(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
測定軸に沿った方向に移動するとともに、対象物の位置を検出する測定子の原点に対する変位量を検出した後、前記変位量を補正値によって補正して測定値を得る位置測定器の補正方法であって、
前記測定軸に沿って前記原点から離れる方向に一定の間隔で設けられた複数の基準位置のそれぞれについて前記測定子の変位量を測定し、前記複数の基準位置のそれぞれについての基準値に対する前記変位量の検出ずれ量を取得する工程と、
前記複数の基準位置に対応した複数の前記検出ずれ量を、前記複数の基準位置のうち1つである注目位置での検出ずれ量と、前記注目位置での検出ずれ量とは異なる他の基準位置における検出ずれ量とを用いた平滑化処理により前記補正値を求める工程と、
を備えたことを特徴とする位置測定器の補正方法。
前記平滑化処理は、前記複数の基準位置のうち1つである注目位置での検出ずれ量と、前記注目位置を中心とした両側でそれぞれ同じ数の基準位置における検出ずれ量とを用いた演算により前記補正値を求めることを特徴とする請求項1記載の位置測定器の補正方法。
【背景技術】
【0002】
対象物の高さなどを測定する位置測定器は、測定軸に沿った方向に移動可能に設けられた測定子と、測定子の原点からの変位量を検出する検出部と、検出部によって検出した変位量に基づき対象物の高さなどの位置を演算する演算部と、を備えている。このような位置測定器においては、検出値の補正を行うための補正値が設定されている。すなわち、予め、原点から一定の間隔(例えば、20mm間隔)でブロックゲージの高さを測定しておき、ブロックゲージの基準値と検出値との誤差を補正値として記憶しておく。そして、対象物の高さなどを測定する際には、検出値と、これに対応した補正値とを用いて検出値を補正し、測定値として出力(表示)している。
【0003】
ここで、特許文献1には、定盤上に載置されるベースと、ベースに立設された支柱と、支柱に沿って昇降可能に設けられ測定子を有するスライダと、スライダの高さ方向の変位量を検出する変位検出器と、変位検出器の変位量を表示する表示手段と、を備えた一次元測定機が開示されている。
【0004】
この一次元測定機は、スライダが支柱に沿って上昇するときの補正データを予め記憶した第1の補正データテーブルと、スライダが支柱に沿って下降するときの補正データを予め記憶した第2の補正データテーブルと、制御手段と、を備えている。そして、スライダが上昇するときに検出された変位検出器の検出値を、第1の補正データテーブルに記憶された補正データによって補正し、スライダが下降するときに検出された変位検出器の検出値を、第2の補正データテーブルに記憶された補正データによって補正するようにしている。
【0005】
また、特許文献2には、基準スケールを測定する測定機と、基準スケールのノミナル値と推定される推定ノミナル値を算出する推定ノミナル値算出部と、基準スケールの測定値と、推定ノミナル値との誤差に応じて補正量を算出する補正量算出部と、測定機が測定した測定値を補正量に応じて補正する測定値補正部と、を備える測定機誤差補正装置が開示されている。
【0006】
この測定機誤差補正装置では、基準スケールを測定するだけで自動的に補正量を得て、その後の測定において使用される補正量を自動的に設定することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、位置測定器で使用される補正値は、検出部で検出した測定子の変位量(検出値)を補正するためのデータである。補正値は、測定軸に沿って原点から離れる方向に一定の間隔(例えば、20mm間隔)で設けられた複数の基準位置ごとに設定される。補正値は、ブロックゲージの高さを位置測定器によって測定し、検出部で得られた検出値と、ブロックゲージの高さ(基準値)との差によって得られる。
【0009】
図7(a)及び(b)は、補正値を説明する図である。
図7(a)は、記憶部に記憶される補正値の一例である。
図7(b)は、補正値の変動の状態を例示している。
図7(a)及び(b)において、横軸は測定軸上の位置を表し、縦軸はブロックゲージの高さ(基準値)と、ブロックゲージの高さを測定した際の検出値とのずれ量(補正値)を表している。縦軸の単位は、例えばμmである。
【0010】
図7(a)に表した例では、測定軸に沿って原点(ゼロ点)から20mm間隔で600mmまで設けられた基準位置での補正値が表される。すなわち、
図7(a)におけるプロットは、20mm、40mm、60mm、80mm、…、600mmのそれぞれの高さを有するブロックゲージの基準値と、検出値と、の差(検出ずれ量)を表している。
【0011】
位置測定器は、
図7(a)に表したように取得した一定の間隔(例えば、20mm間隔)での補正値を記憶している。そして、検出部によって検出した対象物の位置の検出値に基づき、記憶部から補正値を読み出して補正を行い、測定値を求める。例えば、検出値が20mmであった場合、20mmに対応した補正値(
図7(a)では、+2μm)を読み出し、検出値(20mm)から補正値(+2μm)を差し引いた値(19.998mm)を測定値として出力する。なお、検出値が複数の基準位置の間であった場合には、検出値の前後の基準位置における補正値を比例配分し、検出値から差し引けばよい。
【0012】
しかしながら、各ブロックゲージの高さを検出して補正値を取得する際、検出部のセンサの分解能や、スライダ部と支柱との組み付け精度、支柱の振動などの影響に起因して、検出値にばらつきが発生する場合がある。
図7(b)には、説明の便宜上、非常に狭い間隔でブロックゲージの高さを測定して得た補正値が表される。この補正値を波形として捉えた場合、低周波成分に高周波成分が重畳された状態になる。この高周波成分の多くは、検出部による検出ばらつきの成分であると考えられる。
【0013】
補正値にこのような検出ばらつきの成分が含まれていると、安定した補正値を得ることができず、検出値を補正する際の精度の低下を招く原因となる。
【0014】
本発明の目的は、補正値を求める際のばらつきを抑制して安定した位置補正を行うことができる位置測定器の補正方法及び位置測定器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の位置測定器の補正方法は、測定軸に沿った方向に移動するとともに、対象物の位置を検出する測定子の原点に対する変位量を検出した後、変位量を補正値によって補正して測定値を得る位置測定器の補正方法である。本発明は、測定軸に沿って原点から離れる方向に一定の間隔で設けられた複数の基準位置のそれぞれについて測定子の変位量を測定し、複数の基準位置のそれぞれについての基準値に対する変位量の検出ずれ量を取得する工程と、複数の基準位置に対応した複数の検出ずれ量を
、複数の基準位置のうち1つである注目位置での検出ずれ量と、注目位置での検出ずれ量とは異なる他の基準位置における検出ずれ量とを用いた平滑化処理により補正値を求める工程と、を備える。
【0016】
このような構成によれば、複数の基準位置のそれぞれについて求めた検出ずれ量を平滑化処理して位置測定器の補正値にしているため、検出器の分解能や測定子を移動させる機構の組み付け精度などに起因する補正値のばらつきを抑制することができるようになる。
【0017】
本発明の位置測定器の補正方法において、複数の基準位置のうち1つである注目位置での検出ずれ量と、注目位置を中心とした両側でそれぞれ同じ数の基準位置における検出ずれ量とを用いた演算で補正値を求めることが望ましい。特に、平滑化処理としては、複数の検出ずれ量を用いた移動平均処理を行うことが望ましい。このような構成によれば、移動平均処理などの演算によって注目位置での検出ずれ量に含まれる検出ばらつきを分散させることができる。
【0018】
本発明の位置測定器は、測定子と、検出部と、測定値演算部と、補正値演算部と、を備える。測定子は、測定軸に沿った方向に移動するとともに、対象物の位置を検出する。検出部は、測定子の原点に対する変位量を検出する。測定値演算部は、検出部で検出した変位量を補正値によって補正して測定値を得る。補正値演算部は、測定軸に沿って原点から離れる方向に一定の間隔で設けられた複数の基準位置のそれぞれについて、測定子の原点に対する変位量を検出部に検出させ、検出部で検出した変位量に基づいて複数の基準位置のそれぞれについての基準値に対する変位量の検出ずれ量を求め、複数の基準位置に対応した複数の検出ずれ量を
、複数の基準位置のうち1つである注目位置での検出ずれ量と、注目位置での検出ずれ量とは異なる他の基準位置における検出ずれ量とを用いた平滑化処理により補正値を求める。
【0019】
このような構成によれば、複数の基準位置のそれぞれについて求めた検出ずれ量を平滑化処理して補正値にしているため、検出部の分解能や測定子を移動させる機構の組み付け精度などに起因する補正値のばらつきを抑制することができるようになる。
【0020】
本発明の位置測定器はハイトゲージに適用されることが望ましい。このような構成によれば、対象物の高さを検出して補正する場合に、補正値を求める際のばらつきが抑制されて安定した高さ補正を行うことができるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図に基づき説明する。なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る位置測定器の構成を例示する斜視図である。
図1に表したように、位置測定器1は、定盤(図示せず)などの上に載置されるベース100と、ベース100に取り付けられ測定軸に沿った方向(Z軸方向)に延びる支柱110と、支柱110に沿ってZ軸方向にスライド移動可能に設けられるスライダ部15と、スライダ部15に取り付けられた測定子10と、を備える。すなわち、本実施形態に係る位置測定器1は、測定子10の原点(例えば、ベース100の下面)からの変位量によって対象物の高さなどを測定するハイトゲージである。
【0024】
本実施形態に係る位置測定器1では、ベース100に2本の平行な支柱110が立設されている。ベース100を定盤などの上に固定すると、支柱110は、Z軸方向に真っ直ぐ延びるように配置される。支柱110は1本でも、複数本でもよいが、複数本のほうがスライダ部15を安定して支持することができる。
【0025】
スライダ部15には支柱110を貫通させるための孔が設けられる。この孔に支柱110を貫通させるようにスライダ部15を取り付けることで、スライダ部15は、支柱110の延びるZ軸方向にスライド移動可能に設けられる。スライダ部15は、手動または図示しない駆動機構によって電動で移動する。
【0026】
測定子10はスライダ部15の例えば側面に固定される。このため、スライダ部15を支柱110に沿ってスライドさせることで、測定子10はスライダ部15とともに支柱110に沿ってZ軸方向に移動することになる。測定子10の先端は横方向に延出している。対象物の位置を測定する場合、測定子10の延出部分を対象物の測定点に合わせる。
【0027】
スライダ部15の正面には表示部105及び操作部108が設けられる。表示部105は、例えば液晶表示パネルを有する。表示部105には、測定子10によって測定した対象物の高さなどの測定値が表示される。
【0028】
ユーザが操作部108の所望のボタンを押下することで、位置測定器1のモード設定や表示設定、測定子10の原点の設定など、各種操作が行われる。測定子10の原点は、ベース100の下面のほか、操作部108の操作によってユーザの任意の位置に設定可能である。
【0029】
スライダ部15の内部には、制御部2が設けられる。制御部2は、対象物の位置の検出結果から測定値を演算したり、操作部108からの指示を受けて各部を制御したり、表示部105の表示内容を制御したりする。
【0030】
このような構成を備えた位置測定器1において、対象物の測定点の位置(例えば高さ)を測定するには、測定子10の下方に対象物を配置し、スライダ部15を支柱110に沿ってスライドさせ、測定子10の先端を対象物の測定点に合わせる。この状態で、検出部20によって、測定子10の原点からの変位量を検出する。そして、この変位量(検出値)を補正値によって補正し、測定値を得て、表示部105に表示させる。これにより、対象物の高さなどの測定値が得られる。
【0031】
次に、位置測定器1の各部の機能について説明する。
図2は、第1実施形態に係る位置測定器のブロック構成図である。
図2に表したように、位置測定器1のスライダ部15には、制御部2、検出部20及び記憶部40が設けられる。また、スライダ部15には、先に説明した表示部105及び操作部108が設けられる。制御部2は、測定値演算部31及び補正値演算部32を含む。制御部2は、測定値演算部31及び補正値演算部32での演算処理を行うとともに、検出部20及び記憶部40に関する制御を行う。
【0032】
検出部20は、測定子10の変位によって生じる信号の変化を検出して原点からの変位量(検出値)を出力する。測定値演算部31は、検出部20から出力された検出値を、記憶部40に記憶された補正値によって補正して測定値を求める演算を行う。
【0033】
補正値演算部32は、複数の基準位置のそれぞれについて、検出部20で検出した検出ずれ量を平滑化処理して補正値を求める演算を行う。すなわち、補正値演算部32は、複数の基準位置のそれぞれについて、検出部20に測定子10の原点に対する変位量を検出させ、この変位量から複数の基準位置のそれぞれについての検出ずれ量を求める。そして、複数の検出ずれ量を平滑化処理して補正値を求める。
【0034】
このように、複数の基準位置ごとに取得した複数の検出ずれ値を平滑化処理することで、複数の検出ずれ量に含まれる高周波成分を抑制した補正値を求めることができる。これは、検出値にローパスフィルタを適用することと等価である。
【0035】
図3は、本実施形態に係る位置測定器の測定系の機能ブロック図である。
位置測定器1の測定系は、センサ101、復調回路102、計数回路103、演算回路104、表示部105、データ出力部106及び記憶部40を備える。センサ101、復調回路102及び計数回路103は検出部20に含まれ、演算回路104は制御部2に含まれる。センサ101は例えば光学式、磁気式であり、測定子10の変位量に応じて変化する信号(光信号や誘導電流)を出力する。
【0036】
復調回路102は、センサ101から出力された信号を、パルス信号等の電気信号に復調する。計数回路103は、復調回路102から出力されたパルス信号等を受けて信号数をカウントする。
【0037】
演算回路104は、計数回路103で計数したカウント数に基づき、測定子10の原点からの変位量(検出値)を演算する。例えば、演算回路104は、1カウント当たりの距離とカウント数との積算によって検出値を求める。また、演算回路104は、計数回路103から出力された信号に基づき測定子10の絶対位置を演算してもよい。すなわち、位置測定器1は、インクリメント型、絶対値型のいずれでもよい。
【0038】
また、演算回路104は、記憶部40に記憶された補正値を用いて検出値に補正を施す。補正後の値が測定値として表示部105に送られる。測定値は、表示部105の液晶表示パネルに表示される。また、データ出力部106は、測定値を所定のデータ形式に変換して外部に出力する。
【0039】
このような位置測定器1においては、対象物の高さなどを測定する「位置測定モード」と、補正値を取得する「補正値取得モード」との切り替えが可能である。モードの切り替えは、例えば操作部108によるボタン操作によって行われる。通常では、「位置測定モード」によって上記のような処理で対象物の位置を測定する。一方、位置測定器1の出荷時や較正時においては、補正値を演算して例えば記憶部40に記憶させる「補正値取得モード」が選択される。
【0040】
本実施形態に係る位置測定器1では、「補正値取得モード」において、補正値演算部32は、検出部20で検出した複数の基準位置での検出ずれ量を平滑化処理して、複数の基準位置に対応した補正値を求める処理を行う。
【0041】
次に、位置測定器1における「補正値取得モード」での処理の具体例について説明する。
図4は、補正値の取得方法を例示するフローチャートである。
先ず、「補正値取得モード」への切り替えが行われたか否かの判断を行う(ステップS101)。例えば、ユーザによってスライダ部15に設けられた操作部108のモード切り換えのボタンが押下されたか否かを制御部2によって判断する。
【0042】
モード切り換えのボタンが押下されていない場合には測定待機状態(位置測定モード)を継続し、対象物の位置の測定を行う。一方、モード切り換えのボタンが押下された場合には、制御部2は「位置測定モード」から「補正値取得モード」への切り替えを行う。
【0043】
ステップS102に表した「補正値取得モード」では、測定軸に沿って原点から離れる方向に一定の間隔で設けられた複数の基準位置について測定子10の原点に対する変位量を測定し、検出ずれ量を取得する。例えば、20mm間隔で補正値を取得する場合、20mmのブロックゲージから、20mmずつ増加したブロックゲージの高さを順に測定する。各ブロックゲージを測定して得た検出値と、ブロックゲージの基準値との差(検出ずれ量)は、一旦記憶部40に記憶される。
【0044】
次に、最終の高さのブロックゲージに対応した検出ずれ量を取得したか否かを制御部2によって判断する(ステップS103)。最終の高さのブロックゲージに対応した検出ずれ量を取得していない場合にはステップS102へ戻り、次の高さのブロックゲージの高さを検出し、検出ずれ量を取得する。なお、ブロックゲージの高さに対応した検出ずれ量を取得する処理の間に取消(キャンセル)のボタンが押下された場合には、制御部2は、補正値取得モードから位置測定モードへと切り替え、測定待機状態へ移行させる。
【0045】
最終の高さのブロックゲージに対応した検出ずれ量を取得した後は、補正値の演算を行う(ステップS104)。補正値の演算は、補正値演算部32によって行われる。補正値は、記憶部40に記憶された各基準位置での検出ずれ量を平滑化処理する演算によって求められる。
【0046】
ここで、一例として、3点による移動平均処理について説明する。原点から測定軸に沿って一定間隔の測定位置(基準位置)での検出ずれ量をML(X)、補正値をVL(X)とする。X=0は原点、X=1は原点から1番目の基準位置、X=2は原点から2番目の基準位置、…、X=n(nは自然数)は原点からn番目の基準位置を意味する。
【0047】
3点を用いた移動平均処理において、原点(X=0)の補正値VL(0)は、例えば原点での検出値ML(0)をそのまま用いる。また、最後の基準位置(X=n)の補正値VL(n)は、例えば最後の基準位置での検出値ML(n)をそのまま用いる。なお、原点(X=0)の補正値VL(0)及び最後の基準位置(X=n)の補正値VL(n)については、他の方法で演算して得た値を用いてもよい。
【0048】
2番目の基準位置から(n−1)番目の基準位置までは、次の式(1)によって補正値を演算する。
VL(X)=(ML(X−1)+ML(X)+ML(X+1)/3) …(1)
【0049】
補正値演算部32は、各基準位置での補正値VL(X)を演算した後、補正値VL(X)を記憶部40に保存する(ステップS105)。制御部2は、記憶部40に補正値VL(X)が記憶された後、「補正値取得モード」を終了して測定待機状態に移行させる。
【0050】
なお、上記の例では検出ずれ量の3点を用いた移動平均処理について例示したが、3点以外の移動平均処理であってもよい。この場合、複数の基準位置のうち1つである注目位置での検出ずれ量と、注目位置を中心とした両側に同じ数の基準位置における検出ずれ量とを用いて移動平均処理を行うことが望ましい。また、他の平滑化処理を行う場合には、その平滑化処理に対応した式を適用して注目位置に対応した補正値を演算すればよい。これにより、注目位置での検出ずれ量に含まれるばらつきを分散させることができ、検出ずれ量を求めた際に含まれる高周波成分を抑制できることになる。
【0051】
図5(a)及び(b)は、一定間隔ごとの検出ずれ量および補正値の例を示す図である。
図5(a)には各基準位置における基準値と検出ずれ量の例が表され、
図5(b)には各基準位置における基準値と補正値の例が表される。「補正値取得モード」において、記憶部40は、
図5(a)に表したような一定間隔ごとの検出ずれ量を例えばテーブルデータとして一時的に格納している。
【0052】
補正値演算部32は、一定間隔ごとの補正値を演算するにあたり、
図5(a)に表した一定間隔ごとの検出ずれ量を読み出して平滑化処理(例えば、移動平均処理)を行い、補正値を演算する。演算によって得られた補正値は、
図5(b)に表したように、一定間隔ごとに例えばテーブルデータとして格納される。
【0053】
位置測定モードにおいて対象物の位置を測定する場合、測定値演算部31は、
図5(b)に表したような補正値を記憶部40から読み出し、対象物の位置の検出値を補正して、測定値を演算することになる。
図5(b)に表した補正値においては、検出ばらつきの影響が抑制されているため、この補正値を用いて検出値を補正することで、安定した測定値を得ることができるようになる。
【0054】
このように、本実施形態に係る位置測定器1においては、平滑化処理された補正値を用いて対象物の位置の検出値を補正するため、安定した位置補正を行うことができるようになる。このため、分解能の高くないセンサ101を用いた場合や、支柱110及びスライダ部15の組み付け精度を必要以上に高めなくても、安定した補正によって十分な測定精度を得ることができることになる。これにより、検出部20のセンサ101の分解能や測定子10を移動させる機構の組み付け精度などに起因した検出ばらつきによる影響が抑制され、安定した補正値を得ることができるようになる。
【0055】
(変形例)
図6は、変形例を説明する模式図である。
図6に表した位置測定器1では、第1実施形態で説明した補正値取得モードでの処理を、位置測定器1の外部で行う構成である。例えば、位置測定器1に接続されたコンピュータ200によるプログラム処理によって、「補正値取得モード」での処理を実行する。すなわち、変形例に係る位置測定器1において、「補正値取得モード」での処理は、コンピュータ200で実行可能なプログラムによって実現されている。
【0056】
図6に表した例では、位置測定器1はコンピュータ200とケーブル300を介して接続されている。なお、位置測定器1とコンピュータ200とは、無線通信を介して接続されていても、インターネット等の通信回線を介して接続されていてもよい。また、コンピュータ200は、携帯端末であってもよい。
【0057】
コンピュータ200は、例えば、
図4に表したフローチャートのステップS102〜ステップS105の処理に対応したプログラムを実行する。ここで、位置測定器1の操作部108のモード切り換えのボタンが押下された場合、制御部2はコンピュータ200に「補正値取得モード」に切り替わった旨の信号を送信する。
【0058】
コンピュータ200は、この信号を受けてステップS102〜ステップS105の処理に対応したプログラムの実行準備に入る。コンピュータ200は、位置測定器1の検出部20からケーブル300を介して送られる検出値を受けて、各基準位置に対応した検出ずれ量を取得する処理を行う。制御部2は、最後の基準位置における検出値を出力した後、コンピュータ200にその旨の信号を送る。コンピュータ200は、この信号を受けてステップS104〜ステップS105の処理に対応したプログラムを実行する。このプログラムの実行によって複数の基準位置における検出ずれ量が平滑化処理され、補正値が演算される。コンピュータ200は、演算した補正値を記憶部40に記憶する処理を行う。
【0059】
変形例に係る位置測定器1のように、コンピュータ200で実行されるプログラムによって補正値を演算する構成によれば、検出ずれ量の平滑化処理のアルゴリズムを変更する際、プログラムの書き換えのみで対応することができ、変更が容易になる。
【0060】
このプログラムは、コンピュータ読取可能な記録媒体に記録されたり、ネットワークを介して配信されてもよい。
【0061】
以上説明したように、本実施形態に係る位置測定器の補正方法及び位置測定器によれば、補正値を取得する際のばらつきを抑制して安定した位置補正を行うことができる。
【0062】
なお、上記に本実施形態を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、補正値演算部32による移動平均処理は、単純移動平均、加重移動平均、指数移動平均など、各種の手法が適用可能である。また、平滑化処理は移動平均処理以外であってもよい。例えば、所定係数を用いたフィルタ(ガウシアンフィルタなど)を用いた平滑化処理を行ってもよい。
【0063】
また、上記説明した実施形態では、予め平滑化処理した補正値を記憶部40に記憶しておき、位置測定の際に記憶部40に記憶された補正値を読み出して補正に用いているが、記憶部40にはブロックゲージの検出した際の検出ずれ量を記憶しておき、対象物の位置を検出して補正を行う際、記憶部40に記憶された検出ずれ量を読み出し、平滑化して補正値を求めて補正に用いるようにしてもよい。
【0064】
また、上記実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、上記実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含有される。