特許第6285678号(P6285678)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6285678
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】空間光変調器
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/09 20060101AFI20180215BHJP
【FI】
   G02F1/09 503
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-202897(P2013-202897)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-68990(P2015-68990A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年8月4日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(72)【発明者】
【氏名】宮本 泰敬
(72)【発明者】
【氏名】奥田 光伸
【審査官】 林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−020114(JP,A)
【文献】 特開2010−258379(JP,A)
【文献】 特開2009−054715(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/122990(WO,A1)
【文献】 特開2012−078580(JP,A)
【文献】 特開2012−141402(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02747086(EP,A1)
【文献】 国際公開第2010/004881(WO,A1)
【文献】 J.Cho, et al.,Design, fabrication ,switching, and optical characteristics of new magneto-optic spatial light modulator,JOUENAL OF APPLIED PHYSICS,1994年 8月 1日,Vol.76, No.3,pp.1910-1919
【文献】 S.J.Noh, et al.,Magnetic domain wall motion by current injection in CoPt nanowires consisting of notches,SOLID STATE COMMUNICATIONS,2012年 3月29日,Vol.152,pp.1004-1007
【文献】 S.J.Noh, et al.,Effects of notch shape on the magnetic domain wall motion in nanowires with in-plane or perpendicular magnetic anisotropy,JOURNAL OF APPLIED PHYSICS,2012年 3月 7日,Vol.111, 07D123,pp.1-3
【文献】 S. Fukami, et al,,Micromagnetic analysis of current driven domain wall motion in nanostrips with perpendicular magnetic anisotoropy,JOURNAL OF APPLIED PHYSICS,2008年 1月31日,Vol.103,07E718,pp.1-3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00−1/125
G02F 1/21−1/39
H01L 43/08
H01L 27/82
Scopus
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性膜を細線状に形成し、長手方向の一部に他の部分とは磁化方向の異なる磁区が形成された磁性細線と、
前記磁性細線の両端側の一方又は他方から選択的に電子の供給を可能とする電流源と、
を備え、
前記磁性細線には、その長手方向の一部に前記磁区の磁壁を保持する保持部が形成され、前記の電子の供給により、前記磁区の一方の磁壁は前記保持部に保持された状態で他方の磁壁は前記磁性細線の長手方向に移動可能として、前記磁区を伸縮させることを特徴とする空間光変調器。
【請求項2】
前記保持部は、前記磁性細線の他の部分より当該磁性細線の長手方向と直交する方向の断面積が小さいことにより前記磁壁の保持を行うことを特徴とする請求項1に記載の空間光変調器。
【請求項3】
前記磁性細線の旋光される光が入射する側で前記磁区の移動範囲外の部分には遮光部材が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の空間光変調器。
【請求項4】
前記各磁性細線によりそれぞれ表示される複数の画素が一方向又は縦横方向に複数個並列して配置されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかの一項に記載の空間光変調器。
【請求項5】
前記各画素にはそれぞれ複数個の前記磁性細線が配置されていることを特徴とする請求項4に記載の空間光変調器。
【請求項6】
前記磁性細線は湾曲していて、当該湾曲形状の凸側が、前記磁性細線の旋光される光が入射する側であることを特徴とする請求項1〜5の何れかの一項に記載の空間光変調器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間光変調器に関する。
【背景技術】
【0002】
空間光変調器は、画素として光学素子(光変調素子)を用い、これをマトリクス状に2次元配列して光の位相や振幅等を空間的に変調する装置であって、ディスプレイ技術や記録技術などの分野で広く利用されている。空間光変調器として、従来から液晶が用いられているが、近年では、高速処理かつ画素の1μm以下の微細化の可能性が期待される磁気光学材料を用いた磁気光学式の空間光変調器の開発が進められている。
【0003】
磁気光学式の空間光変調器(以下、単に「空間光変調器」という)においては、磁性体に入射した光が透過する際にその偏光の向きを変化(旋光)させて出射するファラデー効果を利用している。また、磁性体に入射した光が反射する際にその偏光の向きを変化(旋光)させて出射するカー効果も利用している。磁性体材料としては、磁性体の中でも特に効果の大きい磁気光学材料を使用している。そして、明るく表示しようとする画素(選択画素)における光変調素子の磁化方向と、それ以外の画素(非選択画素)における光変調素子の磁化方向を異なるものにする。これにより、選択画素から出射した光と非選択画素から出射した光で、その偏光の回転角(旋光角)に差を生じさせ、特定の向きの偏光を透過する偏光子を介することで、選択画素のみを明るく表示する。このような光変調素子の磁化方向を変化させる手段として、光変調素子に磁界を印加する磁界印加方式の他に、近年では光変調素子に電流を供給することでスピンを注入するスピン注入方式が知られている。
【0004】
このような空間光変調器に関しては、特許文献1〜3の技術が知られている。特許文献1には、縦横方向にマトリックス状に画素を配置し、各画素について個別に光変調素子の磁化方向を変えるように制御することで、空間光変調器を画像表示装置に用いる点が記載されている。
特許文献2には、空間光変調器の1行における光変調素子を連続した1本の磁性細線で構成し、当該1行におけるすべての画素のデータを当該磁性細線において1画素ずつ順番に書き換えるようにした点が記載されている。
特許文献3には、磁性細線に括れを形成し、磁性細線への電流の供給を停止したときに、磁壁が括れの位置で停止するようにした点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−88667号公報
【特許文献2】特開2012−128396号公報
【特許文献3】特開2012−141402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1〜3の技術で可能としているのは2値の画像表示であり、磁性細線を用いて多値の画像表示(階調表現)を行うことはできなかった。
本発明は、磁性細線を用いて画像の多値の階調表現を可能とする空間光変調器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態は、磁性細線と、電流源と、を備えた空間光変調器である。
本発明によれば、磁性細線は磁性膜を細線状に形成してなり、その長手方向の一部に他の部分とは磁化方向の異なる磁区が形成されている。そして、電流源は磁性細線の両端側の一方又は他方から選択的に電子の供給を可能としている。その上、磁性細線には、その長手方向の一部に磁区の磁壁を保持部が形成されている。前記の電子の供給により、磁区の一方の磁壁は保持部に保持された状態で、他方の磁壁は前記磁性細線の長手方向に移動可能としている。
よって、本発明によれば、電子の供給により、磁区の磁性細線の長手方向の長さを伸縮することができるので、磁性細線を画像表示に用いるときは、磁区の長さを段階的に切り替えることができる。
【0008】
前記の構成において、前記保持部は、前記磁性細線の他の部分より当該磁性細線の長手方向と直交する方向の断面積が小さいことにより前記磁壁の保持を行うようにしてもよい。
かかる構成によれば、磁性細線における保持部の形成が容易となる。
【0009】
前記の構成において、前記磁性細線の旋光される光が入射する側で前記磁区の移動範囲外の部分には遮光部材が形成されているようにしてもよい。
かかる構成によれば、磁性細線の画像の階調表示に関わる部分以外を遮光して、的確な画像表示を行うことができる。
【0010】
前記の構成において、前記各磁性細線によりそれぞれ表示される複数の画素が一方向又は縦横方向に複数個並列して配置されているようにしてもよい。
かかる構成によれば、画素が一方向に並列するときはライン状の画像表示が、縦横方向に並列するときは平面状の画像表示が、それぞれ可能となる。
【0011】
前記の構成において、前記各画素にはそれぞれ複数個の前記磁性細線が配置されていてもよい。
かかる構成によれば、画像の多値の階調表現を更に多段階的に行うことができる。
【0012】
前記の構成において、前記磁性細線は湾曲していて、当該湾曲形状の凸側が、前記磁性細線の旋光される光が入射する側であるようにしてもよい。
かかる構成によれば、磁性細線の画像の階調表示に関わる部分以外の遮光が必要な部分を減らすことができるので、画面上での画像表示に関わらない部分の面積を低減して、画質を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、磁性細線を用いて画像の多値の階調表現を可能とする空間光変調器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態1にかかる単位画素型空間光変調器の回路図である。
図2】本発明の実施形態1にかかる単位画素型空間光変調器で磁性細線に磁区を形成する処理について説明する説明図である。
図3】本発明の実施形態1にかかる単位画素型空間光変調器で磁性細線の磁区を延ばす処理について説明する説明図である。(a)〜(c)は、この順に段階的に磁区が延びている様子を示している。
図4】本発明の実施形態1にかかる単位画素型空間光変調器で磁性細線の磁区を縮める処理について説明する説明図である。(a)〜(c)は、この順に段階的に磁区が縮んでいる様子を示している。
図5】比較例となる単位画素型空間光変調器で磁性細線の磁区を移動する処理について説明する説明図である。(a)〜(c)は、この順に段階的に磁区が移動している様子を示している。
図6】本発明の実施形態1にかかる単位画素型空間光変調器で磁性細線の磁区の伸縮の範囲内で光が入射し旋光して出射する状況を説明する説明図である。
図7】本発明の実施形態2にかかるライン型空間光変調器の概略構成を説明する説明図である。
図8】本発明の実施形態2にかかるライン型空間光変調器を用いた画像表示装置の構成を説明する説明図である。
図9】本発明の実施形態3にかかる平面型空間光変調器の概略構成を説明する説明図である。
図10】本発明の実施形態の変形例1にかかる磁性細線について説明する説明図である。
図11】本発明の実施形態の変形例2にかかる磁性細線について説明する説明図である。
図12】本発明の実施形態の変形例3にかかる磁性細線について説明する説明図である。(a)〜(c)は、この順に段階的に磁区が延びている様子を示している。
図13】本発明の実施形態の変形例3にかかる磁性細線の形成方法について説明する説明図である。(a)〜(d)は、この順に磁性細線の形成方法のステップを段階的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について複数例説明する。
[実施形態1]
まず、本発明の実施形態1の空間光変調器について説明する。図1は、実施形態1にかかる単位画素型空間光変調器10の回路図である。なお、以下に説明する各図面で、x方向、y方向は水平方向に互いに直交する方向である。また、z方向は、x方向およびy方向と直交する方向である。
この単位画素型空間光変調器10は、磁性細線11、電流源13、制御回路14、スイッチング素子15〜18などから構成されている。
【0016】
磁性細線11は、磁性膜を細線状に形成した部材である。一例を挙げれば、磁性細線11は、シリコン基板上にCo,Pd,Taを積層して形成されている。すなわち、例えば、シリコン基板上にTaを積層し、そのTaの上にCoとPdとを交互に21回積層し、さらにその上にTaを積層してなる。磁性細線11のサイズは、一例を挙げれば、幅が100nmオーダー、厚さが10nmオーダーで、長さは様々に実施することができる。磁性細線11は、初期状態で、一方向、この例で図1の下側から上側に向かう方向に磁化されている。図1以下では、磁性細線11の磁化の方向を矢印で示す(適宜、N極、S極を示すN,Sの符号も図示する)。
【0017】
磁性細線11の長さ方向の中央より一方の端部11a寄り(図1で左寄り)の位置には、磁性細線11の上側の面に磁性細線11の幅方向を長さ方向とする溝である保持部21が形成されている。この保持部21の溝は、一例を挙げれば、1〜5nm程度の深さである(図1以下では、この深さを誇張して図示している)。保持部21は、後述のとおり、磁区31(図2)が形成された磁性細線11に電子を供給し、当該磁区31を磁性細線11の軸方向に移動させる際に、当該磁区の一方の磁壁32(図2)を当該保持部21の位置で保持(トラップ)するために形成されている。
【0018】
このように、磁区31の一方の磁壁32を保持させるためには、この例のように保持部21を溝状にするなど、磁性細線11の長手方向と直交する方向の断面を、保持部21の部分だけ他の部分より小さくすることが考えられる。あるいは、磁性細線11の長手方向と直交する方向の断面を保持部21の部分だけ大きくしてもよい。要は、保持部21の磁気的性質を、磁性細線11の保持部21以外の部分と異ならせることにより、磁性細線11に電子を供給しても、磁性細線11に形成された磁区31の一方の磁壁32が保持部21の位置でとどまるようにできれば、保持部21として様々な手段を用いることができる。
【0019】
磁気ヘッド12は、磁性細線11の保持部21の近傍に設けられ、直流電源26からの電力の供給を受けて磁界を発生することで、磁性細線11の長手方向の一部に磁性細線11の他の部分とは磁化方向の異なる領域である磁区31(図2)を形成する。なお、磁気ヘッド12に代えて公知のスピン注入磁化反転素子を設けて、磁区31を形成するようにしてもよい。また、磁性細線11に磁区31を一度形成すれば、強い磁界に晒されるなどの状況が生じない限り、磁区31は消失しない。そこで、単位画素型空間光変調器10の製造工程で、磁気ヘッド12や図示しないスピン注入磁化反転素子などにより、磁性細線11に磁区31を形成するようにして、磁気ヘッド12や図示しないスピン注入磁化反転素子は単位画素型空間光変調器10の備えつけとしなくともよい。
電流源13は、後述のとおり、磁性細線11と接続され、磁性細線11にパルス電流を流すことで電子を供給して、磁区31を伸縮させる機能を有する(詳細は後述)。
【0020】
スイッチング素子15〜18は、半導体スイッチなどで構成される。スイッチング素子15は、電流源13のマイナス側と、磁性細線11の一方の端部11aとを接続しているライン22に介装され、そのON,OFFにより、選択的に磁性細線11にパルス電流を供給する。スイッチング素子16は、電流源13のマイナス側と、磁性細線11の他方の端部11bとを接続しているライン23に介装され、そのON,OFFにより、選択的に磁性細線11にパルス電流を供給する。スイッチング素子17は、磁性細線11の一方の端部11aとGNDとを接続するライン24に介装され、そのON,OFFにより、磁性細線11の一方の端部11aをGNDに選択的に接続する。スイッチング素子18は、磁性細線11の一方の端部11bとGNDとを接続するライン25に介装され、そのON,OFFにより、磁性細線11の一方の端部11bをGNDに選択的に接続する。
制御回路14は、磁気ヘッド12、スイッチング素子15〜18、電流源13の動作を制御する回路である。
【0021】
次に、単位画素型空間光変調器10の動作について説明する。まず、図2に示すように、磁性細線11に磁区31が形成されていないときは、制御回路14の制御により、磁気ヘッド12で磁界35を発生する。この磁界35により、磁性細線11の長手方向の一部には局所的に磁区31が形成される。なお、前記のとおり、磁区31の形成は、スピン注入磁化反転素子などによって行ってもよい。
前記のとおり、磁区31は、磁性細線11に一度形成されれば、容易には消失しないので、すでに磁区31が形成されているのであれば、この磁区31を形成する処理は不要である。また、前記のとおり、磁区31の形成を単位画素型空間光変調器10の製造工程で行い、磁気ヘッド12やスピン注入磁化反転素子などを単位画素型空間光変調器10の備えつけとしなくともよい。また、後述の実施形態のように、磁性細線11を複数個用いる場合は、複数の磁性細線11に磁気ヘッド12などにより一つ一つ磁区31を形成してもよい。また、複数の磁性細線11に一括で磁界をかけられる磁気ヘッド12を用いて、複数の磁性細線11に一括して磁区31を形成してもよい。
なお、スピン注入磁化反転素子は、非常に微細な薄膜構造とすることができるので、磁性細線11に容易に一体成型可能であり、単位画素型空間光変調器10に備えつけとする場合に好適である。
図2に示すように、この例では、初期状態では磁性細線11には上向きの磁化がなされている。これに対して、磁区31には下向きの磁化がなされる。そして、磁区31における磁性細線11の長手方向の一端11a側の端部には磁壁32が形成され、磁区31における磁性細線11の長手方向に他端11b側の端部には磁壁33が形成される。そして、磁壁32は保持部21の位置に形成されるように、磁気ヘッド12、あるいはスピン注入磁化反転素子と磁性細線11との相対位置は決められている。
【0022】
このように、磁性細線11に磁区31を形成すると、制御回路14により、スイッチング素子15〜18、電流源13を制御して、磁性細線11にパルス電流により電子を供給する。具体的には、スイッチング素子15,18を閉じ、スイッチング素子16,17は開いた状態にして、電流源13でパルス電流を発生させる。これにより、磁性細線11の一端部11aから磁性細線11に電子が供給される。
【0023】
図3は、この場合の磁性細線11の変化を、段階を追って示している。図3(a)は、電流源13で電子を磁性細線11に供給する前の状態を示している。
図3(b)は、図3(a)の状態から、電流源13でパルス電流を磁性細線11に1パルス分供給したときの磁性細線11の状態を示している。この場合には、磁性細線11に、その一端部11aから電子が供給され、他端部11b側の磁壁33が当該他端部11b側に所定距離aだけ移動する。この際に、磁性細線11の一端部11a側の磁壁32は、保持部21に捉えられていて、保持部21の位置から移動しない。そのため、磁区31は、磁性細線11の端部11b側に向かって長さaだけ延びることになる。
【0024】
次に、図3(c)に示すように、電流源13でパルス電流をさらに1パルス分供給すると、磁壁33が磁性細線11の端部11b側に、さらに所定距離aだけ移動する。この場合も、磁性細線11の一端部11a側の磁壁32は、保持部21に捉えられていて、保持部21の位置から移動しない。そのため、磁区31は、磁性細線11の端部11b側に向かって更に長さaだけ延びることになる。
すなわち、磁区31の長さを、図3(a)、図3(b)、図3(c)の3段階に可変することができる。この場合に、電流源13で供給するパルス電流のパルス数をさらに増やして、4段階以上に磁区31の長さを可変することも可能である。
【0025】
次に、図3(c)の状態から、スイッチング素子16,17は閉じ、スイッチング素子15,18は開いた状態に変更して、電流源13でパルス電流を発生させる。これにより、磁性細線11の一端部11bから磁性細線11に電子が供給される。この場合の磁性細線11の変化を図4に示している。図4(a)は、図3(c)と同様の状態にある磁性細線11である。そして、この状態から、1パルス分のパルス電流を供給することで、磁性細線11の一端部11bから磁性細線11に電子が供給される。すると、図4(b)のように、磁壁33は図4(a)状態から所定距離aだけ端部11a側に移動する。この状態から、さらに1パルス分のパルス電流を供給すると、図4(c)のように、さらに所定距離aだけ端部11a側に移動する。これらの場合にも、磁壁32は、保持部21の位置に捉られている。よって、磁区31は磁性細線11の長手方向に縮むことになる。
このように、電子を磁性細線11に供給することにより、磁壁32は保持部21の位置に保持したまま、磁区31を磁性細線11の長手方向に伸縮することができる。
【0026】
図5は、図1図4に示す単位画素型空間光変調器10の比較例となる単位画素型空間光変調器400の動作を示す説明図である。単位画素型空間光変調器400が単位画素型空間光変調器10と異なるのは、磁性細線11に保持部21が形成されていない点である。その他の構成は、単位画素型空間光変調器10と同じであるため、図1図4と同一の部材などには同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
【0027】
この比較例の単位画素型空間光変調器400では、電流源13からの電子の供給により、磁壁33のみならず磁壁32も移動する。すなわち、パルス電流を1パルス分印加することにより、図5(a)の状態から図5(b)の状態になり、磁壁33および磁壁32が所定距離aだけ磁性細線11の長手方向に端部11b側に向けて移動する。この場合に、磁壁33と磁壁32との距離は不変であり、磁区31は、その長さを変えないまま磁性細線11の長手方向にシフト移動することになる。さらに、パルス電流を1パルス分印加することにより、図5(b)の状態から図5(c)の状態になり、同様に磁区31はシフト移動する。また、図5(c)の状態にあるときに、図4の例のように、端部11b側から磁性細線11に電子を供給すると、磁区31は、その長さを変えないまま、磁性細線11の長手方向に端部11b側から端部11a側に向けてシフト移動することになる。
このように、単位画素型空間光変調器10では、磁性細線11に保持部21を1か所設けたことにより、パルス電流のパルス数、および電子の供給方向に応じて、磁区31を段階的に伸縮することができる。そして、この伸縮の範囲は、図3図4に示す、移動範囲bとなる。
【0028】
図6に示すように、この例では、光43が、磁性細線11で反射したときに、その偏光の向きが、磁気光学効果により、当該磁性細線11の光が入射した領域における磁化方向に対応して一方向又はその反対方向に同じ角度で回転する(旋光する)。図6においては、光は磁性細線11で反射したときのカー効果により、角度θkで旋光し、上向きの磁化方向を示す領域で反射した光は−θkだけ、下向きの磁化方向を示す領域で反射した光は+θkだけ旋光する。
【0029】
よって、偏光板を用い、入射偏光に対して−θk旋光した光を遮光するようにすれば、磁性細線11の上向きの磁化方向の領域で反射した出射偏光は、偏光板で遮光される。一方、磁性細線11の下向きの磁化方向の領域で反射した出射偏光は、偏光板を透過する。したがって、1本の磁性細線11から出射した光は、当該磁性細線11に形成された磁化方向の異なる領域ごとに明暗を表示することができる。
そして、この明暗は、図3図4に示す移動範囲b内で段階的に変動することになる。そのため、磁性細線11を画像表示に用いれば、多値の階調表示を行うことができる。
この場合に、前記のとおり、保持部21は、当該保持部21の磁気的性質を、磁性細線11の保持部21以外の部分と異ならせ、電子の供給にかかわらず磁壁32を当該保持部21の位置に保持できる手段であれば、様々な手段を用いることができる。
【0030】
しかし、前記のように、磁性細線11に溝を形成することなどにより、磁性細線11の他の部分より磁性細線11の長手方向と直交する方向の断面積を小さくすることで、保持部21を形成するのが望ましい。すなわち、磁性細線11に溝を形成する方が、磁性細線11に、その長手方向と直交する方向の断面積を大きくするなどの加工を行うのに比べて、保持部21の製造工程が容易となる。すなわち、磁性細線11に微細な溝を形成するだけで、保持部21を形成することができるからである。
【0031】
[実施形態2]
次に、本発明の実施形態2となるライン型空間光変調器、および画像表示装置について説明する。
(空間光変調器)
図7は、本実施形態2のライン型空間光変調器100の概略構成を示す説明図である。このライン型空間光変調器100は、複数個の単位画素型空間光変調器10(実施形態1)と、遮光部材51とから構成される。
【0032】
図7の例では、便宜上、4個の単位画素型空間光変調器10のみを図示しているが、実際は更に多くの単位画素型空間光変調器10が用いられている。また、図7の例では、各単位画素型空間光変調器10の磁気ヘッド12(本実施形態でも備えつけとする必要はなくまた、スピン注入磁化反転素子を用いてもよい)、制御回路14、スイッチング素子16,17などは図示を省略している。なお、実施形態2以下の説明において、実施形態1と共通の部材などについては、前記の実施形態1と共通の符号を用い、詳細な説明は省略する。
このライン型空間光変調器100は、各単位画素型空間光変調器10の磁性細線11を、その幅方向に向かって一方向に配列している。
【0033】
そして、各磁性細線11の光43が入射し旋光して出射する側(図7で上側)で、磁区31の移動範囲b(図3図4)を除く、その外側の部分cには、例えば表面が黒色の遮光部材51が形成されている。これにより、各磁性細線11の両端11a、11b側の部分cは、光43から遮られている。そして、磁区31の移動範囲bに対応する部分は、光43から遮られない開口52をなしている。なお、電流源13は、全磁性細線11で共通化することができる。
【0034】
(画像表示装置)
図8は、ライン型空間光変調器100を用いた画像表示装置200の構成を示す説明図である。図8において、ライン型空間光変調器100は、磁性細線11の長手方向の切断線で切断した拡大縦断面で示している。
この画像表示装置200は、ライン型空間光変調器100、光学系211、偏光子212,213、検出器214などからなる。
符号19は、各磁性細線11が形成されているシリコン基板である。ライン型空間光変調器100の遮光部材51の上方には、光学系211と、偏光子212,213と、検出器214とが設けられている。
【0035】
光学系211は、例えばレーザー光源、及びこれに光学的に接続されてレーザー光を磁性細線11の並びの全面に照射する大きさに拡大するビーム拡大器、さらに拡大されたレーザー光を平行光にするレンズで構成される(図示省略)。光学系211から照射された光(レーザー光)43(43a)は、様々な偏光成分を含んでいるため、この光43aはライン型空間光変調器100の手前の偏光子212を透過させて、1つの偏光成分の光(偏光)43(43b)にする。偏光子212,213はそれぞれ偏光板などであり、検出器214はスクリーン等の画像表示手段である。
【0036】
光学系211は、平行光としたレーザー光43aを、ライン型空間光変調器100へ所定の入射角で入射するように光を照射する。レーザー光43aは偏光子212を透過して偏光(入射偏光)43bとなり、開口52から各磁性細線11に向けて入射する。入射偏光43bは、磁性細線11で反射して、ライン型空間光変調器100から出射偏光43(43c)として出射する。偏光子213はすべての出射偏光43cのうちの特定の偏光を遮光し、偏光子213を透過した光43(43d)が検出器214に入射する。
【0037】
入射偏光43bは、磁性細線11で反射したときに、その偏光の向きが、磁気光学効果により、当該磁性細線11の入射偏光43bが入射した領域における磁化方向に対応して一方向又はその反対方向に同じ角度で回転する(旋光する)。図8においては、入射偏光43bは、磁性細線11で反射したときのカー効果により角度θkで旋光する。すなわち、上向きの磁化方向を示す領域で反射した光は−θkだけ旋光し、下向きの磁化方向を示す領域で反射した光は+θkだけ旋光する。偏光子213は、入射偏光43bに対して−θkだけ旋光した光を遮光するものとする。そのため、上向きの磁化方向の領域で反射した出射偏光43cは、偏光子213で遮光され、一方、下向きの磁化方向の磁区31で反射した出射偏光43cは、偏光子213を透過して検出器214に照射される(光43d)。したがって、1本の磁性細線11(の移動範囲b)から出射した光43cは、当該磁性細線11に形成された磁区31と、それ以外の領域とで明暗(白黒)に切り分けられたパターンとなって検出器214へ表示される。
【0038】
したがって、画像表示装置200により、磁性細線11の配列方向にライン状の画像を表示することができる。そして、このライン状の画像表示において、多値の階調表示を行うことができる。
また、磁性細線11において、画像表示に関わる移動範囲b以外の部分cを遮光部材51で遮光するので、的確な画像表示を行うことができる。
【0039】
[実施形態3]
次に、本発明の実施形態3となる平面型空間光変調器、および画像表示装置について説明する。
(空間光変調器)
図9は、本実施形態3の平面型空間光変調器300の概略構成を示す説明図である。なお、実施形態3以下の説明において、実施形態1,2と共通の部材などについては、前記の実施形態1,2と共通の符号を用い、詳細な説明は省略する。この平面型空間光変調器300は、複数個の単位画素型空間光変調器10(実施形態1)と、X電極61と、Y電極62と、X電極選択部63と、Y電極選択部64と、電源部65と、画素選択部66と、遮光部材51とからなる。
【0040】
この平面型空間光変調器300は、複数本のX電極61と、複数本のY電極62とが互いに格子状となるように配列されている。そして、各X電極61と各Y電極62とが交差する位置には、それぞれ磁性細線11が、一端11a側をX電極61に接続し、他端11b側をY電極62に接続して設けられている。この例では、便宜上、X電極61、Y電極62を各4本、磁性細線11を16本、図示している。これにより、磁性細線11は、縦4列、横4列でマトリックス状に配列される。各磁性細線11は、それぞれ画素67を構成している。よって、図9の例では、16画素となる。なお、例えば、スーパーハイビジョン(登録商標)の画像を表示する場合は、水平方向に約8000、垂直方向に約4000の画素67が必要である。
【0041】
このようにマトリックス状に配置された各磁性細線11の上には、遮光部材51が設けられている。遮光部材51の各画素67において、磁区31の移動範囲bの部分には、開口52がそれぞれ形成されている。なお、図9の例では、各磁性細線11の長手方向が図9の水平方向、垂直方向に対して斜めに傾斜しているが、各磁性細線11の長手方向を水平方向または垂直方向とし、開口52の向きも、その磁性細線11の方向に対応させるようにしてもよい。すなわち、矩形状の開口52の各辺の方向が、水平方向または垂直方向となるようにしてもよい。
【0042】
X電極選択部63は、各磁性細線11に対応した(端部11aに接続される)スイッチング素子15,17(図1)をそれぞれ備えている。また、Y電極選択部64は、各磁性細線11に対応した(端部11bに接続される)スイッチング素子16,18(図1)をそれぞれ備えている。なお、これらのスイッチング素子は、各磁性細線11に1対1で対応させて設けられている必要はなく、X電極61ごとにスイッチング素子15,17が設けられ、Y電極62ごとにスイッチング素子16,18が設けられていればよい。
電源部65には、電流源13(図1)が設けられている。この電流源13も各磁性細線11に1対1で対応させて設けられている必要はなく、複数の磁性細線11で共通化してよい。
【0043】
画素選択部66は、制御回路14(図1)を備えている。これにより、画素選択部66は、各磁性細線11にそれぞれ設けられている磁気ヘッド12(図1)、あるいはスピン注入磁化反転素子を制御して、前記のとおり、各磁性細線11に磁区31を形成することができる(本実施形態でも、磁気ヘッド12、スピン注入磁化反転素子などは平面型空間光変調器300の備えつけとする必要はない)。そして、画素選択部66は、所望の画素67を選択する。すなわち、所望の画素67が接続されているX電極61、Y電極62のスイッチング素子15,18を閉じる(磁区31を前記のとおり延ばすとき)。または、スイッチング素子16,17を閉じる(磁区31を前記のとおり縮めるとき)。これにより、所望の画素67の磁区31を伸縮させることができる。
【0044】
例えば、図9の最も右上の画素67で磁区31の長さを制御する場合は、図9で最も右のX電極61と、最も上のY電極62とを選択する。すなわち、当該画素67の磁区31を延ばすときは、最も右のX電極61、最も上のY電極62にそれぞれ接続されたスイッチング素子15,18を閉じる。また、磁区31を縮めるときは、最も右のX電極61、最も上のY電極62にそれぞれ接続されたスイッチング素子16,17を閉じる。
【0045】
(画像表示装置)
平面型空間光変調器300を用いた画像表示装置の構成は、前記した実施形態2の画像表示装置200と同様である。すなわち、平面型空間光変調器300、光学系211、偏光子212,213、検出器214(図8)などからなる。そして、実施形態2と同様、光学系211により各画素67の各開口52に入射偏光43bが入射するようにすることで、平面画像を検出器214に表示することができる。
【0046】
[変形例1]
以下では、実施形態2,3のライン型空間光変調器100、平面型空間光変調器300の変形例を複数例説明する。以下の各変形例で、実施形態2,3のライン型空間光変調器100、平面型空間光変調器300と異なるのは、磁性細線11の形状である。よって、以下では、磁性細線11の形状を中心に図示、説明する。なお、以下の各変形例の説明において、実施形態1〜3と共通の部材などについては、前記の実施形態1〜3と共通の符号を用い、詳細な説明は省略する。
【0047】
図10は、本実施形態の変形例1の磁性細線11の説明図である。この磁性細線11は、両端11a、11b側のそれぞれ所定の長さ分は、その長さ方向が直線状で互いに平行な線状部11c、11dをなしている。そして、線状部11c、11dには、長さ方向がほぼ円弧状の円弧状部11eが接続されている。すなわち、磁性細線11は、ほぼU字形状に湾曲した形状をなしている。磁性細線11の磁区31の部分は、図10の紙面の上側から下側に向かう方向に磁化されていて、他の部分は、図10の紙面の下側から上側に向かう方向に磁化されている。
図10(a)、図10(b)、図10(c)は、この順に長くなるように磁区31が延びており、それぞれ階調0%、階調50%、階調100%をなしている状態を示している。すなわち、この変形例1においても、3段階に画像の階調表現を行うことができる。
【0048】
[変形例2]
図11は、本実施形態の変形例2の磁性細線11の説明図である。この変形例2が変形例1と異なるのは、1つの画素67に複数本、図11の例で2本の磁性細線11が設けられていることである。2本の磁性細線11(磁性細線11αと磁性細線11β)とは、それぞれ変形例1と同様の構成である。磁性細線11αと磁性細線11βとの違いは、前者が後者より大きく、前者の凹部内に後者が入り込んでいることである。
このように、1つの画素67に複数本の磁性細線11を設けることで、1本の場合に比べて更に多段階の画像の階調表現を行うことができる。図11の例では、各磁性細線11で3段階に画像の階調表現を行うことができるので、2本合計で5段階の階調表現が可能となる。
【0049】
[変形例3]
図12は、本実施形態の変形例3の磁性細線11の説明図である。この変形例3が変形例1と異なるのは、線状部11c、11dには、円弧状部11eに代えて、長さ方向が線状部11c、11dと直交する直線状の線状部11fが接続されている点である。すなわち、磁性細線11は、湾曲形状が変形例1とは異なる。もう一点の相違点は、光43(43b)の入射側が磁性細線11の湾曲形状の凸部側になっていることである。よって、この凸部側に光43bが入射して旋光し出射することになる。
【0050】
図12(a)、図12(b)、図12(c)は、この順に長くなるように磁区31が延びており、それぞれ階調0%、階調50%、階調100%をなしている状態を示している。すなわち、この変形例3においても3段階に画像の階調表現を行うことができる。もちろん、変形例2のように複数本の磁性細線11を用い、さらに多段階の階調表現を可能としてもよい。
この変形例3によれば、光43(43b)の入射側が磁性細線11の湾曲形状の凸部側になっているため、線状部11c、11dを前記の遮光部材51で遮光する必要がない。そのため、遮光部材51において、画像の表示に関わる開口52(移動範囲b)の面積割合を高め、もって、画質を向上させることができる。
【0051】
次に、変形例3の磁性細線11の形成方法について説明する。図13は、変形例3の磁性細線11の形成方法について説明する説明図である。以下では、実施形態3の符号を用いて説明する。
(1)第1ステップ
まず、シリコン基板19の上に、X電極61、Y電極62を形成する(図13(a))。なお、図13では、X電極61とY電極62とが格子状に交差しない例で図示している。
(2)第2ステップ
次に、X電極61とY電極62との間のシリコン基板19の上に、例えば直方体形状の、例えばSiOなどの絶縁体91を形成する(図13(b))。
【0052】
(3)第3ステップ
次に、X電極61上、Y電極62上に、磁性細線材料で線状部11c、11dを、絶縁体91を挟むようにそれぞれ形成する(図13(c))。
(4)第4ステップ
最後に、線状部11c、11dを橋脚のようにして、線状部11c、11d、並びに絶縁体91の上に、磁性細線材料で線状部11c、11dに跨るように線状部11fを形成する(図13(d))。
以上の各ステップは、公知のリソグラフィーや電子線リソグラフィーでレジストを露光し、材料をスパッタリング技術で堆積して、リフトオフやミリングなどによって前記のような所望構造に形成することで容易に実現できる。
【0053】
変形例3において、変形例2の形状の磁性細線11を用い、当該磁性細線11の湾曲の凸部側に入射偏光43bが入射する構成としてもよい。しかし、この場合は、前記第4ステップで線状部11fに代えて、線状部11c、11dに跨るように円弧形状の円弧状部11e(図12)を微細加工技術で形成しづらい場合も考えられる。
これに比べて、変形例3のように、絶縁体91の上に磁性細線材料で線状部11c、11dに跨るように線状部11fを形成することは容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0054】
10 単位画素型空間光変調器(空間光変調器)
11 磁性細線
11a 端部
11b 端部
13 電流源
21 保持部
31 磁区
32 磁壁
33 磁壁
43 光
51 遮光部材
100 ライン型空間光変調器(空間光変調器)
300 平面型空間光変調器(空間光変調器)
b 移動範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13