例は,フッ素原子,塩素原子又は臭素原子である。
【0062】
【化9】
【0063】
(一般式(VIII)中,Bは保護基で保護されてもよい核酸塩基を示し,R〜Rは,一般式(I)におけるR〜Rと同義であり,R31〜R36は,一般式(VII)におけるR31〜R36と同義であり, 式DMTrは4,4’−ジメトキシトリチル基を示す。)
【0064】
この工程は,一般式(VI)で示される化合物を適宜乾燥させる。この化合物を溶媒に溶解させ,式(VII)で示される化合物を滴下する。例えば,20℃以上30℃以下の温度で,30分以上2時間以下撹拌する。反応を停止するためには低級アルコールを加えればよい。
【発明の効果】
【0065】
本発明は,基本的には,アルコキシメチル系保護基を有するRNAの修飾体について,保護基部分にハロゲン原子を置換基として導入することで,高い二重鎖形成能を付与できる。
【0066】
また,本発明は,アルコキシメチル骨格を有するRNAの修飾体について,保護基部分にハロゲン原子を置換基として導入することで,RNAの核酸塩基の種類によらずRNAの修飾体を容易に合成できる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1図1は,アルコキシメチル骨格修飾に対する置換基の影響を示す図面に替わるグラフである。
図2図2は,フッ素を含む修飾体の置換基の個数の影響を示す図面に替わるグラフである。
図3図3は,塩素原子を含む修飾体の置換基の個数の影響を示す図面に替わるグラフである。
図4図4は,塩素原子の1置換体及び2置換体と,シアノ基置換体及びメチル置換体を比較する図面に替わるグラフである。
図5図5は,フッ素を含む修飾体のDNAに対する親和性を示す図面に替わるグラフである。
図6図6は,塩素原子を含む修飾体のDNAに対する親和性を示す図面に替わるグラフである。
図7図7は,フッ素を含む修飾体の置換基の影響を示す図面に替わるグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0068】
先に説明したとおり,本発明の第1の側面は,2’−位に保護基を有するリボヌクレオシド,リボヌクレオチド,またはそれらの誘導体に関する。そして,リボヌクレオシド,リボヌクレオチド,またはそれらの誘導体の2’−位の酸素原子をOとして表現した場合,保護基が下記一般式(I)で示される。
【0069】
【化10】
【0070】
式中,Oは,リボヌクレオシド,リボヌクレオチド,またはそれらの誘導体の2’位水酸基の酸素原子を示す。なお,Oと接続されている部位が保護基部分である。このため上記一般式(I)では,リボース及び核酸塩基を含む部分をかっこで括っている。リボヌクレオチドは,RNAを構成する単位である。そして,リボヌクレオシドは,リボース及び核酸塩基を含む。リボヌクレオシドリン酸がリボヌクレオチドである。リボヌクレオシド又はリボヌクレオチドの誘導体は,RNAを構成するリボヌクレオシド又はリボヌクレオチドに1又は複数の置換基が付加したものである。置換基の例は,リボヌクレオシド又はリボヌクレオチドの水素原子と置換されるC1−3アルキル基,又はC1−3ハロアルキル基である。
【0071】
一般式(I)において,R及びRは,同一でも異なってもよく,水素原子, C1−3アルキル基,C2−3アルケニル基,C2−3アルキニル基,ヒドロキシC2−3アルキル基,又はC1−3ハロアルキル基を示す。R及びRは,同一でも異なってもよく,水素原子,ハロゲン原子,C1−3アルキル基,C2−3アルケニル基,C2−3アルキニル基,ヒドロキシC2−3アルキル基,又はC1−3ハロアルキル基を示す。R及びRは,同一でも異なってもよく,水素原子,ハロゲン原子, C1−3アルキル基,C2−3アルケニル基,C2−3アルキニル基,ヒドロキシC2−3アルキル基,C1−3ハロアルキル基を示す。Rは,ハロゲン原子又はC1−3ハロアルキル基を示す。
【0072】
本発明は,上記のリボヌクレオシド,リボヌクレオチド,またはそれらの誘導体を含むオリゴリボ核酸(オリゴRNA)をも提供する。そして,オリゴリボ核酸(オリゴRNA)は,アンチセンスRNA,siRNA,及びアプタマーを含む医薬品素材となる。このため,本発明は,上記のリボヌクレオシド,リボヌクレオチド,またはそれらの誘導体を含む試薬,アンチセンスRNA用試薬,siRNA用試薬,及びアプタマー用試薬をも提供する。
【0073】
先に説明したとおり,本発明の第2の側面は,2’−位に保護基を有するリボヌクレオシド,リボヌクレオチド,またはそれらの誘導体の製造方法に関する。この製造方法については,後述する実施例に基づいて,当業者が公知の方法を適宜採用することで調整した者も本発明の第2の側面に含まれる。
【0074】
以下,実施例を示し,本発明を具体的に説明する。しかしながら,本発明は,実施例に限定されず,当業者に自明な範囲で適宜修正したもの本発明に含まれる。
【実施例1】
【0075】
測定系
NMR[
NMR (300 MHz), 31P NMR
(121 MHz)]測定には,ヴァリアンマーキュリー300(Varian MERCURY) 300
(300MHz) を用いた。H NMRはCDCl中テトラメチルシラン(tetramethylsilane) (TMS) (δ0.0) を外部標準として用いた。31P NMRは85% HPO (δ0.0) を外部標準として用いた。UV/visスペクトル測定には,JASCO V−550 UV/vis スペクトロフォトメータ(spectrophotometer)を用いた。モルディタイムオブフライト質量分析(MALDI−TOF−MS)測定には,アプライドバイオシステム社製ボイジャーDESTRスペクトロメータ(Applied Biosystems Voyager−DE STR spectrometer)を用いた。薄相クロマトグラフィー (TLC) には,TLCプレートシリカゲル(TLC plates Silica gel) 60
254 (メルク, No. 5715) を用いた。 シリカゲルカラムクロマトグラフィーには,カントーシリカゲル(Kanto silica gel )60N (spherical, neutral, 63−210マイクロm)を用いた。 逆相(Reversed−phase) HPLC (RP−HPLC) には,マイクロボンドアスフェア(μBondasphere) 5 μm C18 column (100 オングストローム, 3.9 mm × 150 mm) (Waters),またはソース 5RPC ST 4.6/150 (4.6 mm × 150
mm) (GE ヘルスケア)を用いた。反応に用いた溶媒は,市販のものを適切に蒸留し,ナトリウムまたはモレキュラーシーブ (MS) で乾燥したものを用いた。反応は全てアルゴン(Ar)雰囲気下に行った。
【0076】
2’−O−ハロアルコシキメチル−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリイル)ウリジン3’−(2−シアノエチル ジイソプロピルホスホロアミダイト)の合成
(2´−O−haloalchoxymethyl−5´−O−(4,4´−dimethoxytrityl)
uridine 3´−(2−cyanoethyl diisopropylphosphoramidite))
以下のスキーム1〜3を,Ohgi,
T.; Kitagawa, H.; Yano, J.; Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry,
2008, 2.15.1−2.15.19.に記載の方法を参照して行った。
【0077】
2’−O−ハロアルコシキメチル−3’,5’−O−(1,1,3,3,−テトライソプロピルジシロキサン−1,3ジイル)ウリジン(2a−e)の調整
(2´−O−
haloalchoxymethyl −3´,5´−O−(1,1,3,3−tetraisopropyldisiloxane−1,3 −diyl)uridine (2a−e))
【0078】
スキーム1
【化11】
【0079】
スキーム1において,NISは,N−ヨードスクシンイミドを示す。TfOHは,トリフルオロメタンスルホン酸を示す。THFは,テトラヒドロフランを示す。
【0080】
2’−O−(2−クロロ)エトキシメチル−3’,5’−O−(1,1,3,3,−テトライソプロピルジシロキサン−1,3ジイル)ウリジン(2a)
(2´−O−(2−chloro)ethoxymethyl−3´,5´−O−(1,1,3,3−tetraisopropyldisiloxane−1,3−diyl)uridine (2a))
式1で示される化合物2’−O−メチルチオメチル−3’,5’−O−(1,1,3,3,−テトライソプロピルジシロキサン−1,3ジイル)ウリジン(1)(2´−O−methylthiomethyl−3´,5´−O−(1,1,3,3−tetraisopropyldisiloxane−1,3−diyl)uridine) (1.09 g, 2 mmol)をピリジン及びトルエンによって共沸乾燥を行ない,THF(7 ml)に溶解させた。これに2−クロロエタノール (268 ml, 4 mmol)を加え,−40°Cに冷却した。その後,N−ヨードスクシンイミド(540 mg, 2.4 mmol THF 5.4 ml中)を加え,トリフルオロメタンスルホン酸(351 ml, 2 mmol THF 7 ml中)を滴下した。反応混合物を−40°Cで1時間撹拌した後,トリエチルアミンを7 ml加えて反応を停止した。これにジクロロメタン(60 ml)を加え,10% Na2S2O3水溶液(40 ml×2),飽和重曹水(40 ml×2)で洗浄し,集めた洗液をジクロロメタン(60 ml)で抽出した。集めた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後,ろ過し,減圧下濃縮乾燥したものをシリカゲルクロマトグラフィー[3×10 cm, 30g のシリカゲル, ジクロロメタン−メタノール(dichloromethane−methanol) (99.5:0.5,v/v → 99:1,v/v)]によって精製することにより,式2aで示される化合物(1.06 g, 92%)を得た。
【0081】
1H NMR (300 MHz, CDCl3) d 9.51 (1H, br, NH), d 7.90 (1H, d, J
= 8.1 Hz, 6−H) , d 5.75 (1H, s, 1´−H), d 5.69 (1H, d, J
= 8.4 Hz, 5−H) , d 5.05 (1H, d, J =
6.9 Hz, H−C of acetal) , d 4.99 (1H, d, J =
6.9 Hz, H−C of acetal), d 4.29−3.67 (9H, m, 2´−H, 3´−H, 4´−H, 5´−H, CH2Cl−CH2−O), d 1.11−0.93 (28H, m, iPr×4).
【0082】
2’−O−(2,2−ジクロロ)エトキシメチル−3’,5’−O−(1,1,3,3,−テトライソプロピルジシロキサン−1,3ジイル)ウリジン(2b)
(2´−O−(2,2−dichloro)ethoxymethyl−3´,5´−O−(1,1,3,3−tetraisopropyldisiloxane−1,3−diyl)uridine (2b))
【0083】
上記式1で示される2’−O−メチルチオメチル−3’,5’−O−(1,1,3,3,−テトライソプロピルジシロキサン−1,3ジイル)ウリジン(820 mg, 1.5 mmol) をピリジン及びトルエンによって共沸乾燥を行ない,THF(10 ml)に溶解させた。これに2,2−ジクロロエタノール (250 ml, 3 mmol),モレキュラーシーブス4A (1.6 g)を加え,−40°Cに冷却した後,N−ヨードスクシンイミド(420 mg, 1.8 mmol)を加え,トリフルオロメタンスルホン酸(270 ml, 3 mmol)を滴下した。反応混合物を−40°Cで1時間撹拌した後,トリエチルアミンを5 ml加えて反応を停止した。これにジクロロメタン(40 ml)を加え,10% Na2S2O3水溶液(30 ml×2),飽和重曹水(30 ml×2)で洗浄し,集めた洗液をジクロロメタン(40 ml)で抽出した。集めた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後,ろ過し,減圧下濃縮乾燥したものをシリカゲルクロマトグラフィー[2×10 cm, 20g of silica
gel, dichloromethane−methanol
(99.5:0.5,v/v →
97:3,v/v)]によって精製することにより,式2bで示される化合物(761 mg, 83%)を得た。
【0084】
1H
NMR (300 MHz, CDCl3) d 8.09 (1H, br, NH), d 7.89 (1H, d, J =
8.4 Hz, 6−H) , d 5.86 (1H, t, CHCl2−CH2−O), d 5.72 (1H, s, 1´−H), d 5.69−5.66 (1H, m, 5−H) , d 5.09 (1H, d, J =
6.6 Hz, H−C of acetal) , d 5.02 (1H, d, J =
6.9 Hz, H−C of acetal), d 4.29−3.96 (7H, m, 2´−H, 3´−H, 4´−H, 5´−H, CHCl2−CH2−O), d 1.11−0.93 (28H, m, iPr×4).
【0085】
2’−O−(2,2,2−トリクロロ)エトキシメチル−3’,5’−O−(1,1,3,3,−テトライソプロピルジシロキサン−1,3ジイル)ウリジン(2c)
(2´−O−(2,2,2−trichloro)ethoxymethyl−3´,5´−O−(1,1,3,3−tetraisopropyldisiloxane−1,3−diyl)uridine )
上記式1で示される2’−O−メチルチオメチル−3’,5’−O−(1,1,3,3,−テトライソプロピルジシロキサン−1,3ジイル)ウリジン (1.09 g, 2 mmol) をピリジン及びトルエンによって共沸乾燥を行ない,THF(14 ml)に溶解させた。これに2,2,2−トリクロロエタノール (970 ml, 10 mmol),モレキュラーシーブス4A (1.5 g),及びN−ヨードスクシンイミド(545 mg, 2.4 mmol)を加え,−40°Cに冷却した後,トリフルオロメタンスルホン酸(351 ml, 4 mmol)を滴下した。反応混合物を−40°Cで1時間撹拌した後,トリエチルアミンを1.5 ml加えて反応を停止した。これにジクロロメタン(60 ml)を加え,10% Na2S2O3水溶液(40 ml×2),飽和重曹水(40 ml×2)で洗浄し,集めた洗液をジクロロメタン(40 ml×2)で抽出した。集めた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後,ろ過し,減圧下濃縮乾燥したものをシリカゲルクロマトグラフィー[3×17 cm, 25g of silica gel, dichloromethane−methanol (99.5:0.5,v/v → 99:1,v/v)]によって精製することにより式2cで示される化合物(826 mg, 64%)を得た。
【0086】
1H
NMR (300 MHz, CDCl3) d 8.35 (1H, br, NH), d 7.89 (1H, d, J =
7.5 Hz, 6−H), d 5.75 (1H, s, 1´−H), d 5.68 (1H, d, J
= 7.8 Hz, 5−H) , d 5.23 (1H, d, J =
6.6 Hz, H−C of acetal) , d 5.16 (1H, d, J =
6.9 Hz, H−C of acetal), d 4.35−3.96 (7H, m, 2´−H, 3´−H, 4´−H, 5´−H, CCl3−CH2−O), d 1.11−0.96 (28H, m, iPr×4).
【0087】
2’−O−(2,2−ジフルオロ)エトキシメチル−3’,5’−O−(1,1,3,3,−テトライソプロピルジシロキサン−1,3ジイル)ウリジン(2d)
(2´−O−(2,2−difluoro)ethoxymethyl−3´,5´−O−(1,1,3,3−tetraisopropyldisiloxane−1,3−diyl)uridine )
上記式1で示される2’−O−メチルチオメチル−3’,5’−O−(1,1,3,3,−テトライソプロピルジシロキサン−1,3ジイル)ウリジン(3.25 g, 6 mmol) をピリジン及びトルエンによって共沸乾燥を行ない,THF(38 ml)に溶解させた。これに2,2−ジフルオロエタノール (760 ml, 12 mmol),及びモレキュラーシーブス4Aを加え,−40°Cに冷却した後,N−ヨードスクシンイミド(1.62 g, 7.2 mmol)を加え,トリフルオロメタンスルホン酸(760 ml, 12 mmol)を滴下した。反応混合物を−40°Cで1時間撹拌した後,トリエチルアミンを10 ml加えて反応を停止した。これにジクロロメタン(150 ml)を加え,10% Na2S2O3水溶液(150 ml×2),飽和重曹水(150 ml×2)で洗浄し,集めた洗液をジクロロメタン(50 ml×2)で抽出した。集めた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後,ろ過し,減圧下濃縮乾燥したものをシリカゲルクロマトグラフィー[4×16 cm, 80g of silica gel, dichloromethane−methanol (99.5:0.5,v/v → 99:1,v/v)]によって精製することで式2dで示される化合物(2.85 g, 83%)を得た。
【0088】
1H NMR (300 MHz, CDCl3) d 8.90 (1H, br, NH), d 7.90 (1H, d, J
= 8.1 Hz, 6−H) , d 6.17−5.77 (1H, m, CHF2−CH2−O), d 5.73 (1H, s, 1´−H), d 5.69 (1H, d, J = 7.5 Hz, 5−H) , d 5.06 (1H, d, J
= 6.9 Hz, H−C of acetal) , d 4.97 (1H, d, J =
6.9 Hz, H−C of acetal), d 4.29−3.77 (7H, m, 2´−H, 3´−H, 4´−H, 5´−H, CHF2−CH2−O), d 1.14−0.91 (28H, m, iPr×4).
【0089】
2’−O−(2,2,2−トリフルオロ)エトキシメチル−3’,5’−O−(1,1,3,3,−テトライソプロピルジシロキサン−1,3ジイル)ウリジン(2e)
(2´−O−(2,2,2−trifluoro)ethoxymethyl−3´,5´−O−(1,1,3,3−tetraisopropyldisiloxane−1,3−diyl)uridine )
上記式1で示される2’−O−メチルチオメチル−3’,5’−O−(1,1,3,3,−テトライソプロピルジシロキサン−1,3ジイル)ウリジン(1.09 g, 2 mmol) をピリジン及びトルエンによって共沸乾燥を行ない,THF(12 ml)に溶解させた。これに2,2,2−トリフルオロエタノール (288 ml, 4 mmol),モレキュラーシーブス4A (1 g)を加え,−40°Cに冷却した後,N−ブロモスクシンイミド(540 mg, 2.4 mmol)を加え,p−トルエンスルホン酸(288 ml, 4 mmol)を滴下した。反応混合物を−40°Cで1時間撹拌した後,トリエチルアミンを3 ml加えて反応を停止した。これにジクロロメタン(60 ml)を加え,10% Na2S2O3水溶液(40 ml×2),飽和重曹水(40 ml×2)で洗浄し,集めた洗液をジクロロメタン(40 ml×2)で抽出した。集めた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後,ろ過し,減圧下濃縮乾燥したものをシリカゲルクロマトグラフィー[4×8 cm, 40g of silica gel, dichloromethane−methanol (99.5:0.5,v/v → 99:1,v/v)]によって精製を行なった。式2eで示される化合物を得ることはできたものの,アノマー異性体と考えられる副生成物の除去が困難であったため,これ以上の精製は行なわずこのまま次の反応に用いた。
【実施例2】
【0090】
2’−O−(ハロアルコシキメチル)−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリイル)ウリジン(4a−e)の合成
(2´−O− haloalchoxymethyl −5´−O−(4,4´−dimethoxytrityl)uridine)
スキーム2
【0091】
【化12】
【0092】
上記スキーム2において,MeOHはメタノールを示す。DMTrClは,4,4’−ジメトキシトリチリルクロライドを示す。Pyridineはピリジンを示す。rtは室温を示す。
【0093】
2’−O−(2−クロロ)エトキシメチル−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)ウリジン(4a)
(2´−O−(2−chloro)ethoxymethyl −5´−O−(4,4´−dimethoxytrityl)uridine )
式2aで示される2’−O−2−クロロエトシキメチル−3’,5’−O−(1,1,3,3,−テトライソプロピルジシロキサン−1,3ジイル)ウリジン(869 mg, 1.5 mmol)をピリジン,及びによって共沸乾燥を行ない,メタノール(7.5 ml)に溶解させた。これにフッ化アンモニウム (222 mg, 6 mmol)を加え,50°Cで7時間撹拌した。反応混合物を減圧下濃縮し,アセトニトリル(30 ml)を加え,不溶物をろ過により除去した。これをヘキサン(30 ml×2)で洗浄し,集めた洗液をアセトニトリル(30 ml)で抽出した。集めた有機層を減圧下濃縮し,これ以上の精製は行なわず次の反応に用いた。粗精製物をピリジンによって共沸乾燥を行ない,ピリジン(15 ml)に溶解させた。これに4,4’−ジメトキシトリチリルクロライド(4,4´−dimethoxytritylchloride:DMTrCl)(730 mg, 2.25 mmol)を加え,室温で3日間撹拌した。メタノール(1.5 ml)で反応を停止した後,溶媒を減圧下留去し,ジクロロメタン(40 ml)を加えた。これを飽和重曹水(40 ml×3)で洗浄し,集めた洗液をジクロロメタン(40 ml×2)で抽出した。集めた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後,ろ過し,減圧下濃縮乾燥したものをシリカゲルクロマトグラフィー[3×14 cm, 40g of silica gel, dichloromethane−methanol− pyridine (99.5:0:0.5,v/v/v → 96.5:3:0.5,v/v/v)]によって精製することにより式4aで示される化合物(754 mg, 79%)を得た。
【0094】
1H
NMR (300 MHz, CDCl3) d 9.35 (1H, br, NH) , d 7.94 (1H, d, J =
8.1 Hz, 6−H) , d 7.40−6.82 (13H, m,
DMTr) , d 6.03 (1H, d, J = 2.7 Hz, 1´−H) , d 5.33−5.30 (1H, m, 5−H) , d 5.03 (1H, d, J =
6.9 Hz, H−C of acetal) , d 4.93 (1H, d, J =
6.9 Hz, H−C of acetal), d 4.50 (1H, m, 3´−H) , d 4.36−4.33 (1H, m, 2´−H) , d 4.09−4.07 (1H, m, 4´−H) , d 3.89−3.63 (8H, m, MeO×2, CH2Cl−CH2−O) , d 3.54−3.52 (2H, m, 5´−H), d 2.74 (1H, d, 3´−OH).
【0095】
2’−O−(2,2−ジクロロ)エトキシメチル−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)ウリジン(4b)
(2´−O−(2,2−dichloro)ethoxymethyl −5´−O−(4,4´−dimethoxytrityl)uridine )
式2bで示される化合物2’−O−(2,2−ジクロロ)エトキシメチル−3’,5’−O−(1,1,3,3,−テトライソプロピルジシロキサン−1,3ジイル)ウリジン(531mg, 865mmol)をピリジン,及びトルエンによって共沸乾燥を行ない,メタノール(5 ml)に溶解させた。これにフッ化アンモニウム (132 mg, 3.56 mmol)を加え,50℃Cで4時間撹拌した。反応混合物を減圧下濃縮し,アセトニトリル(30 ml)を加え,不溶物をろ過により除去した。これをヘキサン(30 ml×2)で洗浄し,集めた洗液をアセトニトリル(20 ml)で抽出した。集めた有機層を減圧下濃縮し,これ以上の精製は行なわず次の反応に用いた。粗精製物をピリジンによって共沸乾燥を行ない,ピリジン(10 ml)に溶解させた。これにDMTrCl(290 mg, 850 mmol)を加え,室温で10時間撹拌した。メタノール(2 ml)で反応を停止した後,溶媒を減圧下留去し,ジクロロメタン(15 ml)を加えた。これを飽和重曹水(10 ml×3)で洗浄し,集めた洗液をジクロロメタン(10 ml×2)で抽出した。集めた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後,ろ過し,減圧下濃縮乾燥したものをシリカゲルクロマトグラフィー[3×14 cm, 40g of silica gel, dichloromethane−methanol− pyridine (99.5:0:0.5,v/v/v → 98.5:1:0.5,v/v/v)]によって精製することで式4bで示される化合物(470 mg, 86%)を得た。
【0096】
1H
NMR (300 MHz, CDCl3) d 8.24 (1H, br, NH) , d 7.96 (1H, d, J = 8.1
Hz, 6−H) , d 7.39−6.83 (13H, m,
DMTr) , d 6.01 (1H, d, J = 2.7 Hz, 1´−H) , d 5.80
(1H, t, CHCl2−CH2−O) , d 5.78−5.31 (1H, m, 5−H) , d 5.11 (1H, d, J = 6.9 Hz, H−C of
acetal) , d 4.98 (1H, d, J = 6.6 Hz, H−C of
acetal), d 4.53−4.46 (1H, m, 3´−H) , d 4.35−4.32 (1H, m, 2´−H) , d 4.06−4.04 (1H, m, 4´−H) , d 4.02−4.00 (2H, m, CHCl2−CH2−O) , d 3.80 (6H, s, MeO×2) , d 3.61−3.51 (2H, m, 5´−H), d 2.41 (1H, d, 3´−OH).
【0097】
2’−O−2,2,2−トリクロロエトキシメチル−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)ウリジン(4c)
(2´−O−(2,2,2−trichloro)ethoxymethyl −5´−O−(4,4´−dimethoxytrityl)uridine )
式2cで示される化合物2’−O−(2,2,2−トリクロロ)エトキシメチル−3’,5’−O−(1,1,3,3,−テトライソプロピルジシロキサン−1,3ジイル)ウリジン(650 mg, 1 mmol)をピリジン及びトルエンによって共沸乾燥を行ない,メタノール(5 ml)に溶解させた。これにフッ化アンモニウム (148 mg, 4 mmol)を加え,50°Cで7時間撹拌した。反応混合物を減圧下濃縮し,アセトニトリル(20 ml)を加え,不溶物をろ過により除去した。これをヘキサン(20 ml×2)で洗浄し,集めた洗液をアセトニトリル(20 ml)で抽出した。集めた有機層を減圧下濃縮し,これ以上の精製は行なわず次の反応に用いた。粗精製物をピリジンによって共沸乾燥を行ない,ピリジン(10 ml)に溶解させた。これにDMTrCl(510 mg, 1.51mmol)を加え,室温で18時間撹拌した。メタノール(1 ml)で反応を停止した後,溶媒を減圧下留去し,ジクロロメタン(30 ml)を加えた。これを飽和食塩水(30 ml×3)で洗浄し,集めた洗液をジクロロメタン(30 ml)で抽出した。集めた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後,ろ過し,減圧下濃縮乾燥したものをシリカゲルクロマトグラフィー[2×10 cm, 25g of silica gel, dichloromethane−methanol− pyridine (99.5:0:0.5,v/v/v → 98.5:1:0.5,v/v/v)]によって精製することにより式4cで示される化合物(621 mg, 88%)を得た。
【0098】
1H NMR (300 MHz, CDCl3) d 8.27 (1H, br, NH) , d 7.95 (1H, d, J
= 7.8 Hz, 6−H) , d 7.40−6.83 (13H, m, DMTr) , d 6.04 (1H, d, J = 3.0 Hz, 1´−H) , d 5.33−5.29 (1H, m, 5−H) , d 5.22 (1H, d, J =
6.9 Hz, H−C of acetal) , d 5.11 (1H, d, J =
6.9 Hz, H−C of acetal), d 4.52−4.48 (1H, m, 3´−H) , d 4.41−4.39 (1H, m, 2´−H) , d 4.29−4.20 (2H, m, CCl3−CH2−O), d 4.10−4.08 (1H, m, 4´−H), d 3.80 (6H, s,
MeO×2) , d 3.57−3.53 (2H, m, 5´−H), d 2.42
(1H, d, 3´−OH).
【0099】
2’−O−2,2−ジフルオロエトキシメチル−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)ウリジン(4d)
(2´−O−(2,2−difluoro)ethoxymethyl −5´−O−(4,4´−dimethoxytrityl)uridine )
式2dで示される化合物2’−O−(2,2−ジフルオロ)エトキシメチル−3’,5’−O−(1,1,3,3,−テトライソプロピルジシロキサン−1,3ジイル)ウリジン (1.16 g, 2 mmol)をピリジン及びトルエンによって共沸乾燥を行ない,メタノール(10 ml)に溶解させた。これにフッ化アンモニウム (296 mg, 8 mmol)を加え,50°Cで7時間撹拌した。反応混合物を減圧下濃縮し,アセトニトリル(40 ml)を加え,不溶物をろ過により除去した。これをヘキサン(50 ml×2)で洗浄し,集めた洗液をアセトニトリル(30 ml)で抽出した。集めた有機層を減圧下濃縮し,これ以上の精製は行なわず次の反応に用いた。粗精製物をピリジンによって共沸乾燥を行ない,ピリジン(20 ml)に溶解させた。これにDMTrCl(1.42 g, 4.2 mmol)を加え,室温で3日間撹拌した。メタノール(2 ml)で反応を停止した後,溶媒を減圧下留去し,ジクロロメタン(30 ml)を加えた。これを飽和重曹水(30 ml×3)で洗浄し,集めた洗液をクロロホルム (30 ml)で抽出した。集めた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後,ろ過し,減圧下濃縮乾燥したものをシリカゲルクロマトグラフィー[3×8 cm, 20g of silica gel, dichloromethane−methanol− pyridine (99.5:0:0.5,v/v/v → 96.5:3:0.5,v/v/v)]によって精製することにより,式4dで示される化合物(376 mg, 90%)を得た。
【0100】
1H NMR
(300 MHz, CDCl3) d 8.25 (1H, br, NH) ,
d 7.96 (1H, d, J = 8.1 Hz, 6−H) , d 7.39−6.83 (13H, m, DMTr) , d 6.10−5.73 (1H, m, CHF2−CH2−O) , d 6.00 (1H, d, J = 2.7 Hz, 1´−H) , d 5.32−5.28 (1H, m, 5−H) , d 5.07 (1H, d, J =
6.9 Hz, H−C of acetal) , d 4.93 (1H, d, J =
6.6 Hz, H−C of acetal), d 4.53−4.47 (1H, m, 3´−H) , d 4.34−4.31 (1H, m, 2´−H) , d 4.08−4.06 (1H, m, 4´−H) , d 3.88−3.78 (8H, m, CHCl2−CH2−O, MeO×2) , d 3.60−3.51 (2H, m, 5´−H), d 2.39
(1H, d, 3´−OH).
【0101】
2’−O−2,2,2−トリフルオロエトキシメチル−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)ウリジン(4e)
(2´−O−(2,2,2−trifluoro)ethoxymethyl −5´−O−(4,4´−dimethoxytrityl)uridine )
式2eで示される化合物2’−O−(2,2,2−トリフルオロ)エトキシメチル−3’,5’−O−(1,1,3,3,−テトライソプロピルジシロキサン−1,3ジイル)ウリジン(414 mg, 692 mmol, crude)をピリジン及びトルエンによって共沸乾燥を行ない,メタノール(4 ml)に溶解させた。これにフッ化アンモニウム (103 mg, 2.78 mmol)を加え,50°Cで8時間撹拌した。反応混合物を減圧下濃縮し,アセトニトリル(15 ml)を加え,不溶物をろ過により除去した。これをヘキサン(15 ml×2)で洗浄し,集めた洗液をアセトニトリル(10 ml)で抽出した。集めた有機層を減圧下濃縮し,これ以上の精製は行なわず次の反応に用いた。粗精製物をピリジンによって共沸乾燥を行ない,ピリジン(7 ml)に溶解させた。これにDMTrCl(510mg, 1.51 mmol)を加え,室温で17時間撹拌した。メタノール(1 ml)で反応を停止した後,溶媒を減圧下留去し,クロロホルム(20 ml)を加えた。これを飽和食塩水(20 ml×3)で洗浄し,集めた洗液をクロロホルム(20 ml)で抽出した。集めた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後,ろ過し,減圧下濃縮乾燥したものをシリカゲルクロマトグラフィー[1×15 cm, 10g of silica gel, dichloro methane−methanol− pyridine (99.5:0:0.5,v/v/v → 98.5:1:0.5,v/v/v)]によって精製することにより,式4eで示される化合物(205 m,式1で示される化合物からの収率19%)を得た。
【0102】
1H NMR (300 MHz, CDCl3) d 8.06 (1H, br, NH) , d 7.95 (1H, d, J
= 8.4 Hz, 6−H) , d 7.39−6.84 (13H, m, DMTr) , d 6.00 (1H, d, J = 2.7 Hz, 1´−H) , d 5.1 (1H, d, J
= 8.4 Hz, 5−H) , d 5.10 (1H, d, J =
6.9 Hz, H−C of acetal) , d 4.96 (1H, d, J =
7.2 Hz, H−C of acetal), d 4.48 (1H, m, 3´−H) , d 4.35−4.33 (1H, m, 2´−H) , d 4.08−3.95 (2H, m, CF3−CH2−O, 4´−H) , d 3.80 (6H, s,
MeO×2) , d 3.57−3.53 (2H, m, 5´−H), d 2.33
(1H, d, 3´−OH).
【0103】
2’−O−ハロアルコシキメチル−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリイル)ウリジン3’−(2−シアノエチル ジイソプロピルホスホロアミダイト)(5a−e)の調整
(2´−O−haloalchoxymethyl−5´−O−(4,4´−dimethoxytrityl) uridine 3´−(2−cyanoethyl diisopropylphosphoramidite))
スキーム3
【0104】
【化13】
【0105】
スキーム3中,DIPEAは,ジイソプロピルアミンを示す。
【0106】
2’−O−(2−クロロ)エトキシメチル−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)ウリジン3’−(2−シアノエチル ジイソプロピルホスホロアミダイト)(5a)
(2´−O−(2−chloro)ethoxymethyl −5´−O−(4,4´−dimethoxytrityl) uridine 3´−(2−cyanoethyl diisopropylphosphoramidite) )
式4aで示される2’−O−2−クロロエトキシメチル−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)ウリジン(511 mg, 800 mmol)をピリジン及びトルエンによって共沸乾燥を行ない,ジクロロメタン(4 ml)に溶解させた。これにジイソプロピルアミン (410 mll, 2.4 mmol)を加え,2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミジド (268 ml, 1.2 mmol in CH2Cl2 4 ml) を滴下した。室温で1時間撹拌し,エタノール(1.5 ml)で反応を停止した。これにジクロロメタン(40 ml)を加え,飽和重曹水(40 ml×3)で洗浄し,集めた洗液をジクロロメタン(40 ml)で抽出した。集めた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後,ろ過し,減圧下濃縮乾燥したものをシリカゲルクロマトグラフィー[2×10 cm, 15g of amino silica gel, hexane−ethylacetate (7:3,v/v → ethylacetate only)]によって精製することで,ジアステレオマー混合物の目的物である式5aで示される化合物(469 mg, 70%)を得た。
【0107】
1H
NMR (300 MHz, CDCl3) d 9.15 (1H, br, NH) , d 7.99−7.92 (1H, m, 6−H) , d 7.41−6.84 (13H, m, DMTr) , d 6.06 (1H, m, 1´−H) , d 5.30−5.23 (1H, m, 5−H) , d 5.06−4.93 (2H, m, H−C of acetal) , d 4.58−4.56 (1H, m, 3´−H) , d 4.47−4.42 (1H, m, 2´−H) , d 4.27−4.18 (1H, m, 4´−H) , d 3.99−3.44 (16H, m, MeO×2, 5´−H, 2×(CH3)2CH−N, CH2Cl−CH2−O, NC−CH2CH2−), d 2.69−2.41 (2H, m, NC−CH2CH2−) , d 1.17−1.02 (12H, m, 2×(CH3)2CH−N).
31P NMR (121 MHz, CDCl3) d 151.35, d 150.48
【0108】
2’−O−(2,2−ジクロロ)エトキシメチル−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)ウリジン3’−(2−シアノエチル ジイソプロピルホスホロアミダイト)(5b)
(2´−O−(2,2−dichloro)ethoxymethyl −5´−O−(4,4´−dimethoxytrityl) uridine 3´−(2−cyano ethyl diisopropylphosphoramidite) )
式4bで示される2’−O−2,2−ジクロロエトキシメチル−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)ウリジンをピリジン及びトルエンによって共沸乾燥を行ない,ジクロロメタン(3 ml)に溶解させた。これにジイソプロピルアミン (255 ml, 1.5 mmol)を加え,2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミジド (167 ml, 1.2 mmol in CH2Cl2 2 ml) を滴下した。室温で1.5時間撹拌し,エタノール(1 ml)で反応を停止した。これにジクロロメタン(30 ml)を加え,飽和重曹水(30 ml×3)で洗浄し,集めた洗液をジクロロメタン(30 ml)で抽出した。集めた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後,ろ過し,減圧下濃縮乾燥したものをシリカゲルクロマトグラフィー[2×6 cm, 10g of amino silica gel, hexane−ethylacetate (7:3,v/v → ethylacetate only)]によって精製することで,ジアステレオマー混合物の目的物である式5bで示される化合物(324 mg, 77%)を得た。
【0109】
1H NMR (300 MHz, CDCl3) d 8.16 (1H, br, NH) , d 7.99−7.94 (1H, m, 6−H) , d 7.41−6.84 (13H, m, DMTr) , d 6.04−6.01 (1H, m, 1´−H) , d 5.86−5.79 (1H, m, 5−H) , d 5.29−5.20 (1H, m, CHCl2−CH2−O) , d 5.02−4.86 (2H, m, H−C of アセタール) , d 4.58−4.54 (1H, m, 3´−H) , d 4.44−4.41 (1H, m, 2´−H) , d 4.27−4.18 (1H, m, 4´−H) , d 4.13−3.42 (14H, m, MeO×2, 5´−H, 2×(CH3)2CH−N, CHCl2−CH2−O, NC−CH2CH2−), d 2.68−2.44 (2H, m, NC−CH2CH2−) , d 1.25−1.03 (12H, m, 2×(CH3)2CH−N).
31P NMR (121 MHz, CDCl3) d 151.49, d 150.43
【0110】
2’−O−(2,2,2−トリクロロ)エトキシメチル−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)ウリジン3’−(2−シアノエチル ジイソプロピルホスホロアミダイト)(5c)
(2´−O−(2,2,2−trichloro)ethoxymethyl −5´−O−(4,4´−dimethoxytrityl) uridine 3´−(2−cyano ethyl diisopropylphosphoramidite) )
式4cで示される2’−O−2,2,2−トリクロロエトキシメチル−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)ウリジン(283 mg, 400 mmol)をピリジン及びトルエンによって共沸乾燥を行ない,ジクロロメタン(2 ml)に溶解させた。これにジイソプロピルアミン (204 ml, 1.5 mmol)を加え,2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミジド (134 ml, 600 mmol in CH2Cl2 2 ml) を滴下した。室温で1時間撹拌し,エタノール(1 ml)で反応を停止した。これにジクロロメタン(25 ml)を加え,飽和重曹水(25 ml×3)で洗浄し,集めた洗液をジクロロメタン(25 ml)で抽出した。集めた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後,ろ過し,減圧下濃縮乾燥したものをシリカゲルクロマトグラフィー[2×6 cm, 10g of amino silica gel, hexane−ethylacetate (8:2,v/v → ethylacetate only)]によって精製することで,ジアステレオマー混合物の目的物である式5cで示される化合物(285 mg, 83%)を得た。
【0111】
1H NMR (300 MHz, CDCl3) d 8.11 (1H, br, NH) , d 7.96−7.94 (1H, m, 6−H) , d 7.41−6.84 (13H, m, DMTr) , d 6.06 (1H, m, 1´−H) , d 5.30−5.06 (3H, m, 5−H, H−C
of acetal) , d 4.59−4.47 (2H, m, 3´−H, 2´−H) , d 4.29−3.41 (15H, m, 4´−H, MeO×2, 5´−H, 2×(CH3)2CH−N, CCl3−CH2−O, NC−CH2CH2−), d 2.68−2.42 (2H, m, NC−CH2CH2−) , d 1.26−1.03 (12H, m, 2×(CH3)2CH−N).
31P NMR (121 MHz, CDCl3) d 151.49, d 150.43
【0112】
2’−O−(2,2−ジフルオロ)エトキシメチル−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)ウリジン3’−(2−シアノエチル ジイソプロピルホスホロアミダイト)(5d)
(2´−O−(2,2−difluoro)ethoxymethyl −5´−O−(4,4´−dimethoxytrityl) uridine 3´−(2−cyano ethyl diisopropylphosphoramidite) )
式4dで示される2’−O−2,2−ジフルオロエトキシメチル−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)ウリジン(320 mg, 500 mmol)をピリジン及びトルエンによって共沸乾燥を行ない,ジクロロメタン(5 ml)に溶解させた。これにジイソプロピルアミン (255 ml, 1.5 mmol)を加え,氷浴下で2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミジド (225 ml, 1 mmol) を滴下した。室温で1時間撹拌し,反応混合物にクロロホルム(30 ml)を加えた。これをリン酸バッファー (pH 7.0, 20 ml×4)で洗浄し,集めた洗液をクロロホルム(40 ml)で抽出した。集めた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後,ろ過し,減圧下濃縮乾燥したものをシリカゲルクロマトグラフィー[1×8 cm, 5g of amino silica gel, hexane−ethylacetate (7:3,v/v → ethylacetate only)]によって精製することで,ジアステレオマー混合物の目的物である式5dで示される化合物(227 mg, 54%)を得た。
【0113】
1H NMR (300 MHz, CDCl3) d 8.10 (1H, br, NH) , d 8.00−7.94 (1H, m, 6−H) , d 7.39−6.84 (13H, m, DMTr) , d 6.10−5.73 (2H, m, 1´−H) , d 5.28−5.20 (2H, m, CHF2−CH2−O, 5−H) , d 5.03−4.89 (2H, m, H−C of acetal) , d 4.61−4.56 (1H, m, 3´−H) , d 4.43−4.41 (1H, m, 2´−H) , d 4.27−4.20 (1H, m, 4´−H) , d 3.93−3.42 (14H, m, MeO×2, 5´−H, 2×(CH3)2CH−N, CHF2−CH2−O, NC−CH2CH2−) , d 2.65−2.44 (2H, m, NC−CH2CH2−) , d 1.29−0.85 (12H, m, 2×(CH3)2CH−N).
31P NMR (121 MHz, CDCl3) d 151.56, d 150.38
【0114】
2’−O−(2,2,2−トリフルオロ)エトキシメチル−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)ウリジン3’−(2−シアノエチル ジイソプロピルホスホロアミダイト)(5e)
(2´−O−(2,2,2−trifluoro)ethoxymethyl −5´−O−(4,4´−dimethoxytrityl) uridine 3´−(2−cyano ethyl diisopropylphosphoramidite) )
式4eで示される2’−O−2,2,2−トリフルオロエトキシメチル−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)ウリジン (184 mg, 280 mmol)をピリジン及びトルエンによって共沸乾燥を行ない,ジクロロメタン(2 ml)に溶解させた。これにジイソプロピルアミン (143 ml, 840 mmol)を加え,2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミジド (93.7 ml, 420 mmol in CH2Cl2 1 ml) を滴下した。室温で1.5時間撹拌し,エタノール(500 ml)で反応を停止した。これにジクロロメタン(15 ml)を加え,飽和重曹水(15 ml×3)で洗浄し,集めた洗液をジクロロメタン(15 ml)で抽出した。集めた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後,ろ過し,減圧下濃縮乾燥したものをシリカゲルクロマトグラフィー[2×7 cm, 11g of amino silica gel, hexane−ethylacetate (8:2,v/v → ethylacetate only)]によって精製することで,ジアステレオマー混合物の目的物である式5eで示される化合物(188 mg, 80%)を得た。
【0115】
1H NMR (300 MHz, CDCl3) d 9.00 (1H, br, NH) , d 7.99−7.94 (1H, m, 6−H) , d 7.39−6.84 (13H, m, DMTr) , d 6.01 (1H, m, 1´−H) , d 5.30−5.21 (1H, m, 5−H) , d 5.05−4.97 (2H, m, H−C of acetal) , d 4.62−4.55 (1H, m, 3´−H) , d 4.44 (1H, m, 2´−H) , d 4.27−4.18 (1H, m, 2´−H) , d 4.10−3.42 (14H, m, MeO×2, 5´−H, 2×(CH3)2CH−N, CCl3−CH2−O, NC−CH2CH2−), d 2.64−2.41 (2H, m, NC−CH2CH2−) , d 1.26−1.02 (12H, m, 2×(CH3)2CH−N).
31P NMR (121 MHz, CDCl3) d 151.74, d 150.40
【実施例3】
【0116】
2’−O−(2−フルオロ)エトキシメチル−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)ウリジン3’−(2−シアノエチルジイソプロピルホスホロアミダイト)(5f)の調整
(2´-O-(2-fluoro)ethoxymethyl-5´-O-(4,4´-dimethoxytrityl) uridine 3´-(2-cyanoethyl diisopropylphosphoramidite) (5f))
【0117】
スキーム4
【化14】
【0118】
スキーム4中,NISは,N−ヨードスクシンイミドを示す。TfOHは,トリフルオロメタンスルホン酸を示す。THFは,テトラヒドロフランを示す。MeOHはメタノールを示す。DMTrClは,4,4’−ジメトキシトリチリルクロライドを示す。Pyridineはピリジンを示す。rtは室温を示す。
【0119】
2’−O−(2−フルオロ)エトキシメチル−3’,5’−O−(1,1,3,3−テトライソプロピルジシロキサン−1,3−ジイル)ウリジン(2f)
(2´-O-(2-fluoro)ethoxymethyl-3´,5´-O-(1,1,3,3-tetraisopropyldisiloxane-1,3-diyl)uridine(2f))
2fの粗精製物は1(1.64 g, 3 mmol)と2-フルオロエタノール (1.65 ml, 30 mmol) から、2aと同様の手法により得た。シリカゲルクロマトグラフィー[3×17 cm, 50g of silica gel, hexane-ethylacetate (7:3,v/v)]によって精製を行い、2fを得た(1.13 g, 66%)。
【0120】
1H NMR (300
MHz, CDCl3), 9.57 (1H, br, NH), 7.90 (1H, d, J = 8.1 Hz, 6-H),
5.76 (1H, s, 1´-H), 5.69 (1H, d, J
= 8.1 Hz, 5-H), 5.04 (1H, d, J = 6.9 Hz, H-C of acetal), 5.00 (1H, d, J
= 6.9 Hz, H-C of acetal), 4.68-4.53 (2H, m, CH2F-CH2-O)
4.29-3.86 (7H, m, 2´-H, 3´-H, 4´-H, 5´-H, CH2F-CH2-O),
1.10-0.91 (28H, m, iPr×4).
【0121】
2’−O−(2−フルオロ)エトキシメチル−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)ウリジン(4f)
(2´-O-(2-fluoro)ethoxymethyl-5´-O-(4,4´-dimethoxytrityl)uridine (4f))
4fの粗精製物は,2´-O-(2-fluoro)ethoxymethyl-3´,5´-O-(1,1,3,3-tetraisopropyldisiloxane
-1,3-diyl)uridine 2f (1.13 g, 2.0 mmol)を原料とし、4aと同様の手法により得た。シリカゲルクロマトグラフィー[2.5×15 cm, 22g of silica gel, dichloromethane-methanol- pyridine
(99.5:0:0.5,v/v/v → 96.5:1:0.5,v/v/v)]によって精製を行い4fを得た(908 mg, 73%)。
【0122】
1H NMR (300
MHz, CDCl3) 8.03 (1H, br, NH), 7.93 (1H, d, J = 8.4 Hz, 6-H),
7.39-6.82 (13H, m, DMTr), 6.02 (1H, d, J = 3.3 Hz, 1´-H), 5.30-5.28 (1H, m, 5-H), 5.04 (1H, d, J
= 6.6 Hz, H-C of acetal), 4.93 (1H, d, J = 6.6 Hz, H-C of acetal),
4.67-4.46 (3H, m, 3´-H, CH2F-CH2-O),
4.36-4.34 (1H, m, 2´-H), 4.10-4.08 (1H, m, 4´-H),3.94-3.80 (8H, m, MeO×2, CH2F-CH2-O),
3.53-3.52 (2H, m, 5´-H), 2.61 (1H, d, 3´-OH).
【0123】
2’−O−(2−フルオロ)エトキシメチル−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)ウリジン3’−(2−シアノエチルジイソプロピルホスホロアミダイト)(5f)
(2´-O-(2-fluoro)ethoxymethyl-5´-O-(4,4´-dimethoxytrityl) uridine 3´-(2-cyanoethyl diisopropylphosphoramidite) (5f))
2´-O-(2-fluoro)ethoxymethyl-5´-O-(4,4´-dimethoxytrityl)uridine
4f (908 mg, 1.46 mmol)を原料とし、5aと同様に合成、精製を行い、ジアステレオマー混合物の5fを得た(918 mg, 77%)。
【0124】
1H NMR (300 MHz, CDCl3) d 8.34 (1H, br, NH) , d 7.95-7.90 (1H, m, 6-H) , d 7.41-6.84 (13H, m, DMTr)
, d 6.06 (1H, m, 1´-H) , d 5.30-5.23 (1H, m, 5-H) ,
d 5.01-4.86 (2H, m, H-C of acetal) , d 4.67-4.43 (4H, m, 2’-H, 3´-H, CH2F-CH2-O) , d 3.97-3.40 (14H, m, MeO×2, 5´-H, 2×(CH3)2CH-N, CH2F-CH2-O,
NC-CH2CH2-), d 2.68-2.41 (2H, m, NC-CH2CH2-) , d 1.28-1.03 (12H, m, 2×(CH3)2CH-N).
31P NMR (121 MHz, CDCl3) d 151.1, d 150.8
【実施例4】
【0125】
DNA合成機ABIエクセペダイト8909を用いた固相合成
鎖長伸長サイクルは,2´−O−TBDMS RNA 0.2 マイクロモルスケールのプロトコルにより行なった。合成試薬は全て,グレンリサーチ(Glen Research)社より購入したABI用のものを用いた。固相担体には,グレンリサーチより購入したU-RNA-CPG (0.2 マイクロmol for Expedite)を用いた。アミダイトユニットは,ジクロロメタンに溶解させ用いた。
【0126】
合成後,CPGの充填されているカラムに対しアンモニア水(1 ml)を加え,室温で3時間反応させた。溶液を減圧下濃縮し,凍結乾燥によって乾固させた。これを水に溶かし,逆相HPLCを用いて分析,精製した。
【0127】
RNA合成のプロトコル
(2´−O−TBDMS RNA 0.2 mmol scale)
【0128】
【表1】
【0129】
合成したオリゴヌクレオチドの配列と性質
【0130】
【表2】
【0131】
12−A12デュープレックスの融解温度解析
合成したU12オリゴマーと,rA12またはdA12オリゴマー各々0.3 nmolを10 mM phosphate−100 mM NaCl−0.1 mM EDTA buffer (pH 7.0) 150 mlに溶かした。オリゴマー溶液を8連セルに100 ml加え,室温から5 °C / minの速度で90 °Cまで上昇させた後,90 °Cの状態を10分間保持し,−2 °Cの速度で0 °Cになるまで温度を下降させ,アニーリングを行なった。オリゴマー溶液を4 °Cで1時間静置した後,融解温度Tm値の測定を行なった。オリゴマー溶液をセルに入れ,減圧下15分間脱気した後,窒素気流下,0.5 °C / minの速度で90 °Cまで温度を上昇させながら,0.5 °C間隔で260 nmにおける吸光度を測定した。
【0132】
(1)アルコキシメチル骨格修飾に対する置換基の影響 (vs RNA U12−rA12)
アルコキシメチル骨格修飾に対する置換基の影響を検討した。その結果を図1に示す。図1は,アルコキシメチル骨格修飾に対する置換基の影響を示す図面に替わるグラフである。図中,縦軸は相対的な吸収量を示す。Uは,核酸塩基がウラシルである核酸を示す。DFEMは, 核酸の2,2−ジフルオロエトキシメチル修飾体を示す。DCEMは,核酸の2,2−ジクロロエトキシメチル修飾体を示す。EOMは, 核酸の2’−O−エトキシメチル修飾体を示す。また,これらの特性を下表に示す。
【0133】
【表3】
【0134】
上記の表から, 2’−O−エトキシメチル修飾により,二重鎖融解温度Tが減少することが改めて示された。一方,ハロ置換2’−O−エトキシメチル修飾により, 二重鎖融解温度Tが上昇することが示された。特に,2,2−ジクロロエトキシメチル修飾体は,きわめて高い二重鎖結合能を有することが示された。
【0135】
(2)アルコキシメチル骨格修飾に対する置換基の個数の影響
(2−1)フッ素を含む修飾体 (vs RNA U12−rA12)
フッ素を含む修飾体の置換基の個数の影響を検討した。その結果を図2に示す。図2は,フッ素を含む修飾体の置換基の個数の影響を示す図面に替わるグラフである。図中,縦軸は相対的な吸収量を示す。Uは,核酸塩基がウラシルである核酸を示す。DFEMは, 核酸の2,2−ジフルオロエトキシメチル修飾体を示す。TFEMは,核酸の2,2,2−トリクロロエトキシメチル修飾体を示す。EOMは, 核酸の2’−O−エトキシメチル修飾体を示す。また,これらの特性を下表に示す。
【0136】
【表4】
【0137】
上記の表から,フッ素原子で置換したハロエトキシメチル基を保護器とするリボヌクレオシドは,二重鎖形成能力を有するがそれほど高くないことがわかる。
【0138】
(2−2)塩素を含む修飾体 (vs RNA U12−rA12)
塩素を含む修飾体の融解温度を測定した。その結果を図3に示す。図3は,塩素原子を含む修飾体の置換基の個数の影響を示す図面に替わるグラフである。
【表5】
【0139】
上記の表から,塩素原子の1置換体及び2置換体において,融解温度が極めて顕著に増加することがわかる。
【0140】
(3)ハロアルコキシメチル修飾体とCEM体,Me体との比較 (vs RNA U12−rA12)
【0141】
次に,上記の通り,顕著な融解温度を示す塩素原子の1置換体及び2置換体と,2−シアノエトキシメチル(CEM)置換体及びメチル置換体とを比較した。その結果を図4に示す。図4は,塩素原子の1置換体及び2置換体と,シアノ基置換体及びメチル置換体を比較する図面に替わるグラフである。
【0142】
【表6】
【0143】
上記のとおりであるから,塩素原子の1置換体及び2置換体は,2−シアノエトキシメチル(CEM)置換体に比べて融解温度が優位に上昇することがわかる。また,塩素原子の1置換体及び2置換体は,メチル置換体と同程度の高い溶解温度を示すことがわかる。
【0144】
(4) DNAに対する親和性の検討
(4−1)フッ素を含む修飾体 (vs DNA U12−dA12)
次に,フッ素を含む修飾体のDNAに対する親和性を検討した。その結果を図5に示す。図5は,フッ素を含む修飾体のDNAに対する親和性を示す図面に替わるグラフである。
【0145】
【表7】
【0146】
フッ素原子を含む修飾体はDNAに対する親和性を示さなかった。
【0147】
(4−2)塩素を含む修飾体 (vs DNA U12−dA12)
次に,塩素を含む修飾体のDNAに対する親和性を検討した。その結果を図6に示す。図6は,塩素原子を含む修飾体のDNAに対する親和性を示す図面に替わるグラフである。
【0148】
【表8】
【0149】
塩素原子を含む修飾体はDNAに対する親和性を示さなかった。
【0150】
(5)アルコキシメチル骨格修飾に対するフッ素置換基の影響 (vs RNA U12−rA12)
フッ素を含む修飾体の置換基の影響を検討した。その結果を図7に示す。図7は,フッ素を含む修飾体の置換基の影響を示す図面に替わるグラフである。図中,縦軸は相対的な吸収量を示す。Uは,核酸塩基がウラシルである核酸を示す。EOMは, 核酸の2’−O−エトキシメチル修飾体を示す。MFEMは,核酸の2’−O−フルオロエトキシメチル修飾体を示す。また,これらの特性を下表に示す。
【0151】
【表9】
【0152】
上記の表から,フッ素原子で置換したハロエトキシメチル基を有するリボヌクレオシドは,天然型RNAよりも高い二重鎖形成能力を有するが、安定化の効果はそれほど大きくない。
【産業上の利用可能性】
【0153】
オリゴリボ核酸(オリゴRNA)は,アンチセンスRNA,siRNA,アプタマーなどの医薬品素材となる機能性分子として注目され,世界中で医薬品としての開発が進められている。したがって,本発明は医薬産業の分野で利用され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7