(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
メイントラックが設けられたスケールと該スケールに対して相対変位して該メイントラックを読み取るメイン検出部を備える検出ヘッドとを有するセパレート式エンコーダにおいて、
前記スケールには前記メイントラックに並列する角度検出トラックが更に設けられ、
前記検出ヘッドは該角度検出トラックを読み取る補助検出部を備え、
前記メイン検出部と前記補助検出部との間隔と、該メイン検出部で検出された前記メイントラックの位置と該補助検出部で検出された前記角度検出トラックの位置との差分量と、から前記スケールに対する前記検出ヘッドのヨー角度を求める第1演算手段と、
前記メイン検出部からの出力信号から信号強度を求める第2演算手段と、
前記信号強度が最大となる最適ヨー角度に対して、今回得られた前記ヨー角度における信号強度と前回得られた該ヨー角度における信号強度との比較を行うことで現在の前記ヨー角度を認識し、該現在の該ヨー角度から前記最適ヨー角度へ導く誘導信号としての回転方向を演算する第3演算手段と、
該回転方向を出力する出力手段と、
を備えることを特徴とするセパレート式エンコーダ。
複数の前記ヨー角度と該ヨー角度それぞれに対応する前記信号強度との関係を表示する表示手段を更に備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のセパレート式エンコーダ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の背景技術で示される方法では組み付けにオシロスコープを準備する必要がある。そして、オシロスコープに表示される信号強度のみを頼りに組み付けの最適状態を探す、即ちオシロスコープに表示される信号強度を目で追いながらヨー角度を無作為に動かし最適なヨー角度(最適ヨー角度)を探すこととなり、ヨー角度を効率的に調整することが困難であった。同時に、そのような手法で調整されたヨー角度と実際の最適ヨー角度との誤差も大きく、精度の高いヨー角度の調整も困難であった。
【0005】
本発明は、前記の問題点を解決するべくなされたもので、スケールに対する検出ヘッドのヨー角度の効率的かつ精度の高い調整が可能なセパレート式エンコーダを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の請求項1に係る発明は、メイントラックが設けられたスケールと該スケールに対して相対変位して該メイントラックを読み取るメイン検出部を備える検出ヘッドとを有するセパレート式エンコーダにおいて、前記スケールには前記メイントラックに並列する角度検出トラックが更に設けられ、前記検出ヘッドが該角度検出トラックを読み取る補助検出部を備え、前記メイン検出部と前記補助検出部との間隔と、該メイン検出部で検出された前記メイントラックの位置と該補助検出部で検出された前記角度検出トラックの位置との差分量と、から前記スケールに対する前記検出ヘッドのヨー角度を求める第1演算手段と、前記メイン検出部からの出力信号から信号強度を求める第2演算手段と、前記信号強度が最大となる最適ヨー角度に対して、
今回得られた前記ヨー角度における信号強度と前回得られた該ヨー角度における信号強度との比較を行うことで現在の前記ヨー角度を認識し、
該現在の該ヨー角度から前記最適ヨー角度へ導く誘導信号としての回転方向を演算する第3演算手段と、該回転方向を出力する出力手段と、を備えたことにより、前記課題を解決したものである。
【0008】
本願の請求項
2に係る発明は、複数の前記ヨー角度に対応する前記信号強度の変化から前記最適ヨー角度を演算する第4演算手段を備えるようにしたものである。
【0009】
本願の請求項
3に係る発明は、前記信号強度の変化を関数の当てはめにより求めるようにしたものである。
【0010】
本願の請求項
4に係る発明は、前記関数を多次元関数としたものである。
【0011】
本願の請求項
5に係る発明は、前記関数を三角関数としたものである。
【0012】
本願の請求項
6に係る発明は、請求項
1乃至
5のいずれかに記載の発明において、複数の前記ヨー角度と該ヨー角度それぞれに対応する前記信号強度との関係を表示する表示手段を更に備えるようにしたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、スケールに対する検出ヘッドのヨー角度の効率的かつ精度の高い調整が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0016】
本発明に係る第1実施形態について、
図1から
図4を用いて説明する。
【0017】
最初に、本実施形態のセパレート式エンコーダ100の構成を説明する。
【0018】
エンコーダ100は、
図1に示す如く、スケール102と、検出ヘッド110と、演算部(第1、第2演算手段)120と、表示部(表示手段)124とを備える。スケール102と検出ヘッド110とは、分離された状態となっており、互いに所定の位置関係を保つように対象となる機械装置に組み付けられ、スケール102と検出ヘッド110とが密着する程度まで接近して配置される。なお、演算部120は、検出ヘッド110の内部に収納された形態としてもよい。
【0019】
前記スケール102は、例えば
図1に示すような反射型のスケールであり、スケール102には測定軸方向に、メイントラックとしてのINCトラック104とINCトラック104に並列する角度検出トラックとしてのABSトラック106とが設けられている。INCトラック104は、スケール102の全体に亘り、測定軸方向に沿って明暗パターンが周期的に形成されている。ABSトラック106は、スケール102の全体に亘り、測定軸方向に沿って明暗パターンが不規則に形成されている(メイントラックと角度検出トラックとが同じINCトラックでもよいし、ABSトラックでもよい)。INCトラック104とABSトラック106との間隔dは、後述するメイン検出部としてのINC検出部112と補助検出部としてのABS検出部114との間隔と同一とされている。
【0020】
前記検出ヘッド110は、
図1に示す如く、スケール102に対して測定軸方向で相対変位可能とされている。また、検出ヘッド110は、INCトラック104を読み取るINC検出部112とABSトラック106を読み取るABS検出部114とを一体的に備えている。INC検出部112とABS検出部114との間隔は、上述の如く、INCトラック104とABSトラック106との間隔dと同一とされている。
【0021】
前記演算部120は、
図1に示す如く、INC検出部112及びABS検出部114からの出力に対して各種の演算を行うことができる。具体的には、演算部120は、INC検出部112及びABS検出部114で検出されたINCトラック104の位置Xinc及びABSトラック106の位置Xabsを求めることができる。そして、演算部120は、第1演算手段として、式(1)に示す如く、INC検出部112とABS検出部114との間隔dと、INCトラック104の位置XincとABSトラック106の位置Xabsとの差分量δ(=Xinc−Xabs)と、からスケール102(の測定軸方向)に対する検出ヘッド110の傾きであるヨー角度φを求めることができる。なお、式(1)では、φ≪1のときに精度よくヨー角度φを求めることができる。
【0023】
また、演算部120は、第2演算手段として、式(2)に示す如く、INC検出部112からの出力信号としての2相正弦波信号Am、Bmから信号強度Iを求めることができる。なお、2相正弦波信号Am、Bmと信号強度Iとの関係は、
図2に示されるリサージュ波形の如く示すことができる。なお、出力信号は2相正弦波信号Am、Bmだけに限定されるものではない。
【0024】
I=(Am
2+Bm
2)
1/2 (2)
【0025】
演算部120は、ヨー角度φとヨー角度φに対応する信号強度Iとの関係、即ち信号強度Iのヨー角度依存性を表示部124に出力することができる。
【0026】
前記表示部124は、
図1に示す如く、演算部120の出力を画像として表示することができる。具体的には、表示部124は、
図3(A)、(B)に示す如く、例えば横軸をヨー角度φ、縦軸を信号強度Iとする座標上に、演算部120から出力された結果を点として順次表示する。即ち、表示部124は、演算部120から出力された複数のヨー角度φとヨー角度φそれぞれに対応する信号強度Iとの関係を表示することができる(
図3(A)、(B)で、黒丸(黒点)が現在の信号強度Iを示し、白抜き丸(白点)がそれまでの過去の信号強度Iを示す。実線矢印が検出ヘッド110の回転方向を示す。以降の図面で同様とする)。なお、信号強度Iが最大となる最大信号強度Imaxを示すヨー角度φを最適ヨー角度φoptとしており、最適ヨー角度φoptでスケール102に対して検出ヘッド110が実質上傾いていない状態となる。
【0027】
次に、本実施形態のセパレート式エンコーダ100のヨー角度調整の手順の一例を、
図4を用いて以下に説明する。
【0028】
まず、スケール102に対して検出ヘッド110を明確に傾いた状態で配置することで、初期のヨー角度φの決定を行う(ステップS2)。そして、検出ヘッド110のINC検出部112及びABS検出部114の出力に基づいて、演算部120はINCトラック104の位置XincとABSトラック106の位置Xabsとの差分量δの演算を行う(ステップS4)。
【0029】
次に、演算部120は、INC検出部112とABS検出部114との間隔dと、差分量δと、からスケール102の測定軸方向に対する検出ヘッド110のヨー角度φの演算を行う(ステップS6)。そして、演算部120は、INC検出部112から出力される2相正弦波信号Am、Bmから信号強度Iの演算を行う(ステップS8)。そして、演算部120は、ヨー角度φとヨー角度φに対応する信号強度Iとの関係を表示部124に出力する。
【0030】
次に、表示部124はヨー角度φに対応する信号強度Iを点として表示する(ステップS10)。そして、今回得られたヨー角度φにおける信号強度Iと前回得られたヨー角度φpにおける信号強度Ipとの比較を行う。今回得られた信号強度Iが前回得られた信号強度Ipよりも大きければ、最適ヨー角度φoptを通過していない(ステップS12でNo)と判断して、ヨー角度φを変化させる(ステップS14)(なお、今回初めて信号強度Iが得られた場合には、前回の信号強度Ipがゼロとなるため、ステップS14に進む)。ここで、変化させる方向は、前回のヨー角度φpから今回のヨー角度φへ変化させた際の方向と同一となる。実質的には、ヨー角度φの変化させる方向は当初の検出ヘッド110の傾きが見かけ上小さくなる方向となる。そして、ステップS4からステップS12を再び繰り返す。即ち、
図3(A)に示す如く、演算部120によってヨー角度φの変化に伴う前回までの信号強度Iが表示部124に点として表示される。ヨー角度φが上記の方向に角度変化を繰り返すことで、信号強度Iが最大信号強度Imaxとなり、そして信号強度Iが最大信号強度Imaxよりも小さい状態となる。即ち、今回得られた信号強度Iが前回得られた信号強度Ipよりも小さくなり、ヨー角度φが最適ヨー角度φoptを通過した(ステップS12でYes)と判断する(
図3(A)の状態)。
【0031】
次に、表示部124で、
図3(A)の座標上の複数点の表示状態を確認して、検出ヘッド110のヨー角度φを逆方向に変化させ、
図3(B)に示すようにヨー角度φを最適ヨー角度φoptに調整する(ステップS16)。なお、これら一連の手順では、ヨー角度φがINCトラック104の位置XincとABSトラック106の位置Xabsとの差分を用いて演算される。このため、検出ヘッド110のヨー角度φを変化させている途中に、仮に検出ヘッド110が測定軸方向に移動しても、ヨー角度φへの影響が回避されている。なお、本実施形態では、ステップS12、S14、S16は作業者が行うようにされている。
【0032】
このように、本実施形態においては、信号強度Iのヨー角度依存性を表示部124に表示するので、作業者はヨー角度φの調整を無駄なく的確に行うことが可能となり、ヨー角度φの調整に要する時間の短縮が可能となる。
【0033】
即ち、本実施形態においては、スケール102に対する検出ヘッド110のヨー角度φの効率的かつ精度の高い調整が可能となる。
【0034】
本発明について第1実施形態を挙げて説明したが、本発明は第1実施形態に限定されるものではない。即ち本発明の要旨を逸脱しない範囲においての改良並びに設計の変更が可能なことは言うまでもない。
【0035】
例えば、第1実施形態においては、表示部124に複数のヨー角度φとヨー角度φそれぞれに対応する信号強度Iとの関係を表示するだけであったが、本発明はこれに限定されない。例えば
図5に示す第2実施形態の如くであってもよい。
【0036】
第2実施形態でも、演算部が第1実施形態と同様に第1、第2演算手段として機能する。即ち、演算部は、最適ヨー角度φoptを含む範囲でヨー角度φが実際に変化した際に信号強度Iを順次演算して、その結果を順次表示部224に表示させる。その際に、演算部は、第4演算手段として、その順次演算して得られた結果である複数のヨー角度φに対応する信号強度Iの変化から最適ヨー角度φoptを求めるようにしている。そして、演算部は、第3演算手段として、最適ヨー角度φoptに対して、現在のヨー角度φを認識し、ヨー角度φから最適ヨー角度φoptへ導く誘導信号としての回転方向を演算することができる。そして、その演算結果に基づいて、出力手段としての表示部224がその回転方向(
図5(A)、(B)では白抜き矢印)を表示(出力)することができる。なお、上記以外の構成要素については、第1実施形態と同様なので、それらの部分については説明を省略する。
【0037】
従って、第2実施形態においては、最適ヨー角度φoptを含む範囲でヨー角度φが実際に変化した際に信号強度Iを順次演算することで、最適ヨー角度φoptを求めている。その結果として、最適ヨー角度φoptを定量的に表示でき、最適ヨー角度φoptへの検出ヘッド210の回転方向を表示部224に(
図5(A)、(B)では白抜き矢印で)表示することが可能である。このため、オシロスコープなどを使わすにヨー角度φの調整が可能となり、ヨー角度φの自動調整も可能となる。なお、本実施形態では、最適ヨー角度φoptへの検出ヘッド210の回転方向を表示部224に表示していたが、これに誘導信号として音声を付加してよいしその際には表示部に回転方向の表示がなくてもよい。あるいは表示部に回転角度そのものを表示するようにしてもよい。そもそも、出力手段として表示部(表示手段)がない状態で音声だけを出力して案内するようしてもよい。
【0038】
あるいは、
図6に示す第3実施形態の如くであってもよい。
【0039】
第3実施形態では、第2実施形態とは異なり、最適ヨー角度φoptを含む範囲でヨー角度φを実際に変化させる必要はなく、複数回のヨー角度φの実際の変化を用いることで信号強度Iの変化を関数の当てはめにより求めるようにしている。そして、演算部は、第4演算手段として、複数のヨー角度φに対応する(関数の当てはめによって求められた)信号強度Iの変化から最適ヨー角度φoptを求めることができる。即ち、
図6に示す如く、実際に演算された信号強度Iが複数あると、その複数点を通過する関数を例えば最小二乗法など(別の解法で関数を当てはめてもよい)を用いて破線で示す信号強度I(φ)を求めることができる。ここで、当てはめられる関数としては、例えば多次元関数や三角関数などがあげられる(他の関数であってもよい)。多次元関数の代表として2次関数の場合には、3点以上の座標を用いて、式(3)で示される係数a1、b1を最小二乗法で求める(なお、c1も係数)。そして、その結果を式(4)に代入すると、式(5)の如く最適ヨー角度φoptを求めることができる。なお、式(5)で符号IφはI(φ)を示す。また、符号Σの積算数は複数点の数となる。
【0040】
I(φ)=a1×φ
2+b1×φ+c1 (3)
φopt=−b1/(2×a1) (4)
【数1】
【0041】
また、三角関数の場合には、やはり3点以上の座標を用いて、式(6)で示される係数kを最小二乗法で求める(なお、a2、b2も係数)。すると、式(7)の如く最適ヨー角度φoptを求めることができる。なお、この場合には、多次元関数の場合に比べて最適ヨー角度φoptを求めるのに演算量を少なくでき、より高速に最適ヨー角度φoptを求めることができる。なお、式(7)で符号IはI(φ)を示す。また、符号Σの積算数は複数点の数となる。
【0042】
I(φ)=a2×cos(k×φ+φopt)+b2 (6)
【数2】
【0043】
なお、上記以外の構成要素については、第2実施形態と同様なので、それらの部分については説明を省略する。
【0044】
従って、第3実施形態においては、最適ヨー角度φoptを含む範囲でヨー角度φを実際に変化させる必要はなく、複数回のヨー角度φの実際の変化を用いることで信号強度Iの変化を関数の当てはめにより求めるようにしている。このため、上記実施形態に比べて、より迅速な回転方向(
図6の白抜き矢印)の案内が可能となり、ヨー角度φの調整の高速化が見込める。その際に、実際に演算された信号強度Iが多数点となるほど、信号強度Iを示す関数上の最適ヨー角度φoptを高精度に求めることができる。なお、本実施形態でも、最適ヨー角度φoptまでの検出ヘッド310の回転方向を表示部324に表示していたが、これに誘導信号として音声を付加してよいしその際には表示部に回転方向の表示がなくてもよい。あるいは表示部に回転角度そのものを表示するようにしてもよい。そもそも、出力手段として表示部(表示手段)がない状態で音声だけを出力して案内するようにしてもよい。
【0045】
なお、上記実施形態においては、演算部が第1〜第4演算手段として機能していたが、第1〜第4演算手段が演算部としてまとまることなく分離された状態で機能してもよい。
【0046】
また、上記実施形態においては、
図1で示す如く、セパレート式エンコーダ100は反射型の光電式リニアエンコーダとしていたが、本発明はこれに限定されない。例えば透過型の光電式リニアエンコーダであってもよい。或いは、測定軸が直線であるリニアエンコーダではなく、測定軸が円形となるロータリーエンコーダであってもよい。或いは光電式エンコーダではなく、周期的に形成された電極パターンを備える磁気式エンコーダや静電容量式エンコーダ、周期的に形成されたコイルパターンを備える電磁誘導式エンコーダ等、他の検出方式のエンコーダであってもよい。