【実施例】
【0030】
以下、実施例および比較例に基づいて説明する。なお、本実施例はあくまで一例であり、この例によって何ら制限されるものではない。すなわち、本発明は特許請求の範囲によってのみ制限されるものであり、本発明に含まれる実施例以外の種々の変形を包含するものである。
【0031】
(実施例1)
In
2O
3粉、Ga
2O
3粉、ZnO粉を、焼結体の組成比がIn、Ga及びZnの原子比で1.00:1.00:1.00となるように秤量した後、これらの粉末を湿式で混合・微粉砕し、その後、スプレードライヤーで乾燥・造粒して、混合粉末を得た。次に、この混合粉末を面圧400〜1000kgf/cm
2で一軸プレスして成形体を得た。次に得られた成形体をビニールで2重に真空パックし、1500〜4000kgf/cm
2でCIP成型した後、酸素雰囲気中、温度1350℃で15時間焼結し、その後、1.67℃/minで500℃まで降温した後、炉内で放冷した。
【0032】
このようにして得られたIGZO焼結体をSEMで観察したところ、SEM像の90μm×120μm視野中に存在するクラックの平均長さは13.2μmであり、最大長さは41.9μmであった。また、このとき、焼結体の抗折強度は54MPaであり、バルク抵抗は78.2mΩcmと、高強度かつ低抵抗のものが得られた。また、焼結体の平均粒径は21.8μmであり、焼結体密度は6.34g/cm
3と高密度のものが得られた。以上の結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
(比較例1〜3)
In
2O
3粉、Ga
2O
3粉、ZnO粉を、焼結体の組成比がIn、Ga及びZnの原子比で1.00:1.00:1.00となるように秤量した後、これらの粉末を湿式で混合・微粉砕し、その後、スプレードライヤーで乾燥・造粒して、混合粉末を得た。次に、この混合粉末を面圧400〜1000kgf/cm
2で一軸プレスして成形体を得た。次に得られた成形体をビニールで2重に真空パックし、1500〜4000kgf/cm
2でCIP成型した後、酸素雰囲気中、温度1430℃(比較例1)、1300℃(比較例2)、1250℃(比較例3)で、15時間焼結し、その後、それぞれ1.67℃/minで500℃まで降温した後、炉内で放冷した。
【0035】
比較例1の条件で得られたIGZO焼結体は、SEM像(視野:90μm×120μm)におけるクラックの平均長さが16.2μm、最大長さが50.8μmと、本発明の要件を満たさず、焼結体の抗折強度が34MPaと低かった。比較例2〜3の条件で得られたIGZO焼結体は、クラックの長さは本発明の要件を満たしており、抗折強度が高いものの、バルク抵抗が100mΩcm超と高い値を示した。
【0036】
(実施例2−4、比較例4)
In
2O
3粉、Ga
2O
3粉、ZnO粉を、焼結体の組成比がIn、Ga及びZnの原子比で1.00:1.00:1.01となるように秤量した後、これらの粉末を湿式で混合・微粉砕し、その後、スプレードライヤーで乾燥・造粒して、混合粉末を得た。次に、この混合粉末を面圧400〜1000kgf/cm
2で一軸プレスして成形体を得た。次に得られた成形体をビニールで2重に真空パックし、1500〜4000kgf/cm
2でCIP成型した後、酸素雰囲気中、温度1430℃(実施例2)、1350℃(実施例3)、1300℃(実施例4)、1250℃(比較例4)で、15時間焼結し、その後、それぞれ1.67℃/minで500℃まで降温し、その後は炉内で放冷した。
【0037】
実施例2〜4の条件で得られたIGZO焼結体は、SEM像(視野:90μm×120μm)におけるクラックの長さはいずれも本発明の要件を満たしており、いずれも抗折強度が50MPa以上、バルク抵抗が100mΩcm以下と、高強度かつ低抵抗のものが得られた。また、焼結体の平均粒径は22μm以下であり、焼結体密度は6.10g/cm
3以上と高密度のものが得られた。比較例4の条件で得られたIGZO焼結体は、クラックの長さは本発明の要件を満たしており、抗折強度が高いものの、バルク抵抗が100mΩcm超と高い値を示した。
【0038】
(実施例5−7、比較例5)
In
2O
3粉、Ga
2O
3粉、ZnO粉を、焼結体の組成比がIn、Ga及びZnの原子比で1.00:1.00:1.02となるように秤量した後、これらの粉末を湿式で混合・微粉砕し、その後、スプレードライヤーで乾燥・造粒して、混合粉末を得た。次に、この混合粉末を面圧400〜1000kgf/cm
2で一軸プレスして成形体を得た。次に得られた成形体をビニールで2重に真空パックし、1500〜4000kgf/cm
2でCIP成型した後、酸素雰囲気中、温度1430℃(実施例5)、1350℃(実施例6)、1300℃(実施例7)、1250℃(比較例5)で、15時間焼結し、その後、それぞれ1.67℃/minで500℃まで降温し、その後は炉内で放冷した。
【0039】
実施例5〜7の条件で得られたIGZO焼結体は、SEM像(視野:90μm×120μm)におけるクラックの長さはいずれも本発明の要件を満たしており、いずれも抗折強度が50MPa以上、バルク抵抗が100mΩcm以下と、高強度かつ低抵抗のものが得られた。また、焼結体の平均粒径は22μm以下であり、焼結体密度は6.10g/cm
3以上と高密度のものが得られた。比較例5の条件で得られたIGZO焼結体は、クラックの長さは本発明の要件を満たしており、抗折強度が高いものの、バルク抵抗が100mΩcm超と高い値を示した。
【0040】
(実施例8−11、比較例6)
In
2O
3粉、Ga
2O
3粉、ZnO粉を、焼結体の組成比がIn、Ga及びZnの原子比で1.00:1.00:1.05となるように秤量した後、これらの粉末を湿式で混合・微粉砕し、その後、スプレードライヤーで乾燥・造粒して、混合粉末を得た。次に、この混合粉末を面圧400〜1000kgf/cm
2で一軸プレスして成形体を得た。次に得られた成形体をビニールで2重に真空パックし、1500〜4000kgf/cm
2でCIP成型した後、酸素雰囲気中、温度1430℃(実施例8)、1350℃(実施例9)、1300℃(実施例10)、1275℃(実施例11)、1250℃(比較例6)で、15時間焼結し、その後、それぞれ1.67℃/minで500℃まで降温し、その後は炉内で放冷した。
【0041】
実施例8〜11の条件で得られたIGZO焼結体は、SEM像(視野:90μm×120μm)におけるクラックの長さはいずれも本発明の要件を満たしており、いずれも抗折強度が50MPa以上、バルク抵抗が100mΩcm以下と、高強度かつ低抵抗のものが得られた。また、焼結体の平均粒径は22μm以下であり、焼結体密度は6.10g/cm
3以上と高密度のものが得られた。比較例6の条件で得られたIGZO焼結体は、クラックの長さは本発明の要件を満たしており、抗折強度が高いものの、バルク抵抗が100mΩcm超と高い値を示した。
【0042】
(実施例12−15、比較例7)
In
2O
3粉、Ga
2O
3粉、ZnO粉を、焼結体の組成比がIn、Ga及びZnの原子比で1.00:1.00:1.10となるように秤量した後、これらの粉末を湿式で混合・微粉砕し、その後、スプレードライヤーで乾燥・造粒して、混合粉末を得た。次に、この混合粉末を面圧400〜1000kgf/cm
2で一軸プレスして成形体を得た。次に得られた成形体をビニールで2重に真空パックし、1500〜4000kgf/cm
2でCIP成型した後、酸素雰囲気中、温度1430℃(実施例12)、1350℃(実施例13)、1300℃(実施例14)、1275℃(実施例15)、1250℃(比較例7)で、15時間焼結し、その後は、それぞれ1.67℃/minで500℃まで降温し、その後は炉内で放冷した。
【0043】
実施例12〜15の条件で得られたIGZO焼結体は、SEM像(視野:90μm×120μm)におけるクラックの長さはいずれも本発明の要件を満たしており、いずれも抗折強度が50MPa以上、バルク抵抗が100mΩcm以下と、高強度かつ低抵抗のものが得られた。また、焼結体の平均粒径は22μm以下であり、焼結体密度は6.10g/cm
3以上と高密度のものが得られた。比較例7の条件で得られたIGZO焼結体は、クラックの長さは本発明の要件を満たしており、抗折強度が高いものの、バルク抵抗が100mΩcm超と高い値を示した。
【0044】
(実施例16−19)
In
2O
3粉、Ga
2O
3粉、ZnO粉を、焼結体の組成比が、表1に記載されるIn、Ga及びZnの原子比となるように秤量した後、これらの粉末を湿式で混合・微粉砕し、その後、スプレードライヤーで乾燥・造粒して、混合粉末を得た。次に、この混合粉末を面圧400〜1000kgf/cm
2で一軸プレスして成形体を得た。次に得られた成形体をビニールで2重に真空パックし、1500〜4000kgf/cm
2でCIP成型した後、大気雰囲気中、温度1350℃(実施例16、18)、1300℃(実施例17、19)で、15時間焼結し、その後、それぞれ1.67℃/minで500℃まで降温し、その後は炉内で放冷した。
【0045】
実施例16〜18の条件で得られたIGZO焼結体は、SEM像(視野:90μm×120μm)におけるクラックの長さはいずれも本発明の要件を満たしており、いずれも抗折強度が50MPa以上、バルク抵抗が100mΩcm以下と、高強度かつ低抵抗のものが得られた。また、焼結体の平均粒径は22μm以下であり、焼結体密度は6.10g/cm
3以上と高密度のものが得られた。
【0046】
(比較例8、9)
In
2O
3粉、Ga
2O
3粉、ZnO粉を、焼結体の組成比が、表1に記載されるIn、Ga及びZnの原子比となるように秤量した後、これらの粉末を湿式で混合・微粉砕し、その後、スプレードライヤーで乾燥・造粒して、混合粉末を得た。次に、この混合粉末を面圧400〜1000kgf/cm
2で一軸プレスして成形体を得た。次に得られた成形体をビニールで2重に真空パックし、1500〜4000kgf/cm
2でCIP成型した後、大気雰囲気中、温度1350℃で15時間焼結し、その後、比較例8では0.5℃/minで500℃まで降温し、その後は炉内で放冷した。一方、比較例9では、5℃/minで500℃まで降温し、その後は炉内で放冷した。
【0047】
比較例8の条件で得られたIGZO焼結体は、クラックの長さは本発明の要件を満たさなかった。これは、先述の通り、降温過程においても結晶粒成長が促進されることが原因と考えられる。一方、比較例9の条件で得られたIGZO焼結体は、クラックの長さは本発明の要件を満たすものの、抗折強度が41MPaと低い値となった。これは先述の通り、焼結体内部の残留応力が大きいために強度が低下したと考えられる。
【0048】
上記実施例及び比較例におけるIGZO焼結体について、クラック長さと抗折強度との関係を
図2〜3に示す。また、クラックの長さとバルク抵抗との関係を
図4〜5に示す。
図2〜5に示されるように、クラックの長さを適切に制御することで、抗折強度が50MPa以上、かつ、バルク抵抗が100mΩcm以下の焼結体を作製することができた。
なお、上記実施例及び比較例におけるIGZO焼結体について、クラックの本数を表1に示す。表1に示されるようにクラックの本数が多くても、その長さが制御されていれば、高強度の焼結体が得られることが分かる。