特許第6285784号(P6285784)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6285784
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】高さ位置検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/02 20060101AFI20180215BHJP
【FI】
   G01B11/02 Z
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-80331(P2014-80331)
(22)【出願日】2014年4月9日
(65)【公開番号】特開2015-200601(P2015-200601A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2017年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 さやか
(72)【発明者】
【氏名】能丸 圭司
【審査官】 櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−209299(JP,A)
【文献】 特開2005−221451(JP,A)
【文献】 特開2010−125521(JP,A)
【文献】 特開平09−311018(JP,A)
【文献】 特開2013−96858(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0137178(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00−11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する被加工物保持手段と、該被加工物保持手段に保持された被加工物の高さ位置を検出する高さ位置検出手段と、該被加工物保持手段と該高さ位置検出手段とを相対的に移動する移動手段と、を具備する高さ位置検出装置において、
該高さ位置検出手段は、所定の波長帯域を有する光源と、該光源から発せられた光を伝送する第1のシングルモードファイバーと、該第1のシングルモードファイバーに連結されたファイバーカプラーと、該光源と該ファイバーカプラーとの間で該第1のシングルモードファイバーに連結され該波長帯域から単一波長の光を所定の周期で順次掃引して伝送するファブリーペローチューナブルフィルターと、該ファブリーペローチューナブルフィルターから放出される単一波長の光を集光し該被加工物保持手段に保持された被加工物に照射する色収差レンズと、被加工物で反射し該色収差レンズを介して該ファイバーカプラーで分岐される戻り光を伝送する第2のシングルモードファイバーと、該第2のシングルモードファイバーから放出される戻り光を受光し受光した光の強度に対応した信号を出力する受光素子と、波長と高さとの関係を設定したテーブルを格納するメモリを備えた制御手段と、を具備し、
該制御手段は、該ファブリーペローチューナブルフィルターが単一波長の光を掃引する所定の周期に同期させ該受光素子が受光した単一波長の光の波長を求め、該波長と該テーブルに記録された波長と高さとを照合することにより該被加工物保持手段に保持された被加工物の高さ位置を求める、
ことを特徴とする高さ位置検出装置。
【請求項2】
該移動手段による該被加工物保持手段と該高さ位置検出手段との相対的な移動方向をX座標とした場合、該制御手段はX座標に対応して該被加工物保持手段に保持された被加工物の高さ位置を求め該メモリに格納する、請求項1記載の高さ位置検出装置。
【請求項3】
該高さ位置検出手段は、被加工物を保持する被加工物保持手段と、該被加工物保持手段に保持された被加工物に加工を施す加工手段と、該被加工物保持手段と該加工手段とをX軸方向に相対的に移動せしめるX軸移動手段と、該被加工物保持手段と該加工手段とをX軸方向と直交するY軸方向に相対的に移動せしめるY軸移動手段とによって構成された加工機に装着される、請求項1又は2記載の高さ位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー加工機等の加工機に装備されるチャックテーブルに保持された半導体ウエーハ等の被加工物の高さ位置を検出する高さ位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列された分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。そして、半導体ウエーハを分割予定ラインに沿って切断することによりデバイスが形成された領域を分割して個々の半導体デバイスを製造している。
【0003】
上述した半導体ウエーハ等の分割予定ラインに沿って分割する方法として、ウエーハに対して透過性を有するパルスレーザー光線を用い、分割すべき領域の内部に集光点を合わせてパルスレーザー光線を照射するレーザー加工方法が試みられている。このレーザー加工方法を用いた分割方法は、ウエーハの一方の面側から内部に集光点を合わせてウエーハに対して透過性を有する例えば波長が1064nmのパルスレーザー光線を照射し、ウエーハの内部に分割予定ラインに沿って改質層を連続的に形成し、この改質層が形成されることによって強度が低下した分割予定ラインに沿って外力を加えることにより、被加工物を分割するものである(例えば、特許文献1参照)。このように被加工物に形成された分割予定ラインに沿って内部に改質層を形成する場合、被加工物の上面から所定の深さ位置にレーザー光線の集光点を位置付けることが重要である。
【0004】
また、半導体ウエーハ等の板状の被加工物を分割する方法として、被加工物に形成された分割予定ラインに沿ってパルスレーザー光線を照射することによりレーザー加工溝を形成し、このレーザー加工溝に沿ってメカニカルブレーキング装置によって割断する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。このように被加工物に形成された分割予定ラインに沿ってレーザー加工溝を形成する場合にも、被加工物の所定高さ位置にレーザー光線の集光点を位置付けることが重要である。
【0005】
しかるに、半導体ウエーハ等の板状の被加工物にはウネリがあり、その厚さにバラツキがあるため、均一なレーザー加工を施すことが難しい。即ち、ウエーハの内部に分割予定ラインに沿って改質層を形成する場合、ウエーハの厚さにバラツキがあるとレーザー光線を照射する際に屈折率の関係で所定の深さ位置に均一に改質層を形成することができない。また、ウエーハに形成された分割予定ラインに沿ってレーザー加工溝を形成する場合にもその厚さにバラツキがあると、均一な深さのレーザー加工溝を形成することができない。
【0006】
上述した問題を解消するために、チャックテーブルに保持された半導体ウエーハ等の被加工物の上面高さを検出することができる高さ位置検出装置が下記特許文献3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3408805号公報
【特許文献2】特開2010−272697号公報
【特許文献3】特開2011−82354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
而して、上記特許文献3に開示された高さ位置検出装置は、発光手段から斜めに照射された光が被加工物の上面で反射し、その反射光の受光位置によって高さ位置を検出する技術であるため、高さが変化することによって分割予定ラインから外れた位置に照射され適正な位置の上面高さを検出することができないという問題がある。
【0009】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、被加工物保持手段に保持された半導体ウエーハ等の被加工物における設定された領域の高さ位置を正確に検出することができる高さ位置検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被加工物を保持する被加工物保持手段と、該被加工物保持手段に保持された被加工物の高さ位置を検出する高さ位置検出手段と、該被加工物保持手段と該高さ位置検出手段とを相対的に移動する移動手段と、を具備する高さ位置検出装置において、
該高さ位置検出手段は、所定の波長帯域を有する光源と、該光源から発せられた光を伝送する第1のシングルモードファイバーと、該第1のシングルモードファイバーに連結されたファイバーカプラーと、該光源と該ファイバーカプラーとの間で該第1のシングルモードファイバーに連結され該波長帯域から単一波長の光を所定の周期で順次掃引して伝送するファブリーペローチューナブルフィルターと、該ファブリーペローチューナブルフィルターから放出される単一波長の光を集光し該被加工物保持手段に保持された被加工物に照射する色収差レンズと、被加工物で反射し該色収差レンズを介して該ファイバーカプラーで分岐される戻り光を伝送する第2のシングルモードファイバーと、該第2のシングルモードファイバーから放出される戻り光を受光し受光した光の強度に対応した信号を出力する受光素子と、波長と高さとの関係を設定したテーブルを格納するメモリを備えた制御手段と、を具備し、
該制御手段は、該ファブリーペローチューナブルフィルターが単一波長の光を掃引する所定の周期に同期させ該受光素子が受光した単一波長の光の波長を求め、該波長と該テーブルに記録された波長と高さとを照合することにより該被加工物保持手段に保持された被加工物の高さ位置を求める、
ことを特徴とする高さ位置検出装置が提供される。
【0011】
上記移動手段による被加工物保持手段と高さ位置検出手段との相対的な移動方向をX座標とした場合、制御手段はX座標に対応して被加工物保持手段に保持された被加工物の高さ位置を求めメモリに格納する。
また、上記高さ位置検出手段は、被加工物を保持する被加工物保持手段と、被加工物保持手段に保持された被加工物に加工を施す加工手段と、被加工物保持手段と加工手段とをX軸方向に相対的に移動せしめるX軸移動手段と、被加工物保持手段と加工手段とをX軸方向と直交するY軸方向に相対的に移動せしめるY軸移動手段とによって構成された加工機に装着される。
【発明の効果】
【0012】
本発明による高さ位置検出装置においては、被加工物保持手段に保持された被加工物の高さ位置を検出する高さ位置検出手段は、所定の波長帯域を有する光源と、該光源から発せられた光を伝送する第1のシングルモードファイバーと、該第1のシングルモードファイバーに連結されたファイバーカプラーと、光源とファイバーカプラーとの間で第1のシングルモードファイバーに連結され波長帯域から単一波長の光を所定の周期で順次掃引して伝送するファブリーペローチューナブルフィルターと、該ファブリーペローチューナブルフィルターから放出される単一波長の光を集光し被加工物保持手段に保持された被加工物に照射する色収差レンズと、被加工物で反射し色収差レンズを介してファイバーカプラーで分岐される戻り光を伝送する第2のシングルモードファイバーと、該第2のシングルモードファイバーから放出される戻り光を受光し受光した光の強度に対応した信号を出力する受光素子と、波長と高さとの関係を設定したテーブルを格納するメモリを備えた制御手段とを具備し、制御手段は、ファブリーペローチューナブルフィルターが単一波長の光を掃引する所定の周期に同期させ受光素子が受光した単一波長の光の波長を求め、波長と該テーブルに記録された波長と高さとを照合することにより被加工物保持手段に保持された被加工物の高さ位置を求めるので、被加工物の検出位置から外れた位置に光が照射され検出位置から外れた位置の高さを検出するという問題が解消する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に従って構成された高さ位置検出装置が装備されたレーザー加工機の斜視図。
図2図1に示すレーザー加工機に装備される高さ位置検出装置の構成を示すブロック図。
図3図2に示す高さ位置検出装置を構成するファブリーペローチューナブルフィルターに印加される交流波に沿って各波長の光を所定周期で順次掃引して伝送する状態を示す説明図。
図4図2に示す高さ位置検出装置を構成する色収差レンズの集光状態を示す説明図。
図5図1に示すレーザー加工機に装備される制御手段のブロック構成図。
図6】波長と高さとの関係を設定した制御テーブル。
図7】被加工物としての半導体ウエーハの斜視図。
図8図7に示す半導体ウエーハが環状のフレームに装着された保護テープに貼着された状態を示す斜視図。
図9図7に示す半導体ウエーハが図1に示すレーザー加工機のチャックテーブルの所定位置に保持された状態における座標位置との関係を示す説明図。
図10図2に示す高さ位置検出装置によって検出された高さ位置データに基づいて作成されるXY座標に対応した基準位置に対するバラツキを示す説明図。
図11図1に示すレーザー加工機に装備された高さ位置検出装置によって実施される高さ位置検出工程の説明図。
図12図1に示すレーザー加工機によって図7に示す半導体ウエーハに改質層を形成するレーザー加工工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に従って構成された高さ位置検出装置の好適な実施形態について、添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0015】
図1には、本発明に従って構成された高さ位置検出装置を装備した加工機としてのレーザー加工機の斜視図が示されている。図1に示すレーザー加工機は、静止基台2と、該静止基台2に矢印Xで示すX軸方向に移動可能に配設され被加工物を保持するチャックテーブル機構3と、静止基台2に上記矢印Xで示すX軸方向と直交する矢印Yで示すY軸方向に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット支持機構4と、該レーザー光線ユニット支持機構4に矢印Zで示すZ軸方向に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット5とを具備している。
【0016】
上記チャックテーブル機構3は、静止基台2上にX軸方向に沿って平行に配設された一対の案内レール31、31と、該案内レール31、31上にX軸方向に移動可能に配設された第1の滑動ブロック32と、該第1の滑動ブロック32上にY軸方向に移動可能に配設された第2の滑動ブロック33と、該第2の滑動ブロック33上に円筒部材34によって支持されたカバーテーブル35と、被加工物保持手段としてのチャックテーブル36を具備している。このチャックテーブル36は多孔性材料から形成された吸着チャック361を具備しており、吸着チャック361上に被加工物である例えば円盤状の半導体ウエーハを図示しない吸引手段によって保持するようになっている。このように構成されたチャックテーブル36は、円筒部材34内に配設された図示しないパルスモータによって回転せしめられる。なお、チャックテーブル36には、後述する環状のフレームを固定するためのクランプ362が配設されている。
【0017】
上記第1の滑動ブロック32は、その下面に上記一対の案内レール31、31と嵌合する一対の被案内溝321、321が設けられているとともに、その上面にY軸方向に沿って平行に形成された一対の案内レール322、322が設けられている。このように構成された第1の滑動ブロック32は、被案内溝321、321が一対の案内レール31、31に嵌合することにより、一対の案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第1の滑動ブロック32を一対の案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動させるためのX軸移動手段37を具備している。X軸移動手段37は、上記一対の案内レール31と31の間に平行に配設された雄ネジロッド371と、該雄ネジロッド371を回転駆動するためのパルスモータ372等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド371は、その一端が上記静止基台2に固定された軸受ブロック373に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ372の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド371は、第1の滑動ブロック32の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ372によって雄ネジロッド371を正転および逆転駆動することにより、第1の滑動ブロック32は案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動せしめられる。
【0018】
図示の実施形態におけるレーザー加工機は、上記チャックテーブル36のX軸方向位置を検出するためのX軸方向位置検出手段374を備えている。X軸方向位置検出手段374は、案内レール31に沿って配設されたリニアスケール374aと、第1の滑動ブロック32に配設され第1の滑動ブロック32とともにリニアスケール374aに沿って移動する読み取りヘッド374bとからなっている。このX軸方向位置検出手段374の読み取りヘッド374bは、図示の実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36のX軸方向位置を検出する。
【0019】
上記第2の滑動ブロック33は、その下面に上記第1の滑動ブロック32の上面に設けられた一対の案内レール322、322と嵌合する一対の被案内溝331、331が設けられており、この被案内溝331、331を一対の案内レール322、322に嵌合することにより、Y軸方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第2の滑動ブロック33を第1の滑動ブロック32に設けられた一対の案内レール322、322に沿ってY軸方向に移動させるための第1のY軸移動手段38を具備している。第1のY軸移動手段38は、上記一対の案内レール322と322の間に平行に配設された雄ネジロッド381と、該雄ネジロッド381を回転駆動するためのパルスモータ382等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド381は、その一端が上記第1の滑動ブロック32の上面に固定された軸受ブロック383に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ382の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド381は、第2の滑動ブロック33の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ382によって雄ネジロッド381を正転および逆転駆動することにより、第2の滑動ブロック33は案内レール322、322に沿ってY軸方向に移動せしめられる。
【0020】
図示の実施形態におけるレーザー加工機は、上記第2の滑動ブロック33のY軸方向位置を検出するためのY軸方向位置検出手段384を備えている。Y軸方向位置検出手段384は、案内レール322に沿って配設されたリニアスケール384aと、第2の滑動ブロック33に配設され第2の滑動ブロック33とともにリニアスケール384aに沿って移動する読み取りヘッド384bとからなっている。このY軸方向位置検出手段384の読み取りヘッド384bは、図示の実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36のY軸方向位置を検出する。
【0021】
上記レーザー光線照射ユニット支持機構4は、静止基台2上に矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に沿って平行に配設された一対の案内レール41、41と、該案内レール41、41上に矢印Yで示す方向に移動可能に配設された可動支持基台42を具備している。この可動支持基台42は、案内レール41、41上に移動可能に配設された移動支持部421と、該移動支持部421に取り付けられた装着部422とからなっている。装着部422は、一側面に矢印Zで示すZ軸方向(集光点位置調整方向)に延びる一対の案内レール423、423が平行に設けられている。図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット支持機構4は、可動支持基台42を一対の案内レール41、41に沿ってY軸方向に移動させるための第2のY軸移動手段43を具備している。第2のY軸移動手段43は、上記一対の案内レール41、41の間に平行に配設された雄ネジロッド431と、該雄ネジロッド431を回転駆動するためのパルスモータ432等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド431は、その一端が上記静止基台2に固定された図示しない軸受ブロックに回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ432の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド431は、可動支持基台42を構成する移動支持部421の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された雌ネジ穴に螺合されている。このため、パルスモータ432によって雄ネジロッド431を正転および逆転駆動することにより、可動支持基台42は案内レール41、41に沿ってY軸方向に移動せしめられる。
【0022】
図示の実施形態のおけるレーザー光線照射ユニット5は、ユニットホルダ51と、該ユニットホルダ51に取り付けられたレーザー光線照射手段52を具備している。ユニットホルダ51は、上記装着部422に設けられた一対の案内レール423、423に摺動可能に嵌合する一対の被案内溝511、511が設けられており、この被案内溝511、511を上記案内レール423、423に嵌合することにより、Z軸方向に移動可能に支持される。
【0023】
図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット5は、ユニットホルダ51を一対の案内レール423、423に沿ってZ軸方向に移動させるためのZ軸移動手段53を具備している。Z軸移動手段53は、一対の案内レール423、423の間に配設された雄ネジロッド(図示せず)と、該雄ネジロッドを回転駆動するためのパルスモータ532等の駆動源を含んでおり、パルスモータ532によって図示しない雄ネジロッドを正転および逆転駆動することにより、ユニットホルダ51およびレーザー光線照射手段52を案内レール423、423に沿ってZ軸方向に移動せしめる。なお、図示の実施形態においてはパルスモータ532を正転駆動することによりレーザー光線照射手段52を上方に移動し、パルスモータ532を逆転駆動することによりレーザー光線照射手段52を下方に移動するようになっている。
【0024】
図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット5は、レーザー光線照射手段52のZ軸方向位置を検出するためのZ軸方向位置検出手段55を具備している。Z軸方向位置検出手段55は、上記案内レール423、423と平行に配設されたリニアスケール551と、上記ユニットホルダ51に取り付けられユニットホルダ51とともにリニアスケール551に沿って移動する読み取りヘッド552とからなっている。このZ軸方向位置検出手段55の読み取りヘッド552は、図示の実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。
【0025】
図示のレーザー光線照射手段52は、実質上水平に配置された円筒形状のケーシング521を含んでいる。このケーシング521内には図示しないYAGレーザー発振器或いはYVO4レーザー発振器からなるパルスレーザー光線発振器や繰り返し周波数設定手段を備えたパルスレーザー光線発振手段が配設されている。上記ケーシング521の先端部には、パルスレーザー光線発振手段から発振されたパルスレーザー光線を集光するための集光器522が装着されている。
【0026】
上記レーザー光線照射手段52を構成するケーシング521の先端部には、レーザー光線照射手段52によってレーザー加工すべき加工領域を検出する撮像手段6が配設されている。この撮像手段6は、可視光線によって撮像する通常の撮像素子(CCD)の外に、被加工物に赤外線を照射する赤外線照明手段と、該赤外線照明手段によって照射された赤外線を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成されており、撮像した画像信号を後述する制御手段に送る。
【0027】
また、上記レーザー光線照射手段52を構成するケーシング521の先端部には、チャックテーブル36に保持された被加工物の上面高さ位置を検出するための高さ位置検出装置7が配設されている。この高さ位置検出装置7は、図2に示す高さ位置検出手段70を具備している。図2に示す高さ位置検出手段70は、所定の波長帯域を有する光源71と、該光源71から発せられた光を伝送する第1のシングルモードファイバー72と、該第1のシングルモードファイバー72に連結されたファイバーカプラー73と、光源71とファイバーカプラー73との間で第1のシングルモードファイバー72に連結され波長帯域から単一波長の光を所定の周期で順次掃引して伝送するファブリーペローチューナブルフィルター74と、該ファブリーペローチューナブルフィルター74から放出される単一波長の光を集光しチャックテーブル36に保持された被加工物Wに照射する色収差レンズ75と具備している。なお、上記光源71は、波長帯域が例えば300〜900nm光を発する。上記ファブリーペローチューナブルフィルター74は、所定の周波数(例えば50kHz)の交流電源印加手段76に接続されており、図3に示すように交流波に沿って各波長の光を所定周期で順次掃引して伝送する。なお、交流波に沿って各波長の光は、交流波の直線に近い領域である400〜800nmを使用することが望ましい。また、上記色収差レンズ75は、図4に示すように入光された光の波長に応じて集光点位置が異なるように機能し、例えば波長が400nmの光はP1に集光し、波長が600nmの光はP2に集光し、波長が800nmの光はP3に集光するようになっている。なお、図示の実施形態においては、波長が600nmの集光点P2を中心として波長が400nm集光点P1と波長が800nmの集光点P3との間隔は100μmに設定されている。
【0028】
図2を参照して説明を続けると、上記色収差レンズ75を介して照射され被加工物Wの上面で反射した戻り光は、色収差レンズ75を介してファイバーカプラー73に導かれる。図示の高さ位置検出手段70は、ファイバーカプラー73に導かれ分岐される戻り光を伝送する第2のシングルモードファイバー77と、該第2のシングルモードファイバー77から放出される戻り光を増幅する増幅器78と、該増幅器78によって増幅された戻り光を受光し受光した光の強度に対応した信号を出力する受光素子79を具備しており、受光素子79は受光した戻り光の各波長に対応した光強度を後述する制御手段に送る。
【0029】
図示の実施形態におけるレーザー加工機は、図5に示す制御手段9を具備している。制御手段9はコンピュータによって構成されており、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)91と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)92と、演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)93と、入力インターフェース94および出力インターフェース95とを備えている。制御手段9の入力インターフェース94には、上記X軸方向位置検出手段374、Y軸方向位置検出手段384、Z軸移動手段53、撮像手段6、受光素子79等からの検出信号が入力される。そして、制御手段9の出力インターフェース95からは、上記パルスモータ372、パルスモータ382、パルスモータ432、パルスモータ532、レーザー光線照射手段52等に制御信号を出力する。なお、上記ランダムアクセスメモリ(RAM)93は、図6に示す波長と高さとの関係を設定した制御テーブルを格納する第1の記憶領域93a、後述する被加工物の設計値のデータを記憶する第2の記憶領域93b、後述する被加工物のXY座標における基準位置に対するバラツキを記憶する第3の記憶領域93cや他の記憶領域を備えている。なお、図6に示す波長と高さとの関係を設定した制御テーブルは、波長が600nmのときに設定された高さ位置(0)として、波長が600nmより短い場合は+(μm)とし、波長が600nmより長い場合は−(μm)としている。このように構成された制御手段9は、上記ファブリーペローチューナブルフィルター74が単一波長の光を掃引する所定の周期に同期させ受光素子79が受光した波長のうち光強度の最も高い波長を求め、該波長と図6に示す制御テーブルに設定された波長と高さとを照合することにより、チャックテーブル36に保持された被加工物Wの高さ位置、即ち波長が600nmのときに設定された高さ位置(0)(基準位置)に対するバラツキを求める。
【0030】
図示の実施形態における高さ位置検出装置を装備したレーザー加工機は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
図7には、被加工物としての半導体ウエーハの斜視図が示されている。図7に示す半導体ウエーハ10は、例えば厚みが200μmのシリコンウエーハからなっており、表面10aには格子状に形成された複数の分割予定ライン101によって区画された複数の領域にIC、LSI等のデバイス102が形成されている。このように形成された半導体ウエーハ10は、図8に示すように環状のフレームFに装着されたポリオレフィン等の合成樹脂シートからなる例えば厚みが300μmの保護テープTに表面10a側を貼着する(保護テープ貼着工程)。従って、半導体ウエーハ10は、裏面10bが上側となる。
【0031】
上述したレーザー加工装置を用い、上記半導体ウエーハ10の分割予定ライン101に沿ってレーザー光線を照射し、半導体ウエーハ10の内部に分割予定ライン101に沿って改質層を形成するレーザー加工の実施形態について説明する。なお、半導体ウエーハ10の内部に改質層を形成する際に、半導体ウエーハの厚さにバラツキがあると、所定の深さに均一に改質層を形成することができない。そこで、レーザー加工を施す前に、上述した高さ位置検出装置7によってチャックテーブル36に保持された半導体ウエーハ10の上面高さ位置を計測する。
【0032】
チャックテーブル36に保持された半導体ウエーハ10の上面高さ位置を計測するには、先ず上述した図1に示すレーザー加工機のチャックテーブル36上に半導体ウエーハ10の保護テープT 側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより、保護テープTを介して半導体ウエーハ10をチャックテーブル36上に吸引保持する(ウエーハ保持工程)。従って、チャックテーブル36上に保護テープTを介して保持された半導体ウエーハ10は、裏面10bが上側となる。このようにして、ウエーハ保持工程を実施したならば、加工送り手段37を作動して半導体ウエーハ10を吸引保持したチャックテーブル36を撮像手段6の直下に位置付ける。
【0033】
チャックテーブル36が撮像手段6の直下に位置付けられると、撮像手段6および制御手段9によって半導体ウエーハ10のレーザー加工すべき加工領域を検出するアライメント作業を実行する。即ち、撮像手段6および制御手段9は、半導体ウエーハ10の所定方向に形成されている分割予定ライン101がX軸方向と平行に位置付けられているか否かのアライメントを遂行する。また、半導体ウエーハ10に形成されている所定方向と直交する方向に形成されている分割予定ライン101に対しても、同様にアライメントが遂行される。このとき、半導体ウエーハ10の分割予定ライン101が形成されている表面10aは下側に位置しているが、撮像手段6が上述したように赤外線照明手段と赤外線を捕らえる光学系および赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成された撮像手段を備えているので、裏面10bから透かして分割予定ライン101を撮像することができる。
【0034】
上述したようにアライメントが行われると、チャックテーブル36上の半導体ウエーハ10は、図9の(a)に示す座標位置に位置付けられた状態となる。なお、図9の(b)はチャックテーブル36即ち分割予定ラインを図9の(a)に示す状態から90度回転した状態を示している。
【0035】
なお、図9の(a)および図9の(b)に示す座標位置に位置付けられた状態における半導体ウエーハ10に形成された各分割予定ライン101の送り開始位置座標値(A1,A2,A3・・・An)と送り終了位置座標値(B1,B2,B3・・・Bn)および送り開始位置座標値(C1,C2,C3・・・Cn)と送り終了位置座標値(D1,D2,D3・・・Dn)は、その設計値のデータが制御手段9のランダムアクセスメモリ(RAM)93の第2の記憶領域93bに格納されている。
【0036】
上述したようにチャックテーブル36上に保持されている半導体ウエーハ10に形成された分割予定ライン101を検出し、検出位置のアライメントが行われたならば、チャックテーブル36を移動して図9の(a)において最上位の分割予定ライン101を高さ位置検出装置7の色収差レンズ75直下に位置付ける。そして、更に図11示すように半導体ウエーハ10の分割予定ライン101の一端(図11において左端)である送り開始位置座標値(A1)(図9の(a)参照)を色収差レンズ75の直下に位置付ける。そして、高さ位置検出装置7を作動するとともに、チャックテーブル36を図11において矢印X1で示す方向に所定の送り速度(例えば、200mm/秒)で移動し、X軸方向位置検出手段374からの検出信号に基づいて送り終了位置座標値(B1)まで移動する(高さ位置検出工程)。この結果、半導体ウエーハ10の図9の(a)において最上位の分割予定ライン101における高さ位置、即ち波長が600nmのときに設定された高さ位置(0)(基準位置)に対するバラツキを上述したように検出することができる。そして、制御手段9は、波長が600nmのときに設定された高さ位置(0)(基準位置)に対するバラツキに基づいて、図10で示すように半導体ウエーハ10のXY座標における基準位置に対するバラツキを求め、このXY座標における基準位置に対するバラツキを上記ランダムアクセスメモリ(RAM)103の第3の記憶領域93cに格納する。このようにして、半導体ウエーハ10に形成された全ての分割予定ライン101に沿って高さ位置検出工程を実施し、各分割予定ライン101のXY座標における基準位置に対するバラツキを上記ランダムアクセスメモリ(RAM)103の第3の記憶領域103cに格納する。以上のように高さ位置検出装置7は、色収差レンズ75を介してチャックテーブル36に保持された被加工物Wの上面に垂直に照射される光の戻り光における光強度の最も高い波長を求めることにより被加工物Wの高さ位置を検出するので、分割予定ライン101から外れた位置に光が照射され分割予定ライン101から外れた位置の高さを検出するという問題が解消する。
【0037】
以上のようにして半導体ウエーハ10に形成された全ての分割予定ライン101に沿って高さ位置検出工程を実施したならば、半導体ウエーハ10の内部に分割予定ライン101に沿って改質層を形成するレーザー加工を実施する。
レーザー加工を実施するには、先ずチャックテーブル36を移動して図9の(a)において最上位の分割予定ライン101をレーザー光線照射手段52の集光器522の直下に位置付ける。そして、更に図12の(a)で示すように分割予定ライン101の一端(図12の(a)において左端)である送り開始位置座標値(A1)(図9の(a)参照)を集光器522の直下に位置付ける。制御手段9は、Z軸移動手段53を作動して集光器522から照射されるパルスレーザー光線の集光点Pを半導体ウエーハ10の裏面10b(上面)から所定の深さ位置に合わせる。次に、制御手段9は、レーザー光線照射手段52を作動し、集光器522からパルスレーザー光線を照射しつつチャックテーブル36を矢印X1で示す方向に所定の加工送り速度で移動せしめる(レーザー加工工程)。そして、図12の(b)で示すように集光器522の照射位置が分割予定ライン101の他端(図12の(b)において右端)に達したら、パルスレーザー光線の照射を停止するとともに、チャックテーブル36の移動を停止する。このレーザー加工工程においては、制御手段9はランダムアクセスメモリ(RAM)103の第3の記憶領域103cに格納されている分割予定ライン101のXY座標に対応した基準位置に対するバラツキに基いて、Z軸移動手段53のパルスモータ532を制御し、図12の(b)で示すように集光器522を半導体ウエーハ10の分割予定ライン101における高さ位置に対応して上下方向に移動せしめる。この結果、半導体ウエーハ10の内部には、図12の(b)で示すように裏面10b(上面)から所定の深さ位置に裏面10b(上面)と平行に改質層110が形成される。
【0038】
なお、上記レーザー加工工程における加工条件は、例えば次のように設定されている。
レーザー :YVO4 パルスレーザー
波長 :1040nm
繰り返し周波数 :200kHz
平均出力 :1W
集光スポット径 :φ1μm
加工送り速度 :300mm/秒
【0039】
以上のようにして、半導体ウエーハ10の所定方向に延在する全ての分割予定ライン101に沿って上記レーザー加工工程を実行したならば、チャックテーブル36を90度回動せしめて、上記所定方向に対して直交する方向に延びる各分割予定ライン101に沿って上記レーザー加工工程を実行する。このようにして、半導体ウエーハ10に形成された全ての分割予定ライン101に沿って上記レーザー加工工程を実行したならば、半導体ウエーハ10を保持しているチャックテーブル36は、最初に半導体ウエーハ10を吸引保持した位置に戻され、ここで半導体ウエーハ10の吸引保持を解除する。そして、半導体ウエーハ10は、図示しない搬送手段によって分割工程に搬送される。
【0040】
以上、本発明によるチャックテーブルに保持された被加工物の高さ位置検出装置をレーザー加工機に適用した例を示したが、本発明はチャックテーブルに保持された被加工物を加工する種々の加工機に適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
2:静止基台
3:チャックテーブル機構
36:チャックテーブル
37:X軸移動手段
374:X軸方向位置検出手段
38:第1のY軸移動手段
384:Y軸方向位置検出手段
4:レーザー光線照射ユニット支持機構
43:第2のY軸移動手段
5:レーザー光線照射ユニット
52:レーザー光線照射手段
522:集光器
6:撮像手段
7:高さ位置検出装置
71:光源
72:第1のシングルモードファイバー
73:ファイバーカプラー
74:ファブリーペローチューナブルフィルター
75:色収差レンズ
76:交流電源印加手段
77:第2のシングルモードファイバー
78:増幅器
79:受光素子
9:制御手段
10:半導体ウエーハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12