(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6285670
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両用制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
B60W 10/08 20060101AFI20180215BHJP
B60W 20/00 20160101ALI20180215BHJP
B60K 6/485 20071001ALI20180215BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
B60W10/08 900
B60W20/00
B60K6/485ZHV
B60L15/20 J
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-184645(P2013-184645)
(22)【出願日】2013年9月6日
(65)【公開番号】特開2015-51676(P2015-51676A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2016年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】石川 雅美
(72)【発明者】
【氏名】村山 芳也
(72)【発明者】
【氏名】山根 太志
(72)【発明者】
【氏名】村岡 充敏
(72)【発明者】
【氏名】吉田 太郎
(72)【発明者】
【氏名】古澤 賢治
【審査官】
神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−354305(JP,A)
【文献】
特開2012−222856(JP,A)
【文献】
特開2007−302121(JP,A)
【文献】
特開2000−324615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00〜20/50
B60K 6/20〜 6/547
B60L 15/00〜15/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、モータジェネレータと、当該モータジェネレータを駆動するためのインバータと、当該インバータを介して前記モータジェネレータとの間で電力の充放電を行う蓄電装置とを有するハイブリッド車両において、前記エンジン及び前記モータジェネレータの駆動力を用いて走行制御を行うハイブリッド走行モードと、前記エンジンの駆動力のみを用いて走行制御を行うエンジン走行モードとを切り替えるハイブリッド車両用制御装置であって、
前記モータジェネレータが出力すべきトルクを示すトルク指令値、前記モータジェネレータの回転数及び、前記インバータに入力されるインバータ入力DC電圧値に基づいて、前記インバータに入力するトルク電流指令値及び弱め界磁電流指令値を演算する電流指令値演算部と、
前記モータジェネレータの回転数及び前記インバータ入力DC電圧値に基づいて、前記トルク電流指令値及び前記弱め界磁電流指令値に加算するトルク電流補正値及び弱め界磁電流補正値を演算する電流指令値補正部と、
前記モータジェネレータの回転数毎に予め測定された、前記モータジェネレータ以外のモータ駆動系がエンジンに与える負荷をゼロとするトルク電流補正値及び弱め界磁電流補正値を示す電流補正値データを格納する電流補正値データ格納部と、
を備え、
前記エンジン走行モードにおいて、前記蓄電装置の蓄電量が所定値以上の場合に、
前記電流指令値演算部が、前記モータジェネレータが前記エンジンに与える負荷をゼロとするトルク電流指令値及び弱め界磁電流指令値を演算し、
前記電流指令値補正部が、前記モータジェネレータの回転数に基づいて、前記電流補正値データ格納部に格納された電流補正値データを用いて、前記モータジェネレータ以外のモータ駆動系が前記エンジンに与える負荷をゼロとするトルク電流補正値及び弱め界磁電流補正値を演算するハイブリッド車両用制御装置。
【請求項2】
前記電流指令値補正部が、前記蓄電装置の蓄電量が満充電状態の場合に、前記トルク電流補正値及び前記弱め界磁電流補正値を演算するものである請求項1記載のハイブリッド車両用制御装置。
【請求項3】
エンジンと、モータジェネレータと、当該モータジェネレータを駆動するためのインバータと、当該インバータを介して前記モータジェネレータとの間で電力の充放電を行う蓄電装置とを有するハイブリッド車両において、前記エンジン及び前記モータジェネレータの駆動力を用いて走行制御を行うハイブリッド走行モードと、前記エンジンの駆動力のみを用いて走行制御を行うエンジン走行モードとを切り替えるハイブリッド車両用制御プログラムであって、
前記モータジェネレータが出力すべきトルクを示すトルク指令値、前記モータジェネレータの回転数及び、前記インバータに入力されるインバータ入力DC電圧値に基づいて、前記インバータに入力するトルク電流指令値及び弱め界磁電流指令値を演算する電流指令値演算部と、
前記モータジェネレータの回転数及び前記インバータ入力DC電圧値に基づいて、前記トルク電流指令値及び前記弱め界磁電流指令値に加算するトルク電流補正値及び弱め界磁電流補正値を演算する電流指令値補正部と、
前記モータジェネレータの回転数毎に予め測定された、前記モータジェネレータ以外のモータ駆動系がエンジンに与える負荷をゼロとするトルク電流補正値及び弱め界磁電流補正値を示す電流補正値データを格納する電流補正値データ格納部と、
としての機能をコンピュータに備えさせ、
前記エンジン走行モードにおいて、前記蓄電装置の蓄電量が所定値以上の場合に、
前記電流指令値演算部が、前記モータジェネレータが前記エンジンに与える負荷をゼロとするトルク電流指令値及び弱め界磁電流指令値を演算し、
前記電流指令値補正部が、前記モータジェネレータの回転数に基づいて、前記電流補正値データ格納部に格納された電流補正値データを用いて、前記モータジェネレータ以外のモータ駆動系が前記エンジンに与える負荷をゼロとするトルク電流補正値及び弱め界磁電流補正値を演算することを特徴とするハイブリッド車両用制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両に用いられるハイブリッド車両用制御装置及び制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両は、エンジンと、モータジェネレータと、当該モータジェネレータを駆動するためのインバータと、当該インバータを介して前記モータジェネレータとの間で電力の充放電を行う蓄電装置とを有している。
【0003】
ここで、ハイブリッド自動車の方式の一つに、エンジンと、モータ駆動系とが機械的に直結されているものがある。ここで、モータ駆動系とは、前記モータジェネレータと、当該モータジェネレータの駆動力をエンジンの駆動軸に伝達するベルト及びプーリとにより構成されるものである。このようなエンジン及びモータ駆動系直結方式のハイブリッド自動車では、エンジンの駆動力のみを用いるエンジン走行モードにおいて、前記モータジェネレータで生じる鉄損等の損失、つまりエンジン出力に対する減速方向の引きずりトルクが発生する。
【0004】
このような問題を解決するために、モータジェネレータ単体の引きずりトルクを打ち消すためのトルクをモータジェネレータに発生させ、前記モータジェネレータの引きずりトルクがエンジン出力を阻害しないようにゼロトルク制御するものがある(特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、前記モータ駆動系を構成するベルトやプーリ等の機械要素でも回転抵抗、つまりエンジン出力に対する減速方向の機械出力(負荷)が発生している。したがって、特許文献1に記載されているようなモータジェネレータ単体の引きずりトルクを打ち消すためのゼロトルク制御をしたとしても、前記モータ駆動系全体としては、エンジン出力に対する減速方向の出力が発生しており、エンジンに負荷を与えているという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−49359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、ハイブリッド自動車におけるエンジンの駆動力のみを用いるエンジン走行モードにおいて、モータジェネレータ及び当該モータジェネレータとエンジンとを直結するための機械要素からなるモータ駆動系の引きずりトルクをゼロにし、エンジンに負荷を与えないことを主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係るハイブリッド車両用制御装置は、エンジンと、モータジェネレータと、当該モータジェネレータを駆動するためのインバータと、当該インバータを介して前記モータジェネレータとの間で電力の充放電を行う蓄電装置とを有するハイブリッド車両において、前記エンジン及び前記モータジェネレータの駆動力を用いて走行制御を行うハイブリッド走行モードと、前記エンジンの駆動力のみを用いて走行制御を行うエンジン走行モードとを切り替えるハイブリッド車両用制御装置であって、前記モータジェネレータが出力すべきトルクを示すトルク指令値、前記モータジェネレータの回転数及び、前記インバータに入力されるインバータ入力DC電圧値に基づいて、前記インバータに入力するトルク電流指令値及び弱め界磁電流指令値を演算する電流指令値演算部と、前記モータジェネレータの回転数及び前記インバータ入力DC電圧値に基づいて、前記トルク電流指令値及び前記弱め界磁電流指令値に加算するトルク電流補正値及び弱め界磁電流補正値を演算する電流指令値補正部とを備え、前記エンジン走行モードにおいて、前記蓄電装置の蓄電量が所定値以上の場合に、前記電流指令値演算部が、前記モータジェネレータが前記エンジンに与える負荷をゼロとするトルク電流指令値及び弱め界磁電流指令値を演算し、前記電流指令値補正部が、前記モータジェネレータ以外のモータ駆動系が前記エンジンに与える負荷をゼロとするトルク電流補正値及び弱め界磁電流補正値を演算することを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、前記モータジェネレータの回転数とインバータ入力DC電圧値とに基づいて、前記電流指令値演算部が、前記モータジェネレータが前記エンジンに与える負荷をゼロとするトルク電流指令値及び弱め界磁電流指令値を演算し、前記電流指令値補正部が、前記モータジェネレータ以外のモータ駆動系が前記エンジンに与える負荷をゼロとするトルク電流補正値及び弱め界磁電流補正値を演算するので、前記モータジェネレータ及び前記モータ駆動系の引きずりトルクを打ち消し、エンジンに負荷を与えないことが可能になる。また、前記トルク電流指令値及び前記弱め界磁電流指令値にそれぞれ前記トルク電流補正値及び前記弱め界磁電流補正値を加算するので、最適な電流値で前記モータジェネレータを駆動させることができ、前記モータジェネレータの効率の低下を最小限に抑えることができる。
【0010】
前記モータジェネレータの回転数毎に予め測定された、前記モータジェネレータ以外のモータ駆動系がエンジンに与える負荷をゼロとするトルク電流補正値及び弱め界磁電流補正値を示す電流補正値データを格納する電流補正値データ格納部をさらに備え、前記電流指令値補正部が、前記モータジェネレータの回転数とインバータ入力DC電圧とに基づいて、前記電流補正値データ格納部に格納された電流補正値データを用いて、前記トルク電流補正値及び前記弱め界磁電流補正値を演算するものであることが望ましい。
これならば、前記モータジェネレータの回転数毎に予め測定された電流補正値データを用いて前記トルク電流補正値及び前記弱め界磁電流補正値を演算するので、前記モータ駆動系がエンジンに与える負荷を精度よくゼロにすることができるとともに、制御内容を簡略化することができる。
また、前記モータジェネレータの回転数毎に予め測定された、前記モータジェネレータが前記エンジンに与える負荷をゼロとするためにトルク電流指令値及び弱め界磁電流指令値に加算する補正値を示す指令値演算用補正データを格納する指令値演算用補正データ格納部をさらに備え、前記電流指令値演算部が、トルク指令値、前記モータジェネレータの回転数及び、前記インバータに入力されるインバータ入力DC電圧値に基づいて、前記指令値演算用補正データ格納部に格納された指令値演算用補正データを用いて、前記トルク電流指令値及び前記弱め界磁電流指令値を演算するものであることが望ましい。
これならば、前記モータジェネレータの回転数毎に予め測定された指令値演算用補正データを用いて前記トルク電流指令値及び前記弱め界磁電流指令値を演算するので、前記モータジェネレータがエンジンに与える負荷を精度よくゼロにすることができるとともに、制御内容を簡略化することができる。
【0011】
前記電流指令値補正部が、前記蓄電装置の蓄電量が満充電状態の場合に、前記トルク電流補正値及び前記弱め界磁電流補正値を演算するものであることが望ましい。
これならば、前記蓄電装置を過不足なく充電することができるとともに、前記蓄電装置の過充電を防止し、前記蓄電装置の劣化を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0012】
このように構成した本発明によれば、ハイブリッド自動車におけるエンジンの駆動力のみを用いるエンジン走行モードにおいて、モータジェネレータ及び当該モータジェネレータとエンジンとを直結するための機械要素からなるモータ駆動系の引きずりトルクをゼロにし、エンジンに負荷を与えないことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態におけるハイブリッド車両の構成を示す概略図。
【
図2】本実施形態におけるハイブリッド車両用制御装置の回路構成を示す図。
【
図3】本実施形態におけるモータジェネレータ回転数とトルク電流補正値及び弱め界磁電流補正値との関係(一例)を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明に係るハイブリッド車両用制御装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
本実施形態に係るハイブリッド車両用制御装置100は、
図1に示すように、エンジン1と、モータジェネレータ20を含むモータ駆動系2と、モータジェネレータ20を駆動するためのインバータ3と、インバータ3を介してモータジェネレータ20との間で電力の充放電を行う蓄電装置4と、車両の各補機7及び直流補助電源8に給電する補機類電力系統S1と、モータジェネレータ20を力行運転又は回生運転するモータ電力系統S2とを有するハイブリッド車両に適用されるものである。
【0016】
補機類電力系統S1は、直流主電源となる蓄電装置4(例えば48Vのリチウムイオンバッテリ)と、当該蓄電装置4の出力端子に接続された電路の開閉を行うスイッチ5(DCコンタクタ)と、当該スイッチ5の下流に設けられた平滑コンデンサ6(直流リンクコンデンサ)と、当該平滑コンデンサ6とを介して接続され、車両の各補機(例えば電動パワーステアリング、エアコンディショナ、ECU等)7及び直流補助電源(例えば12V/24Vバッテリ)8に給電する系統である。また、補機類電力系統S1は、DC/DCコンバータ9を有するものであり、当該DC/DCコンバータ9の出力段には、車両の各補機7と直流補助電源8とが並列に接続されている。
【0017】
モータ電力系統S2は、平滑コンデンサ6を介して補機類電力系統S1と並列に接続され、蓄電装置4からの直流電圧の電圧変換を行う昇圧回路10と、当該昇圧回路10から出力される直流電圧を交流電圧に変換してモータジェネレータ20に出力するインバータ3とを備える。
【0018】
ここで、本実施形態に係るハイブリッド車両は、エンジン1及びモータジェネレータ20の動力を並列で車輪の駆動に使用するパラレル方式を採用したものである。具体的には、
図1に示すように、エンジン1の駆動軸11と、モータジェネレータ20を含み、ベルト21やプーリ22等により構成されるモータ駆動系2とが直結されるとともに、クラッチ等を設けられておらず、切り離しできない構造、つまり、エンジン1と、モータジェネレータ20とが常に機械的に接続されているものである。
【0019】
そして、このハイブリッド車両を制御するハイブリッド車両用制御装置100は、エンジン1の駆動力のみを用いて走行制御を行うエンジン走行モードM1と、エンジン1の駆動力に加えてモータジェネレータ20の駆動力を補助的に用いて走行制御を行うハイブリッド走行モードM2とを切り替えるものである。
【0020】
具体的にハイブリッド車両用制御装置100は、
図2に示すように、インバータ3に入力するトルク電流指令値Cq及び弱め界磁電流指令値Cdを演算する電流指令値演算部101と、蓄電装置4の蓄電量が所定値以上の場合に、トルク電流指令値Cq及び弱め界磁電流指令値に加算するトルク電流補正値Rq及び弱め界磁電流補正値Rdを演算する電流指令値補正部102と、トルク電流補正値Rq及び弱め界磁電流補正値Rdを、トルク電流指令値Cq及び弱め界磁電流指令値Cdに加算する加算器103とを備える。
【0021】
電流指令値演算部101は、モータジェネレータ20が出力すべきトルクを示し、ECU(エンジンコントロールユニット)から入力されるトルク指令値と、モータジェネレータ20の回転数、及びインバータ3に入力される直流電圧値であるインバータ入力DC電圧値とに基づいて、トルク電流指令値Cq及び弱め界磁電流指令値Cdを演算する。
【0022】
具体的には、電流指令値演算部101は、ハイブリッド車両が、エンジン走行モードM1又はハイブリッド走行モードM2のうち選択されている走行モードに応じて、モータジェネレータ20に所定のトルクを発生させるようにトルク電流指令値Cq及び弱め界磁電流指令値Cdを演算する。
【0023】
さらに具体的に説明すると、ハイブリッド車両がエンジン走行モードM1で走行しているときは、電流指令値演算部101は、蓄電装置4の蓄電量が所定値以下の場合にはモータジェネレータ20が回生運転するようにトルク電流指令値Cq及び弱め界磁電流指令値Cdを演算する。また、蓄電装置4の蓄電量が所定値以上の場合、例えば蓄電装置4の蓄電量が満充電状態の場合に、には、モータジェネレータ20単体の引きずりトルク、つまりモータジェネレータ20単体でエンジン1に与える負荷がゼロになるようなトルク電流指令値Cq及び弱め界磁電流指令値Cdを演算する。さらに、ハイブリッド車両がハイブリッド走行モードM2で走行しているときは、電流指令値演算部101は、モータジェネレータ20がエンジン1を補助(力行運転)するように所定のトルクを発生させるためのトルク電流指令値Cq及び弱め界磁電流指令値Cdを演算する。
【0024】
ここで、電流指令値演算部101は、エンジン走行モードM1で走行しているときであって、蓄電装置4の蓄電量が所定値以上の場合、例えば蓄電装置4の蓄電量が満充電状態の場合に、指令値演算用補正データを用いて、トルク電流指令値Cq及び弱め界磁電流指令値Cdを演算する。具体的にこの指令値演算用補正データは、モータジェネレータ20により生じる引きずりトルク、つまりモータジェネレータ20がエンジン1に与える負荷をゼロにするようにトルク電流指令値Cq及び弱め界磁電流指令値Cdに加算する指令値を示すデータである。
【0025】
電流指令値補正部102は、エンジン走行モードM1で走行しているときであって、蓄電装置4の蓄電量が所定値以上の場合、例えば蓄電装置4の蓄電量が満充電状態の場合に、トルク電流補正値Rq及び弱め界磁電流補正値Rdを示す電流補正値データを用いて、トルク電流指令値Cq及び弱め界磁電流指令値Cdに加算するトルク電流補正値Rq及び弱め界磁電流補正値Rdを演算する。そして、
図2に示すように、電流指令値補正部102が演算したトルク電流補正値Rq及び弱め界磁電流補正値Rdを加算器103に入力し、加算器103がトルク電流指令値Cq及び弱め界磁電流指令値Cdにトルク電流補正値Rq及び弱め界磁電流補正値Rdを加算する。
【0026】
ここで、電流補正値データは、モータジェネレータ20以外のモータ駆動系2により生じる引きずりトルク、つまりモータ駆動系2がエンジン1に与える負荷をゼロにするようなトルク電流補正値Rq及び弱め界磁電流補正値Rdを示すデータである。具体的には、モータ駆動系2を構成するモータジェネレータ20以外の機械要素、例えばベルト21やプーリ22等の機械要素で生じる機械的損失(負荷)をゼロにするようにトルク電流補正値Rq及び弱め界磁電流補正値Rdが設定されている。
【0027】
このトルク電流補正値Rq及び弱め界磁電流補正値Rdは、モータジェネレータ20以外のモータ駆動系2がエンジン1に与える負荷が各ハイブリッド車両によって異なることから、各ハイブリッド車両により個別に設定されるものである。
【0028】
トルク電流補正値Rq及び弱め界磁電流補正値Rdの設定方法の一例としては、
図3に示すように、エンジン1及びモータジェネレータ20を含むモータ駆動系2をハイブリッド車両に搭載した状態でモータジェネレータ20以外のモータ駆動系2がエンジン1に与える負荷をモータジェネレータ20の回転数毎に測定し、当該負荷に基づいて設定する方法が考えられる。
【0029】
ここで、測定されたトルク電流補正値Rq及び弱め界磁電流補正値Rdは、モータジェネレータ20の回転数と各補正値との関係を示す表形式のデータとして格納されていても良いし、多項式近似した数式データとして格納されているものでも良い。
【0030】
このように構成したハイブリッド車両用制御装置100によれば、モータジェネレータ20の回転数及びインバータ入力DC電圧値に基づいて、電流指令値演算部101がモータジェネレータ20単体がエンジン1に与える負荷がゼロになるようなトルク電流指令値Cq及び弱め界磁電流指令値Cdを演算し、電流指令値補正部102がモータジェネレータ20以外のモータ駆動系2がエンジン1に与える負荷がゼロになるようなトルク電流補正値Rq及び弱め界磁電流補正値Rdを演算し、トルク電流指令値Cq及び弱め界磁電流指令値Cdとトルク電流補正値Rq及び弱め界磁電流補正値Rdとを加算するので、モータジェネレータ20及びモータ駆動系2の両方の引きずりトルクをゼロにし、エンジン1に負荷を与えないことが可能になる。また、トルク電流指令値Cq及び弱め界磁電流指令値Cdにそれぞれトルク電流補正値Rq及び弱め界磁電流補正値Rdを加算するので、最適な電流値でモータジェネレータ20を駆動させることができ、モータジェネレータ20の効率の低下を最小限に抑えることができる。
【0031】
また、電流指令値演算部101が、予め測定された、モータジェネレータ20がエンジン1に与える負荷をゼロにするようなトルク電流指令値Cq及び弱め界磁電流指令値Cdを示す指令値演算用補正データを用いて、トルク電流指令値Cq及び弱め界磁電流指令値Cdを演算するので、モータジェネレータ20がエンジンに与える負荷を精度よくゼロにすることができるとともに、制御内容を簡略化することができる。
同様に、電流指令値補正部102が、予め設定された、モータ駆動系2がエンジン1に与える負荷をゼロにするようなトルク電流補正値Rq及び弱め界磁電流補正値Rdを示す電流補正値データを用いて、トルク電流補正値Rq及び弱め界磁電流補正値Rdを演算するので、モータ駆動系2がエンジン1に与える負荷を精度よくゼロにすることができるとともに、制御内容を簡略化することができる。
【0032】
さらに、蓄電装置4の蓄電量が満充電状態の場合に、モータジェネレータ20及びモータ駆動系2がエンジン1に与える負荷がゼロになるように、電流指令値演算部101がトルク電流指令値Cq及び弱め界磁電流指令値Cdを演算し、電流指令値補正部102がトルク電流補正値Rq及び弱め界磁電流補正値Rdを演算するので、蓄電装置4を過不足なく充電することができるとともに、蓄電装置4の過充電を防止し、蓄電装置4の劣化を防ぐことができる。
【0033】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
例えば、モータジェネレータ20及びモータ駆動系2がエンジン1に与える負荷がゼロになるように、電流指令値演算部101がトルク電流指令値Cq及び弱め界磁電流指令値Cdを演算し、電流指令値補正部102がトルク電流補正値Rq及び弱め界磁電流補正値Rdを演算するのは、蓄電装置4の蓄電量が満充電状態の場合に限られるものではなく、モータジェネレータ20がエンジン1の駆動力を補助しない場合に広く適用できる。
【0034】
また、ハイブリッド車両用制御装置100が適用されるハイブリッド車両は、エンジン1の駆動軸11と、モータジェネレータ20を含み、ベルト21やプーリ22等により構成されるモータ駆動系2とが直結されるものに限られず、例えばクラッチ等を設けるなど、エンジン1とモータ駆動系2とが機械的に切り離し可能なものでも良い。
【0035】
さらに、モータ電力系統S2は、昇圧回路10を有するものに限られず、昇圧回路10が無い構成でも良い。
【0036】
加えて、指令値演算用補正データは、専用の指令値演算用補正データ格納部(不図示)に格納されていても良いし、電流指令値演算部101に格納されていても良い。
同様に、電流補正値データは、専用の電流補正値データ格納部(不図示)に格納されていても良いし、電流指令値補正部102に格納されていても良い。
【0037】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0038】
100・・・ハイブリッド車両用制御装置
1 ・・・エンジン
11 ・・・駆動軸
2 ・・・モータ駆動系
20 ・・・モータジェネレータ
21 ・・・ベルト
22 ・・・プーリ
3 ・・・インバータ
4 ・・・蓄電装置
5 ・・・スイッチ
6 ・・・平滑コンデンサ
7 ・・・補機
8 ・・・直流補助電源
9 ・・・DC/DCコンバータ
10 ・・・昇圧回路
101・・・電流指令値演算部
102・・・電流指令値補正部